説明

複数周波数帯用アンテナ

【課題】第1と第2のアンテナエレメント20、22が相互干渉を生じず、しかも小型に形成し得る複数周波数帯用アンテナを提供する。
【解決手段】低い周波数帯用の第1のアンテナエレメント20の基端と、高い周波数帯用の第2のアンテナエレメント22の基端を、同じ給電点12に電気的接続し、第1のアンテナエレメント20を高い周波数帯の1/2波長の電気長に設定するとともにその先端を接地短絡せずに解放し、第2のアンテナエレメント22を低い周波数帯の1/4波長の電気長に設定するとともにその先端を接地短絡する。低い周波数帯に対して、第2のアンテナエレメント22のインピーダンスは無限大であり、高い周波数帯に対して、第1のアンテナエレメント20のインピーダンスは無限大である。第1と第2のアンテナエレメント20、22は、相互干渉を生じず、相互に独立してアンテナ動作が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2本のアンテナエレメントを用いて、小型でしかも相互干渉がなく、複数の周波数帯で使用でき、携帯電話および情報通信等の複数の信号を送受信するのに好適な複数周波数帯用アンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信が急速に進展し、そのなかでも携帯電話は著しく普及し、しかも小型・軽量化が図られている。そして、携帯電話にあっては、日本ではPDC800MHz帯とPDC1.5GHz帯が利用され、欧州ではGSM帯とDCS帯が利用され、北米ではAMPS帯とPCS帯が利用され、それぞれの地域でデュアルバンドが主流となっている。そこで、これらの携帯電話にあっては、それぞれの周波数帯を送受信できるアンテナが設けられている。
【0003】
従来の携帯電話用の複数周波数用アンテナの一例を図18を参照して説明する。図18は、従来の複数周波数用アンテナの一例の構成図である。図18において、低い周波数帯用の第1のアンテナエレメント10は、基端aが給電点12に電気的接続され、接地導体14に対して垂直な部分abとこれに連なるミアンダ状に折り曲げられた部分bcとさらにこれに連なる垂直な部分cdとからなり、先端dは接地導体14に接地短絡されている。ミアンダ状の部分bcを伸ばせば、接地導体14に平行であって、接地導体14側を開口するコ字状に形成されている。そして、この第1のアンテナエレメント10の電気長abcdは、低い周波数帯の1/2波長に設定される。また、高い周波数帯用の第2のアンテナエレメント16は、垂直な部分abを共通の導電路とし、さらに垂直な部分beを伸ばして設け、これに連なり接地導体14に平行な部分efからなっており、逆L字状に形成され、その先端fは接地導体14に電気的に接続されずに解放されている。この第2のアンテナエレメント16の電気長abefは、高い周波数帯の1/4波長に設定される。そして、この第2のアンテナエレメント16の逆L字状で、第1のアンテナエレメント10の一部を覆うように、第1と第2のアンテナエレメント10、16が配設される。
【0004】
また、従来の携帯電話用の複数周波数用アンテナの別の例を図19を参照して説明する。図19は、従来の複数周波数用アンテナの別の例の構成図である。図19において、低い周波数帯用の第1のアンテナエレメント10の構成は、図18に示すものと同じである。そして、この第1のアンテナエレメント10の垂直な部分abとcdの途中の箇所g、hを導電路で結んで、電気長aghdにより高い周波数帯用の第2のアンテナエレメント18が構成される。この第2のアンテナエレメント18の電気長aghdは、高い周波数帯の1/2波長に設定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図18および図19に示す従来の構成例にあっては、低い周波数帯用の第1のアンテナエレメント10の電気長abcdが、低い周波数帯の1/2波長に設定されているのでその長さは比較的に長く、ミアンダ状に形成しても広い設置スペースが必要である。また、低い周波数帯の高調波が、高い周波数帯に含まれる場合には、第1のアンテナエレメント10と第2のアンテナエレメント16、18が相互干渉を生じて、高い周波数帯でアンテナ利得の劣化が著しいという不具合が生ずる。例えば、日本における携帯電話で使用される周波数帯にあっては、低い周波数帯のPDC800MHz帯の2次高調波が、高い周波数帯のPDC1.5GHz帯と一部が重複し、アンテナ特性の劣化を生ずる。
【0006】
本発明は、上述のごとき従来技術の事情に鑑みてなされたもので、2つのアンテナエレメントが相互干渉を生ずることがなく、しかも小型の複数周波数帯用アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明の複数周波数帯用アンテナは、低い周波数帯用の第1のアンテナエレメントの基端と、高い周波数帯用の第2のアンテナエレメントの基端を、同じ給電点に電気的接続し、前記第1のアンテナエレメントを前記高い周波数帯の1/2波長の電気長に設定するとともにその先端を接地短絡させることなしに解放し、前記第2のアンテナエレメントを前記低い周波数帯の1/4波長の電気長に設定するとともにその先端を接地短絡して構成されている。
【0008】
また、低い周波数帯用の第1のアンテナエレメントの基端と、前記低い周波数帯の略2倍の周波数の高い周波数帯用の第2のアンテナエレメントの基端を、同じ給電点に電気的接続し、前記第1のアンテナエレメントを前記高い周波数帯の1/2波長の電気長に設定するとともにその先端を接地短絡させることなしに解放し、前記第2のアンテナエレメントを前記低い周波数帯の1/4波長の電気長に設定するとともにその先端を接地短絡して構成しても良い。
【0009】
そして、前記第1のアンテナエレメントと前記第2のアンテナエレメントで、その基端から前記高い周波数帯の略1/8波長の電気長以内を、共通の導電路を用いて構成することもできる。
【0010】
さらに、前記第1のアンテナエレメントを接地導体に対して垂直な部分とそれに連なる平行な部分からなる逆L字状に形成し、前記第2のアンテナエレメントを前記接地導体に対し垂直な部分とそれに連なる平行な部分とさらに連なる垂直な部分とからなるコ字状に形成し、前記第1のアンテナエレメントの逆L字状で前記第2のアンテナエレメントのコ字状の2方向を覆うように、前記第1と第2のアンテナエレメントを配設して構成することも可能である。
【0011】
さらにまた、アンテナエレメントの前記基端と前記給電点の間に、整合回路を介装して構成しても良い。
【0012】
そしてまた、前記第1のアンテナエレメントで、携帯電話用のPDC800MHz帯またはGSM帯またはAMPS帯のいずれかの周波数帯の信号を送受信し、前記第2のアンテナエレメントで、PDC1.5GHz帯またはDCS帯またはPCS帯のいずれかの周波数帯の信号を送受信するように構成しても良い。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の複数周波数帯用アンテナにあっては、低い周波数帯に対して、第2のアンテナエレメントのインピーダンスは無限大であり、また高い周波数帯に対して、第1のアンテナエレメントのインピーダンスは無限大である。そこで、第1のアンテナエレメントで送受信される低い周波数帯に対して、第2のアンテナエレメントは何ら干渉せず、第2のアンテナエレメントで送受信される高い周波数帯に対して、第1のアンテナエレメントは何ら干渉しない。したがって、第1と第2のアンテナエレメントは、相互干渉を生ずることがなく、相互に独立してアンテナ動作を行うことができ、低い周波数帯と高い周波数帯でともに良好な利得を得ることができる。
【0014】
請求項2記載の複数周波数帯用アンテナにあっては、低い周波数帯に対して、その略2倍の周波数が高い周波数帯であるので、高い周波数帯の1/2波長に設定された第1のアンテナエレメントは低い周波数帯に対して略1/4波長であり、先端が解放されているので低い周波数帯が共振できて高いアンテナ利得が得られる。また、低い周波数帯の1/4波長に設定された第2のアンテナエレメントは高い周波数帯に対して略1/2波長であり、先端が接地短絡されているので高い周波数帯が共振できて高いアンテナ利得が得られる。
【0015】
請求項3記載の複数周波数帯用アンテナにあっては、第1と第2のアンテナエレメントで、給電点と電気的接続される基端から所定の電気長以内を、共通の導電路を用いているので、別々に設けるものよりも、設置スペースが小さくて足りる。
【0016】
請求項4記載の複数周波数帯用アンテナにあっては、第1と第2のアンテナエレメントを、コ字状の第2のアンテナエレメントの一部を逆L字状の第1のアンテナエレメントで覆うように組み合わせているので、小さな設置スペースで2本のアンテナエレメントを配設することができる。
【0017】
請求項5記載の複数周波数帯用アンテナにあっては、アンテナエレメントの基端と給電点の間に、整合回路を介装したので、第1のアンテナエレメントの電気長が低い周波数帯の信号が共振し得る長さから少しずれていても、また第2のアンテナエレメントの電気長が高い周波数帯の信号が共振し得る長さから少しずれていても、整合回路によりアンテナの入出力インピーダンスを適宜に調整することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の第1実施例を図1ないし図5を参照して説明する。図1は、本発明の複数周波数帯用アンテナの第1実施例の基本的なアンテナの構成図である。図2は、図1のアンテナの構成に、入出力インピーダンスの整合を図るための整合回路を介装した構成図である。図3は、図2の整合回路の一例を示す回路図である。図4は、図2のアンテナの構成におけるVSWR特性図である。図5は、図2のアンテナの構成における各周波数帯の受信効率を示した図である。
【0019】
図1において、本発明の複数周波数帯用アンテナの第1実施例の基本的なアンテナの構成は、以下のごときものである。まず、低い周波数帯用の第1のアンテナエレメント20は、その基端aが給電点12に電気的接続され、接地導体14に対して垂直な部分aiと、これに連なり接地導体14に平行な部分ijにより逆L字状に形成され、その先端jは接地導体14に電気的に接続されずに解放されている。しかも、この第1のアンテナエレメント20の電気長aijは、高い周波数帯の1/2波長に設定される。また、高い周波数帯用の第2のアンテナエレメント22は、その基端aが給電点12に電気的接続され、接地導体14に対して垂直な部分akと、これに連なり接地導体14に平行な部分klとさらに連なる垂直な部分lmとからなり、その先端mが接地導体14に電気的に接続されて接地短絡され、接地導体14側を開口するコ字状に形成される。そして、このコ字状の第2のアンテナエレメント22の電気長aklmは、低い周波数帯の1/4波長に設定される。なお、第1のアンテナエレメント20の垂直な部分aiの長さは、第2のアンテナエレメント22の垂直な部分akの長さよりも長く設定されていて、コ字状の第2のアンテナエレメント22の基端側の2方向が、逆L字状の第1のアンテナエレメント20で覆われるように、第1のアンテナエレメント20と第2のアンテナエレメント22が組み合わされて配設される。
【0020】
図1に示す構成において、高い周波数帯に対して、第1のアンテナエレメント20のインピーダンスは無限大であり、また低い周波数帯に対して、第2のアンテナエレメント22のインピーダンスは無限大である。そこで、前述の低い周波数帯と高い周波数帯のアンテナとして動作する場合には、第1のアンテナエレメント20と第2のアンテナエレメント22は相互干渉を生ずることがなく、互いに独立してアンテナ動作がなし得る。もって、従来のごとき相互干渉による利得の劣化を生じない。
【0021】
図1に示すアンテナの構成において、第1と第2のアンテナエレメント20、22の入出力インピーダンスと給電点12の入出力インピーダンスを整合させる必要がある場合には、図2に示すごとく、第1と第2のアンテナエレメント20、22の基端aと給電点12の間に整合回路24を介装しても良い。この整合回路24の一例は、図3に示されるごとく、適宜なLC回路で形成される。かかるアンテナの構成で、低い周波数帯がGSM帯で高い周波数帯が低い周波数帯の略2倍の周波数であるDCS帯およびPCS帯となるように、第1と第2のアンテナエレメント20、22の電気長をそれぞれに設定して、VSWR特性を測定したところ、図4に示すごとく、GSM帯の880〜960MHzの周波数範囲でVSWRが2以下の良好な特性が得られている。また、DCS帯とPCS帯におよぶ1710〜1990MHzの周波数範囲でもほぼVSWRが4以下であり、GSM帯とDCS帯および/またはPCS帯の複数周波数帯用アンテナとして十分に利用できるとの結果が得られた。また、図5に(1)で示す受信効率にあっても、平均効率はGSM帯で88.95%であり、DCS帯で57.29%であり、PCS帯で48.78%であり、いずれの周波数帯でも充分なアンテナ効率が得られている。
【0022】
次に、本発明の第2実施例を図6ないし図17を参照して説明する。図6は、本発明の複数周波数帯用アンテナの第2実施例の基本的なアンテナの構成図である。図7は、図6のアンテナの構成に、入出力インピーダンスの整合を図るための整合回路を介装した構成図である。図8は、図7の構成で、基端側の共通の導電路の電気長を高い周波数帯の1/32波長とした場合の整合回路の一例を示す回路図である。図9は、図7の構成で、基端側の共通の導電路の電気長を高い周波数帯の1/32波長として、図8の整合回路を設けたアンテナの構成におけるVSWR特性図である。図10は、図7の構成で、基端側の共通の導電路の電気長を高い周波数帯の1/16波長とした場合の整合回路の一例を示す回路図である。図11は、図7の構成で、基端側の共通の導電路の電気長を高い周波数帯の1/16波長として、図10の整合回路を設けたアンテナの構成におけるVSWR特性図である。図12は、図7の構成で、基端側の共通の導電路の電気長を高い周波数帯の3/32波長とした場合の整合回路の一例を示す回路図である。図13は、図7の構成で、基端側の共通の導電路の電気長を高い周波数帯の3/32波長として、図12の整合回路を設けたアンテナの構成におけるVSWR特性図である。図14は、図7の構成で、基端側の共通の導電路の電気長を高い周波数帯の1/8波長とした場合の整合回路の一例を示す回路図である。図15は、図7の構成で、基端側の共通の導電路の電気長を高い周波数帯の1/8波長として、図14の整合回路を設けたアンテナの構成におけるVSWR特性図である。図16は、図7の構成で、基端側の共通の導電路の電気長を高い周波数帯の5/32波長とした場合の整合回路の一例を示す回路図である。図17は、図7の構成で、基端側の共通の導電路の電気長を高い周波数帯の5/32波長として、図16の整合回路を設けたアンテナの構成におけるVSWR特性図である。図6および図7において、図1および図2に示す部材と同じ若しくは均等な部材には、同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0023】
図6において、本発明の複数周波数帯用アンテナの第2実施例の基本的なアンテナの構成で、図1に示す第1実施例と相違するところは、高い周波数帯用の第2のアンテナエレメント26の基端a側の垂直な部分akが、低い周波数帯用の第1のアンテナエレメント20の基端a側の垂直な部分aiの一部と共通の導電路を用いて形成されることにある。すなわち、低い周波数帯用の第1のアンテナエレメント20は第1実施例と同じであり、高い周波数帯用の第2のアンテナエレメント26が、低い周波数帯用の第1のアンテナエレメント20の基端a側の垂直な部分aiの途中の箇所kまでの共通の導電路を用いた垂直な部分akとこれに連なり接地導体14に平行な部分klとさらに連なる垂直な部分lmとから形成されている。
【0024】
図6に示す構成において、基端a側の共通の導電路の電気長が短い範囲では、高い周波数帯に対して、第1のアンテナエレメント20のインピーダンスは無限大であり、また低い周波数帯に対して、第2のアンテナエレメント26のインピーダンスは無限大であり、第1と第2のアンテナエレメント20、26は相互干渉を生ずることがなく、互いに独立してアンテナ動作がなし得る。もって、従来のごとき相互干渉による利得の劣化を生じない。しかも、第1と第2のアンテナエレメント20、26が基端a側で共通の導電路を用いることで、小型化が容易である。
【0025】
図6に示すアンテナの構成において、第1と第2のアンテナエレメント20、26の入出力インピーダンスと給電点12の入出力インピーダンスを整合させる必要がある場合には、図7に示すごとく、第1実施例と同様に、第1と第2のアンテナエレメント20、26の基端aと給電点12の間に整合回路24を介装しても良い。この整合回路24は、適宜なLC回路で形成されるが、回路を形成する素子の定数は共通の導電路の電気長akに応じて調整される。かかるアンテナの構成で、低い周波数帯がGSM帯で高い周波数帯が低い周波数帯の略2倍の周波数であるDCS帯およびPCS帯となるように、第1と第2のアンテナエレメント20、26の電気長をそれぞれに設定して、しかも共通の導電路の電気長akを変化させるとともに整合回路24の定数も適宜に設定して、VSWR特性を測定した。まず、共通の導電路の電気長akが高い周波数帯の1/32波長とした場合には、図9に示すごとく、GSM帯の880〜960MHzの周波数範囲でVSWRが2以下の良好な特性が得られている。また、DCS帯とPCS帯におよぶ1710〜1990MHzの周波数範囲でもVSWRが4以下であり、GSM帯とDCS帯および/またはPCS帯の複数周波数帯用アンテナとして十分に利用できるとの結果が得られた。また、図5に(2)で示す受信効率にあっても、平均効率はGSM帯で87.13%であり、DCS帯で57.51%であり、PCS帯で46.37%であり、いずれの周波数帯でも充分なアンテナ効率が得られている。また、共通の導電路の電気長akが高い周波数帯の1/16波長とした場合には、図11に示すごとく、GSM帯の880〜960MHzの周波数範囲でVSWRがほぼ2以下の良好な特性が得られている。また、DCS帯とPCS帯におよぶ1710〜1990MHzの周波数範囲でもVSWRが4以下であり、GSM帯とDCS帯および/またはPCS帯の複数周波数帯用アンテナとして十分に利用できるとの結果が得られた。また、図5に(3)で示す受信効率にあっても、平均効率はGSM帯で86.11%であり、DCS帯で59.79%であり、PCS帯で48.87%であり、いずれの周波数帯でも充分なアンテナ効率が得られている。そして、共通の導電路の電気長akが高い周波数帯の3/32波長とした場合には、図13に示すごとく、GSM帯の880〜960MHzの周波数範囲でVSWRが2以下の良好な特性が得られている。また、DCS帯とPCS帯におよぶ1710〜1990MHzの周波数範囲でもVSWRがほぼ4以下であり、GSM帯とDCS帯および/またはPCS帯の複数周波数帯用アンテナとして十分に利用できるとの結果が得られた。また、図5に(4)で示す受信効率にあっても、平均効率はGSM帯で85.77%であり、DCS帯で53.91%であり、PCS帯で44.96%であり、いずれの周波数帯でも充分なアンテナ効率が得られている。さらに、共通の導電路の電気長akが高い周波数帯の1/8波長とした場合には、図15に示すごとく、GSM帯の880〜960MHzの周波数範囲でVSWRが2以下の良好な特性が得られている。また、DCS帯とPCS帯におよぶ1710〜1990MHzの周波数範囲でもVSWRがほぼ4以下であり、GSM帯とDCS帯および/またはPCS帯の複数周波数帯用アンテナとして十分に利用できるとの結果が得られた。また、図5に(5)で示す受信効率にあっても、平均効率はGSM帯で84.84%であり、DCS帯で53.52%であり、PCS帯で45.11%であり、いずれの周波数帯でも充分なアンテナ効率が得られている。しかしながら、共通の導電路の電気長akが高い周波数帯の5/32波長とした場合には、図17に示すごとく、GSM帯の880〜960MHzの周波数範囲でVSWRが2を大きく越えており、またDCS帯とPCS帯におよぶ1710〜1990MHzの周波数範囲でもVSWRが4を大きく越えており、GSM帯とDCS帯および/またはPCS帯の複数周波数帯用アンテナとして利用するのに適していない。また、図5に(6)で示す受信効率にあっても、平均効率はGSM帯で81.70%であり、DCS帯で46.33%であり、これらの周波数の範囲では受信効率に関しては問題ないが、PCS帯では39.47%であり、受信効率が悪い。よって、共通の導電路の電気長akは、高い周波数帯の1/8波長以内が適正である。
【0026】
なお、上記第2実施例にあっては、第2のアンテナエレメント26の基端a側の垂直な部分ak全体が、第1のアンテナエレメント20の垂直な部分aiの基端a側部分と共通の導電路を用いて形成されているが、これに限られず、第2のアンテナエレメント26の基端a側の垂直な部分akの基端a側の一部分のみが、共通の導電路を用いて形成されていても良い。また、上記実施例におけるアンテナ特性の測定は、低い周波数帯としてGSM帯を設定し、高い周波数帯としてDCS帯とPCS帯にまたがる周波数範囲を設定しているが、これに限られず、低い周波数帯としてPDC800MHz帯またはGSM帯またはAMPS帯のいずれが設定されても良く、高い周波数帯としてPDC1.5GHz帯またはDCS帯またはPCS帯のいずれが設定されても良い。しかも、低い周波数帯および高い周波数帯は、1つの周波数帯または2つ以上の周波数帯にまたがって設定されても良い。さらに、低い周波数帯および高い周波数帯として、携帯電話用の周波数帯に限られず、その他の移動体通信用の周波数帯が設定されても良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の複数周波数帯用アンテナの第1実施例の基本的なアンテナの構成図である。
【図2】図1のアンテナの構成に、入出力インピーダンスの整合を図るための整合回路を介装した構成図である。
【図3】図2の整合回路の一例を示す回路図である。
【図4】図2のアンテナの構成におけるVSWR特性図である。
【図5】図2のアンテナの構成における各周波数帯の受信効率を示した図である。
【図6】本発明の複数周波数帯用アンテナの第2実施例の基本的なアンテナの構成図である。
【図7】図6のアンテナの構成に、入出力インピーダンスの整合を図るための整合回路を介装した構成図である。
【図8】図7の構成で、基端側の共通の導電路の電気長を高い周波数帯の1/32波長とした場合の整合回路の一例を示す回路図である。
【図9】図7の構成で、基端側の共通の導電路の電気長を高い周波数帯の1/32波長として、図8の整合回路を設けたアンテナの構成におけるVSWR特性図である。
【図10】図7の構成で、基端側の共通の導電路の電気長を高い周波数帯の1/16波長とした場合の整合回路の一例を示す回路図である。
【図11】図7の構成で、基端側の共通の導電路の電気長を高い周波数帯の1/16波長として、図10の整合回路を設けたアンテナの構成におけるVSWR特性図である。
【図12】図7の構成で、基端側の共通の導電路の電気長を高い周波数帯の3/32波長とした場合の整合回路の一例を示す回路図である。
【図13】図7の構成で、基端側の共通の導電路の電気長を高い周波数帯の3/32波長として、図12の整合回路を設けたアンテナの構成におけるVSWR特性図である。
【図14】図7の構成で、基端側の共通の導電路の電気長を高い周波数帯の1/8波長とした場合の整合回路の一例を示す回路図である。
【図15】図7の構成で、基端側の共通の導電路の電気長を高い周波数帯の1/8波長として、図14の整合回路を設けたアンテナの構成におけるVSWR特性図である。
【図16】図7の構成で、基端側の共通の導電路の電気長を高い周波数帯の5/32波長とした場合の整合回路の一例を示す回路図である。
【図17】図7の構成で、基端側の共通の導電路の電気長を高い周波数帯の5/32波長として、図16の整合回路を設けたアンテナの構成におけるVSWR特性図である。
【図18】従来の複数周波数用アンテナの一例の構成図である。
【図19】従来の複数周波数用アンテナの別の例の構成図である。
【符号の説明】
【0028】
10、20 第1のアンテエナエレメント
12 給電点
14 接地導体
16、18、22、26 第2のアンテナエレメント
24 整合回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低い周波数帯用の第1のアンテナエレメントの基端と、高い周波数帯用の第2のアンテナエレメントの基端を、同じ給電点に電気的接続し、前記第1のアンテナエレメントを前記高い周波数帯の1/2波長の電気長に設定するとともにその先端を接地短絡させることなしに解放し、前記第2のアンテナエレメントを前記低い周波数帯の1/4波長の電気長に設定するとともにその先端を接地短絡して構成したことを特徴とする複数周波数帯用アンテナ。
【請求項2】
低い周波数帯用の第1のアンテナエレメントの基端と、前記低い周波数帯の略2倍の周波数の高い周波数帯用の第2のアンテナエレメントの基端を、同じ給電点に電気的接続し、前記第1のアンテナエレメントを前記高い周波数帯の1/2波長の電気長に設定するとともにその先端を接地短絡させることなしに解放し、前記第2のアンテナエレメントを前記低い周波数帯の1/4波長の電気長に設定するとともにその先端を接地短絡して構成したことを特徴とする複数周波数帯用アンテナ。
【請求項3】
請求項1また2記載の複数周波数帯用アンテナにおいて、前記第1のアンテナエレメントと前記第2のアンテナエレメントで、その基端から前記高い周波数帯の略1/8波長の電気長以内を、共通の導電路を用いて構成したことを特徴とする複数周波数帯用アンテナ。
【請求項4】
請求項1または2記載の複数周波数帯用アンテナにおいて、前記第1のアンテナエレメントを接地導体に対して垂直な部分とそれに連なる平行な部分からなる逆L字状に形成し、前記第2のアンテナエレメントを前記接地導体に対し垂直な部分とそれに連なる平行な部分とさらに連なる垂直な部分とからなるコ字状に形成し、前記第1のアンテナエレメントの逆L字状で前記第2のアンテナエレメントのコ字状の2方向を覆うように、前記第1と第2のアンテナエレメントを配設して構成したことを特徴とする複数周波数帯用アンテナ。
【請求項5】
請求項1ないし4記載のいずれかの複数周波数帯用アンテナにおいて、アンテナエレメントの前記基端と前記給電点の間に、整合回路を介装して構成したことを特徴とする複数周波数帯用アンテナ。
【請求項6】
請求項1ないし5記載のいずれかの複数周波数帯用アンテナにおいて、前記第1のアンテナエレメントで、携帯電話用のPDC800MHz帯またはGSM帯またはAMPS帯のいずれかの周波数帯の信号を送受信し、前記第2のアンテナエレメントで、PDC1.5GHz帯またはDCS帯またはPCS帯のいずれかの周波数帯の信号を送受信するように構成したことを特徴とする複数周波数帯用アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−288649(P2007−288649A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115489(P2006−115489)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)
【Fターム(参考)】