説明

被塗装物保持ロボットおよび塗装用ロボットシステム

【課題】塗装中に吹き付けの気流が乱れ、ロボット等の装置周辺を余分な塗料で汚染することを防止することが可能な被塗装物保持ロボットおよび塗装用ロボットシステムを提供する。
【解決手段】被塗装物保持ロボット10は、固定されたベース部20と、第1軸J1を中心にベース部20に対して旋回する細長状の第1アーム11とを備えている。L字状の第2アーム12は、第2軸J2を中心に第1アーム11に対して旋回し、細長状の第3アーム13は、第3軸J3を中心に第2アーム12に対して旋回する。また第3アーム13の先端13bに、被塗装物Wを保持する第1保持部14が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗装物を保持する被塗装物保持ロボットおよびこのような被塗装物保持ロボットを備えた塗装用ロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、垂直多関節ロボットの先端に塗装用のスプレーガンを取り付け、この垂直多関節ロボットを動作させることにより、被塗装物に塗装を塗装を施すことが行われている。この場合、垂直多関節ロボットを動作させることにより、スプレーガンを任意の位置姿勢に移動し、被塗装物に塗料を吹き付けることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−44656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、塗装には、シンナーなどの溶剤で溶かした塗料を使用する場合が多いので、塗装を行う作業場室内の雰囲気中には、気化した溶剤が混じる。このため、常に、一定方向に空気を流して、溶剤が作業場室内に滞留しないようにする必要がある。しかしながら従来、塗装を行う際には、上述したように垂直多関節ロボットによりスプレーガンを任意の角度に移動させている。このため、塗装中に吹き付けの気流が乱れ、被塗装物周辺を余分な塗料で汚染するという問題がある。
【0005】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、塗装中に吹き付けの気流が乱れ、ロボット等の装置周辺を余分な塗料で汚染することを防止することが可能な被塗装物保持ロボットおよび塗装用ロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被塗装物を保持する被塗装物保持ロボットにおいて、固定されたベース部と、ベース部に連結され、ベース部に対して垂直な第1軸を中心にベース部に対して旋回する細長状の第1アームと、第1アームの先端に連結され、第1軸に対して平行な第2軸を中心に第1アームに対して旋回するL字状の第2アームと、第2アームの先端に連結され、第2軸に対して垂直な第3軸を中心に第2アームに対して旋回する細長状の第3アームとを備え、第3アームの先端に、被塗装物を保持する第1保持部が設けられていることを特徴とする被塗装物保持ロボットである。
【0007】
本発明は、第1保持部は、第3軸に対して平行な第4軸を中心に回転可能となっていることを特徴とする被塗装物保持ロボットである。
【0008】
本発明は、第3アームの基端に、被塗装物を保持する第2保持部が設けられ、第2保持部は、第3軸に対して平行な第5軸を中心に回転可能となっていることを特徴とする被塗装物保持ロボットである。
【0009】
本発明は、第1保持部および第2保持部は、互いに連動して回転することを特徴とする被塗装物保持ロボットである。
【0010】
本発明は、第1保持部および第2保持部は、互いに同一方向かつ同一回転速度で回転することを特徴とする被塗装物保持ロボットである。
【0011】
本発明は、第1軸を駆動する第1駆動部、第2軸を駆動する第2駆動部、および第3軸を駆動する第3駆動部が、いずれもベース部に配置されていることを特徴とする被塗装物保持ロボットである。
【0012】
本発明は、塗装用ロボットシステムにおいて、被塗装物保持ロボットと、被塗装物保持ロボットの近傍に配置され、被塗装物保持ロボットの第1保持部に保持された被塗装物に対して塗装を施すスプレーガンを保持するスプレーガン保持機構とを備えたことを特徴とする塗装用ロボットシステムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第3アームの先端に被塗装物を保持する第1保持部を設け、この第1保持部を移動させることにより、被塗装物に対して塗装を施すようになっている。これにより、スプレーガンの移動を最小限にすることができ、スプレーガンの吹き付け角度を変更する必要もない。したがって、塗装中に吹き付けの気流が乱れ、ロボット等の装置周辺を余分な塗料で汚染することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態による塗装用ロボットシステムを示す斜視図。
【図2】本発明の一実施の形態による被塗装物保持ロボットを示す斜視図。
【図3】本発明の一実施の形態による被塗装物保持ロボットを示す斜視図(図2と異なる姿勢をとる場合の図)。
【図4】本発明の一実施の形態による被塗装物保持ロボットを示す側面図(図2のIV方向矢視図)。
【図5】本発明の一実施の形態による被塗装物保持ロボットを示す上面図(図2のV方向矢視図)。
【図6】本発明の一実施の形態による被塗装物保持ロボットを示す背面図(図2のVI方向矢視図)。
【図7】本発明の一実施の形態による被塗装物保持ロボットを示す断面図(図5のVII−VII線断面図)。
【図8】本発明の一実施の形態による塗装用ロボットシステムを用いて塗装を施す状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について、図1乃至図8を参照して説明する。ここで、図1乃至図8は、本発明の一実施の形態を示す図である。
【0016】
(塗装用ロボットシステムの構成)
まず、図1により、塗装用ロボットシステムの全体構成について説明する。図1は、本実施の形態による塗装用ロボットシステム全体を示す斜視図である。
【0017】
図1に示すように、塗装用ロボットシステム100は、支持フレーム110と、支持フレーム110に各々固定された2つの被塗装物保持ロボット10とを備えている。
【0018】
このうち支持フレーム110は、略矩形状の底部フレーム111と、底部フレーム111の両側に垂設された一対の脚柱112と、一対の脚柱112上方に架け渡された支持梁113とを有している。
【0019】
上述した2つの被塗装物保持ロボット10は、それぞれ脚柱112の近傍であって底部フレーム111の両側に、固定架台114を介して底部フレーム111より高い位置に固定されている。なお、これら2つの被塗装物保持ロボット10は、互いに同一の構造を有している。
【0020】
各被塗装物保持ロボット10は、固定架台114に固定されたベース部20と、3本のアーム(第1アーム11、第2アーム12、第3アーム13)とを備えている。第3アーム13には、被塗装物Wを保持する第1保持部14および第2保持部15が設けられている。なお、被塗装物保持ロボット10については後述するので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0021】
一方、支持梁113の略中央には、支持梁113から下方に向けて延びるスプレーガン保持機構115が取り付けられている。このスプレーガン保持機構115は、被塗装物保持ロボット10の近傍、とりわけ被塗装物保持ロボット10の第1保持部14および第2保持部15の近傍に配置されるようになっている。またスプレーガン保持機構115には、塗料を噴出する一対のスプレーガン120が保持されている。このスプレーガン120を用いることにより、各被塗装物保持ロボット10の第1保持部14および第2保持部15に保持された各被塗装物Wに対して塗装を施すようになっている。
【0022】
なお本実施の形態において、スプレーガン保持機構115は、一対のスプレーガン120を上下方向に移動可能な直交ロボットからなっている。スプレーガン保持機構115は、被塗装物保持ロボット10と連動し、一対のスプレーガン120を上下左右に移動させることができるようになっている。
【0023】
また本実施の形態において、塗装用ロボットシステム100の2つの被塗装物保持ロボット10は、交互にスプレーガン120近傍に移動して、それぞれ第1保持部14および第2保持部15に保持された被塗装物Wに対して塗装を施すことができるようになっている。
【0024】
また、図示していないが、各被塗装物保持ロボット10のベース部20と第1アーム11との間に間仕切り板を配置することにより、塗装作業が行われる作業空間内の防爆性を高めても良い。
【0025】
(被塗装物保持ロボットの構成)
次に、図2乃至図6により、上述した被塗装物保持ロボットの概略について説明する。図2乃至図6は、本実施の形態による被塗装物保持ロボットを示す図である。
【0026】
図2乃至図6に示すように、被塗装物保持ロボット10は、固定されたベース部20と、その基端11a側においてベース部20に連結された細長状の第1アーム11と、その基端12a側において第1アーム11の先端11bに連結されたL字状の第2アーム12と、その基端13a側において第2アーム12の先端12bに連結された細長状の第3アーム13とを備えている。
【0027】
このうち第1アーム11は、ベース部20に対して垂直な第1軸J1を中心に、ベース部20に対して旋回可能となっている。
【0028】
また第2アーム12は、第1軸J1に対して平行な第2軸J2を中心に、第1アーム11に対して旋回可能となっている。なお、第2アーム12は、第2軸J2に対して垂直な直線状の基端側アーム部16と、第2軸J2に対して平行な直線状の先端側アーム部17とから構成されている。これら基端側アーム部16および先端側アーム部17は、互いに垂直に固定連結されている。
【0029】
また第3アーム13は、第2軸J2に対して垂直な第3軸J3を中心に第2アーム12に対して旋回可能となっている。これら第1アーム11、第2アーム12、および第3アーム13は、いずれも削り出し部品からなっていても良い。
【0030】
第3アーム13の先端13bには、被塗装物Wを保持する第1保持部14が設けられている。この第1保持部14は、第3軸J3に対して平行な第4軸J4を中心に回転可能となっており、被塗装物Wを第4軸J4を中心に回転可能となっている。
【0031】
一方、第3アーム13の基端13aには、被塗装物Wを保持する第2保持部15が設けられている。この第2保持部15は、第3軸J3に対して平行な第5軸J5を中心に回転可能となっており、被塗装物Wを第5軸J5を中心に回転可能となっている。なお本実施の形態において、第5軸J5は第3軸J3と同軸上に位置している。
【0032】
これら第1保持部14および第2保持部15は、互いに連動して回転するようになっている。この場合、第1保持部14および第2保持部15は、互いに同一方向かつ同一回転速度で回転するようになっている。しかしながら、これに限らず、第1保持部14および第2保持部15は互いに反対方向に回転しても良く、互いに異なる回転速度で回転しても良い。
【0033】
第1保持部14および第2保持部15による被塗装物Wの保持方法としては、従来一般的な保持方法を用いることができる。例えば、被塗装物Wを第1保持部14および第2保持部15にそれぞれ直接取り外し可能に装着しても良い。あるいは、第1保持部14および第2保持部15にそれぞれ図示しないチャック機構を取付け、各チャック機構により被塗装物Wを把持しても良い。
【0034】
ところで、ベース部20には、被塗装物保持ロボット10の第1軸J1乃至第5軸J5を駆動するサーボモータ(駆動部)が集中配置されている。
【0035】
すなわち図1乃至図6において、参照番号21は第1アーム11を旋回させる第1モータ(第1駆動部)であり、参照番号22は第2アーム12を旋回させる第2モータ(第2駆動部)である。参照番号23は第3アーム13に旋回させる第3モータ(第3駆動部)であり、参照番号24は、第1保持部14および第2保持部15を回転させる第4モータ(第4駆動部)である。被塗装物保持ロボット10のベース部20と第1アーム11との間に図示しない間仕切り板を配置した場合、これらのモータには、防爆型ではない通常のモータを用いることもできる。
【0036】
(被塗装物保持ロボットの内部構成)
次に、図7により、上述した被塗装物保持ロボットの内部構成について説明する。図7は、本実施の形態による被塗装物保持ロボットを示す断面図である。
【0037】
図7に示す被塗装物保持ロボット10において、ベース部20と第1アーム11とを連結する関節部には、第1減速機26が設けられており、この第1減速機26の出力軸に第1アーム11の基端11a側が取り付けられている。すなわち第1アーム11は鉛直面上を回動するようになっている。また第1アーム11と第2アーム12とを連結する関節部には、第2減速機27が設けられており、第2減速機27の出力軸には、第2アーム12の基端12a側が固定されている。さらに第2アーム12と第3アーム13とを連結する関節部には、第3減速機28が設けられており、第3減速機28の出力軸には、第3アーム13の基端13a側が固定されている。これら第1減速機26、第2減速機27、および第3減速機28としては、それぞれ例えばハーモニックドライブ(登録商標)を用いることができる。
【0038】
次に、第1軸J1乃至第5軸J5の各伝動系の構成について、図7を参照しながら説明する。
【0039】
(第1軸J1の伝動系)
まず第1軸J1の伝動系について説明する。上述したように第1アーム11は、第1軸J1を中心としてベース部20に対して回動する。この第1軸J1の伝動系は、主に第1モータ21(図1乃至図6参照)の動力を第1減速機26に伝達する構成となっている。
【0040】
図7に示すように、第1減速機26の入力軸にはプーリ31が取り付けられている。プーリ31にはタイミングベルト32が巻き掛けられており、第1モータ21からの動力は、第1モータ21に取り付けられたプーリ(図示せず)、タイミングベルト32、プーリ31からなるベルト伝動機構を介して第1減速機26に伝えられ、第1減速機26の出力軸に直結した第1アーム11が回動するようになっている。
【0041】
(第2軸J2の伝動系)
次に第2軸J2の伝動系について説明する。上述したように第2アーム12は、第2軸J2を中心として第1アーム11に対して回動する。この第2軸J2の伝動系は、主として、第2モータ22の動力を第1伝動軸33から第1アーム11内に組み込まれた第1ベルト伝動機構により、第2減速機27に伝達する構成となっている。
【0042】
図7に示すように、第2モータ22の回転軸にはプーリ34が取り付けられている。第1伝動軸33の入力軸にはプーリ35が取り付けられている。またプーリ34とプーリ35にはタイミングベルト36が巻き掛けられている。すなわち第2モータ22からの動力は、プーリ34、タイミングベルト36、およびプーリ35を順次介して第1伝動軸33に伝えられるようになっている。
【0043】
一方、第1アーム11の内部では、第1伝動軸33の先端部にプーリ37が固着され、第2減速機27の入力軸にはプーリ38が取り付けられている。そして、これらのプーリ37およびプーリ38にタイミングベルト39が巻き掛けられて、これらは、第1伝動軸33からの動力を第2減速機27に伝達する第1ベルト伝動機構を構成している。
【0044】
(第3軸J3の伝動系)
次に第3軸J3の伝動系について説明する。上述したように第3アーム13は、第3軸J3を中心として第2アーム12に対して回動する。この第3軸J3の伝動系は、主として、第3モータ23からの動力を、第2伝動軸41、第1アーム11内でベルト伝動を行う第2ベルト伝動機構、第3伝動軸46、第2アーム12内に配置された第4伝動軸51、第2アーム12内でベルト伝動を行う第3ベルト伝動機構を順次介して第3減速機28に伝達する構成となっている。
【0045】
図7において、第2伝動軸41は、第1伝動軸33の外側に同軸に嵌挿されている中空の伝動軸であり、一端部にプーリ42が取り付けられている。第2伝動軸41の他端部にはプーリ43が取り付けられている。第3モータ23の回転軸にはプーリ44が直結されており、プーリ42、44にはタイミングベルト45が巻き掛けられている。
【0046】
本実施の形態において、第2減速機27には同軸多重伝動軸(第3伝動軸46、第6伝動軸61)が貫通しており、これら同軸多重伝動軸のうち第3伝動軸46は、外側の中空伝動軸である。この第3伝動軸46の一端部にはプーリ47が固着され、他端部には傘歯車48が固着されている。
【0047】
また第2伝動軸41上のプーリ43と、第3伝動軸46上のプーリ47とには、タイミングベルト49が巻き掛けられている。これらプーリ43、47は、それぞれ上述した第2軸伝動系の第1ベルト伝動機構のプーリ37、38と同軸のプーリになっている。これらプーリ43、47、およびタイミングベルト49は、第2伝動軸41からの動力を第3伝動軸46に伝達する第2ベルト伝動機構を構成している。
【0048】
一方第2アーム12のうち、基端側アーム部16内部には、同軸多重伝動軸(第4伝動軸51、第7伝動軸66)が設けられている。これら同軸多重伝動軸のうち、第4伝動軸51は外側の中空伝動軸である。この第4伝動軸51の入力軸には傘歯車52が固着され、出力軸にはプーリ53が固着されている。このうち傘歯車52は、第3伝動軸46側の傘歯車48と係合しており、第3伝動軸46からの動力を第4伝動軸51に伝達する際、その回転方向を90度変換するようになっている。傘歯車48、52としては、直歯のものを用いても良く、曲り歯のものを用いても良い。
【0049】
他方、第3減速機28の入力軸にはプーリ54が取り付けられている。また先端側アーム部17内において、第4伝動軸51側のプーリ53と第3減速機28側のプーリ54とに、タイミングベルト55が巻き掛けられている。これらプーリ53、54、およびタイミングベルト55は、第4伝動軸51からの動力を第3減速機28に伝達する第3ベルト伝動機構を構成している。
【0050】
(第4軸J4および第5軸J5の伝動系)
次に第4軸J4および第5軸J5の伝動系について説明する。上述したように第1保持部14は、第4軸J4を中心として第3アーム13上で回動する。また第2保持部15は、第5軸J5を中心として第3アーム13上で回動する。第4軸J4および第5軸J5のうち、第5軸J5の伝動系は、主として、第4モータ24(図1乃至図6参照)からの動力を、第5伝動軸56、第1アーム11内でベルト伝動を行う第4ベルト伝動機構、第6伝動軸61、第7伝動軸66、第2アーム12内でベルト伝動を行う第5ベルト伝動機構、および第8伝動軸71を順次介して、第2保持部15に伝達する構成となっている。また第4軸J4の伝動系は、主として、第4モータ24からの動力を、第5軸J5の伝動系に加え、第3アーム13内でベルト伝動を行う第6ベルト伝動機構により第2保持部15に伝達する構成となっている。
【0051】
図7に示すように、第5伝動軸56は、第2伝動軸41の外側に嵌合する中空伝動軸であり、第2伝動軸41とともに同軸多重伝動軸を構成している。この第5伝動軸56の一端部には、プーリ57が取り付けられており、このプーリ57と第4モータ24の回転軸に取り付けてある図示しないプーリとの間に、タイミングベルト58が巻き掛けられている。
【0052】
第1アーム11の先端11bに配置されている第6伝動軸61は、第3伝動軸46の内側に同軸に挿入された中実伝動軸であり、第3伝動軸46とともに同軸多重伝動軸を構成している。また第5伝動軸56の他端部にはプーリ59が取り付けられている。このプーリ59と、第6伝動軸61の一端部に取り付けられたプーリ62にタイミングベルト63が巻き掛けられている。これらプーリ59、62は、それぞれ上述した第1ベルト伝動機構のプーリ37、38および第2ベルト伝動機構のプーリ43、47と同軸のプーリとして構成されている。これらプーリ59、62、およびタイミングベルト63は、第5伝動軸56からの動力を第6伝動軸61に伝達する第4ベルト伝動機構を構成するようになっている。
【0053】
さらに、第6伝動軸61の他端部には傘歯車64が固着されている。他方、第2アーム12のうち基端側アーム部16内部には、第7伝動軸66が設けられている。第7伝動軸66は、第4伝動軸51の内側に同軸に挿入された中実伝動軸であり、第4伝動軸51とともに同軸多重伝動軸を構成している。この第7伝動軸66の入力軸には傘歯車67が固着され、出力軸にはプーリ68が固着されている。このうち傘歯車67は、第6伝動軸61側の傘歯車64と係合しており、第6伝動軸61からの動力を第7伝動軸66に伝達する際、その回転方向を90度変換するようになっている。傘歯車64、67としては、直歯のものを用いても良く、曲り歯のものを用いても良い。
【0054】
第3減速機28内には、中実伝動軸からなる第8伝動軸71が貫通している。この第8伝動軸71の一端部にはプーリ72が固着され、他端部にはプーリ73が固着されている。また第2アーム12の先端側アーム部17内において、第7伝動軸66上のプーリ68と第8伝動軸71上のプーリ72とに、タイミングベルト74が巻き掛けられている。プーリ72は、第3ベルト伝動機構のプーリ54と同軸のプーリを構成している。これらプーリ68、72、およびタイミングベルト74は、第7伝動軸66からの動力を第8伝動軸71に伝達する第5ベルト伝動機構を構成している。
【0055】
ところでプーリ73は、第2保持部15下端に固着されている。したがって、第8伝動軸71が回転することにより、第2保持部15が回転するようになっている。一方、第1保持部14下端にはプーリ76が固着されている。また第3アーム13内において、プーリ76とプーリ73にはタイミングベルト77が巻き掛けられている。これらプーリ73、76、およびタイミングベルト77は、第8伝動軸71からの動力を第1保持部14に伝達する第6ベルト伝動機構を構成している。
【0056】
このように、第8伝動軸71が回転する際、第1保持部14および第2保持部15は、互いに連動して回転するようになっている。なお本実施の形態において、プーリ73とプーリ76は、互いに同一ピッチ円で同じ歯数をもっているプーリである。したがって、第1保持部14および第2保持部15は、互いに同一方向かつ同一回転速度で回転するようになっている。
【0057】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について、図8を用いて説明する。
【0058】
まず、直交ロボットからなるスプレーガン保持機構115を作動させることにより、一対のスプレーガン120を所定位置に配置する。この一対のスプレーガン120は、被塗装物保持ロボット10に対して連動するようになっている。次に、2つの被塗装物保持ロボット10のうち一方の被塗装物保持ロボット10の第1保持部14および第2保持部15に、それぞれ被塗装物Wを保持させる。
【0059】
続いて、この被塗装物保持ロボット10の第1アーム11および第2アーム12をそれぞれ第1軸J1および第2軸J2を中心に旋回させることにより、第1保持部14および第2保持部15上の被塗装物Wを各スプレーガン120近傍に移動する。次いで、スプレーガン120からミスト状の塗料を吹き付けることにより、第1保持部14上の被塗装物Wおよび第2保持部15上の被塗装物Wに対して同時に塗装を施す(図8)。
【0060】
この間、第1保持部14および第2保持部15をそれぞれ回転させることにより、第1保持部14および第2保持部15上の被塗装物Wを回転させ、各被塗装物Wに回転方向均一に塗装を施すことが好ましい。さらに、塗装を施す間、第1アーム11および第2アーム12を移動させることにより、被塗装物Wの姿勢を適宜変化させても良い。他方、塗装を施す間、第3アーム13は第3軸J3を中心とする旋回を行わないようにしても良い。
【0061】
続いて、第1アーム11、第2アーム12、および第3アーム13を移動させることにより、第1保持部14および第2保持部15上の被塗装物Wをスプレーガン120近傍から待機位置まで移動する。その後、一方の被塗装物保持ロボット10の第1保持部14および第2保持部15上の被塗装物Wを取り除き、未塗装の被塗装物Wを第1保持部14および第2保持部15に保持させる。
【0062】
このように、一方の被塗装物保持ロボット10の第1保持部14および第2保持部15に被塗装物Wを載せ替えている間、待機していた他方の被塗装物保持ロボット10を動作させ、他方の被塗装物保持ロボット10の第1保持部14および第2保持部15に保持された被塗装物Wに対して塗装を施すようにすることが好ましい。
【0063】
ところで、このようにして被塗装物Wに塗装を施す間、シンナーなどの溶剤が室内に滞留するのを防止するために、図8において矢印で示すように、常に一定方向の空気の流れを発生させている。
【0064】
これに対して本実施の形態によれば、第1保持部14および第2保持部15を移動することにより各被塗装物Wを移動させ、各被塗装物Wに対して塗装を施すようになっている。このため、スプレーガン120の吹き付け角度を変更する必要がない。このことにより、塗装中に吹き付けの気流が乱れ、被塗装物保持ロボット10等の装置周辺を余分な塗料で汚染することを防止することができる。また被塗装物Wの塗装を均一に施すことができる。
【0065】
また本実施の形態によれば、被塗装物保持ロボット10は、第1軸J1を中心にベース部20に対して旋回する細長状の第1アーム11と、第2軸J2を中心に第1アーム11に対して旋回するL字状の第2アーム12と、第3軸J3を中心に第2アーム12に対して旋回する細長状の第3アーム13とを備えている。このようなアームの構成により、第1保持部14および第2保持部15に保持された被塗装物Wをスプレーガン120の周囲で効率良く移動させ、被塗装物Wの姿勢を容易に変化させることできる。
【0066】
また本実施の形態によれば、被塗装物保持ロボット10が2つの保持部(第1保持部14および第2保持部15)を有しているので、被塗装物Wに対して効率良く塗装を施すことができる。すなわち被塗装物Wを保持部に1個ずつ保持させる場合と比較して、被塗装物Wを保持するのに必要な時間を短縮することができる。また第1保持部14は第4軸J4を中心に回転可能となっており、第2保持部15は第5軸J5を中心に回転可能となっているので、被塗装物Wの塗装ムラを防止し、均一に塗装を施すことができる。
【0067】
さらに本実施の形態による被塗装物保持ロボット10によれば、第1軸J1乃至第5軸J5をそれぞれ駆動するサーボモータ(第1モータ21乃至第4モータ24)が、いずれもベース部20に集中配置されている。このことにより、塗装作業が行われる作業空間内にはサーボモータや電気配線が存在しないので、防爆性を高めることができる。しかも、塗装作業空間の雰囲気からサーボモータを隔離することができるから、これらのサーボモータは防爆型のモータにする必要がなくなる。
【0068】
また、各アーム11、12、13を互いに連結する関節部には、サーボモータが設けられていないので、アーム11、12、13全体の重量を軽量化することができる。これにより、サーボモータ(第1モータ21乃至第4モータ24)に対する負荷を軽減することができる。
【0069】
さらに、本実施の形態の被塗装物保持ロボット10においては、第1アーム11、先端側アーム部17、および第3アーム13の内部には、それぞれタイミングベルト39、49、63、55、74、77が配設されているだけである。したがって、大きさの異なるロボットを実現しようとする場合、これらアームの長さと、その内部に配設されたタイミングベルトの長さとを変更するだけで良い。
【符号の説明】
【0070】
10 被塗装物保持ロボット
11 第1アーム
12 第2アーム
13 第3アーム
14 第1保持部
15 第2保持部
16 基端側アーム部
17 先端側アーム部
20 ベース部
21 第1モータ(第1駆動部)
22 第2モータ(第2駆動部)
23 第3モータ(第3駆動部)
24 第4モータ(第4駆動部)
100 塗装用ロボットシステム
120 スプレーガン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗装物を保持する被塗装物保持ロボットにおいて、
固定されたベース部と、
ベース部に連結され、ベース部に対して垂直な第1軸を中心にベース部に対して旋回する細長状の第1アームと、
第1アームの先端に連結され、第1軸に対して平行な第2軸を中心に第1アームに対して旋回するL字状の第2アームと、
第2アームの先端に連結され、第2軸に対して垂直な第3軸を中心に第2アームに対して旋回する細長状の第3アームとを備え、
第3アームの先端に、被塗装物を保持する第1保持部が設けられていることを特徴とする被塗装物保持ロボット。
【請求項2】
第1保持部は、第3軸に対して平行な第4軸を中心に回転可能となっていることを特徴とする請求項1記載の被塗装物保持ロボット。
【請求項3】
第3アームの基端に、被塗装物を保持する第2保持部が設けられ、第2保持部は、第3軸に対して平行な第5軸を中心に回転可能となっていることを特徴とする請求項2記載の被塗装物保持ロボット。
【請求項4】
第1保持部および第2保持部は、互いに連動して回転することを特徴とする請求項3記載の被塗装物保持ロボット。
【請求項5】
第1保持部および第2保持部は、互いに同一方向かつ同一回転速度で回転することを特徴とする請求項4記載の被塗装物保持ロボット。
【請求項6】
第1軸を駆動する第1駆動部、第2軸を駆動する第2駆動部、および第3軸を駆動する第3駆動部が、いずれもベース部に配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載の被塗装物保持ロボット。
【請求項7】
塗装用ロボットシステムにおいて、
請求項1乃至6のいずれか一項記載の被塗装物保持ロボットと、
被塗装物保持ロボットの近傍に配置され、被塗装物保持ロボットの第1保持部に保持された被塗装物に対して塗装を施すスプレーガンを保持するスプレーガン保持機構とを備えたことを特徴とする塗装用ロボットシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−20232(P2011−20232A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168893(P2009−168893)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】