説明

表面形状検査装置及び表面形状検査方法

【課題】一度に広範囲の被検査物表面形状を検査できる表面形状検査装置及び表面形状検査方法を提供する。
【解決手段】被検査物5の表面の凹凸を増幅する凹凸形状増幅部材1と、凹凸形状増幅部材1の下面を被検査物5の表面に沿わせるように当接させる透明板2と、被検査物5の表面の検査対象部分を凹凸形状増幅部材1に対して相対的に移動させる回転機構7と、凹凸形状増幅部材1によって増幅された被検査物5の表面の凹凸を光学的に検出するカメラ3及びコンピュータ4とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物表面の形状を検査する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写機を用いて印刷物を出力する場合、機械内部のローラ部材上にほんの僅かな欠陥が存在しただけでも、正常に印刷物が出力されないことが多い。
【0003】
このため、これらの非常に微小な欠陥を検出することが重要となる。
【0004】
一般には、このような欠陥の検査は、検査員が部材表面を目視したり、部材表面に触れたりすることによって行われている。しかし、これらの欠陥は非常に小さいため、欠陥を発見できるようになるまでには、長期間の訓練を必要とする。
【0005】
また、たとえ欠陥を見つけることができるようになっても、作業を行う検査員の負担は大きく、検査結果が審査員の体調等に影響を受けるなどの問題もある。
【0006】
このため、上記の問題を解決するために機械による自動検査法が研究・開発されている。例えば、光学系を用いた検査方法の例として特許文献1に開示される「表面検査装置」では、被検査物表面を撮像し、その画像データを処理することによって、欠陥を検出している。
【0007】
しかし、一つの撮像装置で撮像するだけでは、欠陥の高さ及び深さは測定できない。出力画像に影響を及ぼす欠陥の要因としては、大きさ以外の高さ又は深さも重要であり、小さくとも凹凸のある欠陥も検出する必要がある。もし、欠陥部の高さ及び深さを計測しようとすると、装置が大がかりになってしまう。また、レーザ変位計等で欠陥部の高さを測定することができるが、検査時間が非常に長くかかってしまう。
【0008】
その他の例として、特許文献2に開示される「部品の位置決め方法及びその方法」では、ローラ表面の凹凸や層形成部材の反り等を検出するために、回転しているローラにカーボン紙や感圧紙などの感圧シートを接触させて、その圧力分布を求めている。
【0009】
しかし、この方法ではローラ表面を感圧シートに押し付けるのみなので、非常に微小な凹凸を検出できない可能性がある。
【0010】
また、物体表面の凹凸形状を増幅して検出する方法として、特許文献3に開示される「凹凸増幅部材および凹凸増幅部材を用いた凹凸検出方法」がある。特許文献3では、物体表面の微小な凹凸を増幅するために、物体の表面に沿って変形するシート状検出部と、そのシート状検出部に垂直な複数の突起を有する凹凸増幅部材を、物体表面に指等を使って押し付け、増幅された凹凸の変化を触覚の変化として検出している。
【特許文献1】特許第3054243号公報(図1)
【特許文献2】特開平8−234558号公報(図1)
【特許文献3】特開2005−195342(図2、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献3に開示される方法では、一度に一部分の凹凸しか検出できないという問題がある。
【0012】
本発明は係る問題に鑑みてなされたものであり、一度に広範囲の被検査物表面形状を検査できる表面形状検査装置及び表面形状検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明は、第1の態様として、被検査物の表面の凹凸を増幅する凹凸形状増幅手段と、凹凸形状増幅手段の下面を被検査物の表面に沿わせるように当接させる当接手段と、被検査物の表面の検査対象部分を凹凸形状増幅手段に対して相対的に移動させる移動手段と、凹凸形状増幅手段によって増幅された被検査物の表面の凹凸を光学的に検出する検出手段とを有することを特徴とする表面形状検査装置を提供するものである。
【0014】
本発明の第1の態様においては、被検査物は円柱又は円筒状であり、凹凸形状増幅手段は、被検査物の表面に沿うように曲げ変形可能なシート状部材を下面とし、シート状部材の上に等間隔に配置され、各々がシート面と垂直方向に配向した複数の突起からなり、当接手段は、いずれも透明な剛体及び弾性体の2層構造の板であり、移動手段は、被検査物を支持及び回転させる機構であり、検出手段は、被検査物の表面を撮影するカメラ及び、該カメラが撮影した画像を解析するコンピュータであることが好ましい。又は、被検査物は板状であり、凹凸形状増幅手段は、被検査物の表面に沿うように曲げ変形可能なシート状部材を下面とし、シート状部材の上に等間隔に配置され、各々がシート面と垂直方向に配向した複数の突起からなり、当接手段は、いずれも透明な剛体及び弾性体の2層構造の板であり、移動手段は、被検査物を凹凸形状増幅手段のシート面に対して並進させる機構であり、検出手段は、被検査物の表面を撮影するカメラ及び、該カメラが撮影した画像を解析するコンピュータであることが好ましい。
【0015】
また、上記目的を達成するため、本発明は、第2の態様として、上記の表面形状検査装置を用いた表面形状検査方法であって、凹凸形状増幅手段の下面を被検査物表面の形状に沿わせ、被検査物の表面形状に合わせて変形した複数の突起の先端部の位置をカメラで撮影しながら検査対象部分を移動させ、その際に得られた画像を処理し、複数の突起の先端部の位置から被検査物の表面全体の凹凸分布を求めることを特徴とする表面形状検査方法を提供するものである。
【0016】
本発明の第2の態様においては、複数の突起の先端部の位置を基に被検査物表面のカメラの撮像範囲内での傾斜を検出し、それらの情報に基づいて被検査物表面の凹凸の深さ又は高さを含む表面形状を検出することが好ましい。これに加えて、任意の複数の突起の先端部と、他の複数の突起の先端部との間隔の変化に基づいて検査対象物表面のカメラの撮像範囲内での傾斜を検出することがより好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、一度に広範囲の被検査物表面形状を検査できる表面形状検査装置及び表面形状検査方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
〔第1の実施形態〕
本発明を好適に実施した第1の実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る表面形状検査装置の構成を示す。表面形状検査装置は、凹凸形状増幅部材1と、透明弾性体21及び透明剛体22からなる透明板2と、カメラ3とコンピュータ4とを有する。図1は、回転機構7によって回転させられている円柱又は円筒状の被検査物5に凹凸形状増幅部材1を押し付け、複数の突起部先端の位置をカメラで観測している状態を示している。凹凸形状増幅部材1は、被検査物表面形状に沿うように曲げ変形可能なシート状物体11及びそのシート状物体に垂直な方向に等間隔に配置した複数の突起12で構成されている。凹凸形状増幅部材1は、回転している円筒又は円柱状の被検査物5の表面に透明板2によって押し付けられる。この際に変形した複数の突起12の先端部の位置をカメラ3で撮影し、それをコンピュータ4で処理することにより、被検査物5の表面全体の凹凸分布や高さ及び深さを含む形状を検査する。
【0019】
図1において、被検査物5の中心から凹凸形状増幅部材1の下面までの距離をlとすると、l≦r−dが成り立つように配置されている。ここで、rは被検査物5の半径、dは被検査物5の表面凹部の最大深さである。
【0020】
被検査物5の表面に凹凸がない部分では、図2に示すように複数の突起12の先端部は上下左右に等間隔に整列した状態がカメラ3によって撮影される。これに対し凸部では、図3に示すように先端部の位置が外側に広がった状態となる。また、凹部では、図4に示すように先端部が内側に集まった状態となる。
【0021】
また、図5に示すように、被検査物5の表面の凹凸においては、hsinθ=kの関係が成り立つため、そこでの傾きがθ=arcsin(k/h)より求まり、これらの傾きを積分することによって凹凸部の高さ及び深さを含む被検査物5の表面全体の形状を求めることが可能となる。
【0022】
このように、凹凸形状増幅部材1を被検査物5の表面の形状に沿うように押し付け、被検査物5の表面の増幅された凹凸形状の広範囲を視覚センサによりその表面形状の広範囲を一度に検査するため、短時間で被検査物5の表面全体を検査できる。
また、凹凸形状増幅部材1が被検査物5の形状に沿いながら検査するため、径が一定でない円柱又は円筒状物体の表面形状検査に適用可能である。被検査物5を回転させながら検査を行うため、広い検査スペースを必要とせず、省スペースな装置構成とすることが可能である。
また、複数の突起12の先端部の位置を観測することのみで、被検査物5の表面の凹凸形状を検査できるため、簡単な構成で効率よく被検査物5の表面の形状を検査できる。
さらに、複数の突起12の先端部の位置を検出し、簡単な計算式で被検査物5の表面の高さ及び深さを含む形状を算出できる。
【0023】
本実施形態に係る表面形状検査装置は、電子写真複写機内におけるローラ等の表面の欠陥を検査する装置として好適に適用可能である。
【0024】
〔第2の実施形態〕
本発明を好適に実施した第2の実施形態について説明する。図6に、本実施形態に係る表面形状検査装置の構成を示す。第1の実施形態と同様に、表面形状検査装置は、凹凸形状増幅部材1と、透明弾性体21及び透明剛体22からなる透明板2と、カメラ3とコンピュータ4とを有する。図6は、並進移動機構8によって並進移動させられている板状の被検査物6に凹凸形状増幅部材1を押し付け、複数の突起部先端の位置をカメラで観測している状態を示す。凹凸形状増幅部材1は、被検査物6の表面形状に沿うように曲げ変形可能なシート状物体11及びそのシート状物体に垂直な方向に等間隔に配置した複数の突起12で構成されている。凹凸形状増幅部材1は、並進運動している板状の被検査物6の表面に透明板2によって押し付けられる。この際に変形した複数の突起12の先端部の位置をカメラ3で撮影し、それをコンピュータ4で処理することにより、被検査物6の表面全体の凹凸分布や高さ及び深さを含む形状を検査する。
【0025】
凹凸の有無の検出や、被検査物表面全体の形状を検出する方法は第1の実施形態と同様である。
【0026】
このように、凹凸形状増幅部材1を被検査物表面の形状に沿うように押し付け、被検査物6の表面の増幅された凹凸形状の広範囲を視覚センサによりその表面形状の広範囲を一度に検査するため、短時間で被検査物6の表面全体を検査できる。
また、凹凸形状増幅部材1が被検査物6の形状に沿いながら検査するため、厚さが一定でない板状物体の表面形状検査に利用できる。また、被検査物6を移動させながら検査するため、被検査物6を搬送する途中で検査する場合などに適用可能である。
また、複数の突起12の先端部の位置を観測することのみで、被検査物6の表面の凹凸形状を検査できるため、簡単な構成で効率よく被検査物6の表面の形状を検査できる。
さらに、複数の突起12の先端部の位置を検出し、簡単な計算式で被検査物6の表面の高さ及び深さを含む形状を算出できる。
【0027】
なお、上記各実施形態は本発明の好適な実施の一例であり、本発明はこれらに限定されること無く様々な変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を好適に実施した第1の実施形態に係る表面形状検査装置の構成を示す図である。
【図2】被検査物表面の凹凸がない部分に凹凸形状増幅部材が押し付けられた場合にカメラに撮影される画像の一例を示す図である。
【図3】被検査物表面の凸部分に凹凸形状増幅部材が押し付けられた場合にカメラに撮影される画像の一例を示す図である。
【図4】被検査物表面の凹部分に凹凸形状増幅部材が押し付けられた場合にカメラに撮影される画像の一例を示す図である。
【図5】被検査物表面の凹凸部での突起部先端の位置と被検査物表面の傾きとの関係の一例を示す図である。
【図6】本発明を好適に実施した第2の実施形態に係る表面形状検査装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 凹凸形状増幅部材
2 透明板
3 カメラ
4 コンピュータ
5、6 被検査物
7 回転機構
8 並進移動機構
11 シート状物体
12 突起
21 透明弾性体
22 透明剛体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物の表面の凹凸を増幅する凹凸形状増幅手段と、
前記凹凸形状増幅手段の下面を前記被検査物の表面に沿わせるように当接させる当接手段と、
前記被検査物の表面の検査対象部分を前記凹凸形状増幅手段に対して相対的に移動させる移動手段と、
前記凹凸形状増幅手段によって増幅された前記被検査物の表面の凹凸を光学的に検出する検出手段とを有することを特徴とする表面形状検査装置。
【請求項2】
前記被検査物は円柱又は円筒状であり、
前記凹凸形状増幅手段は、前記被検査物の表面に沿うように曲げ変形可能なシート状部材を下面とし、前記シート状部材の上に等間隔に配置され、各々がシート面と垂直方向に配向した複数の突起からなり、
前記当接手段は、いずれも透明な剛体及び弾性体の2層構造の板であり、
前記移動手段は、前記被検査物を支持及び回転させる機構であり、
前記検出手段は、前記被検査物の表面を撮影するカメラ及び、該カメラが撮影した画像を解析するコンピュータであることを特徴とする請求項1記載の表面形状検査装置。
【請求項3】
前記被検査物は板状であり、
前記凹凸形状増幅手段は、前記被検査物の表面に沿うように曲げ変形可能なシート状部材を下面とし、前記シート状部材の上に等間隔に配置され、各々がシート面と垂直方向に配向した複数の突起からなり、
前記当接手段は、いずれも透明な剛体及び弾性体の2層構造の板であり、
前記移動手段は、前記被検査物を前記凹凸形状増幅手段のシート面に対して並進させる機構であり、
前記検出手段は、前記被検査物の表面を撮影するカメラ及び、該カメラが撮影した画像を解析するコンピュータであることを特徴とする請求項1記載の表面形状検査装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の表面形状検査装置を用いた表面形状検査方法であって、
前記凹凸形状増幅手段の下面を前記被検査物表面の形状に沿わせ、前記被検査物の表面形状に合わせて変形した前記複数の突起の先端部の位置を前記カメラで撮影しながら検査対象部分を移動させ、その際に得られた画像を処理し、前記複数の突起の先端部の位置から前記被検査物の表面全体の凹凸分布を求めることを特徴とする表面形状検査方法。
【請求項5】
前記複数の突起の先端部の位置を基に前記被検査物表面の前記カメラの撮像範囲内での傾斜を検出し、それらの情報に基づいて前記被検査物表面の凹凸の深さ又は高さを含む表面形状を検出することを特徴とする請求項4記載の表面形状検査方法。
【請求項6】
任意の前記複数の突起の先端部と、他の前記複数の突起の先端部との間隔の変化に基づいて前記検査対象物表面の前記カメラの撮像範囲内での傾斜を検出することを特徴とする請求項5記載の表面形状検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−8252(P2010−8252A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168477(P2008−168477)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】