説明

苗移植機

【課題】つる苗の種類に応じて圃場におけるつるの寝かす角度(植付角度)を変更することができる苗移植機を提供すること。
【解決手段】機体を自走させる走行装置1上に設けた植付用のつる状の苗を搬送する苗搬送部3から苗植付体4が、つる状の苗を受け取り、つる状の苗を保持して圃場に植え付けるに際して苗植付体4の先端部に設けた作用部4aでつる状苗を挟持して下降して圃場の土中に突入した後、機体進行方向に沿う方向に移動し、該方向へ設定距離移動した後に苗の挟持を解いて上昇して土中から抜け出すよう動作する構成とし、ハンドルフレーム2bに設けた支点軸40aに苗植付体4を揺動自在に取り付け、苗植付体4の作用部4aによる苗植え付け姿勢を支点軸40aに対する苗植付体4の取付角度の調節により変更する構成とした苗移植機である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、甘藷苗等のつる苗を圃場に移植する苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
甘藷苗等のつる苗を苗植付体で挟持して圃場に寝かすようにして植え付ける苗移植機として、本出願人は機体を自走させる走行装置上に設けた植付用のつる状の苗を搬送する苗搬送部からつる状の苗を受け取り、つる状の苗を保持しながら下降して圃場の土中に突入した後、機体進行方向に沿う方向に移動し、該方向へ設定距離移動した後に苗の保持を解いて上昇して土中から抜け出すよう動作する苗植付体により圃場に苗を植え付ける苗移植機を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−341833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された苗移植機では、つる苗を圃場に寝かすようにして植え付けるが、つる苗の種類に応じて圃場におけるつるの寝かす角度(植付角度)をそれぞれ適切しないと移植後の苗の活着・生育効果に影響することがある。また、各地方の慣行農法に応じたつる苗の植え付け方法(植付角度)に適応した植付けが行なえる苗移植機が必要である。
【0005】
そこで本発明の課題は、つる苗の種類や各地方の慣行農法に応じて圃場におけるつるの寝かす角度(植付角度)を変更することができる苗移植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために次のような技術的手段を備える。
すなわち、請求項1記載の発明は、機体を自走させるハンドルフレーム(2b)を有する走行装置(1)と、該走行装置(1)上に植付用のつる状の苗を搬送する苗搬送部(3)と、該苗搬送部(3)からつる状の苗を受け取り、つる状の苗を保持して圃場に植え付ける苗植付体(4)を設けた苗移植機において、前記苗植付体(4)は、支持部(4b)とその先端部に設けた作用部(4a)からなり、該作用部(4a)でつる状苗を挟持して下降して圃場の土中に突入した後、機体進行方向に沿う方向に移動し、該方向へ設定距離移動した後に苗の挟持を解いて上昇して土中から抜け出すよう動作する構成とし、ハンドルフレーム(2b)に設けた支点軸(40a)に苗植付体(4)を揺動自在に取り付け、苗植付体(4)の作用部(4a)による苗植え付け姿勢を前記支点軸(40a)に対する苗植付体(4)の取付角度の調節により変更する構成としたことを特徴とする苗移植機である。
【0007】
請求項2記載の発明は、機体側面視で前記ハンドルフレーム(2b)に設けた支点軸(40a)を、苗植付体(4)の作用部(4a)による苗取り位置としたことを特徴とする請求項1の苗移植機である。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記苗植付体(4)の作用部(4a)が苗を挟持する側の近傍の支持部(4b)に灌水機構の水放出用開口(4b1または4b2)を設けたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、ハンドルフレーム(2b)に設けた支点軸(40a)に対する苗植付体(4)の取付角度の調節により苗植付体4の作用部(4a)による苗植え付け姿勢を変更できるので、簡潔な構成で容易に苗の植え付け姿勢変更が行える。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、苗の植え付け姿勢を変更しても、苗植付体(4)の苗を取る位置が変わらないので、適切に苗を取り出して適切に苗を植え付けることができる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、苗植付体(4)の作用部(4a)の近傍の支持部(4b)における作用部(4a)による苗を挟持する側に灌水機構の水放出用開口(4b1または4b2)を設けたので、灌水機構は、圃場の土中を移動する間に水を前記放出用開口部(4b1または4b2)から放出し、圃場に植え付けた苗に直接灌水することができ、移植後の苗の活着・生育がよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態の苗移植機の側面図である。
【図2】図1の苗移植機の苗搬送部と苗植付体とを示す一部省略した背面図である。
【図3】図2の苗移植機の苗搬送部の周回軸部分の拡大図である。
【図4】図3の苗保持部の斜視図である。
【図5】図1の苗移植機の苗植付体の先端の苗を把持する作用部とその近傍の構成を示す図である。
【図6】図5の別実施例の構成を示す図である。
【図7】図5の別実施例の構成を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態の苗移植機について図面と共に説明する。
つる状の苗として甘しょ苗を植え付ける場合を例に説明する。なお、以下の図示例についての説明で前又は後というときは、操縦ハンドル2を配置した側を後とし、その反対側、即ちエンジン5を配置した側を前としていい、そして、右又は左というときは、機体後部において機体前部に向って立つ作業者から見て右手側を右とし、左手側が左としていう。
【0014】
図1は本発明の実施の形態の苗移植機の側面図、図2は図1の苗移植機の苗搬送部と苗植付体とを示す一部省略した背面図である。
苗移植機は、走行装置1と操縦ハンドル2を備えた機体に、甘しょ苗を搬送する苗搬送部3と、該苗搬送部3によって搬送されてきた苗を圃場に植付ける苗植付体4とを備えた構成である。
【0015】
走行装置1は、図示例ではエンジン5と、該エンジン5の動力が伝達されて駆動回転する左右一対の後輪6、6と、該車輪6、6の前方に転動自在に支持した左右一対の前輪7、7とを備えたものとしている。
【0016】
エンジン5の後部にはミッションケース8を配置し、そのミッションケース8は、その左側部からエンジン5の左側方に延びるケース部分を有し、これがエンジン5の左側部と連結している。このケース部分にエンジン5の出力軸が入り込んでミッションケース8内の伝動機構に動力が伝達される構成となっている。ミッションケース8の左右両側部に伝動ケース9、9を回動自在に取り付け、この伝動ケース9、9の回動中心にミッションケース8から左右両外側方に延出させた車輪駆動軸の先端が入り込んで伝動ケース9、9内の伝動機構に走行用の動力を伝達している。そして、走行用の動力は伝動ケース9、9内の伝動機構を介して機体後方側に延びて、その後端側側方に突出する車軸10、10に伝動し、後輪6、6が駆動回転するようになっている。
【0017】
また、伝動ケース9、9のミッションケース8への取付部には、上方に延びるアーム11、11を一体的に取り付けていて、これがミッションケース8に固定された昇降用油圧シリンダ12のピストンロッド12aの先端に上下軸心周りに回動自在に取り付けた天秤杆13の左右両側部と連結している。
その連結部の右側は図示しないロッドで連結し、左側は伸縮作動可能な左右水平制御用油圧シリンダ15で連結している。
【0018】
昇降用油圧シリンダ12が作動してそのピストンロッド12aが機体後方に突出すると、左右の前記アーム11、11は後方に回動し、これに伴い伝動ケース9、9が下方に回動して、機体が上昇する。反対に昇降用油圧シリンダ12のピストンロッド12aが機体前方に引っ込むと、左右の前記アーム11、11は前方に回動し、これに伴い伝動ケース9、9が上方に回動して、機体が下降する。この昇降用油圧シリンダ12は、機体に対する畝上面高さを検出するセンサー23の検出結果に基づいて機体を畝上面高さに対して設定高さになるよう作動するよう構成しており、また、操縦ハンドル2近傍に配置した操作具の人為操作によって機体を上昇或は下降させるよう作動する構成ともしている。
【0019】
また、左右水平制御用油圧シリンダ15が伸縮作動すると、前記天秤杆13が、その左右中央部の昇降用油圧シリンダ12のピストンロッドの先端と連結する上下軸心周りに回動して左右の伝動ケース9、9を互い違いに上下動させ機体を左右に傾斜させる。この左右水平制御用油圧シリンダ15は、左右水平に対する機体の左右傾斜を検出するセンサー(図示せず)の検出結果に基づいて機体を左右水平になるように作動するよう構成している。
【0020】
左右の駆動車輪である後輪6を人為的或は自動的な操作により互いに異なる高さに変更して機体が左右水平になるよう修正するとき、図2に示す苗搬送部3の上昇搬送部3cは左右の駆動用の後輪6の間から後輪6の上方に重なるようになっているが、この上昇搬送部3cの幅広無端ベルト26aの外周にテンションローラ36が押し当てられて上昇搬送部3cが周回内側に屈折しているので、上昇搬送部3cの下側に位置する後輪6の上下移動範囲が充分に確保される。
【0021】
前記操縦ハンドル2は、ミッションケース8に前端部を固定した操縦ハンドルフレーム2bの後端部に取り付けている。操縦ハンドルフレーム2bは機体の左右中央から右側に偏った位置に配置されて後方に延び、また、前後中間部から斜め後上方に延びている。操縦ハンドル2は、操縦ハンドルフレーム2bの後端部から左右に後方に延びてその各後端部を操縦ハンドル2のグリップ部2a、2aとしている。操縦ハンドル2の左右のグリップ部2a、2aは、作業者がそのグリップ部2a、2aを楽に手で握れるように適宜高さに設定する。なお、図例ではグリップ部2a、2aを左右に分かれた構成としているが、操縦ハンドル2の左右の後端部を互いに左右に連結してその連結部分をグリップ部としても良い。
【0022】
また、上記走行装置1は四輪構成としたものであるが、左右一対の駆動輪のみの2輪構成でもよいし、前輪7の替わりに畝上面を転動する鎮圧輪としてもよい。また、クローラー式の走行装置としてもよい。
【0023】
次に、苗搬送部3と苗植付体4について説明する。
苗植付体4は、その苗植付け作用部4aを昇降動させる駆動部16と連結し、該苗植付体4の苗植付け作用部4aは一対の苗植付け挟持具であり(図5には一方のみを図示)、苗搬送部3により搬送されてきた苗に作用して苗を圃場に植付ける構成としたものである。
【0024】
苗植付体4を駆動する駆動部16には、ミッションケース8内から苗植付体4の駆動用の動力を受けて伝動する伝動機構を内装する植付け伝動ケース18に設けた駆動軸19から動力が伝達される。
【0025】
そして、苗搬送部3は伝動ケース18に設けた駆動軸19に固着した駆動スプロケット20からチェーン21を経由して苗収容体26の無端ベルト26aを回動させる回転体29〜32を駆動させる従動スプロケット22に動力伝達させる。
【0026】
また、苗植付体4の駆動部16は自在継手24を介して駆動軸19からの動力が伝達される構成であり、自在継手24でつなぐユニバーサルロッド25の回転が速まるポイントを苗植付体4の作用部4aが圃場に挿入されるときに合わせる。その結果、苗植付体4の作用部4aが圃場に挿入されている時間が短くなり、圃場の植付け穴が小さくなって適切な苗の植付けが行なえる。
【0027】
苗植付体4の駆動部16の基部は支持アーム40の先端に固着している。支持アーム40は操縦ハンドルフレーム2bに取り付けた支持アーム39に基部側の支点40aが揺動自在に支持される。さらに操縦ハンドルフレーム2bには取付アーム41が取り付けられており、該取付アーム41と一体の回転ハンドル支持部材43の先端部に駆動部16の先端の上側がネジ軸45を介して支持されている。回転ハンドル支持部材43には回転ハンドル42が取り付けられている。
従って回転ハンドル42の操作で伸縮するネジ軸45を回動させて回転ハンドル支持部材43と駆動部16との間の長さを伸縮調整できる。
【0028】
また、苗植付体4は、駆動部16から左方向に突出して並列配置された駆動軸47,47にそれぞれ下端部が取り付けられた一対の揺動アーム4c,4cで揺動支持される。一対の揺動アーム4c,4cは駆動軸47,47の長手方向に直交する方向に揺動するように取り付けられ、一対の揺動アーム4c,4cの先端には苗支持部4bの基部が取り付けられている。また、一対の揺動アーム4c,4cの一方の揺動アーム4c(図1に示す例では機体前側の揺動アーム4c)の中央部には駆動軸16の側壁面に回動自在に支持された折り畳み自在の2本のアーム部材48,49が連結している。すなわち、2本のアーム部材48,49のうちの一方のアーム部材48の一端が駆動軸16の側壁面に回動自在に支持され、該アーム部材48の他端が他方のアーム部材49の一端と回動自在に支持され、該アーム部材49の他端が揺動アーム4cの中央部に回動自在に支持されている。
【0029】
従って、一対の揺動アーム4c,4cがそれぞれ駆動軸47,47を中心に揺動すると苗支持部4bも揺動し、苗支持部4bの先端の作用部4aは図1の軌跡Tに示す軌道上を往復運動する。
【0030】
また回転ハンドル42を回転させて、ネジ軸45を介して回転ハンドル支持部材43の先端部と駆動部16の先端部の間の距離を変更することで駆動部16が揺動支点(支持部材40の基部側の支点40a)を中心に上下方向に揺動し、揺動アーム4c,4cの揺動支点(駆動軸47,47)の位置が変わり、苗植付体4の作用部4bの軌跡Tも変更する。
【0031】
駆動部16の先端が矢印S1方向に移動すると作用部4bの軌跡Tも矢印S2方向に移動し、つる苗を、より「斜め植え」と呼ばれる植え付け方法で植えつけることができる。また、駆動部16の先端が矢印S1の反対方向に移動すると作用部4aの軌跡Tも矢印S2の反対方向に移動し、「船底植え」と呼ばれる、つる苗をより横向きにした植え付けを行うことができる。
【0032】
このとき苗植付体4の作用部4aの軌跡Tが駆動部16の揺動支点(支持部材40の基部側の支点40a)付近を通過し、この支点40aの近くを作用部4aが通過する際に苗搬送部3の苗を取ることができ、この位置を苗取り位置とすることができるので、安定した苗植付が可能となる。
従って、つる苗の種類に応じて又はそれぞれの地方の習慣に応じて簡潔な構成で容易に苗の植え付け姿勢変更を無段階に調整することができる。
なお、苗植付体4の作用部4aは左右一対からなり、前記苗取り位置を一対の作用部4aが通過するタイミングで苗を把持することができる。
【0033】
図5には、図1の苗移植機の苗植付体の先端の苗を把持する作用部とその近傍の構成を示し、図5(a)は苗植付体4の作用部4a近傍の支持部4bの構成を示す斜視図である。苗植付体4の支持部4bの内部には灌水用の流路を設けておき、該流路を流れる水を作用部4a近傍の支持部4bに設けた切欠部4b1から排出する構成にしておく。図5には一対の苗植付体4の一方の内側(他方の苗植付体4に対向する側)のみを図示しているので、植え付けた苗に両方の苗植付体4の内側から直接灌水することができる。そのため、水を苗に直接当てることができるだけでなく、苗植付体4による苗の連れ戻しを防止するので、移植後の苗の活着・生育がよい。
【0034】
図5(b)には別実施例の苗植付体4の支持部4bに穴4b2を開けた場合の作用部4a近傍の支持部4bの側面図を示し、図5(c)には支持部4bに穴4b2を開けた場合の支持部4bの縦断面図を示すように支持部4bの長手方向に対して斜めに穴を設けることで水を作用部4aの先端に向けて出すことで苗の根元部に当てることができる。
【0035】
このように図5に示す構成とすることで、苗植付体4の支持部4bの先端を削り取るだけで水排出用の切欠部4b1が得られ、加工性に優れた苗植付体4が作製できるだけでなく、作用部4aの溶接接続時に水排出用開口がつぶれるおそれも回避できる。
なお、一対の苗植付体4の一方の内側には突起部4a1を設けているので、把持した苗がズレ落ちなく、確実に把持することができる。
【0036】
図6(a)には苗植付体4の支持部4bに設けた灌水用の流路の作用部4aの近傍に多数の同一径の穴4b2を規則的に並べて設けた例を示し、図4(b)には支持部4bに設けた灌水用の流路の作用部4aの近傍に多数の穴4b2を作用部4a側ほど径が大きくなるように並べて設けた例を示す。
【0037】
支持部4bに設けた穴4b2の大きさを作用部4a側へ向かうほど大きくすることで、均等に水を吐出させることができ、圃場に植え付けた苗に両方の苗植付体4の内側から直接灌水することができ、苗の連れ戻し防止ができ、移植後の苗の活着・生育がよい。
【0038】
また、図7に破線で示すように、標準組み付状態で、たわませた状態の支持部4bを実線で示す状態にすることで苗植付体4の作用部4aが苗を従来以上の挟持力で把持することができる。
【0039】
苗搬送部3は、図2に示すように苗収容部26を機体上部側で左右外側から内側への搬送方向Cに搬送する上部横搬送部3aと、該上部横搬送部3aにより搬送されてきた苗収容部26を、機体下側で苗植付体4が苗を取出す苗取出し個所Pに向けて下降搬送する下降搬送部3bと、該下降搬送部3bにより搬送されてきた苗収容部26を苗取出し個所Pから機体外側斜上方に搬送し前記上部横搬送部3aの搬送始端側に戻す上昇搬送部3cとを備える。
【0040】
また、苗搬送部3は、上記の搬送部3a、3b、3cを形成するように配置した駆動回転する回転体29、29と自由回転する複数の回転体30、31、32に湾曲自在の幅広無端ベルト26aを掛け回し、該幅広無端ベルト26aの外周面に前後方向に沿う板状の仕切り部材26bを周方向に設定間隔で多数立設して、該仕切り部材26bで周方向に挟まれた個所のそれぞれを苗収容部26として構成している。幅広無端ベルト26aの仕切り部材26bで周方向に挟まれた個所の前後一端部につる状苗の基部側部分を左右の苗挟持部材によって保持する苗保持部26cを設けている。幅広無端ベルト26aの前後両端側に周方向設定間隔で送り孔26dを多数形成し、前記駆動回転体29、29の外周部の突起がその送り孔26dに係合して幅広無端ベルト26aを周回駆動する構成としている。苗保持部26cは、図示例では、苗搬送方向上手側の苗挟持部材を毛先が苗搬送方向下手側の苗挟持部材に向うブラシ体27bで構成し、苗搬送方向下手側の苗挟持部材はスポンジ等の弾性部材27aで構成し、これら左右の苗挟持部材27の間につる状苗の基部側部分を押し込んで挟持させる構成としている。
【0041】
苗搬送部3を駆動回転する回転体29、29は、機体上部側で左右中央側に前後方向に配置した回転軸33の前後に一体回転するように取付けて配置し、機体上部側で左右外側に自由回転する前後に長いローラで構成した回転体であり、そして、機体下部側に前後に長いローラで構成した回転体31、32を苗取出し個所P(図2)を挟んで左右に接近させて並べて配置している。これらの回転体29、29;30、31、32は、植付伝動ケース18に基部が固定された支持部材18aによって支持している。
【0042】
また、苗植付体4が苗を土中で開放して上昇するときに苗搬送部3が駆動され、苗植付体4が苗を苗取出し個所Pから取出して土中に突入し苗を開放して上昇するときまでは苗搬送部3が駆動停止される。
【0043】
苗搬送部3は、上記のように幅広無端ベルト26aを用いて構成したので、苗搬送部3の軽量化及び簡略化が図れ、また、前記上昇搬送部3cは左右の駆動車輪6、6の間から駆動車輪6の上方に重なる位置に配置して、機体の前後長が短いコンパクトな機体構成となり、しかも、上昇搬送部3cの幅広無端ベルト26aの外周にテンションローラ36を押し当てて該上昇搬送部3cが周回内側に屈折する構成としているので、上部横搬送部の巾と高さを適宜設定して苗供給の作業性を損なわないようにしながらも、上昇搬送部の下側に位置する駆動車輪の上下移動範囲を充分に確保できて、機体の傾斜適応性が良好なものとなる。
【0044】
幅広無端ベルト26aの外周面に立設する前記仕切り部材26bを、前記幅広無端ベルト26aの前後幅より短い前後幅に設けるとともに、前端部が前記幅広無端ベルト26aの前端部より後側で、後端部が前記幅広無端ベルト26aの後端部より前側になるよう設け、前記テンションローラ36を、幅広無端ベルト26aの外周面にあって、該ベルト26aの前後方向一端側個所と、該ベルト26aの前後方向他端側で前記苗保持部26cと仕切り部材26bの前後一端部との間の仕切り部材が無い個所とに配置している。これにより、幅広無端ベルト26aのテンションを前後にわたってバランスよく与えることができ、また、テンションローラ36が仕切り部材26bを押し倒すこともなく、苗搬送部3を的確且つ円滑に周回駆動できる。しかも、苗保持部26cより前後方向外側にベルト端部を張出させる構成も回避できて、苗植付体4の苗の取出しも良好に行われるものとなる。
【0045】
また、図4に前記幅広無端ベルト26aの外周面の一部平面図に示すように前記幅広無端ベルト26aの外周面に立設する前記仕切り部材26bを、前記幅広無端ベルト26aの前後幅より短い前後幅に設けるとともに、前端部が前記幅広無端ベルト26aの前端部より後側で、後端部が前記幅広無端ベルト26aの後端部より前側になるよう設け、前記幅広無端ベルト26aに、該幅広無端ベルト26aを周回駆動する駆動回転体29、29の外周部の突起に係合する送り孔26dを周方向設定間隔で多数形成し、該幅広無端ベルト26aの送り孔26dは、幅広無端ベルト26aの外周面にあって、該ベルト26aの前後方向一端側個所と、該ベルト26aの前後方向他端側で前記苗保持部26cと仕切り部材26bの前後一端部との間の仕切り部材が無い個所とに設けている。これにより、幅広無端ベルト26aを前後にわたってバランスよく駆動回転でき、苗搬送部3を的確且つ円滑に周回駆動でき、しかも、苗保持部26cより前後方向外側にベルト端部を張出させる構成も回避できて、苗植付体4の苗の取出しも良好に行われるものとなる。
【0046】
更に、苗搬送部3は、幅広無端ベルト26aを用いて構成して苗搬送部3の軽量化、簡略化を図ったものであるとともに、その幅広無端ベルト26aに取付ける苗保持部26cは、その取付け部材が苗搬送部3の周回動中に容易に撓まない部材で構成し、苗搬送部3の周回動中に苗保持部26cから苗が脱落し難いようにしたものでありながら、苗保持部26cの取付け部材のそれぞれは、幅広無端ベルト26aの各取付け部に対しその周方向において単一個所で取付けて、幅広無端ベルト26aの周回動中に苗保持部26cの取付け部材の左右側が幅広無端ベルト26aの外周面から離間可能となっているので、幅広無端ベルト26aの周回軸(前記回転体29、29;30、31、32の回転軸)の周りの屈曲移動が円滑に行われ、苗搬送部3が円滑且つ的確に周回動するものとなる。
【0047】
苗植付体4で圃場に移植した苗に対して土を寄せて鎮圧する覆土鎮圧輪51、51を苗搬送部3の苗取出し個所Pの後方の左右両側方に設けている。この覆土鎮圧輪51、51は、ハンドルフレーム2bの後部に固着の支持部材41に取付けた支持装置46の下部に回転自在に取付けている。そのため覆土鎮圧輪51、51は、苗搬送部3及び苗植付体4の重量を地面に受けさせる接地輪としても機能する。また覆土鎮圧輪51、51を上下に位置調節可能となっている。従って、覆土鎮圧輪51、51の上下位置調節によって、苗搬送部3及び苗植付体4の支持高さが上下調節されることになる。
また機体前方の上方には予備苗載せ枠60を設けている。
【産業上の利用可能性】
【0048】
つる苗の植付装置として重労働を開放する農作業機として利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0049】
1 走行装置 2 操縦ハンドル
2a グリップ部 2b ハンドルフレーム
3 苗搬送部 3a 上部横搬送部
3b 下降搬送部 3c 上昇搬送部
3d 下部横搬送部 4 苗植付体
4a 作用部 4b 支持部
4a1 突起部 4b1 穴
4c 揺動アーム 5 エンジン
6 後輪 7 前輪
8 ミッションケース 9 伝動ケース
10 車軸 11 アーム
12 昇降用油圧シリンダ
12a ピストンロッド
13 天秤杆
15 左右水平制御用油圧シリンダ
16 苗植付体駆動部 18 植付け伝動ケース
18a 支持部材 19 駆動軸
20 駆動スプロケット
21 駆動チェーン 22 従動スプロケット
23 センサ 24 自在継手
25 ユニバーサルロッド
26 苗収容体 26a 幅広無端ベルト
26b 仕切部材 26c 苗保持部
26d 送り孔 27a スポンジ
27b ブラシ 27 挟持部材
29,30,31,32 回転体
33 回転軸 36 テンションローラ
39,40 支持アーム
40a 支点 41 取付アーム
42 回転ハンドル 43 回転ハンドル支持部材
45 ネジ軸 46 支持装置
47,48 駆動軸 48,49 アーム部材
51 鎮圧輪 60 予備苗載せ枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体を自走させるハンドルフレーム(2b)を有する走行装置(1)と、該走行装置(1)上に植付用のつる状の苗を搬送する苗搬送部(3)と、該苗搬送部(3)からつる状の苗を受け取り、つる状の苗を保持して圃場に植え付ける苗植付体(4)を設けた苗移植機において、
前記苗植付体(4)は、支持部(4b)とその先端部に設けた作用部(4a)からなり、該作用部(4a)でつる状苗を挟持して下降して圃場の土中に突入した後、機体進行方向に沿う方向に移動し、該方向へ設定距離移動した後に苗の挟持を解いて上昇して土中から抜け出すよう動作する構成とし、
ハンドルフレーム(2b)に設けた支点軸(40a)に苗植付体(4)を揺動自在に取り付け、苗植付体(4)の作用部(4a)による苗植え付け姿勢を前記支点軸(40a)に対する苗植付体(4)の取付角度の調節により変更する構成としたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
機体側面視で前記ハンドルフレーム(2b)に設けた支点軸(40a)を、苗植付体(4)の作用部(4a)による苗取り位置としたことを特徴とする請求項1の苗移植機。
【請求項3】
前記苗植付体(4)の作用部(4a)が苗を挟持する側の近傍の支持部(4b)に灌水機構の水放出用開口(4b1または4b2)を設けたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−87496(P2011−87496A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242684(P2009−242684)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】