説明

脱穀装置

【課題】 脱穀装置において、2番物ファンの選別風を2番物に当てることによって2番物に混入したワラ屑等を選別部での搬送下手側に排出するように構成した場合、2番物に混入したワラ屑等をさらに良く選別部での搬送下手側に排出することができるように構成する。
【解決手段】 2番物回収部6の上方を後方に向けて選別風を供給する2番物ファン23を備え、2番物回収部6に回収された2番物を上方に跳ね上げる跳ね上げ手段24を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置における2番物の処理の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自脱型式のコンバインや全稈投入型式(普通型式)のコンバイン、ハーベスタ等に搭載される脱穀装置では、例えば特許文献1に開示されているように、選別部(特許文献1の図1の3)から漏下した1番物を回収する1番物回収部(特許文献1の図1の15)、選別部から漏下した2番物を回収する2番物回収部(特許文献1の図1の16)を備えており、1番物回収部に沿った横軸芯周りに回転駆動されることにより1番物回収部に沿って1番物を搬送して排出する1番スクリュー(特許文献1の図1の17)、2番物回収部に沿った横軸芯周りに回転駆動されることにより2番物回収部に沿って2番物を搬送して排出する2番スクリュー(特許文献1の図1の18)を備えている。
【0003】
脱穀装置では一般に、唐箕(特許文献1の図1の9)を備えて、選別部の下方を選別部での搬送下手側(特許文献1の図1の紙面右方)に向けて、唐箕の選別風を供給することにより、ワラ屑等を後方に排出するように構成している。
この場合、1番物に比べて2番物に多くのワラ屑等が混入している点、及び2番物回収部が唐箕から遠い点により、特許文献1では、2番物回収部の上方を選別部での搬送下手側に向けて選別風を供給する2番物ファン(特許文献1の図1の11)を備えている。これにより、2番物が選別部から2番物回収部に漏下する間に、2番物ファンの選別風を2番物に当てることによって、2番物に混入したワラ屑等を選別部での搬送下手側に排出するように構成している。
【0004】
【特許文献1】特開2005−21036号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2番物ファンの選別風を2番物に当てることによって2番物に混入したワラ屑等を選別部での搬送下手側に排出するように構成する場合、特許文献1では、2番物が選別部から2番物回収部に漏下する間の1回だけしか、2番物ファンの選別風が2番物に当たらないので、2番物に混入したワラ屑等を選別部での搬送下手側に排出すると言う面で改善の余地がある。
【0006】
本発明は脱穀装置において、2番物ファンの選別風を2番物に当てることによって2番物に混入したワラ屑等を選別部での搬送下手側に排出するように構成した場合、2番物に混入したワラ屑等をさらに良く選別部での搬送下手側に排出することができるように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、脱穀装置において次のように構成することにある。
選別部から漏下した2番物を回収する2番物回収部を備え、2番物回収部に沿った横軸芯周りに回転駆動されることにより2番物回収部に沿って2番物を搬送して排出する2番スクリューを備え、2番物回収部の上方を選別部での搬送下手側に向けて選別風を供給する2番物ファンを備える。2番物回収部に回収された2番物を上方に跳ね上げる跳ね上げ手段を備える。
【0008】
(作用)
本発明の第1特徴によると、2番物が選別部から2番物回収部に漏下する間に、2番物ファンの選別風が2番物に当たる。次に2番物が2番物回収部に回収されると、2番スクリューにより2番物回収部に沿って2番物が搬送されて排出されるのであるが、この間に跳ね上げ手段により2番物が2番物回収部から何回か上方に跳ね上げられる。このようにして2番物が2番物回収部から上方に跳ね上げられると、その際に2番物ファンの選別風が2番物に当たるのであり、2番物に混入したワラ屑等が選別部での搬送下手側に排出される。
本発明の第1特徴によると、2番物が選別部から2番物回収部に漏下する間だけではなく、2番物が2番物回収部に回収されてからでも、2番物ファンの選別風が2番物に何回か当たることになり、2番物に混入したワラ屑等を選別部での搬送下手側に排出する回数を多くすることができる。
【0009】
脱穀装置では一般に、2番物回収部で回収された2番物を再び扱室や選別部に供給するように構成して、2番物の再処理を行うように構成している。
本発明の第1特徴によると、前述のように2番物に混入したワラ屑等を選別部での搬送下手側に排出する回数が多くなり、ワラ屑等が多く取り除かれる分だけ2番物の量が少なくなるので、2番物回収部で回収された2番物を再び扱室や選別部に供給するように構成する場合、扱室や選別部での2番物の再処理が楽に行われるようになる。
【0010】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、脱穀装置において、2番物ファンの選別風を2番物に当てることによって2番物に混入したワラ屑等を選別部での搬送下手側に排出するように構成した場合、2番物に混入したワラ屑等を選別部での搬送下手側に排出する回数を多くすることができ、2番物に混入したワラ屑等を良く選別部での搬送下手側に排出することができるようになって、脱穀装置の選別性能を向上させることができた。
本発明の第1特徴によると、ワラ屑等が多く取り除かれる分だけ2番物の量が少なくなり、扱室や選別部での2番物の再処理が楽に行われるようになるので、脱穀装置の全体の脱穀負荷を抑えることができて、脱穀装置の選別性能を向上させることができた。
【0011】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の脱穀装置において次のように構成することにある。
2番スクリューに跳ね板部材を取り付けて、2番スクリューと一緒に跳ね板部材が回転し、跳ね板部材により2番物が上方に跳ね上げられるようにして、跳ね上げ手段を構成する。
【0012】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第2特徴によると、2番スクリューに跳ね板部材を取り付けるだけで、跳ね上げ手段を構成することができるのであり、2番スクリューと一緒に跳ね板部材(跳ね上げ手段)が回転駆動されるので、跳ね板部材(跳ね上げ手段)を回転駆動する別の駆動機構を備える必要がない。
【0013】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、2番スクリューに跳ね板部材を取り付けるだけで、跳ね上げ手段を構成することができる点、及び跳ね板部材(跳ね上げ手段)を回転駆動する別の駆動機構を備える必要がない点により、構造の簡素化の面で有利なものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は自脱型式のコンバインに搭載される脱穀装置を示しており、脱穀装置の左外側部に備えられたフィードチェーン1、前後向きの軸芯周りに回転駆動される扱胴2、扱胴2の下側に配置された受網3、受網3の下側で前後方向(図1の紙面左右方向)に揺動駆動される選別部4、選別部4の下側に配置された1番物回収部5及び2番物回収部6等を備えて、脱穀装置が構成されている。
【0015】
図1に示すように、刈り取られた穀稈の株元側がフィードチェーン1に挟持されて選別部4での搬送下手側(図1の紙面右方)に搬送され、穀稈の穂先側が扱胴2と受網3との間で脱穀処理されて、脱穀処理された処理物が受網3から選別部4に漏下するのであり、扱胴2と受網3との間の出口7から出てきた処理物が、拡散胴8によりほぐし処理されて選別部4に供給される。拡散胴8の選別部4での搬送下手側に、横断流型式の排塵ファン25が備えられている。
【0016】
図1に示すように、選別部4は、受網3の前半部から漏下した処理物を比重選別しながら選別部4での搬送下手側に送る第1グレンパン9、第1グレンパン9からの処理物及び受網3の後半部から漏下した処理物から穀粒等の処理物を漏下させ残りの処理物を選別部4での搬送下手側に送るチャフシーブ10、チャフシーブ10から漏下した処理物を比重選別しながら選別部4での搬送下手側に送る第2グレンパン11、第2グレンパン11からの処理物から1番物(穀粒)を漏下させるグレンシーブ12、出口7から出てきた処理物を比重選別しながら選別部4での搬送下手側に送る第3グレンパン13、第3グレンパン13からの処理物から穀粒等の処理物を漏下させる複数のフルイ線14、チャフシーブ10及びフルイ線14からの処理物から2番物を漏下させ残りのワラ屑等の処理物を選別部4での搬送下手側に排出するストローラック15、前下がり状の案内板16等を備えて構成されている。
【0017】
図1に示すように、グレンシーブ12の下側に前下がり状の案内板17が備えられて、案内板17の前側下部に1番物回収部5が形成されている。ストローラック15及び案内板16の下側に側面視でV字状(U字状)の案内板18が備えられて、案内板18の底部に2番物回収部6が形成されている。図1,2,3に示すように、2番物回収部6に2番スクリュー20が備えられている。2番スクリュー20は2番物回収部6に沿った横軸芯P1周りに回転駆動される駆動軸20a、駆動軸20aの周囲に固定された螺旋体20bにより構成されており、螺旋体20bの外周部に亘って駆動軸20aと平行に複数の跳ね板部材24(跳ね上げ手段に相当)が取り付けられている。図1に示すように、1番物回収部5において、2番スクリュー20と同様な1番スクリュー19が備えられている(但し、跳ね板部材24は1番スクリュー19に備えられていない)。
【0018】
図1に示すように、第1グレンパン9の下側に唐箕21が備えられており、唐箕21の選別風が1番物回収部5の上方からグレンシーブ12と案内板17との間を選別部4での搬送下手側に向けて供給される。唐箕21の選別部4での搬送上手側に横断流型式の副唐箕22が備えられており、副唐箕22の選別風が第1グレンパン9及びチャフシーブ10の間からチャフシーブ10の上方を選別部4での搬送下手側に向けて供給される。図1及び図2に示すように、案内板17の下側に横断流型式の2番物ファン23が備えられており、2番物ファン23の選別風が案内板17,18の間から2番物回収部6の上方を選別部4での搬送下手側に向けて供給され、ストローラック15及び案内板16との間を選別部4での搬送下手側に供給される(矢印A2参照)。
【0019】
図4及び図5に示すように、唐箕21は、回転駆動される駆動軸21a、駆動軸21aから放射状に延出された複数の支持アーム21b、支持アーム21bに固定された複数の横長のファンプレート21c、ファンプレート21cの中央部に固定された仕切り板21d等を備えて構成されている。この場合、唐箕21の回転方向A1に向かって仕切り板21dがファンプレート21cに固定されており、ファンプレート21cの中央部よりもファンプレート21cの右及び左の端部が唐箕21の回転方向A1に向かって先行するように、ファンプレート21cがV字状に折り曲げられている。これにより、唐箕21が回転駆動されるのに伴って、唐箕21の右及び左側部から空気が吸入され、唐箕21の全幅から略均一な量の選別風が排出される。
【0020】
例えば唐箕21のファンプレート21cが折り曲げられていない直線状の平板状であると、唐箕21が回転駆動されるのに伴って唐箕21の右及び左側部から空気が吸入された場合、唐箕21の右及び左側部から選別風が主に排出されて、唐箕21の中央部から排出される選別風が少なくなることがある。
これに対して図4及び図5に示すように、唐箕21のファンプレート21cが折り曲げられていると、唐箕21が回転駆動されるのに伴って唐箕21の右及び左側部から空気が吸入された場合、唐箕21のファンプレート21cの折り曲げによる傾斜によって、空気が唐箕21の中央部にも寄せ集められるようになるのであり、唐箕21の中央部から排出される選別風が少なくなる状態が回避される。この場合、唐箕21のファンプレート21cをV字状に折り曲げるのではなく、唐箕21のファンプレート21cの右及び左端部を中央側に折り曲げるように構成してもよい。
【0021】
以上の構造によって、図1に示すように、受網3の前半部から漏下した処理物が第1グレンパン9により比重選別されながらチャフシーブ10に送られて、チャフシーブ10から漏下した処理物が第2グレンパン11により比重選別されながらグレンシーブ12に送られ、グレンシーブ12から漏下した1番物が案内板17から1番物回収部5に回収される。1番スクリュー19が回転駆動されることにより1番物回収部5に沿って1番物が搬送されて排出され、グレンタンク(図示せず)に供給される。この場合、1番物がグレンシーブ12から1番物回収部5に漏下する間に、唐箕21の選別風が1番物に当たることによって、1番物に混入したワラ屑等が選別部4での搬送下手側に排出される。
【0022】
図1に示すように、出口7、第3グレンパン13及びフルイ線14、チャフシーブ10から処理物がストローラック15に送られ、ストローラック15から漏下した2番物が案内板16から2番物回収部6に回収されるのであり、ストローラック15を漏下しなかったワラ屑等が、ストローラック15により選別部4での搬送下手側に排出されたり、排塵ファン25により選別部4での搬送下手側に排出されたりする。
【0023】
この場合、図1及び図2に示すように、2番物がストローラック15から2番物回収部6に漏下する間に、2番物ファン23の選別風が2番物に当たることによって、2番物に混入したワラ屑等がストローラック15及び案内板16の間を選別部4での搬送下手側に排出される。2番物が2番物回収部6に回収されると、2番スクリュー20により2番物回収部6に沿って2番物が搬送されて排出されるのであるが、この間に跳ね板部材24により2番物が2番物回収部6から何回か上方に跳ね上げられる。2番スクリュー20が横軸芯P1周りに図2の紙面時計方向に回転駆動されるので(矢印A4参照)、跳ね板部材24により2番物が2番物ファン23に近い側から上方に跳ね上げられる(矢印A3参照)。このように2番物が2番物回収部6から上方に跳ね上げられると、その際に2番物ファン23の選別風が2番物に当たるのであり、2番物に混入したワラ屑等が前述のようにストローラック15及び案内板16の間を選別部4での搬送下手側に排出される。
【0024】
図1及び図2に示すように、2番スクリュー20が回転駆動されることにより2番物回収部6に沿って2番物が搬送されて排出され、2番還元スクリュー26により2番物が選別部4の前部に供給されて再処理される。この場合、2番還元スクリュー26により2番物が扱胴2と受網3との間に供給されて再処理されるように構成してもよい。
【0025】
[発明の実施の別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]において、2番スクリュー20の螺旋体20bの外周部に亘って駆動軸20aと平行に跳ね板部材24を取り付けるのではなく、跳ね板部材24を2番スクリュー20の駆動軸20aに放射状に取り付けるように構成してもよい。
本発明は自脱型式のコンバインに搭載される脱穀装置ばかりではなく、全稈投入型式(普通型式)のコンバインやハーベスタ等に搭載される脱穀装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】脱穀装置の全体側面図
【図2】2番物ファン及び2番物回収部の縦断側面図
【図3】2番物回収部及び2番スクリューの背面図
【図4】唐箕の全体斜視図
【図5】唐箕のファンプレートの平面図
【符号の説明】
【0027】
4 選別部
6 2番物回収部
20 2番スクリュー
23 2番物ファン
24 跳ね上げ手段、跳ね板部材
P1 横軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選別部から漏下した2番物を回収する2番物回収部を備え、前記2番物回収部に沿った横軸芯周りに回転駆動されることにより2番物回収部に沿って2番物を搬送して排出する2番スクリューを備えて、
前記2番物回収部の上方を選別部での搬送下手側に向けて選別風を供給する2番物ファンを備えると共に、
前記2番物回収部に回収された2番物を上方に跳ね上げる跳ね上げ手段を備えてある脱穀装置。
【請求項2】
前記2番スクリューに跳ね板部材を取り付けて、前記2番スクリューと一緒に跳ね板部材が回転し、前記跳ね板部材により2番物が上方に跳ね上げられるようにして、前記跳ね上げ手段を構成してある請求項1に記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−325462(P2006−325462A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152474(P2005−152474)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】