説明

超音波モータ

【課題】簡略な構成を実現し、且つ、高トルクを得られるように駆動した場合でも摩擦接触子の磨耗が促進されにくい超音波モータを提供すること。
【解決手段】縦振動及び捻れ振動する圧電素子を利用する超音波モータを次のように構成する。ロータ機構部13を挟持するように縦振動の方向に沿って直列に配設された第1積層圧電素子40-1及び第2積層圧電素子40-2と、第1積層圧電素子40-1に設けられた摩擦接触子41-1と、第2積層圧電素子40-2に設けられた摩擦接触子41-2と、第1積層圧電素子40-1においてロータ機構部13の回転軸の延長上に設けられた位置決めピン43-1と、第2積層圧電素子40-2においてロータ機構部13の回転軸の延長上に設けられた位置決めピン43-2と、位置決めピン43-1,43-2が挿入される軸受け13bを備えており回転駆動されるロータ機構部13と、を超音波モータに具備させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば圧電素子等の振動子の振動を利用する超音波モータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁型モータに代わる新しいモータとして、圧電素子等の振動子の振動を利用した超音波モータが注目されている。この超音波モータは、従来の電磁型モータと比較して、ギア無しで低速高推力が得られる点、保持力が高い点、ストロークが長く高分解能である点、静粛性に富む点、及び磁気的ノイズを発生させない点等の利点を有している。
【0003】
超音波モータでは、摩擦接触子を介して、相対運動部材である被駆動部材に超音波振動子を押し付ける(押圧する)ことで、前記摩擦接触子と前記被駆動部材との間に摩擦力を発生させ、この摩擦力によって前記被駆動部材を摺動する(摩擦駆動する)。
このような超音波モータとして、例えば縦振動と捻れ振動とを超音波振動子に同時に発生させることで、それらの振動が合成された楕円振動を当該超音波振動子に発生させ、該楕円振動を利用して前記被駆動部材を駆動する超音波モータが知られている。具体的には、例えば特許文献1に次のような技術が開示されている。
【0004】
すなわち、特許文献1には、棒状弾性体の側面において互いに対向して配置された2個の積層圧電素子の伸縮振動を利用して、前記棒状弾性体に縦振動と捻じれ振動とを同時に励起し、前記棒状弾性体の端面に設けられた駆動子に楕円運動を励起させて、駆動子によりロータを回転させる超音波モータが開示されている。
【0005】
この超音波モータでは、縦振動の周波数と、捻れ振動の周波数と、を略一致させる為に、前記棒状弾性体に溝部を設けている。そして、この溝部の位置を調整することで、縦振動の周波数と捻れ振動の周波数との共振周波数を略一致させている。
さらに、前記棒状弾性体の中央部には長さ方向に沿った貫通孔が設けられ、該貫通孔にシャフトが挿入されて固定されている。そして、このシャフトを基準にして支持されたロータを、上述した楕円振動から駆動力を得た前記駆動子によって回転させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−117168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示されている超音波モータは、以下の理由により、組み立て容易性が良好であるとは言い難い。
すなわち、特許文献1に開示されている超音波モータでは、積層圧電素子と棒状弾性体とを接着固定しなければならない点、及び、縦振動の周波数と捻れ振動の周波数とを略一致させる為に棒状弾性体に溝部を形成しなくてはならない点、が組み立て容易性を低下させている。そして、このような組立性の不良が、当該超音波モータのモータ性能のばらつきや低下を招くことがある。
【0008】
ところで、超音波モータを高トルク化する為には、被駆動体と摩擦接触子との間の摩擦力を増大させる必要がある。つまり、被駆動体に対して超音波振動子を押し付ける力(押圧力)を増大させる必要がある。このような駆動を行った場合、当然ながら摩擦接触子の磨耗が促進されてしまう。
【0009】
本発明は、前記の事情に鑑みて為されたものであり、簡略な構成を実現し、且つ、高トルクを得られるように駆動した場合であっても摩擦接触子の磨耗が促進されにくい超音波モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明の一態様による超音波モータは、
中心軸に垂直な断面が矩形状を呈し、該矩形状を構成する短辺と長辺との比率が所定の値に設定され、前記中心軸方向に伸縮する縦振動と、前記中心軸を捻れ軸とする捻れ振動と、が同時に励起されることで楕円振動が励起される振動子の前記楕円振動を駆動源としてロータ機構部を回転駆動させる超音波モータであって、
前記ロータ機構部を、前記縦振動方向における一方向側と他方向側とから挟持するように、前記縦振動方向に沿って直列に配設された一対の振動子である第1の振動子及び第2の振動子と、
前記第1振動子のうち前記ロータ機構部に対向する面に設けられた第1の摩擦接触子と、
前記第2振動子のうち前記ロータ機構部に対向する面に設けられた第2の摩擦接触子と、
前記第1振動子のうち前記ロータ機構部に対向する面において、前記ロータ機構部の回転軸の延長上に当該面に対して略垂直に設けられた第1の位置決めピンと、
前記第2振動子のうち前記ロータ機構部に対向する面において、前記ロータ機構部の回転軸の延長上に当該面に対して略垂直に設けられた第2の位置決めピンと、
前記第1の位置決めピン及び前記第2の位置決めピンが挿入される軸受け部と、前記第1の摩擦接触子に対して接触する第1の摩擦接触面と、前記第2の摩擦接触子に対して接触する第2の摩擦接触面とを備える被駆動体と、を備え、前記第1の振動子及び前記第2の振動子の前記楕円振動を駆動源として前記中心軸を回転軸として回転駆動されるロータ機構部と、
前記ロータ機構部に向かって前記第1の振動子を押圧する第1の押圧部と、
前記ロータ機構部に向かって前記第2の振動子を押圧する第2の押圧部と、
前記ロータ機構部と前記第1の押圧部と前記第2の押圧部と共に、前記第1の振動子及び前記第2の振動子を保持するフレームと、
を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡略な構成を実現し、且つ、高トルクを得られるように駆動した場合であっても摩擦接触子の磨耗が促進されにくい超音波モータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る超音波モータの一構成例を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す超音波モータのAA矢視断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る超音波モータの第1の部分近傍についての分解斜視図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係る超音波モータのロータ機構部近傍についての分解斜視図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係る超音波モータにおけるロータ機構部の組み立て工程の一例を示す斜視図である。
【図6A】図6Aは、本発明の一実施形態に係る超音波モータにおける第2の部分の組み立て工程の一例を示す斜視図である。
【図6B】図6Bは、本発明の一実施形態に係る超音波モータにおける第2の部分の組み立て工程の一例を示す斜視図である。
【図7A】図7Aは、縦1次振動モードにおける第1積層圧電素子及び第2積層圧電素子の振動状態を破線で示す斜視図である。
【図7B】図7Bは、捻れ2次振動モードにおける第1積層圧電素子及び第2積層圧電素子の振動状態を破線で示す斜視図である。
【図8A】図8Aは、第1積層圧電素子及び第2積層圧電素子を構成する圧電シートの一構成例を示す図である。
【図8B】図8Bは、第1積層圧電素子及び第2積層圧電素子の一積層構成例を示す図である。
【図9】図9は、積層圧電素子の各振動モードにおける共振周波数特性の一例を示す図である。
【図10A】図10Aは、第1積層圧電素子及び第2積層圧電素子の外形を示す図である。
【図10B】図10Bは、第1積層圧電素子及び第2積層圧電素子を、図10Aにおいて矢印A1で示す方向から観た側面図である。
【図10C】図10Cは、第1積層圧電素子及び第2積層圧電素子を、図10Aにおいて矢印A2で示す方向から観た側面図である。
【図11】図11は、第1積層圧電素子及び第2積層圧電素子と、ロータ機構部とを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る超音波モータについて、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る超音波モータの一構成例を示す斜視図である。図2は、図1に示す超音波モータのAA矢視断面図である。図3は、本発明の一実施形態に係る超音波モータの第1の部分近傍についての分解斜視図である。図4は、本発明の一実施形態に係る超音波モータのロータ機構部近傍についての分解斜視図である。図5は、本発明の一実施形態に係る超音波モータにおけるロータ機構部の組み立て工程の一例を示す斜視図である。図6A及び図6Bは、本発明の一実施形態に係る超音波モータにおける第2の部分の組み立て工程の一例を示す斜視図である。
【0014】
本一実施形態に係る超音波モータは、フレーム31と、第1積層圧電素子40−1と、第2積層圧電素子40−2と、ロータ機構部13と、第1押圧機構部20−1と、第2押圧機構部20−2と、を具備する。
前記フレーム31は、第1振動体収容フレーム31P−1と、第2振動体収容フレーム31P−2と、ロータ機構収容フレーム31Rと、を備える。
【0015】
まず、第1振動体収容フレーム31P−1、及び該第1振動体収容フレーム31P−1に組み付けられる部材について詳細に説明する。
前記第1振動体収容フレーム31P−1は、略直方体形状を呈する第1積層圧電素子40−1の主平面(面積が最大の面)に対向する一対の板状部材である主平面対向板状部材31P1−1,31P2−1と、当該第1振動体収容フレーム31P−1の底面を成す底面板状部材31P3と、から成る。
【0016】
前記主平面対向板状部材31P1−1には、図3に示すように規制部材51a1−1を螺子止めする為の複数の螺子孔31P1sh−1が厚み方向に形成されており、且つ、規制部材51a1−1に設けられた複数の突起部51a1t−1がそれぞれ挿通される複数の貫通孔31P1th−1が形成されている。
【0017】
同様に、前記主平面対向板状部材31P2−1には、後述する規制部材51a2−1を螺子止めする為の複数の螺子孔(不図示)が厚み方向に形成されており、且つ、規制部材51a2−1に設けられた複数の突起部51a2t−1がそれぞれ挿通される複数の貫通孔(不図示)が設けられている。
【0018】
前記底面板状部材31P3には、図2に示すように押圧軸22a−1が挿入される押圧軸挿入孔31P3h−1が、当該第1振動体収容フレーム31P−1に配設された第1積層圧電素子40−1の捻れ軸(捻れ振動の中心軸)の延長上の位置に設けられている。
【0019】
前記規制部材51a1−1は、複数(本例では2つ)の突起部51a1t−1が厚み方向に凸に設けられた板状部材であり、螺子孔51a1h−1が厚み方向に形成されている。同様に、前記規制部材51a2−1は、複数(本例では2つ)の突起部51a2t−1が厚み方向に凸に設けられた板状部材であり、螺子孔51a2h−1が厚み方向に形成されている。
【0020】
そして、規制部材51a1−1は、図3に示すように、その突起部51a1t−1が主平面対向板状部材31P1−1の貫通孔31P1th−1に挿入されて第1積層圧電素子40−1の主平面のうち捻り振動の節位置近傍に接触するように、主平面対向板状部材31P1−1に対して当て付けられ、且つ、螺子孔51a1h−1を利用して螺子Srによって螺子止め固定されている。
【0021】
同様に、規制部材51a2−1は、その突起部51a2t−1が主平面対向板状部材31P2−1の貫通孔(不図示)に挿入されて第1積層圧電素子40−1の主平面のうち捻り振動の節位置近傍に接触するように、主平面対向板状部材31P2−1に対して当て付けられ、且つ、螺子孔51a2h−1を利用して螺子Srによって螺子止め固定されている。
【0022】
このように、規制部材51a1−1,51a2−1の突起部51a1t−1,51a2t−1が、第1積層圧電素子40−1の主平面のうち捻り振動の節位置に接触した状態で固定されることで、当該第1積層圧電素子40−1の振動を阻害せず(当該第1積層圧電素子40−1の長手方向端面に励起される捻り振動の振幅を減少させず)に、当該第1積層圧電素子40−1の回転(歯車13gの回転と同方向の回転、押圧バネ21−1の押圧力の方向に対して垂直な面内の回転)が規制される。
【0023】
前記第1押圧機構部20−1は、押圧バネ21−1と押圧軸22a−1とを備える。
前記押圧バネ21−1は、第1積層圧電素子40−1をロータ機構部13に向かって押圧する為の部材であり、押圧軸22a−1によって位置決めされる。この押圧バネ21−1は、第1振動体収容フレーム31P−1の底面板状部材31P3と、第1積層圧電素子40−1と、によって撓んだ状態で挟持される。具体的には、この押圧バネ21−1は、例えば板バネやコイルバネ等である。
【0024】
前記押圧軸22a−1は、押圧バネ21−1が挿通される軸部材である。図1及び図2に示すように、この押圧軸22a−1の一方端は第1積層圧電素子40−1の下端面に固定され、他方端は当該第1振動体収容フレーム31P1−1の底面板状部材31P3に形成された押圧軸挿入孔31P3h−1に挿通される。
【0025】
このように、押圧軸22a−1の一方端が第1積層圧電素子40−1の下端面に対して固定され、且つ、押圧軸22a−1の他方端が底面板状部材31P3に設けられた押圧軸挿入孔31P3h−1に挿入されることで、第1積層圧電素子40−1についての位置決め(位置規制)が成される(第1積層圧電素子40−1が押圧バネ21−1による押圧の方向に対して垂直な方向に移動することが規制される)。上述の構成により、押圧軸22a−1と、第1積層圧電素子40−1の長手方向の中心軸(捻れ振動の中心軸)とが一致する。
【0026】
前記第1積層圧電素子40−1は、圧電シートが積層されて成る振動体であり(積層構造の詳細については後述)、摩擦接触子41−1と、位置決めピン43−1と、が設けられている。第1積層圧電素子40−1の長手方向下端面に配置されている押圧軸22a−1と、上端面に接着等により固定されている位置決めピン43−1とを利用して組み立てることで、当該第1積層圧電素子40−1の中心軸(捻れ振動における中心軸)とロータ機構部13の中心軸(回転軸)とが一致した状態で組み上がる。
【0027】
前記摩擦接触子41−1は、第1積層圧電素子40−1上端面(ロータ機構部13に対向する面)のうち縦振動及び捻れ振動が最大となる位置近傍(駆動に最適な楕円振動が発生する位置近傍)に設けられており、ロータ機構部13の摺動板13fに対して接触している。
【0028】
具体的には、摩擦接触子41−1は、例えば第1積層圧電素子40−1の幅方向(図7Aに示す長辺b方向)の最外周部位、且つ厚み方向(図7Aに示す短辺a方向)の中央部位に該当する位置に配置されている。この摩擦接触子41−1は、第1積層圧電素子41−1の振動(上端面に生じる楕円振動)を駆動源として、ロータ機構部13の摺動板13fを摩擦駆動する。
【0029】
前記位置決めピン43−1は、第1積層圧電素子40−1の上端面のうち長辺方向且つ短辺方向の中心(ロータ機構部13の回転軸(中心軸))上に、当該上端面に対して垂直に凸となるように当該上端面に例えば接着等により固定されている。
この位置決めピン43−1は、後述する軸受け13bの内径孔に挿入される。第1積層圧電素子40−1上にロータ機構部13(軸受け13b、摺動板13f、歯車13g)を配設する際に、位置決めピン43−1を軸受け13bの内径孔に挿入することで、ロータ機構部13の回転中心と、第1積層圧電素子40−1上端面の中心とが一致する。
【0030】
以下、ロータ機構収容フレーム31R、及び、ロータ機構部13について詳細に説明する。
前記ロータ機構収容フレーム31Rは、図2に示すように互いに対向する一対の断面“コ”字状部材である第1コ字状部材31R1と、第2コ字状部材31R2と、から成る。これら第1コ字状部材31R1と第2コ字状部材31R2とは、中空部位同士が互いに対向するように配設されており、それら中空部位がロータ機構部13を収容する一つの空間領域を構成している。図1及び図2に示すように、このロータ機構収容フレーム31Rの一方側(下方側)には、上述した第1振動体収容フレーム31P−1が接続されており、他方側(上方側)には、後述する第2振動体収容フレーム31P−2が接続されている。
【0031】
前記ロータ機構部13は、図4に示すように、軸受け13bと、摺動板13fと、歯車13gと、を有する。
前記軸受け13bは、図2に示すように第1積層圧電素子40−1の上端面に設けられた位置決めピン43−1、及び、後述する第2積層圧電素子40−2の下端面に設けられた位置決めピン43−2が挿通されるベアリング部材である。詳細には、この軸受け13bは、外周面が回転可能に構成されたベアリング部材、もしくは内周側の摩擦係数の小さいすべり軸受けである。
【0032】
前記摺動板13fは、略円環形状を呈する部材であり、一方面(下端面)が第1積層圧電素子40−1の上端面に設けられた摩擦接触子41−1に接触し、他方面(上端面)は第2積層圧電素子40−2の下端面に設けられた摩擦接触子41−2に接触するように配設されている。この摺動板13fの外周面は歯車13gの内周面に対して固定されており、他方、この摺動板13fの内周面は軸受け13bの外周面に対して固定されている。
【0033】
前記歯車13gは、略円環形状を呈する歯車であり、その中空部分には摺動板13fが挿通されて該摺動板13fの外周面が当該歯車13gの内周面に対して固定されている。
以下、第2振動体収容フレーム31P−2、及び該第2振動体収容フレーム31P−2に組み付けられる部材について詳細に説明する。
【0034】
図6A及び図6Bに示すように、前記第2振動体収容フレーム31P−2は、略直方体形状を呈する第2積層圧電素子40−2の主平面に対向する一対の板状部材である主平面対向板状部材31P1−2,31P2−2から成る。これら主平面対向板状部材31P1−2,31P2−2は、一方側には上述のロータ機構収容フレーム31Rが接続されており、他方側には後述する固定板27が組み付けられている。
【0035】
前記主平面対向板状部材31P1−2には、規制部材51a1−2を螺子止めする為の複数の螺子孔31P1sh−2が厚み方向に形成されており、且つ、規制部材51a1−2に設けられた複数の突起部51a1t−2がそれぞれ挿通される複数の貫通孔31P1th−2が形成されている。
【0036】
また、前記主平面対向板状部材31P1−2のうち後述する固定板27の板状部27P1との当接部位には、図6Bに示すように固定板27を螺子止めする為の螺子孔31P1sh−2が形成されている。
同様に、前記主平面対向板状部材31P2−2には、規制部材51a2−2を螺子止めする為の複数の螺子孔31P2sh−2が厚み方向に形成されており、且つ、規制部材51a2−2に設けられた複数の突起部51a2t−2がそれぞれ挿通される複数の貫通孔31P2th−2が設けられている。
【0037】
また、前記主平面対向板状部材31P2−2のうち後述する固定板27の板状部27P2との当接部位には、図6Bに示すように固定板27を螺子止めする為の螺子孔31P2sh−2が形成されている。
前記固定板27は、断面略“コ”字状を呈する部材であり、第2振動体収容フレーム31P−2の主平面対向板状部材31P1−2,31P2−2に当接する一対の板状部27P1,27P2と、主平面対向板状部材31P1−2,31P2−2の上端面上に載置される載置部27P3と、を備えている。
【0038】
前記板状部27P1には、図2及び図6Bに示すように、当該固定板27が第2振動体収容フレーム31P−2に組み付けられた際に、主平面対向板状部材31P1−2の螺子孔31P1sh−2と一体的に一つの螺子孔を構成する螺子孔27P1shが形成されている。
【0039】
同様に、前記板状部27P2には、図2及び図6Bに示すように、当該固定板27が第2振動体収容フレーム31P−2に組み付けられた際に、主平面対向板状部材31P2−2の螺子孔31P2sh−2と一体的に一つの螺子孔を構成する螺子孔27P2shが形成されている。
【0040】
前記載置部27P3には、図2及び図6Bに示すように、押圧軸22a−2が挿入される押圧軸挿入孔27P3hが、前記載置部27P3のうち第1積層圧電素子40−1の捻れ軸(捻れ振動の中心軸)の延長上の位置に設けられている。
前記規制部材51a1−2は、複数(本例では2つ)の突起部51a1t−2が厚み方向に凸に設けられた板状部材であり、螺子孔51a1h−2が厚み方向に形成されている。同様に、前記規制部材51a2−2は、複数(本例では2つ)の突起部51a2t−2が厚み方向に凸に設けられた板状部材であり、螺子孔51a2h−2が厚み方向に形成されている。
【0041】
そして、規制部材51a1−2は、図2及び図6Aに示すように、その突起部51a1t−2が主平面対向板状部材31P1−2の貫通孔31P1th−2に挿入されて第2積層圧電素子40−2の主平面のうち捻り振動の節位置近傍に接触するように、主平面対向板状部材31P1−2に対して当て付けられ、且つ、螺子孔51a1h−2を利用して螺子Srによって螺子止め固定されている。
【0042】
同様に、規制部材51a2−2は、その突起部51a2t−2が主平面対向板状部材31P2−2の貫通孔不図示)に挿入されて第2積層圧電素子40−2の主平面のうち捻り振動の節位置近傍に接触するように、主平面対向板状部材31P2−2に対して当て付けられ、且つ、螺子孔51a2h−2を利用して螺子Srによって螺子止め固定されている。
【0043】
このように、規制部材51a1−2,51a2−2の突起部51a1t−2,51a2t−2が、第2積層圧電素子40−2の主平面のうち、当該第2積層圧電素子40−2の捻り振動の節位置に接触した状態で固定されることで、当該第2積層圧電素子40−2の振動を阻害せず(当該第2積層圧電素子40−2の長手方向端面に励起される捻り振動の振幅を減少させず)に、当該第2積層圧電素子40−2の回転(歯車13gの回転と同方向の回転、押圧バネ21−2の押圧力の方向に対して垂直な面内の回転)が規制される。
【0044】
前記第2押圧機構部20−2は、図6A及び図6Bに示すように押圧バネ21−2と押圧軸22a−2とを備える。
前記押圧バネ21−2は、第2積層圧電素子40−2をロータ機構部13に向かって押圧する為の部材であり、当該押圧バネ21−2に挿通された押圧軸22a−2によって位置決めされる。この押圧バネ21−2は、固定板27の載置部27P3と、第2積層圧電素子40−2と、によって上下方向から挟持され、撓んだ状態で保持される。具体的には、この押圧バネ21−2は、例えば板バネやコイルバネ等である。
【0045】
前記押圧軸22a−2は、押圧バネ21−2が挿通される軸部材である。この押圧軸22a−2の一方端は第2積層圧電素子40−2の上端面に固定され、他方端は固定板27の載置部27P3に形成された押圧軸挿入孔27P3hに挿入される。
このように、押圧軸22a−2の一方端部は第2積層圧電素子40−2の上端面に固定され、且つ、押圧軸22a−2の他方端部が固定板27の載置部27P3に形成された押圧軸挿入孔27P3hに挿入されることで、第2積層圧電素子40−2の位置決め(位置規制)が成される(第2積層圧電素子40−2が押圧バネ21−2による押圧の方向に対して垂直な方向に移動することが規制される)。上述の構成により、押圧軸22a−2と、第2積層圧電素子40−2の長手方向の中心軸(捻れ振動の中心軸)とが一致する。
【0046】
前記第2積層圧電素子40−2は、圧電シートが積層されて成る振動体(積層構造の詳細は後述する)であり、摩擦接触子41−2と、位置決めピン43−2と、が設けられている。
前記摩擦接触子41−2は、第2積層圧電素子40−2下端面(ロータ機構部13に対向する面)のうち駆動に最適な楕円振動が発生する位置近傍に設けられており、ロータ機構部13の摺動板13fに接触している。
【0047】
前記位置決めピン43−2は、第2積層圧電素子40−2の下端面のうち長辺方向且つ短辺方向の中心(ロータ機構部13の回転軸(中心軸))上に、当該下端面に対して垂直に凸となるように当該下端面に例えば接着等により固定されている。
この位置決めピン43−2は、後述する軸受け13bの内径孔に挿入される。第2積層圧電素子40−2上にロータ機構部13(軸受け13b、摺動板13f、歯車13g)を配設する際に、位置決めピン43−2を軸受け13bに挿入することで、ロータ機構部13の回転中心と、第2積層圧電素子40−2上端面の中心とが一致する。
【0048】
これら押圧軸22a−2と位置決めピン43−2とを利用して組み立てることで、当該第2積層圧電素子40−2の中心軸(捻れ振動における中心軸)とロータ機構部13の中心軸(回転軸)とが一致した状態で組み上がる。
以下、本一実施形態に係る超音波モータの組み立て工程について説明する。
【0049】
まず、図3に示すように、第1振動体収容フレーム31P−1の底面板状部材31P3に形成された押圧軸挿入孔31P3hに、第1押圧機構部20−1の押圧軸22a−1を更に押圧バネ21−1を押圧軸22a−1に挿入し、且つ該押圧軸22a−1上に第1積層圧電素子40−1を載置して接着等により固定する。詳細には、押圧軸22a−1は、第1積層圧電素子40−1の下端面のうち捻れ振動の中心軸に対応する位置に対して固定される。
【0050】
続いて、規制部材51a1−1の突起部51a1t−1を、主平面対向板状部材31P1−1の貫通孔31P1th−1に挿入し、規制部材51a1−1の螺子孔51a1h−1及び主平面対向板状部材31P1−1の螺子孔31P1sh−1に螺子Srを捻じ込んで、それらを締結し、第1積層圧電素子40−1をその主平面側から規制部材51a1−1の突起部51a1t−1で挟持して位置決めする。
【0051】
同様に、規制部材51a2−1の突起部51a2t−1を貫通孔31P2th−1に挿入し、規制部材51a2−1の螺子孔51a2h−1及び主平面対向板状部材31P2−1の螺子孔31P2sh−1に螺子Srを捻じ込んで、それらを締結し、第1積層圧電素子40−1をその主平面側から規制部材51a2−1の突起部51a2t−1で挟持して位置決めする。
【0052】
さらに、図5に示すように、ロータ機構収容フレーム31R内に側面側(開口側)からロータ機構部13を配設し、第1積層圧電素子40−1の位置決めピン43−1を、ロータ機構部13の軸受け13bの内径孔に挿入する。
その後、図6Aに示すように、第2振動体収容フレーム31P−2に、その上方側(開口側)から第2積層圧電素子40−2を挿入し、当該第2積層圧電素子40−2の下端面の位置決めピン43−2を、ロータ機構部13の軸受け13bの内径孔に挿入する。
【0053】
続いて、図6Aに示すように、規制部材51a1−2の突起部51a1t−2を貫通孔31P1th−2に挿入し、規制部材51a1−2の螺子孔51a1h−2及び主平面対向板状部材31P1−2の螺子孔31P1sh−2に螺子Srを捻じ込んで、それらを締結し、第2積層圧電素子40−2をその主平面側から規制部材51a1−2の突起部51a1t−2で挟持して位置決めする。
【0054】
同様に、図6Aに示すように、規制部材51a2−2の突起部51a2t−2を貫通孔31P2th−2に挿入し、規制部材51a2−2の螺子孔51a2h−2及び主平面対向板状部材31P2−2の螺子孔31P2sh−2に螺子Srを捻じ込んで、それらを締結し、第2積層圧電素子40−2をその主平面側から規制部材51a2−2の突起部51a2t−2で挟持して位置決めする。
【0055】
ここで、上述の規制部材51a1−1,51a2−1,51a1−2,51a2−2の突起部51a1t−1,51a2t−1,51a1t−2,51a2t−2は、各積層圧電素子40−1,40−2のうち“捻れ振動の節位置近傍”に対して接触している(捻れ振動を阻害しないように接触している)。
【0056】
最後に、図6Bに示すように、第2積層圧電素子40−2の上端面のうち捻れ振動の中心軸に対応する位置に押圧軸22a−2を接着等によって固定し、該押圧軸22a−2に押圧バネ21−2に挿通させる。そして、固定板27の載置部27P3に形成された押圧軸挿入孔27P3hに押圧軸22a−2を挿入して、固定板27を第2振動体収容フレーム31P−2上に載置する。そして、前記板状部27P1,27P2に形成された螺子孔27P1sh,27P2sh、及び第2振動体収容フレーム31P−2の主平面対向板状部材31P1−2,31P2−2に形成された螺子孔31P1sh−2,31P2sh−2に螺子Srを捻じ込んで、固定板27を第2振動体収容フレーム31P−2に対して固定する。
【0057】
以下、第1積層圧電素子40−1及び第2積層圧電素子40−2の振動モードについて詳細に説明する。
図7Aは、縦1次振動モードにおける第1積層圧電素子40−1及び第2積層圧電素子40−2の振動状態を破線で示す斜視図である。図7Bは、捻れ2次振動モードにおける第1積層圧電素子40−1及び第2積層圧電素子40−2の振動状態を破線で示す斜視図である。図7A及び図7Bにおいては、振動前の第1積層圧電素子40−1及び第2積層圧電素子40−2の状態(形状)を実線で示し、各振動モードにおける振動時の積層圧電素子40の状態(形状)を破線で示している。
【0058】
ここで、図7A及び図7Bに示すように、略直方体形状の第1積層圧電素子40−1及び第2積層圧電素子40−2の中心軸100cに直交する断面を構成する短辺の長さをaとし、長辺の長さをbとし、中心軸100cに沿った高さをcとする。但し、短辺a、長辺b、高さcの大小関係は、
a<b<c
であるとする。以降の説明においては、高さc方向を、縦1次振動モードの振動の方向とし、且つ、捻れ振動の捻れの軸方向とする。
【0059】
本一実施形態に係る超音波モータにおいては、第1積層圧電素子40−1及び第2積層圧電素子40−2のうち短辺a、長辺b、高さcの各寸法の値を適宜設定することで、縦1次振動モードの共振周波数と、捻れ2次振動モードまたは捻れ3次振動モードの共振周波数と、を略一致させる。
【0060】
図7A及び図7Bにおいてp1,p2で示すのは捻れ振動の方向であり、qで示すのは縦振動の方向であり、Nで示すのは振動の節である。
前記節Nは、図7Aに示す縦1次振動においては、第1積層圧電素子40−1及び第2積層圧電素子40−2の高さc方向の中心位置に1つ存在する。また、図7Bに示す捻れ2次振動においては、前記節Nは、高さc方向の2つの位置と中心軸100cの位置に存在する。
【0061】
以下、第1積層圧電素子40−1及び第2積層圧電素子40−2を構成する圧電シートについて詳細に説明する。図8Aは、第1積層圧電素子40−1及び第2積層圧電素子40−2を構成する圧電シートの一構成例を示す図である。同図に示すように、第1積層圧電素子40−1及び第2積層圧電素子40−2は、3種類の圧電シート(第1の圧電シート401、第2の圧電シート402、第3の圧電シート403)から成る。
【0062】
これら第1の圧電シート401、第2の圧電シート402、及び第3の圧電シート403は、矩形のシート状の圧電素子であり、例えばハード系のチタン酸ジルコン酸鉛の圧電セラミックス素子(PZT)から成る。
詳細には、前記第1の圧電シート401の電極形成面上には、その長手方向における略中央位置に、+相の第1内部電極401aと+相の第2内部電極401cとが、中心線C(短辺を2等分する線)に対して対称に設けられている。
【0063】
同様に、前記第2の圧電シート402の電極形成面上には、その長手方向における略中央位置に、−相の第1内部電極402aと−相の第2内部電極402cとが、中心線C(短辺を2等分する線)に対して対称に設けられている。
ここで、前記+相の第1内部電極401aは、矩形形状を呈する第1の圧電シート401の一方長辺に向かって延びて露出する端部401aeを備えている。前記+相の第2内部電極401cは、矩形形状を呈する第1の圧電シート401の他方長辺に向かって延びて露出する端部401ceを備えている。
【0064】
同様に、前記−相の第1内部電極402aは、矩形形状を呈する第2の圧電シート402の一方長辺に向かって延びて露出する端部402aeを備えている。前記−相の第2内部電極402cは、矩形形状を呈する第2の圧電シート402の他方長辺に向かって延びて露出する端部402ceを備えている。
【0065】
ここで、上述の各内部電極401a,401c,402a,402cは、例えば厚さ4μmの銀パラジウム合金から成る。また、上述の各内部電極401a,401c,402a,402cが設けられている位置は、各積層圧電素子40−1,40−2のうち捻り振動の応力が最大となる位置に対応する位置である。
【0066】
前記第3の圧電シート403は、第1の圧電シート401及び第2の圧電シート402と同形状であって、且つ、内部電極が設けられていないシート状の部材である。つまり、第3の圧電シート403は、絶縁層を成す圧電シートである。
図8Bは、第1積層圧電素子40−1及び第2積層圧電素子40−2の一積層構成例を示す図である。同図に示すように、第1積層部位411と、第2積層部位412と、第3積層部位413と、第4積層部位414と、第5積層部位415と、から成る。
【0067】
詳細には、これら各積層部位(第1積層部位411、第2積層部位412、第3積層部位413、第4積層部位414、第5積層部位415)の積層構成は、上述した各圧電シートが次のように積層されて成る部位である。
《第1積層部位411》
第1積層部位411は、少なくとも1枚の第3の圧電シート403から成る(複数枚の第3の圧電シート403から成る場合は、第3の圧電シート403がその厚み方向に積層されて成る)。
《第2積層部位412》
第2積層部位412は、第1積層部位411上に積層された部位であって、第1の圧電シート401と第2の圧電シート402とがその厚み方向に交互に積層されて成る。
《第3積層部位413》
第3積層部位413は、第2積層部位412上に積層された部位であって、少なくとも1枚の第3の圧電シート403から成る(複数枚の第3の圧電シート403から成る場合は、第3の圧電シート403がその厚み方向に積層されて成る)。
《第4積層部位414》
第4積層部位414は、第3積層部位413上に積層された部位であって、第1の圧電シート401と第2の圧電シート402とがその厚み方向に交互に積層されて成る。
《第5積層部位415》
第5積層部位415は、第4積層部位414上に積層された部位であって、少なくとも1枚の第3の圧電シート403から成る(複数枚の第3の圧電シート403から成る場合は、第3の圧電シート403がその厚み方向に積層されて成る)。
【0068】
上述の構成を採る第1積層圧電素子40−1及び第2積層圧電素子40−2の寸法は、積層圧電素子が有する下記の特性を利用して決定している。すなわち、積層圧電素子の高さcを一定として、(短辺の長さa/長辺の長さb)の値を横軸にとり、各振動モードにおける共振周波数の値を縦軸にとると、図9に示す特性を得ることができる。すなわち、
・縦1次振動モードにおける共振周波数の値は、(a/b)の値に依存せず、略一定の値をとる。
・捻れ1次振動モード、捻れ2次振動モード、及び捻れ3次振動モードにおける共振周波数の値は、(a/b)の値の増加に従って、増加していく。
・捻れ1次振動モードにおける共振周波数は、(a/b)の値がどのような値であっても、縦1次振動モードにおける共振周波数と一致することは無い。
・捻れ2次振動モードにおける共振周波数は、(a/b)の値が0.6となる近傍で、縦1次振動モードにおける共振周波数と一致する。
・捻れ3次振動モードにおける共振周波数は、(a/b)の値が0.3となる近傍で、縦1次振動モードにおける共振周波数と一致する。
【0069】
上述したような特性の為、本一実施形態においては下記のように(a/b)の値を設定する。すなわち、
・縦1次振動モードと捻れ2次振動モードとを利用する場合、(a/b)の値が0.6〜0.7となるように、積層圧電素子40の短辺の長さa及び長辺の長さbを設定する。
【0070】
つまり本一実施形態に係る超音波モータにおいては、積層圧電素子40の中心軸100c方向に伸縮する縦1次共振振動と、中心軸100cを捻れ軸とする捻れ2次共振振動と、の共振周波数が略一致するように、積層圧電素子40における短辺の長さaと長辺の長さbとの比(比率)を設定する。
【0071】
図10Aは、第1積層圧電素子40−1及び第2積層圧電素子40−2の外形を示す図である。図10Bは、第1積層圧電素子40−1及び第2積層圧電素子40−2を、図10Aにおいて矢印A1で示す方向から観た側面図である。図10Cは、第1積層圧電素子40−1及び第2積層圧電素子40−2を、図10Aにおいて矢印A2で示す方向から観た側面図である。
【0072】
図10Bに示すように、第1積層圧電素子40−1及び第2積層圧電素子40−2の一方側面には、第2積層部位において端部401ae同士を接続(短絡)する外部電極101B+と、第2積層部位において端部402ae同士を接続(短絡)する外部電極101B−と、第4積層部位において端部401ae同士を接続(短絡)する外部電極101A+と、第4積層部位において端部402ae同士を接続(短絡)する外部電極101A−が設けられている。
【0073】
ここで、外部電極101A+はA+相の外部電極を成しており、外部電極101A−はA−相の外部電極を成しており、外部電極101B+はB+相の外部電極を成しており、外部電極101B−はB−相の外部電極を成している。
また、図10Cに示すように、第1積層圧電素子40−1及び第2積層圧電素子40−2の一方側面には、第2積層部位において端部401ce同士を接続(短絡)する外部電極101C+と、第2積層部位において端部402ce同士を接続(短絡)する外部電極101C−と、第4積層部位において端部401ce同士を接続(短絡)する外部電極101D+と、第4積層部位において端部402ce同士を接続(短絡)する外部電極101D−と、が設けられている。
【0074】
外部電極101C+はC+相の外部電極を成しており、外部電極101C−はC−相の外部電極を成しており、外部電極101D+はD+相の外部電極を成しており、外部電極101D−はD−相の外部電極を成している。
なお、図示はしていないが、これらの各外部電極には例えばFPCが固着されており、該FPCを介して所定の電源から駆動電圧が各外部電極に印加される。
【0075】
ここで、第1積層圧電素子40−1及び第2積層圧電素子40−2のうち、少なくとも、+相の第1内部電極401aと−相の第1内部電極402aとが互いに対向する部分、及び、+相の第2内部電極401cと−相の第2内部電極402cとが互いに対向する部分は、圧電的に活性化された圧電活性化領域である。すなわち、+相の第1内部電極401aと−相の第1内部電極402aとの間、及び、+相の第2内部電極401cと−相の第2内部電極402cとの間には高電圧が印加され、各電極が分極されて圧電的に活性化されている。
【0076】
図11は、第1積層圧電素子40−1及び第2積層圧電素子40−2と、ロータ機構部13とを模式的に示す図である。
本一実施形態に係る超音波モータでは、上述したように同一構成の2つの積層圧電素子(第1積層圧電素子40−1及び第2積層圧電素子40−2)を、それら各圧電素子の長手方向(上下方向)に沿って、ロータ機構部13を挟んで直列に配設する。このような態様で配設する為、これら2つの積層圧電素子(第1積層圧電素子40−1及び第2積層圧電素子40−2)によるロータ機構部13の回転駆動方向を同一方向とするには、第1積層圧電素子40−1と第2積層圧電素子40−2とにそれぞれ印加する駆動電圧を、図11に示すように互いに逆極性の電圧としなければならない。
【0077】
すなわち、第1積層圧電素子40−1の各相(A+相,A−相,B+相,B−相)に印加する駆動電圧と、これら各相に対応する第2積層圧電素子40−2の各相(A+相,A−相,B+相,B−相)に印加する駆動電圧との位相差を、略180度としなければならない。
【0078】
具体的には、図11に示す例では次のように駆動電圧を印加している。
・第1積層圧電素子40−1のA−相と第2積層圧電素子40−2のA+相とに対して、駆動電圧源VA−1によって同一極性の駆動電圧を印加。
・第1積層圧電素子40−1のA+相(外部電極101A+)と第2積層圧電素子40−2のA−相(外部電極101A−)とに対して、駆動電圧源VA−2によって同一極性の駆動電圧を印加。
・第1積層圧電素子40−1のB+相(外部電極101B+)と第2積層圧電素子40−2のB−相(外部電極101B−)とに対して、駆動電圧源VB−1によって同一極性の駆動電圧を印加。
・第1積層圧電素子40−1のB−相(外部電極101B−)と第2積層圧電素子40−2のB+相(外部電極101B+)とに対して、駆動電圧源VB−2によって同一極性の駆動電圧を印加。
【0079】
このように、駆動電圧を印加する為の配線構成を並列接続とすることにより、少ない配線数で、第1積層圧電素子40−1と第2積層圧電素子40−2とによって、ロータ機構部13を所望方向に回転駆動することができる。
ところで、各積層圧電素子40−1,40−2のC相、D相の外部電極に対しては、A相、B相の外部電極に対する場合と同様に駆動電圧を印加すればよい。これにより、当該超音波モータの駆動力を、より増大させることができる。なお、各積層圧電素子40−1,40−2のC相、D相の外部電極を、各積層圧電素子40−1,40−2の振動を検出する為の振動検出の為の電極として利用しても勿論よいし、何ら使用しなくても勿論よい。
【0080】
以上説明したように、本一実施形態によれば、簡略な構成を実現し、且つ、高トルクを得られるように駆動した場合でも摩擦接触子の磨耗が促進されにくい超音波モータを提供することができる。具体的には、本一実施形態に係る超音波モータによれば、例えば下記の効果を得ることができる。
・2つの振動子(第1積層圧電素子40−1及び第2積層圧電素子40−2)を用いることで、一つの振動子当たりの押圧力を増加させることなく(摩擦接触子の磨耗を促進させることなく)、当該超音波モータのトルクを高めることができる。換言すれば、高トルクを実現し、且つ、耐久性の劣化を生じさせない。
・2つの振動子(第1積層圧電素子40−1及び第2積層圧電素子40−2)でロータ機構部13を挟持する構成を採るので、静止保持力が向上する。
・組み立て時には、位置決めピン43−1,43−2と、押圧軸22a−1,22a−2とによって自動的に各部材間の位置決めが成される構成であるので、ロータ機構部13の回転中心軸と、第1積層圧電素子40−1の捻れ振動の軸と、第2積層圧電素子40−2の捻れ振動の軸と、ロータ機構部13の回転軸との3軸を簡略な構成で(容易に)一致させることができる。つまり、組立容易性及び組立精度の向上が実現する。
・ロータ機構部13の回転方向への第1積層圧電素子40−1及び第2積層圧電素子40−2の移動を、簡略な構成(規制部材51a1−1,51a2−1,51a1−2,51a2−2)によって規制している。
・以上説明したように、簡易な組立工程により、組立工程数の削減及び低コスト化が実現する。更に、組立工程数の削減により、モータ性能のばらつきの低下、及び性能の安定性の向上も実現する。
【0081】
以上、一実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、種々の変形及び応用が可能なことは勿論である。
例えば、各積層圧電素子40−1,40−2の各側面において、A相の外部電極101AとD相の外部電極101Dとについて同極電極同士を短絡し(外部電極101A+と外部電極101D+とを短絡し、且つ、外部電極101A−と外部電極101D−とを短絡することで)、且つ、B相の外部電極101BとC相の外部電極101Cとについて同極電極同士を短絡することで(外部電極101B+と外部電極101C+とを短絡し、且つ、外部電極101B−と外部電極101C−とを短絡することで)、配線を削減することができる。なお、各圧電シート401,402においては、このような外部電極同士の短絡を可能とするパターンで内部電極を形成する。このように構成することで、通常は正極及び負極で8つの配線(ランド)が必要となるところ、4つの配線(ランド)で4つの駆動電極による駆動が可能となる。
【0082】
さらに、上述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示した複数の構成要件の適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示す全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0083】
13…ロータ機構部、 13f…摺動板、 13g…歯車、 20−1,20−2…押圧機構部、 21−1,21−2…押圧バネ、 22a−1,22a−2…押圧軸、 27…固定板、 27P1,27P2…板状部、 27P3…載置部、 27P1sh,27P2sh…螺子孔、 27P3h…押圧軸挿入孔、 31…フレーム、 31P…振動体収容フレーム、 31R…ロータ機構収容フレーム、 31P1,31P2…主平面対向板状部材、 31P3…底面板状部材、 31P1sh,31P2sh…螺子孔、 31P1th,31P2th…貫通孔、 31P3h…押圧軸挿入孔、 31R1,31R2…コ字状部材、 40−1…第1積層圧電素子、40−2…第2積層圧電素子、 41−1,41−2…摩擦接触子、 43−1,43−2…位置決めピン、 51a1,51a2…規制部材、 51a1t,51a2t…突起部、 51a1h,51a2h…螺子孔、 100c…中心軸、 101A,101B,101C,101D…外部電極、 401a,401c,402a,402c…内部電極、 401ae,401ce,402ae,402ce…端部、 401…第1の圧電シート、 402…第2の圧電シート、 403…第3の圧電シート、 411…第1積層部位、 412…第2積層部位、 413…第3積層部位、 414…第4積層部位、 415…第5積層部位。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に垂直な断面が矩形状を呈し、該矩形状を構成する短辺と長辺との比率が所定の値に設定され、前記中心軸方向に伸縮する縦振動と、前記中心軸を捻れ軸とする捻れ振動と、が同時に励起されることで楕円振動が励起される振動子の前記楕円振動を駆動源としてロータ機構部を回転駆動させる超音波モータであって、
前記ロータ機構部を、前記縦振動方向における一方向側と他方向側とから挟持するように、前記縦振動方向に沿って直列に配設された一対の振動子である第1の振動子及び第2の振動子と、
前記第1振動子のうち前記ロータ機構部に対向する面に設けられた第1の摩擦接触子と、
前記第2振動子のうち前記ロータ機構部に対向する面に設けられた第2の摩擦接触子と、
前記第1振動子のうち前記ロータ機構部に対向する面において、前記ロータ機構部の回転軸の延長上に当該面に対して略垂直に設けられた第1の位置決めピンと、
前記第2振動子のうち前記ロータ機構部に対向する面において、前記ロータ機構部の回転軸の延長上に当該面に対して略垂直に設けられた第2の位置決めピンと、
前記第1の位置決めピン及び前記第2の位置決めピンが挿入される軸受け部と、前記第1の摩擦接触子に対して接触する第1の摩擦接触面と、前記第2の摩擦接触子に対して接触する第2の摩擦接触面とを備える被駆動体と、を備え、前記第1の振動子及び前記第2の振動子の前記楕円振動を駆動源として前記中心軸を回転軸として回転駆動されるロータ機構部と、
前記ロータ機構部に向かって前記第1の振動子を押圧する第1の押圧部と、
前記ロータ機構部に向かって前記第2の振動子を押圧する第2の押圧部と、
前記ロータ機構部と前記第1の押圧部と前記第2の押圧部と共に、前記第1の振動子及び前記第2の振動子を保持するフレームと、
を具備することを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
前記第1の振動子の前記捻れ軸と、前記第2の振動子の前記捻れ軸と、前記ロータ機構部の前記回転軸とは同軸である
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記第1の押圧部は、前記第1の振動子のうち前記捻り振動の節位置近傍を、前記ロータ機構部に向かって押圧し、
前記第2の押圧部は、前記第2の振動子のうち前記捻り振動の節位置近傍を、前記ロータ機構部に向かって押圧する
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項4】
前記第1の押圧部は、前記第1の振動子のうち前記捻り振動の節位置近傍に接触する第1の押圧軸と、前記第1の押圧軸を前記ロータ機構部に向かって押圧する第1の弾性部材と、を備え、
前記第2の押圧部は、前記第2の振動子のうち前記捻り振動の節位置近傍にする第2の押圧軸と、前記第2の押圧軸を前記ロータ機構部に向かって押圧する第2の弾性部材と、を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の超音波モータ。
【請求項5】
前記第1の位置決めピンは、前記第1の振動子のうち前記捻り振動の節位置近傍に設けられ、且つ、前記第2の位置決めピンは、前記第2の振動子のうち前記捻り振動の節位置近傍に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項6】
前記第1の振動子及び前記第2の振動子は略直方体形状を呈し、
前記第1の振動子の主平面のうち前記捻り振動の節位置に接触し、前記第1の振動子の前記ロータ機構部の回転方向と同方向への回転を規制する第1の規制部材と、
前記第2の振動子の主平面のうち前記捻り振動の節位置に接触し、前記第2の振動子の前記ロータ機構部の回転方向と同方向への回転を規制する第2の規制部材と、
を更に具備することを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項7】
前記第1の振動子に印加される駆動電圧と、前記第2の振動子に印加される駆動電圧とは、互いに逆極性である
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項8】
前記第1の振動子及び前記第2の振動子にそれぞれ設けられた、少なくともA相とB相とから成る2相の駆動電極を具備し、
前記2相の駆動電極は、
前記第1の振動子におけるA相の駆動電極のうちの正極と、前記第2の振動子におけるA相の駆動電極のうちの負極と、に同一の駆動電圧を印加する第1のA相電圧源と、
前記第1の振動子におけるA相の駆動電極のうちの負極と、前記第2の振動子におけるA相の駆動電極のうちの正極と、に同一の駆動電圧を印加する第2のA相電圧源と、
前記第1の振動子におけるB相の駆動電極のうちの正極と、前記第2の振動子におけるB相の駆動電極のうちの負極と、に同一の駆動電圧を印加する第1のB相電圧源と、
前記第1の振動子におけるB相の駆動電極のうちの負極と、前記第2の振動子におけるB相の駆動電極のうちの正極と、に同一の駆動電圧を印加する第2のB相電圧源と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−235586(P2012−235586A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101464(P2011−101464)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】