赤外線電球及び加熱・暖房装置
【課題】簡単な構成で、所望の発熱体温度分布が得られる低コストの赤外線電球及び加熱・暖房装置を提供することを目的とする。
【解決手段】板幅が同じである板幅面に形成された第1の発熱部と、発熱体の予め定められた位置で発熱温度の異なる第2の発熱部とを有する発熱体において、第2の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積が第1の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積より小さく生成され、第1の発熱部と第2の発熱部との境界部に曲面又は斜面を有し、通電により境界部における長手方向の発熱温度が徐々に変わるよう構成されている。
【解決手段】板幅が同じである板幅面に形成された第1の発熱部と、発熱体の予め定められた位置で発熱温度の異なる第2の発熱部とを有する発熱体において、第2の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積が第1の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積より小さく生成され、第1の発熱部と第2の発熱部との境界部に曲面又は斜面を有し、通電により境界部における長手方向の発熱温度が徐々に変わるよう構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、暖房装置などの発熱機器に使用される赤外線電球に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来熱源として使用されている赤外線電球としては、ニクロム線(Ni,Cr,Fe、Alを含む合金)線やタングステン(W)線をらせん状に成形した発熱体を硝子管内に挿入し、空気中または、所定の雰囲気中で発熱させ、直接または反射板などを併用して熱を放射するものがある。
図10は、従来の赤外線電球の正面図である。図において、らせん状に巻かれた発熱体6と内部リード4が硝子管1に封入され、硝子管1の端部の封止部の金属箔7を介して内部リード4と外部リード8が電気的に接続されている。図11は発熱体6の中心軸方向の距離と温度の関係(発熱体温度分布)を示すグラフである。らせん状の発熱体6の中心軸に垂直な断面はどこでも均一な熱輻射強度を有するが、中心軸の方向では両端部の熱輻射強度が放熱のため中央部よりも低くなる傾向にある。らせん状に成形された発熱体において温度分布を変えるためにはらせんのピッチを変える。局部的に温度を上げるためにはらせんのピッチを狭くしなければならないが、あまり狭くしすぎると隣り合う線が接してしまうことがあった。
【0003】
これらの問題点を解決するために、従来のらせん状の発熱体の代りに、棒状に成形した炭素系物質を発熱体として使用する赤外線電球が提案されている。炭素系物質は赤外線放射率が78〜84%と高いため、発熱体として炭素系物質を用いる赤外線電球の赤外線放射率も高くなる。
【特許文献1】実開昭49−103030号公報
【特許文献2】特開平6−275368号公報
【特許文献3】特開平3−163779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のらせん状の金属発熱体を有する赤外線電球においては次の問題を有している。図10において、発熱体6のB、C間はほぼ均一な温度分布を示す。しかし、端部のA、B間及びC、D間は均一な温度分布を示さない。この状態を図11に示す。端部の温度分布を均一にするには、巻線のピッチを端部で細かくする方法が採られているが、ピッチをあまり細かくすると隣り合う巻線が接触するおそれがある。また、巻線が発熱中は軟化して垂れ下がることもある。垂れ下がり(当技術分野ではサグ(sag)という)を防止するためには多数の保持部材(図示省略)を設ける必要がある。保持部材を設けることにより、コストが上昇するとともに信頼性が低下するおそれがある。
本発明は上記のような問題点を解決するためになされたものであり、簡単な構成で、所望の発熱体温度分布が得られる低コストの赤外線電球を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の赤外線電球は、板厚と板幅との比が1:5以上である実質的に板状の発熱体、
前記発熱体の両端に取り付けられ、導電性材料で形成された保持手段、
前記発熱体と前記保持手段を封入する硝子管、及び
前記保持手段にそれぞれ電気的に接続され、端末が硝子管外へ導出されたリード線、を有する赤外線電球であって、
前記発熱体は、実質的に同じ板幅を有する板幅面に形成された第1の発熱部と、前記発熱体の予め定められた位置に形成され、前記第1の発熱部の板幅より狭い板幅面を有する第2の発熱部とを有し、
前記発熱体において、前記第2の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積が前記第1の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積より小さく形成され、前記第1の発熱部と第2の発熱部との境界部が曲面又は斜面により形成され、通電により前記境界部における長手方向の発熱温度が徐々に変わるよう構成されている。
第2の発熱部は、長手方向に垂直な断面の断面積が第1の発熱部の断面積より小さいので電気抵抗が大きい。従って、発熱体を電流が流れるとき第2の発熱部は第1の発熱部より温度が高くなる。長い板状の発熱体の端部は中央部より温度が低くなるので、端部に第2の発熱部を設けると、発熱体の全長にわたって温度分布を均一にすることができる。なお、後述する実施例において、本発明における保持手段を保持ブロックとして説明する。
【0006】
本発明の他の観点の赤外線電球は、板厚と板幅との比が1:5以上である実質的に板状の発熱体、
前記発熱体の両端に取り付けられ、導電性材料で形成された保持手段、
前記発熱体と前記保持手段を封入する硝子管、及び
前記保持手段にそれぞれ電気的に接続され、端末が硝子管外へ導出されたリード線、を有する赤外線電球であって、
前記発熱体は、板幅を規定する板幅面に形成された第1の発熱部と、前記発熱体の予め定められた位置に貫通孔を有する第2の発熱部とを有し、
前記発熱体において、前記第2の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積が前記第1の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積より小さく形成され、前記第1の発熱部と第2の発熱部との境界部が曲面又は斜面により形成され、通電により前記境界部における長手方向の発熱温度が徐々に変わるよう構成してもよい。
【0007】
本発明の赤外線電球においては、第2の発熱部を発熱体における保持手段の近傍に形成して、保持手段近傍の発熱体の発熱温度を上昇させ、発熱体の全長における温度分布を均一にすることができる。
【0008】
また、本発明の赤外線電球においては、第2の発熱部が発熱体の長手方向と平行な長軸を有する長円形の貫通孔により構成され、長円形の内周面が曲面又は斜面により形成してもよい。
【0009】
さらに、本発明の赤外線電球においては、硝子管の壁面の一部に反射率の高い物質の膜を形成し、発熱体から放射される熱を集中させることができる。
【0010】
本発明の加熱・暖房装置は、板厚と板幅との比が1:5以上である実質的に板状の発熱体、
前記発熱体の両端に取り付けられ、導電性材料で形成された保持手段、
前記発熱体と前記保持手段を封入する硝子管、及び
前記保持手段にそれぞれ電気的に接続され、端末が硝子管外へ導出されたリード線、を有する赤外線電球が組み込まれた加熱・暖房装置であって、
前記発熱体は、実質的に同じ板幅を有する板幅面に形成された第1の発熱部と、前記発熱体の予め定められた位置に形成され、前記第1の発熱部の板幅より狭い板幅面を有する第2の発熱部とを有し、
前記発熱体において、前記第2の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積が前記第1の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積より小さく形成され、前記第1の発熱部と第2の発熱部との境界部が曲面又は斜面により形成され、通電により前記境界部における長手方向の発熱温度が徐々に変わるよう構成されている。本発明の加熱・暖房装置は発熱体の全長にわたって均一な温度分布を有する赤外線電球を用いるので、被加熱物を均一に加熱することができる。
【0011】
本発明の他の観点の加熱・暖房装置は、板厚と板幅との比が1:5以上である実質的に板状の発熱体、
前記発熱体の両端に取り付けられ、導電性材料で形成された保持手段、
前記発熱体と前記保持手段を封入する硝子管、及び
前記保持手段にそれぞれ電気的に接続され、端末が硝子管外へ導出されたリード線、を有する赤外線電球が組み込まれた加熱・暖房装置であって、
前記発熱体は、板幅を規定する板幅面に形成された第1の発熱部と、前記発熱体の予め定められた位置に貫通孔を有する第2の発熱部とを有し、
前記発熱体において、前記第2の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積が前記第1の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積より小さく形成され、前記第1の発熱部と第2の発熱部との境界部が曲面又は斜面により形成され、通電により前記境界部における長手方向の発熱温度が徐々に変わるよう構成してもよい。
【0012】
本発明の加熱・暖房装置においては、第2の発熱部を発熱体における保持手段の近傍に形成して、保持手段近傍の発熱体の発熱温度を上昇させ、発熱体の全長における温度分布を均一にすることができる。
【0013】
また、本発明の加熱・暖房装置においては、第2の発熱部が発熱体の長手方向と平行な長軸を有する長円形の貫通孔により構成され、長円形の内周面が曲面又は斜面により形成してもよい。
【0014】
また、本発明の加熱・暖房装置においては、硝子管の壁面の一部に反射率の高い物質の膜を形成し、被加熱物に対して前記膜により反射された熱が集中するよう構成できる。
【0015】
また、本発明の加熱・暖房装置においては、赤外線電球に反射部材を設け、反射部材の反射面に対向して被加熱物を配置するよう構成して、被加熱物を効率高く加熱することができる。
【0016】
また、本発明の加熱・暖房装置においては、赤外線電球を筒状のケースの中に挿入し、筒状のケースの近傍に被加熱物を配置し、赤外線電球の硝子管を保護することができ、寿命の長い製品を構築できる。
【0017】
さらに、本発明の加熱・暖房装置においては、筒状のケースが、アルミニウム系物質を含む材料、鉄系物質を含む材料、セラミックス系物質を含む材料のいずれかの材料で構成し、汎用性の高い加熱・暖房装置となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、発熱体における第1の発熱部と第2の発熱部の発熱温度を変えることができるため、赤外線電球の長手方向の温度分布を所望のものにすることができるとともに、第1の発熱部と第2の発熱部の境界部の長手方向の断面積が徐々に変化するよう構成されているため、境界部の温度変化がゆるやかになり、熱ストレスにより発熱体が溶断、破損することが防止された信頼性の高い赤外線電球及び加熱・暖房装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の赤外線電球の好適な実施例について、添付の図1から図9を参照しつつ説明する。
【0020】
《第1の実施例》
図1の(a)は本発明の第1の実施例における赤外線電球18の構造を示す斜視図である。図1の(a)は赤外線電球18の両端部のみを示し中央部分は図示を省略している。図1の(b)及び(c)は図1の(a)のIb−Ib断面図の2つの例である。図2は、図1の(a)に示す赤外線電球18の長手方向(以下、軸方向という)の温度分布を示すグラフである。
【0021】
図1において、赤外線電球18は、長い板状の発熱体2、保持ブロック3及び内部リード線14が硝子管1内に封入されて構成されている。内部リード線14は、モリブデン箔7を経て外部リード線8に接続されている。発熱体2は、長い棒状又は板状に成形された炭素系物質であり、黒鉛などの結晶化炭素の基材に窒素化合物の抵抗値調整物質、及びアモルファス炭素を加えた混合物からなる。この発熱体2の寸法は例えば、板幅Wが6mm、板厚Tが0.5mm、長さが300mmである。発熱体2は、板厚と板幅との比が1:5以上であるのが望ましい。板幅Wを板厚Tより大きくすることにより、板幅Wを有する面から出る熱が板厚Tを有する面から出る熱より多くなり、発熱体2の放熱に指向性を持たすことができる。発熱体2は、第1の発熱部11と、第1の発熱部11の中に部分的に形成され、第1の発熱部11の板厚Tより板厚tの薄い長円形の領域である第2の発熱部10とを有する。第2の発熱部10を長円形にすることにより、第1の発熱部11と第2の発熱部10の境界部では軸方向(長手方向)に垂直な断面の断面積が長手方向に沿って徐々に変わることになる。
【0022】
第2の発熱部10の形状は長円形に限られるものではなく、ひし形、六角形など様々な形状にすることができる。第1の発熱部11と第2の発熱部10との境界部R0、すなわち前記長円形の縁部に図1の(c)に示すように曲面や斜面を設けてもよい。第1の発熱部11と第2の発熱部10の境界部R0は図1の(d)に示すように階段状の輪部を有するものでもよい。第2の発熱部10は、発熱体2を成形した後、加工治具にて第1の発熱部11の所定部分を切削して形成してもよい。円柱状の保持ブロック3は導電性材料で形成されており、発熱体2の両端に電気的に接続されるように取り付けられている。保持ブロック3は黒鉛等の、発熱体2の熱がコイル状の内部リード線4に伝わりにくい材料で作るのが好ましい。保持ブロック3は、モリブデンやタングステン等の弾性を有する金属線をらせん状に成形した内部リード線14のコイル部5に挿入される。コイル部5は保持ブロック3の外周面に密着して巻き付き、両者は電気的に接続される。コイル部5は弾性を有するスプリング部6を経てリード線14Aにつながっている。リード線14Aとコイル部5との間にスプリング部5を設けることにより、発熱体2の膨張による寸法変化を吸収できる。
【0023】
図2は、図1に示す赤外線電球の軸方向の温度分布を示すグラフである。温度の測定は、カラーメータによる色温度の測定又はサーモパイルによる輻射熱の測定によって行った。図2の横軸は赤外線電球の軸方向の距離を示し、原点0は図1の保持ブロック3とコイル部5の境界部に対応している。縦軸は温度を示す。図2によれば、第1の発熱部11の温度がK0であり、第2の発熱部10の温度はK0よりも高いK1である。第2の発熱部10の板厚を第1の発熱部11の板厚より薄くしたことにより、発熱体2の単位長当たりの抵抗は、第2の発熱部10が第1の発熱部11より大きい。そのため発熱体2を流れる電流による第2の発熱部10の単位長当たりのジュール熱は第1の発熱部11のジュール熱より多く、第2の発熱部10の温度は第1の発熱部11の温度より高くなる。
【0024】
第2の発熱部10の板厚t、面積、形状を変えることにより、所望の温度分布を有する赤外線電球が実現できる。図3、図4、図5及び図6は、それぞれ異なる形状の第2の発熱部を有する発熱体2a、2b、2c及び2dの斜視図である。図3の(a)の第2の発熱部10aは、断面図(b)に示すように長円形の貫通孔10eを有する。図3の(c)に示すように貫通孔の周囲をゆるやかな曲面又は斜面にしてもよい。ゆるやかな斜面にすることにより、貫通孔の周囲の温度勾配をゆるやかにすることができる。
【0025】
図4の(a)の第2の発熱部10bは2個の円形の孔又は凹みを設けている。図4の(b)に2個の円形の孔を設けたものの断面図を示す。また図4の(c)に2個の円形の凹みを設けたものの断面図を示す。図4の(c)に示すように、円形の凹みの周囲を曲面又はゆるやかな斜面にするのが望ましい。
図5の(a)の第2の発熱部10cは、図5の(b)の断面図に示すように発熱体2cの一部分の厚さを全幅にわたって薄くしている。薄くした部分と元の厚さの部分の境界部R3はゆるやかな斜面にして、熱勾配をゆるやかにしている。
図6は、発熱体2dの幅Wを第2の発熱部10dの部分で狭くしている。幅を狭くした部分と元の幅Wとの境界部R4は曲線でつながる形状にしている。これにより温度勾配をゆるやかにしている。
【0026】
第2の発熱部の形状は前記図3から図6に示す形状に限られるものではなく、発熱体2の単位長当たりの抵抗が、軸方向で局部的に他の部分より大きくなるような形状であればどのような形状でもよい。
【0027】
《第2実施例》
図7の(a)は本発明の第2実施例の赤外線電球の斜視図である。図7の(a)において、第1実施例のものとの差異は、硝子管1の内面又は外面に反射率の高い材料による反射膜12を設けた点である。反射膜12を斜線で示している。その他の構成は第1実施例のものと同じである。反射膜12は、硝子管1の円周の2分の1程度の部分に設けるのが望ましい。反射膜12の軸方向の長さは発熱体の長さとほぼ同じである。反射膜12は、例えば、金箔を硝子管の壁面に張り付け焼成することによって形成することができる。この赤外線電球を用いるときは、硝子管1の反射膜12を有しない面を被加熱物に向けて置く。この構成により、発熱体2から反射膜12の方向に放射された熱は反射膜12により反射され、被加熱物に与えられるので、赤外線電球の熱効率が高くなる。反射膜12は、窒化チタン、銀、アルミニウム等の膜を用いてもよい。膜厚はある程度厚い方がよい。反射膜12は硝子管1の内面、外面のいずれの面に設けてもよい。反射膜12と発熱体2との関係については、図7の(b)の断面図に示すように、反射膜12の円弧の端を結ぶ線12Aと発熱体2の幅の広い面が平行になるように配置するのがよい。
【0028】
《第3実施例》
図8の(a)は、本発明の第3実施例の、赤外線電球を用いた加熱・暖房装置の斜視図である。図8の(a)において赤外線電球18は第1実施例のものと同じである。本実施例では断面が半円の反射板13を赤外線電球18の近傍に設けている。反射板13の長さは発熱体2の長さとほぼ等しくなされている。反射板13は、反射率が高くなるように鏡面になされたアルミニウム板、ステンレススチール板等が望ましい。また鉄板等の表面に、金、窒化チタン、銀、アルミニウム等の皮膜を設けて鏡面にしたものでもよい。反射板13と発熱体2との関係については、図8の(b)の断面図に示すように、反射板13の円弧の端部を結ぶ線13Aと発熱体2の幅の広い面とが平行になるように配置するのがよい。反射板13を設けたことにより、発熱体2から反射板13に向かって放射される熱は反射板13で反射され、反射板13を有しない方向に向けられる。その結果発熱体2から放射される熱を反射板13を有しない方向に集中させることができ赤外線電球13の熱の利用効率が向上する。
【0029】
《第4実施例》
図9は本発明の第4実施例の、赤外線電球を用いた加熱・暖房装置の斜視図である。赤外線電球18は第1実施例のものと同じである。本実施例では、硝子管1の外径より大きい内径を有する円筒状のケース24の中に赤外線電球18を挿入している。ケース24の材質は、鉄、アルミニウムなどの金属、あるいは硝子、セラミック等が望ましい。低温の加熱・暖房装置ではケース24を樹脂や紙等で形成してもよい。ケース24の内面に熱吸収のよい皮膜、例えば黒色の皮膜等を設けるとケース24の温度の上昇速度が速くなる。ケース24の軸方向の温度分布が均一になるように、発熱体2の温度分布を設定する。そのために、発熱体2の適切な位置に第2の発熱部10を設けるとよい。
【0030】
本実施例の加熱装置は魚・肉など食品の加熱に用いることができる。食品を加熱すると、肉汁や塩分を含む液体が飛散することが多い。このような液体が硝子管1に付着すると、硝子管1の表面が汚れる。ときには硝子管1が割れる場合がある。本実施例では、ケース24が硝子管1を保護するので上記の問題は起こらない。被加熱物は、ケース24から離して配置してもよく、また、必要に応じてケース24に接触させてもよい。
【0031】
本発明の赤外線電球は暖房機器;例えばストーブ・コタツ・エアコン・脱衣場、浴室暖房・赤外線治療器等、乾燥機器;例えば衣類乾燥・布団乾燥・食品乾燥・生ゴミ処理機・加熱型消臭器、浴室乾燥器等、調理器;例えばオーブン・オーブンレンジ・オーブントースター・トースター・ロースター・保温器・焼き鳥器・コンロ・焙煎・冷蔵庫解凍用等、理容器;例えばドライヤー・パーマネント加熱器等、シートに文字や画像等を定着する機器;例えばLBP・PPC・ファックスなどトナーを媒体として表示する機器や熱を利用してフィルム原本から被転写体へ熱転写する機器等の熱源として使用可能である。
【0032】
以上、各実施例で詳細に説明したところから明らかなように、本発明は次の効果を有する。
発熱体の第1の発熱部と第2の発熱部の温度を変えることができるので、赤外線電球の長手方向の温度分布を所望のものにすることができる。第1の発熱部と第2の発熱部の境界部の断面が徐々に変化するように、第2の発熱部を円などにしているので境界部の温度変化はゆるやかになる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、加熱装置、暖房装置などの熱源として使用される赤外線電球において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a)は本発明の第1の実施例における赤外線電球の斜視図である。(b)及び(c)は(a)のIb−Ib断面図である。(d)は他の例の発熱体の部分図である。
【図2】図1の赤外線電球の発熱体の軸方向の温度分布図である。
【図3】(a)は赤外線電球の発熱体の第1の発熱部、第2の発熱部の部分斜視図である。(b)及び(c)は(a)のIIIb−IIIb断面図である。
【図4】(a)は赤外線電球の発熱体の第1の発熱部、第2の発熱部の部分斜視図である。(b)及び(c)は(a)のIVb−IVb断面図である。
【図5】(a)は赤外線電球の発熱体の第1の発熱部、第2の発熱部の部分斜視図である。(b)は(a)のVb−Vb断面図である。
【図6】赤外線電球の発熱体の第1の発熱部、第2の発熱部の部分斜視図である。
【図7】(a)は本発明に係る第2の実施例における赤外線電球の斜視図である。(b)は(a)の中央部の断面図である。
【図8】(a)は本発明に係る第3の実施例における赤外線電球の斜視図である。(b)は(a)の中央部の断面図である。
【図9】本発明に係る第4の実施例における赤外線電球の斜視図である。
【図10】従来の赤外線電球の正面図である。
【図11】図10の赤外線電球の軸方向の温度分布図である。
【符号の説明】
【0035】
1 硝子管
2 発熱体
3 導電性ブロック
4 内部リード線
5 コイル状部
6 スプリング状部
7 モリブデン箔
8 外部リード線
9 温度曲線
10 第2の発熱部
11 第1の発熱部
12 反射膜
13 反射板
24 ケース
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、暖房装置などの発熱機器に使用される赤外線電球に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来熱源として使用されている赤外線電球としては、ニクロム線(Ni,Cr,Fe、Alを含む合金)線やタングステン(W)線をらせん状に成形した発熱体を硝子管内に挿入し、空気中または、所定の雰囲気中で発熱させ、直接または反射板などを併用して熱を放射するものがある。
図10は、従来の赤外線電球の正面図である。図において、らせん状に巻かれた発熱体6と内部リード4が硝子管1に封入され、硝子管1の端部の封止部の金属箔7を介して内部リード4と外部リード8が電気的に接続されている。図11は発熱体6の中心軸方向の距離と温度の関係(発熱体温度分布)を示すグラフである。らせん状の発熱体6の中心軸に垂直な断面はどこでも均一な熱輻射強度を有するが、中心軸の方向では両端部の熱輻射強度が放熱のため中央部よりも低くなる傾向にある。らせん状に成形された発熱体において温度分布を変えるためにはらせんのピッチを変える。局部的に温度を上げるためにはらせんのピッチを狭くしなければならないが、あまり狭くしすぎると隣り合う線が接してしまうことがあった。
【0003】
これらの問題点を解決するために、従来のらせん状の発熱体の代りに、棒状に成形した炭素系物質を発熱体として使用する赤外線電球が提案されている。炭素系物質は赤外線放射率が78〜84%と高いため、発熱体として炭素系物質を用いる赤外線電球の赤外線放射率も高くなる。
【特許文献1】実開昭49−103030号公報
【特許文献2】特開平6−275368号公報
【特許文献3】特開平3−163779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のらせん状の金属発熱体を有する赤外線電球においては次の問題を有している。図10において、発熱体6のB、C間はほぼ均一な温度分布を示す。しかし、端部のA、B間及びC、D間は均一な温度分布を示さない。この状態を図11に示す。端部の温度分布を均一にするには、巻線のピッチを端部で細かくする方法が採られているが、ピッチをあまり細かくすると隣り合う巻線が接触するおそれがある。また、巻線が発熱中は軟化して垂れ下がることもある。垂れ下がり(当技術分野ではサグ(sag)という)を防止するためには多数の保持部材(図示省略)を設ける必要がある。保持部材を設けることにより、コストが上昇するとともに信頼性が低下するおそれがある。
本発明は上記のような問題点を解決するためになされたものであり、簡単な構成で、所望の発熱体温度分布が得られる低コストの赤外線電球を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の赤外線電球は、板厚と板幅との比が1:5以上である実質的に板状の発熱体、
前記発熱体の両端に取り付けられ、導電性材料で形成された保持手段、
前記発熱体と前記保持手段を封入する硝子管、及び
前記保持手段にそれぞれ電気的に接続され、端末が硝子管外へ導出されたリード線、を有する赤外線電球であって、
前記発熱体は、実質的に同じ板幅を有する板幅面に形成された第1の発熱部と、前記発熱体の予め定められた位置に形成され、前記第1の発熱部の板幅より狭い板幅面を有する第2の発熱部とを有し、
前記発熱体において、前記第2の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積が前記第1の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積より小さく形成され、前記第1の発熱部と第2の発熱部との境界部が曲面又は斜面により形成され、通電により前記境界部における長手方向の発熱温度が徐々に変わるよう構成されている。
第2の発熱部は、長手方向に垂直な断面の断面積が第1の発熱部の断面積より小さいので電気抵抗が大きい。従って、発熱体を電流が流れるとき第2の発熱部は第1の発熱部より温度が高くなる。長い板状の発熱体の端部は中央部より温度が低くなるので、端部に第2の発熱部を設けると、発熱体の全長にわたって温度分布を均一にすることができる。なお、後述する実施例において、本発明における保持手段を保持ブロックとして説明する。
【0006】
本発明の他の観点の赤外線電球は、板厚と板幅との比が1:5以上である実質的に板状の発熱体、
前記発熱体の両端に取り付けられ、導電性材料で形成された保持手段、
前記発熱体と前記保持手段を封入する硝子管、及び
前記保持手段にそれぞれ電気的に接続され、端末が硝子管外へ導出されたリード線、を有する赤外線電球であって、
前記発熱体は、板幅を規定する板幅面に形成された第1の発熱部と、前記発熱体の予め定められた位置に貫通孔を有する第2の発熱部とを有し、
前記発熱体において、前記第2の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積が前記第1の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積より小さく形成され、前記第1の発熱部と第2の発熱部との境界部が曲面又は斜面により形成され、通電により前記境界部における長手方向の発熱温度が徐々に変わるよう構成してもよい。
【0007】
本発明の赤外線電球においては、第2の発熱部を発熱体における保持手段の近傍に形成して、保持手段近傍の発熱体の発熱温度を上昇させ、発熱体の全長における温度分布を均一にすることができる。
【0008】
また、本発明の赤外線電球においては、第2の発熱部が発熱体の長手方向と平行な長軸を有する長円形の貫通孔により構成され、長円形の内周面が曲面又は斜面により形成してもよい。
【0009】
さらに、本発明の赤外線電球においては、硝子管の壁面の一部に反射率の高い物質の膜を形成し、発熱体から放射される熱を集中させることができる。
【0010】
本発明の加熱・暖房装置は、板厚と板幅との比が1:5以上である実質的に板状の発熱体、
前記発熱体の両端に取り付けられ、導電性材料で形成された保持手段、
前記発熱体と前記保持手段を封入する硝子管、及び
前記保持手段にそれぞれ電気的に接続され、端末が硝子管外へ導出されたリード線、を有する赤外線電球が組み込まれた加熱・暖房装置であって、
前記発熱体は、実質的に同じ板幅を有する板幅面に形成された第1の発熱部と、前記発熱体の予め定められた位置に形成され、前記第1の発熱部の板幅より狭い板幅面を有する第2の発熱部とを有し、
前記発熱体において、前記第2の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積が前記第1の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積より小さく形成され、前記第1の発熱部と第2の発熱部との境界部が曲面又は斜面により形成され、通電により前記境界部における長手方向の発熱温度が徐々に変わるよう構成されている。本発明の加熱・暖房装置は発熱体の全長にわたって均一な温度分布を有する赤外線電球を用いるので、被加熱物を均一に加熱することができる。
【0011】
本発明の他の観点の加熱・暖房装置は、板厚と板幅との比が1:5以上である実質的に板状の発熱体、
前記発熱体の両端に取り付けられ、導電性材料で形成された保持手段、
前記発熱体と前記保持手段を封入する硝子管、及び
前記保持手段にそれぞれ電気的に接続され、端末が硝子管外へ導出されたリード線、を有する赤外線電球が組み込まれた加熱・暖房装置であって、
前記発熱体は、板幅を規定する板幅面に形成された第1の発熱部と、前記発熱体の予め定められた位置に貫通孔を有する第2の発熱部とを有し、
前記発熱体において、前記第2の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積が前記第1の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積より小さく形成され、前記第1の発熱部と第2の発熱部との境界部が曲面又は斜面により形成され、通電により前記境界部における長手方向の発熱温度が徐々に変わるよう構成してもよい。
【0012】
本発明の加熱・暖房装置においては、第2の発熱部を発熱体における保持手段の近傍に形成して、保持手段近傍の発熱体の発熱温度を上昇させ、発熱体の全長における温度分布を均一にすることができる。
【0013】
また、本発明の加熱・暖房装置においては、第2の発熱部が発熱体の長手方向と平行な長軸を有する長円形の貫通孔により構成され、長円形の内周面が曲面又は斜面により形成してもよい。
【0014】
また、本発明の加熱・暖房装置においては、硝子管の壁面の一部に反射率の高い物質の膜を形成し、被加熱物に対して前記膜により反射された熱が集中するよう構成できる。
【0015】
また、本発明の加熱・暖房装置においては、赤外線電球に反射部材を設け、反射部材の反射面に対向して被加熱物を配置するよう構成して、被加熱物を効率高く加熱することができる。
【0016】
また、本発明の加熱・暖房装置においては、赤外線電球を筒状のケースの中に挿入し、筒状のケースの近傍に被加熱物を配置し、赤外線電球の硝子管を保護することができ、寿命の長い製品を構築できる。
【0017】
さらに、本発明の加熱・暖房装置においては、筒状のケースが、アルミニウム系物質を含む材料、鉄系物質を含む材料、セラミックス系物質を含む材料のいずれかの材料で構成し、汎用性の高い加熱・暖房装置となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、発熱体における第1の発熱部と第2の発熱部の発熱温度を変えることができるため、赤外線電球の長手方向の温度分布を所望のものにすることができるとともに、第1の発熱部と第2の発熱部の境界部の長手方向の断面積が徐々に変化するよう構成されているため、境界部の温度変化がゆるやかになり、熱ストレスにより発熱体が溶断、破損することが防止された信頼性の高い赤外線電球及び加熱・暖房装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の赤外線電球の好適な実施例について、添付の図1から図9を参照しつつ説明する。
【0020】
《第1の実施例》
図1の(a)は本発明の第1の実施例における赤外線電球18の構造を示す斜視図である。図1の(a)は赤外線電球18の両端部のみを示し中央部分は図示を省略している。図1の(b)及び(c)は図1の(a)のIb−Ib断面図の2つの例である。図2は、図1の(a)に示す赤外線電球18の長手方向(以下、軸方向という)の温度分布を示すグラフである。
【0021】
図1において、赤外線電球18は、長い板状の発熱体2、保持ブロック3及び内部リード線14が硝子管1内に封入されて構成されている。内部リード線14は、モリブデン箔7を経て外部リード線8に接続されている。発熱体2は、長い棒状又は板状に成形された炭素系物質であり、黒鉛などの結晶化炭素の基材に窒素化合物の抵抗値調整物質、及びアモルファス炭素を加えた混合物からなる。この発熱体2の寸法は例えば、板幅Wが6mm、板厚Tが0.5mm、長さが300mmである。発熱体2は、板厚と板幅との比が1:5以上であるのが望ましい。板幅Wを板厚Tより大きくすることにより、板幅Wを有する面から出る熱が板厚Tを有する面から出る熱より多くなり、発熱体2の放熱に指向性を持たすことができる。発熱体2は、第1の発熱部11と、第1の発熱部11の中に部分的に形成され、第1の発熱部11の板厚Tより板厚tの薄い長円形の領域である第2の発熱部10とを有する。第2の発熱部10を長円形にすることにより、第1の発熱部11と第2の発熱部10の境界部では軸方向(長手方向)に垂直な断面の断面積が長手方向に沿って徐々に変わることになる。
【0022】
第2の発熱部10の形状は長円形に限られるものではなく、ひし形、六角形など様々な形状にすることができる。第1の発熱部11と第2の発熱部10との境界部R0、すなわち前記長円形の縁部に図1の(c)に示すように曲面や斜面を設けてもよい。第1の発熱部11と第2の発熱部10の境界部R0は図1の(d)に示すように階段状の輪部を有するものでもよい。第2の発熱部10は、発熱体2を成形した後、加工治具にて第1の発熱部11の所定部分を切削して形成してもよい。円柱状の保持ブロック3は導電性材料で形成されており、発熱体2の両端に電気的に接続されるように取り付けられている。保持ブロック3は黒鉛等の、発熱体2の熱がコイル状の内部リード線4に伝わりにくい材料で作るのが好ましい。保持ブロック3は、モリブデンやタングステン等の弾性を有する金属線をらせん状に成形した内部リード線14のコイル部5に挿入される。コイル部5は保持ブロック3の外周面に密着して巻き付き、両者は電気的に接続される。コイル部5は弾性を有するスプリング部6を経てリード線14Aにつながっている。リード線14Aとコイル部5との間にスプリング部5を設けることにより、発熱体2の膨張による寸法変化を吸収できる。
【0023】
図2は、図1に示す赤外線電球の軸方向の温度分布を示すグラフである。温度の測定は、カラーメータによる色温度の測定又はサーモパイルによる輻射熱の測定によって行った。図2の横軸は赤外線電球の軸方向の距離を示し、原点0は図1の保持ブロック3とコイル部5の境界部に対応している。縦軸は温度を示す。図2によれば、第1の発熱部11の温度がK0であり、第2の発熱部10の温度はK0よりも高いK1である。第2の発熱部10の板厚を第1の発熱部11の板厚より薄くしたことにより、発熱体2の単位長当たりの抵抗は、第2の発熱部10が第1の発熱部11より大きい。そのため発熱体2を流れる電流による第2の発熱部10の単位長当たりのジュール熱は第1の発熱部11のジュール熱より多く、第2の発熱部10の温度は第1の発熱部11の温度より高くなる。
【0024】
第2の発熱部10の板厚t、面積、形状を変えることにより、所望の温度分布を有する赤外線電球が実現できる。図3、図4、図5及び図6は、それぞれ異なる形状の第2の発熱部を有する発熱体2a、2b、2c及び2dの斜視図である。図3の(a)の第2の発熱部10aは、断面図(b)に示すように長円形の貫通孔10eを有する。図3の(c)に示すように貫通孔の周囲をゆるやかな曲面又は斜面にしてもよい。ゆるやかな斜面にすることにより、貫通孔の周囲の温度勾配をゆるやかにすることができる。
【0025】
図4の(a)の第2の発熱部10bは2個の円形の孔又は凹みを設けている。図4の(b)に2個の円形の孔を設けたものの断面図を示す。また図4の(c)に2個の円形の凹みを設けたものの断面図を示す。図4の(c)に示すように、円形の凹みの周囲を曲面又はゆるやかな斜面にするのが望ましい。
図5の(a)の第2の発熱部10cは、図5の(b)の断面図に示すように発熱体2cの一部分の厚さを全幅にわたって薄くしている。薄くした部分と元の厚さの部分の境界部R3はゆるやかな斜面にして、熱勾配をゆるやかにしている。
図6は、発熱体2dの幅Wを第2の発熱部10dの部分で狭くしている。幅を狭くした部分と元の幅Wとの境界部R4は曲線でつながる形状にしている。これにより温度勾配をゆるやかにしている。
【0026】
第2の発熱部の形状は前記図3から図6に示す形状に限られるものではなく、発熱体2の単位長当たりの抵抗が、軸方向で局部的に他の部分より大きくなるような形状であればどのような形状でもよい。
【0027】
《第2実施例》
図7の(a)は本発明の第2実施例の赤外線電球の斜視図である。図7の(a)において、第1実施例のものとの差異は、硝子管1の内面又は外面に反射率の高い材料による反射膜12を設けた点である。反射膜12を斜線で示している。その他の構成は第1実施例のものと同じである。反射膜12は、硝子管1の円周の2分の1程度の部分に設けるのが望ましい。反射膜12の軸方向の長さは発熱体の長さとほぼ同じである。反射膜12は、例えば、金箔を硝子管の壁面に張り付け焼成することによって形成することができる。この赤外線電球を用いるときは、硝子管1の反射膜12を有しない面を被加熱物に向けて置く。この構成により、発熱体2から反射膜12の方向に放射された熱は反射膜12により反射され、被加熱物に与えられるので、赤外線電球の熱効率が高くなる。反射膜12は、窒化チタン、銀、アルミニウム等の膜を用いてもよい。膜厚はある程度厚い方がよい。反射膜12は硝子管1の内面、外面のいずれの面に設けてもよい。反射膜12と発熱体2との関係については、図7の(b)の断面図に示すように、反射膜12の円弧の端を結ぶ線12Aと発熱体2の幅の広い面が平行になるように配置するのがよい。
【0028】
《第3実施例》
図8の(a)は、本発明の第3実施例の、赤外線電球を用いた加熱・暖房装置の斜視図である。図8の(a)において赤外線電球18は第1実施例のものと同じである。本実施例では断面が半円の反射板13を赤外線電球18の近傍に設けている。反射板13の長さは発熱体2の長さとほぼ等しくなされている。反射板13は、反射率が高くなるように鏡面になされたアルミニウム板、ステンレススチール板等が望ましい。また鉄板等の表面に、金、窒化チタン、銀、アルミニウム等の皮膜を設けて鏡面にしたものでもよい。反射板13と発熱体2との関係については、図8の(b)の断面図に示すように、反射板13の円弧の端部を結ぶ線13Aと発熱体2の幅の広い面とが平行になるように配置するのがよい。反射板13を設けたことにより、発熱体2から反射板13に向かって放射される熱は反射板13で反射され、反射板13を有しない方向に向けられる。その結果発熱体2から放射される熱を反射板13を有しない方向に集中させることができ赤外線電球13の熱の利用効率が向上する。
【0029】
《第4実施例》
図9は本発明の第4実施例の、赤外線電球を用いた加熱・暖房装置の斜視図である。赤外線電球18は第1実施例のものと同じである。本実施例では、硝子管1の外径より大きい内径を有する円筒状のケース24の中に赤外線電球18を挿入している。ケース24の材質は、鉄、アルミニウムなどの金属、あるいは硝子、セラミック等が望ましい。低温の加熱・暖房装置ではケース24を樹脂や紙等で形成してもよい。ケース24の内面に熱吸収のよい皮膜、例えば黒色の皮膜等を設けるとケース24の温度の上昇速度が速くなる。ケース24の軸方向の温度分布が均一になるように、発熱体2の温度分布を設定する。そのために、発熱体2の適切な位置に第2の発熱部10を設けるとよい。
【0030】
本実施例の加熱装置は魚・肉など食品の加熱に用いることができる。食品を加熱すると、肉汁や塩分を含む液体が飛散することが多い。このような液体が硝子管1に付着すると、硝子管1の表面が汚れる。ときには硝子管1が割れる場合がある。本実施例では、ケース24が硝子管1を保護するので上記の問題は起こらない。被加熱物は、ケース24から離して配置してもよく、また、必要に応じてケース24に接触させてもよい。
【0031】
本発明の赤外線電球は暖房機器;例えばストーブ・コタツ・エアコン・脱衣場、浴室暖房・赤外線治療器等、乾燥機器;例えば衣類乾燥・布団乾燥・食品乾燥・生ゴミ処理機・加熱型消臭器、浴室乾燥器等、調理器;例えばオーブン・オーブンレンジ・オーブントースター・トースター・ロースター・保温器・焼き鳥器・コンロ・焙煎・冷蔵庫解凍用等、理容器;例えばドライヤー・パーマネント加熱器等、シートに文字や画像等を定着する機器;例えばLBP・PPC・ファックスなどトナーを媒体として表示する機器や熱を利用してフィルム原本から被転写体へ熱転写する機器等の熱源として使用可能である。
【0032】
以上、各実施例で詳細に説明したところから明らかなように、本発明は次の効果を有する。
発熱体の第1の発熱部と第2の発熱部の温度を変えることができるので、赤外線電球の長手方向の温度分布を所望のものにすることができる。第1の発熱部と第2の発熱部の境界部の断面が徐々に変化するように、第2の発熱部を円などにしているので境界部の温度変化はゆるやかになる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、加熱装置、暖房装置などの熱源として使用される赤外線電球において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a)は本発明の第1の実施例における赤外線電球の斜視図である。(b)及び(c)は(a)のIb−Ib断面図である。(d)は他の例の発熱体の部分図である。
【図2】図1の赤外線電球の発熱体の軸方向の温度分布図である。
【図3】(a)は赤外線電球の発熱体の第1の発熱部、第2の発熱部の部分斜視図である。(b)及び(c)は(a)のIIIb−IIIb断面図である。
【図4】(a)は赤外線電球の発熱体の第1の発熱部、第2の発熱部の部分斜視図である。(b)及び(c)は(a)のIVb−IVb断面図である。
【図5】(a)は赤外線電球の発熱体の第1の発熱部、第2の発熱部の部分斜視図である。(b)は(a)のVb−Vb断面図である。
【図6】赤外線電球の発熱体の第1の発熱部、第2の発熱部の部分斜視図である。
【図7】(a)は本発明に係る第2の実施例における赤外線電球の斜視図である。(b)は(a)の中央部の断面図である。
【図8】(a)は本発明に係る第3の実施例における赤外線電球の斜視図である。(b)は(a)の中央部の断面図である。
【図9】本発明に係る第4の実施例における赤外線電球の斜視図である。
【図10】従来の赤外線電球の正面図である。
【図11】図10の赤外線電球の軸方向の温度分布図である。
【符号の説明】
【0035】
1 硝子管
2 発熱体
3 導電性ブロック
4 内部リード線
5 コイル状部
6 スプリング状部
7 モリブデン箔
8 外部リード線
9 温度曲線
10 第2の発熱部
11 第1の発熱部
12 反射膜
13 反射板
24 ケース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚と板幅との比が1:5以上である実質的に板状の発熱体、
前記発熱体の両端に取り付けられ、導電性材料で形成された保持手段、
前記発熱体と前記保持手段を封入する硝子管、及び
前記保持手段にそれぞれ電気的に接続され、端末が硝子管外へ導出されたリード線、を有する赤外線電球であって、
前記発熱体は、実質的に同じ板幅を有する板幅面に形成された第1の発熱部と、前記発熱体の予め定められた位置に形成され、前記第1の発熱部の板幅より狭い板幅面を有する第2の発熱部とを有し、
前記発熱体において、前記第2の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積が前記第1の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積より小さく形成され、前記第1の発熱部と第2の発熱部との境界部が曲面又は斜面により形成され、通電により前記境界部における長手方向の発熱温度が徐々に変わるよう構成された赤外線電球。
【請求項2】
板厚と板幅との比が1:5以上である実質的に板状の発熱体、
前記発熱体の両端に取り付けられ、導電性材料で形成された保持手段、
前記発熱体と前記保持手段を封入する硝子管、及び
前記保持手段にそれぞれ電気的に接続され、端末が硝子管外へ導出されたリード線、を有する赤外線電球であって、
前記発熱体は、板幅を規定する板幅面に形成された第1の発熱部と、前記発熱体の予め定められた位置に貫通孔を有する第2の発熱部とを有し、
前記発熱体において、前記第2の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積が前記第1の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積より小さく形成され、前記第1の発熱部と第2の発熱部との境界部が曲面又は斜面により形成され、通電により前記境界部における長手方向の発熱温度が徐々に変わるよう構成された赤外線電球。
【請求項3】
前記第2の発熱部を前記発熱体における前記保持手段の近傍に形成された請求項1又は2に記載の赤外線電球。
【請求項4】
前記第2の発熱部が前記発熱体の長手方向と平行な長軸を有する長円形の貫通孔により構成され、前記長円形の内周面が曲面又は斜面により形成された請求項2に記載の赤外線電球。
【請求項5】
前記硝子管の壁面の一部に反射率の高い物質の膜を形成したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の赤外線電球。
【請求項6】
板厚と板幅との比が1:5以上である実質的に板状の発熱体、
前記発熱体の両端に取り付けられ、導電性材料で形成された保持手段、
前記発熱体と前記保持手段を封入する硝子管、及び
前記保持手段にそれぞれ電気的に接続され、端末が硝子管外へ導出されたリード線、を有する赤外線電球が組み込まれた加熱・暖房装置であって、
前記発熱体は、実質的に同じ板幅を有する板幅面に形成された第1の発熱部と、前記発熱体の予め定められた位置に形成され、前記第1の発熱部の板幅より狭い板幅面を有する第2の発熱部とを有し、
前記発熱体において、前記第2の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積が前記第1の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積より小さく形成され、前記第1の発熱部と第2の発熱部との境界部が曲面又は斜面により形成され、通電により前記境界部における長手方向の発熱温度が徐々に変わるよう構成された加熱・暖房装置。
【請求項7】
板厚と板幅との比が1:5以上である実質的に板状の発熱体、
前記発熱体の両端に取り付けられ、導電性材料で形成された保持手段、
前記発熱体と前記保持手段を封入する硝子管、及び
前記保持手段にそれぞれ電気的に接続され、端末が硝子管外へ導出されたリード線、を有する赤外線電球が組み込まれた加熱・暖房装置であって、
前記発熱体は、板幅を規定する板幅面に形成された第1の発熱部と、前記発熱体の予め定められた位置に貫通孔を有する第2の発熱部とを有し、
前記発熱体において、前記第2の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積が前記第1の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積より小さく形成され、前記第1の発熱部と第2の発熱部との境界部が曲面又は斜面により形成され、通電により前記境界部における長手方向の発熱温度が徐々に変わるよう構成された加熱・暖房装置。
【請求項8】
前記第2の発熱部を前記発熱体における前記保持手段の近傍に形成された請求項6又は7に記載の加熱・暖房装置。
【請求項9】
前記第2の発熱部が前記発熱体の長手方向と平行な長軸を有する長円形の貫通孔により構成され、前記長円形の内周面が曲面又は斜面により形成された請求項7に記載の加熱・暖房装置。
【請求項10】
前記硝子管の壁面の一部に反射率の高い物質の膜を形成し、被加熱物に対して前記膜により反射された熱が集中するよう構成された請求項6乃至9のいずれか一項に記載の加熱・暖房装置。
【請求項11】
前記赤外線電球に反射部材を設け、前記反射部材の反射面に対向して被加熱物を配置するよう構成した請求項6乃至9のいずれか一項に記載の加熱・暖房装置。
【請求項12】
前記赤外線電球を筒状のケースの中に挿入し、前記筒状のケースの近傍に被加熱物を配置した請求項6乃至9のいずれか一項に記載の加熱・暖房装置。
【請求項13】
前記筒状のケースが、アルミニウム系物質を含む材料、鉄系物質を含む材料、セラミックス系物質を含む材料のいずれかの材料で構成されたことを特徴とする請求項12に記載の加熱・暖房装置。
【請求項1】
板厚と板幅との比が1:5以上である実質的に板状の発熱体、
前記発熱体の両端に取り付けられ、導電性材料で形成された保持手段、
前記発熱体と前記保持手段を封入する硝子管、及び
前記保持手段にそれぞれ電気的に接続され、端末が硝子管外へ導出されたリード線、を有する赤外線電球であって、
前記発熱体は、実質的に同じ板幅を有する板幅面に形成された第1の発熱部と、前記発熱体の予め定められた位置に形成され、前記第1の発熱部の板幅より狭い板幅面を有する第2の発熱部とを有し、
前記発熱体において、前記第2の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積が前記第1の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積より小さく形成され、前記第1の発熱部と第2の発熱部との境界部が曲面又は斜面により形成され、通電により前記境界部における長手方向の発熱温度が徐々に変わるよう構成された赤外線電球。
【請求項2】
板厚と板幅との比が1:5以上である実質的に板状の発熱体、
前記発熱体の両端に取り付けられ、導電性材料で形成された保持手段、
前記発熱体と前記保持手段を封入する硝子管、及び
前記保持手段にそれぞれ電気的に接続され、端末が硝子管外へ導出されたリード線、を有する赤外線電球であって、
前記発熱体は、板幅を規定する板幅面に形成された第1の発熱部と、前記発熱体の予め定められた位置に貫通孔を有する第2の発熱部とを有し、
前記発熱体において、前記第2の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積が前記第1の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積より小さく形成され、前記第1の発熱部と第2の発熱部との境界部が曲面又は斜面により形成され、通電により前記境界部における長手方向の発熱温度が徐々に変わるよう構成された赤外線電球。
【請求項3】
前記第2の発熱部を前記発熱体における前記保持手段の近傍に形成された請求項1又は2に記載の赤外線電球。
【請求項4】
前記第2の発熱部が前記発熱体の長手方向と平行な長軸を有する長円形の貫通孔により構成され、前記長円形の内周面が曲面又は斜面により形成された請求項2に記載の赤外線電球。
【請求項5】
前記硝子管の壁面の一部に反射率の高い物質の膜を形成したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の赤外線電球。
【請求項6】
板厚と板幅との比が1:5以上である実質的に板状の発熱体、
前記発熱体の両端に取り付けられ、導電性材料で形成された保持手段、
前記発熱体と前記保持手段を封入する硝子管、及び
前記保持手段にそれぞれ電気的に接続され、端末が硝子管外へ導出されたリード線、を有する赤外線電球が組み込まれた加熱・暖房装置であって、
前記発熱体は、実質的に同じ板幅を有する板幅面に形成された第1の発熱部と、前記発熱体の予め定められた位置に形成され、前記第1の発熱部の板幅より狭い板幅面を有する第2の発熱部とを有し、
前記発熱体において、前記第2の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積が前記第1の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積より小さく形成され、前記第1の発熱部と第2の発熱部との境界部が曲面又は斜面により形成され、通電により前記境界部における長手方向の発熱温度が徐々に変わるよう構成された加熱・暖房装置。
【請求項7】
板厚と板幅との比が1:5以上である実質的に板状の発熱体、
前記発熱体の両端に取り付けられ、導電性材料で形成された保持手段、
前記発熱体と前記保持手段を封入する硝子管、及び
前記保持手段にそれぞれ電気的に接続され、端末が硝子管外へ導出されたリード線、を有する赤外線電球が組み込まれた加熱・暖房装置であって、
前記発熱体は、板幅を規定する板幅面に形成された第1の発熱部と、前記発熱体の予め定められた位置に貫通孔を有する第2の発熱部とを有し、
前記発熱体において、前記第2の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積が前記第1の発熱部における長手方向に垂直な断面の断面積より小さく形成され、前記第1の発熱部と第2の発熱部との境界部が曲面又は斜面により形成され、通電により前記境界部における長手方向の発熱温度が徐々に変わるよう構成された加熱・暖房装置。
【請求項8】
前記第2の発熱部を前記発熱体における前記保持手段の近傍に形成された請求項6又は7に記載の加熱・暖房装置。
【請求項9】
前記第2の発熱部が前記発熱体の長手方向と平行な長軸を有する長円形の貫通孔により構成され、前記長円形の内周面が曲面又は斜面により形成された請求項7に記載の加熱・暖房装置。
【請求項10】
前記硝子管の壁面の一部に反射率の高い物質の膜を形成し、被加熱物に対して前記膜により反射された熱が集中するよう構成された請求項6乃至9のいずれか一項に記載の加熱・暖房装置。
【請求項11】
前記赤外線電球に反射部材を設け、前記反射部材の反射面に対向して被加熱物を配置するよう構成した請求項6乃至9のいずれか一項に記載の加熱・暖房装置。
【請求項12】
前記赤外線電球を筒状のケースの中に挿入し、前記筒状のケースの近傍に被加熱物を配置した請求項6乃至9のいずれか一項に記載の加熱・暖房装置。
【請求項13】
前記筒状のケースが、アルミニウム系物質を含む材料、鉄系物質を含む材料、セラミックス系物質を含む材料のいずれかの材料で構成されたことを特徴とする請求項12に記載の加熱・暖房装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−310323(P2006−310323A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−161253(P2006−161253)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【分割の表示】特願2000−174129(P2000−174129)の分割
【原出願日】平成12年6月9日(2000.6.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【分割の表示】特願2000−174129(P2000−174129)の分割
【原出願日】平成12年6月9日(2000.6.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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