説明

賦型シート

【課題】繊細な凹凸形状を有し、高級感のある緻密な賦型をすることができ、離型性にも優れ、かつ、基材等から析出する不純物などによって、賦型シートの表面が汚れることがない賦型シートおよび該賦型シートにより賦型された化粧板を提供すること。
【解決手段】ポリエステル系フィルムからなる基材上に、少なくとも部分的に設けられたインキ層と、該インキ層上に存在してこれと接触すると共に、該インキ層が形成された領域及び該インキ層が形成されていない領域とを含む全面にわたって被覆する表面賦型層を有する賦型シートであって、該表面賦型層が電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、かつ、基材がキシレン中に140℃で24時間浸漬した後の重量減少が1.0質量%以下であることを特徴とする賦型シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊細な凹凸形状を有し、高級感のある緻密な賦型をすることができ、かつ離型性にも優れた賦型シートおよび該賦型シートにより賦型された化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
家具、机の天板、各種カウンターやドアーなどの住宅機器および内装材として用いられる建材としては、一般に合成樹脂系材料を賦型した化粧板、例えばメラミン樹脂化粧板などが幅広く用いられている。
従来、表面に凹凸形状を有する熱硬化性樹脂化粧板には、エンボス金型や樹脂凹凸シートにより凹凸形状を形成したものと、賦型シートにより凹凸形状を形成したものがある。しかし、凹凸形状を形成したエンボス金型を使用した場合は、金型をブラスト、エッチング等の表面処理する必要があるため凹凸形状および模様の緻密さに限界が生じてしまう。さらに熱硬化性樹脂化粧板製造時に、高価な型板及び予備の型板が必要となり、化粧板作製の手間と費用の負担が増えるため、製造コストも大幅に増加し製品が高価なものとなる。また、樹脂凹凸シートの場合は、熱硬化性樹脂化粧板が樹脂の硬化後、剥離しにくくなるために型板との間に、アルミニウム箔、ポリプロピレンフィルム等を挟む必要があり、微細な凹凸模様をシャープに形成することは非常に難しい。
【0003】
ところで、近年の消費者の高級品指向により、家具や机、あるいは内装材などに対しても高級感が求められるようになり、これらに用いられる化粧板においても、高級感を与える外観を有するものが望まれている。そのため、質感の付与も重要となってきており、繊細な凹凸形状を化粧板に付与する方法が種々提案されている。
例えば、基材シートの表面に電離放射線硬化性樹脂で凹凸形状を設けた賦型シートであって、賦型シートを剥離するときに凹凸形状が割れたりしないような架橋密度を有することにより所望される模様形状を忠実に再現し、かつ繰返し使用できる賦型シートが提案されている(特許文献1、特許請求の範囲参照)。しかし、賦型シートを作製する際にロール凹版から剥離する工程を介するため、凹部が細い場合には凹凸形状の表現に限界がある。
また、この方法では凹部が細い場合には、凹凸がきれいに出ないという問題がある一方、ある程度の太さの凹部がある場合には、基材表面に凹凸模様は得られるものの、隆起部の高さ以上の凸部が生じ、例えば木目模様の場合にはリアル感がなく、外観及び手触り感がよくないという問題もある。
【0004】
また、基材としてポリエステル系フィルムを用いた賦型シートは、繰り返し使用した際に、基材から不純物が析出し、賦型シートの表面を汚すとともに、該汚れが原因となって微細な凹凸模様をシャープに賦型することが困難な場合があった。
【0005】
【特許文献1】特開平7−164519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況下で、繊細な凹凸形状を有し、高級感のある緻密な賦型をすることができ、離型性に優れ、かつ、繰り返し使用しても、基材等から析出する不純物などによる賦型シートの表面の汚れない賦型シートおよび該賦型シートにより賦型された化粧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ポリエステル系フィルムからなる基材上に、少なくとも部分的に設けられたインキ層と、該インキ層上に存在してこれと接触すると共に、該インキ層が形成された領域及び該インキ層が形成されていない領域とを含む全面にわたって被覆する表面賦型層を有する賦型シートであって、該表面賦型層が電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、かつ、基材をキシレン中に140℃で24時間浸漬した後の重量減少(以下、単に「重量減少」ということがある。)が1.0質量%以下とすることによって、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)ポリエステル系フィルムからなる基材上に、少なくとも部分的に設けられたインキ層と、該インキ層上に存在してこれと接触すると共に、該インキ層が形成された領域及び該インキ層が形成されていない領域とを含む全面にわたって被覆する表面賦型層を有する賦型シートであって、該表面賦型層が電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、かつ、基材がキシレン中に140℃で24時間浸漬した後の重量減少が1.0質量%以下であることを特徴とする賦型シート、
(2)前記基材が表面処理されている上記(1)に記載の賦型シート、
(3)前記表面処理が洗浄処理、コロナ放電処理、プラズマ処理及びフレーム処理から選ばれる少なくとも1種である上記(2)に記載の賦型シート、
(4)前記インキ層の直上部及びその近傍の上部に位置する表面賦型層の表面が凸形状を有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の賦型シート、
(5)インキ層を構成するインキがバインダーとして非架橋ウレタン樹脂を含むものであり、かつ電離放射線硬化性樹脂組成物が(メタ)アクリレート単量体を含むことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の賦型シート、
(6)インキ層を構成するインキがバインダーとして非架橋ウレタン樹脂と不飽和ポリエステル樹脂とを含む上記(5)に記載の賦型シート、
(7)インキ層を構成するインキの厚みが均一でないことを特徴とする上記(4)〜(6)のいずれかに記載の賦型シート、
(8)前記インキ層が相対的に膜厚の厚い厚膜領域と、相対的に膜厚の薄い薄膜領域とからなるとともに、該厚膜領域の直上部及びその近傍の上部に位置する表面賦型層の表面の凸形状は相対的に高く、該薄膜領域の直上部及びその近傍の上部に位置する表面賦型層の表面の凸形状は相対的に低い上記(7)に記載の賦型シート、
(9)前記凸形状の高さが1〜3μmである上記(4)〜(8)のいずれかに記載の賦型シート、
(10)前記表面賦型層中に反応性シリコーンを含む上記(1)〜(9)のいずれかに記載の賦型シート、
(11)前記表面賦型層中に微粒子を含み、かつ該微粒子の平均粒径が、前記インキ層の直上部に位置する表面賦型層の最大厚さのプラス側近傍値であることを特徴とする上記(4)〜(10)のいずれかに記載の賦型シート、
(12)微粒子の粒度分布の変動係数CV値[(粒径の標準偏差/平均粒径)×100]が30%以下である上記(11)に記載の賦型シート、
(13)微粒子の平均粒径をdA、インキ層の直上部に位置する表面賦型層の最大厚さをtM、インキ層が存在しない領域の表面賦型層の厚さをtGとした場合、式(I)
1.05×tM≦dA≦tG ・・・(I)
の関係を満たす上記(11)又は(12)に記載の賦型シート、
(14)表面賦型層中の微粒子の含有量が2〜20質量%である上記(11)〜(13)のいずれかに記載の賦型シート、
(15)前記表面賦型層が焼成カオリン粒子を含有する上記(1)〜(14)のいずれかに記載の賦型シート、
(16)インキ層を構成するインキが体質顔料を含むことを特徴とする上記(1)〜(15)のいずれかに記載の賦型シート、
(17)電離放射線硬化性樹脂組成物が電子線硬化性樹脂組成物である上記(1)〜(16)のいずれかに記載の賦型シート、
(18)上記(1)〜(17)のいずれかに記載の賦型シートを基板に賦型してなる化粧板、
(19)上記(1)〜(17)のいずれかに記載の賦型シートを、加熱圧板間に圧締して成型される基板と圧板の間に挿入して、成型したことを特徴とする化粧板、
(20)基板がメラミン樹脂化粧板である上記(18)又は(19)に記載の化粧板、及び
(21)基板がジアリルフタレート(DAP)樹脂化粧板である上記(18)又は(19)に記載の化粧板、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、繊細な凹凸形状を有し、高級感のある緻密な賦型をすることができ、離型性に優れ、かつ、繰り返し使用しても、基材等から析出する不純物などによって、賦型シートの表面が汚れることがない賦型シートを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の賦型シートは、ポリエステル系フィルムからなる基材上に、少なくとも部分的に設けられたインキ層と、該インキ層上に存在してこれと接触すると共に、該インキ層が形成された領域及び該インキ層が形成されていない領域とを含む全面にわたって被覆する表面賦型層を有する賦型シートであって、該表面賦型層が電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものである。特に、インキ層を部分的に設けた場合には、該インキ層の直上部及びその近傍の上部に位置する表面賦型層の表面が凸形状を有する。
【0011】
本発明の賦型シートの構造について、図1、図2を用いて説明する。図1、図2は本発明の賦型シート1の断面を示す模式図である。図1に示す例では、基材2上に全面を被覆する一様均一な浸透防止層6、インキ層3、電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面賦型層5がこの順に積層されたものである。インキ層3は部分的に存在し、その直上部及びその近傍における表面賦型層に相互作用領域4が形成される。相互作用領域4は図中で点の集合により表現されている。
表面賦型層5の最表面における、相互作用領域4の上部は、インキ層3の形成に伴って隆起し、凸形状7を有している。表面賦型層5の表面がこのように凸形状を有することによって、全体として凹凸形状を有する賦型シートを形成する。なお、該凸形状の高さについては、本発明の効果を奏する範囲で特に限定されないが、通常1〜3μmの範囲である。
一方、インキ層3が全面にベタ状に塗布される場合には、凸形状7は発現しないが、表面賦型層5の最表面に凸形状7に比較して、さらに微細な凹凸があるため、これを賦型シートとして使用した場合には、賦型される化粧板の表面にマットな意匠を賦型することができる。
【0012】
表面賦型層5中に形成される相互作用領域4の広がりの程度については、本発明の効果を奏する範囲内であれば特に限定されず、図1に示すようにインキ層3の表面から表面賦型層5の厚み方向の途中で留まっていてもよく、また図2に示すように表面賦型層5の最表面に達するものであってもよい。
【0013】
以下、図1〜9を用いて、基材、各層の構成について詳細に説明する。
本発明で用いられる基材2は、ポリエステル系フィルムにより構成される。ポリエステル系フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と表現する。)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどの樹脂をフィルム化したものを挙げることができる。これらのうち、特にポリエチレンテレフタレートは安価であるため好適である。また、これらの樹脂は単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。さらには、これらの樹脂を混合したものであってもよい。
基材2の厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度、好ましくは30〜100μmの範囲である。
【0014】
本発明では、該基材2をキシレン中に140℃で24時間浸漬させ、その後乾燥して測定した重量減少が1.0質量%以下であることを特徴とする。こうした基材を用いることにより、賦型シートを繰り返し使用した際でも、基材からの不純物の析出が少なく、賦型シートの表面を汚すことがないために、該汚れが原因となって微細な凹凸模様を形成することができないという不具合が起きない。
以上の点から、基材2は上記キシレンへの浸漬による重量減少が0.65質量%以下であることが好ましい。該重量減少の下限値については特に制限はなく、賦型シートの表面の汚染に関しては、該重量減少が低いほど好ましい。しかしながら、過度に該重量減少を抑制することは、以下に詳述するような該重量減少を抑制する手法において、過度の処理を行うことになり、基材の他の物性を低下させることがある。このような観点から、該重量減少は、0.30〜0.65質量%の範囲であることが特に好ましい。
なお、ここでいう不純物は、例えばPETの場合は、エチレンテレフタレート環状三量体などのオリゴマー成分と考えられる。
【0015】
前記キシレンへの浸漬による重量減少量の低減化を図る方法として、洗浄処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理などの表面処理が挙げられる。
洗浄処理は、通常、ポリエステルフィルムを、溶媒を張った洗浄槽を通すことで行われる。ここで用いられる溶媒としては、水、アルコールなどが好適に挙げられ、特にエタノールが好ましい。また、洗浄処理中に超音波振動を連続的に付与することが好ましい。超音波振動により、ポリエステルフィルム表面上のオリゴマーを、より完全に洗い流すことができる。洗浄処理後は、再付着したオリゴマーをシャワー状の洗浄液(溶媒)でさらに洗浄し、乾燥することが好ましい。
【0016】
コロナ放電処理とは、大気圧下、一対の電極間に被処理材を挟み込み、両電極間に交流の高電圧を印加してコロナ放電を励起し、被処理材の表面をコロナ放電に曝す処理である。コロナの発生ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素などが挙げられ、またこれらの混合気体を使用することもできる。
コロナ放電処理は基材2とその上の層との層間密着性を向上させる効果もある。従って、コロナ放電処理の条件は、基材中の不純物の揮散の抑制とともに、層間密着強度の制御を考慮して決定する必要がある。具体的には放電時間をコントロールすることで、表面張力及び層間密着強度を制御することが好ましい。
【0017】
また、プラズマ処理では、グロー放電によって、0.001〜0.01Torr程度の低圧力下、コロナ放電よりも高い活性種を生じさせることができ、基材2の表面処理が効率的に可能である。ただし、プラズマ処理は、真空系で処理を行うために、連続処理が困難であり、生産性が劣る場合があり、また設備自体も大がかりになる。
コロナ放電処理及びプラズマ処理は、ポリエステル基材の表面のオリゴマーのみを分解・除去し、有害物は残留せず、また温度上昇も極めて低いという利点がある。
【0018】
フレーム処理(火炎処理)においても、前記表面処理と同様にポリエステルフィルム表面上の付着物のみを取り除くことができる。フレーム処理方法としては、クリーンバーナーを用いて表面処理する方法が好ましく使用される。
【0019】
これらの基材はその他、層間密着性の向上などを目的に、所望により、クロム酸化処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理などを施すこともできる。さらに、層間密着性の強化等のために、プライマー層を形成する等の処理を施してもよい。
【0020】
図1に示される浸透防止層6は、所望により設けられる層であって、後述するインキ層3を構成するインキ及び表面賦型層5を構成する電離放射線硬化性樹脂が、基材2中に浸透することを抑制する機能を持つものであり、基材2とインキ層3の間に位置する。通常は、表面賦型層5を構成する電離放射線硬化性樹脂と密着性がある硬化性樹脂が架橋硬化した一様均一な層を、図1に示すように基材2とインキ層3の間に設ける。このことにより、基材2とインキ層3及び表面賦型層5との接着性を高める機能をも併せて果たすものである。
【0021】
本発明の化粧材におけるインキ層3は、図1に示すように必要に応じて設けられた浸透防止層6等の上に積層されるもので、表面賦型層5の表面の凹凸形状を生じさせる層である。
本発明における凹凸形状発生の機構については、十分解明されるには至っていないが、各種実験と観察、測定の結果から、インキ層3の表面に表面賦型層5を形成するための電離放射線硬化性樹脂の未硬化物を塗工した際に、各材料の組合せ、塗工条件の適当な選択によって、インキ層3の樹脂成分と表面賦型層が、一部溶出、分散、混合等の相互作用を発現することによるものと推測される。この際、インキ層3のインキと電離放射線硬化性樹脂の未硬化物におけるそれぞれの樹脂成分は、短時間には完全相溶状態にならずに懸濁状態となって、インキ層3の直上部及びその近傍に存在し、該懸濁状態となった部分が相互作用領域をなして、凸形状7を発現させるものと考えられる。この懸濁状態を有したまま、表面賦型層を架橋硬化せしめることにより、かかる状態が固定されると、図1および図2に示すように、表面賦型層中に相互作用領域4が部分的に形成され、凸形状7をなすものと推測される。
【0022】
インキ層3を形成するインキは表面賦型層5を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物との間で溶出、分散、混合等の相互作用を発現し得る性質を有するものであり、該電離放射線硬化性樹脂組成物(未硬化物)との関連で適宜選定されるものである。具体的には、バインダー樹脂として非架橋性樹脂を有するインキであることが好ましく、例えば熱可塑性(非架橋型)ウレタン樹脂などが好適である。ここで、表面賦型層5を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物との相互作用をより強いものとし、さらなる模様の凹凸感を得るとの観点から、ウレタン樹脂の含有量は50質量%以上であることがさらに好ましい。
上記ウレタン樹脂としては、非架橋型のもの、すなわち、3次元架橋して網目状の立体的分子構造を持ったものではなく、線状の分子構造を持った熱可塑性樹脂となったものを選択することが好ましい。このような非架橋型のウレタン樹脂としては、ポリオール成分として、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等のポリオールとイソシアネート成分として、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート等の脂肪族ないしは脂環式イソシアネート等のイソシアネートとを反応させてなるウレタン樹脂が挙げられる。通常ポリオール1分子中の水酸基数及びイソシアネート1分子中のイソシアネート基はそれぞれ平均2である。またウレタン樹脂の平均分子量は10,000〜50,000程度であり、ガラス転移温度(Tg)は−70〜−40℃程度のものが相互作用領域発現のために好ましい。
【0023】
また、必要に応じて、相互作用領域の発現の程度、すなわち凸形状の起伏の程度を調整するため、飽和又は不飽和のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、又は塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などを混合することができる。これらのうち、ポリエステル樹脂が好ましく、特に不飽和ポリエステル樹脂が好ましい。不飽和ポリエステル樹脂の添加量は、インキのバインダー全量に対して、10〜50質量%の範囲であることが好ましい。この範囲内であると相互作用領域発現の十分な増強効果が得られる。不飽和ポリエステル樹脂としては、不飽和ジカルボン酸とグリコールとの反応物であれば特に限定されず、不飽和ジカルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられ、グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等が挙げられる。
【0024】
インキ層3を形成するためのインキ組成物中に体質顔料を含有することが好ましい。体質顔料を含有することによって、インキ組成物にチキソ性を付与することができ、版を用いてインキ層3を印刷する際に、インキ組成物の形状が維持される。このことにより、凸部から凹部に移行する端部における凹凸形状の鮮映性(シャープネス)を強調することができ、メリハリのある意匠表現が可能となる。
本発明で用いる体質顔料としては特に限定されず、例えばシリカ、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等から適宜選択される。これらのうち吸油度、粒径、細孔容積等の材料設計の自由度が高く、意匠性、白さ、インキとしての塗工安定性に優れた材料であるシリカが好ましく、特に微粉末のシリカが好ましい。シリカの粒径としては、0.1〜5μmの範囲が好ましい。0.1μm以上であるとインキに添加した際にインキのチキソ性が極端に高くならず、またインキの粘性が上がりすぎず印刷のコントロールがしやすい。いいかえると、凹凸形状のコントロールがしやすくなる。また、木目模様の作製において、導管模様部分を表現しようとした場合、導管模様部分のインキの塗布厚みが通常5μm以下であり、シリカの粒径が塗布厚みよりも小さければ粒子の頭だしが比較的押えられ目立たないことから、相互作用領域発現の状態が自然となることで、凹凸形状の違和感は生じにくく、自然な仕上がりとなる。
これらの体質顔料のインキ組成物における含有量は、5〜15質量%の範囲であることが好ましい。5質量%以上であるとインキ組成物に十分なチキソ性を付与することができ、15質量%以下であると凸形状の発現を付与する効果の低下が全く見られず好ましい。
【0025】
インキ層3を形成するインキの塗布量については、1〜30g/m2の範囲であることが好ましい。1g/m2以上であると、上述したインキと電離放射線硬化性樹脂組成物との相互作用が起こり、相互作用領域が十分得られるため、賦型シート表面に十分な凹凸形状が得られる。一方30g/m2以下であると、インキの印刷に際して機械的制約がなく、また経済的にも有利である。以上の観点から、インキの塗布量はさらに1〜10g/m2の範囲であることが好ましく、特に1〜7g/m2の範囲であることが好ましい。
【0026】
また、インキ組成物の塗布量を変化させることにより、インキ層3を構成するインキの厚みを均一でないものとすることができ、これによって発現する凸部の高低差の程度が、段階的あるいは連続的に変化し、結果として賦型シートの模様を段階的に凹凸形状が変化する階調模様または連続的に凹凸が変化する連続模様とすることができる。
これは、インキ層3の塗布量が相対的に、より多くなるにしたがって、インキ層3と表面賦型層5との間の相互作用が相対的に増加して、懸濁状態の程度がより高く、凸形状の起伏がより大きくなるためと考えられる。
図3〜5を用いて以下詳細に説明する。図3においては、インキ層3を構成するインキ3−a、3−b及び3−cの厚みを異なるようにしている。すなわち、膜厚は相対的に3−a、3−b、3−cの順に段階的に薄くなる。こうすることによって、相互作用領域4−a、4−b及び4−cを、段階的に変化させることができ、得られる凹凸形状の凸形状7−c、7−b、7−aの順に段階的に凸部はより隆起する。これは、インキ層3を構成するインキの厚みが均一ではなく、3−a、3−b、3−cの順に、該インキの厚みが減少するように塗布されているため、インキの厚みの大きい部分はより凸形状の起伏が著しくなり、3−a、3−b、3−cの順に階調的に凸形状の起伏が小さくなるように変化すると考えられる。こうしたインキの厚みを、さらに細かく変化させることによって、凹凸形状を連続的に変化させることもできる。
こうした構造を有する賦型シートにより一層多彩で繊細な質感を付与することが可能となる。インキ層3を構成するインキの厚みを変化させる方法は、通常、インキの塗工量を変化させることで容易に行うことができ、インキの塗工量を連続的に変化させることによって、上記段階的な変化を連続的に無段階で変化させることもできる。
【0027】
次に、図4に示す例では、基材2上にインキ層3が、基材表面と平行な面内において、連続的に厚みが変化するように(中央部が厚く、側部に向かうほど薄くなるように)積層され、その上に電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面賦型層5が積層されたものである。図3で示したのと同様に、インキ層の直上部及びその近傍における表面賦型層は相互作用領域を形成する。図4の例においては、インキ層の膜厚が、3−c、3−b、3−aの順に厚くなるのに対応して、相互作用領域4−c、4−b、4−aの順に凸形状の起伏が連続的に増加する。その結果、表面賦型層5はこの順番に、凸形状の起伏が連続的に増加する。
表面賦型層5中に形成される相互作用領域4の広がりの程度については、本発明の効果を奏する範囲内であれば特に限定されず、図3に示すように、インキ層3の表面から表面賦型層5の厚み方向の途中で留まっていてもよく、また図4及び図5に示すように表面賦型層5の最表面に達するものであってもよいし、さらには表面賦型層5の最表面に凸形状を形成していてもよい。
【0028】
次に、表面賦型層5は上述のように電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化したもので構成される。ここで、電離放射線硬化性樹脂組成物とは、電磁波または荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線または電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂組成物を指す。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂組成物として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
代表的には、重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート単量体が好適であり、(メタ)アクリレート単量体を含むことによって、上述のインキとの相互作用が生じ、凹凸形状の差を好適に形成するものである。インキとの相互作用をより強いものとし、さらなる凹凸形状を得るとの観点から、(メタ)アクリレート単量体の含有量は50質量%以上であることがさらに好ましい。
【0029】
(メタ)アクリレート単量体としては、多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系のオリゴマーなどが挙げられる。ここで、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0032】
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
本発明においては、上述のようにインキ層3を構成するインキと表面賦型層5を構成する電離放射線硬化性樹脂組成物の相互作用が重要であり、この観点から適当なインキと電離放射線硬化性樹脂組成物が選定されるが、電離放射線硬化性樹脂組成物としては、多官能性(メタ)アクリレートモノマーを含有することが好ましい。
【0033】
電離放射線硬化性樹脂組成物として紫外線硬化性樹脂組成物を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する重合性モノマーや重合性オリゴマーに対しては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタールなどが挙げられる。
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂組成物として電子線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂組成物は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、また光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
【0034】
また、表面賦型層5が焼成カオリン粒子を含有することが好ましい。この表面賦型層中に焼成カオリン粒子を含有させることで、賦型シート表面の凹凸形状がより繊細となるほか、耐マーリング(marring)性が向上する。ここでマーリングとは、シート表面が擦られた場合に、小さい擦り傷が発生することをいい、耐マーリング性が優れているとは、擦り傷ができにくいことをいう。賦型シートにこのような性能を付与することで、表面賦型層を強化し、より長期間の使用に耐えうる賦型シートを得ることができ、化粧板の製造コストを下げることが可能となる。
【0035】
賦型シート表面に、より繊細な凹凸形状及び耐マーリング性を付与するために使用する焼成カオリン粒子は、一般的な(含水)カオリン粒子を焼成して得られるカオリン粒子であるが、充填剤として焼成カオリン粒子を添加することで、シリカ粒子や焼成前の含水カオリン粒子では実現できなかった耐マーリング性の改善が実現する。なお、焼成カオリン粒子の粒径は、用途、要求物性等に応じて適宜選択すればよいが、例えば平均粒径で0.5〜2μm程度のものを使用する。また、焼成カオリン粒子の添加量も、用途、要求物性等に応じて適宜選択すれば良いが、例えば、電離放射線硬化性樹脂(ただし、表面賦型層が、他の樹脂を含む場合には、電離放射線硬化性樹脂とその他の樹脂との合計)100質量部に対して5〜50質量部程度である。なお、焼成カオリン粒子は含水カオリン粒子よりも塗料安定性にも優れている。
【0036】
焼成カオリン粒子としては、さらにその表面を処理したものを用いても良い。この表面処理された焼成カオリン粒子を用いることで、耐マーリング性向上効果をさらに増すことができる。表面処理としては、シランカップリング剤による表面処理がある。該シランカップリング剤としては、アルコキシ基、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、クロル基等を有する公知のシランカップリング剤が挙げられる。例えば、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ―アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ―アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ―アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ―アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ―アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ―アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メルカプトプロピルトリメトキシシランなどである。
【0037】
本発明の賦型シートは、電離放射線硬化性樹脂組成物に反応性シリコーンを含有させることが好ましい。表面賦型層5に反応性シリコーンを含有させることで、離型性が向上し、反復継続的使用に対する耐性が向上するからである。
ここで反応性シリコーンとは、側鎖、末端に有機基を導入した変性シリコーンオイルのうち、導入する有機基の性質によって反応性を有するものをいう。反応性シリコーンは、具体的には、変性シリコーンオイル側鎖型、変性シリコーンオイル両末端型、変性シリコーンオイル片末端型、変性シリコーンオイル側鎖両末端型等において、導入する有機基がアミノ変性、エポキシ変性、メルカプト変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、フェノール変性、メタクリル変性、異種官能基変性等であるものが挙げられる。
上記反応性シリコーンは、電離放射線で硬化時に樹脂と反応し結合して一体化する。したがって、本発明の化粧板を熱圧成型によって成型する際に、化粧板の表面にブリードアウトしない(滲み出ない)ので、本発明の賦型シートと化粧板との密着性を著しく向上させて、微細な凹凸形状を有する繊細な意匠を化粧材に賦型することが可能となる。
上記反応性シリコーンの使用量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部あたり約0.1〜50質量部の範囲、好ましくは約0.5〜10質量部の範囲である。反応性シリコーンの使用量が0.1質量部以上の場合、化粧板と賦型シートの表面との剥離が十分となり、賦型シートの表面の凹凸形状が維持され、より長期間の使用に耐えうる。一方、反応性シリコーンの使用量が50質量部以下であれば、電離放射線硬化性樹脂組成物を基材に塗工する際にはじきが発生しないので塗膜面の面が荒れず、塗料安定性が向上する。
【0038】
また、本発明の賦型シートは、電離放射線硬化性樹脂組成物にさらに微粒子が配合されることが好ましい。この微粒子としては、平均粒径が、前記インキ層3の直上部に位置する表面賦型層5の最大厚さのプラス側近傍値であるものが用いられる。微粒子が配合された本発明の賦型シートについて、図6を用いて詳細に説明する。図6に示す賦型シートは、電離放射線硬化性樹脂組成物に微粒子を配合したものである。
表面賦型層に配合された微粒子8(8−a,8−b)は、その平均粒径dAが、インキ層3の直上部に位置する表面賦型層5の最大厚さtMのプラス側近傍値、すなわちdAがtMよりも若干大きく、インキ層3の直上部に位置する表面賦型層5の表面から、該微粒子8−aの頭出しが起こる。この頭出しが起こった部分は凸形状を形成するために、微細な凹凸感を形成することができる。これと同時に、表面賦型層5の内部では、インキ層3におけるインキと、表面賦型層5を構成する電離放射線硬化性樹脂組成物との相互作用によって、インキ層3の直上部及びその近傍部に凸形状を発現させる相互作用領域4が形成される。
一方、インキ層3の直上部ではない部分に位置する微粒子8−bは、頭出しをすることがなく、凸形状の発現には寄与しないが、このように表面賦型層内における微粒子の位置による凸形状の発現に対する効果は様々である。
従って、この表面賦型層5中の相互作用領域4と、該表面賦型層5の表面における微粒子の頭出しによる効果と、前記したインキ層3の形成に伴い形成される凸形状の効果により、凹凸形状は微細であり、かつさらに強調されたものになる。
なお、インキ層3の直上部に位置する表面賦型層5の最大厚さtMとは、上記インキ層3の形成に伴う凸形状が形成されない場合には、表面賦型層5の厚さであり、該凸形状が形成される場合には、その部分を含んだ厚さである。
【0039】
前記微粒子は、粒度分布が単分散に近いほど、その使用量の設定が容易であると共に、少ない使用量で前記効果が良好に発揮されるので好ましい。
本発明においては、当該微粒子の粒度分布の変動係数CV値[(粒径の標準偏差/平均粒径)×100]は、30%以下であることが好ましい。前記CV値が30%以下であれば、当該微粒子は、実用的な粒度分布を有し、かつ適度の使用量で前記効果を十分に発揮することができる。このCV値は、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下である。
【0040】
さらに、当該微粒子の平均粒径をdA、インキ層の直上部に位置する表面賦型層の最大厚さをtM、インキ層が存在しない領域の表面賦型層の厚さをtGとした場合、式(I)
1.05×tM≦dA≦tG ・・・(I)
の関係を満たすことが好ましい。当該微粒子の平均粒径dAが、1.05×tM以上であれば、インキ層に当該微粒子の沈み込みが生じたとしても、該インキ層の直上部に位置する表面賦型層の表面に当該微粒子の頭出しが生じ、前記効果が十分に発揮される。また、該dAがtG以下であれば、インキ層が存在しない領域における表面賦型層において、当該微粒子の頭出しが抑制される。
当該微粒子の形状については特に制限はなく、球状、楕円体状、多面体状などの微粒子を用いることができるが、球状微粒子が好ましい。なお、本発明においては、球状以外の形状の微粒子の粒径は、外接球の直径で示される値とする。
【0041】
表面賦型層中の当該微粒子の含有量は、当該微粒子の平均粒径や粒度分布の変動係数CV値などにもよるが、通常2〜20質量%の範囲で選定される。この含有量が2質量%以上であれば、当該微粒子を含有させた効果が発揮され、また20質量%以下であれば、賦型シート表面に形成された凹凸形状の凹凸感は良好である。当該微粒子の好ましい含有量は4〜16質量%であり、さらに好ましくは4〜13質量%である。
【0042】
当該微粒子は、無機微粒子及び有機微粒子のいずれであってもよい。当該微粒子の例としては、無機粒子として、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、カオリナイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラスなどの粒子を挙げることができ、有機微粒子として、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン−メラミン−ホルムアルデヒド縮合物などの粒子を挙げることができる。
これらの微粒子は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、本発明の効果の点から、シリカ粒子が好適である。
また該微粒子は、同様の効果を有する上記焼成カオリン粒子とあわせて用いてもよい。
【0043】
また本発明における電離放射線硬化性樹脂組成物には、得られる硬化樹脂層の所望物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤などが挙げられる。
ここで、耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。賦型シートの長期使用を図るために添加するものである。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
【0044】
耐摩耗性向上剤としては、例えば無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の球状粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の30〜200%程度とする。これらの中でも球状のα−アルミナは、硬度が高く、耐摩耗性の向上に対する効果が大きいこと、また、球状の粒子を比較的得やすい点で特に好ましいものである。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物等が用いられる。
【0045】
本発明においては、前記の電離放射線硬化成分である重合性モノマーや重合性オリゴマー及び各種添加剤を、それぞれ所定の割合で均質に混合し、電離放射線硬化性樹脂組成物からなる塗工液を調製する。この塗工液の粘度は、後述の塗工方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよく、特に制限はない。
本発明においては、このようにして調製された塗工液を、基材の表面に、硬化後の厚さが1〜20μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。硬化後の厚さが1μm以上であると所望の機能を有する硬化樹脂層が得られる。硬化後の表面賦型層の厚さは、好ましくは2〜20μm程度である。
【0046】
本発明においては、このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用いられる。
このようにして、形成された硬化樹脂層には、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することもできる。
【0047】
次に、本発明の化粧板は、前記賦型シートを基材に賦型してなる化粧板である。特に加熱圧板間に圧締して成型される成型品と圧板の間に前記賦型シートを挿入して成型することにより、化粧板が表面に微細な凹凸形状を有することが好ましい。具体的には、図7に示すように、熱圧成型後、賦型シート1を化粧板11から剥離することにより、一定の形状が賦型された化粧板11が得られる。
また、本発明の化粧板11は、本発明の賦型シートを使用して作製される化粧板であれば特に限定されないが、表面が硬く、耐熱性や耐汚染性にも優れ、かつ意匠性の面でも豊富な色柄が選択出来ることから、メラミン樹脂化粧板、ジアリルフタレート(DAP)樹脂化粧板、ポリカーボネート樹脂化粧板、特にはメラミン樹脂化粧板、ジアリルフタレート(DAP)樹脂化粧板が好適である。これらの化粧板を製造するには、公知の一般的になされる方法であれば、特に限定されないが、例えば以下にあげる製造方法により得られる。
メラミン樹脂化粧板は、フェノール樹脂含浸コア紙4枚程度の上にメラミン樹脂含浸シート、さらにその上にメラミン樹脂を含浸したオーバーレイ紙を積層し、2枚の鏡面金属板の間に挟み、表面に前記賦型シートを挿入して、例えば、0.98MPa 、160℃で20分間加熱圧締を行い、室温まで放冷した後、前記賦型シートを剥離することにより得られる。
また、ジアリルフタレート(DAP)樹脂化粧板は、ジアリルフタレート樹脂含浸紙を板状基材の上に順次積み重ねて、メラミン樹脂化粧板の製造方法と同様に、鏡面金属板の間で、前記賦型シートを使用して、140〜150℃、0.98MPa 、10分程度加熱圧締を行い、室温まで放冷した後、前記賦型シートを剥離することにより得られる。いずれも、繊細な凹凸形状を有する化粧板となる。
【0048】
本発明の化粧板11は、各種基板に貼着して使用することができる。具体的には、図8に示すように、基板10に接着剤層9を介して化粧板11を貼着するものである。
被着体となる基板は、特に限定されず、プラスチックシート、金属板、木材などの木質系の板、窯業系素材等を用途に応じて適宜選択することができる。これらの基板、特にプラスチックシートを基板として用いる場合には、化粧材との密着性を向上させるために、所望により、片面または両面に酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基板の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
【0049】
プラスチックシートとしては、各種の合成樹脂からなるものが挙げられる。合成樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、ポリアクリル酸ブチル樹脂、ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂、三酢酸セルロース樹脂、セロファン、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、又はポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0050】
金属板としては、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス鋼、又は銅等からなるものを用いることができ、またこれらの金属をめっき等によって施したものを使用することもできる。
木質系の板としては、杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピー等各種素材の突板、木材単板、木材合板、パーチクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木質材等が挙げられる。これらは単独で、または積層して用いることもできる。なお、木質系の板には、木質板に限らず、紙粉入りのプラスチック板や、補強され強度を有する紙類も包含される。
窯業系素材としては、石膏板、珪酸カルシウム板、木片セメント板などの窯業系建材、陶磁器、ガラス、琺瑯、焼成タイル、火山灰を主原料とした板等が例示される。
これらの他、繊維強化プラスチック(FRP)の板、ペーパーハニカムの両面に鉄板を貼ったもの、2枚のアルミニウム板でポリエチレン樹脂を挟んだもの等、各種の素材の複合体も基板として使用できる。
【0051】
このようにして接着剤層9を介して毎葉ごとにあるいは連続して化粧板11が載置された基板10を、コールドプレス、ホットプレス、ロールプレス、ラミネーター、ラッピング、縁貼り機,真空プレス等の貼着装置を用いて圧締して、化粧板11を基板10表面に接着する。
【0052】
接着剤はスプレー、スプレッダー、バーコーター等の塗布装置を用いて塗布する。この接着剤には、酢酸ビニル樹脂系、ユリア樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系、イソシアネート系等の接着剤を、単独であるいは任意混合した混合型接着剤として用いられる。接着剤には、必要に応じてタルク、炭酸カルシウム、クレー、チタン白等の無機質粉末、小麦粉、木粉、プラスチック粉、着色剤、防虫剤、防カビ剤等を添加混合して用いることができる。一般に、接着剤は固形分を35〜80質量%とし、塗布量50〜300g/m2の範囲で基板表面に塗布される。
化粧板11の基板10上への貼着は、通常、本発明の化粧板11の裏面に接着剤層9を形成し、基板10を貼着するか基板10の上に接着剤を塗布し、化粧板11を貼着する等の方法による。
【0053】
以上のようにして製造される建材は、また、該建材を任意切断し、表面や木口部にルーター、カッター等の切削加工機を用いて溝加工、面取加工等の任意加飾を施すことができる。そして種々の用途、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装または外装材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具の表面化粧板、キッチン、家具又は弱電、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装、外装等に用いることができる。
【実施例】
【0054】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
各実施例で得られた賦型シートおよび化粧板について、以下の方法で評価した。
(1)表面形状の観察
電子顕微鏡(日立ハイテク(株)製「S−2400型走査型電子顕微鏡」)を用いて、表面形状(表面凹凸、凹凸ピッチ)、賦型シートの効果確認、繰返し使用した際の成形再現性を観察した。
(2)連続成型適性
同一の賦型シートにて10回成型を行い、各成型毎の剥離強度を測定し、賦型シートを繰返し使用した際の剥離安定性を測定した。
【0055】
実施例1
PETフィルム(東レ(株)製「ルミラー(厚さ;50μm、重量減少;0.65質量%)」)の処理面上全面にプライマーインキ((株)昭和インク工業所製アクリル系インキ「EBF同調プライマー」)をグラビア印刷して浸透防止層6(プライマー層)を形成した。
次に、柄版によりインキ(ザ・インクテック(株)製ウレタン系導管インキ「導管MINI(A)」)を木目模様の導管部分に印刷して、インキ層3を形成した。さらにこれらインキ層の上に電子線硬化性樹脂(大日精化工業(株)製「REB−GE」)に焼成カオリン粒子5重量%、反応性シリコーンメタクリレート2重量%を添加した電子線硬化性樹脂組成物を塗工量4g/m2でグラビアオフセットコータ法により塗工した。塗工後、加速電圧175kV、照射線量30kGy(3Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて表面賦型層5とし、賦型シートを得た。当該賦型シートは、インキ層3の直上部及びその近傍の上に位置する表面賦型層5の表面が1〜3μm隆起した凸形状を有し、また高級感があり繊細な木目表現を有したフィルムであった。
【0056】
実施例2
フェノール樹脂含浸コア紙4枚程度の上に、メラミン樹脂含浸シート、さらにその上に35g/m2程度のオーバーレイ紙にメラミン樹脂を含浸したものを積層し、2枚の鏡面金属板の間に挟み、表面に凹凸形状を形成した実施例1で製造された賦型シートを挿入して、0.98MPa 、160℃で20分間、加熱圧締を行った。
室温まで放冷した後、賦型シートを剥離することにより、表面が繊細な凹凸形状を有したメラミン樹脂化粧板を得た。
【0057】
比較例1
既に易接着処理された市販のPETフィルム(重量減少;1.5質量%)の易接着面にドラムプリンティングフィルム(以下「DPS」という。)方式によってウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂(大日精化工業(株)製 XD−808)による凸状模様層を形成した。
ロール凹版面には木目柄の凹凸模様(深さ70μm、凸部の幅及び凹部の幅が各々35μm)をエッチング法で設けた。なお、DPS方式のラインスピードは10m/minとし、紫外線の照射にはオゾン高圧水銀灯(日本電池(株)製)160W、2灯を使用した。
こうして得られた賦型シートは、凹凸形状を有するものとなった。これにより得られた賦型シートを用いて、実施例2と同様な操作を行い、メラミン樹脂化粧板を作製した。
【0058】
実施例2で得られた化粧板は凹凸形状が非常に繊細であり、高級感のある意匠表現が可能となった。また、実施例1により得た賦型シートは、耐久性に富み、成型を10回繰り返しても、表面形状及び賦型後の剥離性(剥離しやすさ)は全く変化が見られなかった。また、成型された化粧板の表面は、成型を10回繰り返しても、凸形状部分(賦型シートの凹形状13が賦型された部分)と凹形状部分(賦型シートの凸形状7が賦型された部分)が鮮明に賦型されており、化粧板の凹形状部分における微細な凹凸形状をも有しており、全く変化は見られなかった。また、繰り返し使用しても、基材から析出する不純物などによって、賦型シートの表面が汚れることはなかった。
比較例1による化粧板は、ダイナミックな凹凸感の表現は良好なものの、繊細な凹凸形状を表現することはできなかった。また、フィルムは製造上の問題で腰のある厚いシートを使用する必要があり、製造コストは高くなった。耐久性、剥離性は、実施例2と同等であった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、繊細な凹凸形状を有し、高級感のある緻密な賦型をすることができ、離型性に優れ、かつ、基材等から析出する不純物などによって、賦型シートの表面が汚れることがない賦型シートが得られる。また該賦型シートにより賦型された繊細な凹凸形状を有した化粧板を得ることができる。特に木目模様のような繊細な模様に用いた場合には、導管部分の凹凸感をリアルに表現でき、賦型した化粧材は、実際の木材を用いた材料と同様の質感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の賦型シートの断面を示す模式図である。
【図2】本発明の賦型シートの断面を示す模式図である。
【図3】本発明の賦型シートの断面を示す模式図である。
【図4】本発明の賦型シートの断面を示す模式図である。
【図5】本発明の賦型シートの断面を示す模式図である。
【図6】本発明の賦型シートの断面を示す模式図である。
【図7】本発明の賦型シートの剥離過程を示す模式図である。
【図8】建材の断面を示す模式図である。
【符号の説明】
【0061】
1.賦型シート
2.基材
3.インキ層
3−a.インキ
3−b.インキ
3−c.インキ
4.相互作用領域
4−a.相互作用領域
4−b.相互作用領域
4−c.相互作用領域
5.表面賦型層
6.浸透防止層
7.凸形状
7−a.凸形状
7−b.凸形状
7−c.凸形状
8.微粒子または焼成カオリン粒子
8−a.微粒子または焼成カオリン粒子
8−b.微粒子または焼成カオリン粒子
9.接着剤層
10.基板
11.化粧板
12.微細凹凸面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系フィルムからなる基材上に、少なくとも部分的に設けられたインキ層と、該インキ層上に存在してこれと接触すると共に、該インキ層が形成された領域及び該インキ層が形成されていない領域とを含む全面にわたって被覆する表面賦型層を有する賦型シートであって、該表面賦型層が電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、かつ、基材がキシレン中に140℃で24時間浸漬後の重量減少が1.0質量%以下であることを特徴とする賦型シート。
【請求項2】
前記基材が表面処理されている請求項1に記載の賦型シート。
【請求項3】
前記表面処理が洗浄処理、コロナ放電処理、プラズマ処理及びフレーム処理から選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載の賦型シート。
【請求項4】
前記インキ層の直上部及びその近傍の上部に位置する表面賦型層の表面が凸形状を有する請求項1〜3のいずれかに記載の賦型シート。
【請求項5】
インキ層を構成するインキがバインダーとして非架橋ウレタン樹脂を含むものであり、かつ電離放射線硬化性樹脂組成物が(メタ)アクリレート単量体を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の賦型シート。
【請求項6】
インキ層を構成するインキがバインダーとして非架橋ウレタン樹脂と不飽和ポリエステル樹脂とを含む請求項5に記載の賦型シート。
【請求項7】
インキ層を構成するインキの厚みが均一でないことを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の賦型シート。
【請求項8】
前記インキ層が相対的に膜厚の厚い厚膜領域と、相対的に膜厚の薄い薄膜領域とからなるとともに、該厚膜領域の直上部及びその近傍の上部に位置する表面賦型層の表面の凸形状は相対的に高く、該薄膜領域の直上部及びその近傍の上部に位置する表面賦型層の表面の凸形状は相対的に低い請求項7に記載の賦型シート。
【請求項9】
前記凸形状の高さが1〜3μmである請求項4〜8のいずれかに記載の賦型シート。
【請求項10】
前記表面賦型層中に反応性シリコーンを含む請求項1〜9のいずれかに記載の賦型シート。
【請求項11】
前記表面賦型層中に微粒子を含み、かつ該微粒子の平均粒径が、前記インキ層の直上部に位置する表面賦型層の最大厚さのプラス側近傍値であることを特徴とする請求項4〜10のいずれかに記載の賦型シート。
【請求項12】
微粒子の粒度分布の変動係数CV値[(粒径の標準偏差/平均粒径)×100]が30%以下である請求項11に記載の賦型シート。
【請求項13】
微粒子の平均粒径をdA、インキ層の直上部に位置する表面賦型層の最大厚さをtM、インキ層が存在しない領域の表面賦型層の厚さをtGとした場合、式(I)
1.05×tM≦dA≦tG ・・・(I)
の関係を満たす請求項11又は12に記載の賦型シート。
【請求項14】
表面賦型層中の微粒子の含有量が2〜20質量%である請求項11〜13のいずれかに記載の賦型シート。
【請求項15】
前記表面賦型層が焼成カオリン粒子を含有する請求項1〜14のいずれかに記載の賦型シート。
【請求項16】
インキ層を構成するインキが体質顔料を含むことを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の賦型シート。
【請求項17】
電離放射線硬化性樹脂組成物が電子線硬化性樹脂組成物である請求項1〜16のいずれかに記載の賦型シート。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載の賦型シートを基板に賦型してなる化粧板。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれかに記載の賦型シートを、加熱圧板間に圧締して成型される基板と圧板の間に挿入して、成型したことを特徴とする化粧板。
【請求項20】
基板がメラミン樹脂化粧板である請求項18又は19に記載の化粧板。
【請求項21】
基板がジアリルフタレート(DAP)樹脂化粧板である請求項18又は19に記載の化粧板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−98630(P2007−98630A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288461(P2005−288461)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】