説明

衝撃吸収性カバーを設けたX線検出器

【課題】X線検出器が応力及び歪みに晒されたときに検出器の内部構成要素が損傷を受けないように衝撃を吸収するX線検出器の内部構成要素を収容するカバー・アセンブリを、X線検出器の寸法及び重量を大幅に増大させることなく設ける。
【解決手段】X線検出器(30)用カバー・アセンブリ(48)は、検出器(30)を落としたり検出器が負荷を蒙ったりしたときに検出器(30)に加わる衝撃、振動、応力及び歪みを吸収するように設計された衝撃吸収材を組み入れている。カバー・アセンブリ(48)は、衝撃吸収材の層(74)又は挿入材(78)を含んでいてよい。また、衝撃吸収材のバンパー(82)がX線検出器カバー(48)に固定されていてもよい。粘弾性フォーム又は他の熱可塑性材料を衝撃吸収材として用いてよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には、X線検出器に関し、さらに具体的には、X線検出器の内部構成要素の破損を阻止するように高エネルギ衝撃を吸収することが可能なディジタル放射線撮像X線検出器用のカバー・アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
X線撮像は、臨床診断のために患者の画像を撮影したり、手荷物、小荷物及び他の小貨物のような密封された容器の内容物を検査したりするための非侵襲的手法である。これらの画像を撮影するために、X線源がX線の扇形ビーム(ファン・ビーム)で走査被検体を照射する。すると、X線は走査被検体を通過するにつれて減弱する。減弱の程度は、走査被検体の内部組成の変化の結果として該走査被検体にわたって変化する。減弱したエネルギはX線検出器に入射し、X線検出器は減弱したエネルギを画像再構成に利用可能な形態に変換するように設計されている。制御システムが、X線検出器に記憶されている電荷を読み出して、対応する画像を形成する。従来のスクリーン・フィルム式検出器では、画像をフィルムに現像して、バックライトを用いて表示する。
【0003】
フラット・パネル式ディジタルX線検出器が、画像再構成用データを取得するのに益々用いられるようになっている。フラット・パネル検出器は一般的には、シンチレータを有するものとして構成されており、シンチレータを用いてX線を可視光へ変換し、可視光を感光層によって検出することができる。感光層は感光素子又は検出器素子のアレイを含んでおり、素子は、個別に検出された光に比例する電荷を各々蓄積する。一般的には、各々の検出器素子が、感光領域と、電荷の蓄積及び出力を制御する電子回路で構成された領域とを有している。感光領域は典型的には光導体で構成され、可視光に曝露されると電子が光導体において放出される。この曝露の間に、電荷が各々の検出器素子において収集されて、電子回路領域に配置されているキャパシタに蓄積される。曝露の後に、各々の検出器素子の電荷を論理制御式電子回路を用いて読み出す。
【0004】
各々の検出器素子は従来は、トランジスタ方式のスイッチを用いて制御されている。この観点で、トランジスタのソースはキャパシタに接続され、トランジスタのドレインは読み出し線に接続され、トランジスタのゲートは、検出器の電子回路に配設されている走査制御インタフェイスに接続される。負電圧をゲートに印加すると、スイッチが駆動されてオフ状態になり、すなわちソースとドレインとの間の導通がなくなる。一方、正電圧をゲートに印加すると、スイッチはオンとなり、ソースがドレインに接続される。検出器アレイの各々の検出器素子は、それぞれのトランジスタを備えて構築され、以下に述べる態様に整合した態様で制御される。
【0005】
明確に述べると、X線照射中に、負電圧を全てのゲート線に印加すると、全てのトランジスタ・スイッチがオフ状態に駆動され又は配置される。結果として、照射中に集積されたあらゆる電荷が各々の検出器素子キャパシタに蓄積される。読み出し中に、正電圧が各々のゲート線に相次いで印加され、1回につき1個のゲートに印加される。この観点で、1回に1個の検出器素子のみが読み出される。また、マルチプレクサを用いてラスタ方式での検出器素子の読み出しを支援してもよい。各々の検出器素子を個々に相次いで読み出す利点は、1個の検出器素子からの電荷が他の如何なる検出器素子をも通過しないことである。次いで、各々の検出器素子からの出力をディジタイザに入力すると、ディジタイザは、後に行なわれるピクセル毎の画像再構成のために、取得された信号をディジタル化する。再構成画像の各々のピクセルが検出器アレイの単一の検出器素子に対応している。
【0006】
上述のように、間接検出式ディジタルX線検出器は、ヨウ化セシウム(CsI)のようなシンチレート性の材料の層を用いて、入射した放射線を可視光へ変換し、可視光が検出器アレイの個々の検出器素子の感光領域によって検出される。一般的には、トランジスタ制御式検出器素子は薄いガラス製基材に支持される。基材は検出器素子及びシンチレータ層を支持し、この基材はパネル支持体によって支持される。支持パネルは検出器構成要素を支持するように設計されているばかりでなく、検出器を制御する電子回路を検出器構成要素から隔離する。電子回路は、X線検出器の内部構成要素を封入するカバー・アセンブリの底面によって支持される。
【特許文献1】米国特許第6714623号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
X線検出器の内部構成要素、例えばシンチレータ層、検出器アレイ及びガラス基材等は比較的敏感な構成要素であって、比較的高レベルの歪み、応力及び加速度を蒙ると破損する場合がある。このようなものとして、X線検出器を落としたり、X線検出器の上を踏んだり、又はX線が他の応力若しくは歪みを蒙ると、内部構成要素が損傷して検出器性能が劣化する場合がある。結果として、X線検出器を修理する又は交換することが必要になるが、このいずれもが潜在的に高経費の解決法である。
【0008】
従って、X線検出器が応力及び歪みに晒されたときに検出器の内部構成要素が損傷を受けないように衝撃を吸収するX線検出器の内部構成要素を収容するカバー・アセンブリを設計できると望ましい。さらに、検出器の寸法及び重量を大幅に増大させることなくかかるカバー・アセンブリを設計できると望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の欠点を克服したX線検出器用カバー・アセンブリに関するものである。このカバー・アセンブリは、検出器を落としたり検出器が負荷を蒙ったりしたときに検出器に加わる衝撃、振動、応力及び歪みを吸収するように設計された衝撃吸収材を組み入れている。カバー・アセンブリは、衝撃吸収材の層、挿入材、又はこれら両方を含んでいてよい。また、衝撃吸収材のバンパーがX線検出器カバーに固定されていてもよい。粘弾性フォーム又は他の熱可塑性材料を衝撃吸収材として用いてよい。
【0010】
従って、本発明の一観点によれば、X線検出器が開示され、このX線検出器は、X線の受光に応答して電気信号を出力するように構成されているX線検出層を有する。検出器はさらに、複数の電子的構成要素を上に配設されており上述のX線検出層からの電気信号の読み出しを少なくとも制御するように構成されている回路基板を有する。カバー・アセンブリが、X線検出層及び回路基板を封入している。カバー・アセンブリは、第一の材料で形成され、またこの第一の材料とは異なる衝撃吸収材を組み入れている。
【0011】
本発明のもう一つの観点によれば、固体X線検出器が、X線照射に応答して光を出力するように構成されているシンチレータ層と、ガラス基材によって支持されており、データ取得時にはシンチレータ層によって出力された光の関数として電荷を蓄積し、読み出し時には蓄積された電荷を示す電気信号を出力するように構成されている感光性検出器素子のアレイとを含んでいる。検出器はさらに、シンチレータ層、感光性検出器素子のアレイ及びガラス基材を封入する筐体を含んでいる。粘弾性材料が筐体に固定されており、検出器に加わる応力及び歪みを吸収する。
【0012】
もう一つの観点によれば、本発明は、X線検出器の構成要素を収容するカバー・アセンブリを含んでいる。カバー・アセンブリは、上部支持パネル及び下部支持パネルを有し、これらのパネルは集合的に、X線検出器の構成要素を収容する寸法に合わせて構成されている内部空間を画定している。少なくとも一つの空隙が上部支持パネル及び下部支持パネルの少なくとも一方に形成されて、衝撃吸収材が空隙内に配設され得るようにしている。衝撃吸収材は、上部支持パネル及び下部支持パネルが形成されている材料とは異なっている。
【0013】
本発明のその他様々な特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から明らかとなろう。
【0014】
図面は本発明を実施するために現状で想到される一つの好適実施形態を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、可動型X線イメージング・システムに用いられるフラット・パネル型、固体、間接検出式、可搬型のディジタルX線検出器について記載される。但し、本発明は、直接検出式ディジタル検出器等を含めた他の形式のX線検出器にも同等に適用可能である。加えて、本発明を静止又は固定の室内型X線イメージング・システムと共に用いてもよい。さらに、本出願は、撮像「被検体」及び撮像「対象」との用語を参照する。これらの用語は相互排他的ではなく、このようなものとして、この用語の利用は互換的であり、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0016】
図1には、本発明を組み入れた可搬型X線検出器について適用可能な例示的な可動型X線イメージング・システム10を示す。X線源12が、水平アーム20の一端に装着されているか又は他の場合には固定されている。アーム20は、特定の関心領域の照射を最適化するような態様でX線源12を被検体の上方で可変配置することを可能にする。X線源12は典型的には、支柱14において水平保持(ジンバル)型構成を介して装着されていてよい(図示されていない)。この観点で、X線源は、被検体のX線照射を行なうためには、可動型X線ユニット台16上の休止位置又は停止位置から被検体の上方の適当な位置まで垂直方向に回転することができる。支柱14の回転運動は典型的には、X線源12に給電するのに用いられる高電圧ケーブル18の縺れを防ぐために、360°以下の値に制限される。ケーブル18は、業務用電源(図示されていない)又は台16に設けられているバッテリ(図示されていない)に接続されて、X線源12及びシステム10のその他の電子的構成要素へ給電することができる。当業者は、撮像被検体から得られた画像の表示のために、システム10に表示ユニット(図示されていない)を設けてもよいし、システム10を表示ユニット(図示されていない)に接続可能にしてもよいことを認められよう。
【0017】
図2には、X線イメージング・システム10の模式図が示されている。上で参照したように、システム10は、焦点スポット24から軸26に沿って撮像対象28に向かって照射のファン・ビーム22を投射するように設計されているX線源12を含んでいる。当業者は、患者、並びに手荷物及び小荷物等を、例示的なX線イメージング・システム10を用いて非侵襲的に検査し得ることを認められよう。フラット・パネル・ディジタル検出器30が、対象28を透過して対象28によって減弱したX線を検出する。図2ではコリメータ・ブレードを含むものとして概略図示されているコリメータ・アセンブリ32を用いて、照射範囲を制御するようにX線ファン・ビーム22をコリメートすることができる。
【0018】
ホスト又はスキャナ・インタフェイス34が、通信インタフェイス36、キーボード38又は他のデータ入力装置、CPU40、メモリ42、及び対象の再構成画像を表示するコンピュータ・モニタのような表示ユニット44を含んでいる。バス46が、キーボード38、CPU40、メモリ42及び表示ユニット44を通信インタフェイス36に接続している。CPUは、マイクロプロセッサ、ディジタル信号プロセッサ、マイクロコンントローラ、並びに論理動作及び処理動作を実行するように設計されているその他の装置を含み得る。X線画像に対応する信号はフラット・パネル検出器30から読み出し電子回路46を介して読み出される。図示しないが、ホスト・インタフェイス34は、監視及び保守のためにインターネット又は通信リンクを介して中央施設に接続され得るものと思量される。
【0019】
加えて、読み出し電子回路は、フラット・パネル検出器から、検出器とイメージング・システムとの間の有線接続を介して信号を読み出すことができる。また、読み出しを検出器とイメージング・システムとの間の無線通信を介して行なってもよいものと思量される。この観点で、当業者は、イメージング・システム及び検出器がデータの無線伝送を支援する送受信器、アンテナ及び他の動作サーキットリを装備していてよいことを認められよう。
【0020】
図3には、本発明を組み入れた可搬型フラット・パネルX線検出器30を遠近図で示す。検出器30は好ましくは、間接検出式固体ディジタル検出器であって、X線が入射すると光を放出するシンチレータによる発光から、撮像被検体によるX線減弱量を決定する。検出器30は、軽量の耐久性複合材で形成されたカバー48を含んでいる。検出器の可搬性を支援するために把手50がカバーに組み入れられている。図示のように、検出器30は固定の有線コード(tether)を用いずに構築されてよい。この観点で、検出器は、使用するときに読み出し電子回路に接続される有線コード(図示されていない)に接続され得る。使用中でない場合には、検出器は有線コードから容易に取り外されて、イメージング・システムから離隔して保管され得る。カバーの上部は、検出器のシンチレータ層の表面寸法を視覚的に画定するテンプレート52を含んでいる。テンプレート52は、データ取得のために検出器を配置するときに利用者を視覚的に支援するように設計されている。
【0021】
本発明は間接検出式ディジタル検出器に特に適用可能であるが、本発明を直接検出式ディジタル検出器で具現化してもよい。直接検出式ディジタル検出器は、アモルファス・セレン又は類似材料の光導体の層を薄膜トランジスタ・アレイに結合させて用いる。セレン層でのX線相互作用によって電子(又は電子孔)が放出され、これらの電子(又は電子孔)を用いて信号を直接的に発生する。電子の横方向拡散を最小限に抑えて空間分解能を保つようにセレン層に跨がる電場を形成するために、電極がしばしば用いられる。セレンに加えて、ヨウ化第二水銀、テルル化カドミウム及びヨウ化鉛を用いる場合もある。
【0022】
図4では、検出器30の内部構成を分解組立図で概略図示する。検出器30は上側カバー54を含んでおり、上側カバ−54は下側カバー56と共に、内部の構成要素のための外被又は密閉容器を形成する。カバー54及び56は両方とも好ましくは、検出器の構成要素を収納して負荷又は落下を蒙ったときにも構成要素が破損しないように保護するように、カーボングラファイトのような複合材及び粘弾性フォームのような衝撃吸収材で形成されている。後に詳述するように、カバー54及び56に、落下又は負荷を蒙ったときの検出器構成要素の破損を阻止するバンパー、フォーム挿入材及び衝撃吸収材料層等を設けて構築してもよい。組み立てたときに、上側カバー54は、検出器を床に配置して立位の被検体を支持し得るような態様で構築される。この観点で、上側カバー・パネル54は、負荷を蒙ったときの撓みを最小限に抑えるように設計されている。
【0023】
上側カバー54及び下側カバー56は集合的に、組み立てられたときに把手50を形成する。把手は検出器の可搬性を支援する。加えて、検出器は、データ取得及び読み出しの際に検出器をスキャナに接続するのに用いられる有線コード(図示されていない)から速やかに切り離されるように構築される。このようなものとして、検出器30は、互いに離隔した多数の走査拠点へ又はかかる走査拠点から輸送することができる。このことは、救急室及び他の優先治療施設では特に有利である。さらに、検出器の可搬性及び着脱性によって図1に示すもののような可動型X線イメージング・システムの可動性がさらに向上する。
【0024】
検出器30はさらに、入射したX線又はγ線を可視光へ変換するように設計されているシンチレータ層58を含んでいる。シンチレータ層58は、CsI又は他のシンチレート性材料から作製することができ、受光したX線の数及びエネルギに比例した光を放出するように設計されている。このようなものとして、光放出は、より多くのX線が受光されたか又は受光されたX線のエネルギ・レベルがより高いかのいずれかのシンチレータ層58の領域において相対的に高くなる。被検体の組成は、X線管によって投射されるX線を減弱させるので、シンチレータ層に入射するX線のエネルギ・レベルはシンチレータ層を横断して一様とはならない。この光放出の変化を用いて、再構成画像のコントラストを捕える。
【0025】
シンチレータ層58によって放出された光は、検出器素子アレイ60の検出器素子によって検出される。各々の検出器素子62が、再構成画像の画素又はピクセルに対応する。各々の検出器素子62は、感光又は光伝導領域64と電子回路領域66とを含んでいる。X線照射の間に、感光領域64において検出された光に比例した電子が感光領域64において放出される。電子回路領域66は、感光領域によって蓄積された電荷を記憶するキャパシタ(図示されていない)を含んでいる。照射の後に、キャパシタをX線スキャナの読み出し電子回路に接続するように、電子回路領域66の薄膜トランジスタ(図示されていない)にバイアスを印加する。一般的には、マルチプレクサ(図示されていない)を用いて逐次的なラスタ方式での離散的な検出器素子の読み出しを制御する。この観点で、後に行なわれる画像再構成のためのディジタル化のために、各々の検出器素子の出力が相次いでディジタイザに入力される。
【0026】
検出器素子62の薄膜トランジスタはガラス基材68によって支持される。基材68に蝕刻されたリード線(図示されていない)を用いて、検出器素子の電気的出力を送ると共に、薄膜トランジスタへのバイアス電圧を印加する。ガラス基材は一般的には、極めて薄く、脆い。この観点で、上で参照したように、上側カバー54及び下側カバー56は、衝撃吸収材によって、ガラス基材の破損防止を支援するように設計される。加えて、検出器30を用いて、撮像時の比較的大きい負荷、例えば平均的な体格の成人男性の足の撮像を支持する場合があるので、上側カバー・パネル54はさらに、検出器に対する応力を軽減して、ガラス基材及び他の検出器構成要素の破損をさらに防止するように設計される。
【0027】
ガラス基材68は、検出器パネル支持体70によって支持される。パネル支持体70は、基材68を支持するように設計されているばかりでなく、支持体70を用いて電子回路72からX線変換及び光検出用構成要素を分離することも行なわれる。パネル支持体70は、構造支持材料に加えて、放射線吸収材を含むように構築される。放射線吸収材をパネル支持体の内部に組み入れると、後方散乱したX線の検出が減少するか又は解消する。すなわち、放射線吸収材はシンチレータ層、検出器素子アレイ及びガラス基材を通過したX線、並びに検出器の背面カバーから偏向したX線を吸収する。この観点で、電子回路72は撮像されない。
【0028】
電子回路72は一実施形態では、L字形を有し、検出器の処理及び論理制御電子回路を支持するように配設される。電子回路は好ましくは、検出器の動作及び診断を監視するLEDを含んでいる。マザーボードはまた、検出器の温度及び被検体の温度についてのフィードバックを供給する温度センサを含み得る。電子回路はまた、検出器の加速を検出してこれに応じたデータを記憶するように設計されている加速度計を支持していてもよい。この観点で、加速度計を用いて、検出器が急激な加速度の増加に遭遇した日時すなわち落下した日時を記録することができる。電子回路はまた、フラッシュ・メモリを含めた様々な記憶装置を含んでいてよい。無線式の具現化形態では、マザーボードは、X線スキャナへ無線でデータを伝送するためのアンテナ及び送受信器を含み得る。加えて、電子回路は、検出器電子回路に給電するバッテリ又は他のDC電源を含んでいてよい。電子回路は、下側カバー・パネル56によって支持される。
【0029】
上述のように、X線検出器は、比較的高いエネルギの衝撃、応力及び歪みに耐えるように設計されており、検出器を落としたり検出器の上を踏んだりする場合にも比較的敏感な構成要素すなわちシンチレータ層、検出器素子アレイ、ガラス基材及びマザーボードが損傷を受けないようにしている。この観点で、一実施形態では、X線検出器30は2層の衝撃吸収材74及び76を含む。一方の層74は、上側カバー・パネルとシンチレータ層58との間に介設されるように、上側カバー・パネル54の下面を押圧して密着されるか、又は他の場合には上側カバー・パネル54の下面に近接して配置される。他方の層76はマザーボード72と下側パネル56との間に介設されるように、下側パネル56の上面に密着されるか、又は他の場合には下側パネル56の上面に近接して配置される。2層の衝撃吸収層74及び76を図示しているが、検出器が、好ましくは上側カバー・パネル54の下面を押圧して密着されている単一の層のみを含んでいてもよいし、又は検出器の各構成要素の間に介設されている多数の層を含んでいてもよいものと思量される。この観点で、衝撃吸収材は放射線を減弱させないように設計されており、このようなものとして、データ取得を妨げない。
【0030】
衝撃吸収材は好ましくは粘弾性材料であって、この材料は、落下したときに検出器に加わる衝撃及び振動を吸収するばかりでなく、例えば足の走査の場合の立位の患者のように検出器の上を踏むとき又は他の場合には負荷を蒙ったときに、検出器に加わる力を偏向させるようにも設計されている。この観点で、衝撃吸収材は、負荷を蒙ったときに変形するが、負荷が取り除かれたら元の形状を復元する。このようなものとして、衝撃吸収材は記憶を有している。
【0031】
粘弾性材料はフォームであっても他のプラスチックであってもよく、検出器に対する応力及び歪みを偏向させ吸収するように設計されている。このようなものとして、検出器の上を踏んだり又は検出器が落下したりしたときに検出器の内部構成要素例えばシンチレータ層、検出器素子アレイ、ガラス基材及びマザーボードは破損しないが、他の場合には損傷を受ける。当業者は、衝撃吸収材の厚み、密度及び組成を、検出器が負荷を蒙り又は落下しながらも検出器構成要素に損傷を与えない限度を画定するように可変的に選択し得ることを認められよう。但し*、好ましくは、検出器は、検出器が20cmの距離から落下した場合及び/又は370ポンドの点負荷を蒙った場合にも損傷が起こらないように、十分な衝撃吸収材を有すべきである。
【0032】
さらに、層74及び76は類似した厚み又は異なった厚みを有していてよく、また類似の衝撃吸収材又は異なった衝撃吸収材で構成されていてよいものと思量される。例えば、層74を、層76よりも高い吸収性及び偏向性を有するように設計することができる。この観点で、層74を、層76よりも厚くするか、又は吸収性及び偏向性を高めた材料で形成することができる。加えて、層74を顕著な粘弾性を有するフォームで形成して、層76をポリカーボネート、PVC又は他の顕著とまでは言えない粘弾性を有する材料で形成してもよい。
【0033】
図5を参照すると、X線検出器30は、衝撃吸収性挿入材78をX線検出器カバー48の周辺を巡って内側に配置された空隙に配置するように構成され得るものと思量される。挿入材は、検出器カバーの周辺全体を巡って内側に配置されてもよいし、又は図5に示すように、所定の衝撃ゾーン80に配置されてもよい。例えば、挿入材78を検出器30の各々の角(かど)に配置することができる。従って、落下したときに、検出器が床又は他の表面に角で衝突し易くなる。検出器の重量分布によって、検出器が落下したときに床又は他の表面に角で衝突する確率を高めるように構築し得ることは認められよう。カバー48の角に衝撃吸収材を組み入れることにより、落下の事態の衝撃及び結果として生ずる振動は挿入材78によって吸収されて、検出器の内部構成要素に伝達するのを防ぐことができる。衝撃の全てが吸収されなかったり又は他の場合には偏向されなかったりする場合があるが、内部構成要素が遭遇するあらゆる衝撃又は振動が、内部構成要素に損傷を与えるには不十分な大きさを有するように十分な百分率の衝撃が吸収されることは認められよう。加えて、検出器の内側に挿入材を組み入れることにより、検出器の全体寸法及び重量は、仮に増大しても無視できる程度にしか増大しない。
【0034】
挿入材78を、上側カバーと下側パネルとの間に配置された衝撃吸収材の層、及び図4に示して説明したような検出器の内部構成要素と共に用い得るものと思量される。この観点で、衝撃吸収材の層は、衝撃吸収性よりも高い偏向性を備えた材料で作製することができる。一方、挿入材78は、偏向性よりも高い衝撃吸収性を有する材料で作製することができる。この構築の結果として、検出器は、挿入材又は衝撃吸収材の層の単独で達成されるよりも大きな点負荷及び大きな衝撃に対処することが可能になる。
【0035】
また、X線検出器カバーの外周に、衝撃吸収材の「バンパー」を固定するか、密着させるか又は他の場合には接続し得るものと思量される。この実施形態を図6に示す。図示のように、衝撃吸収材のバンパー82を、検出器カバー48の1又は複数の角を押圧して密着させることができる。角を衝撃ゾーンと指定しているので、バンパーを各々の角に示している。カバー48の周辺を巡って他の衝撃ゾーンを指定し、このようなものとして、かかる衝撃ゾーンがバンパーを収容してもよいことは認められよう。この観点で、連続したバンパーが、カバー48の周辺全体を押圧して密着され得るものと思量される。図4及び図5について記載した実施形態とは対照的に、図6に示すバンパー82は検出器の寸法を増大させる場合がある。一方、検出器の寸法を増大させないようにしてカバー48の角をバンパー82で置き換え得ることも思量される。
【0036】
例えば、カバーの角以外の全体にわたって複合材を用いるのではなく、衝撃吸収材を角に用いるような態様でカバー48を成形することができる。或いは、角以外でカバー48を先ず構築して、適正に成形されたら、角に画定された空隙を満たすように楔形の衝撃吸収材をカバーに接着するか又は他の場合には密着させてもよい。さらに、図5に示す実施形態と同様に、図6の検出器を、選択された衝撃ゾーンに衝撃吸収材を含むと共に図4に示すもののような衝撃吸収材の層を含むように構築してもよい。
【0037】
従って、X線検出器が開示され、このX線検出器は、X線の受光に応答して電気信号を出力するように構成されているX線検出層を有する。検出器はさらに、複数の電子的構成要素を上に配設されており上述のX線検出層からの電気信号の読み出しを少なくとも制御するように構成されている回路基板を有する。カバー・アセンブリが、X線検出層及び回路基板を封入している。カバー・アセンブリは、第一の材料で形成され、またこの第一の材料とは異なる衝撃吸収材を組み入れている。
【0038】
また、固体X線検出器が開示され、固体X線検出器は、X線照射に応答して光を出力するように構成されているシンチレータ層と、ガラス基材によって支持されており、データ取得時にはシンチレータ層によって出力された光の関数として電荷を蓄積し、読み出し時には蓄積された電荷を示す電気信号を出力するように構成されている感光性検出器素子のアレイとを含んでいる。検出器はさらに、シンチレータ層、感光性検出器素子のアレイ及びガラス基材を封入する筐体を含んでいる。粘弾性材料が筐体に固定されており、検出器に加わる応力及び歪みを吸収する。
【0039】
本発明はまた、X線検出器の構成要素を収容するカバー・アセンブリに関するものであり、カバー・アセンブリは、上部支持パネル及び下部支持パネルを有し、これらのパネルは集合的に、X線検出器の構成要素を収容する寸法に合わせて構成されている内部空間を画定している。少なくとも一つの空隙が上部支持パネル及び下部支持パネルの少なくとも一方に形成されて、衝撃吸収材が空隙内に配設され得るようにしている。衝撃吸収材は、上部支持パネル及び下部支持パネルが形成されている材料とは異なっている。
【0040】
本発明は好適実施形態について説明されており、明記した以外の均等構成、代替構成及び改変が可能であり、特許請求の範囲内にあることが認められよう。また、図面の符号に対応する特許請求の範囲中の符号は、単に本願発明の理解をより容易にするために用いられているものであり、本願発明の範囲を狭める意図で用いられたものではない。そして、本願の特許請求の範囲に記載した事項は、明細書に組み込まれ、明細書の記載事項の一部となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】例示的な可動型X線イメージング・システムの見取り図である。
【図2】図1に示す例示的なX線イメージング・システムの概略ブロック図である。
【図3】本発明を組み入れた可搬型固体フラット・パネル・ディジタルX線検出器の遠近図である。
【図4】図3に示すX線検出器の分解組立図である。
【図5】本発明のもう一つの実施形態による可搬型固体フラット・パネル・ディジタルX線検出器の遠近図である。
【図6】本発明のさらにもう一つの実施形態による可搬型固体フラット・パネル・ディジタルX線検出器の遠近図である。
【符号の説明】
【0042】
10 可動型X線イメージング・システム
12 X線源
14 支柱
16 可動型X線ユニット台
18 高電圧ケーブル
20 水平アーム
22 ファン・ビーム
24 焦点スポット
26 軸
28 撮像対象
30 フラット・パネル・ディジタル検出器
32 コリメータ・アセンブリ
34 ホスト・インタフェイス
48 カバー
50 把手
52 テンプレート
54 上側カバー
56 下側カバー
58 シンチレータ層
60 検出器素子アレイ
62 検出器素子
64 感光領域
66 電子回路領域
68 ガラス基材
70 検出器パネル支持体
72 電子回路
74、76 衝撃吸収材層
78 挿入材
80 衝撃ゾーン
82 バンパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線(16)の受光に応答して電気信号を出力するように構成されているX線検出層(58、60)と、
複数の電子的構成要素を上に配設されており前記X線検出層(58、60)からの前記電気信号の読み出しを少なくとも制御するように構成されている回路基板(72)と、
前記X線検出層(58、60)及び前記回路基板(72)を封入しており、第一の材料で形成され、また該第一の材料とは異なる衝撃吸収材(74、78、82)を組み入れているカバー・アセンブリ(48)と、
を備えたX線検出器(30)。
【請求項2】
前記カバー・アセンブリ(48)は、当該X線検出器の可搬性を支援する把手(50)を含んでいる、請求項1に記載のX線検出器(30)。
【請求項3】
前記衝撃吸収材で形成されており、前記カバー・アセンブリの外周に固定されている1個又は複数のバンパー(78、82)をさらに含んでいる請求項1に記載のX線検出器(30)。
【請求項4】
前記カバー・アセンブリ(48)は、四つの角(80)を含んでおり、当該カバー・アセンブリ(48)の各々の角(80)を覆う衝撃吸収材で形成されているバンパー(82)を有している、請求項3に記載のX線検出器(30)。
【請求項5】
前記カバー・アセンブリ(48)は、予め決定された衝撃ゾーン(80)に配設された衝撃吸収材の挿入材(78)を含んでいる、請求項1に記載のX線検出器(30)。
【請求項6】
前記予め決定された衝撃ゾーン(80)は、前記カバー・アセンブリ(48)の角(80)を含んでいる、請求項5に記載のX線検出器(30)。
【請求項7】
前記衝撃吸収材(74、78、82)は粘弾性材料である、請求項1に記載のX線検出器。
【請求項8】
前記粘弾性材料はフォームを含んでいる、請求項7に記載のX線検出器(30)。
【請求項9】
前記X線検出層(58、60)は、シンチレータ層(58)と、該シンチレータ層の発光を検出するように構成されている感光層(60)とを含んでいる、請求項1に記載のX線検出器(30)。
【請求項10】
データ取得状態と読み出し状態との間での前記感光層(60)の動作を制御するように構成されているトランジスタを上に蝕刻されたガラス基材(68)をさらに含んでいる請求項9に記載のX線検出器(30)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−113053(P2006−113053A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−276978(P2005−276978)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】