説明

複合アンテナ

【課題】1枚のGND板10に携帯電話の周波数帯用のアンテナと他のアンテナを配設し、携帯電話の周波数帯で無指向性を得る複合アンテナを提供する。
【解決手段】1枚のGND板10に、携帯電話の周波数帯用の第1のアンテナ12と他の周波数帯用の第2と第3のアンテナ14、16を配設する。第1ないし第3のアンテナ12、14、16に電気的接続する第1ないし第3の同軸線路22、24、26の外側導体22b、24b、26bを、それぞれのアンテナの近くと、GND板10の縁でGND板10に電気的接続する。これらの外側導体22b、24b、26bが、アンテナの近くとGND板10の縁でGND板10に電気的接続されたそれぞれの間の長さを、携帯電話の周波数帯の略1/4波長の実効長とする。第1ないし第3の同軸線路22、24、26を、GND板10上でGND板10の縁まで、平行で近接して配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1枚のGND板上に、複数のアンテナが配設された複合アンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載用にあっては、携帯電話用やGPS用またETC用など様々な無線通信手段に対応したアンテナが必要である。そこで、これらのアンテナが配設されるスペースをより小さくする等の目的で、1枚のGND板の上に、携帯電話の周波数帯用とGPS用およびETC用のそれぞれのアンテナを配設した複合アンテナがある。これらのアンテナは、それぞれに同軸線路により機器と電気的接続されている。ここで、携帯電話の周波数帯用のアンテナと同軸線路を接続して効率的に信号を伝送させるためには、バランを必要とする。このバランの必要性のために、GND板に配設される回路基板が複雑となるという不具合がある。
【0003】
特開2007−195001号公報(特許文献1)には、かかるバランに換わる技術が示されている。この特許文献1に示された技術を以下に簡単に説明する。まず、アンテナの入出力端子に同軸線路の中心導体を電気的接続し、この同軸線路の外側導体をアンテナの入出力端子の近くでGND板に電気的接続する。そして、同軸線路の外側導体をGND板から導出する縁でGND板に電気的接続する。さらに、同軸線路の外側導体がアンテナの入出力端子の近くとGND板の縁でGND板に電気的接続された間の長さを、アンテナが送受信する例えば携帯電話用の周波数帯の略1/4波長の実効長に設定する。すると、GND板上の同軸線路の外側導体に、携帯電話用の周波数の漏洩電流が進行波として伝播するが、この進行波はGND板の縁で反射され、反射された進行波は逆方向に外側導体を伝播する。この進行波と反射されて逆方向に伝播する進行波は、180度の位相差があり、アンテナの入出力端子の近くでGND板に電気的接続された点で互いに打ち消される。もって、アンテナの入出力端子には、漏洩電流が生じることがなく、アンテナから出力される信号には、漏洩電流の影響による大きな歪みを生ずることがない。
【特許文献1】特開2007−195001号公報
【0004】
そこで、1枚のGND板の上に、携帯電話の周波数帯用とGPS用およびETC用のそれぞれのアンテナを配設した複合アンテナに、特許文献1に示された技術を適用したものを図9に示す。図9は、携帯電話の周波数帯用のアンテナに特開2007−195001号公報に示された技術を適用した複合アンテナの平面図である。図9において、1枚のGND板10上に、携帯電話用の800MHz帯と2GHz帯のデュアルバンドを送受信できる携帯電話の周波数帯用の第1のアンテナ12と、GPS用パッチアンテナとしての第2のアンテナ14及びETC用パッチアンテナとしての第3のアンテナ16がそれぞれに配設される。なお、GND板10の表面には、携帯電話の周波数帯用の回路基板12aが配設され、第2のアンテナ14と第3のアンテナ16は、GND板10から上に少し浮かせた状態の上方位置に配設されている。そして、第1のアンテナ12の入出力端子には、回路基板12aを適宜に介して第1の同軸線路22の中心導体22aが電気的接続され、その近くで第1の同軸線路22の外側導体22bがGND板10に電気的接続される。さらに、第1の同軸線路22の外側導体22bがGND板10の縁でGND板10に電気的接続される。そして、第1の同軸線路22の外側導体22bが、第1のアンテナ12の入出力端子の近くでGND板10に電気的接続された位置からGND板10の縁でGND板10に電気的接続された位置までの間の長さが、携帯電話用の周波数帯の略1/4波長の実効長に設定されている。第2のアンテナ14には、第2の同軸線路24の中心導体24aが電気的接続され、その外側導体が第2のアンテナ14自体のGND板に電気的接続されている。また、第3のアンテナ16には、第3の同軸線路26の中心導体26aが電気的接続され、その外側導体が第3のアンテナ16自体のGND板に電気的接続されている。第2と第3の同軸線路24、26の外側導体は、GND板10の縁でGND板10に電気的接続されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の図9に示す複合アンテナに特許文献1に示された技術を適用したものを製作して、830MHzと885MHzと1940MHzおよび2150MHzで、仰角0度の垂直偏波の指向特性を測定したところ、図10に示すごとく、優れたものでなかった。特に、(a)の830MHzおよび(c)の1940MHzで指向性が乱れ、無指向性とは言い難いものであった。この測定結果から、発明者らは、第2と第3の同軸線路24、26の外側導体にも携帯電話用の周波数の漏洩電流が進行波として伝播し、この漏洩電流の不要放射により、第1のアンテナ12の指向特性が乱れるものと考えた。なお、図10において、(b)は885MHzであり、(d)は2150MHzである。
【0006】
本発明は、上述のごとき事情に鑑みてなされたもので、携帯電話の周波数帯用と他の周波数帯用のアンテナを配設した複合アンテナであっても、携帯電話の周波数帯で無指向性が得られるようにした複合アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明の複合アンテナは、1枚のGND板の上に、携帯電話の周波数帯用の第1のアンテナと他の周波数帯用の第2のアンテナを配設した複合アンテナにおいて、前記第1のアンテナに電気的接続される第1の同軸線路の外側導体を、前記第1のアンテナの近くで前記GND板に電気的接続するとともに前記GND板から導出する縁で前記GND板に電気的接続し、前記第1の同軸線路の外側導体が前記第1のアンテナの近くと前記GND板の縁で前記GND板にそれぞれに電気的接続された間の長さを前記携帯電話の周波数帯の略1/4波長の実効長となるようにし、前記第2のアンテナに電気的接続される第2の同軸線路の外側導体を、前記第2のアンテナの近くで前記GND板に電気的接続するとともに前記GND板から導出する縁で前記GND板に電気的接続し、前記第2の同軸線路の外側導体が前記第2のアンテナの近くと前記GND板の縁で前記GND板にそれぞれに電気的接続された間の長さを前記携帯電話の周波数帯の略1/4波長の実効長となるようにして構成されている。
【0008】
また、前記第1と第2の同軸線路を、前記GND板上で前記GND板から導出する縁まで、平行で近接するように配設して構成しても良い。
【0009】
そして、1枚のGND板の上に、携帯電話の周波数帯用の第1のアンテナと他の周波数帯用の第2と第3のアンテナを配設した複合アンテナにおいて、前記第1のアンテナに電気的接続される第1の同軸線路の外側導体を、前記第1のアンテナの近くで前記GND板に電気的接続するとともに前記GND板から導出する縁で前記GND板に電気的接続し、前記第1の同軸線路の外側導体が前記第1のアンテナの近くと前記GND板の縁で前記GND板にそれぞれに電気的接続された間の長さを前記携帯電話の周波数帯の略1/4波長の実効長となるようにし、前記第2のアンテナに電気的接続される第2の同軸線路の外側導体を、前記第2のアンテナの近くで前記GND板に電気的接続するとともに前記GND板から導出する縁で前記GND板に電気的接続し、前記第2の同軸線路の外側導体が前記第2のアンテナの近くと前記GND板の縁で前記GND板にそれぞれに電気的接続された間の長さを前記携帯電話の周波数帯の略1/4波長の実効長となるようにし、前記第3のアンテナに電気的接続される第3の同軸線路の外側導体を、前記第3のアンテナの近くで前記GND板に電気的接続するとともに前記GND板から導出する縁で前記GND板に電気的接続し、前記第3の同軸線路の外側導体が前記第3のアンテナの近くと前記GND板の縁で前記GND板にそれぞれに電気的接続される間の長さを前記携帯電話の周波数帯の略1/4波長の実効長となるようにして構成することもできる。
【0010】
そしてまた、前記第1と第2と第3の同軸線路を、前記GND板上で前記GND板から導出する縁まで、平行で近接するように配設して構成することも可能である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の複合アンテナにあっては、第1の同軸線路の外側導体は、第1のアンテナの近くとGND板の縁でGND板にそれぞれに電気的接続された間の長さが携帯電話の周波数帯の略1/4波長の実効長であり、第1の同軸線路の外側導体を伝播する携帯電話用の周波数の漏洩電流の進行波と、GND板の縁で反射される逆方向の進行波が180度の位相差で互い打ち消され、第1のアンテナの指向特性を乱すことがない。しかも、第2の同軸線路の外側導体も第2のアンテナの近くとGND板の縁でGND板にそれぞれに電気的接続された間の長さが携帯電話の周波数帯の略1/4波長の実効長であり、第2の同軸線路の外側導体を伝播する携帯電話用の周波数の漏洩電流の進行波と、GND板の縁で反射される逆方向の進行波が180度の位相差で互い打ち消され、第2の外側導体より携帯電話の周波数帯の不要放射がなく、第1のアンテナの指向特性を乱すことがない。
【0012】
また、請求項2記載の複合アンテナにあっては、第1と第2の同軸線路を、GND板上でGND板から導出する縁まで、平行で近接するように配設したので、第1と第2の同軸線路の外側導体が互いに容量結合され、そこを流れる携帯電話用の周波数の漏洩電流の位相がほぼ同じとなり、より確実に外部導体に流れる漏洩電流が打ち消される。
【0013】
そして、請求項3記載の複合アンテナにあっては、第1の同軸線路の外側導体は、第1のアンテナの近くとGND板の縁でGND板にそれぞれに電気的接続された間の長さが携帯電話の周波数帯の略1/4波長の実効長であり、第1の同軸線路の外側導体を伝播する携帯電話用の周波数の漏洩電流の進行波と、GND板の縁で反射される逆方向の進行波が180度の位相差で互い打ち消され、第1のアンテナの指向特性を乱すことがない。しかも、第2の同軸線路の外側導体も第2のアンテナの近くとGND板の縁でGND板にそれぞれに電気的接続された間の長さを携帯電話の周波数帯の略1/4波長の実効長とし、第3の同軸線路の外側導体も第3のアンテナの近くとGND板の縁でGND板にそれぞれに電気的接続された間の長さを携帯電話の周波数帯の略1/4波長の実効長としているので、第2および第3の同軸線路の外側導体を伝播する携帯電話用の周波数の漏洩電流の進行波と、GND板の縁で反射される逆方向の進行波が180度の位相差で互い打ち消され、第2および第3の外側導体より携帯電話の周波数帯の不要放射がなく、第1のアンテナの指向特性を乱すことがない。
【0014】
そしてまた、請求項4記載の複合アンテナにあっては、第1と第2と第3の同軸線路を、GND板上でGND板から導出する縁まで、平行で近接するように配設したので、第1と第2と第3の同軸線路の外側導体が互いに容量結合され、そこを流れる携帯電話用の周波数の漏洩電流の位相がほぼ同じとなり、より確実に外部導体に流れる漏洩電流を打ち消される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1実施例を図1ないし図6を参照して説明する。図1は、本発明の複合アンテナの第1実施例の構造を示す外観斜視図である。図2は、本発明の複合アンテナの第1実施例の平面図である。図3は、図2のA矢視図である。図4は、第1のアンテナと第1の同軸線路の中心導体の間に介装するマッチング回路図である。図5は、本発明の複合アンテナの第1実施例の仰角0度の垂直偏波の指向特性を示し、(a)は830MHzであり、(b)は885MHzであり、(c)は1940MHzであり、(d)は2150MHzである。図6は、本発明の複合アンテナの第1実施例のVSWR特性図である。図1ないし図3において、図9と同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて重複した説明を省略する。
【0016】
図1ないし図3において、1枚のGND板10上に、携帯電話用の800MHz帯と2GHz帯のデュアルバンドを送受信できる携帯電話の周波数帯用の第1のアンテナ12と、GPS用パッチアンテナとしての第2のアンテナ14及びETC用パッチアンテナとしての第3のアンテナ16がそれぞれに配設される。なお、GND板10の表面には、携帯電話の周波数帯用の回路基板12aが配設され、後述するマッチング回路30が配設されている。また、第2のアンテナ14と第3のアンテナ16は、GND板10から上に少し浮かせた状態の上方位置に配設されている。そして、第1のアンテナ12の入出力端子には、マッチング回路30が配設された回路基板12aを適宜に介して第1の同軸線路22の中心導体22aが電気的接続され、その近くで第1の同軸線路22の外側導体22bがGND板10に電気的接続される。さらに、第1の同軸線路22の外側導体22bがGND板10の縁でGND板10に電気的接続される。そして、第1の同軸線路22の外側導体22bが、第1のアンテナ12の入出力端子の近くでGND板10に電気的接続された位置からGND板10の縁でGND板10に電気的接続された位置までの長さが、携帯電話用の周波数帯の例えば800MHz帯の中心周波数の860MHzの略1/4波長の実効長に設定されている。また、第2のアンテナ14には、第2の同軸線路24の中心導体24aが電気的接続され、その外側導体24bが第2のアンテナ14自体のGND板に電気的接続されるとともに、第2のアンテナ14の入出力端子の近くでGND板10に電気的接続される。さらに、第2の同軸線路24は第1の同軸線路22に沿って配設され、第2の同軸線路24の外側導体24bがGND板10の縁でGND板10に電気的接続される。そして、第2の同軸線路24の外側導体22bが、第2のアンテナ14の入出力端子の近くでGND板10に電気的接続された位置からGND板10の縁でGND板10に電気的接続された位置までの長さが、携帯電話用の周波数帯の例えば800MHz帯の中心周波数の略1/4波長の実効長に設定される。そしてさらに、第3のアンテナ16には、第3の同軸線路26の中心導体26aが電気的接続され、その外側導体26bが第3のアンテナ16自体のGND板に電気的接続されるとともに、第3のアンテナ16の入出力端子の近くでGND板10に電気的接続される。さらに、第3の同軸線路26は第1の同軸線路22に沿って配設され、第3の同軸線路26の外側導体26bがGND板10の縁でGND板10に電気的接続される。そして、第3の同軸線路26の外側導体26bが、第3のアンテナ16の入出力端子の近くでGND板10に電気的接続された位置からGND板10の縁でGND板10に電気的接続された位置までの長さが、携帯電話用の周波数帯の例えば800MHz帯の中心周波数の略1/4波長の実効長に設定される。第1の同軸線路22に沿って配設される第2と第3の同軸線路24、26は、GND板10上でGND板10の縁まで、略平行でできるだけ密に接近して配設されることが望ましい。なお、第2の同軸線路24の外側導体24bが第2のアンテナ14自体のGND板に電気的接続され、第3の同軸線路26の外側導体26bが第3のアンテナ16自体のGND板に電気的接続されていることは、勿論である。
【0017】
かかる構成にあっては、第1の同軸線路22の外側導体22bが、第1のアンテナ12の入出力端子の近くでGND板10に電気的接続され、またGND板10から導出される縁でGND板10に電気的接続され、第1の同軸線路22の外側導体22bが第1のアンテナ12の入出力端子の近くとGND板10の縁でGND板10に電気的接続された間の長さが、第1のアンテナ12で送受信する例えば800MHz帯の携帯電話用の周波数帯の中心周波数の略1/4波長の実効長に設定されているので、GND板10上の第1の同軸線路22の外側導体22bに、携帯電話用の周波数の漏洩電流が進行波として伝播するが、この進行波がGND板10の縁で反射され、反射された進行波は逆方向に外側導体22bを伝播し、この進行波と反射されて逆方向に伝播する進行波は、180度の位相差があるため、第1のアンテナ12の入出力端子の近くでGND板10に電気的接続された点で互いに打ち消される。もって、第1のアンテナ12の入出力端子には、漏洩電流が生じることがなく、第1のアンテナ12から出力される信号には、漏洩電流の影響による大きな歪みを生ずることがない。そして、同様にして、第2と第3の同軸線路24、26の外側導体24b、26bが、第2と第3のアンテナ14、16の入出力端子の近くとGND板10の縁でGND板10に電気的接続された間の長さを、それぞれに第1のアンテナ12で送受信する携帯電話用の周波数帯の中心周波数の例えば800MHz帯の中心周波数の略1/4波長の実効長に設定されているので、GND板10上の第2と第3の同軸線路24、26の外側導体24b、26bに伝播する携帯電話用の周波数の漏洩電流が打ち消される。もって、第2と第3の同軸線路24、26の外側導体24b、26bから携帯電話用の周波数の不要放射がなく、第1のアンテナ12から出力される信号には、この不要放射の影響による大きな歪みを生じない。
【0018】
ところで、第1と第2と第3の同軸線路22、24、26のGND板10上の長さは、GND板10上で第1と第2と第3のアンテナ12、14、16の配設位置が相違することから、ほぼ同じ長さに設定することは困難である。そこで、それぞれの外側導体22b、24b、26bがそれぞれの第1と第2と第3のアンテナ12、14、16の入出力端子の近くでGND板10に電気的接続された位置からGND板10の縁で電気的接続された位置までの長さを、正確に携帯電話用の周波数帯の例えば800MHz帯の中心周波数の略1/4波長の実効長に設定することが困難である。ここで、携帯電話用の800MHz帯の中心周波数は860MHzであり、その1/4波長の長さは87mmである。そして、実際に製作された複合アンテナにあっては、第1の同軸線路22で入出力端子の近くでGND板10に電気的接続された位置からGND板10の縁で電気的接続された位置までの外部導体22bの長さが80mmであり、第3の同軸線路26で入出力端子の近くでGND板10に電気的接続された位置からGND板10の縁で電気的接続された位置までの外部導体26bの長さが97mmであった。その差は17mmであった。この外部導体22b、26bの長さのバラツキは、位相のずれとなって進行波と反射による逆方向の進行波の振幅の違いとなる。進行波の振幅が最大となる位置で、その振幅の差を10%と仮定すれば、その位相差は約26°である。そして、この26°の位相差は、約25mmに相当する。そこで、実際に製作した複合アンテナにあっては、進行波と反射による逆方向の進行波の振幅の違いは、10%以下であり、十分に互いに打ち消すことができる。
【0019】
そして、回路基板12aに搭載されて第1のアンテナ12と第1の同軸線路22の間に介装されるマッチング回路30は、図4に示すように、第1のアンテナ12の入出力端子が、第1のコイルL1を介してGND板10に電気的接続され、また第1のコンデンサC1と第2のコイルL2を直列に介して第1の同軸線路22の中心導体22aに接続され、さらに第1のコンデンサC1と第2のコイルL2の接続点が第2のコンデンサC2を介してGND板10に電気的接続される。一例として、第1のコイルL1は6.2nHであり、第1のコンデンサC1は1.5pFであり、第2のコイルL2は3.3nHであり、第2のコイルC2は0.9pFである。
【0020】
発明者らは、上述のごとき構成からなる複合アンテナを製作してそのアンテナ特性を測定した。すると、図5に示すごとく、携帯電話用の周波数帯で、仰角0度の垂直偏波の指向特性において、(a)の830MHzと(b)の885MHzと(c)の1940MHzおよび(d)の2150MHzにおいて、それぞれに無指向特性が得られた。また、図6に示すごとく、携帯電話用の周波数帯で、830MHzから885MHzの800MHz帯と、1940MHzから2150MHzでの2GHz帯のいずれにあっても、VSWRが3以下であり、アンテナとして十分な利得が得られている。もって、1枚のGND板10に第1と第2と第3のアンテナ12、14、16を配設した複合アンテナにあっても、携帯電話用の周波数帯の信号に歪みが生じたり、指向特性が劣化するようなことがない。
【0021】
次に、本発明の第2実施例を図7および図8を参照して説明する。図7は、本発明の複合アンテナの第2実施例の平面図である。図8は、本発明の複合アンテナの第2実施例の仰角0度の垂直偏波の指向特性を示し、(a)は830MHzであり、(b)は885MHzであり、(c)は1940MHzであり、(d)は2150MHzである。図7において、図1ないし図3および図9と同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて重複した説明を省略する。
【0022】
図7において、図1ないし図3に示す第1実施例と相違するところは、1枚のGND板10上に、携帯電話用の800MHz帯と2GHz帯のデュアルバンドを送受信できる携帯電話の周波数帯用の第1のアンテナ12と、GPS用パッチアンテナとしての第2のアンテナ14が配設され、ETC用パッチアンテナとしての第3のアンテナ16が配設されていないことにある。そして、第1のアンテナ12の入出力端子には、マッチング回路30が配設された回路基板12aを適宜に介して第1の同軸線路22の中心導体22aが電気的接続され、その近くで第1の同軸線路22の外側導体22bがGND板10に電気的接続され、さらに第1の同軸線路22の外側導体22bがGND板10の縁でGND板10に電気的接続される。そして、第1の同軸線路22の外側導体22bが、第1のアンテナ12の入出力端子の近くでGND板10に電気的接続された位置からGND板10の縁でGND板10に電気的接続された位置までの長さが、携帯電話用の周波数帯の例えば800MHz帯の中心周波数860MHzの略1/4波長の実効長に設定されている。また、第2のアンテナ14には、第2の同軸線路24の中心導体24aが電気的接続され、その外側導体24bが第2のアンテナ14自体のGND板に電気的接続されるとともに、第2のアンテナ14の入出力端子の近くでGND板10に電気的接続され、さらに第2の同軸線路24は第1の同軸線路22に沿って配設され、第2の同軸線路24の外側導体24bがGND板10の縁でGND板10に電気的接続される。そして、第2の同軸線路24の外側導体22bが、第2のアンテナ14の入出力端子の近くでGND板10に電気的接続された位置からGND板10の縁でGND板10に電気的接続された位置までの長さが、携帯電話用の周波数帯の例えば800MHz帯の中心周波数の略1/4波長の実効長に設定される。なお、当然に第3の同軸線路26は配設されていない。また、第2の同軸線路24の外側導体24bが第2のアンテナ14自体のGND板に電気的接続されることは、勿論である。
【0023】
発明者らは、上述のごとき構成からなる複合アンテナの第2実施例を製作してそのアンテナ特性を測定した。すると、図8に示すごとく、携帯電話用の周波数帯で、仰角0度の垂直偏波の指向特性において、(a)の830MHzと(b)の885MHzと(c)の1940MHzおよび(d)の2150MHzで、それぞれに無指向特性が得られた。もって、1枚のGND板10に第1と第2のアンテナ12、14を配設した複合アンテナにあっても、携帯電話用の周波数帯の信号に歪みが生じたり、指向特性が劣化するようなことがない。
【0024】
なお、上記実施例にあっては、第1のアンテナ12が、携帯電話用の周波数帯の800MHz帯と2GHz帯のデユアルバンドアンテナであるが、これに限られず、携帯電話用の他の周波数帯のデユアルバンドアンテナであっても良く、また携帯電話用の周波数帯の何れかの1周波数帯のアンテナであっても良い。そして、第2と第3のアンテナ14、16はGPS用パッチアンテナとETC用パッチアンテナに限られず、他の通信手段用のアンテナであっても良い。さらに、第1実施例では、1枚のGND板10に3つのアンテナを配設した複合アンテナであり、第2実施例では、1枚のGND板10に2つのアンテナを配設した複合アンテナであるが、これに限られず、1枚のGND板10に4つ以上のアンテナを配設しても良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の複合アンテナの第1実施例の構造を示す外観斜視図である。
【図2】本発明の複合アンテナの第1実施例の平面図である。
【図3】図2のA矢視図である。
【図4】第1のアンテナと第1の同軸線路の中心導体の間に介装するマッチング回路図である。
【図5】本発明の複合アンテナの第1実施例の仰角0度の垂直偏波の指向特性を示し、(a)は830MHzであり、(b)は885MHzであり、(c)は1940MHzであり、(d)は2150MHzである。
【図6】本発明の複合アンテナの第1実施例のVSWR特性図である。
【図7】本発明の複合アンテナの第2実施例の平面図である。
【図8】本発明の複合アンテナの第2実施例の仰角0度の垂直偏波の指向特性を示し、(a)は830MHzであり、(b)は885MHzであり、(c)は1940MHzであり、(d)は2150MHzである。
【図9】携帯電話の周波数帯用のアンテナに特開2007−195001号公報に示された技術を適用した複合アンテナの平面図である。
【図10】図9に示す複合アンテナを製作して測定した仰角0度の垂直偏波の指向特性を示し、(a)は830MHzであり、(b)は885MHzであり、(c)は1940MHzであり、(d)は2150MHzである。
【符号の説明】
【0026】
10 GND板
12 第1のアンテナ
12a 回路基板
14 第2のアンテナ
16 第3のアンテナ
22 第1の同軸線路
22a、24a、26a 中心導体
22b、24b、26b 外側導体
24 第2の同軸線路
26 第3の同軸線路
30 マッチング回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚のGND板の上に、携帯電話の周波数帯用の第1のアンテナと他の周波数帯用の第2のアンテナを配設した複合アンテナにおいて、前記第1のアンテナに電気的接続される第1の同軸線路の外側導体を、前記第1のアンテナの近くで前記GND板に電気的接続するとともに前記GND板から導出する縁で前記GND板に電気的接続し、前記第1の同軸線路の外側導体が前記第1のアンテナの近くと前記GND板の縁で前記GND板にそれぞれに電気的接続された間の長さを前記携帯電話の周波数帯の略1/4波長の実効長となるようにし、前記第2のアンテナに電気的接続される第2の同軸線路の外側導体を、前記第2のアンテナの近くで前記GND板に電気的接続するとともに前記GND板から導出する縁で前記GND板に電気的接続し、前記第2の同軸線路の外側導体が前記第2のアンテナの近くと前記GND板の縁で前記GND板にそれぞれに電気的接続された間の長さを前記携帯電話の周波数帯の略1/4波長の実効長となるようにして構成したことを特徴とする複合アンテナ。
【請求項2】
請求項1記載の複合アンテナにおいて、前記第1と第2の同軸線路を、前記GND板上で前記GND板から導出する縁まで、平行で近接するように配設して構成したことを特徴とする複合アンテナ。
【請求項3】
1枚のGND板の上に、携帯電話の周波数帯用の第1のアンテナと他の周波数帯用の第2と第3のアンテナを配設した複合アンテナにおいて、前記第1のアンテナに電気的接続される第1の同軸線路の外側導体を、前記第1のアンテナの近くで前記GND板に電気的接続するとともに前記GND板から導出する縁で前記GND板に電気的接続し、前記第1の同軸線路の外側導体が前記第1のアンテナの近くと前記GND板の縁で前記GND板にそれぞれに電気的接続された間の長さを前記携帯電話の周波数帯の略1/4波長の実効長となるようにし、前記第2のアンテナに電気的接続される第2の同軸線路の外側導体を、前記第2のアンテナの近くで前記GND板に電気的接続するとともに前記GND板から導出する縁で前記GND板に電気的接続し、前記第2の同軸線路の外側導体が前記第2のアンテナの近くと前記GND板の縁で前記GND板にそれぞれに電気的接続された間の長さを前記携帯電話の周波数帯の略1/4波長の実効長となるようにし、前記第3のアンテナに電気的接続される第3の同軸線路の外側導体を、前記第3のアンテナの近くで前記GND板に電気的接続するとともに前記GND板から導出する縁で前記GND板に電気的接続し、前記第3の同軸線路の外側導体が前記第3のアンテナの近くと前記GND板の縁で前記GND板にそれぞれに電気的接続される間の長さを前記携帯電話の周波数帯の略1/4波長の実効長となるようにして構成したことを特徴とする複合アンテナ。
【請求項4】
請求項3記載の複合アンテナにおいて、前記第1と第2と第3の同軸線路を、前記GND板上で前記GND板から導出する縁まで、平行で近接するように配設して構成したことを特徴とする複合アンテナ。
【請求項5】
請求項3記載の複合アンテナにおいて、前記第2と第3のアンテナを、GPS用パッチアンテナとETC用パッチアンテナでそれぞれ構成したことを特徴とする複合アンテナ。
【請求項6】
請求項1または請求項3記載の複合アンテナにおいて、前記第1のアンテナと前記第1の同軸線路の中心導体の間にマッチング回路を介装して、前記第1のアンテナの入出力インピーダンスを調整して構成したことを特徴とする複合アンテナ。
【請求項7】
請求項1または請求項3記載の複合アンテナにおいて、前記第1のアンテナに、携帯電話用の800MHz帯と2GHz帯をともに送受信できるデュアルバンドアンテナを用いて構成したことを特徴とする複合アンテナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−57022(P2010−57022A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221367(P2008−221367)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)
【Fターム(参考)】