説明

超音波モータ

【課題】細径化が容易な超音波モータを提供すること。
【解決手段】略筒状を呈し、当該超音波モータ1の構成部材を収容するケース10と、成形された金属から成り、前記ケースの長手方向と同方向を長手方向とする弾性体14と、前記弾性体14に設けられた板状圧電素子16-1,16-2と、前記弾性体の一方端部に接触しているロータ12と、を超音波モータに具備させる。前記弾性体14には、前記ロータ12に接触している一方端部から成る接触部14-3と、前記ケース10の端面に対して略垂直を為し、少なくとも1枚以上の前記板状圧電素子16-1,16-2が長手方向に沿って設けられた駆動部14-2と、前記接触部14-3及び前記駆動部14-2を支持する支持部14-1と、を備えさせる。前記ロータ12の回転軸と、前記支持部14-1と、前記接触部14-3と、前記駆動部14-2とは、前記長手方向に沿って同一直線上に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば圧電素子等の振動子の振動を利用する超音波モータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁型モータに代わる新しいモータとして、圧電素子等の振動子の振動を利用した超音波モータが注目されている。この超音波モータは、従来の電磁型モータと比較して、ギア無しで低速高推力が得られる点、非駆動時における保持力が高い点、ストロークが長く高分解能である点、静粛性に富む点、及び磁気的ノイズを発生させない点等の利点を有している。
【0003】
例えば、特許文献1には次のような構成の超音波モータが開示されている。すなわち、特許文献1に開示されている技術では、振動体は、長板状の圧電素子と弾性体とが積層されて成り、全体として直方体形状を呈している。この振動体の長手方向における端部には、接触部が設けられている。この接触部は、回転可能に構成された移動体に対して接触している。そして、圧電素子に所定の電圧が印加されると振動体が振動し、この振動によって移動体が接触部によって摺動される。このとき、振動体の振動及び移動体の移動は、振動体の主平面に対して平行な面内での移動である。なお、振動体及び移動体は、ベースと称される板状部材上に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−73465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示されている超音波モータでは、振動体及び移動体を位置決めし(固定し)、且つ、振動体を移動体に向かって押圧する為の“固定部”と称される部材も、前記ベース上に設けなければならない。このように、特許文献1に開示されている超音波モータでは、各構成部材を前記ベース上に平面的に配置しなければならない。従って、当該超音波モータは、薄型化は可能であっても、細径化が困難である。
【0006】
本発明は、前記の事情に鑑みて為されたものであり、細径化が容易な超音波モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明の第1の態様による超音波モータは、
圧電素子の振動を利用してロータを回転させる超音波モータであって、
略筒状を呈し、当該超音波モータの構成部材を収容するケースと、
成形された金属から成り、前記ケースの長手方向と同方向を長手方向とする弾性体と、
前記弾性体に設けられた板状圧電素子と、
前記弾性体の一方端部に接触しているロータと、
を具備し、
前記弾性体は、
前記ロータに接触している一方端部から成る接触部と、
前記ケースの端面に対して略垂直を為し、少なくとも1枚以上の前記板状圧電素子が長手方向に沿って設けられた駆動部と、
前記接触部及び前記駆動部を支持する支持部と、
を備え、
前記ロータの回転軸と、前記支持部と、前記接触部と、前記駆動部とは、前記長手方向に沿って同一直線上に位置している
を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、細径化が容易な超音波モータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る超音波モータの分解斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す超音波モータのA−A´線における断面矢視図である。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態に係る超音波モータの斜視図である。
【図4】図4は、板状圧電素子に印加する電圧の時間変化を示す図である。
【図5】図5は、振動体の変位の時間変化を示す図である。
【図6】図6は、ロータの動きの有無の時間変化を示す図である。
【図7】図7は、本発明の第2実施形態に係る超音波モータの分解斜視図である。
【図8】図8は、図7に示す超音波モータのA−A´線における断面矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る超音波モータについて、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る超音波モータの分解斜視図である。図2は、図1に示す超音波モータのA−A´線における断面矢視図である。図3は、本発明の第1実施形態に係る超音波モータの斜視図である。
【0011】
図1に示すように、超音波モータ1は、ケース10と、ロータ12と、弾性体14と、板状圧電素子16−1,16−2と、ボルト18と、を具備する。
前記ケース10は、略円筒形状を呈し、当該超音波モータ1の各構成部材を収容するケースである。このケース10の一方端面には、当該ケース10内に収容されたロータ12の一部を外部に露出させる窓部10wが設けられている。また、ケース10の他方端は、各構成部材を挿入する為の開口部である。この開口部近傍の内周面には、ボルト18に形成された“おねじ”18sと螺合する“めねじ”(不図示)が形成されており、ケース10内に各構成部材が挿入された後、当該開口部に対してボルト18が締結される。
【0012】
さらに、ケース10の側周面には、溝部10sが、当該ケース10の長手方向に沿って前記開口部側から前記一方端面の近傍まで設けられている。この溝部10sは、図1乃至図3に示すようにケース10の側周面において互いに対向する位置に2本設けられており、それぞれロータ12の回転軸12c及び弾性体14の突起部14−1tが挿入される。
【0013】
前記ロータ12は、弾性体14の接触部14−3によって摺動される被駆動体である。詳細には、このロータ12は略円板形状を呈し、その中心軸上には回転軸12cが当該円板面に対して垂直に設けられており、円周面12rは弾性体14の接触部14−3に接触している。このロータ12は、回転軸12cがケース10の溝部10sに挿入されて位置決めされる。
【0014】
前記弾性体14は、例えばプレスやエッチング等により成形された板状の金属から成る弾性部材であり、支持部14−1と駆動部14−2と接触部14−3とが一体的に形成されている。
前記支持部14−1は、当該弾性体14の長手方向における一方端部位であって略円板状を呈し、その円周面における互いに対向する位置には径方向に凸に2つの突起部14−1tが設けられている。それら突起部14−1tはケース10の溝部10sに挿入され、当該弾性体14をケース10に対して位置決めする。
【0015】
前記接触部14−3は、当該弾性体14の長手方向における他方端部位であって、ケース10内に収容されたロータ12に対して接触する略U字形状を呈する板状部材である。この接触部14−3は、板状部材である駆動部14−2の端部を略U字形状に加工することで形成されている。
【0016】
前記駆動部14−2は、支持部14−1に対して略垂直を為し、ケース10の長手方向に沿って延びる長板状部材である。本例では、駆動部14−2は、支持部14−1の一部を折り曲げ加工することで形成されている。この為、当該弾性体14は全体として略T字形状を呈している。
【0017】
この駆動部14−2の上面には、板状圧電素子16−1が接着等によって長手方向に沿って設けられており、同様に、駆動部14−2の下面には板状圧電素子16−2が接着等によって長手方向に沿って設けられている。
なお、弾性体14の材料としては、例えばSUSや真鍮等が好ましい。また、弾性体14の形状は必ずしも略T字形状でなくともよく、同様の作用効果をもたらす形状、例えば略L字形状等であっても勿論よい。
【0018】
前記板状圧電素子16−1,16−2は、接着等によって駆動部14−2に固定され、駆動部14−2と共に所謂バイモルフ機構の圧電振動体を成している。なお、板状圧電素子16−1及び板状圧電素子16−2のうち何れか一方のみを駆動部14−2に接着等によって固定して、所謂ユニモルフ機構の圧電振動体としても勿論よい。
【0019】
前記ボルト18は、ケース10内にロータ12と弾性体14とが挿入されて配設された後、ケース10の開口部近傍の内周面に形成された“めねじ”に螺合され、当該ケース10に対して締結される。
以下、本一実施形態に係る超音波モータの組み立て方法について説明する。
【0020】
まず、ケース10の開口部側からケース10の溝部10sにロータ12の回転軸12cを差し込み、そのままロータ12をケース10内部へ挿入する。このとき、回転軸12cが溝部10sの端部に突き当たるまでロータ12を挿入し、ロータ12の円周面(側周面)の一部をケース10の窓部10wから露出させる。
【0021】
続いて、弾性体14を接触部14−3側からケース10内に挿入する。支持部14−1をケース10内に挿入する際には、支持部14−1の突起部14−1tを、ケース10の溝部10sに差し込んだ状態で挿入する。その後、ボルト18をケース10の開口部に締結する。
【0022】
上述の工程によってボルト18がケース10の開口部に締結された状態においては、図2に示すように接触部14−3がロータ12に対して接触(例えば圧接)し、接触部14−3を介して弾性体14がロータ12に対して押し付けられた状態となる。換言すれば、弾性体14の接触部14−3がバネ性を発揮し(板バネとして機能し)、結果として、弾性体14がロータ12に付勢される。
【0023】
このように、弾性体14は、接触部14−3をロータ12へ押圧する機能と、ロータ12を摩擦駆動する機能と、ケース10内において当該弾性体14の位置を固定する(回転を防止する)機能とを兼ね備え、且つ、単一の部材から成る。
上述した構成を採ることで、図2に示すようにロータ12の回転軸12cと、支持部14−1と、駆動部14−2と、接触部14−3とが、ケース10の長手方向(すなわち弾性体14の長手方向)に沿って同一直線上に位置する。ここで、接触部14−3はケース10の長手方向への付勢力(弾性力)を有している為、この接触部14−3による押圧力は、ロータ12の回転軸12cと、支持部14−1と、駆動部14−2とが位置する略同一直線上において作用する。
【0024】
以下、本第1実施形態に係る超音波モータの作用について説明する。図4は、板状圧電素子16−1,16−2に印加する電圧の時間変化を示す図である。図5は、弾性体14の変位の時間変化を示す図である。図6は、ロータの動きの有無の時間変化を示す図である。
【0025】
当該超音波モータを駆動するには、例えば図4に示すように、弾性体14を電気的に接地し(GNDに設定し)、板状圧電素子16−1に正の交番電圧を印加し、板状圧電素子16−2に負の交番電圧を印加する。
このとき、板状圧電素子16−1と板状圧電素子16−2とは互いに逆向きに変位(伸縮)する。図4乃至図6に示す例では、弾性体14は、駆動部14−3が上側に変位するように変形する。このとき、変形する弾性体14の接触部14−3の変位によって、ロータ12が摩擦駆動(摺動)されて回転する。その後、板状圧電素子16−1,16−2に印加している電圧を零に設定すると、当該板状圧電素子16−1,16−2は初期位置に戻る。
【0026】
このような弾性体14の変形(変位)についての往復動作では、板状圧電素子16−1,16−2への電圧の印加を、図4乃至図6に示すように行う。すなわち、弾性体14の変形(変位)の為の電圧の印加は低速(詳細は後述)で行い、且つ、変形(変位)した弾性体14を初期状態に戻す際には高速(詳細は後述)に印加電圧を零にする。
【0027】
詳細には、低速変位時には、弾性体14の接触部14−3とロータ12との間の摩擦力が大きい為、図4乃至図6に示すように、ロータ12は弾性体14の変形(変位)に追従して移動する。他方、高速変位時には、弾性体14の接触部14−3とロータ12との間の摩擦力が小さい為、図4乃至図6に示すように、ロータ12は弾性体14の変形(変位)に追従せず、実質的に移動しない。つまり、弾性体14のみが変形(変位)して初期状態に復帰する。換言すれば、低速変位時には、静止摩擦力よりも動摩擦係数の方が大きくなる為、ロータ12と弾性体14の接触部14−3との間で滑りが発生し、ロータ12は実質的に摺動されない。
【0028】
上述のように駆動制御することで、ロータ12に所望の回転動作を行わせることができる。
以上説明したように、本第1実施形態によれば、細径化が容易な超音波モータを提供することができる。
また、本第1実施形態に係る超音波モータによれば、当該構造体(超音波モータ自体)の細径化を実現すると共に簡易な構成も実現しているので、組立て精度及び組立て容易性も向上し、低コスト化も可能となる。
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態に係る超音波モータについて説明する。図7は、本発明の第2実施形態に係る超音波モータの分解斜視図である。図8は、図7に示す超音波モータのA−A´線における断面矢視図である。なお、説明の重複を避ける為、第1実施形態に係る超音波モータとの相違点を説明する。この相違点は、弾性体の構成である。
【0029】
すなわち、第1実施形態に係る超音波モータでは、弾性体14の接触部14−3に押圧機能を備えさせているが、本第2実施形態に係る超音波モータ1では、弾性体24の支持部24−1に押圧機能を備えさせる。つまり、第1実施形態と本第2実施形態とでは、弾性体において押圧機能を備えさせる部位が異なる。以下、詳細に説明する。
【0030】
本第2実施形態に係る超音波モータの弾性体24は、支持部24−1と駆動部24−2とを具備する。前記支持部24−1は、所謂皿バネ機構であり、ケース10の長手方向への弾性力(付勢力)を有する。また、この支持部24−1は、ケース10の溝部10sに挿入される突起部24−1tを備えている。
【0031】
前記駆動部24−2は、支持部24−1に対して略垂直を為し、ケース10の長手方向に沿って延びる長板状部材である。この駆動部24−2のうち支持部24−1に接続されていない方の端部は、図8に示すようにロータ12の側周面に対して接触(圧接)し、ロータ12を摺動駆動する為の接触部として機能する。つまり、支持部24−1(皿バネ機構)のバネ性によって、駆動部24−2の端部がロータ12に圧接される。また、駆動部24−2の上面には、板状圧電素子16−1が接着等によって長手方向に沿って設けられており、同様に、駆動部24−2の下面には板状圧電素子16−2が接着等によって長手方向に沿って設けられている。
【0032】
以上説明したように、本第2実施形態によれば、第1実施形態に係る超音波モータと同様の効果を奏する超音波モータを提供することができる。
以上、第1実施形態及び第2実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、種々の変形及び応用が可能なことは勿論である。
【0033】
さらに、上述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示した複数の構成要件の適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示す全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0034】
1…超音波モータ、 10…ケース、 10w…窓部、 10s…溝部、 12…ロータ、 12c…回転軸、 14…弾性体、 14−1t…突起部、 14−1…支持部、 14−2…駆動部、 14−3…接触部、 16−1,16−2…板状圧電素子、 18…ボルト、 24…弾性体、 24−1…支持部、 24−2…駆動部、 24−1t…突起部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子の振動を利用してロータを回転させる超音波モータであって、
略筒状を呈し、当該超音波モータの構成部材を収容するケースと、
成形された金属から成り、前記ケースの長手方向と同方向を長手方向とする弾性体と、
前記弾性体に設けられた板状圧電素子と、
前記弾性体の一方端部に接触しているロータと、
を具備し、
前記弾性体は、
前記ロータに接触している一方端部から成る接触部と、
前記ケースの端面に対して略垂直を為し、少なくとも1枚以上の前記板状圧電素子が長手方向に沿って設けられた駆動部と、
前記接触部及び前記駆動部を支持する支持部と、
を備え、
前記ロータの回転軸と、前記支持部と、前記接触部と、前記駆動部とは、前記長手方向に沿って同一直線上に位置している
ことを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
前記弾性体の形状は折り曲げ加工によって形成され、略T字形状または略L字形状を呈する
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記接触部は、前記接触部を前記ロータに向かって押圧する押圧部を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項4】
前記押圧部は、略U字形状の板バネである
ことを特徴とする請求項3に記載の超音波モータ。
【請求項5】
前記支持部は、前記接触部を前記ロータに向かって押圧する押圧部を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項6】
前記押圧部は、皿バネである
ことを特徴とする請求項5に記載の超音波モータ。
【請求項7】
前記押圧部は、前記ロータの回転軸、前記支持部、前記接触部、及び前記駆動部と、前記長手方向に沿って略同一直線上に位置している
ことを特徴とする請求項3乃至請求項6のうち何れか一つに記載の超音波モータ。
【請求項8】
前記弾性体の前記駆動部は、前記板状圧電素子と共にバイモルフ機構またはユニモルフ機構の圧電振動体を構成している
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項9】
前記弾性体の前記支持部は、前記ケースに対して当該弾性体を位置決めする位置決め部材が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項10】
前記ケースの外周面には、前記長手方向に沿って溝部が形成されており、
前記支持部の前記位置決め部材は、前記溝部に挿入されて当該支持部を位置決めする突起部である
ことを特徴とする請求項9に記載の超音波モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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