負荷駆動装置
【課題】過電流による部品の熱損傷などを回避しつつ、ノイズなどの影響により一時的な過電流が発生したときに正常動作へ迅速に復帰することのできる負荷駆動装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る負荷駆動装置は、負荷に電流を断続的に供給する。また、負荷温度が所定閾値未満であるときは、所定閾値以上であるときよりも供給停止期間を短くする。
【解決手段】本発明に係る負荷駆動装置は、負荷に電流を断続的に供給する。また、負荷温度が所定閾値未満であるときは、所定閾値以上であるときよりも供給停止期間を短くする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷に供給する電流を制御する負荷駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるセンサやモータ等の負荷に電力を供給する負荷駆動装置は、バッテリーと負荷との間に設けられるトランジスタ等の電子スイッチを備えている。バッテリー、電子スイッチ、負荷は、それぞれ電線を含む導体を介して接続されている。負荷駆動装置はさらに、電子スイッチをオン/オフする制御回路を備えている。制御回路が出力する駆動信号と停止信号により、電子スイッチがオン/オフ動作し、負荷の駆動/停止が切り替えられる。
【0003】
上記のような負荷駆動装置では、負荷に過電流が流れた際に、負荷、電線、電子スイッチなどに対して、部品の劣化、熱損傷が発生する恐れがある。そこで、負荷に過電流が流れた際に、温度上昇による部品の劣化、熱損傷を防ぐために、回路を遮断し、温度上昇を回避する方法が知られている。
【0004】
上記のような負荷駆動装置は、一時的なノイズの影響により過電流が発生した場合も、同様に回路を遮断する。しかし、一時的なノイズの影響は時間経過にともなって自然に消滅し、これにともなって過電流も減衰するので、本来であれば必ずしも回路を遮断する必要はない。にもかかわらず、上記のような負荷駆動装置では、過電流が一時的なものであるか否かによらず回路を遮断してしまい、正常状態に復帰することができない。
【0005】
下記特許文献1に記載されている技術では、上記のような課題を解決するため、負荷の温度を推定することによって過電流を検出し、推定温度が所定温度を超えると一時的に負荷の駆動を停止し、所定時間経過後に再度負荷を駆動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−268289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載されている技術では、過電流を検出した後に負荷駆動を停止する期間を短く設定すると、負荷温度を十分に下げることができず、結果として熱損傷などを生じさせてしまう可能性がある。また、負荷駆動を停止する期間を長く設定すると、過電流が一時的なものであった場合に、正常動作へ復帰するのが遅れてしまう。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、過電流による部品の熱損傷などを回避しつつ、ノイズなどの影響により一時的な過電流が発生したときに正常動作へ迅速に復帰することのできる負荷駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る負荷駆動装置は、負荷に電流を断続的に供給する。また、負荷温度が所定閾値未満であるときは、所定閾値以上であるときよりも供給停止期間を短くする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る負荷駆動装置によれば、ノイズなどの影響により一時的に過電流が流れた場合は、負荷温度があまり上昇していないと考えられるので、供給停止期間を短くする。これにより、一時的な過電流による駆動停止状態から迅速に復帰することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態1に係る負荷駆動装置100の回路構成図である。
【図2】負荷2に過電流が流れたときに部品を損傷から保護するための従来の動作例を示すタイミングチャートである。
【図3】負荷2に過電流が流れたときに部品を損傷から保護するための別動作例を示すタイミングチャートである。
【図4】図3と同様の手法を用いた場合において、負荷2の駆動を停止する期間を短く設定したときの動作例を示すタイミングチャートである。
【図5】図3と同様の手法を用いた場合において、負荷2の駆動を停止する期間を長く設定したときの動作例を示すタイミングチャートである。
【図6】実施形態1に係る負荷駆動装置100の動作を示すタイミングチャートである。
【図7】実施形態2に係る負荷駆動装置100の回路構成図である。
【図8】実施形態2に係る負荷駆動装置100の動作フローである。
【図9】実施形態3に係る負荷駆動装置100の動作フローである。
【図10】実施形態4に係る負荷駆動装置100の動作フローである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係る負荷駆動装置100の回路構成図である。負荷駆動装置100は、例えば車両に搭載されるセンサやモータなどの負荷2に、車両に搭載されたバッテリーから電力を供給して駆動する装置である。
【0013】
負荷駆動装置100は、バッテリー1、電子スイッチ4、過電流検出部5、入力制御部6を備える。バッテリー1、負荷2、電子スイッチ4は、電線3で接続されている。バッテリー1は、負荷駆動装置100を搭載している車両のバッテリーである。電子スイッチ4は、負荷2への電力供給、停止を切り替える。
【0014】
過電流検出部5は、負荷2に流れる電流Amを検出し、負荷2に過電流が流れていることを検出すると、過電流検出信号Sdを入力制御部6に出力する。入力制御部6は、過電流検出信号Sdに基づき電子スイッチ4に駆動信号Siを出力し、電子スイッチ4をオン/オフ制御する。
【0015】
図2は、負荷2に過電流が流れたときに部品を損傷から保護するための従来の動作例を示すタイミングチャートである。ここでは、負荷2に過電流が流れると負荷2の駆動を停止する動作例を示した。上から順に、負荷駆動装置100の状態St、駆動信号Si、電流値Am、過電流検出信号Sdを示す。状態Stは、負荷駆動装置100が正常動作しているか、それとも内部的な故障などによって負荷2に過電流が流れ得る状態になっているかを示す。
【0016】
過電流が発生し得る状態になると、負荷2に流れる電流が増大し、負荷駆動装置100の部品温度が次第に上昇していく。電流値Amが検出閾値を超えると、過電流検出部5は過電流検出信号Sdを入力制御部6に出力する。入力制御部6は、過電流検出信号Sdを受け取ると電子スイッチ4をオフし、負荷2に流れる電流を遮断する。負荷2に電流が流れなくなると、負荷駆動装置100の温度は次第に降下する。
【0017】
図2に示すような動作では、一時的な過電流が発生した場合でも負荷2に流れる電流が遮断されるので、時刻tで負荷駆動装置100の状態Stが正常状態に復帰した後も、負荷2を駆動することができず、負荷駆動装置100を改めて初期化するなどの処理を実施する必要がある。
【0018】
図3は、負荷2に過電流が流れたときに部品を損傷から保護するための別動作例を示すタイミングチャートである。ここでは特許文献1に記載されている動作例を示した。タイミングチャートの記載形式は図2と同様である。
【0019】
(図3:時刻t0から時刻tの期間)
時刻t0〜時刻tの期間では、負荷駆動装置100の状態Stは正常状態である。この場合、入力制御部6が駆動信号Siをオンにすると、電子スイッチ4がオンとなり、負荷2に電流が流れ、負荷2を駆動することができる。
【0020】
(図3:時刻t)
負荷駆動装置100が、過電流の発生し得る状態になった以降の期間では、過電流が発生して負荷2に通常よりも大きな電流が流れる。過電流検出部5が過電流の発生を検出すると、過電流検出信号Sdがハイになる。入力制御部6は、駆動信号Siをローにし、所定時間経過後に、再び駆動信号Siをハイに立ち上げ、負荷2の駆動を再開する。
【0021】
(図3:時刻t以降の期間)
負荷駆動装置100が、過電流の発生し得る状態になったままの状態で負荷2の駆動を再開すると、再度過電流が生じる。過電流検出部5と入力制御部6は、同様の動作によって電子スイッチ4をオフにし、負荷2に流れる電流を遮断する。以後、同様の動作を繰り返し実施する。
【0022】
図3に示す動作では、一時的に過電流が発生した場合でも、所定時間経過後に負荷2の駆動を再開するので、図2のように負荷2の駆動が停止したままの状態になることを回避できる。また、過電流が発生し得る状態であれば改めて負荷2の駆動を所定時間停止するので、熱損傷などを回避することができる。
【0023】
図4は、図3と同様の手法を用いた場合において、負荷2の駆動を停止する期間を短く設定したときの動作例を示すタイミングチャートである。この場合、ノイズなどによって一時的に過電流が発生して負荷2の駆動を停止させた場合でも、速やかに負荷2の駆動を再開することができる利点がある。しかし、発熱量が放熱量を上回ると、電線3、電子スイッチ4などの電子部品の温度が徐々に上昇してしまう。これらの温度が定格温度を超えると、発煙や熱損傷が発生する可能性がある。
【0024】
図5は、図3と同様の手法を用いた場合において、負荷2の駆動を停止する期間を長く設定したときの動作例を示すタイミングチャートである。この場合、部品が熱損傷するリスクを低減することができる反面、負荷駆動装置100が正常状態に復帰した後に負荷2の駆動を再開するまでの時間は、図5中の時刻t1〜時刻t2の間の時間となり、負荷2を駆動再開するのが遅くなってしまう。
【0025】
図6は、本実施形態1に係る負荷駆動装置100の動作を示すタイミングチャートである。本実施形態1において、入力制御部6は、負荷駆動装置100の温度を計測または推定し、その温度が高いか低いかによって以下のように動作する。
【0026】
(図6:温度が低い場合)
入力制御部6は、負荷駆動装置100の温度が低い場合には、過電流が発生した後に負荷駆動を停止する時間を短くし、ノイズなどの影響によって一時的に過電流が発生した場合であっても、負荷2の駆動を迅速に再開できるようにする。図6における4回目の過電流検出信号Sdまでの動作が、これに相当する。停止期間が短いため駆動再開までの時間は短くて済むが、放熱量が十分でなく、装置温度が次第に上昇していることが分かる。
【0027】
(図6:温度が高い場合)
入力制御部6は、負荷駆動装置100の温度が高い場合には、過電流が発生した後に負荷駆動を停止する時間を長くし、電線3その他の回路部品が温度上昇によって熱損傷することを回避する。図6における4回目の過電流検出信号Sdより後の動作が、これに相当する。停止期間を長くしたことにより、放熱量が発熱量を上回り、装置温度が次第に降下していることが分かる。
【0028】
(図6:補足その1)
温度が高い場合と低い場合の動作切り分けは、例えば切り分けのための温度閾値を入力制御部6にあらかじめ保持させておき、負荷駆動装置100の温度がその温度閾値未満であれば温度が低い場合の動作、温度閾値以上であれば温度が高い場合の動作を実施すればよい。
【0029】
(図6:補足その2)
負荷駆動装置100の温度は、適当な温度センサを負荷駆動装置100内または近傍に配置し、入力制御部6がその計測値を取得することによって得ればよい。または、負荷2を駆動する時間と温度上昇量との対応関係をあらかじめ測定して対応関係データとして入力制御部6に保持させておき、その対応関係データに基づき負荷駆動装置100の温度を推定するようにしてもよい。その他、負荷駆動装置100の抵抗成分からの発熱量を、抵抗値、電流値などのパラメータに基づき算出し、これに基づき負荷駆動装置100の温度を推定してもよい。その他任意の温度推定手法を用いることもできる。
【0030】
(図6:補足その3)
負荷駆動装置100の筐体サイズなどが比較的大きい場合、筐体内の部位によって温度が大きく異なる場合がある。この場合は、例えば負荷2またはその近傍など、基準となる適当な回路部品の温度をもって、負荷駆動装置100の温度としてもよい。
【0031】
<実施の形態1:まとめ>
以上のように、本実施形態1に係る負荷駆動装置100によれば、入力制御部6は、過電流検出部5が過電流を検出すると、負荷2に電流を供給する期間と供給しない期間を繰り返す。また、負荷駆動装置100の温度が温度閾値未満であるときは、温度閾値以上であるときよりも、負荷2を駆動停止する期間を短くする。これにより、温度が低いときは過電流が一時的なものとして取り扱って復帰時間を短くすることを優先しつつ、温度が高いときは過電流による熱損傷を回避することを優先し、これら双方の目的をともに達成することができる。
【0032】
<実施の形態2>
実施形態1では、過電流検出部5が所定閾値以上の電流を検出したときは、負荷2に過電流が流れているものとして取り扱うこととした。一方、電流値が過電流よりも小さい場合でも、ある程度の大きい電流が長時間負荷2に流れ続けると、過電流が流れた場合と同様に回路部品が熱損傷する可能性がある。
【0033】
そこで本発明の実施形態2では、短時間定格電流以上の電流が負荷2に所定時間以上流れ続けたときは、過電流が流れているものと同様に取り扱うこととする。また本実施形態2では、過電流を検出した後に負荷2を駆動する時間と駆動停止する時間を適切に設定する手法についても併せて説明する。
【0034】
図7は、本実施形態2に係る負荷駆動装置100の回路構成図である。本実施形態2に係る負荷駆動装置100は、実施形態1で説明した構成に加えて、新たに駆動停止時間算出部7を備える。その他の構成は実施形態1と概ね同様であるため、以下では差異点および具体動作を中心に説明する。
【0035】
電線3などの電子部品には、瞬間的に流すことのできる最大電流値、すなわち瞬時定格電流があらかじめ定められている。瞬時定格電流を超える電流が流れると、その電子部品の温度が急激に上昇し、熱損傷してしまう可能性が高くなる。そこで本実施形態2において、過電流検出部5は、瞬時定格電流を超える電流は過電流であると判定する。なお、各電子部品はそれぞれ瞬時定格電流を有しているので、例えばこれらのなかで最も低い瞬時定格電流を超えたときに、過電流と判定するなどすれば安全である。
【0036】
一方、負荷2に流れる電流値が瞬時定格電流に到達しなくとも、電子部品を損傷させ得る電流値、すなわち短時間定格電流が所定時間以上流れ続けると、やはりその電子部品の温度が上昇して熱損傷する可能性がある。そこで本実施形態2において、過電流検出部5は、短時間定格電流を所定時間以上検出し続けた場合、過電流であると判定する。瞬時定格電流と同様に、各電子部品の短時間定格電流のなかで最も低い短時間定格電流が所定時間流れ続けたときに、過電流と判定するなどすれば安全である。
【0037】
瞬時定格電流と短時間定格電流いずれについても、これらそのものの値を用いてもよいし、これらの値に適当な係数を乗算するなどして調整した値を用いてもよい。以下では説明の簡易のため、これらの値そのものを用いる例を説明する。
【0038】
駆動停止時間算出部7は、負荷駆動装置100を熱損傷などから保護しつつ、負荷2を迅速に再駆動するための最適な駆動時間と停止時間を算出する。すなわち、入力制御部6が電子スイッチ4のオン/オフを繰り返し実施して負荷2を駆動/停止する際のオン時間とオフ時間を最適化する。例えば、以下のような手法が考えられる。
【0039】
(駆動時間と停止時間を最適化する手法その1)
駆動停止時間算出部7は、ある期間中に負荷駆動装置100の温度が上昇した幅を推定または計測し、その温度上昇分を下げることができるだけの停止時間を算出する。入力制御部6は、算出された停止時間にしたがって負荷2の駆動を停止する。推定手法や算出手法として、実施形態1で説明した対応関係データを用いる手法や、回路パラメータを用いて算出する手法などを用いることができる。
【0040】
(駆動時間と停止時間を最適化する手法その2)
駆動停止時間算出部7は、負荷駆動装置100の温度を推定または計測し、定格温度前後の所定範囲内で負荷駆動装置100を動作させることができる、極力短い最短停止時間を算出する。入力制御部6は、算出された停止時間にしたがって負荷2の駆動を停止する。推定手法や算出手法については上記と同様である。
【0041】
図8は、本実施形態2に係る負荷駆動装置100の動作フローである。負荷駆動装置100は、本動作フローを繰り返し実行し、負荷2を駆動する。以下、図8の各ステップについて説明する。
【0042】
(図8:ステップS101〜S102)
過電流検出部5は、負荷2に流れる電流をモニタする(S101)。過電流検出部5は、負荷2に短時間定格電流Ath2以上の電流が流れているか否かを判定する(S102)。短時間定格電流Ath2以上の電流が流れている場合はステップS103へ進み、それ以外であれば本動作フローを終了する。
【0043】
(図8:ステップS103)
過電流検出部5は、負荷2に短時間定格電流が流れている時間を計時するためのタイマ起動し、経過時間を計時する。ここでは、タイマカウントが次第に減少していき、0になった時点で、起動時に指定した時間が経過したものと判定することにする。
【0044】
(図8:ステップS104)
過電流検出部5は、電流値Amが瞬時定格電流Ath1以上となったか、またはステップS103でタイマを起動してから所定時間Tra(短時間定格時間)が経過した場合は、過電流が発生していると判定する。過電流が発生していると判定する場合はステップS107へスキップし、それ以外の場合はステップS105へ進む。
【0045】
(図8:ステップS105〜S106)
駆動停止時間算出部7は、改めて電流値Amをモニタする(S105)。駆動停止時間算出部7は、電流値Amと短時間定格電流Ath2を比較する(S106)。電流値Amが短時間定格電流Ath2以上である場合は、電流値Amが瞬時定格電流Ath1と短時間定格電流Ath2の間にあるということなので、短時間定格電流が流れ続けている時間をカウント継続するため、ステップS104に戻る。電流値Amが短時間定格電流Ath2未満である場合は、電流値Amが十分小さくなっているので、本動作フローを終了する。
【0046】
(図8:ステップS107)
駆動停止時間算出部7は、短時間定格電流Ath2以上の電流が負荷2に流れ始めた時点から、S104で過電流が検出されるまでの間における、負荷駆動装置100の上昇温度Nisを算出または推定する。算出手法または推定手法については、実施形態1で説明した対応関係データを用いる手法や、回路パラメータを用いて算出する手法などを用いることができる。以下のステップでも同様である。
【0047】
(図8:ステップS108)
駆動停止時間算出部7は、ステップS107で求めた上昇温度Nisだけ負荷駆動装置100の温度を下降させることのできる停止時間Tprを、推定または算出する。すなわち、負荷2に電流を流さない期間において、負荷駆動装置100の温度がNisだけ降下するのに十分な時間を、本ステップで求める。上昇温度Nisが大きいほど、温度を下げるための放熱量が大きくなるので、停止時間Tprは長くなる。
【0048】
(図8:ステップS108:補足その1)
本ステップで求める停止時間Tprは、図6において駆動信号Siをオフにしている時間に相当する。本実施形態2では、瞬時定格電流以上の電流のみならず、短時間定格電流以上の電流についても停止時間を長めに設定することにしたため、本ステップで双方について適切な停止時間を求めることとした。
【0049】
(図8:ステップS108:補足その2)
実施形態1において、瞬時定格電流以上の電流については、負荷駆動装置100の温度が温度閾値を上回った場合に、停止時間を長くすることを説明した。短時間定格電流以上の電流についても同様に、負荷駆動装置100の温度が温度閾値を上回った場合に、停止時間を長くすることができる。
【0050】
(図8:ステップS108:補足その3)
ここでは、上述の「駆動時間と停止時間を最適化する手法その1」で説明した手法を採用した例を説明したが、本ステップにおいて、「駆動時間と停止時間を最適化する手法その2」で説明した手法を採用することもできる。
【0051】
(図8:ステップS109)
入力制御部6は、ステップS108で駆動停止時間算出部7が求めた停止時間Tprにしたがって、電子スイッチ4をオフし、負荷2へ流れる電流を停止する。また、停止時間Tprを計時するタイマを起動して経過時間を計時する。
【0052】
(図8:ステップS110〜S111)
入力制御部6は、停止時間Tprが経過するまで待機し(S110)、電子スイッチ4を再度オンにして負荷2を駆動する(S111)。
【0053】
<実施の形態2:まとめ>
以上のように、本実施形態2に係る負荷駆動装置100は、短時間定格電流以上の電流を検出してから所定時間が経過するまでの上昇温度を算出または推定し、その温度上昇分を下げることができる停止時間Tprを求める。これにより、瞬時定格電流による熱損傷を保護するのみならず、短時間定格電流による熱損傷も保護することができる。
【0054】
<実施の形態3>
実施形態2では、短時間定格電流以上の電流を検出してからの温度上昇分を都度算出または推定し、その温度上昇分を降下させることのできる停止時間Tprを求めることを説明した。本発明の実施形態3では、温度上昇分を都度算出または推定することに代えて、現時点における負荷駆動装置100の温度を簡易的に算出または推定し、必要な温度降下幅を求める手法を説明する。負荷駆動装置100の構成は実施形態2と同様である。
【0055】
(負荷駆動装置100の温度を求める手法その1)
負荷駆動装置100の上昇温度は、負荷2の電流値Am、負荷2に電流が流れている時間、各電子部品の導体抵抗値などの回路パラメータ(回路定格値)などを用いて算出することができる。上記手法で求めた上昇温度を降下させることができる停止時間を、以下で説明する手法により求めればよい。
【0056】
(負荷駆動装置100の温度を求める手法その2)
負荷2に流れる電流Amを、所定時間モニタする。温度上昇幅は、最大電流値に最も影響されると考えられるので、その時間内における最大電流値と負荷駆動装置100の温度の間には、相関関係があると考えられる。そこで、ある時間幅内に流れる最大電流値と負荷駆動装置100の温度との対応関係をあらかじめ測定してデータとして保持しておき、実際に測定した最大電流値に対応させて、負荷駆動装置100の上昇温度を簡易算出することができる。
【0057】
(負荷駆動装置100の下降温度を求める手法)
負荷駆動装置100内の雰囲気温度を一定とすると、電線3の放熱特性および電流Amが停止している時間と、負荷駆動装置100の温度下降幅とは、概ね時間比例の関係にある。そこで、単位時間あたりの下降温度をあらかじめ測定して定数として定義しておき、上記比例関係式を用いて、負荷駆動装置100の下降温度を算出することができる。同様に、下降させたい温度幅が定まれば、そのために必要な負荷停止時間を算出することができる。
【0058】
上述の手法により、負荷駆動装置100の上昇温度と下降温度をそれぞれ積算し、現在の温度を算出または推定することができる。求めた温度が温度閾値以上であるときは負荷2の停止時間を長くし、温度閾値未満であるとき停止時間を短くする。あるいは、過電流による温度上昇を防ぐため、実施形態2で説明したように、上昇温度分だけ温度が下降するように停止時間を決定してもよい。
【0059】
また、即時故障に至らない程度の大電流(例えば短時間定格電流)が流れている場合は、これが長時間にわたると負荷駆動装置100が熱損傷にいたる可能性がある。そこで、電流値Amが瞬時定格電流未満であっても、現在の負荷駆動装置100の推定温度が温度閾値以上であれば、電子スイッチ4をオフして負荷2の駆動を停止させてもよい。
【0060】
図9は、本実施形態3に係る負荷駆動装置100の動作フローである。負荷駆動装置100は、本動作フローを繰り返し実行し、負荷2を駆動する。以下、図9の各ステップについて説明する。
【0061】
(図9:ステップS201〜S202)
過電流検出部5は、負荷2に流れる電流をモニタする(S201)。入力制御部6は、所定のサンプリング時間における温度変化ΔNを、1サンプリング時間における上昇温度Nisと下降温度Ndsに基づき算出し、ΔNを積算することによって、現在の負荷駆動装置100の推定温度Nxを算出する。温度センサなどの計測値を取得できる場合は、これを用いてもよい。
【0062】
(図9:ステップS203)
入力制御部6は、ステップS202で求めた温度Nxを、所定の許容温度と比較する。推定温度Nxが所定の許容温度以上である場合はステップS204へ進み、それ以外であればステップS208へ進む。
【0063】
(図9:ステップS204)
駆動停止時間算出部7は、負荷駆動装置100の温度を温度閾値未満まで下降させることのできる停止時間Tplを、上記手法を用いて算出する。
【0064】
(図9:ステップS205)
入力制御部6は、ステップS204で駆動停止時間算出部7が求めた停止時間Tplにしたがって、電子スイッチ4をオフし、負荷2へ流れる電流を停止する。また、停止時間Tplを計時するタイマを起動して経過時間を計時する。
【0065】
(図9:ステップS206〜S207)
入力制御部6は、停止時間Tplが経過するまで待機し(S206)、電子スイッチ4を再度オンにして負荷2を駆動する(S207)。
【0066】
(図9:ステップS208〜216)
ステップS203において、推定温度Nxが所定の許容温度に到達していないと判断した場合は、推定温度Nxに基づき停止時間Tplを算出することに代えて、実施形態2と同様に瞬時定格電流または短時間定格電流を基準として停止時間Tppを算出する。ステップS208〜S216の処理は図8のステップ102〜S110と概ね同様であるが、既にステップS202で温度Nxを算出しているため、ステップS107に該当するステップは省略している。
【0067】
(図9:ステップS208〜216:補足)
これらのステップにおいて、停止時間Tppを算出する際には、実施形態1〜2と同様の手法を用いてもよいし、ステップS201〜S207と同様の回路定格値を用いた簡易手法を用いてもよい。
【0068】
<実施の形態3:まとめ>
以上のように、本実施形態3に係る負荷駆動装置100は、負荷駆動装置100の現時点の温度Nxを取得し、温度Nxを温度閾値未満まで下げることのできる停止時間Tplを算出して負荷2の駆動を停止させる。これにより、瞬時定格電流や短時間定格電流に基づいて停止時間Tppを算出する処理よりも簡易に停止時間Tplを求めることができるので、演算負荷や演算時間の観点で有利である。
【0069】
また、本実施形態3に係る負荷駆動装置100は、温度Nxの推定や下降温度を算出する際に、負荷駆動装置100の回路定格値を用いる。これにより、単純な演算手順でこれら温度を算出することができるので、演算負荷や演算時間の観点で有利である。
【0070】
<実施の形態4>
本発明の実施形態4では、負荷駆動装置100の発熱量が電流値Amや電流が流れている時間に依拠することを利用して、電子スイッチ4がオンになっている時間、またはオフになっている時間に基づき、負荷2の駆動を停止する時間を簡易的に算出する手法を説明する。負荷駆動装置100の構成は実施形態2と同様である。
【0071】
負荷駆動装置100の温度は、電子スイッチ4がオフされてからオンされるまでの時間が短く、電子スイッチ4がオンされてから過電流を検出するまでの経過時間が長いほど、より大きく上昇していると考えることができる。また、電子スイッチ4がオフされてからオンされるまでの時間が長く、かつ電子スイッチ4がオンされてから過電流を検出するまでの時間経過が短いほど、上昇幅は小さいと考えることができる。
【0072】
そこで、駆動停止時間算出部7は、電子スイッチ4がオフされてからオンされるまでの時間が短く、電子スイッチ4がオンされてから過電流を検出するまでの経過時間が長いほど、負荷2を停止する時間を長くする。また、電子スイッチ4がオフされてからオンされるまでの時間が長く、電子スイッチ4がオンされてからから過電流を検出するまでの経過時間が短いほど、負荷2を停止する時間を短くする。これにより、温度上昇による熱損傷を回避しつつ、ノイズによる一時的な過電流から迅速に復帰することができる。
【0073】
なお、実施形態3で説明したように、負荷駆動装置100の上昇温度は、電流値Am、導体抵抗値などの回路定格値をパラメータとして算出することができる。そこで、導体に流れる最大電流値や導体抵抗値から、負荷2を停止する時間を簡易的に算出してもよい。
【0074】
図10は、本実施形態4に係る負荷駆動装置100の動作フローである。負荷駆動装置100は、本動作フローを繰り返し実行し、負荷2を駆動する。以下、図10の各ステップについて説明する。
【0075】
(図10:ステップS301)
駆動停止時間算出部7は、電子スイッチ4がオフされたか否かを判定する。電子スイッチ4がオフされていればステップS302へ進み、オフされていなければステップS305へスキップする。
【0076】
(図10:ステップS302〜S303)
駆動停止時間算出部7は、電子スイッチ4がオフになっている時間を計時するためのタイマToffを起動する(S302)。駆動停止時間算出部7は、電子スイッチ4がオンになるまで待機する(S303)。
【0077】
(図10:ステップS304)
駆動停止時間算出部7は、電子スイッチ4がオンになっている時間を計時するためのタイマTonを起動する。
【0078】
(図10:ステップS305〜S314)
これらのステップの処理は、図8のステップ101〜S110と概ね同様である。ただし本実施形態4では、ステップS311において、電子スイッチ4をオン/オフしている時間に基づき簡易的に停止時間Tp0を算出するため、ステップS107に該当するステップは省略している。
【0079】
(図10:ステップS311:補足)
オン時間Tonおよびオフ時間Toffと、停止時間Tp0との対応関係を、あらかじめ対応関係データとして入力制御部6に保持させておき、これに基づき停止時間Tp0を算出することができる。あるいは、TonとToffの比率、負荷2の抵抗値などの回路定格値などに基づき、簡易的にTp0を算出することもできる。
【0080】
<実施の形態4:まとめ>
以上のように、本実施形態4に係る負荷駆動装置100は、電子スイッチ4がオンになっている時間およびオフになっている時間に基づき、負荷2の駆動を停止する時間Tp0を簡易算出する。これにより、瞬時定格電流や短時間定格電流に基づいて停止時間Tppを算出する処理よりも簡易に停止時間Tp0を求めることができるので、演算負荷や演算時間の観点で有利である。
【0081】
また、本実施形態4に係る負荷駆動装置100において、負荷2に流れる最大電流値および負荷駆動装置100の抵抗値に基づき、負荷2の駆動を停止する時間Tp0を簡易算出する。これにより、単純な演算手順でこれら温度を算出することができるので、演算負荷や演算時間の観点で有利である。
【0082】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0083】
また、上記各構成、機能、処理部などは、それらの全部または一部を、例えば集積回路で設計することによりハードウェアとして実現することもできるし、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを実行することによりソフトウェアとして実現することもできる。各機能を実現するプログラム、テーブルなどの情報は、メモリやハードディスクなどの記憶装置、ICカード、DVDなどの記憶媒体に格納することができる。
【符号の説明】
【0084】
1:バッテリー、2:負荷、3:電線、4:電子スイッチ、5:過電流検出部、6:入力制御部、7:駆動停止時間算出部、100:負荷駆動装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷に供給する電流を制御する負荷駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるセンサやモータ等の負荷に電力を供給する負荷駆動装置は、バッテリーと負荷との間に設けられるトランジスタ等の電子スイッチを備えている。バッテリー、電子スイッチ、負荷は、それぞれ電線を含む導体を介して接続されている。負荷駆動装置はさらに、電子スイッチをオン/オフする制御回路を備えている。制御回路が出力する駆動信号と停止信号により、電子スイッチがオン/オフ動作し、負荷の駆動/停止が切り替えられる。
【0003】
上記のような負荷駆動装置では、負荷に過電流が流れた際に、負荷、電線、電子スイッチなどに対して、部品の劣化、熱損傷が発生する恐れがある。そこで、負荷に過電流が流れた際に、温度上昇による部品の劣化、熱損傷を防ぐために、回路を遮断し、温度上昇を回避する方法が知られている。
【0004】
上記のような負荷駆動装置は、一時的なノイズの影響により過電流が発生した場合も、同様に回路を遮断する。しかし、一時的なノイズの影響は時間経過にともなって自然に消滅し、これにともなって過電流も減衰するので、本来であれば必ずしも回路を遮断する必要はない。にもかかわらず、上記のような負荷駆動装置では、過電流が一時的なものであるか否かによらず回路を遮断してしまい、正常状態に復帰することができない。
【0005】
下記特許文献1に記載されている技術では、上記のような課題を解決するため、負荷の温度を推定することによって過電流を検出し、推定温度が所定温度を超えると一時的に負荷の駆動を停止し、所定時間経過後に再度負荷を駆動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−268289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載されている技術では、過電流を検出した後に負荷駆動を停止する期間を短く設定すると、負荷温度を十分に下げることができず、結果として熱損傷などを生じさせてしまう可能性がある。また、負荷駆動を停止する期間を長く設定すると、過電流が一時的なものであった場合に、正常動作へ復帰するのが遅れてしまう。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、過電流による部品の熱損傷などを回避しつつ、ノイズなどの影響により一時的な過電流が発生したときに正常動作へ迅速に復帰することのできる負荷駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る負荷駆動装置は、負荷に電流を断続的に供給する。また、負荷温度が所定閾値未満であるときは、所定閾値以上であるときよりも供給停止期間を短くする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る負荷駆動装置によれば、ノイズなどの影響により一時的に過電流が流れた場合は、負荷温度があまり上昇していないと考えられるので、供給停止期間を短くする。これにより、一時的な過電流による駆動停止状態から迅速に復帰することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態1に係る負荷駆動装置100の回路構成図である。
【図2】負荷2に過電流が流れたときに部品を損傷から保護するための従来の動作例を示すタイミングチャートである。
【図3】負荷2に過電流が流れたときに部品を損傷から保護するための別動作例を示すタイミングチャートである。
【図4】図3と同様の手法を用いた場合において、負荷2の駆動を停止する期間を短く設定したときの動作例を示すタイミングチャートである。
【図5】図3と同様の手法を用いた場合において、負荷2の駆動を停止する期間を長く設定したときの動作例を示すタイミングチャートである。
【図6】実施形態1に係る負荷駆動装置100の動作を示すタイミングチャートである。
【図7】実施形態2に係る負荷駆動装置100の回路構成図である。
【図8】実施形態2に係る負荷駆動装置100の動作フローである。
【図9】実施形態3に係る負荷駆動装置100の動作フローである。
【図10】実施形態4に係る負荷駆動装置100の動作フローである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係る負荷駆動装置100の回路構成図である。負荷駆動装置100は、例えば車両に搭載されるセンサやモータなどの負荷2に、車両に搭載されたバッテリーから電力を供給して駆動する装置である。
【0013】
負荷駆動装置100は、バッテリー1、電子スイッチ4、過電流検出部5、入力制御部6を備える。バッテリー1、負荷2、電子スイッチ4は、電線3で接続されている。バッテリー1は、負荷駆動装置100を搭載している車両のバッテリーである。電子スイッチ4は、負荷2への電力供給、停止を切り替える。
【0014】
過電流検出部5は、負荷2に流れる電流Amを検出し、負荷2に過電流が流れていることを検出すると、過電流検出信号Sdを入力制御部6に出力する。入力制御部6は、過電流検出信号Sdに基づき電子スイッチ4に駆動信号Siを出力し、電子スイッチ4をオン/オフ制御する。
【0015】
図2は、負荷2に過電流が流れたときに部品を損傷から保護するための従来の動作例を示すタイミングチャートである。ここでは、負荷2に過電流が流れると負荷2の駆動を停止する動作例を示した。上から順に、負荷駆動装置100の状態St、駆動信号Si、電流値Am、過電流検出信号Sdを示す。状態Stは、負荷駆動装置100が正常動作しているか、それとも内部的な故障などによって負荷2に過電流が流れ得る状態になっているかを示す。
【0016】
過電流が発生し得る状態になると、負荷2に流れる電流が増大し、負荷駆動装置100の部品温度が次第に上昇していく。電流値Amが検出閾値を超えると、過電流検出部5は過電流検出信号Sdを入力制御部6に出力する。入力制御部6は、過電流検出信号Sdを受け取ると電子スイッチ4をオフし、負荷2に流れる電流を遮断する。負荷2に電流が流れなくなると、負荷駆動装置100の温度は次第に降下する。
【0017】
図2に示すような動作では、一時的な過電流が発生した場合でも負荷2に流れる電流が遮断されるので、時刻tで負荷駆動装置100の状態Stが正常状態に復帰した後も、負荷2を駆動することができず、負荷駆動装置100を改めて初期化するなどの処理を実施する必要がある。
【0018】
図3は、負荷2に過電流が流れたときに部品を損傷から保護するための別動作例を示すタイミングチャートである。ここでは特許文献1に記載されている動作例を示した。タイミングチャートの記載形式は図2と同様である。
【0019】
(図3:時刻t0から時刻tの期間)
時刻t0〜時刻tの期間では、負荷駆動装置100の状態Stは正常状態である。この場合、入力制御部6が駆動信号Siをオンにすると、電子スイッチ4がオンとなり、負荷2に電流が流れ、負荷2を駆動することができる。
【0020】
(図3:時刻t)
負荷駆動装置100が、過電流の発生し得る状態になった以降の期間では、過電流が発生して負荷2に通常よりも大きな電流が流れる。過電流検出部5が過電流の発生を検出すると、過電流検出信号Sdがハイになる。入力制御部6は、駆動信号Siをローにし、所定時間経過後に、再び駆動信号Siをハイに立ち上げ、負荷2の駆動を再開する。
【0021】
(図3:時刻t以降の期間)
負荷駆動装置100が、過電流の発生し得る状態になったままの状態で負荷2の駆動を再開すると、再度過電流が生じる。過電流検出部5と入力制御部6は、同様の動作によって電子スイッチ4をオフにし、負荷2に流れる電流を遮断する。以後、同様の動作を繰り返し実施する。
【0022】
図3に示す動作では、一時的に過電流が発生した場合でも、所定時間経過後に負荷2の駆動を再開するので、図2のように負荷2の駆動が停止したままの状態になることを回避できる。また、過電流が発生し得る状態であれば改めて負荷2の駆動を所定時間停止するので、熱損傷などを回避することができる。
【0023】
図4は、図3と同様の手法を用いた場合において、負荷2の駆動を停止する期間を短く設定したときの動作例を示すタイミングチャートである。この場合、ノイズなどによって一時的に過電流が発生して負荷2の駆動を停止させた場合でも、速やかに負荷2の駆動を再開することができる利点がある。しかし、発熱量が放熱量を上回ると、電線3、電子スイッチ4などの電子部品の温度が徐々に上昇してしまう。これらの温度が定格温度を超えると、発煙や熱損傷が発生する可能性がある。
【0024】
図5は、図3と同様の手法を用いた場合において、負荷2の駆動を停止する期間を長く設定したときの動作例を示すタイミングチャートである。この場合、部品が熱損傷するリスクを低減することができる反面、負荷駆動装置100が正常状態に復帰した後に負荷2の駆動を再開するまでの時間は、図5中の時刻t1〜時刻t2の間の時間となり、負荷2を駆動再開するのが遅くなってしまう。
【0025】
図6は、本実施形態1に係る負荷駆動装置100の動作を示すタイミングチャートである。本実施形態1において、入力制御部6は、負荷駆動装置100の温度を計測または推定し、その温度が高いか低いかによって以下のように動作する。
【0026】
(図6:温度が低い場合)
入力制御部6は、負荷駆動装置100の温度が低い場合には、過電流が発生した後に負荷駆動を停止する時間を短くし、ノイズなどの影響によって一時的に過電流が発生した場合であっても、負荷2の駆動を迅速に再開できるようにする。図6における4回目の過電流検出信号Sdまでの動作が、これに相当する。停止期間が短いため駆動再開までの時間は短くて済むが、放熱量が十分でなく、装置温度が次第に上昇していることが分かる。
【0027】
(図6:温度が高い場合)
入力制御部6は、負荷駆動装置100の温度が高い場合には、過電流が発生した後に負荷駆動を停止する時間を長くし、電線3その他の回路部品が温度上昇によって熱損傷することを回避する。図6における4回目の過電流検出信号Sdより後の動作が、これに相当する。停止期間を長くしたことにより、放熱量が発熱量を上回り、装置温度が次第に降下していることが分かる。
【0028】
(図6:補足その1)
温度が高い場合と低い場合の動作切り分けは、例えば切り分けのための温度閾値を入力制御部6にあらかじめ保持させておき、負荷駆動装置100の温度がその温度閾値未満であれば温度が低い場合の動作、温度閾値以上であれば温度が高い場合の動作を実施すればよい。
【0029】
(図6:補足その2)
負荷駆動装置100の温度は、適当な温度センサを負荷駆動装置100内または近傍に配置し、入力制御部6がその計測値を取得することによって得ればよい。または、負荷2を駆動する時間と温度上昇量との対応関係をあらかじめ測定して対応関係データとして入力制御部6に保持させておき、その対応関係データに基づき負荷駆動装置100の温度を推定するようにしてもよい。その他、負荷駆動装置100の抵抗成分からの発熱量を、抵抗値、電流値などのパラメータに基づき算出し、これに基づき負荷駆動装置100の温度を推定してもよい。その他任意の温度推定手法を用いることもできる。
【0030】
(図6:補足その3)
負荷駆動装置100の筐体サイズなどが比較的大きい場合、筐体内の部位によって温度が大きく異なる場合がある。この場合は、例えば負荷2またはその近傍など、基準となる適当な回路部品の温度をもって、負荷駆動装置100の温度としてもよい。
【0031】
<実施の形態1:まとめ>
以上のように、本実施形態1に係る負荷駆動装置100によれば、入力制御部6は、過電流検出部5が過電流を検出すると、負荷2に電流を供給する期間と供給しない期間を繰り返す。また、負荷駆動装置100の温度が温度閾値未満であるときは、温度閾値以上であるときよりも、負荷2を駆動停止する期間を短くする。これにより、温度が低いときは過電流が一時的なものとして取り扱って復帰時間を短くすることを優先しつつ、温度が高いときは過電流による熱損傷を回避することを優先し、これら双方の目的をともに達成することができる。
【0032】
<実施の形態2>
実施形態1では、過電流検出部5が所定閾値以上の電流を検出したときは、負荷2に過電流が流れているものとして取り扱うこととした。一方、電流値が過電流よりも小さい場合でも、ある程度の大きい電流が長時間負荷2に流れ続けると、過電流が流れた場合と同様に回路部品が熱損傷する可能性がある。
【0033】
そこで本発明の実施形態2では、短時間定格電流以上の電流が負荷2に所定時間以上流れ続けたときは、過電流が流れているものと同様に取り扱うこととする。また本実施形態2では、過電流を検出した後に負荷2を駆動する時間と駆動停止する時間を適切に設定する手法についても併せて説明する。
【0034】
図7は、本実施形態2に係る負荷駆動装置100の回路構成図である。本実施形態2に係る負荷駆動装置100は、実施形態1で説明した構成に加えて、新たに駆動停止時間算出部7を備える。その他の構成は実施形態1と概ね同様であるため、以下では差異点および具体動作を中心に説明する。
【0035】
電線3などの電子部品には、瞬間的に流すことのできる最大電流値、すなわち瞬時定格電流があらかじめ定められている。瞬時定格電流を超える電流が流れると、その電子部品の温度が急激に上昇し、熱損傷してしまう可能性が高くなる。そこで本実施形態2において、過電流検出部5は、瞬時定格電流を超える電流は過電流であると判定する。なお、各電子部品はそれぞれ瞬時定格電流を有しているので、例えばこれらのなかで最も低い瞬時定格電流を超えたときに、過電流と判定するなどすれば安全である。
【0036】
一方、負荷2に流れる電流値が瞬時定格電流に到達しなくとも、電子部品を損傷させ得る電流値、すなわち短時間定格電流が所定時間以上流れ続けると、やはりその電子部品の温度が上昇して熱損傷する可能性がある。そこで本実施形態2において、過電流検出部5は、短時間定格電流を所定時間以上検出し続けた場合、過電流であると判定する。瞬時定格電流と同様に、各電子部品の短時間定格電流のなかで最も低い短時間定格電流が所定時間流れ続けたときに、過電流と判定するなどすれば安全である。
【0037】
瞬時定格電流と短時間定格電流いずれについても、これらそのものの値を用いてもよいし、これらの値に適当な係数を乗算するなどして調整した値を用いてもよい。以下では説明の簡易のため、これらの値そのものを用いる例を説明する。
【0038】
駆動停止時間算出部7は、負荷駆動装置100を熱損傷などから保護しつつ、負荷2を迅速に再駆動するための最適な駆動時間と停止時間を算出する。すなわち、入力制御部6が電子スイッチ4のオン/オフを繰り返し実施して負荷2を駆動/停止する際のオン時間とオフ時間を最適化する。例えば、以下のような手法が考えられる。
【0039】
(駆動時間と停止時間を最適化する手法その1)
駆動停止時間算出部7は、ある期間中に負荷駆動装置100の温度が上昇した幅を推定または計測し、その温度上昇分を下げることができるだけの停止時間を算出する。入力制御部6は、算出された停止時間にしたがって負荷2の駆動を停止する。推定手法や算出手法として、実施形態1で説明した対応関係データを用いる手法や、回路パラメータを用いて算出する手法などを用いることができる。
【0040】
(駆動時間と停止時間を最適化する手法その2)
駆動停止時間算出部7は、負荷駆動装置100の温度を推定または計測し、定格温度前後の所定範囲内で負荷駆動装置100を動作させることができる、極力短い最短停止時間を算出する。入力制御部6は、算出された停止時間にしたがって負荷2の駆動を停止する。推定手法や算出手法については上記と同様である。
【0041】
図8は、本実施形態2に係る負荷駆動装置100の動作フローである。負荷駆動装置100は、本動作フローを繰り返し実行し、負荷2を駆動する。以下、図8の各ステップについて説明する。
【0042】
(図8:ステップS101〜S102)
過電流検出部5は、負荷2に流れる電流をモニタする(S101)。過電流検出部5は、負荷2に短時間定格電流Ath2以上の電流が流れているか否かを判定する(S102)。短時間定格電流Ath2以上の電流が流れている場合はステップS103へ進み、それ以外であれば本動作フローを終了する。
【0043】
(図8:ステップS103)
過電流検出部5は、負荷2に短時間定格電流が流れている時間を計時するためのタイマ起動し、経過時間を計時する。ここでは、タイマカウントが次第に減少していき、0になった時点で、起動時に指定した時間が経過したものと判定することにする。
【0044】
(図8:ステップS104)
過電流検出部5は、電流値Amが瞬時定格電流Ath1以上となったか、またはステップS103でタイマを起動してから所定時間Tra(短時間定格時間)が経過した場合は、過電流が発生していると判定する。過電流が発生していると判定する場合はステップS107へスキップし、それ以外の場合はステップS105へ進む。
【0045】
(図8:ステップS105〜S106)
駆動停止時間算出部7は、改めて電流値Amをモニタする(S105)。駆動停止時間算出部7は、電流値Amと短時間定格電流Ath2を比較する(S106)。電流値Amが短時間定格電流Ath2以上である場合は、電流値Amが瞬時定格電流Ath1と短時間定格電流Ath2の間にあるということなので、短時間定格電流が流れ続けている時間をカウント継続するため、ステップS104に戻る。電流値Amが短時間定格電流Ath2未満である場合は、電流値Amが十分小さくなっているので、本動作フローを終了する。
【0046】
(図8:ステップS107)
駆動停止時間算出部7は、短時間定格電流Ath2以上の電流が負荷2に流れ始めた時点から、S104で過電流が検出されるまでの間における、負荷駆動装置100の上昇温度Nisを算出または推定する。算出手法または推定手法については、実施形態1で説明した対応関係データを用いる手法や、回路パラメータを用いて算出する手法などを用いることができる。以下のステップでも同様である。
【0047】
(図8:ステップS108)
駆動停止時間算出部7は、ステップS107で求めた上昇温度Nisだけ負荷駆動装置100の温度を下降させることのできる停止時間Tprを、推定または算出する。すなわち、負荷2に電流を流さない期間において、負荷駆動装置100の温度がNisだけ降下するのに十分な時間を、本ステップで求める。上昇温度Nisが大きいほど、温度を下げるための放熱量が大きくなるので、停止時間Tprは長くなる。
【0048】
(図8:ステップS108:補足その1)
本ステップで求める停止時間Tprは、図6において駆動信号Siをオフにしている時間に相当する。本実施形態2では、瞬時定格電流以上の電流のみならず、短時間定格電流以上の電流についても停止時間を長めに設定することにしたため、本ステップで双方について適切な停止時間を求めることとした。
【0049】
(図8:ステップS108:補足その2)
実施形態1において、瞬時定格電流以上の電流については、負荷駆動装置100の温度が温度閾値を上回った場合に、停止時間を長くすることを説明した。短時間定格電流以上の電流についても同様に、負荷駆動装置100の温度が温度閾値を上回った場合に、停止時間を長くすることができる。
【0050】
(図8:ステップS108:補足その3)
ここでは、上述の「駆動時間と停止時間を最適化する手法その1」で説明した手法を採用した例を説明したが、本ステップにおいて、「駆動時間と停止時間を最適化する手法その2」で説明した手法を採用することもできる。
【0051】
(図8:ステップS109)
入力制御部6は、ステップS108で駆動停止時間算出部7が求めた停止時間Tprにしたがって、電子スイッチ4をオフし、負荷2へ流れる電流を停止する。また、停止時間Tprを計時するタイマを起動して経過時間を計時する。
【0052】
(図8:ステップS110〜S111)
入力制御部6は、停止時間Tprが経過するまで待機し(S110)、電子スイッチ4を再度オンにして負荷2を駆動する(S111)。
【0053】
<実施の形態2:まとめ>
以上のように、本実施形態2に係る負荷駆動装置100は、短時間定格電流以上の電流を検出してから所定時間が経過するまでの上昇温度を算出または推定し、その温度上昇分を下げることができる停止時間Tprを求める。これにより、瞬時定格電流による熱損傷を保護するのみならず、短時間定格電流による熱損傷も保護することができる。
【0054】
<実施の形態3>
実施形態2では、短時間定格電流以上の電流を検出してからの温度上昇分を都度算出または推定し、その温度上昇分を降下させることのできる停止時間Tprを求めることを説明した。本発明の実施形態3では、温度上昇分を都度算出または推定することに代えて、現時点における負荷駆動装置100の温度を簡易的に算出または推定し、必要な温度降下幅を求める手法を説明する。負荷駆動装置100の構成は実施形態2と同様である。
【0055】
(負荷駆動装置100の温度を求める手法その1)
負荷駆動装置100の上昇温度は、負荷2の電流値Am、負荷2に電流が流れている時間、各電子部品の導体抵抗値などの回路パラメータ(回路定格値)などを用いて算出することができる。上記手法で求めた上昇温度を降下させることができる停止時間を、以下で説明する手法により求めればよい。
【0056】
(負荷駆動装置100の温度を求める手法その2)
負荷2に流れる電流Amを、所定時間モニタする。温度上昇幅は、最大電流値に最も影響されると考えられるので、その時間内における最大電流値と負荷駆動装置100の温度の間には、相関関係があると考えられる。そこで、ある時間幅内に流れる最大電流値と負荷駆動装置100の温度との対応関係をあらかじめ測定してデータとして保持しておき、実際に測定した最大電流値に対応させて、負荷駆動装置100の上昇温度を簡易算出することができる。
【0057】
(負荷駆動装置100の下降温度を求める手法)
負荷駆動装置100内の雰囲気温度を一定とすると、電線3の放熱特性および電流Amが停止している時間と、負荷駆動装置100の温度下降幅とは、概ね時間比例の関係にある。そこで、単位時間あたりの下降温度をあらかじめ測定して定数として定義しておき、上記比例関係式を用いて、負荷駆動装置100の下降温度を算出することができる。同様に、下降させたい温度幅が定まれば、そのために必要な負荷停止時間を算出することができる。
【0058】
上述の手法により、負荷駆動装置100の上昇温度と下降温度をそれぞれ積算し、現在の温度を算出または推定することができる。求めた温度が温度閾値以上であるときは負荷2の停止時間を長くし、温度閾値未満であるとき停止時間を短くする。あるいは、過電流による温度上昇を防ぐため、実施形態2で説明したように、上昇温度分だけ温度が下降するように停止時間を決定してもよい。
【0059】
また、即時故障に至らない程度の大電流(例えば短時間定格電流)が流れている場合は、これが長時間にわたると負荷駆動装置100が熱損傷にいたる可能性がある。そこで、電流値Amが瞬時定格電流未満であっても、現在の負荷駆動装置100の推定温度が温度閾値以上であれば、電子スイッチ4をオフして負荷2の駆動を停止させてもよい。
【0060】
図9は、本実施形態3に係る負荷駆動装置100の動作フローである。負荷駆動装置100は、本動作フローを繰り返し実行し、負荷2を駆動する。以下、図9の各ステップについて説明する。
【0061】
(図9:ステップS201〜S202)
過電流検出部5は、負荷2に流れる電流をモニタする(S201)。入力制御部6は、所定のサンプリング時間における温度変化ΔNを、1サンプリング時間における上昇温度Nisと下降温度Ndsに基づき算出し、ΔNを積算することによって、現在の負荷駆動装置100の推定温度Nxを算出する。温度センサなどの計測値を取得できる場合は、これを用いてもよい。
【0062】
(図9:ステップS203)
入力制御部6は、ステップS202で求めた温度Nxを、所定の許容温度と比較する。推定温度Nxが所定の許容温度以上である場合はステップS204へ進み、それ以外であればステップS208へ進む。
【0063】
(図9:ステップS204)
駆動停止時間算出部7は、負荷駆動装置100の温度を温度閾値未満まで下降させることのできる停止時間Tplを、上記手法を用いて算出する。
【0064】
(図9:ステップS205)
入力制御部6は、ステップS204で駆動停止時間算出部7が求めた停止時間Tplにしたがって、電子スイッチ4をオフし、負荷2へ流れる電流を停止する。また、停止時間Tplを計時するタイマを起動して経過時間を計時する。
【0065】
(図9:ステップS206〜S207)
入力制御部6は、停止時間Tplが経過するまで待機し(S206)、電子スイッチ4を再度オンにして負荷2を駆動する(S207)。
【0066】
(図9:ステップS208〜216)
ステップS203において、推定温度Nxが所定の許容温度に到達していないと判断した場合は、推定温度Nxに基づき停止時間Tplを算出することに代えて、実施形態2と同様に瞬時定格電流または短時間定格電流を基準として停止時間Tppを算出する。ステップS208〜S216の処理は図8のステップ102〜S110と概ね同様であるが、既にステップS202で温度Nxを算出しているため、ステップS107に該当するステップは省略している。
【0067】
(図9:ステップS208〜216:補足)
これらのステップにおいて、停止時間Tppを算出する際には、実施形態1〜2と同様の手法を用いてもよいし、ステップS201〜S207と同様の回路定格値を用いた簡易手法を用いてもよい。
【0068】
<実施の形態3:まとめ>
以上のように、本実施形態3に係る負荷駆動装置100は、負荷駆動装置100の現時点の温度Nxを取得し、温度Nxを温度閾値未満まで下げることのできる停止時間Tplを算出して負荷2の駆動を停止させる。これにより、瞬時定格電流や短時間定格電流に基づいて停止時間Tppを算出する処理よりも簡易に停止時間Tplを求めることができるので、演算負荷や演算時間の観点で有利である。
【0069】
また、本実施形態3に係る負荷駆動装置100は、温度Nxの推定や下降温度を算出する際に、負荷駆動装置100の回路定格値を用いる。これにより、単純な演算手順でこれら温度を算出することができるので、演算負荷や演算時間の観点で有利である。
【0070】
<実施の形態4>
本発明の実施形態4では、負荷駆動装置100の発熱量が電流値Amや電流が流れている時間に依拠することを利用して、電子スイッチ4がオンになっている時間、またはオフになっている時間に基づき、負荷2の駆動を停止する時間を簡易的に算出する手法を説明する。負荷駆動装置100の構成は実施形態2と同様である。
【0071】
負荷駆動装置100の温度は、電子スイッチ4がオフされてからオンされるまでの時間が短く、電子スイッチ4がオンされてから過電流を検出するまでの経過時間が長いほど、より大きく上昇していると考えることができる。また、電子スイッチ4がオフされてからオンされるまでの時間が長く、かつ電子スイッチ4がオンされてから過電流を検出するまでの時間経過が短いほど、上昇幅は小さいと考えることができる。
【0072】
そこで、駆動停止時間算出部7は、電子スイッチ4がオフされてからオンされるまでの時間が短く、電子スイッチ4がオンされてから過電流を検出するまでの経過時間が長いほど、負荷2を停止する時間を長くする。また、電子スイッチ4がオフされてからオンされるまでの時間が長く、電子スイッチ4がオンされてからから過電流を検出するまでの経過時間が短いほど、負荷2を停止する時間を短くする。これにより、温度上昇による熱損傷を回避しつつ、ノイズによる一時的な過電流から迅速に復帰することができる。
【0073】
なお、実施形態3で説明したように、負荷駆動装置100の上昇温度は、電流値Am、導体抵抗値などの回路定格値をパラメータとして算出することができる。そこで、導体に流れる最大電流値や導体抵抗値から、負荷2を停止する時間を簡易的に算出してもよい。
【0074】
図10は、本実施形態4に係る負荷駆動装置100の動作フローである。負荷駆動装置100は、本動作フローを繰り返し実行し、負荷2を駆動する。以下、図10の各ステップについて説明する。
【0075】
(図10:ステップS301)
駆動停止時間算出部7は、電子スイッチ4がオフされたか否かを判定する。電子スイッチ4がオフされていればステップS302へ進み、オフされていなければステップS305へスキップする。
【0076】
(図10:ステップS302〜S303)
駆動停止時間算出部7は、電子スイッチ4がオフになっている時間を計時するためのタイマToffを起動する(S302)。駆動停止時間算出部7は、電子スイッチ4がオンになるまで待機する(S303)。
【0077】
(図10:ステップS304)
駆動停止時間算出部7は、電子スイッチ4がオンになっている時間を計時するためのタイマTonを起動する。
【0078】
(図10:ステップS305〜S314)
これらのステップの処理は、図8のステップ101〜S110と概ね同様である。ただし本実施形態4では、ステップS311において、電子スイッチ4をオン/オフしている時間に基づき簡易的に停止時間Tp0を算出するため、ステップS107に該当するステップは省略している。
【0079】
(図10:ステップS311:補足)
オン時間Tonおよびオフ時間Toffと、停止時間Tp0との対応関係を、あらかじめ対応関係データとして入力制御部6に保持させておき、これに基づき停止時間Tp0を算出することができる。あるいは、TonとToffの比率、負荷2の抵抗値などの回路定格値などに基づき、簡易的にTp0を算出することもできる。
【0080】
<実施の形態4:まとめ>
以上のように、本実施形態4に係る負荷駆動装置100は、電子スイッチ4がオンになっている時間およびオフになっている時間に基づき、負荷2の駆動を停止する時間Tp0を簡易算出する。これにより、瞬時定格電流や短時間定格電流に基づいて停止時間Tppを算出する処理よりも簡易に停止時間Tp0を求めることができるので、演算負荷や演算時間の観点で有利である。
【0081】
また、本実施形態4に係る負荷駆動装置100において、負荷2に流れる最大電流値および負荷駆動装置100の抵抗値に基づき、負荷2の駆動を停止する時間Tp0を簡易算出する。これにより、単純な演算手順でこれら温度を算出することができるので、演算負荷や演算時間の観点で有利である。
【0082】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0083】
また、上記各構成、機能、処理部などは、それらの全部または一部を、例えば集積回路で設計することによりハードウェアとして実現することもできるし、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを実行することによりソフトウェアとして実現することもできる。各機能を実現するプログラム、テーブルなどの情報は、メモリやハードディスクなどの記憶装置、ICカード、DVDなどの記憶媒体に格納することができる。
【符号の説明】
【0084】
1:バッテリー、2:負荷、3:電線、4:電子スイッチ、5:過電流検出部、6:入力制御部、7:駆動停止時間算出部、100:負荷駆動装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に供給する電流を制御する負荷駆動装置であって、
前記負荷に供給する電流を検出する電流検出部と、
前記負荷駆動装置の温度の計測値または推定値に基づき前記電流を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記電流検出部が過電流を検出すると、
前記負荷に電流を供給する供給期間と前記負荷に電流を供給しない供給停止期間とを繰り返すことにより、前記負荷に断続的に電流を供給し、
前記温度が所定温度閾値未満であると判断するときは、前記温度が前記所定温度閾値以上であると判断するときよりも、前記供給停止期間を短くする
ことを特徴とする負荷駆動装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記電流検出部が短時間定格電流以上の電流を所定時間以上検出し続けたときは、前記負荷に過電流が流れていると判断し、
前記電流検出部が短時間定格電流以上の電流を検出してから前記所定時間が経過するまでの前記負荷駆動装置の温度上昇分を推定し、その温度上昇分を前記供給停止期間内に下げることができる前記供給停止期間の時間幅を推定してその時間幅で前記供給停止期間を設ける
ことを特徴とする請求項1記載の負荷駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記電流検出部が短時間定格電流以上の電流を検出してから前記所定時間が経過したときは、前記温度が前記所定温度閾値を上回っている量が大きいほど、前記供給停止時間を長くする
ことを特徴とする請求項2記載の負荷駆動装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記電流検出部が短時間定格電流以上の電流を検出してから前記所定時間が経過したときは、前記温度を前記負荷駆動装置の定格温度前後の所定範囲内に収めることができる最短の前記供給停止期間の時間幅を推定し、その時間幅で前記供給停止期間を設ける
ことを特徴とする請求項2記載の負荷駆動装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記温度の現時点の計測値または推定値を取得し、
前記計測値または前記推定値が所定の許容温度以上である場合は、前記負荷駆動装置の温度を前記所定温度閾値未満まで前記供給停止期間内に下げることができる前記供給停止期間の時間幅を推定してその時間幅で前記供給停止期間を設ける
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の負荷駆動装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記負荷駆動装置の回路定格値に基づき前記負荷駆動装置の温度上昇幅および温度低下幅を算出し、
その算出結果に基づき前記温度および前記時間幅を推定する
ことを特徴とする請求項5記載の負荷駆動装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記負荷に電流を供給し始めてからの経過時間が長いほど前記供給停止期間を長くする
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の負荷駆動装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記負荷に流れる最大電流値および前記負荷駆動装置の抵抗値に基づき前記供給停止期間を算出する
ことを特徴とする請求項7記載の負荷駆動装置。
【請求項1】
負荷に供給する電流を制御する負荷駆動装置であって、
前記負荷に供給する電流を検出する電流検出部と、
前記負荷駆動装置の温度の計測値または推定値に基づき前記電流を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記電流検出部が過電流を検出すると、
前記負荷に電流を供給する供給期間と前記負荷に電流を供給しない供給停止期間とを繰り返すことにより、前記負荷に断続的に電流を供給し、
前記温度が所定温度閾値未満であると判断するときは、前記温度が前記所定温度閾値以上であると判断するときよりも、前記供給停止期間を短くする
ことを特徴とする負荷駆動装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記電流検出部が短時間定格電流以上の電流を所定時間以上検出し続けたときは、前記負荷に過電流が流れていると判断し、
前記電流検出部が短時間定格電流以上の電流を検出してから前記所定時間が経過するまでの前記負荷駆動装置の温度上昇分を推定し、その温度上昇分を前記供給停止期間内に下げることができる前記供給停止期間の時間幅を推定してその時間幅で前記供給停止期間を設ける
ことを特徴とする請求項1記載の負荷駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記電流検出部が短時間定格電流以上の電流を検出してから前記所定時間が経過したときは、前記温度が前記所定温度閾値を上回っている量が大きいほど、前記供給停止時間を長くする
ことを特徴とする請求項2記載の負荷駆動装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記電流検出部が短時間定格電流以上の電流を検出してから前記所定時間が経過したときは、前記温度を前記負荷駆動装置の定格温度前後の所定範囲内に収めることができる最短の前記供給停止期間の時間幅を推定し、その時間幅で前記供給停止期間を設ける
ことを特徴とする請求項2記載の負荷駆動装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記温度の現時点の計測値または推定値を取得し、
前記計測値または前記推定値が所定の許容温度以上である場合は、前記負荷駆動装置の温度を前記所定温度閾値未満まで前記供給停止期間内に下げることができる前記供給停止期間の時間幅を推定してその時間幅で前記供給停止期間を設ける
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の負荷駆動装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記負荷駆動装置の回路定格値に基づき前記負荷駆動装置の温度上昇幅および温度低下幅を算出し、
その算出結果に基づき前記温度および前記時間幅を推定する
ことを特徴とする請求項5記載の負荷駆動装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記負荷に電流を供給し始めてからの経過時間が長いほど前記供給停止期間を長くする
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の負荷駆動装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記負荷に流れる最大電流値および前記負荷駆動装置の抵抗値に基づき前記供給停止期間を算出する
ことを特徴とする請求項7記載の負荷駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−165569(P2012−165569A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24214(P2011−24214)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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