説明

苗移植機

【課題】苗トレイのポットから苗を取り出して圃場に植え付ける苗移植機において、苗植付具に苗を供給する際の苗への衝撃を低減させる。
【解決手段】苗供給装置5と、苗供給装置の苗供給部21から苗を取り出す苗取出爪28を有する苗取出装置6と、苗取出爪が取り出した苗が供給され圃場に植え付ける苗植付具11を有する苗植付装置7とを備える。苗植付具に苗が供給される際、苗取出爪によって苗が供給される方向は車体前方に傾いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗トレイのポットから苗を取り出して圃場に植え付ける苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、苗移植機は、走行機体に、縦横に多数のポットを備えた苗トレイを載置する苗供給装置と、畝に苗を植え付ける苗植付装置と、苗供給装置の苗トレイから苗を1つずつ取り出して苗植付装置へと供給する苗取出装置とを備えて構成されているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の苗移植機において、苗取出装置は、苗供給装置の前方側に配置されており、一対の苗取出爪と、一対の苗取出爪の動作を制御する制御手段とを備えている。これにより、一対の苗取出爪は、苗取出位置となる苗トレイのポット内に移動し、ポット内にて育苗された苗の根鉢を上方より突き刺してその苗をポットから取り出し、苗放出位置となる苗植付装置の苗植付具の上方まで苗を搬送した後に、その苗を苗植付具に向けて放出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−189917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の苗移植機では、苗取出装置から苗植付具へ苗を放出する際に、苗が苗植付具の壁面に強く当たり、苗を傷つけてしまうことがあった。
【0006】
苗植付具は、上死点付近で前方に移動する軌跡を描いて動作するが、従来の苗移植機では、上死点付近で前方に移動している苗植付具に対して、苗放出位置において苗取出装置から斜め後方に向けて苗が放出されるため、苗の種類によっては苗植付具の移動方向に沿っていらず、苗植付具に苗を供給する際に、苗が苗植付具の壁に強く当たって傷つくことがあった。
【0007】
本発明は、このような従来の苗移植機の課題を考慮して、苗植付具に苗を供給する際の苗への衝撃を低減できる苗移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、次の解決手段で解決される。
【0009】
第1の本発明は、
苗供給装置(5)と、
前記苗供給装置(5)の苗供給部(21)から苗を取り出す苗取出爪(28)を有する苗取出装置(6)と、
前記苗取出爪(28)が取り出した前記苗が供給され圃場に植え付ける苗植付具(11)を有する苗植付装置(7)とを備え、
前記苗植付具(11)に前記苗が供給される際、前記苗取出爪(28)によって前記苗が供給される方向は車体前方に傾いている苗移植機である。
【0010】
また、第2の本発明は、
前記苗は、前記苗植付具(11)が上下動する軌跡において、前記苗植付具(11)が上死点を過ぎたときに前記苗植付具(11)に供給される、第1の本発明の苗移植機である。
【0011】
また、第3の本発明は、
前記車体に固定された、補強された苗取出装置用フレーム(42)を備え、
前記苗取出装置(6)は、前記苗取出装置用フレーム(42)に固定されている、第1または第2の本発明の苗移植機である。
【0012】
また、第4の本発明は、
前記苗取出装置用フレーム(42)は、前記苗取出装置(6)の前後左右を取り囲む剛体で構成されている、第3の本発明の苗移植機である。
【0013】
また、第5の本発明は、
前記苗取出装置(6)は、前記苗取出爪(28)を回動するための爪駆動軸(55)、および前記爪駆動軸(55)の一部を収納する苗取爪ケース(43)を有し、
前記爪駆動軸(55)の、前記苗取出爪(28)とは反対側の端部は、前記苗取爪ケース(43)から露出して、前記爪駆動軸(55)を駆動する駆動用チェーン(50)が巻きかけられており、
前記苗供給装置(5)を移動させるための動力を伝達する苗載台送り駆動軸(54)の端部が、前記苗取爪ケース(43)内で、回転力が伝達されるように前記爪駆動軸(55)と接続されており、
前記苗取爪ケース(43)から露出している前記爪駆動軸(55)の少なくとも一部および前記苗載台送り駆動軸(54)の一部も含めて収納するように、前記駆動用チェーン(50)を収納するチェーンケース(53)が取り付けられている、第1〜第4のいずれかの本発明の苗移植機である。
【発明の効果】
【0014】
第1の本発明によって、上死点付近で前方に向けて移動している苗植付装置7に対して、苗取出装置6から垂直よりも前方に向けて苗を放出することにより、苗植付具11の移動方向に沿って苗が供給されることになり、苗植付具11への供給時における苗への衝撃を低減することができる。
【0015】
第2の本発明によって、上死点を過ぎて下方に向けて移動し始めた苗植付装置7に対して、苗を下方に向けて放出するので、よりスムーズに苗を供給することができ、苗に与える衝撃をさらに低減することができる。
【0016】
第3の本発明によって、苗取爪ケース取り付け用のフレーム42を植付部ミッションケース47に固定する際に、位置ずれを抑制でき、再調整することなく取り付けることができる。
【0017】
第4の本発明によって、苗取爪ケース取り付け用のフレーム42を植付部ミッションケース47に固定する際に、取り付け時の調整をさらに容易にできる。
【0018】
第5の本発明によって、苗取出装置6および苗トレイ搬送装置5を駆動するためのチェーン50と苗タンク横送り駆動軸54との干渉を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態の苗移植機の左側面図
【図2】本発明の実施の形態の苗移植機の平面図
【図3】本発明の実施の形態の苗トレイ搬送装置の斜視図
【図4】本発明の実施の形態の苗トレイ搬送装置の側断面図
【図5】本発明の実施の形態の苗取出装置の側面図
【図6】本発明の実施の形態の苗取出爪によって苗を搬送している状態を示す側面図
【図7】本発明の実施の形態の苗取出装置から苗植付装置へ苗を供給する際の、苗の放出方向を説明する図
【図8】本発明の実施の形態の苗取爪ケースの取り付け構成を説明する図
【図9】(a)本発明の実施の形態の苗取爪ケース取り付け用のフレームの側面図、(b)本発明の実施の形態の苗取爪ケース取り付け用のフレームの平面図、(c)本発明の実施の形態の苗取爪ケース取り付け用のフレームの背面図
【図10】本発明の実施の形態のチェーンの取り付け構成を説明する図
【図11】(a)本発明の実施の形態のチェーンカバー基部の側面図、(b)本発明の実施の形態のチェーンカバーの側面図、(c)本発明の実施の形態のチェーンケースの平面図
【図12】本発明の実施の形態のチェーンケースの取り付け構成を説明する図
【図13】(a)本発明の実施の形態のチェーンケース部分の斜視図、(b)従来の苗移植機におけるチェーンケース部分の斜視図
【図14】本発明の実施の形態のプランジャーポンプの取り付け構成を示す図
【図15】本発明の実施の形態のプランジャーのクランクアームへの取り付け構成を説明する図
【図16】本発明の実施の形態のクランクアームの取付穴の構成を示す図
【図17】(a)本発明の実施の形態のチェックバルブの一部断面模式図、(b)本発明の実施の形態のチェックバルブの要部断面図、(c)本発明の実施の形態のチェックバルブの側面図
【図18】本発明の実施の形態の苗移植機の左右傾斜調整機構の要部側面図
【図19】本発明の実施の形態の苗移植機の左右傾斜調整機構の要部平面図
【図20】本発明の実施の形態の苗移植機の、他の構成の左右傾斜調整機構の要部平面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0021】
(実施の形態)
図1に、本発明の実施の形態の苗移植機の側面図を示し、図2に平面図を示す。
【0022】
図1および図2は、野菜などの苗を移植する苗移植機を示すものであり、この車体の前部に駆動源であるエンジンEを搭載し、車体の前後には走行車輪2、3を架設し、エンジンEの回転動力はミッションケ−ス4内のミッション装置を介して後輪3に伝えるようにしている。
【0023】
左右の前輪2、2及び左右の後輪3、3によって畝Uを跨いだ状態で機体を進行させながら苗トレイ搬送装置5、苗取出装置6、苗植付装置7等によって苗トレイに収容されている苗を畝Uの上面に植え付けていくようになっている。作業者は、機体後方を歩きながら操縦ハンドル8で機体の操向操作が行えるようになっている。
【0024】
走行部には、機体に対し後輪3、3を上下動させて、機体位置を制御する機体制御機構が設けられている。
【0025】
後輪3、3の走行伝動ケース9と走行車体との間には、車輪の上げ下げによって機体を昇降する昇降シリンダ10が設けられていて、この昇降シリンダ10を伸縮作動させると、左右の後輪3、3が同方向に同量だけ機体に対し上下動し、機体が昇降する。
【0026】
図3に、苗トレイ搬送装置5の斜視図を示し、図4に側断面図を示す。
【0027】
苗トレイ20は、複数の育苗ポット21…を縦横に連設したもので、プラスチックで形成されていて、可撓性を保持する構成になっている。各育苗ポット21は表面側で連結し、裏面は独立した形態となっている。
【0028】
苗トレイ搬送装置5は、ガイドレール22に沿って左右横方向に移動可能な苗載台23を備えている。苗載台23は苗トレイ20の底部を横一列の育苗ポット21にわたって支持する前下がりに傾斜した底板24を有している。底板24と押え枠25との間に挟み込むようにして苗トレイ20を苗載台23の上方から差し込むと、苗トレイ20の溝部に搬送チェーン26の係合ピンが係合した状態となり、この状態で搬送チェーン26を回転駆動すると、苗トレイ20が底板24に沿って斜め下方に縦送りされるようになっている。
【0029】
なお、苗トレイ搬送装置5が、本発明の苗供給装置の一例にあたり、育苗ポット21が、本発明の苗供給部の一例にあたる。
【0030】
図5に、本実施の形態の苗取出装置6の側面図を示す。
【0031】
なお、本願の図面では、特に記載のない限り、紙面に向かって左側が苗移植機の前方となるように記載している。
【0032】
苗取出装置6は、左右一対の苗取出爪28が、苗爪台ベース板30に固定された苗爪台ブロック31に嵌合して取り付けられている。苗爪台ベース板30は、爪支軸32に回動自在に支持されている。苗爪台ベース板30は、回動アーム36を介して爪支軸32を往復運動させる回転動力機構に連結されている。
【0033】
苗爪台ブロック31には貫通孔が形成されており、その貫通孔に、爪ガイド29が摺動自在に挿通支持されている。
【0034】
苗爪台ベース板30には、揺動アーム34が支軸33を介して揺動自在に支持されている。また、揺動アーム34の先端は、リンク部材35を介して爪ガイド29の後端に連結されている。また、揺動アーム34の中途部には、カムフォロア37が設けられている。カムフォロア37は、爪支軸32に取り付けられたカム体41の外周面と当接している。
【0035】
苗爪台ベース板30と揺動アーム34との間には、揺動アーム34を爪支軸32に向かう方向に付勢するコイルスプリング38が設けられている。
【0036】
苗爪台ベース板30とカム体41との相対回動により、揺動アーム34は基端の支軸33を中心に往復揺動することとなり、これによって、爪ガイド29が直線移動する。
【0037】
また、苗爪台ベース板30の先端部に配備されたコロ39と、コロ39に係合してその移動を案内する苗取爪ガイド40を備えている。苗取爪ガイド40は、溝を形成することにより略円弧形状のカム面を形成しており、取付け具を介して苗取爪ケース43に固定の苗取爪ガイド取付ステー44に固定されている。
【0038】
コロ39は、苗取爪ガイド40のカム面に案内されることにより、略円弧軌跡を描いて運動する。
【0039】
苗爪台ベース板30が苗取爪ガイド40に案内されることにより、苗取出爪28、爪ガイド29および苗爪台ブロック31で構成される苗取出具が姿勢変更しながら所定の軌跡を描いて作動すると共に、適宜タイミングで苗取出爪28が進退作動及び開閉作動することで、苗取出位置にある苗トレイ20の育苗ポット21から苗を取り出し、苗植付装置7の苗植付具11内に供給するようになっている。
【0040】
図6に、苗取出爪28によって苗を搬送している状態を示す側面図を示す。
【0041】
苗取出爪28は、図6に示すように、所定の軌跡Kを描いて作動する。すなわち、苗取出位置にある苗トレイ20の育苗ポット21内の苗に対し、苗取出爪28を苗の葉部側から苗の床土部分に突入させ、突き刺した苗を苗取出爪28の引っ込み作動で育苗ポット21深さの中途まで取り出し、苗取出爪28を育苗ポット21内から姿勢変更し且つ移動して苗トレイ20に対向する姿勢から略下向き姿勢に移行させ、その行程に続いて苗取出爪28の移動及び姿勢変更を行い、その最終位置で苗取出爪28とそれを案内している爪ガイド29との相対移動により、苗取出爪28から苗を離脱して苗植付装置7の苗植付具11へ落下供給する。
【0042】
本実施の形態の苗植付装置7は、上下動自在に支持されると共に、内部に苗を収容した状態で下降して圃場に突入し且つ左右に開くことにより、圃場に植付穴を形成すると共にその植付穴に苗を落下放出することにより苗を植え付けるタイプの苗植付具11によって構成されている。苗植付具11は先端が軌跡T1を描いて昇降動する。
【0043】
なお、軌跡T1が、本発明の、苗植付具が上下動する軌跡の一例にあたる。
【0044】
図5において、苗取爪ガイド40の上部に一点差線で示している形状は、従来の苗取爪ガイドの溝の形状を示している。本実施の形態の苗取爪ガイド40は、図5に示すように、上部の溝部分の形状を従来の形状から変更している。
【0045】
図7に、苗取出装置6から苗植付装置7へ苗を供給する際の、苗の放出方向を説明する図を示す。
【0046】
図7に示すように、苗爪台ベース板30の先端部に配備されたコロ39が、苗取爪ガイド40の溝の最上位置付近に移動したときに、苗取出爪28に保持されている苗が、下方に放出される。
【0047】
従来の苗移植機の苗取出装置では、従来の苗放出方向46に示すように、垂直方向よりも後方(苗トレイ搬送装置5側)に向けて苗を放出していたのに対し、本実施の形態の苗取出装置6は、苗放出方向45に示すように、苗取出爪28に保持されている苗を、垂直方向よりも前方(苗トレイ搬送装置5とは反対側)に向けて放出する。
【0048】
苗植付装置7は、図1の軌跡T1に示すように、上死点付近では、前方に向けて移動している。上死点付近で前方に向けて移動している苗植付装置7に対して、苗取出装置6から垂直よりも前方に向けて苗を放出することにより、苗植付具11の移動方向に沿って苗が供給されることになり、苗植付具11への供給時における苗への衝撃を低減することができる。
【0049】
さらに、苗植付装置7が軌跡T1の上死点の位置を過ぎた位置で、苗取出装置6から苗を苗植付具11へ供給することにより、上死点を過ぎて下方に向けて移動し始めた苗植付装置7に対して、苗を下方に向けて放出するので、よりスムーズに苗を供給することができ、苗に与える衝撃をさらに低減することができる。
【0050】
図8に、苗取爪ケース43の取り付け構成を説明する図を示す。
【0051】
また、図9(a)、(b)および(c)に、それぞれ、苗取爪ケース取り付け用のフレーム42の平面図、側面図、および車体後方から見た背面図を示す。
【0052】
図8に示すように、苗取爪ガイド40は、苗取爪ケース43に固定される苗取爪ガイド取付ステー44に固定される。そして、苗取爪ガイド40が取り付けられた苗取爪ケース43は、苗取爪ケース取り付け用のフレーム42に固定され、苗取爪ケース43が取り付けられたフレーム42は、植付部ミッションケース47に固定される。
【0053】
本実施の形態の苗取爪ケース取り付け用のフレーム42は、図8および図9に示すように、従来のフレームには無かった左右つなぎ部48を設けて、固定される苗取出装置6の前後左右を取り囲む構成としている。また、車体後方部分のパイプを角パイプ49として補強し、従来のフレームに比べて撓みの少ない頑丈な構造としている。
【0054】
従来のフレームでは、撓みやすいため、植付部ミッションケース47に固定する際に、位置ずれして再調整を要する場合が多かったが、本実施の形態では、このような撓み難い構造としたことにより、再調整することなく植付部ミッションケース47に固定することができる。すなわち、このような構成としたことにより、取り付け時の調整を容易にできる。
【0055】
なお、苗取爪ケース取り付け用のフレーム42が、本発明の苗取出装置用フレームの一例にあたる。
【0056】
図10に、本実施の形態の苗取出装置6および苗トレイ搬送装置5を駆動するためのチェーン50の取り付け構成を説明する図を示す。
【0057】
図11(a)および(b)には、チェーンケース53を構成するチェーンカバー基部51およびチェーンカバー52の、それぞれの側面図を示す。また、図11(c)に、チェーンケース53の平面図を示す。
【0058】
図12に、苗取爪ケース43部分のチェーンケース53の取り付け構成を説明する図を示す。
【0059】
また、図13(a)に、チェーンケース53を取り付けた後の苗取爪ケース43部分の斜視図を示し、図13(b)に、従来の苗移植機における苗取爪ケース43部分の斜視図を示す。
【0060】
図10に示すように、苗取出装置6および苗トレイ搬送装置5を駆動するためのチェーン50は、チェーンカバー基部51およびチェーンカバー52で囲まれる内部に収納される。図11(c)に示すように、チェーンカバー基部51にチェーンカバー52を取り付けることにより、チェーン50を内部に収納するチェーンケース53が形成される。
【0061】
図10に示すように、取付補助具57およびチェーンカバー基部51を介して、チェーン50を駆動するための植付部ミッションケース47に設けられた駆動軸がチェーンケース53内に挿入され、その駆動軸の端部に、チェーンケース53内に収納されるチェーン50が巻きかけられる。
【0062】
図12に示すように、苗取爪ケース43からは、チェ−ンケース53側に、爪駆動軸55および苗タンク横送り駆動軸54が出ている。チェーン50が爪駆動軸55に巻きかけられることにより、植付部ミッションケース47の駆動軸からの動力が伝達され、苗取出装置6が動作する。また、苗取爪ケース43内において、爪駆動軸55を介して苗タンク横送り駆動軸54にも動力が伝達され、苗タンク横送り駆動部56によって、苗載台23が横方向に動作する。
【0063】
なお、チェーン50が、本発明の駆動用チェーンの一例にあたり、苗タンク横送り駆動軸54が、本発明の苗載台送り駆動軸の一例にあたる。
【0064】
図12に示すように、チェーンカバー基部51には、苗タンク横送り駆動軸54の一部をチェーンケース53内に収納する部分が形成されている。一方、チェーンカバー52には、チェーンカバー基部51に取り付けた際に、チェーンケース53を貫通する爪駆動軸55の一端を露出させるための孔が形成されている。
【0065】
このような構成のチェーンカバー基部51およびチェーンカバー52としたことにより、チェーンカバー52をチェーンカバー基部51に取り付けて構成されるチェーンケース53には、図13(a)に示すように、爪駆動軸55および苗タンク横送り駆動軸54の貫通する一部が内部に収納される構成となる。
【0066】
従来の構成のチェーンケース58では、図13(b)に示すように、爪駆動軸55の一部のみをチェーンケース58内に収納し、苗タンク横送り駆動軸54を収納しない構成となっていた。このような従来の構成の場合には、苗タンク横送り駆動軸54と爪駆動軸55との間隔が狭いために、チェーンケース58の端部からチェーン50がはみ出て苗タンク横送り駆動軸54と干渉するおそれがあった。本実施の形態のように、苗タンク横送り駆動軸54もチェーンケース53内に収納する構成とすることで、チェーン50と苗タンク横送り駆動軸54との干渉を防止することができる。
【0067】
また、本実施の形態の苗移植機は、苗植付具11に水を供給する灌水装置を備えている。苗植付具11が畝Uに突入して開いて苗を開放した直後に、苗植付具11に水を供給する構成となっており、畝Uに植付けた苗に対して適切に灌水できると共に、植付後の苗植付具11内に付着している泥土を洗い流す。
【0068】
図14は、水タンクから給水用のホースを介して水を吸い上げて、送水用のホースによって苗植付具11へ水を供給するプランジャーポンプ65の取り付け構成を示している。
【0069】
図15は、プランジャーポンプ65のプランジャー63のクランクアーム60への取り付け構成を説明する図を示している。
【0070】
また、図16は、プランジャー63を取り付けるためのクランクアーム60の取付穴の構成を示している。
【0071】
図14に示すように、本実施の形態の灌水装置のプランジャーポンプ65は、取付ステー67および取付ステー68によって植付部ケース66に固定されている。また、プランジャー63の先端部が、回転駆動するクランクアーム60に取り付けられている。水タンクからの水が給水される給水用のホース69の途中には、チェックバルブ70が設けられている。なお、送水用のホースには、チェックバルブを設けていない。
【0072】
プランジャー63の先端部は、クランクアーム60の回転中心から偏心した位置に回動自在に取り付けられており、クランクアーム60の回転に伴ってプランジャー63が往復運動し、プランジャーポンプ65は、水タンクからの水を給水して苗植付具11内へ送水する。
【0073】
図15に示すように、クランクアーム60の回転中心から偏心した位置に3つの取付穴82、83、84が設けられており、プランジャー63の先端部は、取付ネジ64によって、3つの取付穴82、83、84のいずれかに回動自在に固定される。
【0074】
図15に示すように、クランクアーム60には、3つの取付穴82、83、84に対応して、3つの刻印62が記載されている。
【0075】
また、図16に示すように、3つの取付穴82、83、84は、互いに近寄った位置に配置されているので、プランジャー63の先端部を固定する取付穴を変更してもほぼ同じ位相となる。3つの取付穴82、83、84を互いに近寄った位置に配置しているので、3つの刻印62もまとまり、分かり易くなっている。
【0076】
また、3つの取付穴82、83、84のうち、灌水量が最も多くなる取付穴83を真中に配置し、その両側に、取付穴82および84を配置している。
【0077】
図17(a)に、本実施の形態のチェックバルブ70の、一部の断面を表している側面模式図を示す。図17(b)は、図17(a)の一点鎖線で囲んだ部分の断面図を示している。図17(c)は、チェックバルブ70の側面図を示している。
【0078】
図17(a)に示すように、本実施の形態のチェックバルブ70は、内部に、ゴム板71、硬質プラスチック72およびスプリング73を設けており、水の逆流を防止している。
【0079】
また、図17(b)に示すように、給水側の管の一部の壁面に、氷止め用凹部74が形成されている。水タンク側から氷が流入してきた場合でも、氷止め用凹部74に氷が引っ掛かかるので、氷によってゴム板71に穴が開くのを防止できる。
【0080】
また、図17(c)に示すように、本実施の形態のチェックバルブ70の両端は、逆ネジ構造の螺旋形状としている。これにより、ホース69をねじることなくチェックバルブ70に取り付けることができるので、交換がし易い。また、チェックバルブ70の中間部分を断面が六角形の構造としており、チェックバルブ70をフレームなどに取り付けし易くしている。
【0081】
本実施の形態の苗移植機は、図1に示すように、車体の左右の傾きを自動的に水平に調整するためのウェイト76および傾斜用油圧バルブ75を備えている。
【0082】
図18は、本実施の形態の苗移植機の左右傾斜調整機構の要部側面図を示しており、図19は、左右傾斜調整機構の要部平面図を示している。
【0083】
車体が左右方向に傾くのに応じてウェイト76が左右に振れ、ウェイト76の振れに応じて車体の左右方向の傾きを補正するように、傾斜用油圧バルブ75が左側の後輪3の高さを調整する。
【0084】
図18および図19に示すように、本実施の形態の苗移植機の左右傾斜調整機構はストッパー77を備えており、ストッパー77の端部は、スプリング78を介して感度調整ワイヤ80に接続されている。
【0085】
ストッパー77の切り欠かれたV字形状部分が、ウェイト76の括れた部分に嵌ることにより、自動水平機能をロックすることができるようになっている。スプリング78を設けることにより、感度調整ワイヤ80による引っ張る力が強過ぎて傾斜用油圧バルブ75を傷めるのを防止している。
【0086】
また、ウェイト76の下部には、手動水平ロッド79が連結されている。手動水平ロッド79を左右方向に動かすことにより、ウェイト76が左右に移動し、左右方向の傾斜のロック位置を変更できるようになっている。
【0087】
例えば、傾斜地などで野菜を植えつける場合など、苗移植機の車体が水平よりも左右方向に傾斜している方が作業し易い場合もあり、このような場合に車体の傾斜を所定の角度となるように調整できる。
【0088】
スプリング78に接続される感度調整ワイヤ80は、引き加減を調整できるようになっている。引き加減を調整することにより、ウェイト76に抵抗を加えることで自動水平機構の感度調節ができる。
【0089】
図20に、他の構成の本実施の形態の苗移植機の左右傾斜調整機構の要部平面図を示す。
【0090】
図20に示す左右傾斜調整機構は、図19の感度調整ワイヤ80の代わりに感度調整フック81を設け、スプリング78の一端を留める位置を調整して、スプリング78によってストッパー77を介してウェイト76にかかる抵抗を調節できるようにしている。
【0091】
このような構成とすることにより、感度調整ワイヤ80が不要となり、簡易な構成で自動水平機能の感度を調節することができる。
【0092】
また、ストッパー77の端部にはロック解除ケーブル85が接続されており、ロック解除ケーブル85を前方へ引っ張ることにより、自動水平機能のロックを解除できるようになっている。
【0093】
また、ロック解除ケーブル85を、苗移植機の車体を上昇させるための油圧ケーブルと連動させる構成としてもよい。このような構成とすることにより、車体が上昇する際に、ストッパー77が解除され、自動水平状態となる。これにより、苗移植機の旋回時に自動水平状態となり、苗植えの作業時には、手動で感度調節できる状態に復帰するようにできる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明に係る苗移植機は、苗植付具に苗を供給する際の苗への衝撃を低減できる効果を有し、苗トレイのポットから苗を取り出して圃場に植え付ける苗移植機等として有用である。
【符号の説明】
【0095】
2 前輪
3 後輪
4 ミッションケース
5 苗トレイ搬送装置
6 苗取出装置
7 苗植付装置
8 操縦ハンドル
9 走行伝動ケース
10 昇降シリンダ
11 苗植付具
20 苗トレイ
21 育苗ポット
22 ガイドレール
23 苗載台
24 底板
25 押え枠
26 搬送チェーン
28 苗取出爪
29 爪ガイド
30 苗爪台ベース板
31 苗爪台ブロック
32 爪支軸
33 支軸
34 揺動アーム
35 リンク部材
36 回動アーム
37 カムフォロア
38 コイルスプリング
39 コロ
40 苗取爪ガイド
41 カム体
42 フレーム
43 苗取爪ケース
44 苗取爪ガイド取付ステー
45 苗放出方向
46 従来の苗放出方向
47 植付部ミッションケース
48 左右つなぎ部
49 角パイプ
50 チェーン
51 チェーンカバー基部
52 チェーンカバー
53 チェーンケース
54 苗タンク横送り駆動軸
55 爪駆動軸
56 苗タンク横送り駆動部
57 取付補助具
58 チェーンケース
60 クランクアーム
62 刻印
63 プランジャー
64 取付ネジ
65 プランジャーポンプ
66 植付部ケース
67 取付ステー
68 取付ステー
69 ホース
70 チェックバルブ
71 ゴム板
72 硬質プラスチック
73 スプリング
74 氷止め用凹部
75 傾斜用油圧バルブ
76 ウェイト
77 ストッパー
78 スプリング
79 手動水平ロッド
80 感度調整ワイヤ
81 感度調整フック
82、83、84 取付穴
85 ロック解除ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗供給装置(5)と、
前記苗供給装置(5)の苗供給部(21)から苗を取り出す苗取出爪(28)を有する苗取出装置(6)と、
前記苗取出爪(28)が取り出した前記苗が供給され圃場に植え付ける苗植付具(11)を有する苗植付装置(7)とを備え、
前記苗植付具(11)に前記苗が供給される際、前記苗取出爪(28)によって前記苗が供給される方向は車体前方に傾いている苗移植機。
【請求項2】
前記苗は、前記苗植付具(11)が上下動する軌跡において、前記苗植付具(11)が上死点を過ぎたときに前記苗植付具(11)に供給される、請求項1に記載の苗移植機。
【請求項3】
前記車体に固定された、補強された苗取出装置用フレーム(42)を備え、
前記苗取出装置(6)は、前記苗取出装置用フレーム(42)に固定されている、請求項1または2に記載の苗移植機。
【請求項4】
前記苗取出装置用フレーム(42)は、前記苗取出装置(6)の前後左右を取り囲む剛体で構成されている、請求項3に記載の苗移植機。
【請求項5】
前記苗取出装置(6)は、前記苗取出爪(28)を回動するための爪駆動軸(55)、および前記爪駆動軸(55)の一部を収納する苗取爪ケース(43)を有し、
前記爪駆動軸(55)の、前記苗取出爪(28)とは反対側の端部は、前記苗取爪ケース(43)から露出して、前記爪駆動軸(55)を駆動する駆動用チェーン(50)が巻きかけられており、
前記苗供給装置(5)を移動させるための動力を伝達する苗載台送り駆動軸(54)の端部が、前記苗取爪ケース(43)内で、回転力が伝達されるように前記爪駆動軸(55)と接続されており、
前記苗取爪ケース(43)から露出している前記爪駆動軸(55)の少なくとも一部および前記苗載台送り駆動軸(54)の一部も含めて収納するように、前記駆動用チェーン(50)を収納するチェーンケース(53)が取り付けられている、請求項1〜4のいずれかに記載の苗移植機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate