説明

蓄電デバイス

【課題】内部短絡が発生した場合における蓄電デバイスの安全性を確保する。
【解決手段】正極集電体20や負極集電体23には、厚み方向に貫通する複数本のスリット30,31が形成される。スリット30,31によって正極集電体20や負極集電体23には複数の領域32,33が区画される。また、スリット30,31によって領域32,33間が一部断ち切られる。導電性異物Xによる内部短絡発生時には、負極集電体23の各領域33から導電性異物Xに向けて電子が移動し、導電性異物Xから正極集電体20の各領域32に向けて電子が移動する。ここで、正極集電体20や負極集電体23にはスリット30,31が形成されるため、電子はスリット30,31を迂回しながら各領域32,33間を移動することになる。これにより、緩やかにエネルギを放出させることができ、安全性を確保することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極集電体および電極合材層からなる電極を備える蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンバッテリ等の蓄電デバイスにおいては、その小型軽量化や高エネルギ密度化が進み、電気自動車、ハイブリッド自動車、携帯機器等の電源として用いられている。このような蓄電デバイスは、通常の使用環境下において十分な安全性を確保するように設計されている。しかしながら、蓄電デバイスを設計する際には、内部短絡をも考慮した上で安全性を確保することが重要である。
【0003】
そこで、破壊等によって電極間が短絡するような状況であっても、急激な温度上昇を回避するようにした蓄電デバイスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この蓄電デバイスは、対向する電極の集電体面を露出させるとともに、スリットを備えたセパレータを集電体面間に挟み込む構造を有している。これにより、蓄電デバイスに対して大きな外力が作用した場合には、電気抵抗の高い部位において内部短絡が発生する前に、電気抵抗の低い集電体面において内部短絡を発生させることが可能となる。これにより、蓄電デバイスが変形するような状況であっても、急激な温度上昇を回避して安全性を確保することが可能となっている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載される蓄電デバイスにあっては、外部からの大きな圧力による変形を想定した安全構造を有するものであり、その安全構造は導電性異物が突き刺さるような内部短絡を考慮したものではなかった。そこで、導電性異物による内部短絡時の安全性を確保するため、集電体内部にポリイミド等の樹脂層を設けるようにした蓄電デバイスが提案されている(例えば、特許文献2参照)。このように、集電体に対して電気抵抗の高い樹脂層を組み込むことにより、内部短絡時における集電体の電気抵抗を高めることが可能となる。これにより、導電性異物による内部短絡が発生した場合であっても、電極間において緩やかに放電させることが可能となり、蓄電デバイスの安全性を高めることが可能となる。さらに、特許文献2に記載される蓄電デバイスは、内部短絡時の安全性をより一層高めるため、1枚の電極を複数本の帯状に分割する構造を有している。これにより、集電体の短辺方向の電気抵抗を高めることが可能となり、蓄電デバイスの安全性を更に向上させることが可能となる。
【特許文献1】特開2005−100899号公報
【特許文献2】特許第3583761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載される蓄電デバイスの安全構造は、導電性異物による内部短絡を考慮したものであるが、集電体に樹脂層を挟み込む構造であることから、製造工程が複雑となって蓄電デバイスの高コスト化を招くものであった。また、特許文献2の蓄電デバイスにおいては、1枚の電極を複数本の帯状に分割しているが、この分割構造によって電極の一部が除去されることから、電極の容量低下を招くことになっていた。また、複数本の帯状に分割された電極は、その切断部が露出する構造を有しており、切断部より金属粉等の脱落を招いて内部短絡を発生させてしまう要因となっていた。さらに、1枚の電極を複数本の帯状に分割することは、製造時における電極の取り扱いを難しくするため、蓄電デバイスの製造コストを引き上げる要因となっていた。
【0006】
本発明の目的は、蓄電デバイスの性能低下や高コスト化を招くことなく、内部短絡時における蓄電デバイスの安全性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の蓄電デバイスは、電極集電体および電極合材層からなる電極を備える蓄電デバイスであって、前記電極集電体に、複数の領域を設定するスリットが形成され、前記電極集電体の表面に、前記電極合材層が前記スリットを覆って形成されることを特徴とする。
【0008】
本発明の蓄電デバイスは、前記電極集電体には電極端子に接合される接合部が設けられ、前記スリットは前記接合部に向けて形成されることを特徴とする。
【0009】
本発明の蓄電デバイスは、前記スリットを備える電極を製造する際には、集電体材料の一方面に支持体を取り付けた状態のもとで、前記集電体材料の他方面側から前記スリットを形成した後に、前記集電体材料の他方面側から電極スラリーを塗工して前記電極合材層を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、電極集電体に複数の領域を設定するスリットを形成したので、内部短絡時における電極集電体の電気抵抗を高めることが可能となる。これにより、内部短絡時に急激なエネルギの放出を回避することができ、蓄電デバイスの安全性を高めることが可能となる。
【0011】
しかも、電極集電体のスリットを覆うように電極合材層を形成したので、電極合材層を十分に確保することができ、蓄電デバイスの性能低下を防ぐことが可能となる。また、スリットを電極合材層によって覆うことにより、スリットを備えた電極を分断されていない1枚の状態とすることが可能となる。これにより、製造時に電極を容易に取り扱うことができ、蓄電デバイスの製造コストを抑制することが可能となる。
【0012】
また、電極を製造する際には、集電体材料の一方面に支持体を取り付けた状態で、集電体材料の他方面側からスリットを形成した後に、集電体材料の他方面側から電極スラリーを塗工している。これにより、電極スラリーがスリットから抜け落ちることがなく、スリットが形成された電極集電体に対する電極スラリーの塗工作業が容易となる。これにより、蓄電極集電体にスリットを形成する場合であっても、蓄電デバイスの製造コストを抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明の一実施の形態である蓄電デバイス10を示す斜視図である。図2は図1のA−A線に沿って蓄電デバイス10の内部構造を概略的に示す断面図である。図1および図2に示すように、外装容器であるラミネートフィルム11内には電極積層ユニット12が収容されている。この電極積層ユニット12は、交互に積層される正極13と負極14とにより構成されている。正極13と負極14との間にはセパレータ15が設けられている。また、電極積層ユニット12の最外部には、リチウム極16が負極14に対向して配置されている。負極14とリチウム極16との間にはセパレータ15が設けられている。これら電極積層ユニット12とリチウム極16とにより三極積層ユニット17が構成されている。なお、ラミネートフィルム11内には電解液が注入されている。この電解液はリチウム塩を含む非プロトン性有機溶媒によって構成されている。
【0014】
図3は蓄電デバイス10の内部構造を部分的に拡大して示す断面図である。図3に示すように、正極13は多数の貫通孔20aを備えた正極集電体(電極集電体)20を有している。この正極集電体20には正極合材層(電極合材層)21が設けられている。また、正極集電体20には凸状に伸びる端子接合部(接合部)20bが設けられている。複数枚の端子接合部20bは重ねた状態で互いに接合されている。さらに、互いに接合された端子接合部20bには正極端子(電極端子)22が接合されている。同様に、負極14は多数の貫通孔23aを備えた負極集電体(電極集電体)23を有している。この負極集電体23には負極合材層(電極合材層)24が設けられている。また、負極集電体23には凸状に伸びる端子接合部(接合部)23bが設けられている。複数枚の端子接合部23bは重ねた状態で互いに接合されている。さらに、互いに接合された端子接合部23bには負極端子(電極端子)25が接合されている。
【0015】
正極合材層21には正極活物質として活性炭が含まれている。この活性炭にはリチウムイオンやアニオンを可逆的にドーピング・脱ドーピングさせることが可能である。また、負極合材層24には負極活物質としてポリアセン系有機半導体(PAS)が含まれている。このPASにはリチウムイオンを可逆的にドーピング・脱ドーピングさせることが可能である。このように、正極活物質として活性炭を採用し、負極活物質としてPASを採用することにより、図示する蓄電デバイス10はリチウムイオンキャパシタとして機能することになる。なお、本発明が適用される蓄電デバイス10としては、リチウムイオンキャパシタに限られることはなく、リチウムイオンバッテリや電気二重層キャパシタであっても良く、他の形式のバッテリやキャパシタであっても良い。なお、本明細書において、ドーピング(ドープ)とは、吸蔵、担持、吸着、挿入等を意味している。すなわち、ドープとは、正極活物質や負極活物質に対してリチウムイオン等が入る状態を意味している。また、脱ドーピング(脱ドープ)とは、放出、脱離等を意味している。すなわち、脱ドープとは、正極活物質や負極活物質からリチウムイオン等が出る状態を意味している。
【0016】
前述したように、蓄電デバイス10内にはリチウム極16が組み込まれている。このリチウム極16は、負極集電体23に接合されるリチウム極集電体26を有している。また、リチウム極集電体26にはイオン供給源としての金属リチウム箔27が圧着されている。したがって、金属リチウム箔27と負極合材層24とは、リチウム極集電体26および負極集電体23を介して接続された状態となる。このように、負極14とリチウム極16とは電気的に接続される構造を有している。したがって、ラミネートフィルム11内に電解液を注入することにより、リチウム極16から負極14に対してリチウムイオンがドープ(以下、プレドープという)されることになる。また、正極集電体20や負極集電体23には貫通孔20a,23aが形成されている。このため、リチウム極16から放出されるリチウムイオンを積層方向に移動させることが可能である。これにより、積層される全ての負極14に対してスムーズにリチウムイオンをプレドープすることが可能となる。
【0017】
このように、負極14にリチウムイオンをプレドープすることにより、負極電位を低下させることが可能となる。これにより、蓄電デバイス10のセル電圧を高めることが可能となる。また、負極電位の低下によって正極13を深く放電させることが可能となり、蓄電デバイス10のセル容量(放電容量)を高めることが可能となる。さらに、負極14にリチウムイオンをプレドープすることにより、負極14の静電容量を高めることが可能となる。これにより、蓄電デバイス10の静電容量を高めることが可能となる。このように、蓄電デバイス10のセル電圧、セル容量、静電容量を高めることができるため、蓄電デバイス10のエネルギ密度を向上させることが可能となる。また、蓄電デバイス10の高容量化を図る観点から、正極13と負極14とを短絡させた後の正極電位が2.0V(対Li/Li)以下となるように、金属リチウム箔27の量を設定することが好ましい。なお、蓄電デバイス10のエネルギ密度を向上させるためには、負極14にリチウムイオン等をプレドープすることが効果的であるが、負極14にプレドープを施すことのない蓄電デバイスに対しても本発明を適用することが可能である。
【0018】
続いて、本発明の蓄電デバイス10が備える電極構造について説明する。図4(A)は正極13および負極14の内部構造を示す分解斜視図である。また、図4(B)は正極集電体20および負極集電体23を示す平面図である。なお、正極集電体20や負極集電体23には多数の貫通孔20a,23aが形成されているが、図4(A)および(B)には貫通孔20a,23aの一部が示されている。
【0019】
図4(A)および(B)に示すように、正極集電体20や負極集電体23には、厚み方向に貫通する複数本のスリット30,31が形成されている。これらのスリット30,31は所定間隔を空けて配置されており、スリット30,31によって正極集電体20や負極集電体23には複数の領域(充放電領域)32,33が区画されている。また、それぞれのスリット30,31は、その長手方向が端子接合部20b,23bを向くように配置されている。さらに、領域32,33間に配置されるスリット30,31により、領域32,33間が一部断ち切られるようになっている。すなわち、領域32,33間で電流が流れる際には、スリットが設けられていないときのように領域32,33間の最短経路αを通って電流が流れるのではなく、各領域32,33を連結する連結部34,35を経て電流が流れることになる。
【0020】
このようなスリット30,31を形成することにより、蓄電デバイス10に内部短絡が発生した場合に、急激なエネルギ放出を回避して安全性を確保することが可能となる。ここで、図5は釘等の導電性異物Xが刺さる内部短絡状態の蓄電デバイス10を示す部分断面図である。また、図6(A)は図5のI−I線に沿って負極集電体23の内部短絡時における電流経路を示す説明図である。また、図6(B)は図5のII−II線に沿って正極集電体20の内部短絡時における電流経路を示す説明図である。
【0021】
図5に示すように、蓄電デバイス10に対して導電性異物Xが刺さった場合には、正極集電体20と負極集電体23とが導電性異物Xを介して短絡された状態となる。このような内部短絡発生時には、負極集電体23の各領域33から導電性異物Xに向けて電子が移動し、導電性異物Xから正極集電体20の各領域32に向けて電子が移動することになる。このとき、図6(A)に示すように、負極集電体23にはスリット31が形成されることから、スリットが設けられていないときのように電子は各領域33間の最短経路αを移動することができず、矢印βで示すように、電子はスリット31を迂回しながら導電性異物Xの刺さる領域33に向けて移動することになる。また、図6(B)に示すように、正極集電体20にもスリット30が形成されることから、スリットが設けられていないときのように電子は各領域32間の最短経路αを移動することができず、矢印βで示すように、電子はスリット30を迂回しながら導電性異物Xの刺さる領域32から他の領域32に向けて移動することになる。このように、内部短絡発生時にはスリット30,31を迂回して電流が流れるため、通常の充放電時に比べて正極集電体20や負極集電体23の電気抵抗を高くすることができる。これにより、負極集電体23から正極集電体20に対する急激な放電を回避することが可能となり、蓄電デバイス10の安全性を向上させることが可能となる。
【0022】
しかも、スリット30,31は端子接合部20b,23bに向けて形成されることから、通常の充放電時においては、スリット30,31が無い場合と同様に、正極集電体20や負極集電体23の電気抵抗を低く抑えることが可能である。ここで、図7は正極集電体20や負極集電体23の通常充放電時における電流経路を示す説明図である。図7に示すように、通常の充放電時においては、スリット30,31を迂回させることなくスムーズに電流を流すことができるため、スリット30,31が無い場合と同様に、正極集電体20や負極集電体23の電気抵抗を低く抑えることが可能となる。これにより、蓄電デバイス10の出力特性を良好に保ちながら、蓄電デバイス10の安全性を向上させることが可能となる。
【0023】
また、図4(A)に示すように、正極集電体20や負極集電体23の表面には、正極合材層21や負極合材層24が形成されている。これらの正極合材層21や負極合材層24は、スリット30,31や貫通孔20a,23aを覆うように形成されている。このように、スリット30,31を覆う正極合材層21や負極合材層24を形成することにより、正極合材層21や負極合材層24を十分に確保することができ、蓄電デバイス10の性能低下を防ぐことが可能となる。すなわち、正極合材層21や負極合材層24の外側から正極13や負極14に対してスリット30,31を加工した場合には、スリット30,31に沿って正極合材層21や負極合材層24が除去されるため、活物質量が不足して蓄電デバイス10の容量が低下することになる。これに対し、正極集電体20や負極集電体23だけにスリット30,31を形成し、このスリット30,31を閉塞するように正極合材層21や負極合材層24を設けることにより、十分な活物質量を確保して蓄電デバイス10の容量低下を回避することが可能となる。
【0024】
また、スリット30,31を覆う正極合材層21や負極合材層24を形成することにより、製造時における正極13や負極14の取り扱いが容易となり、蓄電デバイス10の製造コストを抑制することが可能となる。すなわち、正極合材層21や負極合材層24の外側から正極13や負極14に対してスリット30,31を加工した場合には、正極13や負極14が帯状に分断されることから、製造時における正極13や負極14の取り扱いが難しくなる。これに対し、正極合材層21や負極合材層24によってスリット30,31を覆うことにより、正極13や負極14を分断されていない1枚の状態で取り扱うことが可能となる。これにより、製造時における正極13や負極14の取り扱いが容易となり、蓄電デバイス10の製造コストを抑制することが可能となる。
【0025】
また、正極集電体20や負極集電体23にスリット30,31を形成した場合であっても、このスリット30,31を正極合材層21や負極合材層24によって閉塞することから、蓄電デバイス10の耐久性を向上させることが可能となる。すなわち、正極合材層21や負極合材層24の外側から正極13や負極14に対してスリット30,31を加工した場合には、スリット30,31が露出することになるため、スリット30,31から正極集電体20や負極集電体23の金属粉等が脱落するおそれがある。この金属粉等は内部短絡を引き起こす要因となるが、スリット30,31を正極合材層21や負極合材層24によって閉塞することにより、スリット30,31から金属粉等の脱落を防止することができ、蓄電デバイス10の内部短絡を回避することが可能となる。なお、正極合材層21や負極合材層24の外側から正極13や負極14にスリット30,31を加工する場合に比べて、正極合材層21や負極合材層24を塗工する前の正極集電体20や負極集電体23にスリット30,31を加工する方が容易であることはいうまでもない。
【0026】
なお、蓄電デバイス10の安全性を向上させるためには、負極集電体23と正極集電体20との双方にスリット30,31を形成することにより、内部短絡時における負極集電体23と正極集電体20との電気抵抗を高めることが望ましい。しかしながら、負極集電体23と正極集電体20との双方にスリット30,31を形成することなく、正極集電体20だけにスリット30を形成しても良く、負極集電体23だけにスリット31を形成しても良い。また、蓄電デバイス10に組み込まれる負極集電体23や正極集電体20のうち、一部の負極集電体23や正極集電体20に対してスリット30,31を形成しても良い。
【0027】
また、前述の図4においては、端子接合部20b,23b側の端辺36,37に対してスリット30,31の長手方向がほぼ垂直となるように、正極集電体20や負極集電体23に対してスリット30,31が形成されているが、これに限られることはない。ここで、図8(A)および(B)は本発明の他の実施の形態である蓄電デバイスが備える電極集電体(正極集電体と負極集電体とをまとめて電極集電体という)38,39を示す説明図である。なお、図8において図4(B)に示す部位と同一の部位については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0028】
図8(A)に示すように、端子接合部20b,23b側の端辺36,37に対してスリット40の長手方向が傾斜するように、電極集電体38に対してスリット40を形成しても良い。また、図8(B)に示すように、端子接合部20b,23b側の端辺36,37に対してスリット41の長手方向がほぼ平行となるように、負極集電体39に対してスリット41を形成しても良い。このように、スリット40,41を形成した場合であっても、スリット40,41によって電極集電体38,39に領域(充放電領域)42,43が区画される。さらに、スリット40,41によって領域42,43間が一部断ち切られた状態となる。これにより、内部短絡時における電極集電体38,39の電気抵抗を高めることができ、蓄電デバイスの安全性を高めることが可能となる。ただし、図8に示すようにスリット40,41を形成した場合には、図6に示すように端子接合部20b,23bに向けてスリット30,31を形成する場合よりも、通常の充放電時における内部抵抗は高い傾向を示している。なお、前述した各スリット30,31,40,41は、一直線に伸びた形状であるが、これに限られることはない。例えば、湾曲した形状でも良く、折れ曲がった形状でも良い。
【0029】
また、前述した各スリット30,31,40,41は、一本につながった状態であるが、一本のスリットを複数に分割しても良い。ここで、図9(A)および(B)は本発明の他の実施の形態である蓄電デバイスが備える電極集電体(正極集電体と負極集電体とをまとめて電極集電体という)44,45を示す説明図である。なお、図9において図4(B)に示す部位と同一の部位については、同一の符号を付してその説明を省略する。図9(A)および(B)に示すように、電極集電体44,45のスリット46,47は、複数の長孔46a,47aを直線状に配置することによって形成されている。このように、複数の長孔46a,47aによってスリット46,47を形成した場合であっても、スリット46,47によって電極集電体44,45に領域(充放電領域)48,49が区画される。さらに、スリット46,47によって領域48,49間が一部断ち切られた状態となる。これにより、内部短絡時における電極集電体44,45の電気抵抗を高めることができ、蓄電デバイスの安全性を高めることが可能となる。
【0030】
続いて、正極13および負極14の製造方法について説明する。以下、製造方法の説明においては、正極13および負極14を電極として記載することにより、正極13の製造方法と負極14の製造方法とをまとめて説明する。なお、製造方法の説明においては、正極合材層21および負極合材層24を電極合材層として記載している。図10は電極の製造方法を示すフローチャートである。また、図11および図12は各製造工程における電極の状態を示す概略図である。なお、図11および図12においては、作図の都合上、貫通孔20a,23aを図示せず、スリット30,31を図示している。
【0031】
図10に示すように、ステップS101では、集電体積層ユニット50を形成する集電体積層工程が実施される。この集電体積層工程においては、図11(A)に示すように、金属箔からなる長尺の集電体材料51,52が準備され、支持体として長尺のフィルム材53が準備される。そして、一対の集電体材料51,52によってフィルム材53を挟み込むことにより、集電体材料51,52およびフィルム材53からなる集電体積層ユニット50が形成される。なお、正極13を製造する際には、集電体材料51,52として例えばアルミニウム箔が用いられる。また、負極14を製造する際には、集電体材料51,52として例えば銅箔が用いられる。また、フィルム材53としては、後述するエッチング液に対する耐性を有するものが用いられる。さらに、フィルム材53としては、後述する集電体剥離工程に対応するため、微粘着フィルムや剥離可能なフィルムを用いることが好ましい。例えば、加熱することにより剥離するフィルムとして、リバアルファ(登録商標,日東電工株式会社)を用いることが可能である。また、微粘着フィルムとして、パナプロテクト(登録商標,パナック株式会社)を用いることが可能である。
【0032】
図10示すように、続くステップS102では、集電体積層ユニット50にレジスト層54を形成するレジスト印刷工程が実施される。このレジスト印刷工程においては、図11(B)に示すように、集電体積層ユニット50の一方面50aと他方面50bとの双方に所定パターンでレジストインクが印刷される。これにより、集電体積層ユニット50の一方面50aと他方面50bとの双方には所定パターンのレジスト層54が形成されることになる。なお、レジスト印刷工程においては、グラビア印刷やスクリーン印刷等によってレジストインクが印刷されるが、フィルム材53を挟み込むことから双方のパターンを一致させる必要は無い。また、レジストインクとしては、後述するエッチング液に対する耐性を有するものであれば、一般的なものが使用可能である。さらに、レジストインクとしては、アルカリ溶剤等によって溶解除去できるものが好ましい。
【0033】
また、前述の説明では、液状のレジストインクを用いてレジスト層54を形成しているが、予めフィルム化されたドライフィルムレジストを貼り付けるようにしても良い。例えば、ドライフィルムレジストとして、デュポンMRCドライフィルム株式会社製のFXRやFX900等を用いることが可能である。なお、ドライフィルムレジストを用いる場合には、貼り付けたドライフィルムレジストに対して露光処理および現像処理を実施することにより、集電体積層ユニット50に所定パターンのレジスト層54が形成されることになる。
【0034】
図10に示すように、続くステップS103では、集電体積層ユニット50に貫通孔20a,23aおよびスリット30,31を形成するエッチング工程が実施される。このエッチング工程においては、図11(C)に示すように、レジスト層54をマスクとして用いて集電体積層ユニット50にエッチング処理が施される。これにより、集電体積層ユニット50の一方面50aと他方面50bとの両側から、それぞれの集電体材料51,52に対して多数の貫通孔20a,23aおよびスリット30,31が形成される。このエッチング処理に用いられるエッチング液は、集電体材料51,52の材質に応じて適宜選択されるものである。前述したように、集電体材料51,52としてアルミニウム箔や銅箔を用いた場合には、エッチング液として塩化第二鉄水溶液、苛性ソーダ、塩酸等を用いることが可能である。
【0035】
図10に示すように、続くステップS104では、集電体積層ユニット50からレジスト層54を除去するレジスト除去工程が実施される。このレジスト除去工程においては、図11(D)に示すように、貫通孔20a,23aおよびスリット30,31以外の非エッチング部を保護していたレジスト層54が集電体積層ユニット50から除去される。アルカリ溶解型のレジストインクを用いた場合には、塩酸等によりエッチング処理を行い、洗浄を行った後に、水酸化ナトリウム水溶液を用いてレジスト層を除去することが可能である。更に、洗浄、中和処理、洗浄を繰り返して乾燥させることにより、貫通孔20a,23aおよびスリット30,31を備えた集電体材料51,52が、フィルム材53を挟み込んだ状態で形成されることになる。
【0036】
このように、複数の集電体材料51,52に対して同時にエッチング処理を施すようにしたので、貫通孔20a,23aおよびスリット30,31を有する正極集電体20や負極集電体23の製造コストを大幅に引き下げることが可能となる。また、集電体材料51,52間にエッチング液を遮断するフィルム材53を介在させることにより、それぞれの集電体材料51,52に対して片面側からエッチング処理を施すようにしている。これにより、集電体積層ユニット50の両面に形成するレジスト層54のパターンを整合させる必要がないため、正極集電体20や負極集電体23の製造コストを引き下げることが可能となる。
【0037】
次いで、図10に示すように、ステップS105では、一方の集電体材料51によって構成される電極Aに、第1電極合材層55を形成する第1スラリー塗工工程が実施される。この第1スラリー塗工工程においては、図12(A)に示すように、集電体積層ユニット50の一方面50aに電極スラリーが塗工される。そして、この電極スラリーを乾燥させることにより、集電体積層ユニット50の表面上に電極合材層55が形成される。ここで、図13は塗工乾燥装置100の一例を示す概略図である。図13に示すように、ロール101から繰り出されるエッチング後の集電体積層ユニット50は、ダイコータ等の塗工部102に案内される。この塗工部102において、集電体積層ユニット50には電極スラリーが塗工される。そして、塗工された電極スラリーを乾燥させるため、集電体積層ユニット50は水平方向に搬送されながら乾燥炉103を通過するようになっている。
【0038】
前述したように、集電体材料51,52間にはフィルム材53が設けられている。このため、貫通孔20a,23aおよびスリット30,31を有する集電体材料51,52に電極スラリーを塗工しても、電極スラリーが貫通孔20a,23aおよびスリット30,31を通過して集電体積層ユニット50の裏側に抜けることが無い。したがって、ガイドローラ104等に電極スラリーを付着させることなく、集電体積層ユニット50を水平方向に搬送することが可能となる。これにより、垂直方向に集電体材料を引き上げる塗工方法に比べて乾燥炉103を長く設定することが可能となる。よって、集電体材料51,52の搬送速度を引き上げることができ、電極の生産性を向上させることが可能となる。さらに、貫通孔20a,23aおよびスリット30,31を有する集電体材料51,52においては、貫通孔20a,23aやスリット30,31を持たない集電体材料に比べて強度が低くなる。このため、貫通孔20a,23aやスリット30,31を有する集電体材料51,52の搬送速度を高めることが困難となっていた。これに対し、フィルム材53を介して集電体材料51,52を重ね合わせることにより、その強度を高めることが可能となる。これにより、集電体材料51,52の搬送速度を引き上げることができ、電極の生産性を向上させることが可能となる。
【0039】
続いて、図10に示すように、ステップS106では、他方の集電体材料52によって構成される電極Bに、第1電極合材層56を形成する第1スラリー塗工工程が実施される。この第1スラリー塗工工程においては、図12(B)に示すように、上下を反転させた集電体積層ユニット50の他方面50bに電極スラリーが塗工される。そして、この電極スラリーを乾燥させることにより、集電体積層ユニット50の表面50b上に電極合材層56が形成される。集電体材料51の一方面側にはフィルム材53が設けられ、集電体材料51の他方面側には電極合材層55が設けられる。また、集電体材料52の一方面側にはフィルム材53が設けられ、集電体材料52の他方面側には電極合材層56が設けられる。この第1スラリー塗工工程においても、集電体積層ユニット50にはフィルム材53や電極合材層55が設けられるため、電極スラリーが貫通孔20a,23aおよびスリット30,31を通過して裏側に抜けることは無い。よって、集電体積層ユニット50を水平方向に搬送しながら、効率良く電極合材層56を形成することが可能となる。
【0040】
図10に示すように、続くステップS107では、集電体積層ユニット50から集電体材料51,52を剥離する集電体剥離工程が実施される。図12(C)に示すように、集電体剥離工程においては、電極合材層55,56を備えた集電体材料51,52が、それぞれフィルム材53から剥離される。なお、フィルム材53として熱剥離フィルムを用いた場合には、乾燥炉103の通過に伴って熱剥離フィルムの粘着力が低下するため、容易に集電体材料51,52を剥離することが可能となる。
【0041】
図10に示すように、続くステップS108では、剥離した集電体材料51の未塗工面57に第2電極合材層59を形成する第2スラリー塗工工程が実施される。同様に、ステップS109では、剥離した集電体材料52の未塗工面58に第2電極合材層60を形成する第2スラリー塗工工程が実施される。これらの第2スラリー塗工工程においては、図12(D)に示すように、電極合材層55,56を下側に配置した状態で、集電体材料51,52の未塗工面57,58に電極スラリーが塗工される。そして、この電極スラリーを乾燥させることにより、集電体材料51,52の未塗工面57,58上に電極合材層59,60が形成される。この第2スラリー塗工工程においても、集電体材料51,52には電極合材層55,56が設けられるため、電極スラリーが貫通孔20a,23aおよびスリット30,31を通過して集電体材料51,52の裏側に抜けることは無い。よって、集電体材料51,52を水平方向に搬送しながら、効率良く電極合材層59,60を形成することが可能となる。
【0042】
これまで説明したように、集電体材料51,52の一方面に支持体としてのフィルム材53を取り付けた状態のもとで、集電体材料51,52の他方面側からスリット30,31を形成した後に、集電体材料51,52の他方面側から電極スラリーを塗工して電極合材層55,56を形成している。このように、フィルム材53を設けることにより、スリット30,31が形成される集電体材料51,52の強度を引き上げることができ、製造時における集電体材料51,52の取り扱いが容易となる。また、フィルム材53を設けることにより、塗工された電極スラリーのスリット30,31からの抜けを防止することが可能となる。これにより、集電体材料51,52を水平方向に搬送しながら電極スラリーを塗工することができるため、電極の生産性を向上させて製造コストを引き下げることが可能となる。
【0043】
なお、支持体としてフィルム材53を設けるようにしているが、これに限られるものではない。例えば、集電体材料51,52間にレジストインクを塗布することにより、集電体材料51,52間に支持体としてのレジスト層を設けるようにしても良い。また、図10のフローチャートにおいては、2枚の集電体材料51,52を重ね合わせることにより、一度に2枚の集電体を製造しているが、これに限られることはない。例えば、1枚の集電体材料51の一方面にフィルム材53を貼り付け、集電体材料51の他方面側からスリット30,31を形成した後に電極合材層55を形成しても良い。
【0044】
以下、前述した蓄電デバイスの構成要素について下記の順に詳細に説明する。[A]正極、[B]負極、[C]正極集電体および負極集電体、[D]リチウム極、[E]セパレータ、[F]電解液、[G]外装容器。
【0045】
[A]正極
正極は、正極集電体とこれに一体となる正極合材層とを有している。蓄電デバイスをリチウムイオンキャパシタとして機能させる場合には、正極合材層に含まれる正極活物質として、リチウムイオン及び/又はアニオンを可逆的にドープ・脱ドープ可能な物質を採用することが可能である。すなわち、リチウムイオンとアニオンとの少なくともいずれか一方を可逆的にドープ・脱ドープ可能な物質であれば特に限定されることはない。例えば、活性炭、遷移金属酸化物、導電性高分子、ポリアセン系物質等を用いることが可能である。
【0046】
例えば、活性炭は、アルカリ賦活処理され、かつ比表面積600m/g以上を有する活性炭粒子から形成することが好ましい。活性炭の原料としては、フェノール樹脂、石油ピッチ、石油コークス、ヤシガラ、石炭系コークス等が使用される。フェノール樹脂や石炭系コークスは比表面積を高くできるという理由から好適である。これらの活性炭のアルカリ賦活処理に使用されるアルカリ活性化剤は、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの金属リチウムイオンの塩類または水酸化物が好ましい。中でも、水酸化カリウムが好適である。アルカリ賦活の方法は、例えば、炭化物と活性剤を混合した後、不活性ガス気流中で加熱することにより行う方法が挙げられる。また、活性炭の原材料に予め活性化剤を担持させた後加熱して、炭化および賦活の工程を行う方法が挙げられる。さらに、炭化物を水蒸気などのガス賦活法で賦活した後、アルカリ活性化剤で表面処理する方法も挙げられる。このようなアルカリ賦活処理が施された活性炭は、ボールミル等の既知の粉砕機を用いて粉砕される。活性炭の粒度としては、一般的に使用される広い範囲のものを使用することが可能である。例えば、D50が2μm以上であり、好ましくは2〜50μm、特に2〜20μmが最も好ましい。また、平均細孔径が好ましくは10nm以下であり、比表面積が好ましくは600〜3000m/gである活性炭が好適である。中でも、800m/g以上、特には1300〜2500m/gであるのが好適である。
【0047】
また、蓄電デバイスをリチウムイオンバッテリとして機能させる場合には、正極合材層に含まれる正極活物質として、ポリアニン等の導電性高分子や、リチウムイオンを可逆的にドープ・脱ドープ可能な物質を採用することが可能である。例えば、正極活物質として五酸化バナジウム(V)やコバルト酸リチウム(LiCoO)を用いることが可能である。この他にも、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiFeO等のLi(x,y,zは正の数、Mは金属、2種以上の金属でもよい)の一般式で表されうるリチウム含有金属酸化物、あるいはコバルト、マンガン、バナジウム、チタン、ニッケル等の遷移金属酸化物または硫化物を用いることも可能である。特に、高電圧を求める場合には、金属リチウムに対して4V以上の電位を有するリチウム含有酸化物を用いることが好ましい。例えば、リチウム含有コバルト酸化物、リチウム含有ニッケル酸化物、あるいはリチウム含有コバルト−ニッケル複合酸化物が特に好適である。
【0048】
前述した活性炭等の正極活物質は、粉末状、粒状、短繊維状等に形成される。この正極活物質をバインダーと混合して電極スラリーが形成される。そして、正極活物質を含有する電極スラリーを正極集電体に塗工して乾燥させることにより、正極集電体上に正極合材層が形成される。なお、正極活物質と混合されるバインダーとしては、例えばSBR等のゴム系バインダーやポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリレート等の熱可塑性樹脂を用いることができる。また、正極合材層に対して、アセチレンブラック、グラファイト、金属粉末等の導電性材料を適宜加えるようにしても良い。
【0049】
[B]負極
負極は、負極集電体とこれに一体となる負極合材層とを有している。負極合材層に含まれる負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的にドープ・脱ドープできるものであれば特に限定されることはない。例えば、グラファイト、種々の炭素材料、ポリアセン系物質、錫酸化物、珪素酸化物等を用いることが可能である。グラファイト(黒鉛)やハードカーボン(難黒鉛化性炭素)は高容量化を図ることができるため負極活物質として好ましい。また、芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であるポリアセン系有機半導体(PAS)は、高容量化を図ることができるため負極活物質として好適である。このPASはポリアセン系骨格構造を有する。このPASの水素原子/炭素原子の原子数比(H/C)は0.05以上、0.50以下の範囲内であることが好ましい。PASのH/Cが0.50を超える場合には、芳香族系多環構造が充分に発達していないことから、リチウムイオンのドープ・脱ドープがスムーズに行われず、蓄電デバイスの充放電効率が低下するおそれがある。PASのH/Cが0.05未満の場合には、蓄電デバイスの容量が低下するおそれがある。
【0050】
前述したPAS等の負極活物質は、粉末状、粒状、短繊維状等に形成される。この負極活物質をバインダーと混合して電極スラリーが形成される。そして、負極活物質を含有する電極スラリーを、負極集電体に塗工して乾燥させることにより、負極集電体上に負極合材層が形成される。なお、負極活物質と混合されるバインダーとしては、例えば、ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリレート等の熱可塑性樹脂、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム系バインダーを用いることができる。これらの中でもフッ素系バインダーを用いることが好ましい。このフッ素系バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−3フッ化エチレン共重合体、エチレン−4フッ化エチレン共重合体、プロピレン−4フッ化エチレン共重合体等が挙げられる。また、負極合材層に対して、アセチレンブラック、グラファイト、金属粉末等の導電性材料を適宜加えるようにしても良い。
【0051】
[C]正極集電体および負極集電体
正極集電体および負極集電体の材料としては、一般にバッテリやキャパシタに提案されている種々の材料を用いることが可能である。例えば、正極集電体の材料として、アルミニウム、ステンレス鋼等を用いることができる。負極集電体の材料として、ステンレス鋼、銅、ニッケル等を用いることができる。また、正極集電体や負極集電体に形成されるスリットの寸法については、通常の充放電時に比べて内部短絡時における電気抵抗を高めるものであれば、特に限定されることはない。また、前述した正極集電体や負極集電体に形成される貫通孔の開口率は特に限定されず、通常40〜60%である。また、リチウムイオンの移動を阻害しないものであれば、貫通孔の大きさ、個数、形状等について特に限定されることはない。
【0052】
[D]リチウム極
リチウム極集電体の材料としては、一般に電池やキャパシタの集電体として提案されている種々の材料を用いることが可能である。これらの材料としては、ステンレス鋼、銅、ニッケル等を用いることができる。また、リチウム極集電体として、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔、網、発泡体等の表裏面を貫く貫通孔を備えているものを使用しても良い。また、リチウム極集電体に貼り付けられる金属リチウム箔に代えて、リチウムイオンを放出することが可能なリチウム−アルミニウム合金等を用いても良い。
【0053】
[E]セパレータ
セパレータとしては、電解液、正極活物質、負極活物質等に対して耐久性があり、連通気孔を有する電子伝導性のない多孔質体等を用いることができる。通常は、紙(セルロース)、ガラス繊維、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等からなる布、不織布あるいは多孔体が用いられる。セパレータの厚みは、電解液の保持量やセパレータの強度等を勘案して適宜設定することができる。なお、セパレータの厚みは、蓄電デバイスの内部抵抗を小さくするために薄い方が好ましい。
【0054】
[F]電解液
電解液としては、高電圧でも電気分解を起こさないという点、リチウムイオンが安定に存在できるという点から、リチウム塩を含む非プロトン性有機溶媒を用いることが好ましい。非プロトン性有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホラン等を単独あるいは混合した溶媒が挙げられる。また、リチウム塩としては、例えば、LiClO、LiAsF、LiBF、LiPF、LIN(CSO)等が挙げられる。また、電解液中の電解質濃度は、電解液による内部抵抗を小さくするため、少なくとも0.1モル/L以上とすることが好ましい。更には、0.5〜1.5モル/Lの範囲内とすることが好ましい。
【0055】
また、有機溶媒に代えてイオン性液体(イオン液体)を用いても良い。イオン性液体は各種カチオン種とアニオン種の組み合わせが提案されている。カチオン種としては、例えば、NメチルNプロピルピペリジニウム(PP13)、1エチル3メチルイミダゾリウム(EMI)、ジエチルメチル2メトキシエチルアンモニウム(DEME)等が挙げられる。また、アニオン種としては、ビス(フルオロスルフォニル)イミド(FSI)、ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド(TFSI)、PF、BF等が挙げられる。
【0056】
[G]外装容器
外装容器としては、一般に電池に用いられている種々の材質を用いることができる。例えば、鉄やアルミニウム等の金属材料を使用しても良い。また、樹脂等のフィルム材料を使用しても良い。また、外装容器の形状についても特に限定されることはない。円筒型や角型など用途に応じて適宜選択することが可能である。蓄電デバイスの小型化や軽量化の観点からは、アルミニウムのラミネートフィルムを用いたフィルム型の外装容器を用いることが好ましい。一般的には、外側にナイロンフィルム、中心にアルミニウム箔、内側に変性ポリプロピレン等の接着層を有した3層ラミネートフィルムが用いられている。
【0057】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、本発明の蓄電デバイスの構造は、リチウムイオンバッテリやリチウムイオンキャパシタだけでなく、様々な形式のバッテリやキャパシタに適用することが可能である。また、前述の説明では、積層型の蓄電デバイスに沿って説明しているが、積層型に限られることはなく、捲回型の蓄電デバイスに対して本発明を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施の形態である蓄電デバイスを示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿って蓄電デバイスの内部構造を概略的に示す断面図である。
【図3】蓄電デバイスの内部構造を部分的に拡大して示す断面図である。
【図4】(A)は正極および負極の内部構造を示す分解斜視図である。また、(B)は正極集電体および負極集電体を示す平面図である。
【図5】釘等の導電性異物が刺さる内部短絡状態の蓄電デバイスを示す部分断面図である。
【図6】(A)は図5のI−I線に沿って負極集電体の内部短絡時における電流経路を示す説明図である。また、(B)は図5のII−II線に沿って正極集電体の内部短絡時における電流経路を示す説明図である。
【図7】正極集電体や負極集電体の通常充放電時における電流経路を示す説明図である。
【図8】(A)および(B)は本発明の他の実施の形態である蓄電デバイスが備える電極集電体を示す説明図である。
【図9】(A)および(B)は本発明の他の実施の形態である蓄電デバイスが備える電極集電体を示す説明図である。
【図10】電極の製造方法を示すフローチャートである。
【図11】各製造工程における電極の状態を示す概略図である。
【図12】各製造工程における電極の状態を示す概略図である。
【図13】塗工乾燥装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0059】
10 蓄電デバイス
13 正極(電極)
14 負極(電極)
20 正極集電体(電極集電体)
20b 端子接合部(接合部)
21 正極合材層(電極合材層)
22 正極端子(電極端子)
23 負極集電体(電極集電体)
23b 端子接合部(接合部)
24 負極合材層(電極合材層)
25 負極端子(電極端子)
30,31 スリット
32,33 領域(充放電領域)
38,39 電極集電体
40,41 スリット
42,43 領域(充放電領域)
44,45 電極集電体
46,47 スリット
46a,47a 長孔
48,49 領域(充放電領域)
51,52 集電体材料
53 フィルム材(支持体)
55,56 電極合材層
α 最短経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極集電体および電極合材層からなる電極を備える蓄電デバイスであって、
前記電極集電体に、複数の領域を設定するスリットが形成され、
前記電極集電体の表面に、前記電極合材層が前記スリットを覆って形成されることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項2】
請求項1記載の蓄電デバイスにおいて、
前記電極集電体には電極端子に接合される接合部が設けられ、前記スリットは前記接合部に向けて形成されることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項3】
請求項1または2記載の蓄電デバイスにおいて、
前記スリットを備える電極を製造する際には、集電体材料の一方面に支持体を取り付けた状態のもとで、前記集電体材料の他方面側から前記スリットを形成した後に、前記集電体材料の他方面側から電極スラリーを塗工して前記電極合材層を形成することを特徴とする蓄電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−44896(P2010−44896A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206672(P2008−206672)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】