説明

脱穀機

【課題】ストローラックへ多量の穀粒が送出され、ストローラックから穀粒が飛散して、送塵口から排出されることを防ぐと共に、ストローラックから漏下した穀粒が二番スクリューを介して処理ロータに送出され、処理ロータに送出された穀粒が再びストローラックに漏下するという循環をコンバインの機内で繰り返すことを防ぐ。
【解決手段】クリンプ網15の後端部下方に穀粒量検出センサ34を設け、該穀粒量検出センサ34にて検出された検出結果に基づいて、送塵弁10a及びチャフシーブ18の動作を制御して、チャフシーブ18から漏下する穀粒量を増加させて、チャフシーブ18からストローラック19へ送出される穀粒の量を低減させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は穀稈から分離した穀粒を効率的に回収することができる脱穀機に関する。
【背景技術】
【0002】
圃場での収穫作業を行う場合には、穀稈の刈取り及び脱穀並びに穀粒の回収を行う脱穀機(コンバイン)を使用することが多い。コンバインは、クローラの走行中に刈刃にて穀稈を刈取り、刈取った穀稈を扱室へ搬送して脱穀する。そして扱室にて穀稈から分離した稈及び穀粒を、扱室の下方に配置してあるチャフシーブにて選別し、チャフシーブからグレンシーブに漏下させて、後方へ送りつつ穀粒の精選別を行い、穀粒をグレンシーブから漏下させる。漏下した穀粒は一番スクリューを介して穀粒タンクに回収される。穀粒と共にチャフシーブから漏下する細かな塵埃は、チャフシーブの下方に配置してある唐箕の起風作用によって、コンバインの後部に設けてある排塵口から排出される。また穀粒の一部も塵埃と共に排塵口から排出される。
【0003】
枝が付いた状態の穀粒、いわゆる穂切れ物はチャフシーブから漏下せず、後方のストローラックに送られ、ストローラックの透孔から漏下して、二番スクリューを介して扱室へ送られる(例えば特許文献1参照)。
【0004】
近年では穂切れ物の脱穀を効果的に行うべく、穂切れ物を脱穀するための処理ロータを備えるコンバインが提案されており、該コンバインは二番スクリューを介して処理ロータに穂切れ物を送出して脱穀を行い、穂切れ物から分離した穀粒をチャフシーブへ漏下させるようにしてある。
【特許文献1】特開昭61−234714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
処理ロータを備えるコンバインにあっては、チャフシーブへ大量の穀粒が漏下した場合に、穀粒がストローラックへ送出され、前記唐箕の起風作用によってストローラックから多量の穀粒が飛散し、前記排塵口から排出されるおそれがある。
【0006】
またチャフシーブへ大量の穀粒が漏下した場合に、チャフシーブからストローラックへ穀粒が送出され、ストローラックの透孔から多量の穀粒が漏下し、漏下した穀粒が二番スクリューを介して処理ロータに送出されることがある。処理ロータに送出された穀粒はチャフシーブに漏下して、再度ストローラックへ送出されるという循環を繰り返し、穀粒タンクに回収されないおそれがある。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、前記ストローラックへ送出される穀粒量を検出する検出手段を設けて、ストローラックへ送出される穀粒量が所定範囲内にあるか否かを判定し、判定結果に基づいてストローラックへ送出される穀粒量を調整する調整手段の動作を制御して、排塵口から穀粒が排出されることを未然に防ぎ、また穀粒の循環を回避して、穀粒を効率的に回収することができる脱穀機を提供することにある。
【0008】
また本発明の他の目的とするところは、ストローラックの隣に設けてあり、互いに対向する複数のシーブ板を前記調整手段として使用し、前記検出手段にて検出された穀粒量がストローラックへ送出される穀粒量として所定範囲外にある場合に、前記複数のシーブ板をそれぞれ枢支している複数の支軸を中心にして、複数のシーブ板を一方向に回動させてシーブ板の隙間を大きくし、シーブ板の隙間から多量の穀粒を漏下させて、シーブ板からストローラックへ送出される穀粒量を低減させて、穀粒を効率的に回収することができる脱穀機を提供することにある。
【0009】
また本発明の他の目的とするところは、扱室内に稈及び穀粒の送出量を調節する送塵弁を設けて、該送塵弁を前記調整手段として使用し、前記検出手段にて検出された穀粒量がストローラックへ送出される穀粒量として所定範囲外にある場合に、前記送塵弁の動作を制御して、前記複数のシーブ板の前部に穀粒を漏下させることによって、複数のシーブ板の前部に漏下した穀粒は複数のシーブ板上を後方へ移動している途中で、複数のシーブ板の間から漏下するので、複数のシーブ板の後側に配置してあるストローラックへ送出される穀粒量が低減し、穀粒を効率的に回収することができる脱穀機を提供することにある。
【0010】
また本発明の他の目的とするところは、前記送塵弁の制御を解除する場合に、送塵弁を設定された位置まで徐々に戻して、送塵弁に対して急激な負荷が作用することを防ぎ、送塵弁の破損を回避することができる脱穀機を提供することにある。
【0011】
また本発明の他の目的とするところは、前記所定範囲を変更する手段を設けて、穀稈の品種及び圃場状態等に応じて、ユーザが前記所定範囲を最適な範囲に変更することができる脱穀機を提供することにある。
【0012】
また本発明の他の目的とするところは、前記調整手段の作動が不可能である場合に、圃場を走行する走行部を強制的に減速させることによって、刈取られる穀稈の量が低減して、前記ストローラックへ送出される穀粒量が低減し、穀粒を効率的に回収することができる脱穀機を提供することにある。
【0013】
また本発明の他の目的とするところは、前記検出手段にて検出された穀粒量が前記所定範囲外にある場合に、前記検出手段にて検出された穀粒量が前記ストローラックへ送出される穀粒量として所定範囲外にあることを表示して、前記調整手段を自動制御することをユーザに報知することができる脱穀機を提供することにある。
【0014】
また本発明の他の目的とするところは、前記扱室と前記ストローラックとの間に前記検出手段を配置して、穀粒の通流経路において前記ストローラックよりも上流で穀粒量を検出し、検出された穀粒量に基づいて前記ストローラックへ送出される穀粒量を確実に求めることができる脱穀機を提供することにある。
【0015】
また本発明の他の目的とするところは、前記ストローラックから落下した落下物を搬送するための搬送装置の排出口に前記検出手段を配置し、ストローラックに送出されて落下した穀粒の量を検出結果に反映させて、前記ストローラックへ送出される穀粒量を精度良く求めることができる脱穀機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る脱穀機は、刈取られた穀稈を脱穀する扱室と、該扱室の下方に設けてあり、前記扱室から漏下した稈及び穀粒を選別するストローラックとを備える脱穀機において、前記ストローラックへ送出される穀粒量を検出する検出手段と、前記ストローラックへ送出される穀粒量を調整する調整手段と、前記検出手段にて検出された穀粒量が所定範囲内にあるか否かを判定する判定手段と、該判定手段での判定結果に基づいて、前記調整手段の動作を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、前記ストローラックへ送出される穀粒量を検出する検出手段を設けて、ストローラックへ送出される穀粒量が所定範囲内にあるか否かを判定し、判定結果に基づいてストローラックへ送出される穀粒量を調整する調整手段の動作を制御して、排塵口から穀粒が排出されることを未然に防ぎ、また穀粒の循環を回避する。
【0018】
本発明に係る脱穀機は、前記調整手段は、前記ストローラックの隣に横並びに設けてあり、互いに対向する複数のシーブ板を備え、上下方向及び前記複数のシーブ板の並び方向に略直交する方向を軸長方向としており、前記複数のシーブ板にそれぞれ枢着してある複数の支軸と、前記並び方向に沿って配置してあり、前記複数のシーブ板を枢軸を介して連結する連結杆と、該連結杆を前記並び方向に移動させるために前記連結杆へ動力を供給する第1駆動源とを備え、前記判定手段にて、前記検出手段にて検出された穀粒量が所定範囲外にあると判定された場合に、前記複数のシーブ板が各支軸を中心にして一方向に回動するように、前記第1駆動源を駆動させる手段を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明においては、ストローラックの隣に設けてあり、互いに対向する複数のシーブ板を前記調整手段として使用し、前記検出手段にて検出された穀粒量がストローラックへ送出される穀粒量として所定範囲外にある場合に、前記複数のシーブ板をそれぞれ枢支している複数の支軸を中心にして、複数のシーブ板を一方向に回動させてシーブ板の隙間を大きくし、シーブ板の隙間から多量の穀粒を漏下させて、シーブ板上を通過してストローラックへ送出される穀粒量を低減させる。
【0020】
本発明に係る脱穀機は、前記扱室には円筒形の扱胴が収容してあり、前記調整手段は、前記扱室内における前記扱胴の周囲に配置してあり、稈及び穀粒の送出量を調整する送塵弁を備え、該送塵弁は、前記扱胴の径方向を軸長方向とした送塵弁軸に枢支してあり、
前記送塵弁に動力を供給する第2駆動源を備え、前記制御手段は、前記判定手段にて、前記検出手段にて検出された穀粒量が所定範囲外にあると判定された場合に、前記送塵弁が前記送塵弁軸を中心にして一方向に回動するように、前記第2駆動源を駆動させる手段を備えることを特徴とする。
【0021】
本発明においては、扱室内に稈及び穀粒の送出量を調節する送塵弁を設けて、該送塵弁を前記調整手段として使用し、前記検出手段にて検出された穀粒量がストローラックへ送出される穀粒量として所定範囲外にある場合に、前記送塵弁の動作を制御して、前記複数のシーブ板の前部に穀粒を漏下させることによって、複数のシーブ板の前部に漏下した穀粒は複数のシーブ板上を後方へ移動している途中で、複数のシーブ板の間から漏下するので、複数のシーブ板の後側に配置してあるストローラックへ送出される穀粒量が低減する。
【0022】
本発明に係る脱穀機は、前記送塵弁軸周りの前記送塵弁の位置を検出する位置検出手段と、前記送塵弁軸周りの前記送塵弁の位置を設定する位置設定手段と、前記位置検出手段にて検出された前記送塵弁軸周りの前記送塵弁の位置が、前記位置設定手段にて設定された前記送塵弁軸周りの前記送塵弁の位置から偏倚しているか否かを判定する偏倚判定手段と、該偏倚判定手段にて、前記送塵弁軸周りの前記送塵弁の位置が前記位置設定手段にて設定された前記送塵弁軸周りの前記送塵弁の位置から偏倚していると判定された場合であって、前記検出手段にて所定範囲内の穀粒量を検出したときに、前記送塵弁を前記位置設定手段にて設定された前記送塵弁軸周りの位置まで段階的に移動させる手段とを備えることを特徴とする。
【0023】
本発明においては、前記送塵弁の制御を解除する場合に、送塵弁を設定された位置まで徐々に戻す。
【0024】
本発明に係る脱穀機は、前記所定範囲を変更する手段を備えることを特徴とする。
【0025】
本発明においては、穀稈の品種及び圃場状態等に応じて、前記所定範囲を変更する手段をユーザが操作する。
【0026】
本発明に係る脱穀機は、圃場を走行する走行部と、前記調整手段の作動の可否を判断する手段と、該手段にて前記調整手段の作動が不可能であると判断された場合に、前記走行部を強制的に減速させる手段とを備えることを特徴とする。
【0027】
本発明においては、前記調整手段の作動が不可能である場合に、圃場を走行する走行部を強制的に減速させて、刈取られる穀稈の量を低減させる。
【0028】
本発明に係る脱穀機は、前記判定手段にて、前記検出手段にて検出された穀粒量が所定範囲外にあると判定された場合に、前記検出手段にて検出された穀粒量が所定範囲外にあることを表示する手段を備えることを特徴とする。
【0029】
本発明においては、前記検出手段にて検出された穀粒量が所定範囲外にあると判定された場合に、前記ストローラックへ送出される穀粒量が許容範囲を超過していることをユーザに向けて表示する。
【0030】
本発明に係る脱穀機は、前記扱室と前記ストローラックとの間に前記検出手段を配置してあることを特徴とする。
【0031】
本発明においては、前記扱室と前記ストローラックとの間に前記検出手段を配置して、穀粒の通流経路において前記ストローラックよりも上流で穀粒量を検出する。
【0032】
本発明に係る脱穀機は、前記ストローラックから落下した落下物を搬送するための搬送装置を備え、前記扱室と前記ストローラックとの間に、前記搬送装置にて搬送された前記落下物を脱穀し排出口から穀粒を排出する処理装置を配置してあり、該処理装置の前記排出口に前記検出手段を配置してあることを特徴とする。
【0033】
本発明においては、前記搬送装置の排出口に前記検出手段を配置し、ストローラックに送出されて落下した穀粒の量を検出結果に反映させる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る脱穀機にあっては、前記ストローラックへ送出される穀粒量を検出する検出手段を設けて、ストローラックへ送出される穀粒量が所定範囲内にあるか否かを判定し、判定結果に基づいてストローラックへ送出される穀粒量を調整する調整手段の動作を制御して、排塵口から穀粒が排出されることを未然に防ぎ、また穀粒の循環を回避して、穀粒を効率的に回収することができる。
【0035】
本発明に係る脱穀機にあっては、ストローラックの隣に設けてあり、互いに対向する複数のシーブ板を前記調整手段として使用し、前記検出手段にて検出された穀粒量がストローラックへ送出される穀粒量として所定範囲外にある場合に、前記複数のシーブ板をそれぞれ枢支している複数の支軸を中心にして、複数のシーブ板を一方向に回動させてシーブ板の隙間を大きくし、シーブ板の隙間から多量の穀粒を漏下させて、シーブ板からストローラックへ送出される穀粒量を低減させて、穀粒を効率的に回収することができる。
【0036】
本発明に係る脱穀機にあっては、扱室内に稈及び穀粒の送出量を調節する送塵弁を設けて、該送塵弁を前記調整手段として使用し、前記検出手段にて検出された穀粒量がストローラックへ送出される穀粒量として所定範囲外にある場合に、前記送塵弁の動作を制御して、前記複数のシーブ板の前部に穀粒を漏下させることによって、複数のシーブ板の前部に漏下した穀粒は複数のシーブ板上を後方へ移動している途中で、複数のシーブ板の間から漏下するので、複数のシーブ板の後側に配置してあるストローラックへ送出される穀粒量が低減し、穀粒を効率的に回収することができる。
【0037】
本発明に係る脱穀機にあっては、前記送塵弁の制御を解除する場合に、送塵弁を設定された位置まで徐々に戻して、送塵弁に対して急激な負荷が作用することを防ぎ、送塵弁の破損を回避することができる。
【0038】
本発明に係る脱穀機にあっては、前記所定範囲を変更する手段を設けて、穀稈の品種及び圃場状態等に応じて、ユーザが前記所定範囲を最適な範囲に変更することができる。
【0039】
本発明に係る脱穀機にあっては、前記調整手段の作動が不可能である場合に、圃場を走行する走行部を強制的に減速させることによって、刈取られる穀稈の量が低減して、前記ストローラックへ送出される穀粒量が低減し、穀粒を効率的に回収することができる。
【0040】
本発明に係る脱穀機にあっては、前記検出手段にて検出された穀粒量が前記所定範囲外にある場合に、前記検出手段にて検出された穀粒量が前記ストローラックへ送出される穀粒量として所定範囲外にあることを表示して、前記調整手段を自動制御することをユーザに報知することができる。
【0041】
本発明に係る脱穀機にあっては、前記扱室と前記ストローラックとの間に前記検出手段を配置して、穀粒の通流経路において前記ストローラックよりも上流で穀粒量を検出し、検出された穀粒量に基づいて前記ストローラックへ送出される穀粒量を確実に求めることができる。
【0042】
本発明に係る脱穀機にあっては、前記ストローラックから落下した落下物を搬送するための搬送装置の排出口に前記検出手段を配置し、ストローラックに送出されて落下した穀粒の量を検出結果に反映させて、前記ストローラックへ送出される穀粒量を精度良く求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
(実施の形態1)
以下本発明を実施の形態1に係るコンバインを示す図面に基づいて詳述する。図1はコンバインの外観斜視図である。
図において1は走行クローラであり、該走行クローラ1の上側に脱穀装置2が設けてある。該脱穀装置2の前側に、刈取り穀稈と非刈取り穀稈とを区別する分草板3a、穀稈を刈取る刈刃3b、及び穀稈を引き起こす引起し装置3cを備える刈取部3が設けてある。前記脱穀装置2の左側には穀粒を収容する穀粒タンク4を設けてあり、前記脱穀装置2の右部には穀稈を搬送するフィードチェン5を設けてある。該フィードチェン5には穀稈を挟持する挟持部材6が対向している。前記フィードチェン5の始端部付近には縦運搬装置7を配設してある。また前記穀粒タンク4には、穀粒タンク4から穀粒を排出する筒状の排出オーガ4aを取り付けてあり、穀粒タンク4の前側にはキャビン8を設けてある。
【0044】
走行クローラ1の駆動によってコンバインの機体は走行し、機体の走行中に刈取部3に穀稈が取り込まれ、刈り取られる。刈り取られた穀稈は縦運搬装置7、フィードチェン5及び挟持部材6を介して脱穀装置2に搬送され、脱穀装置2内にて脱穀される。
【0045】
図2はコンバインの脱穀装置2の内部構成を略示する側面断面図である。
図2に示すように、脱穀装置2の上部前側に穀稈を脱穀するための扱室10が設けてある。該扱室10内に、前後方向を軸長方向とした円筒形の扱胴11が軸架してあり、該扱胴11は軸回りに回動可能となっている。扱胴11の周面には多数の扱歯12、12、・・・12を螺旋状に取り付けてある。前記扱胴11の下側に、前記扱歯12、12、・・・12と協働して稈を揉みほぐすクリンプ網15が配置してある。前記扱胴11はエンジン40(後述する図3参照)の駆動力によって回動し、穀稈を脱穀する。
【0046】
前記扱室10の上壁に四つの送塵弁10a、10a、10a、10aが前後方向に沿って並設してある。該送塵弁は扱室10の後部へ送出する稈及び穀粒の量を調節する。
【0047】
扱室10の後部には処理室13が連設してある。該処理室13内に、前後方向を軸長方向とした円筒形の処理胴13aが軸架してある。該処理胴13aは軸回りに回動可能となっている。エンジン40の駆動力によって処理胴13aは回動し、処理胴13aの周面に取り付けてある図示しない扱歯によって、扱室10から送出された稈及び穀粒から穀粒が分離される。
【0048】
前記クリンプ網15の下側には、穀粒及び稈の選別を行う揺動選別装置16を設けてある。該揺動選別装置16とクリンプ網15との間に、穀粒量を検出するための穀粒量検出センサ34が配してある。該穀粒量検出センサ34はクリンプ網15の後端部下側に位置している。穀粒量検出センサ34は圧電素子を有しており、クリンプ網15から漏下した穀粒が穀粒量検出センサ34に当接したときに、穀粒量検出センサ34の圧電素子から電圧信号が出力され、クリンプ網15から漏下した穀粒の量が検出されるようにしてある。穀粒量検出センサ34の検出結果を、クリンプ網15から漏下した穀粒の量とストローラック19へ送出される穀粒量との関係を示す関数に適用することでストローラック19へ送出される穀粒量を求めることができる。
【0049】
なお穀粒量検出センサ34は圧電素子を有するセンサに限るものではなく、発光素子及び受光素子を有する光センサを穀粒量検出センサ34として使用し、グレンシーブ20の後端から横溢し、発光素子及び受光素子の間を通過する穀粒量を検出しても良い。また発信器及び受信機を有する超音波センサを穀粒量検出センサ34として使用し、グレンシーブ20の後端から横溢し、発信器及び受信機の間を通過する穀粒量を検出しても良い。
【0050】
前記揺動選別装置16は、穀粒及び稈を均一化すると共に比重選別を行う揺動選別盤17と、該揺動選別盤17の後側に設けてあり、穀粒及び稈の粗選別を行うチャフシーブ18と、該チャフシーブ18の後側に設けてあり、稈に混入した穀粒を落下させるためのストローラック19とを備える。該ストローラック19は図示しない複数の透孔を有している。また前記揺動選別盤17の前部には揺動アーム21が連結してある。該揺動アーム21は前後に揺動するように構成されている。この揺動アーム21の揺動によって揺動選別装置16は揺動し、稈及び穀粒の選別が行われる。
【0051】
揺動選別装置16は、前記チャフシーブ18の前部下側に配置してあり、後部が前部よりも下に位置するように傾斜した傾斜板20aと、該傾斜板20aの後部に隣接しており、前記チャフシーブ18の後部下側に配置されたグレンシーブ20とを更に備える。
チャフシーブ18の前部から漏下した穀粒は、傾斜板20a上を滑落してグレンシーブ20に送られる。またチャフシーブ18の後部からグレンシーブ20に穀粒が漏下する。
【0052】
前記グレンシーブ20の下方に、前部が後部よりも下に位置するように傾斜した一番穀粒板22が設けてあり、該一番穀粒板22の前側に、穀粒を前記穀粒タンク4に送給する一番スクリュー23が設けてある。前記グレンシーブ20から一番穀粒板22に落下した穀粒は前記一番スクリュー23に向けて滑落する。滑落した穀粒は一番スクリュー23によって穀粒タンク4に搬送される。
【0053】
前記一番穀粒板22の後部に、後部が前部よりも下に位置するように傾斜した傾斜板24が連設してある。該傾斜板24の後端部に、前部が後部よりも下に位置するように傾斜した二番穀粒板25が連設してある。該二番穀粒板25と前記傾斜板24との連結部分の上側に稈及び穀粒を搬送する二番スクリュー26が設けてある。
前記ストローラック19の透孔から傾斜板24又は二番穀粒板25に落下した落下物は前記二番スクリュー26に向けて滑落する。滑落した落下物は、二番スクリュー26によって前記扱胴11の左側であって、前記揺動選別盤17の上方に設けてある処理ロータ14に搬送され、処理ロータ14にて脱穀処理される。
【0054】
前記一番スクリュー23よりも前方であって、前記揺動選別盤17よりも下方に、後方に向けて送風する唐箕27が設けてある。該唐箕27と前記一番スクリュー23との間に二つの整流板28、28を配設してある。
【0055】
前記二番穀粒板25の後端部に通路板36が連ねてある。該通路板36の上方には下部吸引カバー30が設けてある。該下部吸引カバー30及び通路板36の間は塵埃が排出される排気通路37になっている。
【0056】
下部吸引カバー30の上方に上部吸引カバー31が設けてある。該上部吸引カバー31及び下部吸引カバー30の間に、稈を吸引排出する軸流ファン32を配設してある。該軸流ファン32の後方には排塵口33を設けてある。
【0057】
前記唐箕27の動作によって発生した気流は、前記整流板28、28によって整流された後に、前記揺動選別装置16を通過して、前記排塵口33及び排気通路37に至る。
【0058】
前記上部吸引カバー31の上側であって、前記処理室13の下方に、前部が後部よりも下に位置するように傾斜した流下樋35が設けてある。前記処理室13の排出口13eから排出された排出物は流下樋35を滑落して前記ストローラック19に落下する。
【0059】
上述した走行クローラ1の駆動、刈取部3の刈取動作、扱胴11の回動、処理胴13aの回動、揺動選別装置16の揺動及び唐箕27の起風動作はエンジン40の駆動力によって行われる。図3はエンジン40の駆動力の伝達経路を略示する伝動機構図である。
【0060】
図3に示すように、エンジン40はHST(Hydro Static Transmission)41を介して走行ミッション42に連結してある。HST41は油圧ポンプ(図示せず)と、該油圧ポンプに供給される作動油の流量及び油圧ポンプの圧力を調整する機構(図示せず)と、該機構を制御する変速回路41aとを有している。変速回路41aは後述する制御部100(図8参照)からの入力信号に基づいて、前記機構を制御し、走行クローラ1の変速を行うようにしてある。
【0061】
走行ミッション42は、前記走行クローラ1に駆動力を伝達するギヤ(図示せず)を有している。走行ミッション42には、ホール素子を有する車速センサ43を設けてある。該車速センサ43は前記ギヤの回転数を検出して、ギヤの回転数に対応する機体の車速を示す信号を出力するようにしてある。
【0062】
前記エンジン40は電磁式の脱穀クラッチ44を介して、前記扱胴11及び処理胴13bに連結してあり、また偏心クランク45に連結してある。該偏心クランク45は前記揺動アーム21に連結してある。偏心クランク45の駆動により前記揺動選別装置16が揺動する。また前記エンジン40は脱穀クラッチ44を介して前記唐箕27に連結してある。また前記エンジン40は脱穀クラッチ44及び電磁式の刈取クラッチ46を介して前記刈取部3に連結してある。
【0063】
走行ミッション42を介してエンジン40の駆動力が走行クローラ1に伝達され、機体が走行する。また刈取クラッチ46を介して刈取部3にエンジン40の駆動力が伝達し、刈取部3にて穀稈が刈取られる。
【0064】
また脱穀クラッチ44を介して前記扱胴11にエンジン40の駆動力が伝達し、扱胴11にて穀稈は脱穀される。また脱穀クラッチ44を介して処理胴13bにエンジン40の駆動力が伝達し、扱胴11にて脱穀された稈及び穀粒から穀粒が分離される。
【0065】
また前記揺動選別装置16に脱穀クラッチ44及び偏心クランク45を介してエンジン40の駆動力が伝達して、揺動選別装置16は揺動し、扱胴11から漏下した稈及び穀粒の選別が行われる。また脱穀クラッチ44を介して前記唐箕27にエンジン40の駆動力が伝達し、揺動選別装置16にて選別された稈及び穀粒を唐箕27による起風作用によって排塵口33及び排気通路37から排出する。
【0066】
以上の構成によって、刈取部3にて刈り取られた穀稈は脱穀装置2にて脱穀され、穀稈から分離した穀粒は選別を受けて穀粒タンク4に収容される。穀粒の選別の調整は、前記キャビン8に配設されている穀粒の選別を調整するためのスイッチ群をユーザが操作することによって行われる。
【0067】
図4はキャビン8内に配設してあるスイッチ群及びランプ群の略示正面図である。図4に示すように、刈取スイッチ80、送塵弁角度設定スイッチ81、許容値設定スイッチ82、自動制御ランプ83及び警告ランプ84がダッシュボードパネルに並設してある。
【0068】
刈取スイッチ80は正面側に突出した円柱形をなしている。刈取スイッチ80は押圧によって押し下げられた状態で固定される。また押し下げられた状態で押圧されることによって、刈取スイッチ80に内蔵してある弾性部材(図示せず)の弾性力により元の位置に復帰する。刈取スイッチ80が押し下げられた場合に前記刈取クラッチ46及び脱穀クラッチ44が継合し、刈取スイッチ80が復帰した場合に刈取クラッチ46及び脱穀クラッチ44は切断される。
【0069】
送塵弁角度設定スイッチ81は、正面側に突出した軸回りに回動可能な円柱状をなしている。送塵弁角度設定スイッチ81の正面には、図4に示すように、三角形の目印を付してある。また送塵弁角度設定スイッチ81の周囲には1〜5の番号を付してある。前記目印を1〜5の番号に合わせて、送塵弁10a、10a、10a、10aの角度を5段階に設定するようにしてある(以下送塵弁角度設定スイッチ81にて設定された角度を設定角度θという)。送塵弁角度設定スイッチ81の内部には、図示しないポテンショメータが内蔵されており、設定角度θに応じた電圧信号を後述する制御部100へ出力するようにしてある。
【0070】
許容値設定スイッチ82は、正面側に突出した軸回りに回動可能な円柱状をなしている。許容値設定スイッチ82の正面には三角形の目印を付してある。また許容値設定スイッチ82の周囲には、一方から他方に向かうに従って縮幅される円弧形の図形を付してある。前記目印を円弧形の図形の任意の位置に合わせて、前記ストローラック19へ送出されることが許容される穀粒量の値(閾値P)を設定する。許容値設定スイッチ82の内部には、図示しないポテンショメータが内蔵されており、許容値設定スイッチ82を左側に回動させるとポテンショメータの出力電圧が小さくなり、右側に回動させるとポテンショメータの出力電圧が大きくなる。
自動制御ランプ83及び警告ランプ84は、後述する制御部100の出力信号に基づいて、点灯するか又は消灯する。
【0071】
次に前記送塵弁10aを動作させる伝動機構について説明する。図5は送塵弁10a及び送塵弁10aの伝動機構を示す略示平面図である。
【0072】
前記複数の送塵弁10a、10a、10a、10aは扱胴11と扱室10の上壁との間に前後方向に沿って並設してあり、互いに対向している。図5に示すように、扱室10の上壁に四つの送塵弁軸65、65、65、65が設けてあり、該送塵弁軸65は円筒形の扱胴11の径方向に沿って扱室10の内側に突出している。前記送塵弁10a、10a、10a、10aは送塵弁軸65、65、65、65にそれぞれ枢着している。
【0073】
各送塵弁10a、10a、10a、10aの一側部には、図5に示すように、前後方向に延びる杆体64が、上下方向を軸長方向とした四つの枢軸66、66、66、66を介して連結してある。
【0074】
また前記送塵弁10aに略直角な伝動杆63が送塵弁10aの送塵弁軸65付近から延出している。伝動杆63の延出端にクランクロッド61の一端部が、上下方向に沿う枢軸62を介して連結してある。クランクロッド61の他端部はクランク60に連結してある。該クランク60は減速機67を介してモータM1に連結している。
【0075】
モータM1が正回転した場合には、図5中の実線矢印によって示すように、クランク60が一方向に回動し、クランクロッド61が一方向に移動する。クランクロッド61の移動によって伝動杆63が前記枢軸62を中心にして一方向に回動し、伝動杆63を連結してある送塵弁10aが送塵弁軸65を中心にして一方向に回動する。該送塵弁10aの回動によって前記杆体64が前方に移動し、図5中の実線矢印によって示すように、他の送塵弁10a、10a、10aも連動して、送塵弁軸65、65、65を中心にして一方向へ回動する。
【0076】
送塵弁10a、10a、10a、10aの一方向への回動によって、扱胴11の周面に沿って螺旋状に移動する稈及び穀粒は、図5中の実線矢印によって示すように、送塵弁10a、10a、10a、10aに当接して前方へ跳ね返り、チャフシーブ18の前部へ穀粒が漏下する。
【0077】
モータM1が逆回転した場合には、図5中の破線矢印によって示すように、クランク60が他方向に回動し、クランクロッド61が他方向に移動する。クランクロッド61の移動によって伝動杆63が前記枢軸62を中心にして他方向に回動し、伝動杆63を連結してある送塵弁10aが送塵弁軸65を中心にして他方向に回動する。該送塵弁10aの回動によって前記杆体64が後方に移動し、図5中の破線矢印によって示すように、他の送塵弁10a、10a、10aも連動して、送塵弁軸65、65、65を中心にして他方向へ回動する。
【0078】
送塵弁10a、10a、10a、10aの他方向への回動によって、扱胴11の周面に沿って螺旋状に移動する稈及び穀粒は、図5中の破線矢印によって示すように、送塵弁10a、10a、10a、10aに当接して後方へ跳ね返り、チャフシーブ18の後部へ穀粒が漏下する。
【0079】
モータM1にはロータリエンコーダE1が設けてある。モータM1は、制御部100から与えられる動作指令に従って駆動され、モータM1の回転数及び回転方向がロータリエンコーダE1によって検出される。制御部100には、前記送塵弁角度設定スイッチ81の出力信号が入力され、ロータリエンコーダE1によって検出されたモータM1の回転数及び回転方向を示す値が入力される。
【0080】
図6は送塵弁10aの前後方向に対する角度と前記送塵弁角度設定スイッチ81との関係を説明する説明図である。図中α〜αは、送塵弁角度設定スイッチ81の1〜5の番号に対応する送塵弁10aの前後方向に対する角度を示しており、前記設定角度θはα〜αのいずれかに設定される。角度α〜αは、角度αを下限値とし、角度αを上限値としてこの順に大きくなる。送塵弁10aの前後方向に対する角度が大きくなるに従って、チャフシーブ18の前部へ漏下する穀粒の量は増加する。
制御部100は、送塵弁10aの前後方向に対する角度を送塵弁角度設定スイッチ81にて設定された角度α〜αに一致させるべくモータM1に動作指令を発し、ロータリエンコーダE1によるモータM1の回転数及び回転方向を示す値をフィードバック情報として、モータM1を駆動制御する。
【0081】
次に前記チャフシーブ16の動作機構について説明する。図7はチャフシーブ16の動作機構を示す側面図である。
【0082】
前記扱胴11の近傍に、扱胴11にて脱穀された排桿を図示しないカッタに向けて搬送する排ワラチェン50が設けてある。該排ワラチェン50に対向させて排ワラガイド棒51が設けてあり、該排ワラガイド棒51及び排ワラチェン50の間を、排ワラチェン50の移動と共に排桿が移動するようにしてある。
【0083】
図7に示す如く、前記排ワラガイド棒51の下側にL形の回動レバー52が設けてあり、該回動レバー52は前後方向に長い前後杆52aと、該前後杆52aの前端部から上方に突出した上下杆52bとを備えている。該上下杆52b及び前後杆52aとの角部分に枢軸52cが設けてある。また上下杆52bの突出端部にばね体54の後端部が固定してあり、ばね体54の前端部はコンバインの適所に固定してある。前記排ワラガイド棒51と前記前後杆52aの後端部とが連結棒53を介して連結してある。連結棒53と前後杆52aとは枢結されている。
【0084】
前記排ワラガイド棒51及び排ワラチェン50の間を移動する排桿が増加するに連れて、前記排ワラガイド棒51は押圧されて下側に移動し、前記回動レバー52は枢軸52cを支点にして後方に回動する(図7実線矢印参照)。このとき前記ばね体54は伸長する。一方排桿が減少するにつれて、伸長したばね体54の復元力によって前記回動レバー52は枢軸52cを支点にして前方に回動し、前記排ワラガイド棒51は上側に移動する(図7破線矢印参照)。
【0085】
次にチャフシーブ18の構成について説明する。前記チャフシーブ18は矩形に枠組された枠体(図示せず)を有している。該枠体を構成しており、前後方向に延びる左右に配置された二つの枠材の間に、左右方向に延びる多数のシーブ板18a、18a、・・・、18aを前後方向に沿って並設してある。該シーブ板18a、18a、・・・、18aの各上部は枠材に支軸18k、18k、・・・、18kを介して枢支してある。各シーブ板18a、18a、・・・、18aの下部は、前後方向に延びる一本の連結桿18bに枢軸18l、18l、・・・、18lを介して連結してある。該連結桿18bの前部に、矩形状の回動板18cの中途部が連結してあり、該回動板18cの一端部は前記連結桿18bの上方にて軸体18iを中心にして枢支してある。前記回動板18cの他端部には、チャフワイヤ18eの一端部が連結してあり、該チャフワイヤ18eの他端部は前記上下杆52bに連結してある。
また前記軸体18iには、軸体18i周りの回動板18cの位置を検出するポテンショメータ型のシーブセンサ18jを設けてある。該シーブセンサ18jの出力に基づいてシーブ角(シーブ板18a、18a、・・・、18aと連結桿18bとのなす角度)θを検出する構成にしてある。
【0086】
また前記軸体18iに、図示しない手動レバーに操作されるL形の手動板18hの一端部が連結してある。該手動板18hの他端部には前記チャフワイヤ18eの中途部及び手動ワイヤ18gの一端部を連結してある。該手動ワイヤ18gの他端部は前記手動レバーに連結している。
また前記回動板18cの一端部及び手動板18hの他端部に、ばね体18dを介装して前記手動板18hと前記回動板18cとを連結してある。また前記手動板18hの中途部には、ばね体18fの一端部を連結してあり、該ばね体18fの他端部は前記脱穀装置2の適所に固定してある。
【0087】
前記回動レバー52が後方へ回動したときに、前記チャフワイヤ18eは牽引され、前記回動板18cは反時計回りに回動し、前記連結桿18bは後方へ移動し、前記シーブ板18a、18a、・・・、18aは起立してシーブ角θは大きくなり、シーブ板18a、18a、・・・、18a同士の間隔は広くなる。このときばね体18fは圧縮される(図7実線矢印参照)。一方前記回動レバー52が前方に回動したときには、前記ばね体18fの復元力により、前記回動板18cは時計回りに回動し、前記連結桿18bは前方へ移動し、前記シーブ板18a、18a、・・・、18aは傾倒してシーブ角θは小となり、シーブ板18a、18a、・・・、18a同士の間隔は狭くなる(図7破線矢印参照)。
【0088】
排桿の減増に応じて排ワラガイド棒51が上下動し、前記回動レバー52が回動して前記手動板18h及び回動板18cが回動し、シーブ角θが調整される。また前記手動レバーの操作に応じて、前記手動ワイヤ18gが牽引されるか又は弛緩され、前記手動板18h及び回動板18cが回動して、シーブ角θが調整される。なお前記手動レバーは適当な位置で固定することができるようにしてある。
【0089】
前記回動レバー52の下方にモータM2が配設してあり、該モータM2には、モータM2の回転軸を制動する図示しない電磁ブレーキが設けてある。また前記モータM2の回転軸は、図示しない減速ギヤボックスを介して、電磁式のモータクラッチ71の一方に連結してある。該モータクラッチ71の他方は前記枢軸52cに連結してある。またモータM2には、モータM2の回転数及び回転方向を検出するロータリエンコーダE2を設けてある。
【0090】
モータM2は制御部100の動作指令によって駆動する。制御部100はロータリエンコーダE2によるモータM2の回転数及び回転方向を示す値をフィードバック情報として、モータM2を駆動制御する。また前記モータM2の回転開始と同時に電磁ブレーキが解除され、回転終了と同時に電磁ブレーキが作動する。またモータクラッチ71は制御部100の継断信号によって継合又は切断される。
【0091】
制御部100の継合信号に基づいて前記モータクラッチ71が継合し、制御部100の動作指令に基づいて前記モータM2が正回転した場合には前記回動レバー52は後方に回動して、前記排ワラガイド棒51は下側に移動し、前記ばね体54は伸長する(図7実線矢印参照)。そして制御部100の切断信号に基づいて前記モータクラッチ71が切断されたときには、前記ばね体54の復元力と排ワラガイド棒51に作用する排桿の圧力とによって、前記回動レバー52は回動し、前記排ワラガイド棒51は排桿量に応じた位置に配される(図7破線矢印参照)。
【0092】
以上の構成により、モータクラッチ71が継合し、モータM2が正回転することによって回動レバー52が後方に回動し、前記手動板18h及び回動板18cが回動して、シーブ角θが調整される。またモータクラッチ71を切断することによって、前記排ワラガイド棒51は排桿量に応じた位置に配され、排桿の増減に応じて前記手動板18h及び回動板18cが回動し、シーブ角θが調整される。
【0093】
次に制御部100の構成について説明する。図8は制御部100の構成を示すブロック図である。
制御部100は内部バス100iにより相互に接続されたCPU100a、ROM100b、RAM100c、及びEEPROM100dを備えている。CPU100aはROM100bに記憶された制御プログラムをRAM100cに読み込み、該制御プログラムに従って、送塵弁10a、チャフシーブ18の動作を制御する。
【0094】
図9は閾値と許容値設定スイッチ82の出力電圧との関係を示す関数f、及び閾値と許容値設定スイッチ82の出力電圧との関係を示す関数gを示すグラフである。
EEPROM100dには許容値設定スイッチ82の任意の出力電圧Vと閾値Pとの関係を示す関数fと、許容値設定スイッチ82の任意の出力電圧Vと閾値Qとの関係を示す関数gとが記憶してある。図9に示すように、任意の出力電圧Vに対する閾値Qは、任意の出力電圧Vに対する閾値P以下になる。また関数f及び関数gにおいて、前記出力電圧Vの増減に応じて前記閾値P及び閾値Qはそれぞれ減増する。
【0095】
またEEPROM100dにおいては、ロータリエンコーダE1によるモータM1の回転数及び回転方向を示す値をCPU100aにて積算して求めた送塵弁10aの角度を示す値が、変数である送塵弁角度θに格納してある。またEEPROM100dには穀稈を刈取ることができる機体の速度の下限値Vminが記憶してある。
【0096】
制御部100は、モータM1に係る送塵弁駆動回路100e及びモータM2に係るチャフシーブ駆動回路100fを更に備えており、CPU100aの出力信号に基づいて送塵弁駆動回路100e及びチャフシーブ駆動回路100fが駆動指令をモータM1及びモータM2へそれぞれ出力する。また制御部100は出力インタフェース100hを介して、HST41の変速回路41aに変速指令を出力し、自動制御ランプ83及び警告ランプ84に点灯又は消灯信号を出力する。また制御部100は刈取クラッチ46及び脱穀クラッチ44に継断信号を出力する。
【0097】
また刈取スイッチ80、送塵弁角度設定スイッチ81、車速センサ43、穀粒量検出センサ34、許容値設定スイッチ82、ロータリエンコーダE1、及びロータリエンコーダE2の各出力信号が入力インタフェース100gを介して制御部100に入力されている。
【0098】
図10は制御部100のCPU100aが実行する送塵弁10a及びチャフシーブ18の動作制御の処理手順を示すフローチャートである。
【0099】
制御部100のCPU100aは、刈取スイッチ80の出力信号を取込み、刈取スイッチ80がオンになっているか否かを判定する(ステップS1)。刈取スイッチ80がオフである場合には(ステップS1:NO)、CPU100aは処理をステップS1に戻す。刈取スイッチ80がオンになっている場合には(ステップS1:YES)、CPU100aは許容値設定スイッチ82の出力電圧Vを取込み(ステップS2)、関数f及び関数gを参照して、閾値P及び閾値Qを設定する(ステップS3)。そしてCPU100aは、穀粒量検出センサ34による穀粒量検出値Aを取込み(ステップS4)、穀粒量検出値Aが閾値P以上であるか否かを判定する(ステップS5)。穀粒量検出値Aが閾値P未満である場合には(ステップS5:NO)、CPU100aは処理をステップS4に戻す。
【0100】
穀粒量検出値Aが閾値P以上である場合には(ステップS5:YES)、CPU100aは自動制御ランプ83に点灯信号を出力し(ステップS6)、自動制御ランプ83を点灯させる。
【0101】
次にCPU100aは後述する送塵弁及びチャフシーブ作動処理を実行する(ステップS7)。そして自動制御ランプ83に消灯信号を出力し(ステップS8)、自動制御ランプ83を消灯させる。そして戻弁処理を実行して(ステップS9)、処理を終了する。
【0102】
次に穀粒量検出センサ34にて閾値P以上の穀粒量が検出された場合に実行される送塵弁及びチャフシーブ作動処理について説明する。図11は送塵弁及びチャフシーブ作動処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0103】
制御部100のCPU100aは、モータクラッチ71に継合信号を出力し(ステップS71)、モータクラッチ71を継合する。次にEEPROM100dにアクセスして送塵弁角度θの値を読出し(ステップS72)、送塵弁角度θが角度αであるか否かを判定する(ステップS73)。送塵弁角度θがα(n=1〜4)である場合には(ステップS73:NO)、CPU100aは、送塵弁駆動回路100eに正回転信号を出力し(ステップS74)、ロータリエンコーダE1によるモータM1の回転数及び回転方向を示す値をフィードバック情報として、送塵弁角度θがαn+1になるまでモータM1を正回転させる。
【0104】
次にCPU100aは、シーブセンサ18jによるシーブ角θの検出値を取込み(ステップS75)、シーブ角θの検出値とEEPROM100dに記憶してある上限角度θmaxの値とを比較して、シーブ角θが上限角度θmax以上であるか否かを判定する(ステップS76)。シーブ角θが上限角度θmax以上である場合には(ステップS76:YES)、CPU100aは後述するステップS78に処理を進める。シーブ角θが上限角度θmax未満である場合には(ステップS76:NO)、チャフシーブ駆動回路100fに正回転信号を出力し(ステップS77)、モータM3を所定数回転させる。該モータM3の回転によって、シーブ角θは所定角度大きくなる。
【0105】
そしてCPU100aは、内蔵するタイマ(図示せず)を使用して所定時間が経過するまで待機する(ステップS78)。該所定時間は、ステップS74での処理によって送塵弁10a、10a、10a、10aの角度を変更した時から、前記穀粒量検出センサ34にて検出される穀粒量が減少する時までの時間に相当する。
【0106】
所定時間が経過した場合には(ステップS78:YES)、CPU100aは、穀粒量検出センサ34による穀粒量検出値Aを取込み(ステップS79)、穀粒量検出値Aが閾値Q未満であるか否かを判定する(ステップS80)。穀粒量検出値Aが閾値Q以上である場合には(ステップS80:NO)、ステップS72に処理を戻す。穀粒量検出値Aが閾値Q未満である場合には(ステップS80:YES)、CPU100aはモータクラッチ71に切断信号を出力し(ステップS81)、モータクラッチ71を切断して、送塵弁及びチャフシーブ作動処理を終了する。
【0107】
送塵弁角度θが角度αである場合には(ステップS73:YES)、CPU100aは車速低減処理を実行し(ステップS82)、ステップS81に処理を進める。
【0108】
次に穀粒量検出センサ34にて閾値P以上の穀粒量が検出された場合に実行される車速低減処理について説明する。図12は車速低減処理の処理手順を示すフローチャートである。
CPU100aは、車速センサ43から車速検出値を取込む(ステップS821)。そしてCPU100aは取込んだ車速検出値とEEPROM100dに記憶してある前記機体の速度の下限値Vminとを比較して、車速検出値がVmin以上であるか否かを判定する(ステップS822)。車速検出値がVmin以上である場合には(ステップS822:YES)、CPU100aは、低速指令を変速回路41aに出力し(ステップS823)、機体の速度を低減させる。そしてCPU100aはタイマを使用して、所定時間が経過するまで待機する(ステップS824)。該所定時間は、ステップS823での処理によって車速を低減させた時から、前記穀粒量検出センサ34にて検出される穀粒量が減少する時までの時間に相当する。
【0109】
次にCPU100aは穀粒量検出センサ34による穀粒量検出値Aを取込み(ステップS825)、穀粒量検出値Aが閾値Q未満であるか否かを判定する(ステップS826)。穀粒量検出値Aが閾値Q以上である場合には(ステップS826:NO)、CPU100aはステップS821に処理を戻す。穀粒量検出値Aが閾値Q未満である場合には(ステップS826:YES)、CPU100aは車速低減処理を終了する。
【0110】
車速検出値がVmin未満である場合には(ステップS822:NO)、CPU100aは、警告ランプ84に点灯信号を出力し(ステップS827)、車速低減処理を終了する。車速検出値がVmin未満である場合であって、穀粒量検出値が閾値Q以上であるときには、グレンシーブ20、チャフシーブ18に稈が詰まる等の異常が発生している可能性があり、警告ランプ84の点灯によって当該可能性をユーザに報知することができる。
【0111】
次に穀粒量検出センサ34にて閾値Q未満の穀粒量が検出された場合に実行される戻弁処理について説明する。図13は戻弁処理の処理手順を示すフローチャートである。
CPU100aは送塵弁角度設定スイッチ81にて設定された設定角度θの値を取込む(ステップS91)。そしてCPU100aはEEPROM100dにアクセスして送塵弁角度θの値と設定角度θの値とを比較し、送塵弁角度θが設定角度θに等しいか否かを判定する(ステップS92)。送塵弁角度θが設定角度θに等しくない場合には(ステップS92:NO)、CPU100aは送塵弁駆動回路100eに戻弁信号を出力し(ステップS93)、ロータリエンコーダE1によるモータM1の回転数及び回転方向を示す値をフィードバック情報として、図6中の破線矢印によって示すように、送塵弁角度θの値がα(k=2〜5)からαk−1になるまでモータM1を逆回転させる。
【0112】
次にCPU100aは、タイマを使用して所定時間が経過するまで待機する(ステップS94)。所定時間が経過した場合には(ステップS94:YES)、CPU100aは処理をステップS91に戻す。送塵弁角度θの値が設定角度θに等しい場合には(ステップS92:YES)、CPU100aは戻弁処理を終了する。
【0113】
実施の形態1に係るコンバインにあっては、前記ストローラック19へ送出される穀粒量を検出する穀粒量検出センサ34を前記揺動選別装置16とクリンプ網15との間に配置して、ストローラック19へ送出される穀粒量が閾値P未満であるか否かを判定し、判定結果に基づいて送塵弁10a及びシーブ板18aの動作を制御して、排塵口33から穀粒が排出されることを未然に防ぎ、また穀粒の循環を回避して、穀粒を効率的に回収することができる。また穀粒の通流経路において前記ストローラック19よりも上流で穀粒量を検出し、検出された穀粒量に基づいて前記ストローラック19へ送出される穀粒量を確実に求めることができる。
【0114】
また実施の形態1に係るコンバインにあっては、穀粒量検出センサ34にて検出された穀粒量が閾値P以上である場合に、前記複数の支軸18k、18k、・・・、18kを中心にして、複数のシーブ板18a、18a、・・・、18aを一方向に回動させてシーブ板18a、18a、・・・、18aの隙間を大きくし、シーブ板18a、18a、・・・、18aの隙間から多量の穀粒を漏下させて、シーブ板18a、18a、・・・、18aからストローラック19へ送出される穀粒量を低減させて、穀粒を効率的に回収することができる。
【0115】
また実施の形態1に係るコンバインにあっては、穀粒量検出センサ34にて検出された穀粒量が閾値P以上である場合に、前記送塵弁10aの動作を制御して、前記複数のシーブ板18a、18a、・・・、18aの前部に穀粒を漏下させることによって、複数のシーブ板18a、18a、・・・、18aの前部に漏下した穀粒は複数のシーブ板18a、18a、・・・、18a上を後方へ移動している途中で、複数のシーブ板18a、18a、・・・、18aの間から漏下するので、シーブ板18a、18a、・・・、18aの後側に配置してあるストローラック19へ送出される穀粒量が低減し、穀粒を効率的に回収することができる。
【0116】
また実施の形態1に係るコンバインにあっては、記送塵弁10aの制御を解除する場合に、送塵弁10aを設定された位置まで徐々に戻して、送塵弁10aに対して急激な負荷が作用することを防ぎ、送塵弁10aの破損を回避することができる。
【0117】
また実施の形態1に係るコンバインにあっては、穀稈の品種及び圃場状態等に応じてユーザが許容値設定スイッチ82を操作し、閾値P及び閾値Qを最適な値に変更することができる。
【0118】
また実施の形態1に係るコンバインにあっては、送塵弁10a及びシーブ板18aの作動が不可能である場合に、圃場を走行する走行クローラ1を強制的に減速させることによって、刈取られる穀稈の量が低減し、前記ストローラック19へ送出される穀粒量が低減するので、穀粒を効率的に回収することができる。
【0119】
また実施の形態1に係るコンバインにあっては、前記穀粒量検出センサ34にて検出された穀粒量が閾値P以上である場合に、前記穀粒量検出センサ34にて検出された穀粒量が前記ストローラック19へ送出される穀粒量として許容される量を超過していることを表示して、前記送塵弁10a及びシーブ板18aを自動制御することをユーザに報知することができる。
【0120】
なお実施の形態1に係るコンバインにあっては送塵弁10aの動作を制御しているが、送塵弁10aと同様な構成からなる処理胴弁を処理室13に設けて、該処理胴弁の動作を制御する構成にしても良い。
【0121】
次に実施の形態1の変形例に係るコンバインについて説明する。図14はコンバインの脱穀装置2の内部構成を略示する側面断面図である。
実施の形態1の変形例においては、穀粒量検出センサ34は、図14に示す如く、クリンプ網15の下方であって、クリンプ網15の後端部よりも後方に配置してある。穀粒量検出センサ34はクリンプ網15の後端部から横溢した穀粒の量を検出することができ、穀粒量検出センサ34の検出結果を、クリンプ網15の後端部から横溢した穀粒の量とストローラック19へ送出される穀粒量との関係を示す関数に適用することでストローラック19へ送出される穀粒量を求めることができる。
【0122】
(実施の形態2)
以下本発明を実施の形態2に係るコンバインを示す図面に基づいて詳述する。図15はコンバインの脱穀装置2の内部構成を略示する側面断面図である。
前記処理ロータ14は、脱穀処理された処理物を排出する排出口14aを有している。該排出口14aと前記揺動選別盤17との間に穀粒量検出センサ34が配置してある。穀粒量検出センサ34は排出口14aから排出される穀粒の量を検出することができる。前記ストローラック19の透孔から落下し、二番スクリュー26によって処理ロータ14に搬送された穀粒は排出口14aから排出されるので、穀粒量検出センサ34にて検出される穀粒量にはストローラック19に送出された穀粒量が反映されている。穀粒量検出センサ34の検出結果を、処理ロータ14の排出口14aから排出される穀粒量とストローラック19へ送出される穀粒量との関係を示す関数に適用することでストローラック19へ送出される穀粒量を求めることができる。
【0123】
図16は制御部100が実行する送塵弁10a及びチャフシーブ18の動作制御の処理手順を示すフローチャートである。
【0124】
制御部100のCPU100aは、刈取スイッチ80の出力信号を取込み、刈取スイッチ80がオンになっているか否かを判定する(ステップS21)。刈取スイッチ80がオフである場合には(ステップS21:NO)、CPU100aは処理をステップS21に戻す。刈取スイッチ80がオンになっている場合には(ステップS21:YES)、CPU100aは、許容値設定スイッチ82の出力電圧Vを取込み(ステップS22)、関数f及び関数gを参照して、閾値P及び閾値Qを設定する(ステップS23)。そしてCPU100aは、穀粒量検出センサ34による穀粒量検出値Aを取込み(ステップS24)、穀粒量検出値Aが閾値P以上であるか否かを判定する(ステップS25)。穀粒量検出値Aが閾値P未満である場合には(ステップS25:NO)、CPU100aは処理をステップS24に戻す。
【0125】
穀粒量検出値Aが閾値P以上である場合には(ステップS25:YES)、CPU100aは自動制御ランプ84に点灯信号を出力し(ステップS26)、自動制御ランプ84を点灯させる。次にCPU100aは送塵弁作動処理を実行し(ステップS27)、チャフシーブ作動処理を実行する(ステップS28)。次にCPU100aは自動制御ランプ84に消灯信号を出力して(ステップS29)、自動制御ランプ84を消灯させる。そしてCPU100aは戻弁処理を実行して(ステップS30)、処理を終了する。
【0126】
次に穀粒量検出センサ34にて閾値P以上の穀粒量が検出された場合に実行される送塵弁作動処理について説明する。図17は送塵弁作動処理の処理手順を示すフローチャートである。
CPU100aはEEPROM100dから送塵弁角度θの値を読み出し(ステップS271)、送塵弁角度θの値が角度αに等しいか否かを判定する(ステップS272)。送塵弁角度θの値が角度αに等しくない場合(ステップS272:NO)、すなわち送塵弁角度θがα(n=1〜4)である場合には、CPU100aは、送塵弁駆動回路100eに正回転信号を出力し(ステップS273)、ロータリエンコーダE1によるモータM1の回転数及び回転方向を示す値をフィードバック情報として、送塵弁角度θがαn+1になるまでモータM1を正回転させる。該モータM1の正回転によって送塵弁角度θは大きくなり、扱室10にて穀稈から分離した穀粒の多くは、チャフシーブ18の前部へ漏下する。
【0127】
そしてCPU100aはタイマを使用して、所定時間が経過するまで待機する(ステップS274)。該所定時間は、ステップS273での処理によって送塵弁10a、10a、10a、10aの角度を変更した時から、前記穀粒量検出センサ34にて検出される穀粒量が減少する時までの時間に相当する。
【0128】
所定時間が経過した場合には(ステップS274:YES)、CPU100aは、穀粒量検出センサ34による穀粒量検出値Aを取込み(ステップS275)、穀粒量検出値Aが閾値Q未満であるか否かを判定する(ステップS276)。穀粒量検出値Aが閾値Q以上である場合には(ステップS276:NO)、ステップS271に処理を戻す。穀粒量検出値Aが閾値Q未満である場合には(ステップS276:YES)、送塵弁作動処理を終了して、ステップS29へ処理を進める。また送塵弁角度θの値が角度αに等しい場合には(ステップS272:YES)、CPU100aは送塵弁作動処理を終了する。
【0129】
次に穀粒量検出センサ34にて閾値P以上の穀粒量が検出された場合に実行されるチャフシーブ作動処理について説明する。図18はチャフシーブ作動処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0130】
制御部100のCPU100aは、モータクラッチ71に継合信号を出力し(ステップS281)、モータクラッチ71を継合させる。そしてCPU100aはシーブセンサ18jによるシーブ角θの検出値を取り込む(ステップS282)。次にCPU100aは、シーブ角θの検出値がEEPROM100dに記憶してある上限値θmax以上であるか否かを判定する(ステップS283)。シーブ角θの検出値が上限値θmax未満である場合には(ステップS283:NO)、CPU100aはチャフシーブ駆動回路100fに正回転信号を出力し(ステップS284)、モータM3を所定数正回転させる。該モータM3の正回転によってシーブ角θは大きくなり、チャフシーブ18の前部に穀粒が漏下しやすくなる。
【0131】
そしてCPU100aはタイマを使用して、所定時間が経過するまで待機する(ステップS285)。該所定時間は、ステップS284での処理によってモータM2を所定数正回転させた時から、前記穀粒量検出センサ34にて検出される穀粒量が減少する時までの時間に相当する。所定時間が経過した場合に(ステップS285:YES)、CPU100aは穀粒量検出センサ34による穀粒量検出値Aを取込み(ステップS286)、穀粒量検出値Aが閾値Q未満であるか否かを判定する(ステップS287)。穀粒量検出値Aが閾値Q以上である場合には(ステップS287:NO)、CPU100aはステップS282に処理を戻す。穀粒量検出値Aが閾値Q未満である場合には(ステップS287:YES)、CPU100aはモータクラッチ71に切断信号を出力し(ステップS288)、モータクラッチ71を切断させて、チャフシーブ作動処理を終了する。
【0132】
シーブ角θの検出値が上限値θmax以上である場合には(ステップS283:YES)、車速低減処理を実行し(ステップS289)、ステップS288へ処理を進める。
【0133】
なお車速低減処理(ステップS289)及び戻弁処理(ステップS30)は、それぞれ実施の形態1にて述べた車速低減処理(図12参照)及び戻弁処理(図13参照)と同様であり、その詳細な説明を省略する。
【0134】
実施の形態2に係るコンバインの構成の内、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付しその詳細な説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】実施の形態1に係るコンバインの外観斜視図である。
【図2】実施の形態1に係るコンバインの脱穀装置の内部構成を略示する側面断面図である。
【図3】実施の形態1に係るコンバインにおけるエンジンの駆動力の伝達経路を略示する伝動機構図である。
【図4】実施の形態1に係るコンバインのキャビン内に配設してあるスイッチ群及びランプ群の略示正面図である。
【図5】実施の形態1に係るコンバインの送塵弁及び送塵弁の伝動機構を示す略示平面図である。
【図6】実施の形態1に係るコンバインの送塵弁の前後方向に対する角度と前記送塵弁角度設定スイッチとの関係を説明する説明図である。
【図7】実施の形態1に係るコンバインのチャフシーブの動作機構を示す側面図である。
【図8】実施の形態1に係るコンバインの制御部の構成を示すブロック図である。
【図9】閾値と許容値設定スイッチの出力電圧との関係を示す関数f、及び閾値と許容値設定スイッチの出力電圧との関係を示す関数gを示すグラフである。
【図10】実施の形態1に係るコンバインの制御部のCPUが実行する送塵弁及びチャフシーブの動作制御の処理手順を示すフローチャートである
【図11】実施の形態1に係るコンバインの制御部が実行する送塵弁及びチャフシーブ作動処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】実施の形態1に係るコンバインの制御部が実行する車速低減処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図13】実施の形態1に係るコンバインの制御部が実行する戻弁処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図14】実施の形態1の変形例に係るコンバインの脱穀装置の内部構成を略示する側面断面図である。
【図15】実施の形態2に係るコンバインの脱穀装置の内部構成を略示する側面断面図である。
【図16】実施の形態2に係るコンバインの制御部が実行する送塵弁及びチャフシーブの動作制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図17】実施の形態2に係るコンバインの制御部が実行する送塵弁作動処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図18】実施の形態2に係るコンバインの制御部が実行するチャフシーブ作動処理の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0136】
1 走行クローラ(走行部)
10 扱室
10a 送塵弁(調整手段)
11 扱胴
14 処理ロータ(処理装置)
18a シーブ板
18b 連結杆
18j シーブセンサ
18k 支軸
19 ストローラック
26 二番スクリュー(搬送装置)
34 穀粒量検出センサ(検出手段)
65 送塵弁軸
82 許容値設定スイッチ
100 制御部(制御手段)
100a CPU
100b ROM
100c RAM
100d EEPROM
M1 モータ
M2 モータ
E1 ロータリエンコーダ
E2 ロータリエンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取られた穀稈を脱穀する扱室と、該扱室の下方に設けてあり、前記扱室から漏下した稈及び穀粒を選別するストローラックとを備える脱穀機において、
前記ストローラックへ送出される穀粒量を検出する検出手段と、
前記ストローラックへ送出される穀粒量を調整する調整手段と、
前記検出手段にて検出された穀粒量が所定範囲内にあるか否かを判定する判定手段と、
該判定手段での判定結果に基づいて、前記調整手段の動作を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする脱穀機。
【請求項2】
前記調整手段は、前記ストローラックの隣に横並びに設けてあり、互いに対向する複数のシーブ板を備え、
上下方向及び前記複数のシーブ板の並び方向に略直交する方向を軸長方向としており、前記複数のシーブ板にそれぞれ枢着してある複数の支軸と、
前記並び方向に沿って配置してあり、前記複数のシーブ板を枢軸を介して連結する連結杆と、
該連結杆を前記並び方向に移動させるために前記連結杆へ動力を供給する第1駆動源とを備え、
前記判定手段にて、前記検出手段にて検出された穀粒量が所定範囲外にあると判定された場合に、前記複数のシーブ板が各支軸を中心にして一方向に回動するように、前記第1駆動源を駆動させる手段を備えること
を特徴とする請求項1に記載の脱穀機。
【請求項3】
前記扱室には円筒形の扱胴が収容してあり、
前記調整手段は、前記扱室内における前記扱胴の周囲に配置してあり、稈及び穀粒の送出量を調整する送塵弁を備え、
該送塵弁は、前記扱胴の径方向を軸長方向とした送塵弁軸に枢支してあり、
前記送塵弁に動力を供給する第2駆動源を備え、
前記制御手段は、前記判定手段にて、前記検出手段にて検出された穀粒量が所定範囲外にあると判定された場合に、前記送塵弁が前記送塵弁軸を中心にして一方向に回動するように、前記第2駆動源を駆動させる手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の脱穀機。
【請求項4】
前記送塵弁軸周りの前記送塵弁の位置を検出する位置検出手段と、
前記送塵弁軸周りの前記送塵弁の位置を設定する位置設定手段と、
前記位置検出手段にて検出された前記送塵弁軸周りの前記送塵弁の位置が、前記位置設定手段にて設定された前記送塵弁軸周りの前記送塵弁の位置から偏倚しているか否かを判定する偏倚判定手段と、
該偏倚判定手段にて、前記送塵弁軸周りの前記送塵弁の位置が前記位置設定手段にて設定された前記送塵弁軸周りの前記送塵弁の位置から偏倚していると判定された場合であって、前記検出手段にて所定範囲内の穀粒量を検出したときに、前記送塵弁を前記位置設定手段にて設定された前記送塵弁軸周りの位置まで段階的に移動させる手段と
を備えることを特徴とする請求項3に記載の脱穀機。
【請求項5】
前記所定範囲を変更する手段を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の脱穀機。
【請求項6】
圃場を走行する走行部と、
前記調整手段の作動の可否を判断する手段と、
該手段にて前記調整手段の作動が不可能であると判断された場合に、前記走行部を強制的に減速させる手段と
を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の脱穀機。
【請求項7】
前記判定手段にて、前記検出手段にて検出された穀粒量が所定範囲外にあると判定された場合に、前記検出手段にて検出された穀粒量が所定範囲外にあることを表示する手段を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の脱穀機。
【請求項8】
前記扱室と前記ストローラックとの間に前記検出手段を配置してあることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つに記載の脱穀機。
【請求項9】
前記ストローラックから落下した落下物を搬送するための搬送装置を備え、
前記扱室と前記ストローラックとの間に、前記搬送装置にて搬送された前記落下物を脱穀し排出口から穀粒を排出する処理装置を配置してあり、
該処理装置の前記排出口に前記検出手段を配置してあること
を特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つに記載の脱穀機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−110253(P2010−110253A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284829(P2008−284829)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】