説明

背凭れの支持構造

【課題】背凭れの上部や、左右方向の中間部が後方に弾性撓曲し易くすることにより、快適な着座感が得られるようにするとともに、構造を簡素化でき、しかも組み付け作業性を向上しうるようにした背凭れの支持構造を提供する。
【解決手段】背凭れ6の両側部に、側面視において中央部が前方に突出する円弧状の屈曲部25を形成し、屈曲部25の後面に、それと補形をなすべく背凭れ支持体9の両側部に突設した側面視円弧状の凸部26を摺動自在に嵌合し、凸部26の前面に突設した連結軸27を、背凭れ6の屈曲部25に設けた貫通孔28に遊嵌し、屈曲部25より前方に突出した連結軸27の前端部に、貫通孔28より左右寸法が大きい板ナット29を設けることにより、背凭れ6を、前後方向に回動可能として背凭れ支持体9に装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子における背凭れの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の椅子には、背凭れの下部を、左右方向を向く軸線回りに回動可能として背凭れ支持体に枢支し、かつ背凭れの上部を、上下方向に摺動可能として背凭れ支持体の上端部に支持させたもの(例えば特許文献1および2参照)や、背凭れの下部を、左右方向を向く軸線回りに回動可能として背凭れ支持体に枢支し、かつ背凭れの中間両側部を、上下方向に摺動可能として背凭れ支持体の上端部に支持させたもの(例えば特許文献3参照)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4261001号公報
【特許文献2】特開2007−319288号公報
【特許文献3】特開2003−24175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1及び2に記載されているものは、背凭れの上下方向の中間部が、後方に弾性撓曲させられた際に、背凭れの上部がそれに追従しうるようにしたものであり、特許文献3に記載されているものは、背凭れの左右方向の中間部が、後方に弾性撓曲させられた際に、背凭れの両側部がそれに追従しうるようにしたものである。
【0005】
しかし、着座者が背凭れに凭れて、後方にリクライニングさせる場合、背凭れの上半部が後方に弾性撓曲し、その際に、背凭れの左右方向の中間部が後方に弾性撓曲すると、快適な着座感が得られることがわかってきている。
【0006】
本発明は、このような観点から、背凭れの上部や、左右方向の中間部が後方に弾性撓曲し易くすることにより、快適な着座感が得られるようにするとともに、構造を簡素化でき、しかも組み付け作業性を向上しうるようにした背凭れの支持構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)背凭れの両側部に、側面視において中央部が前方に突出する円弧状の屈曲部を形成し、前記屈曲部の後面に、それと補形をなすべく背凭れ支持体の両側部に突設した側面視円弧状の凸部を摺動自在に嵌合し、前記凸部の前面に突設した連結軸を、背凭れの屈曲部に設けた貫通孔に遊嵌し、前記屈曲部より前方に突出した連結軸の前端部に、前記貫通孔より左右寸法が大きい抜け止め手段を設けることにより、背凭れを、前後方向に回動可能として背凭れ支持体に装着する。
【0008】
このような構成とすると、背凭れは、左右の凸部を中心として前後方向に回動することができ、着座者が背凭れに凭れて、後方にリクライニングさせたとき、屈曲部より上方の部分が後方に弾性撓曲し易くなり、快適な着座感が得られる。
また、背凭れの両側部に設けた貫通孔を、背凭れ支持体の両側部に突設した連結軸に嵌合し、貫通孔から前方に突出した各連結軸の前端部に抜け止め手段を取り付けるだけで、背凭れを背凭れ支持体に簡単に取り付けることができるとともに、背凭れの両側部の支持部の構造を簡素化することができる。
【0009】
(2)背凭れの両側部に、中央部が前方に突出する球面状の屈曲部を形成し、前記屈曲部の後面に、それと補形をなすべく背凭れ支持体の両側部に突設した球面状の凸部を摺動自在に嵌合し、前記凸部の前面に突設した連結軸を、背凭れの屈曲部に設けた貫通孔に遊嵌し、前記屈曲部より前方に突出した連結軸の前端部に、上下および左右の寸法を前記貫通孔の前端開口部の寸法より大とした抜け止め手段を設けることにより、背凭れを、各連結軸に対して全方向に回動可能として背凭れ支持体に装着する。
【0010】
このような構成とすると、上記(1)項の構成から生じる効果と同様の効果を奏することができるだけでなく、背凭れの両側部が左右の連結軸に対して全方向に回動しうるので、着座者が背凭れに凭れて、後方にリクライニングさせ、背凭れの左右方向の中間部が後方に凹入するように弾性撓曲したとき、背凭れの両側部がそれに追従して、左右の連結軸に対して平面視においてハ字状をなすように回動したり、互いに内方に引き寄せられるように移動したりして、背凭れの左右方向の中間部の後方への弾性撓曲を許容したり助長したりすることができ、より快適な着座感が得られる。
【0011】
(3)上記(1)または(2)項において、背凭れの両側部前面に凹部を設け、この凹部の後壁に屈曲部を形成し、前記凹部に嵌合したカバーにより、抜け止め手段の前方を覆う。
【0012】
このような構成とすると、抜け止め手段が前方に露呈することがなくなるので、体裁がよく、また背凭れの前面にクッション材を設ける場合には、抜け止め手段がクッション材の後面に擦れてクッション材を傷めたり、抜け止め手段がクッション材を介して着座者に当り、着座者に不快感を与えたりするのを防止することができる。
【0013】
(4)上記(3)項において、カバーに、抜け止め手段の外周縁に圧接する弾性舌片を設ける。
【0014】
このような構成とすると、連結軸を背凭れの貫通孔に遊嵌していることによる背凭れのがたつきを防止することができる。
【0015】
(5)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、背凭れの下端部を、上下方向に移動可能、かつ前後方向に移動不能として、背凭れ支持体に係合させる。
【0016】
このような構成とすると、着座者が背凭れに凭れて、後方にリクライニングさせ、背凭れの上部を、左右の凸部を中心として後方に回動および弾性撓曲させたとき、背凭れの下端部が前方に回動しようとするのを抑制し、上下方向に移動することのみを許容することによって、背凭れの下端部が前方に移動して、着座者の腰部を圧迫するのを防止することができるとともに、背凭れが後方へ弾性撓曲するのを助長し、着座者に快適な着座感を与えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、背凭れの中間部から上方の部分や、左右方向の中間部が後方に弾性撓曲し易くすることにより、快適な着座感が得られるようにするとともに、構造を簡素化でき、しかも組み付け作業性を向上しうるようにした背凭れの支持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態を備える椅子の側面図である。
【図2】同じく、背面図である。
【図3】支基と背凭れ支持体とを斜め前方より見た分解斜視図である。
【図4】背凭れを斜め後方より見た分解斜視図である。
【図5】連結部材に設けたピンの中心軸線を含む水平面で切断した横断平面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う縦断側面図である。
【図7】連結軸の中心軸線を含む垂直面で切断した拡大縦断側面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿う横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
図1および図2に示すように、この椅子は、先端部にキャスタ1が設けられた放射状をなす5本の脚杆2を有する脚体3を備えている。脚体3の中央には、ガススプリング(図示略)を備える伸縮式の脚柱4が立設されており、脚柱4の上端には、支基5の後部が固着されている。
【0020】
支基5は、上面が開口するほぼ中空箱状をなし、上面の開口部は、着脱可能なカバー5a(図3参照)により覆われている。
【0021】
支基5の内部には、背凭れ6を起立する方向、すなわち前方に向かって付勢する付勢手段や、支基5によって支持された座7を前方に向かって付勢する付勢手段(いずれも図示略)等が設けられているが、それらについては、本発明に直接関係しないので、図示および詳細な説明は省略する。
【0022】
背凭れ6は、適度の弾性を有する合成樹脂製の背板6aの前後両面を、クッション体6bを介して表皮材6cで被包したものよりなっている(図5〜図8参照)。
【0023】
支基5の前後方向の中間部には、左右方向を向く八角柱等の非円形断面の枢軸8が、その中心軸線回りに回動可能として、また両端部が支基5の両側面より外側方に突出するように貫通して枢支されている(図3参照)。
【0024】
支基5の両側壁より左右に突出する枢軸8の両端部には、背凭れ6を支持する背凭れ支持体9における前方に向かって二股状をなす前端両側部の内面に設けた軸孔10が嵌合され、枢軸8は、背凭れ支持体9と一体となって、支基5に対して回動するようになっている。
軸孔10は、枢軸8の端部と補形をなす非円形孔である。
【0025】
枢軸8は、支基5内に設けた、例えば、ゴムトーションスプリングや、ねじりコイルばね等よりなる付勢手段(図示略)により、背凭れ6および背凭れ支持体9が起立する方向、すなわち図1における反時計回りに付勢されている。
【0026】
図3に示すように、背凭れ支持体9は、左右1対の背凭れ支持杆11、12の中間部を互いに内方に向かって近接するように屈曲した屈曲部11a、12a同士を、互いに突き合わせて、着脱可能として結合し、屈曲部11a、12aから下方の部分を前方に向かって屈曲し、その前下方に向かって左右に拡開する前向部11b、11bの前端部内面に上記軸孔10、10を設け、両軸孔10、10を支基5の両側壁より左右に突出する枢軸8の両端部に嵌合することにより、両前向部11b、12bが、支基5を左右から挟むようにして支基5に装着されている。
【0027】
背凭れ支持体9における左右の背凭れ支持杆11、12の屈曲部11a、12aより上方に向かって左右に拡開するように延出する上向部11c、12cの上端部により、背凭れ6における下端部より上方の両側部を、後述するような構造をもって支持している。
【0028】
左右の背凭れ支持杆11、12における屈曲部11a、12aの対向端面の一方(屈曲部11a)の上下部と中央部とには、上下1対の凸部13、14と、それらの間の凹部15とが形成され、また他方の対向端面の上下部とその間とには、上記各凸部13、14と凹部15とに補形をなす上下1対の凹部16、17と凸部18とが設けられている。
各凸部13、14、18は、先端に向かって上下幅が漸次小となる横向台形状とし、各凹部16、17、15は、それに補形をなすように、先端に向かって上下に拡開する形状とするのが好ましい。
【0029】
また、左右の屈曲部11a、12aの前面における対向面より若干外側方に寄った部分には、上下方向を向く左右1対のリブ状の前向き突片19、19が設けられており、両前向き突片19、19の外側面には、平面視において前方に向かって内方に傾斜する傾斜面19a、19aが形成されている。
【0030】
左右の背凭れ支持杆11、12は、互いに対向する凸部13、14と凹部16、17、および凹部15と凸部18を互いに嵌合させて、屈曲部11a、12aの対向端面同士を密接させた状態で、その前面から、連結部材20を、締着手段である4個の小ねじ21をもって、左右の屈曲部11a、12aに締着することにより、互いに強固に結合されている。
【0031】
図3〜図5に示すように、連結部材20は、正面形がほぼ長方形の基部20aの後面に、内側面が後方に向かって拡開する傾斜面20b、20bをなす左右1対の側片20c、20cと、中央の後向突部20dとが突設され、かつ基部20aの両側面に、外側方に向かって突出するピン20eを突設したものよりなっている。
【0032】
なお、図示の例では、基部20aの前面に、その左右幅より長いピン20eを横向きとして一体的に固着したような形状としてあるが、基部20aの両側面よ外側方に突出するものであれば、どのようなものでもよい。
また、ピン20eの断面形状は、この例では上下方向に長い楕円形としてあるが、上下方向に長い長円形としたり、または真円としたりすることもできる。
【0033】
図2および図3に示すように、互いに結合した左右の背凭れ支持杆11、12における屈曲部11a、12aの後面を中心として、背凭れ支持体9の後面の大部分は、後面視ほぼX字状とした軟質合成樹脂製のカバー22により覆われている。
【0034】
背凭れ支持体9は、上記のような構成としてあるので、左右の背凭れ支持杆11、12の前端部で、支基5を左右から挟むようにして、両背凭れ支持杆11、12の屈曲部11a、12a同士を、互いに突き合わせて結合することにより、両背凭れ支持杆11、12の支基5への装着と、相互の結合とを同時に簡単に行うことができ、組付作業性が向上するとともに、背凭れ支持杆11、12における応力が集中する屈曲部11a、12a同士を結合するので、その部分の剛性が高まり、背凭れ6を強力に支持することができる。
【0035】
したがって、左右方向を向く枢軸8を、その両端部が支基5の外側面より突出するようにして支基5に装着しておき、その両側方から、左右の背凭れ支持杆11、12の前端部を、枢軸8の両端部に軸孔10が嵌合するようにして、簡単に装着することができ、従来のように、枢軸8を、左右の背凭れ支持杆11、12の前端部と、その間に配設した支基5とを左右方向に貫通するように、側方から挿通させる必要がない。
また、構造が簡単で、安価に製造することができる。
【0036】
さらに、各凸部13、14、18を、対応する各凹部16、17、15に嵌合し、かつ左右の側片20c、20cの傾斜面20b、20bを、左右の背凭れ支持杆11、12における屈曲部11a、12aの前面に設けた前向き突片19、19の傾斜面19a、19aに当接させて、連結部材20の基部20aを、締着手段である小ねじ21をもって、屈曲部11a、12aの前面に締め付けることにより、傾斜面20b、20bと傾斜面19a、19aとが互いに摺動して、左右の屈曲部11a、12a同士が互いに引き寄せられるとともに、各凸部13、14、18と各凹部16、17、15との嵌合により、屈曲部11a、12a同士が上下方向に位置決めされ、屈曲部11a、12a同士は、互いに確実かつ強固に結合される。それによって、左右の背凭れ支持杆11、12のいずれか一方のみに負荷が集中するのを防止することができる。
【0037】
左右の背凭れ支持杆11、12における屈曲部11a、12a同士を互いに結合した後、それらの後面にカバー22を装着することにより、屈曲部11a、12aの接合部分は後方に露呈することはなく、体裁がよい。
また、連結部材20は、後方を背凭れ支持杆11、12における屈曲部11a、12aやカバー22によって覆われ、また前方を、後述するように背凭れ6の下部によって覆われ、前後方向に露呈することがなく、体裁がよい。
【0038】
図4〜図6に示すように、背凭れ6の下端部における左右方向の中間部の後面には、係止部材23における左右方向に長い長方形の基片23aが、左右1対の小ねじ24をもって固着されている。
【0039】
係止部材23は、上記基片23aと、この基片23aの下端部前面より前方に突出し、背凭れ6の下縁に係合するようにした前向き突片23bと、基片23aの両側部より後方に側面視下向鉤形に突出し、連結部材20におけるピン20eの両側部に上方より係合しうるようにした左右1対の係止片23c、23cと、この係止片23c、23cに係合したピン20eの両外側面を覆う左右1対の側片23d、23dとを備えている。
【0040】
この係止部材23における左右の係止片23c、23cを、ピン20eの両側部に上方より係合させることにより、背凭れ6の下端部は、前後方向に移動不能、かつ上下方向に摺動可能、さらに、ピン20eを中心に若干前後方向に回動可能として、背凭れ支持体9における屈曲部11a、12aに連係されている。
【0041】
なお、左右両側面にピン20eを突設した突部を、背凭れ6の下端部後面に設け、係止部材23を、その係止片23c、23cが側面視上向き鉤形をなすように上下反転させて、背凭れ支持体9の前面に、例えば連結部材20と一体として設けて実施することもできる。
【0042】
次に、図4、図7および図8を参照して、各背凭れ支持杆11、12の上端部と、背凭れ6の下端部より上方の左右両側部との連結構造について説明する。
背凭れ6の両側部における背板6aの上下方向のほぼ中央部には、側面視および平面視において中央部が前方に円弧状に突出する球面状の屈曲部25が形成されている。
【0043】
各屈曲部25の後面には、それと補形をなすべく背凭れ支持杆11、12の上端部前面に別体として突設した、側面視および平面視において中央部が前方に円弧状に突出する球面状の凸部26が摺動自在に嵌合されており、この凸部26の前面に突設した連結軸27を、背板6aの屈曲部25に設けた、前方に向かってテーパー孔状に拡開する貫通孔28に遊嵌し、屈曲部25より前方に突出した連結軸27における雄ねじ部27aの前端部に、貫通孔28の前端開口部より上下寸法および左右寸法が大きい抜け止め手段をなす板ナット29を螺合して固着することにより、背凭れ6の両側部は、屈曲部25および凸部26の前面の曲率中心を中心として、全方向に回動可能として背凭れ支持杆11、12の上端部に装着されている。
【0044】
背凭れ支持杆11、12の上端部前面と、板ナット29の後面との間には、スペーサスリーブ30が、凸部26と屈曲部25の貫通孔28とを貫通するようにして設けられ、このスペーサスリーブ30内に、背凭れ支持杆11、12の上端部に後方より貫通させたボルトとした連結軸27が挿通され、板ナット29の締め過ぎを防止しうるようにしてある。
【0045】
なお、屈曲部25を、球面状ではなく、側面視のみにおいて中央部が前方に突出する円弧状とするとともに、その後面に嵌合する凸部26も、側面視のみにおいて中央部が前方に突出する円弧状とし、さらに、貫通孔28を、上下方向に長い長孔とし、背凭れ6の両側部が、屈曲部25および凸部26の前面の曲率中心を通る左右方向を向く軸線回りのみに回動可能として背凭れ支持杆11、12の上端部に装着してもよい。
【0046】
背板6aの両側部前面には、方形の凹部31が設けられ、この凹部31の後壁に屈曲部25が形成され、この凹部31に前方より嵌合した蓋状のカバー32により、抜け止め手段である板ナット29の前方が覆われている。
このカバー32を設けたことにより、板ナット29が前方に露呈することがなくなるので、体裁がよく、また背板6aの前面に設けたクッション体6bの後面が、板ナット29等の抜け止め手段に擦れてクッション体6bを傷めたり、抜け止め手段がクッション体6bおよび表皮材6cを介して着座者に当り、着座者に不快感を与えたりするのを防止することができる。
【0047】
また、カバー32の裏面の下部より後上方に向かって延出する弾性舌片32aの後端部を、板ナット29の下縁に圧接させることにより、板ナット29を回り止めすることができるとともに、連結軸27が貫通孔28に遊嵌されていることによる背凭れ6のがたつきを防止することができる。さらに、弾性舌片32aにより、板ナット29を上向きに付勢し、その反力で背凭れ6を下向きに付勢していることにより、背もたれ6が常時は下限位置に位置しているが、着座者の背等により、背もたれ6の上部が後方に押動されたときは、弾性舌片32aが弾性変形して、背凭れ6の上部の後傾に適度の抵抗力を付与することができるようにしてある。
【0048】
なお、弾性舌片32aは、カバー32の裏面の上部より後上方に向かって延出し、板ナット29の上縁またはその他の外周縁に圧接するように設けたり、カバー32の裏面の上下部より後上方に向かって延出し、板ナット29を上下から挾圧把持するように設けたりしてもよい。
【0049】
背凭れ6を、背凭れ支持体9に対して上記のように支持させたことにより、背凭れ6は、左右の凸部26を中心として前後方向に回動することができ、着座者が背凭れ6に凭れて、後方にリクライニングさせたとき、屈曲部25より上方の部分が後方に弾性撓曲し易くなり、快適な着座感が得られる。
また、背板6aの両側部に設けた貫通孔28を、背凭れ支持杆11、12の両側部に突設した連結軸27に嵌合し、貫通孔28から前方に突出した各連結軸28の前端部に抜け止め手段を取り付けるだけで、背凭れ6を背凭れ支持体9に簡単に取り付けることができるとともに、背凭れ6の両側部の支持部の構造を簡素化することができる。
【0050】
さらに、背凭れ6の両側部が左右の連結軸27、27に対して全方向に回動しうるので、着座者が背凭れ6に凭れて、後方にリクライニングさせ、背凭れ6の左右方向の中間部が後方に凹入するように弾性撓曲したとき、背凭れ6の両側部がそれに追従して、左右の連結軸27、27に対して平面視においてハ字状をなすように回動したり、互いに内方に引き寄せられるように移動したりして、背凭れ6の左右方向の中間部の後方への弾性撓曲を許容したり助長したりすることができ、より快適な着座感が得られる。
【0051】
しかも、背凭れ6の下端部を、上記のような構成をもって、背凭れ支持体6における屈曲部11a、12aに連係させたことにより、着座者が背凭れ6に凭れて、後方にリクライニングさせ、背凭れ6の上部を、左右の凸部26、26を中心として後方に回動および弾性撓曲させたとき、背凭れ6の下端部が前方に回動しようとするのを抑制し、上下方向に移動することのみを許容することによって、背凭れ6の下端部が前方に移動して、着座者の腰部を圧迫するのを防止することができるとともに、背凭れ6が後方へ弾性撓曲するのを助長し、着座者に快適な着座感を与えることができる。
【0052】
また、係止部材23を、左右のピン20eに上下方向から係合させた後、背凭れ6の下端部より上方の左右両側部を、背凭れ支持体9の上部の両側部に、上記のようにして取り付けるだけで、背凭れ6を背凭れ支持体9に、簡単に、かつ安定よく組み付けることができる。
【0053】
さらに、左右の背凭れ支持杆11、12を結合する連結部材20に、ピン20e(または係止部材)を一体的に形成することができるので、部品点数を削減し、構造を簡素化することができ、安価に製造することができる。
【0054】
本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、幾多の変形した態様での実施が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 キャスタ
2 脚杆
3 脚体
4 脚柱
5 支基
5aカバー
6 背凭れ
6a背板
6bクッション体
6c表皮材
7 座
8 枢軸
9 背凭れ支持体
10 軸孔
11、12 背凭れ支持杆
11a、12a 屈曲部
11b、12b 前向部
11c、12c 上向部
13、14 凸部
15 凹部
16、17 凹部
18 凸部
19 前向き突片
19a 傾斜面
20 連結部材
20a基部
20b傾斜面
20c側片
20d後向突部
20eピン
21 小ねじ
22 カバー
23 係止部材
23a基片
23b前向き突片
23c係止片
23d側片
24 小ねじ
25 屈曲部
26 凸部
27 連結軸
27a雄ねじ部
28 貫通孔
29 板ナット
30 スペーサスリーブ
31 凹部
32 カバー
32a弾性舌片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背凭れの両側部に、側面視において中央部が前方に突出する円弧状の屈曲部を形成し、前記屈曲部の後面に、それと補形をなすべく背凭れ支持体の両側部に突設した側面視円弧状の凸部を摺動自在に嵌合し、前記凸部の前面に突設した連結軸を、背凭れの屈曲部に設けた貫通孔に遊嵌し、前記屈曲部より前方に突出した連結軸の前端部に、前記貫通孔より左右寸法が大きい抜け止め手段を設けることにより、背凭れを、前後方向に回動可能として背凭れ支持体に装着したことを特徴とする背凭れの支持構造。
【請求項2】
背凭れの両側部に、中央部が前方に突出する球面状の屈曲部を形成し、前記屈曲部の後面に、それと補形をなすべく背凭れ支持体の両側部に突設した球面状の凸部を摺動自在に嵌合し、前記凸部の前面に突設した連結軸を、背凭れの屈曲部に設けた貫通孔に遊嵌し、前記屈曲部より前方に突出した連結軸の前端部に、上下および左右の寸法を前記貫通孔の前端開口部の寸法より大とした抜け止め手段を設けることにより、背凭れを、各連結軸に対して全方向に回動可能として背凭れ支持体に装着したことを特徴とする背凭れの支持構造。
【請求項3】
背凭れの両側部前面に凹部を設け、この凹部の後壁に屈曲部を形成し、前記凹部に嵌合したカバーにより、抜け止め手段の前方を覆った請求項1または2記載の背凭れの支持構造。
【請求項4】
カバーに、抜け止め手段の外周縁に圧接する弾性舌片を設けた請求項3記載の背凭れの支持構造。
【請求項5】
背凭れの下端部を、上下方向に移動可能、かつ前後方向に移動不能として、背凭れ支持体に係合させた請求項1〜4のいずれかに記載の背凭れの支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−24752(P2011−24752A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172789(P2009−172789)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】