説明

装飾部品およびその製造方法

【課題】マスクを用いることなく製造することが出来る装飾部品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】所定形状に射出成形された樹脂製のエンブレム本体4と、エンブレム本体4の表側に蒸着された金属薄膜5と、エンブレム本体4が裏側に位置するように形成された透明樹脂層2と、エンブレム本体4が表側に位置するように形成された着色樹脂層3とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前後やハンドルなどに設けられるエンブレム、或いは置物に取付けられる飾りなどの装飾部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上述したエンブレムとして、例えば黒色の着色樹脂層の上にエンブレムとしての光輝片が金属薄膜により形成され、その金属薄膜を前記着色樹脂層との間で挟むように透明樹脂層が形成されたものが知られている。
【0003】
ところで、上記光輝片は、マスクを用いた蒸着等により所定形状に形成される(例えば、特許文献1等参照)。
【特許文献1】特開2004−251868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したようにマスクを用いた蒸着によりエンブレムを形成する場合には、エンブレム以外の部分をマスキングする必要がある為、多大な工数を要するという難点があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたもので、マスクを用いることなく製造することが出来る装飾部品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の装飾部品は、所定形状に射出成形された樹脂製装飾部品本体と、前記装飾部品本体の表側に蒸着された金属薄膜と、前記装飾部品本体が裏側に位置するように形成された透明樹脂層と、前記装飾部品本体が表側に位置するように形成された着色樹脂層とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明の装飾部品の製造方法は、所定形状の樹脂製装飾部品本体を射出成形する工程と、前記装飾部品本体の表側に金属薄膜を蒸着する工程と、前記装飾部品本体を金型内の所定位置に装着する工程と、前記金型内に透明樹脂を射出して前記装飾部品本体が裏側に位置するように透明樹脂層を形成する工程と、前記透明樹脂層の裏側に着色樹脂層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る装飾部品の製造方法は、請求項2に記載の装飾部品の製造方法において、前記射出成形する工程で裏側の注入用ゲートを残しておき、そのゲートを、前記装着する工程で用いる金型内の位置決め穴に入れることにより前記金型に対する装飾部品本体の位置決めを行い、前記着色樹脂層を形成する工程でその着色樹脂層内に前記ゲートを埋設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の装飾部品およびその製造方法による場合には、金属薄膜が表側に形成された装飾部品本体を用いるので、マスキングを不要にすることができる。
【0010】
また、請求項3の装飾部品の製造方法による場合には、装飾部品本体に残した注入用ゲートが着色樹脂層に埋設されるので、ゲートの切断を省略することができ、加えてゲートを装飾部品本体の金型に対する位置決めに使用することで、着色樹脂層に対する装飾部品本体の相対位置を所望位置にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を具体的に説明する。
【0012】
図1は、本発明の装飾部品の一実施形態の例としての、車両の前後やハンドルなどに設けられるエンブレムを示す正面図、図2は図1のII−II線による断面図である。
【0013】
このエンブレム1は、表側の透明樹脂層2と、裏側の黒色樹脂層3との間に、合成樹脂製のエンブレム本体4が設けられているとともに、そのエンブレム本体4の透明樹脂層2側、つまり表側に金属薄膜5が形成されている。
【0014】
上記金属薄膜5は、反射特性に優れたインジウム(In)からなるもので、エンブレム本体4の表側に、蒸着により形成されている。透明樹脂層2としては、金属薄膜5を視認ができればどのような樹脂を用いてもよい。黒色樹脂層3は、金属薄膜5の視認性を向上させるために設けている。なお、黒色樹脂層3に代えて、他の色の着色樹脂層を用いてもよい。
【0015】
上記エンブレム本体4は、後側に注入用のゲート4aを有する。ゲート4aは、本実施形態では2本設けられており、これらゲート4aは黒色樹脂層3の内部に埋設されている。
【0016】
次に、このエンブレム1の製造方法につき図3に基づき説明する。
【0017】
まず、図3(a)に示すように、エンブレム本体4を形成する。この形成としては、例えば金型を用いた射出成形により行うことができる。なお、この射出成形の際に樹脂注入用に用いられるゲート4aは、切断せずにエンブレム本体4に残したままとする。
【0018】
次に、図3(b)に示すように、エンブレム本体4の表側に金属薄膜5を蒸着する。金属薄膜5としては、例えばインジウムなどの光輝材料が好ましい。
【0019】
続いて、図3(c)に示すように、透明樹脂層2を形成するための金型10の内部に、エンブレム本体4を装着する。このとき、金型10の内部に予め形成している位置決め穴11にゲート4aを入れることで、金型10に対するエンブレム本体4のセット位置が自ずと決まる。その後、図3(d)に示すように、金型10を閉じて、注入口12から樹脂を注入し、金属薄膜5を覆うようにエンブレム本体4の表側に透明樹脂層2を形成する。
【0020】
次に、図3(e)に示すように、透明樹脂層2が形成されたエンブレム本体4を、黒色樹脂層3を形成するための金型20の内部に装着する。この図示例では、エンブレム本体4を表側を下方に向けて装着する。そして、金型20を閉じた状態で注入口21から樹脂を注入して、エンブレム本体4の裏側(図示例では上側)に黒色樹脂層3を形成する。このとき、黒色樹脂層3の厚みは、ゲート4aが隠れる寸法に設定される。そして、金型20から成形品を取り出すことにより、本実施形態のエンブレム1の製造が完了する。
【0021】
以上のように、本実施形態のエンブレム1による場合には、金属薄膜5が表側に形成されたエンブレム本体4を用いるので、マスキングを不要にすることができる。また、エンブレム本体4に残した注入用ゲート4aが黒色樹脂層3に埋設されるので、ゲート4aの切断を省略することができ、加えてゲート4aをエンブレム本体4の金型10に対する位置決めに使用することで、着色樹脂層3に対するエンブレム本体4の相対位置を所望位置にすることができる。
【0022】
なお、上述した実施形態ではエンブレム本体の表側に透明樹脂層を設ける構成としているが、本発明はエンブレム本体表側の樹脂層として透明である必要はなく、エンブレムの視認が可能であれば半透明な樹脂層であっても構わない。
【0023】
また、上述した実施形態では車両の前後やハンドルなどに設けられるエンブレムを製造する場合を例に挙げて説明しているが、本発明はエンブレムに限らず、車両の内装や外装に用いられる装飾部品、或いは置物自体や置物に付設する装飾部品などにも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の装飾部品の一実施形態の例としての、車両の前後やハンドルなどに設けられるエンブレムを示す正面図である。
【図2】図1のII−II線による断面図である。
【図3】エンブレムの製造方法の説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 エンブレム
2 透明樹脂層
3 黒色樹脂層(着色樹脂層)
4 エンブレム本体
4a 注入用のゲート
5 金属薄膜
10 透明樹脂層を形成するための金型
11 位置決め穴
20 黒色樹脂層を形成するための金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状に射出成形された樹脂製装飾部品本体と、
前記装飾部品本体の表側に蒸着された金属薄膜と、
前記装飾部品本体が裏側に位置するように形成された透明樹脂層と、
前記装飾部品本体が表側に位置するように形成された着色樹脂層とを有することを特徴とする装飾部品。
【請求項2】
所定形状の樹脂製装飾部品本体を射出成形する工程と、
前記装飾部品本体の表側に金属薄膜を蒸着する工程と、
前記装飾部品本体を金型内の所定位置に装着する工程と、
前記金型内に透明樹脂を射出して前記装飾部品本体が裏側に位置するように透明樹脂層を形成する工程と、
前記透明樹脂層の裏側に着色樹脂層を形成する工程とを含むことを特徴とする装飾部品の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の装飾部品の製造方法において、
前記射出成形する工程で裏側の注入用ゲートを残しておき、そのゲートを、前記装着する工程で用いる金型内の位置決め穴に入れることにより前記金型に対する装飾部品本体の位置決めを行い、前記着色樹脂層を形成する工程でその着色樹脂層内に前記ゲートを埋設することを特徴とする装飾部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−274406(P2009−274406A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130413(P2008−130413)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000147660)株式会社石▼崎▲本店 (28)
【Fターム(参考)】