説明

苗植機

【課題】 予め作成しておくデータマップを苗植機に装填して制御させることによって施肥量を制御する形態では、苗植機の他に、特別の土壌サンプリング車を用意しなければならず、作業形態が煩雑であり、手数を要し、経費高となる。
【解決手段】 走行土壌面に苗を植付ける苗植装置1を支持してこの土壌面を滑走するフロート2の底部に、又は、このフロート2の前側の土壌面を整地する整地ロータ3部に、土壌成分を検出する土壌成分センサ4を設け、前記苗植装置1による苗植えを行いながら同時に土壌成分センサ4によるこの苗植付土壌面の土壌成分を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、苗植装置による苗植作用と同時に、土壌成分センサによる土壌成分を検出可能とする苗植機に関する。
【背景技術】
【0002】
予め土壌サンプリング車によって採集する土壌サンプリングを分析して、圃場の土壌成分地図(マップデータ)を作成しておき、このマットデータを磁気ディスクに記録しておき、苗植機による苗植作業を行うとときは、この磁気ディスクを用いて苗植機の施肥装置を制御する。土壌成分の分布に応じて施肥装置に施肥量を加、減制御する技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002ー17128号公報(第4頁、図7)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用技術のように予め別の土壌サンプリング車の走行によって土壌成分分布のデータマップを作成しておき、このデータマップを苗植機に装填して制御させることによって施肥量を制御する形態では、苗植機の他に、特別の土壌サンプリング車を用意しなければならず、作業形態が煩雑であり、手数を要し、経費高となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、走行土壌面に苗を植付ける苗植装置1を支持してこの土壌面を滑走するフロート2の底部に、又は、このフロート2の前側の土壌面を整地する整地ロータ3部に、土壌成分を検出する土壌成分センサ4を設け、前記苗植装置1による苗植えを行いながら同時に土壌成分センサ4によるこの苗植付土壌面の土壌成分を検出することを特徴とする苗植機の構成とする。苗植装置1に苗を供給して苗植作業を行う。この苗植機の苗植作業走行によって、フロート2の滑走によって苗植付土壌面が均平されて、この均平跡の土壌面に苗植装置1による苗植付けが行われる。この苗植作業において、フロート2の底部に土壌成分センサ4を設ける形態では、このフロート2の滑走による土壌面の均平作用と同時に、この土壌成分センサ4による土壌成分の検出を行う。又、このフロート2の前側に整地ロータ3を設けて、この整地ロータ3部に土壌成分センサ4を設ける形態では、この整地ロータ3の駆動によってフロート2前の土壌面を整地して均平化すると共に、この部分の土壌成分を土壌成分センサ4によって検出する。このように、土壌成分センサ4によって検出された土壌部を、この整地ロータ3で整地し、フロート2で均平にして、苗植付作用を行わせるものである。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記土壌成分センサ4の検出により、苗植付土壌面に同時施肥する施肥装置5の施肥量を制御可能に設ける。前記のようにして、フロート2の滑走する土壌面、乃至整地ロータ3で整地される土壌面を、土壌成分センサ4で検出して、この検出値によって施肥装置5の施肥量を加減制御する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明は、土壌成分センサ4を苗植機に装着するため、構成を簡単にして、コストダウンを図ることができ、作業の能率的、効率的に行うことができる。とくに、この土壌成分センサ4をフロート2の底部、又はこのフロート2前側の整地ロータ3部に設けるため、この苗植付位置に近く一定した土壌面を押えながら、乃至は撹拌しながら、土壌成分を的確に精度よく検出することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、苗植機による苗植付作業にて、土壌成分センサ4による苗植付位置の土壌部の成分検出と同時に、この土壌成分検出に基づく施肥装置5による施肥量制御を行わせることによって、高能率及び高効率の苗植え、及び施肥を行うことができる。又、これら土壌成分センサ4や、及び施肥装置5を苗植機に一体的装着するものであるから、構成をも簡潔化して、コストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】苗植装置部の側面図。
【図2】その平面図。
【図3】苗植機の側面図。
【図4】その平面図。
【図5】施肥制御のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面に基づいて、苗植機は、ステアリングポスト10上のハンドル11によって操向する前輪12と、運転席13下に搭載のエンジン14によって駆動される後輪15配置する四輪走行形態のトラクタ車体16を有し、この車体16の後側に平行リンク形態のリフトリンク17を介して苗植装置1を昇降可能に装着する。車体16の後部には施肥装置5を搭載して連動する。車体16のサイドフロア18の前部外側部には補助苗受枠19を設けて、マット苗を育苗した苗トレイを載置する。車体16前部の前輪12間には、ミッションケース20及び油圧無段変速装置21を設けて、エンジン14から油圧無段変速装置21を駆動し、この油段変速装置21からミッションケース20内の副変速装置等を介して、前記前輪12、及び後輪連動軸22を伝動して、この後輪15を軸装する後車軸23等を伝動する。又、このミッションケース20からPTO軸24を介して、苗植装置1の苗植入力軸25や、施肥装置5等を伝動する構成としている。前記リフトリンク17は、車体16後部のリフトシリンダ26の油圧伸縮にヨリ昇降される。49はリードカムで、前記苗タンク29を苗植爪31に対して左右方向へ往復移動案内する。
【0011】
苗植装置1は、マット苗の供給を受けて繰出ベルト27の間歇的駆動によって後下端の苗分離口28へ向けて繰出す多条植形態の苗タンク29と、苗植伝動ケース30の後方において側面視楕円形状の苗植軌跡線Dを描いて苗植作動する苗植作動する苗植爪31とから構成して、この苗植伝動ケース30の下面を支持するフロート2が、この下側にセンタフロート2A、及びこの左右両側部のサイドフロート2Bとして配置し、後部のフロート軸32の周りに上下揺動自在に支持している。このセンタフロート2Aの上下揺動によって滑走土壌面の深さを検出して、前記リフトシリンダ26の油圧回路の制御弁を作動させて、苗植装置1を上下動して植付深さを一定に維持するように制御することができる。苗植爪31は、各フロート2の左右両側の均平部に対応して作動する多条植形態として、前記苗植軌跡線Dの上端部を作動するとき苗タンク1の苗分離口28に介入して苗分離しながら、保持した苗を前記フロート2で均平した土壌面に適宜深さに植付ける。
【0012】
このような各フロート2の前側には、整地ロータ3としての代掻ロータを配置して、前記後車軸23を後車軸伝動ケース33の伝動機構部からロータ連動軸34を介して駆動される。センタフロート2Aは、サイドフロート2Bに対して前方へ長く突出した形態にあるため、これらの前側に配置の整地ロータ3も、センタフロート2Aの前側のセンタロータ3Aを、サイドフロート2Bの前側のサイドロータ3Bよりも前方に位置させて配置して、これらセンタフロート2A、及びセンタロータ3Aを、左右後輪15間の中央部で、車体16のセンタライン部上に位置させて設け、サイドフロート2B、及びサイドロータ3Bを、左右後輪15踏跡後側部に対向させて設けている。
【0013】
前記苗植伝動ケース30の前側には、フレームアーム35、及びフロントフレーム36等を介して、ロータ伝動ケース37を支持し、この左右両側のロータ伝動ケース37の前端部間に、センタロータ3Aのロータ軸38の左右両端部を軸受けし、このロータ伝動ケース37の後端部外側に、サイドロータ3Bのロータ軸39の内端を軸受けする。前記左側のロータ伝動ケース37の後端部には、入力軸40を設けて、前記ロータ連動軸34の後端部を連結して、この左側のロータ軸39を伝動回転すると共に、このロータ軸39からロータ伝動ケース37内のチエンを経て、センタロータ軸38、及び右側のサイドロータ軸39等を伝動回転する。前記ロータ伝動ケース37の前部をフロントフレーム36の前部に吊下げる吊下ロッド41、及びスプリング42を設けている。前記リフトシリンダ26の伸縮によって苗植装置1を昇降するときは、フロート2、及び整地ロータ3等を一体として昇降することができる。
【0014】
前記施肥装置5は、肥料を収容する施肥ホッパー43と、この施肥ホッパー43の肥料を繰出す繰出装置44、この繰出装置44から繰出される肥料を搬送するブロワー45、及びこの肥料をフロート2の底部に形成の溝切器46へ案内する施肥ホース47等から構成される。前記繰出装置44は、調節弁の開閉度、乃至繰出ロールの回転数等によって肥料の繰出量を増、減するように構成し、コントローラ48からの出力によって作動制御することができる。
【0015】
ここにおいて、走行土壌面に苗を植付ける苗植装置1を支持してこの土壌面を滑走するフロート2の底部に、又は、このフロート2の前側の土壌面を整地する整地ロータ3部に、土壌成分を検出する土壌成分センサ4を設け、前記苗植装置1による苗植えを行いながら同時に土壌成分センサ4によるこの苗植付土壌面の土壌成分を検出する構成とする。苗植装置1に苗を供給して苗植作業を行う。この苗植機の苗植作業走行によって、フロート2の滑走によって苗植付土壌面が均平されて、この均平跡の土壌面に苗植装置1による苗植付けが行われる。このような苗植作業において、フロート2の底部に土壌成分センサ4を設ける形態では、このフロート2の滑走による土壌面の均平作用と同時に、この土壌成分センサ4による土壌成分の検出を行う。又、このフロート2の前側に整地ロータ3を設けて、この整地ロータ3部に土壌成分センサ4を設ける形態では、この整地ロータ3の駆動によってフロート2前の土壌面を整地して均平化すると共に、この部分の土壌成分センサ4によって検出する。このように、土壌成分センサ4によって検出された土壌部を、前記後側の整地ロータ3で整地し、又はフロート2で均平にして、苗植付作用を行わせるものである。
【0016】
又、前記土壌成分センサ4の検出により、苗植付土壌面に同時施肥する施肥装置5の施肥量を制御可能に設ける。前記のようにして、フロート2の滑走する土壌面、乃至整地ロータ3で整地される土壌面を、土壌成分センサ4で検出して、この検出値によって施肥装置5の施肥量を制御する。
【0017】
前記各フロート2の均平部には作溝器46を設けて、後側部で植付作動する苗植爪31の前方土壌面位置に作溝する。この作溝器46の上側に前記施肥ホース47の先端部をのぞませて、施肥装置5から搬送される肥料を受けて作溝内へ案内供給させる。この作溝器46は、苗植爪31による植付位置に対して少し左、右横方向へ偏位して設けられる。各フロート2の左右一対の作溝器46間の中間位置に、土壌成分センサ4をフロート2底面に突出させて、電極端子形態の構成とし、このフロート2底面によって押圧される土壌面を潜行しながら、この土壌成分センサ4に摺接する土壌成分を電子的に検出する。特に土壌中に含まれる肥料、養分成分量の多、少をコントローラ48へ入力する形態とする。
【0018】
前記各フロート2の土壌成分センサ4による検出値によって、この検出センサ4と対応する繰出装置44の肥料繰出量を制御する。検出肥料成分値が高いときは、繰出量を少くし、逆に検出肥料成分が低いときは、繰出量を多くするように、繰出装置44を駆動制御する。
【0019】
前記土壌成分センサ4を、整地ロータ3に設ける形態は、整地ロータ3の幅の中央部に位置して、ロータ軸38、39と一体的に回転するディスク形態として構成し、整地土壌面に適宜深さに介入回転しながら、摺接土壌面の土壌成分を検出する形態とすることができる。又、この整地ロータ3による整地域の中央部に、上方のフロントフレーム36部、乃至フロート2部等から突出してソリ杆のように刺し込まれるソリ杆形態として構成することもできる。
【0020】
又、前記のように、複数のフロート2、又は整地ロータ3を配置する形態では、土壌成分センサ4を中央部のセンタフロート2A、又は整地ロータ3Aのみ設ける構成とすることもできる。このような土壌成分センサ4を単一形態とする場合は、全ての繰出装置44をこの土壌成分センサ4の検出によって制御する。
【0021】
前記リフトシリンダ26等を駆動する油圧回路の油圧力は、前記整地ロータ3を装着して代掻き作業を行わせる場合は、全圧状態として使用することができる。又、畦際での操向等でオートリフトにより苗植装置1や、整地ロータ3等を自動上昇させる場合において、車体16、乃至苗植装置1等が大きく傾斜しているときは、このオートリフト制御をOFFの状態に自動的に切替えて、機体操向の安定性を図る。
【0022】
又、前記エンジン14のアクセル操作においてハンドアクセルを構成するが、運転者が運転席13に着座していないときは、操作反応を緩やかにするようにコントロータを介してマイコン制御する形態として、又、傾斜地では、緩速でアップ、ダウン変化させて、操作の安定性を維持することができる。
【0023】
又、変速レバー操作時等において、エンジン14の回転を自動で調整するオートアクセルにおいて、走行地面が傾斜地であるときは、エンジン14の回転を優先して上昇させる。又は、アイドリング回転を上昇させて、作業性を向上するように構成することもできる。又、前記整地ロータ3のクラッチを入りにするときは、エンジン14の回転を優先して上昇させて作業性を向上させることができる。又、畦クラッチ切りにしたときのオートアクセルは、エンジン14の回転を優先して出力不足を防ぎ、フィーリングを高め、作業性を向上できる。又、オートマーカ切りのときは、オートアクセルはエンジン14の回転を先に上げてから、油圧無段変速装置21のトラニオンアームを操作することにより、フィーリングを向上できる。又、ハンドル11の操向操作で、苗植クラッチを入り、切りにするオートターンの切り時は、エンジン14の回転上昇を優先させる。
【符号の説明】
【0024】
1 苗植装置
2 フロート
3 整地ロータ
4 土壌成分センサ
5 施肥装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行土壌面に苗を植付ける苗植装置(1)を支持してこの土壌面を滑走するフロート(2)の底部に、又は、このフロート(2)の前側の土壌面を整地する整地ロータ(3)部に、土壌成分を検出する土壌成分センサ(4)を設け、前記苗植装置(1)による苗植えを行いながら同時に土壌成分センサ(4)によるこの苗植付土壌面の土壌成分を検出することを特徴とする苗植機。
【請求項2】
前記土壌成分センサ(4)の検出により、苗植付土壌面に同時施肥する施肥装置(5)の施肥量を制御可能に設けたことを特徴とする請求項1に記載の苗植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−172233(P2010−172233A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16920(P2009−16920)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】