説明

緩衝器

【課題】モータの全長を長くすることなしにトルク検出が可能なモータの提供することであり、また、モータを使用する緩衝器の制御性を向上するとともに緩衝器の全長を短くすることである。
【解決手段】 モータが中空なロータシャフト3と、該ロータシャフト3内に挿通されるとともにロータシャフト3の一端側内周に結合される出力シャフトTと、出力シャフトTの一端側の回転角を検出する回転角検出手段K1と、出力シャフトTの他端側の回転角を検出する回転角検出手段K2とを備えてなり、モータの全長を長くすることなしにトルク検出を行えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの改良およびモータに生じる電磁力で上記車体と車軸との相対移動を抑制する緩衝器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
モータに生じる電磁力で上記車体と車軸との相対移動を抑制する緩衝器としては、モータのロータシャフトと螺子軸とをトーションバーを介して連結しているものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−343648号公報(段落番号0043から0044,図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した従来の緩衝器は、油等を必要としない点で非常に有用であるが、以下の問題点がある。
【0004】
すなわち、上記緩衝器では、モータが発生しているトルクを正確に検知することができないので、緩衝器が発生している減衰力の把握ができず制御上不利である。
【0005】
また、従来緩衝器では、モータのロータシャフトと螺子軸とを連結するとしているので、どうしてもトーションバーの長さ分緩衝器の基本長が長くなってしまい、搭載性が悪く、ストローク確保も困難となるという不具合がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記の不具合を勘案して創案されたものであって、その目的とするところは、モータの全長を長くすることなしにトルク検出が可能なモータの提供することであり、また、モータを使用する緩衝器の制御性を向上するとともに緩衝器の全長を短くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するため、本発明のモータは、中空なロータシャフトと、該ロータシャフト内に挿通されるとともにロータシャフトの一端側内周に結合される出力シャフトと、出力シャフトの一端側の回転角を検出する回転角検出手段と、出力シャフトの他端側の回転角を検出する回転角検出手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の緩衝器は、螺子ナットと、螺子ナット内に回転自在に螺合される螺子軸と、螺子軸の回転が伝達されるモータとを備えた緩衝器において、モータは、中空なロータシャフトと、該ロータシャフト内に挿通されるとともにロータシャフトの一端側内周に結合される出力シャフトと、出力シャフトの一端側の回転角を検出する回転角検出手段と、出力シャフトの他端側の回転角を検出する回転角検出手段とを備え、出力シャフトが螺子軸に連結されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のモータによれば、出力シャフトの下端側の回転角と、ロータシャフトに連結される上端側の回転角とを検出することができるので、その上端側と下端側の回転角の差から実際にロータに作用しているトルクを検出することができる。
【0010】
したがって、上記検出されるトルクによりモータを制御することが可能となるので、より精緻にモータを制御することが可能となる。
【0011】
また、トーションバー等の捩れ角を検出してトルクを検出する場合には、モータと駆動される機器側のシャフトとの間にトーションバーを介装して、このトーションバーの両端に回転角センサを取付けることが通常であり、そうすると、モータと該機器との間にトーションバーを介在する必要があるので、機器全体が大型化する弊害があるが、本発明におけるモータにあっては、ロータシャフト内に出力シャフトが配置されているので、モータの全長を長くすることなしにモータ内でトルク検出が完結するから、本発明のモータが適用される機器全体を小形化でき、上記弊害を解消することが可能となる。
【0012】
さらに、本発明の緩衝器にあっては、緩衝器の全長を従来の緩衝器に比較して少なくともトーションバーの長さ分短縮することができ、その分、緩衝器のストロークの確保が容易となるとともに、車両への搭載性が向上する。
【0013】
さらに、従来の緩衝器ではトルクを検出することができなかったが、本発明の緩衝器においては、トルクを検出することができ、このトルクに基づいてモータの出力する回転トルクを制御することがき、これにより車両における乗り心地を向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1は、本発明の一実施の形態における緩衝器の縦断面図である。図2は、カップリングの分解斜視図である。図3は、他の実施の形態における緩衝器におけるモータの縦断面図である。
【0015】
図1に示すように、一実施の形態における緩衝器D1は、基本的には、螺子ナットたるボール螺子ナット11と、ボール螺子ナット11内に回転自在に螺合される螺子軸12と、螺子軸12の回転が伝達されるモータM1とで構成されている。
【0016】
以下、詳細に説明すると、モータM1は、図1に示すように、ケース2と、上記ロータ1と、ステータ5とで構成され、ロータ1は、中空なロータシャフト3と、ロータシャフト3の外周に取付けられた磁石4と、ロータシャフト3内に挿通される出力シャフトたるトーションバーTとで構成され、ケース2にボールベアリング8,9を介して回転自在に支持されている。
【0017】
ケース2は、開口部に鍔を備えた有底筒状のケース本体2aと、開口部を閉じる内蓋2bと、内蓋2bの下端側に結合される開口部に鍔を備えた有底筒状の外蓋2cとで構成され、上記内蓋2bの下端面と上記外蓋2cの鍔で車両の車体Bを挟持するようになっており、ケース本体2a、内蓋2b、車体Bおよび外蓋2cを貫通する図示しないボルトを使用してモータM1を車体B内側に強固に固定してある。
【0018】
また、上記内蓋2bおよび外蓋2cには、それぞれ、その軸心部を貫く孔が設けられており、ロータシャフト3およびトーションバーTの挿入が可能とされている。
【0019】
なお、モータM1の車体Bへの固定方法は、ボルトとナットによる以外にも溶接その他の固定方法を採用してよいことは無論であるが、メンテナンスを念頭に置けば、モータM1を車体Bへ強固に固定することができるとともに取外し可能である固定方法を採用することが好ましい。
【0020】
他方、ステータ5は、ケース2の内周であって上記磁石4と対向するように取付けた電機子鉄心たるコア6と、コア6に巻回した巻線7とで構成され、このモータM1は、いわゆるブラシレスモータとして構成されている。
【0021】
なお、磁石4は、環状に成形されており、N極とS極が円周に沿って交互に現れる分割磁極パターンを有しているが、複数の磁石を接着等して環状となるように形成してもよい。
【0022】
また、ロータシャフト3は、略有底筒状に形成されて内部が中空とされ、その図1中上端内側には、出力シャフトたるトーションバーTの上端が嵌着されているとともに、その図1中上端には、センシング用磁石61が取付けられる軸62が設けられている。
【0023】
このとき、出力シャフトたるトーションバーTの外周がロータシャフト3の内周に当接することがないように、すなわち、トーションバーTの捩れをロータシャフト3が干渉しないように、ロータシャフト3の内径は、トーションバーTの外径より大きく設定されている。
【0024】
そして、ロータシャフト3は、ケース本体2a内に外輪側が固定されたボールベアリング8および内蓋2b内周側に外輪側が固定されたボールベアリング9のそれぞれの内輪に挿入されてケース2に回転自在に支持されている。
【0025】
さらに、ケース本体2aの図1中上部内側には、上記ロータシャフト3の軸62の外周に取付けられたセンシング用磁石61に対向させてホール素子やMR素子等を備えた磁気センサ63が設けられており、これによりロータシャフト3ひいてはロータシャフト3の内側に固定されたトーションバーTの上端側の回転角を検出することができるようになっている。
【0026】
したがって、上記したセンシング用磁石61および磁気センサ62が出力シャフトたるトーションバーTの一端側の回転角を検出する回転角検出手段K1となる。
【0027】
転じて、トーションバーTの他端側たる図1中下端外周には、センシング用磁石64が固定されて取付けられており、このセンシング用磁石64に対向するように磁気センサ65が外蓋2c内に設けられており、また、トーションバーTの下端側側部は、外蓋2c内周に外輪側が固定されたボールベアリング10の内輪に嵌挿され、ロータシャフト3同様にケース2に回転自在に支持されている。
【0028】
そして、上記センシング用磁石64および磁気センサ65によりトーションバーTの他端側たる図1中下端側の回転角を検出することができるようになっており、上記したセンシング用磁石64および磁気センサ65が出力シャフトたるトーションバーTの他端側の回転角を検出する回転角検出手段K2となる。
【0029】
なお、上述したところでは、各回転角検出手段を、センシング用磁石62,64と磁気センサ63,65としているが、これをセンシング用磁石に換えて、ロータコイルもしくはレゾルバコアとし、磁気センサをステータコイルとしたレゾルバとしてもよく、また、光学式等のロータリエンコーダを使用してトーションバーTの上下端の回転角を検出するとしてもよい。
【0030】
また、上記したところでは、上下端側でそれぞれの回転角に差が出やすいように出力シャフトをトーションバーTとしているが、単に棒状の出力シャフトを使用することも可能である。ただし、出力シャフトの捩り剛性の高い場合には、各回転各検出手段には、分解能が高いものを使用することが好ましい。
【0031】
さらに、ロータシャフト3は、筒状とされてもよく、筒状とされる場合には、出力シャフトの上端側外周に固定できるとともに、さらに、出力シャフトの捩れを規制しないように出力シャフトの外径よりロータシャフト3の内径を大きく設定すればよい。
【0032】
そして、モータM1は、ロータ1に作用する回転トルクを制御可能なようにケース本体2aの上端側部に設けたグロメットG内を通してケース2内に導入される電線(図示せず)を介して、図示しない制御装置およびに外部電源に接続されており、所望の減衰力を得られるよう調整されるとともに、モータM1を積極的に駆動してこの緩衝器D1を緩衝器のみならずアクチュエータとして機能させるようにしてある。
【0033】
なお、本実施の形態においてはモータM1をブラシレスモータとしているが、電磁力発生源として使用可能であれば、様々なモータ、たとえばブラシ付直流モータや交流モータ、誘導モータ等も使用可能である。
【0034】
また、本実施の形態においては、モータM1の直径を大きくして、熱容量を大きくしてあるので、磁石4の熱減磁およびモータM1の熱損を防止されるとともに、車体B内側にモータM1を設けても邪魔にならないように長さを短くしてある。
【0035】
つづいて、本緩衝器においては、緩衝器D1の伸縮運動を回転運動に変換するために、螺子軸12と、この螺子軸12に回転自在に螺合される螺子ナットたるボール螺子ナット11を用いている。
【0036】
そして、螺子軸12は、ボールベアリング23,24を介して、内筒20に回転自在に支持されており、このボールベアリング23,24は、内筒20の図1中上端内に嵌着のキャップ体21に保持されており、さらに、キャップ体21は、外周側に鍔部22が設けられ、この鍔部22は、底部に孔が設けられるとともに開口部に鍔を備えたカップ状の連結部材25にボルト(付示せず)で締結されている。
【0037】
なお、螺子軸12の上端側には、段部12aが設けられ、この段部12aとナット60とでボールベアリング23,24を挟持しており、内筒20に対して螺子軸12の軸ぶれが防止されている。
【0038】
さらに、連結部材25の図1中上端内周には、上記した外蓋2cが嵌合され、内筒20を車体Bで支持できるようになっており、モータM1を車体Bに締結する際に使用する図示しないボルトが連結部材25の鍔を貫通するようにしておいて、モータM1と連結部材25とを該図示しないボルトで車体Bに締結するとしてもよい。
【0039】
なお、上記連結部材25の鍔と上記外蓋2cとの間に防振ゴム等の弾性体を介装させてもよく、この弾性体を介装する場合には、緩衝器D1の振動を該弾性体で吸収できるので車両における乗り心地を向上させることができる。
【0040】
そして、螺子軸12の図1中上端は、カップリングたるフレキシブルカップリング30が連結され、このフレキシブルカップリング30の他端たる図1中上端には、モータM1のトーションバーTの図1中下端が挿入され連結されて、螺子軸10の回転運動をこのフレキシブルカップリング30を介してモータM1のロータ1に伝達可能とされており、さらに、このフレキシブルカップリング30は、上記連結部材25内に収容されている。
【0041】
このフレキシブルカップリング30は、図2に示すように、上下一対の連繋体31,32と連繋体31,32との間に介在させた弾性体33とを備えてなり、一方の連繋体31は、筒状本体と筒状本体に起立する一対の横断面扇型の突起部を備え、他方の連繋体32も同様の形状とされ、この連携体31,32を、一方の連携体の突起部が他方の連携体の突起部間に入り込むようにして向かい合わせにしてあり、一方の突起部と他方の突起部との間の各々に弾性体33を溶着等により介在させてある。
【0042】
したがって、このフレキシブルカップリング30にあっては、トーションバーTに対し螺子軸12の捩れが許容され、すなわち、トーションバーTと螺子軸12とを連結した状態からトーションバーTに対し螺子軸12が周方向に回転することが許容されており、上記弾性体33の介装により螺子軸12の大きな角加速度の回転運動がダイレクトにトーションバーTに伝達されることが防止されている。
【0043】
なお、フレキシブルカップリング30としては、図示したもの以外に、ベローズ型や、板バネを介装したものなど、種々のものを使用可能であり、フレキシブルカップリング30が、偏心をも許容する場合には、緩衝器D1の組み付けが容易となる。
【0044】
ちなみに、この連結部材25によりフレキシブルカップリング30に車両走行中の飛び石や雨水等が直接当たることが回避されている点でカップ状の連結部材25を設ける利点がある。
【0045】
転じて、螺子軸12に螺合されている螺子ナットたるボール螺子ナット11は、内筒20より小径の連携筒40の図1中上端に回動不能に連結されており、この連携筒40は、詳しくは図示しないが、その下端で車軸側取付部Eを介して外筒41に結合され、また、この外筒41内には、内筒20が軸受35,36を介して摺動自在に挿入されている。
【0046】
すなわち、ボール螺子ナット11は、連携筒40および車軸側取付部Eを介して車両の車軸側に連結可能とされており、ボール螺子ナット11が螺子軸12に対し図1中上下方向の直線運動を呈すると、ボール螺子ナット11は、車軸側に固定される連携筒40により回転運動が規制されているので、螺子軸12は強制的に回転駆動され、逆に、モータM1を駆動して螺子軸12を回転させると、ボール螺子ナット11の回転が規制されているので、これによりボール螺子ナット11を上下方向に移動せしめることができる。
【0047】
なお、外筒41と内筒20との間には軸受35,36が設けられ、外筒41に対する内筒20の軸ぶれが防止され、結果的に、ボール螺子ナット11に対する螺子軸12の軸ぶれが防止され、これにより、ボール螺子ナット11の一部のボール(図示せず)に集中して荷重がかかることを防止でき、上記ボールもしくは螺子軸12の螺子溝が劣化する事態を避けることが可能である。
【0048】
また、上記ボールもしくは螺子軸12の螺子溝の劣化を防止できるので、螺子軸12のボール螺子ナット11に対する回転および緩衝器D1の伸縮方向への移動の各動作の円滑さを保つことができ、上記各動作の円滑を保てるので、緩衝器D1としての機能も損なわれず、ひいては、緩衝器D1の劣化を防止できる。
【0049】
さらに、上記螺子軸12とボール螺子ナット11は、内筒20および外筒41内に収容されているので、外部からの飛び石等の干渉を受けないので、この点でも緩衝器D1の劣化等を防止できる。
【0050】
さらに、外筒41の図1中上端には、上端に鍔を備えた筒状のストッパ部材42が嵌着され、このストッパ部材42の内周側に配在の環状のダストシール43が内筒20の外周と外筒41との間をシールして、外筒41および内筒20内への埃や雨水等の侵入が防止されて、螺子軸12やボール螺子ナット11の品質劣化が防止されている。
【0051】
また、上記ストッパ部材42の上端は、この緩衝器D1が収縮して任意の長さまで収縮すると、内筒20の図1中上端外周側に設けた蛇腹筒状のバンプストッパ28と当接するようになっており、緩衝器D1の収縮時の衝撃を緩和できるようになっているとともに、また、螺子軸12の下端の車体側取付部Eへの衝突、すなわち、緩衝器D1のいわゆる底付きが防止され、緩衝器D1の最収縮時における車両における乗り心地が向上される。
【0052】
他方、緩衝器D1の最収縮時におけるボール螺子ナット11とキャップ体21との衝突の衝撃を緩和するため、内筒20内には、キャップ体21の下端に当接するクッションゴム29が設けられており、これにより、ボール螺子ナット11ひいては緩衝器D1の品質劣化が防止されるとともに、この点でも緩衝器D1の最収縮時における車両における乗り心地が向上される。
【0053】
さて、上述のように構成された緩衝器D1にあっては、路面から力を受けて車体と車軸とが直線相対運動すると、車軸側に連結されるボール螺子ナット11と車体B側に連結される螺子軸12とが直線相対運動を呈し、この相対運動が上記のように螺子軸12の回転運動に変換され、この螺子軸12の回転運動が出力シャフトたるトーションバーTを介してモータM1のロータ1に伝達される。
【0054】
そして、モータM1のロータ1が回転運動を呈すると、モータM1内の巻線7が磁石4の磁界を横切ることとなり、該巻線7に誘導起電力を発生させることよりモータM1にエネルギ回生させて電磁力を発生させ、モータMのロータ1に誘導起電力に起因する電磁力による回転トルクが作用し、上記回転トルクがロータ1の回転運動を抑制することとなる。
【0055】
このロータ1の回転運動を抑制する作用は、上記螺子軸12の回転運動を抑制することとなり、螺子軸12の回転運動が抑制されるのでボール螺子ナット11の直線運動を抑制するように働き、緩衝器D1は、上記電磁力によって、この場合減衰力として働く制御力を発生し、振動エネルギを吸収緩和する。
【0056】
このとき、積極的に巻線7に外部電源から電流供給する場合には、ロータ1に作用する回転トルクを調節することで緩衝器D1の伸縮を自由に制御、すなわち、緩衝器D1の制御力を発生可能な範囲で自由に制御することが可能であるので、緩衝器D1の減衰特性を可変としたり、緩衝器D1をアクチュエータとして機能させたりすることも可能であり、また、上述のエネルギ回生による減衰力にあわせて緩衝器D1をアクチュエータとして機能させて適切な制御を行う場合には、緩衝器D1をアクティブサスペンションとしても機能させることも可能である。
【0057】
なお、上述のように積極的にアクチュエータとして機能させる必要が無い場合、すなわち、減衰力を発生させるだけであれば、モータM1を外部電源に接続する必要はなく、モータM1のロータ1が強制的に回転させられるときに巻線7に生じる誘導起電力により、すなわち、エネルギ回生のみにより発生する電磁力に起因する回転トルクで螺子軸12とボール螺子ナット11との直線相対運動を抑制するとしてもよいことは勿論である。
【0058】
そして、この緩衝器D1におけるモータM1にあっては、出力シャフトたるトーションバーTの下端側の回転角と、ロータシャフト3に連結される上端側の回転角とを検出することができるので、その上端側と下端側の回転角の差から実際にロータ1に作用しているトルクを検出することができる。
【0059】
したがって、上記検出されるトルクによりモータM1を制御することが可能となるので、より精緻にモータM1を制御することが可能となる。
【0060】
また、トーションバー等の捩れ角を検出してトルクを検出する場合には、モータと駆動される機器側のシャフトとの間にトーションバーを介装して、このトーションバーの両端に回転角センサを取付けることが通常であり、そうすると、モータと該機器との間にトーションバーを介在する必要があるので、機器全体が大型化する弊害があるが、本実施の形態におけるモータM1にあっては、ロータシャフト3内に出力シャフトたるトーションバーTが配置されているので、モータM1の全長を長くすることなしにモータM1内でトルク検出が完結するから、モータM1が適用される機器全体を小形化でき、上記弊害を解消することが可能となる。
【0061】
そして、特に機器が緩衝器D1である本実施の形態においては、緩衝器D1の全長を従来の緩衝器に比較して少なくともトーションバーの長さ分短縮することができ、その分、緩衝器D1のストロークの確保が容易となるとともに、車両への搭載性が向上する。
【0062】
さらに、従来の緩衝器ではトルクを検出することができなかったが、本実施の形態における緩衝器においては、トルクを検出することができ、このトルクに基づいてモータM1の出力する回転トルクを制御することがき、これにより車両における乗り心地を向上することが可能となる。
【0063】
また、本実施の形態の場合には、モータM1を特に車体Bの内側に固定しているから、緩衝器D1の相対運動部分の長さは、緩衝器D1全体の長さからモータM1の長さを除した長さとなり、この点でも緩衝器D1のストロークの確保が容易となる。つまり、モータM1が車体Bの下部、すなわち、車体B外方に取付ける場合に比較すると、モータM1の長さ分のストロークを長く取ることが可能となる。
【0064】
さらに、このモータM1にあっては、出力シャフトであるトーションバーTがバネとしても作用するので、モータM1の出力トルクが過大な場合にも、該トルクが機器の駆動シャフトに直接作用することが防止されるので、モータM1に接続される機器の負担を軽減できる。
【0065】
したがって、本実施の形態における緩衝器D1にあっては、モータM1から伝達される螺子軸12に作用するトルクの急激な変化を緩和でき、ボール螺子ナット11および螺子軸12にかかる負担を軽減でき、緩衝器D1の円滑な伸縮を保障することができる。
【0066】
また、この緩衝器D1あっては、モータM1は車体Bに固定されており、バネ上側連結質量にはモータM1の質量は含まれないこととなるから、バネ上側連結質量を軽量化することができる。
【0067】
すなわち、バネ上側連結質量を軽量にすることができるので、車両バネ下たる車軸側からの振動の入力を車両バネ上たる車体側へ伝達する力も上記軽量化によって小さくなり、車両における乗り心地を向上できることとなる。
【0068】
さらに、フレキシブルカップリング30がロータ1に対する螺子軸12の捩れを許容する、すなわち、ロータ1と螺子軸12とを連結した状態からロータ1に対し螺子軸12が周方向に回転することを許容するので、本構成の緩衝器D1特有の慣性モーメントによる不要な減衰力の発生を低減することができる。
【0069】
ここで、慣性モーメントによる減衰力について少し説明すると、緩衝器Dが発生する減衰力は、概ね、螺子軸12の慣性モーメントと、モータM1のロータ1の慣性モーメントと、ボール螺子ナット11の慣性モーメントと、モータM1の発生する電磁力の総和であり、上記各慣性モーメントは、モータM1のロータ1の角加速度が、上記緩衝器D1の伸縮運動の加速度に比例することから、緩衝器D1の伸縮運動の加速度に比例して大きくなるが、螺子軸12の慣性モーメントは比較的大きく減衰力に対する影響は無視できない。
【0070】
そして、この上記慣性モーメントは、上述の通り上記伸縮運動の加速度に比例することから、路面等から緩衝器D1に入力される緩衝器D1の軸方向の力に対し、緩衝器D1はモータM1の電磁力に依存しない減衰力を発生することになり、特に急激な軸方向の力が入力された場合には、より高い減衰力を発生することになり、車両搭乗者にゴツゴツ感を知覚させてしまうこととなる。
【0071】
したがって、常に電磁力に依存した減衰力に先んじて螺子軸12の慣性モーメントによる減衰力が発生することとなり、また、緩衝器Dの伸縮運動の加速度に依存する螺子軸12の慣性モーメントにより発生する減衰力は制御しづらいので、螺子軸12の慣性モーメントが小さければ小さいほど、螺子軸12の慣性モーメントの減衰力に対する影響を抑制することができることとなるが、上述のようにフレキシブルカップリング30が螺子軸12の捩れを許容するから、フレキシブルカップリング30で螺子軸12の慣性モーメントによる減衰力を緩和することができ、当該緩衝器D1の発生減衰力の制御性が向上するとともに、当該緩衝器D1が車両に適用される場合には、車両における乗り心地を向上することが可能となる。
【0072】
なお、モータM1のトーションバーTがバネとしても作用するので、上記の慣性モーメントによる減衰力の緩和は、このトーションバーTの部分でも行われ、フレキシブルカップリング30を使用しなくとも上記慣性モーメントによる減衰力の緩和が可能であり、反対に、出力シャフトに捩り剛性が比較的高い物を使用しても、上記出力シャフトに対して螺子軸12の位置ずれを許容するカップリングであるフレキシブルカップリング30により上述のように慣性モーメントによる減衰力の緩和が可能である。
【0073】
ただし、トーションバーTだけでなく、出力シャフトに対して螺子軸12の位置ずれを許容するカップリングであるフレキシブルカップリング30をも使用することによって、慣性モーメントによる減衰力の緩和をより一層効果的に行えるので、その点で出力シャフトに対して螺子軸12の位置ずれを許容するカップリングを設ける利点がある。
【0074】
また、モータM1を車体Bの内側に配置することで、モータM1の各電極から延設されるであろう電線(図示せず)を車体B内側で取り回すことが可能であり、当該電線を外方の制御装置、制御回路に接続することも容易となり、当該電線は車体B内に収納されることとなるので、電線の劣化機会も減ずることが可能となる。
【0075】
ちなみに、本実施の形態においては、モータM1を車体B内側に固定しているが、モータM1を車体B外側に固定しても、緩衝器の全長を短くすることができるという効果は失われない。
【0076】
つづいて、他の実施の形態における緩衝器D2について説明する。なお、上述の一実施の形態と同じ部材についてはその説明が重複するので、同様の符号を付するのみとして、その詳しい説明を省略することとする。
【0077】
この他の実施の形態における緩衝器D2にあって一実施の形態と異なる部分は、図3に示すように、モータM2の出力シャフトたるトーションバーTの中間部外周を弾性体たる筒状のゴム70で覆った点である。
【0078】
このゴム70は、その外周側を、ロータシャフト3の内周に当接させてあり、したがって、トーションバーTが捩じり方向の振動を上記ゴム70で減衰することができる。
【0079】
すなわち、ロータシャフト3に対してトーションバーTが捩れると、トーションバーTの外周面と弾性体たるゴム70の内周側面との間に摩擦を生じて、トーションバーTの捩れ方向の振動エネルギが熱エネルギ等に変換されトーションバーTの捩れ方向の振動は減衰されることとなる。
【0080】
また、上記ゴム70の外周表面は、ロータシャフト3の内周面に当接しているので、ここでも、ロータシャフト3の内周面と弾性体たるゴム70の外周側面との間に摩擦を生じて、この点でもトーションバーTの捩れ方向の振動エネルギが熱エネルギ等に変換されトーションバーTの捩れ方向の振動は減衰されることとなる。
【0081】
なお、弾性体たるゴム70の外周面がロータシャフト3の内周面に当接していなくとも、トーションバーTの捩れ方向の振動を減衰可能であるが、当接させているほうが、振動の減衰の観点からはより一層効果的となる。
【0082】
したがって、他の実施の形態においては、一端出力シャフトたるトーションバーTが捩られた後に、引き続きそのバネ作用で、短時間で上記捩れ方向の振動を減衰することが可能であるから、このモータM2が接続される機器を安定的に駆動することが可能である。
【0083】
すなわち、このモータM2が搭載される緩衝器D2にあっては、トーションバーTの捩れ方向の振動により発生減衰力にばらつきがでてしまったり、制御性が悪化したりするという弊害が除去され、車両における乗り心地を向上することができる。
【0084】
なお、上記した他の実施の形態においては、トーションバーTの外周を弾性体たるゴム70で覆うとしているが、トーションバーを中空に形成しておき、該中空のトーションバー内にゴムや粘土、砂、鋳物砂等の顆粒状の物体を充填しておくとしてもよい。この場合にも、トーションバーの捩れ方向の振動エネルギをトーションバーとゴム等の充填物との間の摩擦により減衰させることができるので、上記同様の作用効果を奏することとなる。
【0085】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一実施の形態における緩衝器の縦断面図である。
【図2】カップリングの分解斜視図である。
【図3】本発明の他の実施の形態における緩衝器のモータの縦断面図である。
【符号の説明】
【0087】
1 ロータ
2 ケース
2a ケース本体
2b 内蓋
2c 外蓋
3 ロータシャフト
4 磁石
5 ステータ
6 コア
7 巻線
8,9,10,23,24 ボールベアリング
11 螺子ナットたるボール螺子ナット
12 螺子軸
12a 段部
20 内筒
21 キャップ体
22 鍔部
25 連結部材
28 バンプストッパ
29 クッションゴム
30 カップリングたるフレキシブルカップリング
31,32 連繋体
33 弾性体
35,36 軸受
40 連携筒
41 外筒
42 ストッパ部材
43 ダストシール
60 ナット
61,64 センシング用磁石
62 軸
63,65 磁気センサ
70 弾性体たるゴム
B 車体
D1,D2 緩衝器
E 車軸側取付部
G グロメット
M1,M2 モータ
K1,K2 回転角検出手段
T 出力シャフトたるトーションバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空なロータシャフトと、該ロータシャフト内に挿通されるとともにロータシャフトの一端側内周に結合される出力シャフトと、出力シャフトの一端側の回転角を検出する回転角検出手段と、出力シャフトの他端側の回転角を検出する回転角検出手段とを備えたことを特徴とするモータ。
【請求項2】
出力シャフトがトーションバーであることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
出力シャフトの外周に弾性部材を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
弾性部材の外周がロータシャフトの内周に当接することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のモータ。
【請求項5】
螺子ナットと、螺子ナット内に回転自在に螺合される螺子軸と、螺子軸の回転が伝達されるモータとを備えた緩衝器において、モータは、中空なロータシャフトと、該ロータシャフト内に挿通されるとともにロータシャフトの一端側内周に結合される出力シャフトと、出力シャフトの一端側の回転角を検出する回転角検出手段と、出力シャフトの他端側の回転角を検出する回転角検出手段とを備え、出力シャフトが螺子軸に連結されてなることを特徴とする緩衝器。
【請求項6】
出力シャフトがトーションバーであることを特徴とする請求項5に記載の緩衝器。
【請求項7】
出力シャフトの外周に弾性部材を設けたことを特徴とする請求項5または6に記載の緩衝器。
【請求項8】
弾性部材の外周がロータシャフトの内周に当接することを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の緩衝器。
【請求項9】
出力シャフトと螺子軸とが出力シャフトに対して螺子軸の位置ずれを許容するカップリングを介して連結されることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−67649(P2006−67649A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244562(P2004−244562)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】