説明

超音波距離測定装置および輸送機器

【課題】測定対象までの距離を迅速に測定することが可能でかつ超音波の多重反射による測定精度の低下が防止された超音波距離測定装置およびそれを備えた輸送機器を提供する。
【解決手段】送信素子50は、各測定期間において、超音波を送信する。受信素子60は測定対象で反射された超音波を受信し、受信した超音波の強度に対応する受信信号を出力する。反射時間測定部90は、各測定期間において、受信信号の第1の反射成分の時間軸上の位置に基づいて測定対象までの距離に対応する時間を算出する。ピーク保持部110は、第1の反射成分の最大値を保持する。可変電源140は、保持された最大値に基づいて、次の測定期間において受信信号に第1の反射成分が出現するとともに第2の反射成分の出現が抑制されるように、次の測定期間において送信素子50により送信される超音波の強度を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象までの距離を測定するために用いられる超音波距離測定装置およびそれを備えた輸送機器に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車には、周囲の測定対象までの距離を測定する距離測定装置が設けられる。特許文献1〜3には、超音波を用いた距離測定装置が記載されている。これらの距離測定装置においては、超音波が測定対象に周期的に送信されるとともに、測定対象により反射された超音波(反射波)が受信される。超音波が送信されてから反射波が受信されるまでの時間を計測することにより、測定対象までの距離を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−280932号公報
【特許文献2】特開昭61−95267号公報
【特許文献3】特開2007−34768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
距離測定装置では、連続的に設定される複数の測定期間の各々において、超音波が送信されるとともに反射波が受信される。超音波の送信部および受信部は、例えば自動二輪車の車体に設けられる。ここで、距離測定装置から地面までの距離を測定する場合、送信部から送信された超音波が、地面と車体との間で複数回にわたって反射(多重反射)されることがある。それにより、1回の超音波の送信後に複数の反射波が異なるタイミングで受信される。この場合、複数の反射波が異なる測定期間内で受信される可能性がある。
【0005】
特許文献1の超音波距離測定装置においては、多重反射が生じた場合、各測定期間で受信された超音波が同じ測定期間で送信された超音波に対応する反射波であるか、他の測定期間で送信された超音波に対応する反射波であるかを判別することができない。そのため、多重反射が生じた場合、測定対象までの距離を正確に測定することができない。
【0006】
特許文献2の超音波物体測定装置においては、超音波発振子の励振パルス中に励振休止期間が設けられる。これにより、所望の測定期間において送信された超音波に対応する反射波が、他の測定期間において送信された超音波に対応する反射波として受信される可能性が低減される。しかしながら、励振休止期間が設けられることにより、各測定期間の周期が長くなる。そのため、迅速に距離を測定することができない。自動二輪車のような移動体では、測定対象までの距離が短時間で変化する。このような場合に、各測定期間の周期が長いと、測定対象までの距離が測定された時点において、測定対象までの距離が既に変化していることがある。
【0007】
特許文献3の自律走行装置は、複数の超音波センサを有する。この自律走行装置は、進行方向に障害物がある場合、横方向に回避を行う。ここで、回避方向にも障害物がある場合、回避方向とは反対方向に送信される超音波が停止されまたは超音波の強度が低減される。これにより、自律走行装置の進行方向および回避方向の反対方向に存在する障害物での多重反射が低減される。しかしながら、上記の二方向以外に存在する障害物での多重反射を低減することができない。そのため、多重反射が生じた場合、距離を正確に測定することができない。
【0008】
本発明の目的は、測定対象までの距離を迅速に測定することが可能でかつ超音波の多重反射による測定精度の低下が防止された超音波距離測定装置およびそれを備えた輸送機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)第1の発明に係る超音波距離計測装置は、連続的に設定される測定期間で測定対象までの距離を測定するために用いられる超音波距離計測装置であって、各測定期間において超音波を送信する送信部と、送信部から送信される超音波が測定対象で反射されることにより生じる反射波を受信し、受信された反射波の強度に対応する受信信号を出力する受信部と、各測定期間において、受信部から出力される受信信号において最初に出現するピークの時間軸上の位置に基づいて送信部による超音波の送信から受信部による反射波の受信までの時間を算出する時間算出部と、各測定期間において、受信部から出力される受信信号において出現する1または複数のピークを検出し、検出された1または複数のピークの値を取得する検出部と、一の測定期間において検出部により取得された値に基づいて、一の測定期間に続く次の測定期間において最初のピークが出現するとともに最初のピークの出現後における他のピークの出現が抑制されるように、次の測定期間において送信部により送信される超音波の強度を調整する調整部とを備えるものである。
【0010】
この超音波距離計測装置においては、送信部により各測定期間において超音波が送信される。送信部から送信される超音波が測定対象で反射される。測定対象で反射された超音波が受信部により受信される。それにより、反射波の強度に対応する受信信号が受信部から出力される。各測定期間において、受信部から出力される受信信号において最初に出現するピークの時間軸上の位置に基づいて時間算出部により測定対象までの距離に対応する時間が算出される。
【0011】
各測定期間において、受信部から出力される受信信号において出現する1または複数のピークが検出部により検出され、検出された1または複数のピークの値が取得される。一の測定期間において検出部により取得されたピークの値が大きい場合には、一の測定期間送信された超音波に起因する多重反射によるピークが次の測定期間内に出現する可能性がある。この場合、次の測定期間で誤って多重反射によるピークに基づいて時間が算出される。
【0012】
そこで、一の測定期間において検出部により取得されたピークの値に基づいて、次の測定期間において最初のピークが出現するとともに最初のピークの出現後における他のピークの出現が抑制されるように、次の測定期間において送信部により送信される超音波の強度が調整部により調整される。
【0013】
このようにして、各測定期間において多重反射によるピークの出現が抑制される。したがって、各測定期間の長さを短く設定しても、多重反射によるピークが次の測定期間内に出現することが防止される。その結果、次の測定期間で誤って多重反射によるピークに基づいて時間が算出されることがない。そのため、各測定期間の長さを短く設定することができる。
【0014】
また、各測定期間において多重反射によるピークの出現が抑制されかつ各測定期間における最初のピークの値が一定範囲内に維持されることにより、受信部から出力される受信信号において最初に出現するピーク幅がほぼ一定となる。それにより、時間軸上でのピークの位置の検出が容易になるとともにピークの位置の検出精度が向上する。
【0015】
これらの結果、測定対象までの距離を迅速に測定するとともに超音波の多重反射による測定精度の低下を防止することができる。
【0016】
(2)超音波距離計測装置は、少なくとも一の測定期間において検出部により取得された最初のピークの値に基づいて、一の測定期間内において送信された超音波に起因する他のピークが一の測定期間に続く次の測定期間内で検出されないように一の測定期間の長さを増加させる測定期間制御部をさらに備えてもよい。
【0017】
測定対象の反射率が急に増加した場合、多重反射による反射波の強度が増加する。そのため、より遠方の測定対象での多重反射による反射波が受信部により受信される可能性がある。この場合、一の測定期間において超音波が送信されてから多重反射による反射波が受信されるまでの時間が長くなる。その結果、多重反射による反射波が次の測定期間で受信される可能性がある。
【0018】
このような場合でも、一の測定期間の長さが増加されることにより、多重反射による反射波が次の測定期間で受信されることが防止される。これにより、一の測定期間の受信信号における最初のピークと同じ超音波に起因する他のピークが、次の測定期間の受信信号において最初に出現するピークとして検出されることがない。その結果、超音波の多重反射による距離の測定精度の低下を防止することができる。
【0019】
(3)測定期間制御部は、一の測定期間において検出部により取得された最初のピークの値および一の測定期間の直前の測定期間において検出部により取得された最初のピークの値に基づいて一の測定期間の長さを増加させてもよい。
【0020】
この場合、一の測定期間において取得された最初のピークの値および直前の測定期間において取得された最初のピークの値に基づいて、直前の測定期間における最初のピークの検出後に測定対象の反射率が急に増加したことを確実に検出することができる。これにより、測定対象の反射率が急に増加した場合にて一の測定期間の長さを確実に増加させることができる。
【0021】
(4)測定期間制御部は、直前の測定期間において検出部により取得された最初のピークの値に対する一の測定期間において検出部により取得された最初のピークの値の増加の程度が予め定められた第1の値以上である場合に、一の測定期間の長さを増加させてもよい。
【0022】
この場合、最初のピークの値の増加の程度と第1の値とを比較することにより、直前の測定期間における最初のピークの検出後に測定対象の反射率が急に増加したことを容易かつ確実に検出することができる。
【0023】
(5)増加の程度は、一の測定期間において検出部により取得された最初のピークの値と直前の測定期間において検出部により取得された最初のピークの値との差であってもよい。
【0024】
この場合、最初のピークの値の増加の程度を減算により容易に算出することができる。
【0025】
(6)測定期間制御部は、一の測定期間において検出部により取得された最初のピークの値が予め定められた第2の値以上である場合に、一の測定期間の長さを増加させてもよい。
【0026】
一の測定期間における最初のピークの検出前に測定対象の反射率が急に増加した場合には、一の測定期間における最初のピークの値が大きくなる。そこで、一の測定期間において取得された最初のピークの値と第2の値とを比較することにより、一の測定期間において測定対象の反射率が急に増加したことを容易かつ迅速に検出することができる。
【0027】
(7)超音波距離計測装置は、測定期間の開始時点をそれぞれ規定するための周期的なパルスを有する基準信号を発生する信号発生部をさらに備え、送信部は、信号発生部により発生される基準信号の各パルスに応答して超音波を送信し、測定期間制御部は、信号発生部により発生される基準信号において一の測定期間に続く次の測定期間の開始時点のパルスの出力を阻止することにより一の測定期間の長さを増加させてもよい。
【0028】
この場合、一の測定期間に続く次の測定期間の開始時点ではパルスが出力されないことにより、一の測定期間と次の測定期間とが合体する。その結果、一の測定期間が実質的に増加する。これにより、一の測定期間の長さを確実に増加させることができる。
【0029】
(8)超音波距離計測装置は、測定期間の開始時点をそれぞれ規定するためのパルスを有する基準信号を発生するとともに基準信号のパルスの周期を変更可能に構成された信号発生部をさらに備え、送信部は、信号発生部により発生される基準信号の各パルスに応答して超音波を送信し、測定期間制御部は、信号発生部により発生される基準信号における一の測定期間を規定するパルスの周期を増加させることにより一の測定期間の長さを増加させてもよい。
【0030】
この場合、一の測定期間を規定するパルスの周期が増加されることにより、一の測定期間の長さを確実かつ任意に増加させることができる。
【0031】
(9)調整部は、各測定期間において検出部により取得された最初のピークの値および次のピークの値の予め定められた演算の結果に基づいて、次の測定期間において送信部により送信される超音波の強度を調整してもよい。
【0032】
この場合、各測定期間において最初に受信される反射波の強度だけでなく、多重反射による反射波の強度にも基づいて超音波の強度が調整される。これにより、超音波の多重反射によるピークの出現を確実に抑制することができる。
【0033】
(10)第2の発明に係る輸送機器は、本体部と、本体部を移動させる駆動部と、本体部に設けられる第1の発明に係る超音波距離計測装置とを備えるものである。
【0034】
この輸送機器においては、駆動部が本体部を移動させる。本体部には、上記の超音波距離計測装置が設けられるので、測定対象までの距離を迅速に測定するとともに超音波の多重反射による測定精度の低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、測定対象までの距離を迅速に測定するとともに超音波の多重反射による測定精度の低下を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1の実施の形態に係る超音波距離測定装置の信号処理系の構成を示すブロック図である。
【図2】パルス発生部、送信波形発生部および発振器により発生される信号の波形図である。
【図3】パルス発生部、受信素子、検波部および増幅部により発生される信号の波形図である。
【図4】パルス発生部、送信出力部、増幅部および保持信号発生部により発生される信号ならびにピーク保持部および可変電源により出力される電圧のタイミング図である。
【図5】可変電源の構成を示すブロック図である。
【図6】受信素子および検波部により発生される信号の波形図である。
【図7】第2の実施の形態に係る超音波距離測定装置の信号処理系の構成を示すブロック図である。
【図8】図7のパルス発生部、受信素子、保持信号発生部および停止信号発生部により発生される信号ならびにピーク保持部およびサンプル保持部により出力される電圧のタイミング図である。
【図9】第3の実施の形態に係る超音波距離測定装置の信号処理系の構成を示すブロック図である。
【図10】トリガ回路の構成を示すブロック図である。
【図11】図9のパルス発生部、受信素子、保持信号発生部、比較部およびトリガ発生部より発生される信号ならびにピーク保持部により出力される電圧のタイミング図である。
【図12】第4の実施の形態に係る超音波距離測定装置を備えた超音波傾斜測定装置の信号処理系の構成を示すブロック図である。
【図13】図12の超音波傾斜測定装置を備えた自動二輪車を示す模式的側面図である。
【図14】図13の自動二輪車の模式的上面図である。
【図15】超音波傾斜測定装置の動作を説明するための図である。
【図16】第5の実施の形態に係る超音波距離測定装置を備えた超音波傾斜測定装置の信号処理系の構成を示すブロック図である。
【図17】第6の実施の形態に係る超音波距離測定装置を備えた超音波傾斜測定装置の信号処理系の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[1]第1の実施の形態
以下、第1の実施の形態に係る超音波距離測定装置について図面を参照しながら説明する。超音波距離測定装置は、例えば自動二輪車に設けられる。
【0038】
(1)超音波距離測定装置の信号処理系の構成
図1は、第1の実施の形態に係る超音波距離測定装置の信号処理系の構成を示すブロック図である。図1に示すように、超音波距離測定装置300は、パルス発生部10、送信波形発生部20および発振器30を含む。また、超音波距離測定装置300は、送信出力部40、送信素子50、受信素子60、検波部70、増幅部80、反射時間測定部90および保持信号発生部100を含む。さらに、超音波距離測定装置300は、ピーク保持部110,120、加算部130および可変電源140を含む。
【0039】
図2は、パルス発生部10、送信波形発生部20および発振器30により発生される信号の波形図である。図2の横軸は時間である。以下、図1および図2を参照しながらパルス発生部10、送信波形発生部20および発振器30の動作について説明する。
【0040】
図1のパルス発生部10は、図2(a)に示すように、矩形パルスを有する基準信号BSを発生する。基準信号BSは、“H”レベルおよび“L”レベルに周期的に変化する。基準信号BSの各周期が測定期間Tとなる。
【0041】
パルス発生部10により発生された基準信号BSは、送信波形発生部20、反射時間測定部90および保持信号発生部100に与えられる。また、パルス発生部10は、図2(b)に示すように、“H”レベルおよび“L”レベルに周期的に変化するマスク信号MSを発生する。各測定期間Tにおいて、マスク信号MSは、基準信号BSの“H”レベルへの立ち上がりと同時に“H”レベルに立ち上がり、基準信号BSの“L”レベルへの立ち下がりから一定時間後に“L”レベルに立ち下がる。パルス発生部10により発生されたマスク信号MSは、検波部70に与えられる。マスク信号MSの働きについては後述する。
【0042】
図1の発振器30は、図2(c)に示すように、基準信号BSの周波数1/Tよりも高い周波数(例えば200kHz)を有する発振信号OSを発生する。発振器30により発生された発振信号OSは送信波形発生部20に与えられる。送信波形発生部20は、図2(d)に示すように、基準信号BSが“H”レベルである期間に、発振信号を送信信号TS0として出力する。送信波形発生部20により出力された送信信号TS0は送信出力部40に与えられる。
【0043】
図1の送信出力部40は、後述する可変電源140から供給される電源電圧SVに応じて送信信号TS0の振幅を変化させることにより送信信号TS1を生成する。送信出力部40により生成された送信信号TS1は送信素子50に与えられる。送信素子50は、送信信号TS1の振幅に比例する強度を有する超音波を送信する。
【0044】
図3は、パルス発生部10、受信素子60、検波部70および増幅部80により発生される信号の波形図である。図3の横軸は時間である。以下、図1および図3を参照しながら受信素子60、検波部70および増幅部80の動作について説明する。図3(a)の基準信号BSは、図2(a)の基準信号BSと同様である。
【0045】
図1の送信素子50により送信された超音波は、周囲の測定対象により反射され、反射波として受信素子60により受信される。受信素子60は、図3(b)に示すように、受信した反射波の強度に応じた振幅を有する受信信号RS0を出力する。受信素子60により出力された受信信号RS0は、検波部70および増幅部80に与えられる。
【0046】
送信素子50および受信素子60は、例えば後述する図13の自動二輪車1の車体に設けられる。ここで、超音波距離測定装置300から地面までの距離を測定する場合、送信素子50により送信される超音波が、地面と車体との間で複数回反射されることがある。以下、このような複数回の超音波の反射を多重反射と呼ぶ。多重反射が発生した場合、基準信号BSの各測定期間Tにおいて反射波が受信素子60により複数回受信される。各測定期間Tにおいて、1回目に受信素子60により受信される反射波を第1の反射波と呼ぶ。第1の反射波に対応する受信信号RS1のピークを第1の反射成分r1と呼ぶ。各測定期間Tにおいて、受信素子60により第1の反射波が受信された後、2回目に受信素子60により受信される反射波を第2の反射波と呼ぶ。第2の反射波に対応する受信信号RS1のピークを第2の反射成分r2と呼ぶ。多重反射が発生しない場合、受信素子60により受信される第2の反射波の強度は0である。
【0047】
図1の検波部70には、前述のようにパルス発生部10からマスク信号MSが与えられている。検波部70は、マスク信号MSが“L”レベルの期間に、図3(c)に示すように、受信信号RS0を検波することにより検波信号DSを発生する。具体的には、検波部70は、受信信号RS0の波形の包絡線を抽出し、抽出した包絡線を予め定められたしきい値で“H”レベルと“L”レベルとに2値化することにより矩形状のパルスを有する検波信号DSを生成する。
【0048】
検波部70は、マスク信号MSが“H”レベルである期間には、受信信号RS0にかかわらず検波信号DSを“L”レベルに保持する。これにより、送信素子50により送信される超音波が直接受信素子60により受信された場合でも、直接された超音波に基づく変化が検波信号DSに現れない。
【0049】
検波部70により発生された検波信号DSは、図1の反射時間測定部90および保持信号発生部100に与えられる。反射時間測定部90は、基準信号BSおよび検波信号DSに基づいて、送信素子50により超音波が送信されてから受信素子60により反射波が受信されるまでの時間tを測定する。本実施の形態では、基準信号BSが“H”レベルに立ち上がってから検波信号DSの最初のパルスの立ち上がりまでの時間tを測定する。(図3(c)参照)。また、反射時間測定部90は、測定された時間tおよび超音波の速度に基づいて、超音波距離測定装置300から周囲の測定対象までの距離を算出する。なお、反射時間測定部90により測定された時間に基づいて、後述する図13のECU(Electronic Control Unit;電子制御ユニット)700等の外部の処理装置が距離を算出してもよい。
【0050】
図1の増幅部80は、図3(d)に示すように、受信信号RS0を増幅することにより受信信号RS1を出力する。受信信号RS0の第1の反射成分r1は、増幅部80で増幅されることにより第1の反射成分R1となる。受信信号RS0の第2の反射成分r2は、増幅部80で増幅されることにより第2の反射成分R2となる。増幅部80により出力された受信信号RS1は、保持信号発生部100およびピーク保持部110,120に与えられる。
【0051】
図4は、パルス発生部10、送信出力部40、増幅部80および保持信号発生部100により発生される信号ならびにピーク保持部110,120および可変電源140により出力される電圧のタイミング図である。図4の横軸は時間である。以下、図1および図4を参照しながら、超音波による第2の反射成分R2を抑制するとともに第1の反射成分R1を調整する手順について説明する。
【0052】
図1のパルス発生部10により発生される基準信号BSは、図4(a)に示すように、測定期間T1の開始時点t11で“H”レベルに立ち上がった後、“L”レベルに立ち下がり、測定期間T2の開始時点t21で“H”レベルに立ち上がった後、“L”レベルに立ち下がる。送信出力部40は、図4(b)に示すように、基準信号BSに基づいて送信素子50に送信信号TS1を与える。これにより、送信素子50から送信される超音波による反射波が受信素子60により受信される。
【0053】
また、パルス発生部10により発生されるマスク信号MSは、図4(c)に示すように、測定期間T1の開始時点t11から時点t12までの期間“H”レベルとなり、測定期間T2の開始時点t21から時点t22までの期間“H”レベルとなる。
【0054】
保持信号発生部100は、マスク信号MSおよび受信信号RS1に応答して図4(e)に示すピーク保持信号PS1および図4(f)に示すピーク保持信号PS2を発生する。
【0055】
ピーク保持信号PS1は、マスク信号MSの立ち下がり時に“H”レベルに立ち上がり、受信信号RS1の振幅が予め定められた値以下になった時点で“L”レベルに立ち下がる。図4の例では、ピーク保持信号PS1は、測定期間T1の時点t12から時点t13まで“H”レベルとなり、測定期間T2の時点t22から時点t23まで“H”レベルとなる。
【0056】
ピーク保持信号PS2は、ピーク保持信号PS1の立ち下がり時に“H”レベルに立ち上がり、予め定められた一定時間経過後に“L”レベルに立ち下がる。図4の例では、ピーク保持信号PS2は、測定期間T1の時点t13から時点t14まで“H”レベルとなり、測定期間T2の時点t23から時点t24まで“H”レベルとなる。
【0057】
各測定期間において、ピーク保持信号PS1が“H”レベルとなる期間を第1の有効期間P1と呼び、ピーク保持信号PS2が“H”レベルとなる期間を第2の有効期間P2と呼ぶ。測定期間T1においては、時点t12から時点t13までが第1の有効期間P1であり、時点t13から時点t14までが第2の有効期間P2である。測定期間T2においては、時点t22から時点t23までが第1の有効期間P1であり、時点t23から時点t24までが第2の有効期間P2である。
【0058】
ここで、第2の有効期間P2は、第2の反射波が受信されると予想される期間を含みかつ次の測定期間の開始時点よりも前までに終了するように設定される。
【0059】
保持信号発生部100により発生されたピーク保持信号PS1,PS2は、ピーク保持部110,120にそれぞれ与えられる。
【0060】
なお、保持信号発生部100には、前述のように検波部70から図3(c)の検波信号DSが与えられている。保持信号発生部100は、各測定期間において、受信信号RS0の第1の反射成分r1に対応する検波信号DSのパルスが“L”レベルに立ち下がる時点でピーク保持信号PS1を“L”レベルに立ち下げてもよい。
【0061】
ピーク保持部110は、各測定期間において、ピーク保持信号PS1に基づいて、第1の有効期間P1における受信信号RS1の振幅の最大値(最大振幅)を保持し、保持した最大値をピーク保持電圧PV1として出力する。本例では、図4(e)に示すように、ピーク保持信号PS1が“H”レベルから“L”レベルに立ち下がった時点でピーク保持電圧PV1が確定する。それにより、図4(e)および図4(g)に示すように、ピーク保持電圧PV1は、測定期間T1の時点t13で受信信号RS1の第1の反射成分R1の最大値V11となり、測定期間T2の時点t23で受信信号RS1の第1の反射成分R1の最大値V12となる。
【0062】
ピーク保持部120は、各測定期間において、ピーク保持信号PS2に基づいて、第2の有効期間P2における受信信号RS1の振幅の最大値(最大振幅)を保持し、保持した最大値をピーク保持電圧PV2として出力する。本例では、図4(f)に示すように、ピーク保持信号PS2が“H”レベルから“L”レベルに立ち下がった時点でピーク保持電圧PV2が確定する。それにより、図4(f)および図4(h)に示すように、ピーク保持電圧PV2は、測定期間T1の時点t14で受信信号RS1の第2の反射成分R2の最大値V12となる。測定期間T2においては、受信信号RS1に第2の反射成分R2は現れない。そのため、測定期間T2の第2の有効期間P2における受信信号RS1の最大値は0である。
【0063】
ピーク保持部110,120からそれぞれ出力されるピーク保持電圧PV1,PV2は、図1の加算部130に与えられる。加算部130は、ピーク保持電圧PV1とピーク保持電圧PV2とをそれぞれ所定の比率で加算し、図4(i)に示すように、加算結果に相当する制御電圧CVを出力する。ここで、ピーク保持電圧PV1およびピーク保持電圧PV2の加算時の比率をそれぞれaおよびbとする。比率aおよびbは、任意の値に設定することができる。本例では、制御電圧CVは、測定期間T1の時点t13で値aV11となり、時点t14で値(aV11+bV21)となる。また、制御電圧CVは、測定期間T2の時点t23で値(aV12+bV21)となり、時点t24で値aV12となる。加算部130から出力される制御電圧CVは、可変電源140に与えられる。
【0064】
可変電源140は、図4(j)に示すように、一定の設定電圧から制御電圧CVを所定の比率で減算することにより得られる電源電圧SVを発生する。すなわち、制御電圧CVが上昇すると、電源電圧SVは低下する。一方、制御電圧CVが低下すると、電源電圧SVは上昇する。
【0065】
本例では、制御電圧CVは、測定期間T1の時点t13で値VAに低下し、時点t14でさらに値VBに低下する。その後、電源電圧SVは、測定期間T2の時点t23で値VCに上昇し、時点t24でさらに値VDに上昇する。
【0066】
可変電源140により発生される電源電圧SVは、送信出力部40に供給される。可変電源140により供給される電源電圧SVが高いほど、送信出力部40により生成される送信信号TS1の振幅が大きくなる。それにより、送信素子50により送信される超音波の強度が大きくなる。一方、可変電源140により供給される電源電圧SVが低いほど、送信出力部40により生成される送信信号TS1の振幅が小さくなる。それにより、送信素子50により送信される超音波の強度が小さくなる。そのため、可変電源140の電源電圧SVの大きさを調整することにより、送信素子50により送信される超音波の強度を調整することができる。
【0067】
図4の例においては、測定期間T1の第1の有効期間P1における受信信号RS1の第1の反射成分R1の最大値に基づいて電源電圧SVが値VAに制御される。その後、第2の有効期間P2において受信信号RS1に多重反射による第2の反射成分R2が現れる。この場合、電源電圧SVが値VBに低下される。それにより、測定期間T2の開始時に送信される超音波の強度が低下する。
【0068】
その結果、測定期間T2の第1の有効期間P1における受信信号RS1の第1の反射成分R1の最大値が低下する。また、測定期間T2の第2の有効期間P2においては、受信信号RS1に多重反射による第2の反射成分R2が現れない。
【0069】
以後、各測定期間の第1の有効期間P1および第2の有効期間P2における受信信号RS1の最大値に基づいて、第2の有効期間P2において受信信号RS1に多重反射による第2の反射成分R2が現れず、かつ、各測定期間の第1の有効期間P1における受信信号RS1の第1の反射成分R1の最大値が一定範囲内に維持されるように、超音波の強度が制御される。
【0070】
図5は、可変電源140の構成を示すブロック図である。図5に示すように、可変電源140は、NOT回路141、FET(電界効果トランジスタ)142、抵抗143,144,145および可変電源IC(集積回路)146を含む。
【0071】
図1の加算部130から出力される制御電圧CVは、NOT回路141を介してFET142のゲートGに与えられる。なお、NOT回路141は線形増幅器により構成され、入力された電圧が上昇すると出力電圧が低下し、入力された電圧が低下すると出力電圧が上昇するように動作する。FET142のドレインDは、抵抗143を介してノードN1に接続される。FET142のソースSは、抵抗144を介してノードN1に接続される。ノードN1は、抵抗145を介して可変電源IC146の制御端子CTに接続される。可変電源IC146の出力端子は、図1の送信出力部40の電源端子に接続される。
【0072】
可変電源IC146は、制御端子CTに与えられる電圧を一定の設定電圧から減算し、減算された電圧を電源電圧SVとして送信出力部40の電源端子に供給する。制御電圧CVが上昇すると、FET142のゲートGに与えられる電圧が低下する。それにより、可変電源IC146の制御端子CTの電圧が上昇する。その結果、可変電源IC146から送信出力部40に供給される電源電圧SVが低下する。逆に、制御電圧CVが低下すると、FET142のゲートGに与えられる電圧が上昇する。それにより、可変電源IC146の制御端子CTの電圧が低下する。その結果、可変電源IC146から送信出力部40に供給される電源電圧SVが上昇する。
【0073】
(2)効果
本実施の形態に係る超音波距離測定装置300においては、各測定期間において受信信号RS1に多重反射による第2の反射成分R2が現れずかつ各測定期間における受信信号RS1の第1の反射成分R1の最大値が一定範囲内に維持されるように、超音波の強度が制御される。それにより、以下に説明するように、測定対象までの距離の測定精度が向上する。
【0074】
図6は、受信素子60および検波部70により発生される信号の波形図である。図6の横軸は時間である。図6(a)は、受信素子60により受信される反射波の強度が大きい場合に受信素子60により発生される受信信号RS0を示す。検波部70が図6(a)の受信信号RS0を検波することにより、図6(b)の検波信号DSが得られる。図6(b)の検波信号DSは、幅w1の矩形状のパルスを有する。
【0075】
図6(c)は、受信素子60により受信される反射波の強度が小さい場合に受信素子60により発生される受信信号RS0を示す。検波部70が図6(c)の受信信号RS0を検波することにより、図6(d)の検波信号DSが得られる。図6(d)の検波信号DSは、幅w2の矩形状のパルスを有する。
【0076】
図6(c)の受信信号RS0の第1の反射波に相当する成分の振幅は、図6(a)の受信信号RS0の第1の反射波に相当する成分の振幅よりも小さい。この場合、図6(d)の検波信号DSのパルスの幅w2は、図6(b)の検波信号DSのパルスの幅w1よりも小さい。それにより、図6(b)の検波信号DSのパルスの前縁および後縁の位置は、図6(d)の検波信号DSのパルスの前縁および後縁の位置とは異なる。したがって、図3を用いて説明した方法で距離を算出する場合に、受信素子60により受信される反射波の強度に測定誤差が生じる。
【0077】
本実施の形態では、各測定期間において受信信号RS1の第1の反射成分R1の最大値が一定範囲内に維持されるので、検波信号DSのパルスの幅が一定となる。それにより、測定対象までの測定精度が向上する。
【0078】
また、検波信号DSのパルスの中点を検出することなく、測定対象までの距離を正確に測定することができるので、検波信号DSのパルスの中点を検出する処理が不要となる。したがって、超音波距離測定装置300の反射時間測定部90の回路構成が複雑化しない。
【0079】
また、各測定期間において送信された超音波に起因する多重反射による第2の反射成分R2が、次の測定期間内の受信信号RS1に現れることが防止される。そのため、次の測定期間で誤って多重反射による第2の反射成分R2に基づいて距離が算出されることがない。
【0080】
なお、各測定期間の長さ(周期)を短く設定した場合、超音波距離測定装置300の動作開始時点において、受信信号RS1における第2の反射成分R2が抑制されるまでに、測定対象までの距離によっては第2の反射成分R2が次の測定期間の第1の有効期間P1内に現れる可能性がある。しかしながら、一定時間の経過後には、第1および第2の有効期間P1,P2における第1および第2の反射成分R1,R2の最大値に基づいて、第2の反射成分R2が現れなくなるように超音波の強度が調整される。したがって、以後は測定対象までの距離が正確に測定される。そのため、各測定期間の長さ(周期)を短くすることが可能となる。
【0081】
これらの結果、測定対象までの距離を迅速に測定するとともに超音波の多重反射による測定精度の低下を防止することが可能になる。
【0082】
[2]第2の実施の形態
(1)超音波距離測定装置の信号処理系の構成
第2の実施の形態に係る超音波距離測定装置300について、第1の実施の形態に係る超音波距離測定装置300と異なる点を説明する。図7は、第2の実施の形態に係る超音波距離測定装置300の信号処理系の構成を示すブロック図である。図7の超音波距離測定装置300が図1の超音波距離測定装置300と異なるのは以下の点である。
【0083】
図7に示すように、本実施の形態に係る超音波距離測定装置300は、サンプル保持部150、差分検出部160、比較部170、基準電圧発生部180および停止信号発生部190をさらに含む。
【0084】
図8は、図7のパルス発生部10、受信素子60、保持信号発生部100および停止信号発生部190により発生される信号ならびにピーク保持部110およびサンプル保持部150により出力される電圧のタイミング図である。図8の横軸は時間である。
【0085】
本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、図7の送信素子50により送信される超音波の強度が調整されている。そのため、図8に示すように、時点t31から時点t41までの測定期間T3においては、受信信号RS1に多重反射による第2の反射成分R2が現れない。
【0086】
ここで、測定期間T4以後において、周囲の測定対象の反射率が増加する場合を考える。この場合、多重反射による第2の反射波の強度が増加する。そのため、多重反射による第2の反射波が受信素子60により受信される可能性がある。それにより、受信信号RS1における第2の反射成分R2が次の測定期間に現れる。その結果、超音波距離測定装置300による測定対象までの距離の測定結果が一時的に不正確になる可能性がある。
【0087】
以下、図7および図8を参照しながら測定対象の反射率が増加した場合における本実施の形態に係る超音波距離測定装置300の動作について説明する。
【0088】
図7のパルス発生部10は、図8(a)の基準信号BSと同じ周期を有するパルス信号を内部的に発生し、後述する停止信号発生部190により発生される停止信号SSに基づいて基準信号BSを発生する。
【0089】
図8の測定期間T3の第1の有効期間P1において受信信号RS1に第1の反射成分R1が現れる。次の測定期間T4の第1の有効期間P1において受信信号RS1に第1の反射成分R1が現れる。この場合、上記のように、測定対象の反射率が増加することにより、測定期間T4における第1の反射成分R1の最大値V14は、測定期間T3における第1の反射成分R1の最大値V13に比べて増加する。本例では、多重反射による第2の反射成分R2が測定期間T5の第1の有効期間P1に現れている。
【0090】
図8(c)および図8(f)に示すように、ピーク保持電圧PV1は、測定期間T3の時点t33で受信信号RS1の第1の反射成分R1の最大値V13となり、測定期間T4の時点t43で受信信号RS1の第1の反射成分R1の最大値V14となる。
【0091】
保持信号発生部100は、図8(a)の基準信号BSに応答して、図8(e)に示すように、サンプル保持信号HSを発生する。サンプル保持信号HSは、基準信号BSの立ち上がり時に“H”レベルに立ち上がった後“L”レベルに立ち下がる。
【0092】
本例では、図8(e)に示すように、サンプル保持信号HSは、測定期間T3のピーク保持信号PS1に応答して測定期間T4の開始時点t41で“H”レベルに立ち上がった後、“L”レベルに立ち下がる。サンプル保持信号HSは、測定期間T4のピーク保持信号PS1に応答して測定期間T5の開始時点t51で“H”レベルに立ち上がった後、“L”レベルに立ち下がる。サンプル保持信号HSは、測定期間T5のピーク保持信号PS1に応答して測定期間T6の開始時点t61で“H”レベルに立ち上がった後、“L”レベルに立ち下がる。
【0093】
保持信号発生部100により発生されたサンプル保持信号HSは、サンプル保持部150に与えられる。また、ピーク保持部110から出力されるピーク保持電圧PV1は、加算部130に与えられるとともに、サンプル保持部150および差分検出部160に与えられる。
【0094】
図7のサンプル保持部150は、サンプル保持信号HSの“H”レベルへの立ち上がり時点でピーク保持電圧PV1を保持し、保持したピーク保持電圧PV1をサンプル保持電圧HVとして出力する。サンプル保持電圧HVは、図8(g)に示すように、時点t41でピーク保持電圧HVの値(第1の反射成分R1の最大値)V13になり、時点t61まで一定に保持される。
【0095】
図7の差分検出部160は、図8(f)のピーク保持電圧PV1と図8(g)のサンプル保持電圧HVとの差分電圧Vdを検出する。図8(h)に示すように、差分電圧Vdは、測定期間T3の時点t33から時点t41までの期間に値V13となり、時点t41から時点t43までの期間に0となり、時点t43から時点t61までの期間に値(V14−V13)となる。
【0096】
差分検出部160により検出された差分電圧Vdは、図7の比較部170に与えられる。また、基準電圧発生部180は、予め設定された所定の基準電圧Vrを発生する。基準電圧発生部180により発生された基準電圧Vrは、比較部170に与えられる。比較部170は、差分電圧Vdと基準電圧Vrとを比較し、比較結果を示す出力信号を停止信号発生部190に与える。
【0097】
図7の停止信号発生部190は、比較部170の出力信号に基づいて、“H”レベルおよび“L”レベルからなる停止信号SSを発生する。停止信号SSは、差分電圧Vdが基準電圧Vr未満である場合に“L”レベルとなる。また、停止信号SSは、図8(i)に示すように、差分電圧Vdが基準電圧Vr以上になった時点で“H”レベルに立ち上がり、パルス発生部10において内部的に発生されるパルス信号の立ち上がりから一定時間τ後に“L”レベルに立ち下がる。本例では、停止信号SSは、時点t43で“L”レベルから“H”レベルに立ち上がり、時点t51から一定時間τ後に“L”レベルに立ち下がる。
【0098】
図7のパルス発生部10は、停止信号SSが“H”レベルの期間には基準信号BSを“L”レベルに保持する。それにより、測定期間T5の開始時点t51では、基準信号BSにパルスが発生しない。それにより、測定期間T5において、図8(b)のマスク信号MS、図8(d)のピーク保持信号PS1および図8(e)のサンプル保持信号HSが“H”レベルに立ち上がらず、“L”レベルに保持される。
【0099】
このように、測定期間T5の開始時点t51で基準信号BSが“H”レベルに立ち上がらないため、測定期間T5の開始時点t51では送信素子50から超音波が送信されない。この場合、測定期間T4,T5が合体することにより、拡張された測定期間T45が形成され、測定期間T4の長さが実質的に増加する。したがって、受信信号RS1の第1の反射成分R1および第2の反射成分R2は、拡張された測定期間T45内に現れる。測定期間T5においては、基準信号BSにパルスが現れず、ピーク保持信号PS1にパルスが現れない。それにより、第2の反射成分R2に基づいて測定対象までの距離が測定されない。
【0100】
停止信号SSが“L”レベルに立ち下がった後、測定期間T6の開始時点t61で基準信号BSが“H”レベルに立ち上がり、マスク信号MSが“H”レベルに立ち上がり、サンプル保持信号HSが“H”レベルに立ち上がる。それにより、サンプル保持電圧HVは、時点t61でピーク保持電圧PV1の値V14に保持される。その後、ピーク保持信号PS1が時点t62で“H”レベルに立ち上がり、時点t63で“L”レベルに立ち下がる。時点t63でピーク保持信号PS1の立ち下がりに応答してピーク保持電圧PV1が受信信号RS1の第1の反射成分R1の最大値に保持される。その後、時点t71でサンプル保持信号HSの立ち上がりに応答してサンプル保持電圧HVがピーク保持電圧PV1の値V16に保持される。
【0101】
これにより、差分電圧Vdは、測定期間T6の開始時点t61から時点t63までの期間に0となり、時点t63から時点t71までの期間に値(V16−V14)となる。
【0102】
測定期間T6以後においては、第1の実施の形態と同様の方法により、受信信号RS1に多重反射による第2の反射成分R2が現れずかつ受信信号RS1の第1の反射成分R1の最大値が一定範囲内に維持されるように超音波の強度が制御される。これにより、受信信号RS1に第2の反射成分R2が現れることなく、周囲の測定対象までの距離を迅速かつ正確に測定することができる。
【0103】
(2)効果
本実施の形態に係る超音波距離測定装置300においては、測定対象の反射率が増加することにより、現在の測定期間において受信信号RS1に現れる第1の反射成分R1の最大値が直前の測定期間において受信信号RS1に現れる第1の反射成分R1の最大値よりも予め定められた値以上大きくなった場合には、次の測定期間の開始時点で送信素子50から超音波が送信されない。それにより、現在の測定期間の長さが増加される。そのため、多重反射により受信信号RS1に現れる第2の反射成分R2が次の測定期間で第1の反射成分R1として測定対象までの距離の測定に用いられることが防止される。したがって、測定対象の反射率の増加による測定精度の低下が防止される。その結果、測定期間の長さを短くすることが可能となる。
【0104】
[3]第3の実施の形態
(1)超音波距離測定装置の信号処理系の構成
第3の実施の形態に係る超音波距離測定装置300について、第1の実施の形態に係る超音波距離測定装置300と異なる点を説明する。図9は、第3の実施の形態に係る超音波距離測定装置300の信号処理系の構成を示すブロック図である。図9の超音波距離測定装置300が図1の超音波距離測定装置300と異なるのは以下の点である。
【0105】
図9に示すように、本実施の形態に係る超音波距離測定装置300は、基準電圧発生部210、比較部220およびトリガ発生部230をさらに含む。
【0106】
図10は、トリガ発生部230の構成を示すブロック図である。図10に示すように、トリガ発生部230は、スイッチング素子231、抵抗232,233,234、コンデンサ235、トリガ回路236およびスイッチ切換部237を含む。
【0107】
スイッチング素子231と抵抗232とからなる直列回路は、ノードN2,N3間に接続される。抵抗233は、ノードN2,N3間に接続される。抵抗234は、ノードN3,N4間に接続される。コンデンサ235は、ノードN4,N5間に接続される。トリガ回路236は、ノードN4に接続される。ノードN2,N5は、それぞれ電源電位および基準電位(グランド電位)に保持される。スイッチ切換部237は、比較部220により与えられる後述する比較信号CSに基づいてスイッチング素子231のオンおよびオフを切り換える。
【0108】
トリガ回路236は、無安定マルチバイブレータである。トリガ回路236は、ノードN2,N5間の抵抗232〜234およびコンデンサ235により定まる時定数と等しい周期を有するトリガ信号TSを発生する。スイッチング素子231がオンすると、ノードN2,N3間の抵抗が小さくなる。それにより、トリガ回路236により発生されるトリガ信号TSの周期が短くなる。スイッチング素子231がオフすると、ノードN2,N3間の抵抗が大きくなる。それにより、トリガ回路236により発生されるトリガ信号TSの周期が長くなる。
【0109】
図11は、図9のパルス発生部10、受信素子60、保持信号発生部100、比較部220およびトリガ発生部230より発生される信号ならびにピーク保持部110により出力される電圧のタイミング図である。図11の横軸は時間である。
【0110】
本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、図9の送信素子50により送信される超音波の強度が調整されている。そのため、図11に示すように、時点t31から時点t41までの測定期間T3においては、受信信号RS1に多重反射による第2の反射成分R2が現れない。
【0111】
ここで、第2の実施の形態と同様に、測定期間T4以後において、周囲の測定対象の反射率が増加する場合を考える。この場合、多重反射による第2の反射波の強度が増加する。そのため、多重反射による第2の反射波が受信素子60により受信される可能性がある。それにより、受信信号RS1における第2の反射成分R2が次の測定期間に現れる。その結果、超音波距離測定装置300による測定対象までの距離の測定結果が一時的に不正確になる可能性がある。
【0112】
以下、図9、図10および図11を参照しながら測定対象の反射率が増加した場合における本実施の形態に係る超音波距離測定装置300の動作について説明する。
【0113】
図10のトリガ回路236は、図11(a)に示すように、“H”レベルおよび“L”レベルに変化するトリガ信号TSを発生する。トリガ回路236により発生されるトリガ信号TSは、パルス発生部10に与えられる。
【0114】
図9のパルス発生部10は、トリガ信号TSに基づいて、“H”レベルおよび“L”レベルに変化する基準信号BSを発生する。基準信号BSは、図11(b)に示すように、トリガ信号TSの“H”レベルへの立ち上がりと同時に“H”レベルに立ち上がり、一定時間後に“L”レベルに立ち下がる。
【0115】
図11の測定期間T3の第1の有効期間P1において受信信号RS1に第1の反射成分R1が現れる。次の測定期間T4の第1の有効期間P1において受信信号RS1に第1の反射成分R1が現れる。この場合、上記のように、測定対象の反射率が増加することにより、測定期間T4における第1の反射成分R1の最大値V14は、測定期間T3における第1の反射成分R1の最大値V13に比べて増加する。本例では、多重反射による第2の反射成分R2が現れている。
【0116】
図11(c)および図11(e)に示すように、ピーク保持電圧PV1は、測定期間T3の時点t33で受信信号RS1の第1の反射成分R1の最大値V13となり、測定期間T4の時点t43で受信信号RS1の第1の反射成分R1の最大値V14となる。ピーク保持部110により保持されるピーク保持電圧PV1は、加算部130に与えられるとともに、比較部220に与えられる。
【0117】
図9の基準電圧発生部210は、予め設定された基準電圧Vr2を発生する。基準電圧発生部210により発生された基準電圧Vr2は、比較部220に与えられる。
【0118】
図9の比較部220は、ピーク保持電圧PV1と基準電圧Vr2とを比較し、比較結果を示す比較信号CSを発生する。比較信号CSは、図11(f)に示すように、ピーク保持電圧PV1が基準電圧Vr2以上である期間では“L”レベルとなり、ピーク保持電圧PV1が基準電圧Vr2未満である期間では“H”レベルとなる。
【0119】
図11(f)の例においては、測定期間T3の第1の反射成分R1の最大値V13は基準電圧Vr2未満であり、測定期間T4の第1の反射成分R1の最大値V14は基準電圧Vr2以上である。したがって、比較信号CSは、時点t43で“L”レベルに立ち下がる。
【0120】
比較信号CSは、トリガ発生部230のスイッチ切換部237に与えられる。スイッチ切換部237は、比較信号CSが“L”レベルである期間にスイッチング素子231をオフにする。スイッチ切換部237は、比較信号CSが“H”レベルである期間にスイッチ切換部237はスイッチング素子231をオンにする。
【0121】
時点t31から時点t43の期間においては、スイッチング素子231がオンであるため、時定数が小さく、トリガ回路236により発生されるトリガ信号TSの周期が短くなる。
【0122】
一方、時点t43以降においては、比較信号CSが“L”レベルになるため、トリガ発生部230のスイッチング素子231がオフになる。この場合、ノードN2,N5間の抵抗232〜234およびコンデンサ235により定まる時定数が大きくなる。そのため、トリガ回路236により発生されるトリガ信号TSの周期が長くなる。これにより、測定期間T4の基準信号BSの周期Tbが、測定期間T3の基準信号BSの周期Taよりも長くなる。その結果、受信信号RS1の第1の反射成分R1および第2の反射成分R2は、測定期間T4内に現れる。
【0123】
測定期間T5以後においては、第1の実施の形態と同様の方法により、受信信号RS1に多重反射による第2の反射成分R2が現れずかつ受信信号RS1の第1の反射成分R1の最大値が一定範囲内に維持されるように超音波の強度が制御される。そのため、測定期間T5で第1の反射成分R1に現れる第1の反射成分R1の最大値V15および測定期間T6で第1の反射成分R1に現れる第1の反射成分R1の最大値V16は、測定期間T3で第1の反射成分R1に現れる第1の反射成分R1の最大値V13とほぼ等しくなる。
【0124】
この場合、測定期間T5の時点t53以降では、比較信号CSが“H”レベルに維持される。これにより、トリガ信号TSの周期が短くなる。したがって、測定期間T5以降においては、周期Taで超音波が送信される。その結果、受信信号RS1に第2の反射成分R2が現れることなく、周囲の測定対象までの距離を迅速かつ正確に測定することができる。
【0125】
(2)効果
本実施の形態に係る超音波距離測定装置300においては、測定対象の反射率が増加することにより、現在の測定期間において受信信号RS1に現れる第1の反射成分R1の最大値が基準電圧Vr2よりも大きくなった場合には、その測定期間の周期が長くなる。それにより、多重反射により受信信号RS1に現れる第2の反射成分R2が次の測定期間で第1の反射成分R1として測定対象までの距離の測定に用いられることが防止される。したがって、測定対象の反射率の増加による測定精度の低下が防止される。その結果、測定期間の長さを短くすることが可能となる。
【0126】
[4]第4の実施の形態
(1)超音波傾斜測定装置の信号処理系の構成
図12は、第4の実施の形態に係る超音波距離測定装置を備えた超音波傾斜測定装置の信号処理系の構成を示すブロック図である。図12に示すように、超音波傾斜測定装置400は、一組の超音波距離測定装置300a,300bならびに共通の発振器30および共通の反射時間測定部90を含む。
【0127】
超音波距離測定装置300aは、発振器30および反射時間測定部90を含まない点を除いて、図1の超音波距離測定装置300と同様の構成を有する。超音波距離測定装置300a、共通の発振器30および共通の反射時間測定部90により、図1の超音波距離測定装置300が構成される。超音波距離測定装置300aの送信素子50および受信素子60をそれぞれ送信素子50aおよび受信素子60aと呼ぶ。
【0128】
超音波距離測定装置300bは、発振器30および反射時間測定部90を含まない点を除いて、図1の超音波距離測定装置300と同様の構成を有する。超音波距離測定装置300b、共通の発振器30および共通の反射時間測定部90により、図1の超音波距離測定装置300が構成される。超音波距離測定装置300bの送信素子50および受信素子60をそれぞれ送信素子50bおよび受信素子60bと呼ぶ。
【0129】
発振器30は、以下の点を除いて、図1の発振器30と同様の構成を有する。発振器30は、発振信号OSを超音波距離測定装置300a,300bの送信波形発生部20に与える。
【0130】
反射時間測定部90は、以下の点を除いて、図1の反射時間測定部90と同様の構成および動作を有する。反射時間測定部90には、超音波距離測定装置300a,300bのパルス発生部10により基準信号BSが与えられる。また、反射時間測定部90には、超音波距離測定装置300a,300bの検波部70により検波信号DSが与えられる。
【0131】
超音波傾斜測定装置400は、以下に説明する自動二輪車1に取り付けられる。超音波傾斜測定装置400の動作については後述する。
【0132】
(2)自動二輪車の概略構成
図13は、図12の超音波傾斜測定装置400を備えた自動二輪車を示す模式的側面図である。図14は、図13の自動二輪車の模式的上面図である。
【0133】
図13の自動二輪車1は、前後方向に延びるように形成された車体フレーム500を備える。車体フレーム500の前端にヘッドパイプ510が取り付けられる。ヘッドパイプ510に左右に分岐するフロントフォーク520が取り付けられる。この状態で、フロントフォーク520は、ヘッドパイプ510の軸心を中心として所定の角度範囲内で回転可能となっている。フロントフォーク520の下端に前輪530が回転可能に支持される。ヘッドパイプ510の上端にはハンドル540が設けられる。
【0134】
車体フレーム500の後端には、リアスイングアーム550が揺動可能に取り付けられる。また、車体フレーム500の後端には、リアクッションユニット560が上下に伸縮可能に取り付けられる。リアクッションユニット560の下端によりリアスイングアーム550の後端が支持される。リアスイングアーム550は、後輪570を回転可能に支持する。
【0135】
以下の説明では、前輪530の中心と後輪570の中心とを結ぶ直線L(図14参照)の方向を車体の前後方向と呼び、車体の前後方向を含むおよび車体フレーム500の対称面に垂直な方向を車体の左右方向と呼ぶ。
【0136】
図13に示すように、車体フレーム500の中央部には、エンジン580が設けられる。エンジン580により発生されるトルクは、図示しない複数のギアおよびチェーン等の動力伝達機構を介して後輪570に伝達される。それにより、後輪570が回転する。
【0137】
車体フレーム500の上方には、ECU(Electronic Control Unit;電子制御ユニット)700が設けられる。ECU700は、例えばCPU(中央演算処理装置)およびメモリ、またはマイクロコンピュータからなる。ECU700の上方には、自動二輪車1の運転者が着座するシート590が設けられる。シート590の下部には、送信素子50a,50bおよび受信素子60a,60bを除く図12の超音波傾斜測定装置400が設けられる。超音波傾斜測定装置400の超音波距離測定装置300aおよび超音波距離測定装置300bにより測定された時間はECU700に与えられる。
【0138】
車体フレーム500の前部は、フロントカウル410により覆われる。車体フレーム500の後部は、リアカウル420により覆われる。車体フレーム500の中央部は、サイドカバー430により覆われる。
【0139】
左側のサイドカバー430には、図14の超音波傾斜測定装置400の送信素子50aおよび受信素子60aが設けられる。右側のサイドカバー430には、図14の超音波傾斜測定装置400の送信素子50bおよび受信素子60bが設けられる。車体の左右方向における送信素子50a,50b間の距離および受信素子60a,60b間の距離はDである。
【0140】
(3)超音波傾斜測定装置の動作
図15は、超音波傾斜測定装置400の動作を説明するための図である。図15は、自動二輪車1の前方から見た送信素子50a,50bおよび受信素子60a,60bの配置を示す。図15(a)に示すように、送信素子50a,50bは、地面Eに向かって超音波を送信するように自動二輪車1に設けられる。受信素子60a,60bは、地面Eにより反射された超音波を受信するように自動二輪車1に設けられる。
【0141】
車体の前後方向における送信素子50aと受信素子60aとの間の距離は、車体の左右方向における送信素子50a,50b間および受信素子60a,60b間の距離Dに比べて小さい。そのため、送信素子50aおよび受信素子60aは、空間的にほぼ同一の位置にあるとみなすことができる。同様に、車体の前後方向における送信素子50bと受信素子60bとの間の距離は、車体の左右方向における送信素子50a,50b間および受信素子60a,60b間の距離Dに比べて小さい。そのため、送信素子50bおよび受信素子60bは、空間的にほぼ同一の位置にあるとみなすことができる。
【0142】
図12の反射時間測定部90は、送信素子50aにより超音波が送信されてから受信素子60aにより反射波が受信されるまでの時間t1を測定する。また、反射時間測定部90は、送信素子50bにより超音波が送信されてから受信素子60bにより反射波が受信されるまでの時間t2を測定する。反射時間測定部90は、測定された時間t1,t2を示す信号を、図13のECU700に与える。
【0143】
ECU700は、時間t1および超音波の速度Vに基づいて、送信素子50aから地面Eまでの距離L1を算出する。送信素子50aから地面Eまでの距離L1は、L1=V×t1/2により算出される。同様に、ECU700は、時間t2および超音波の速度Vに基づいて、送信素子50bから地面Eまでの距離L2を算出する。送信素子50bから地面Eまでの距離L2は、L2=V×t2/2により算出される。
【0144】
自動二輪車1が地面Eに対して傾斜していない場合、t1=t2となるため、距離L1と距離L2とは等しくなる。ここで、図15(b)に示すように、自動二輪車1が地面Eに対して傾斜することを考える。この場合、距離L1と距離L2とは異なる。地面Eに対する車体の左右方向の傾斜角度をθとすると、sinθ=|L2−L1|/Dとなる。
【0145】
ECU700は、時間t1,t2、超音波の速度Vおよび距離Dに基づいて、θ=sin−1|t2−t1|×V/(2×D)を算出することにより傾斜角度θを測定することができる。
【0146】
[5]第5の実施の形態
(1)超音波傾斜測定装置の信号処理系の構成
図16は、第5の実施の形態に係る超音波距離測定装置を備えた超音波傾斜測定装置の信号処理系の構成を示すブロック図である。図16に示すように、超音波傾斜測定装置400は、一組の超音波距離測定装置300a,300bならびに共通の発振器30および共通の反射時間測定部90を含む。図12の超音波傾斜測定装置400と同様に、図16の超音波傾斜測定装置400は、図13および図14の自動二輪車1に設けられる。
【0147】
超音波距離測定装置300aは、発振器30および反射時間測定部90を含まない点を除いて、図7の超音波距離測定装置300と同様の構成を有する。超音波距離測定装置300a、共通の発振器30および共通の反射時間測定部90により、図7の超音波距離測定装置300が構成される。超音波距離測定装置300aの送信素子50および受信素子60をそれぞれ送信素子50aおよび受信素子60aと呼ぶ。
【0148】
超音波距離測定装置300bは、発振器30および反射時間測定部90を含まない点を除いて、図7の超音波距離測定装置300と同様の構成を有する。超音波距離測定装置300b、共通の発振器30および共通の反射時間測定部90により、図7の超音波距離測定装置300が構成される。超音波距離測定装置300bの送信素子50および受信素子60をそれぞれ送信素子50bおよび受信素子60bと呼ぶ。
【0149】
発振器30は、以下の点を除いて、図7の発振器30と同様の構成および動作を有する。発振器30は、発振信号OSを超音波距離測定装置300a,300bの送信波形発生部20に与える。
【0150】
反射時間測定部90は、以下の点を除いて、図7の反射時間測定部90と同様の構成および動作を有する。反射時間測定部90には、超音波距離測定装置300a,300bのパルス発生部10により基準信号BSが与えられる。また、反射時間測定部90には、超音波距離測定装置300a,300bの検波部70により検波信号DSが与えられる。
【0151】
反射時間測定部90は、送信素子50aにより超音波が送信されてから受信素子60aにより反射波が受信されるまでの時間t1を測定する。また、反射時間測定部90は、送信素子50bにより超音波が送信されてから受信素子60bにより反射波が受信されるまでの時間t2を測定する。反射時間測定部90は、測定された時間t1,t2を示す信号を、図13のECU700に与える。
【0152】
(2)効果
図13のECU700は、超音波傾斜測定装置400により測定される時間t1,t2に基づいて、地面Eに対する車体の左右方向の傾斜角度θを測定することができる。
【0153】
超音波距離測定装置300a,300bは、図7の超音波距離測定装置300と同様の動作を有する。すなわち、測定対象の反射率が増加することにより、現在の測定期間において受信信号RS1に現れる第1の反射成分R1の最大値が直前の測定期間において受信信号RS1に現れる第1の反射成分R1の最大値よりも予め定められた値以上大きくなった場合には、次の測定期間の開始時点で送信素子50から超音波が送信されない。
【0154】
この場合、現在の測定期間の長さが増加するため、多重反射により受信信号RS1に現れる第2の反射成分R2が次の測定期間で第1の反射成分R1として測定対象までの距離の測定に用いられることが防止される。したがって、測定対象の反射率の増加による測定精度の低下が防止される。その結果、測定期間の長さを短く設定しつつ地面Eに対する車体の左右方向の傾斜角度θを測定することが可能となる。
【0155】
[6]第6の実施の形態
(1)超音波傾斜測定装置の信号処理系の構成
図17は、第6の実施の形態に係る超音波距離測定装置を備えた超音波傾斜測定装置の信号処理系の構成を示すブロック図である。図17に示すように、超音波傾斜測定装置400は、一組の超音波距離測定装置300a,300bを含む。また、超音波傾斜測定装置400は、共通のパルス発生部10、共通の送信波形発生部20、共通の発振器30および共通の反射時間測定部90を含む。さらに、超音波傾斜測定装置400は、共通の加算部200、共通の基準電圧発生部210、共通の比較部220および共通のトリガ発生部230を含む。図12の超音波傾斜測定装置400と同様に、図17の超音波傾斜測定装置400は、図13および図14の自動二輪車1に設けられる。
【0156】
図17の超音波距離測定装置300aは、パルス発生部10、送信波形発生部20、発振器30、反射時間測定部90、基準電圧発生部210、比較部220およびトリガ発生部230を含まない点を除いて、図9の超音波距離測定装置300と同様の構成を有する。超音波距離測定装置300aならびにパルス発生部10、送信波形発生部20、発振器30、反射時間測定部90、加算部200、基準電圧発生部210、比較部220およびトリガ発生部230により、図9と同様の超音波距離測定装置300が構成される。超音波距離測定装置300aの送信素子50および受信素子60をそれぞれ送信素子50aおよび受信素子60aと呼ぶ。
【0157】
図17の超音波距離測定装置300bは、パルス発生部10、送信波形発生部20、発振器30、反射時間測定部90、基準電圧発生部210、比較部220およびトリガ発生部230を含まない点を除いて、図9の超音波距離測定装置300と同様の構成を有する。超音波距離測定装置300bならびにパルス発生部10、送信波形発生部20、発振器30、反射時間測定部90、加算部200、基準電圧発生部210、比較部220およびトリガ発生部230により、図9と同様の超音波距離測定装置300が構成される。超音波距離測定装置300bの送信素子50および受信素子60をそれぞれ送信素子50bおよび受信素子60bと呼ぶ。
【0158】
発振器30、基準電圧発生部210およびトリガ発生部230は、図9の発振器30、基準電圧発生部210およびトリガ発生部230と同様の構成および動作を有する。
【0159】
パルス発生部10は、以下の点を除いて、図9のパルス発生部10と同様の構成および動作を有する。パルス発生部10は、基準信号BSを超音波距離測定装置300a,300bの保持信号発生部100に与える。パルス発生部10は、マスク信号MSを超音波距離測定装置300a,300bの検波部70および保持信号発生部100に与える。
【0160】
送信波形発生部20は、以下の点を除いて、図9の送信波形発生部20と同様の構成および動作を有する。送信波形発生部20は、送信信号TS0を超音波距離測定装置300a,300bの送信出力部40に与える。
【0161】
反射時間測定部90は、以下の点を除いて、図9の反射時間測定部90と同様の構成および動作を有する。反射時間測定部90には、超音波距離測定装置300a,300bのパルス発生部10により基準信号BSが与えられる。また、反射時間測定部90には、超音波距離測定装置300a,300bの検波部70により検波信号DSが与えられる。
【0162】
反射時間測定部90は、送信素子50aにより超音波が送信されてから受信素子60aにより反射波が受信されるまでの時間t1を測定する。また、反射時間測定部90は、送信素子50bにより超音波が送信されてから受信素子60bにより反射波が受信されるまでの時間t2を測定する。反射時間測定部90は、測定された時間t1,t2を示す信号を、図13のECU700に与える。
【0163】
加算部200には、超音波距離測定装置300a,300bのピーク保持部110によりピーク保持電圧PV1が与えられる。加算部200は、超音波距離測定装置300aのピーク保持部110により与えられるピーク保持電圧PV1と超音波距離測定装置300bのピーク保持部110により与えられるピーク保持電圧PV1とを加算することにより、加算電圧AVを発生する。加算部200により発生される加算電圧AVは、比較部220に与えられる。
【0164】
比較部220は、以下の点を除いて、図9の比較部220と同様の構成および動作を有する。比較部220は、加算電圧AVと基準電圧Vr2とを比較し、比較結果を示す比較信号CSを発生する。比較信号CSは、加算電圧AVが基準電圧Vr2以上である期間では“L”レベルとなり、加算電圧AVが基準電圧Vr2未満である期間では“H”レベルとなる。
【0165】
(2)効果
図13のECU700は、超音波傾斜測定装置400により測定される時間t1,t2に基づいて、地面Eに対する車体の左右方向の傾斜角度θを測定することができる。
【0166】
また、超音波距離測定装置300a,300bは、図9の超音波距離測定装置300と同様の動作を有する。すなわち、測定対象の反射率が増加することにより、現在の測定期間において受信信号RS1に現れる第1の反射成分R1の最大値が基準電圧Vr2よりも大きくなった場合には、その測定期間の長さが増加する。
【0167】
この場合、多重反射により受信信号RS1に現れる第2の反射成分R2が次の測定期間で第1の反射成分R1として測定対象までの距離の測定に用いられることが防止される。したがって、測定対象の反射率の増加による測定精度の低下が防止される。その結果、測定期間の長さを短く設定しつつ地面Eに対する車体の左右方向の傾斜角度θを測定することが可能となる。
【0168】
[7]他の実施の形態
(1)第2の実施の形態において、図7の超音波距離測定装置300は停止信号発生部190を含むが、これに限定されない。図7の超音波距離測定装置300は、停止信号発生部190に代えて、第3の実施の形態のトリガ発生部230(図9)を含んでもよい。
【0169】
この場合、図7の比較部170は、差分電圧Vdと基準電圧Vrとを比較し、比較結果を示す出力信号を図10のトリガ発生部230に与える。トリガ発生部230のスイッチ切換部237は、差分電圧Vdが基準電圧Vr以上である期間にスイッチング素子231をオフにする。トリガ発生部230のスイッチ切換部237は、差分電圧Vdが基準電圧Vr未満である期間にスイッチング素子231をオンにする。図10のトリガ回路236は、トリガ信号TSを図7のパルス発生部10に与える。
【0170】
これにより、超音波距離測定装置300においては、現在の測定期間において受信信号RS1に現れる第1の反射成分R1の最大値が直前の測定期間において受信信号RS1に現れる第1の反射成分R1の最大値よりも予め定められた値以上大きくなった場合には、次の測定期間の長さが増加する。
【0171】
(2)第2の実施の形態において、測定期間の長さが増加した場合には、反射時間測定部90はその測定期間の距離の算出を停止してもよい。
【0172】
(3)第3実施の形態において、図9の超音波距離測定装置300はトリガ発生部230を含むが、これに限定されない。図9の超音波距離測定装置300は、トリガ発生部230に代えて、第2の実施の形態の停止信号発生部190(図7)を含んでもよい。
【0173】
この場合、図9のパルス発生部10は、基準信号BSと同じ周期を有するパルス信号を内部的に発生し、停止信号発生部190により発生される停止信号SSに基づいて基準信号BSを発生する。ピーク保持部110はピーク保持電圧PV1を停止信号発生部190に与え、基準電圧発生部210は基準電圧Vr2を停止信号発生部190に与える。
【0174】
停止信号発生部190は、ピーク保持電圧PV1および基準電圧Vr2に基づいて“H”レベルおよび“L”レベルからなる停止信号SSを発生し、パルス発生部10に与える。停止信号SSは、ピーク保持電圧PV1が基準電圧Vr2未満である場合に“L”レベルとなる。また、停止信号SSは、図8(i)に示すように、ピーク保持電圧PV1が基準電圧Vr2以上になった時点で“H”レベルに立ち上がり、パルス発生部10において内部的に発生されるパルス信号の立ち上がりから一定時間τ後に“L”レベルに立ち下がる。
【0175】
これにより、超音波距離測定装置300においては、現在の測定期間において受信信号RS1に現れる第1の反射成分R1の最大値が基準電圧Vr2よりも大きくなった場合には、その測定期間の長さが増加する。
【0176】
(4)第3の実施の形態において、測定期間の長さが増加した場合には、反射時間測定部90はその測定期間の距離の算出を停止してもよい。
【0177】
(5)第1〜第3の実施の形態において、反射時間測定部90は距離を算出する機能を有するが、これに限定されない。反射時間測定部90が自動二輪車1に設けられる場合、反射時間測定部90が距離を算出する機能を有さずに、自動二輪車1のECU700が距離の算出を行ってもよい。
【0178】
(6)第4〜第6実施の形態において、輸送機器の一例として自動二輪車1について説明したが、これに限定されない。本発明は、4輪の自動車、3輪の自動車、電動自転車、滑走艇、水上バイク、電動車椅子または航空機等の種々の輸送機器にも適用可能である。
【0179】
[8]請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0180】
上記実施の形態においては、超音波距離測定装置300が超音波距離計測装置の例であり、送信素子50が送信部の例であり、受信素子60が受信部の例であり、反射時間測定部90が時間算出部の例である。ピーク保持部110,120が検出部の例であり、第1の反射成分R1(r1)が最初のピークの例であり、第2の反射成分R2(r2)が他のピークまたは次のピークの例である。
【0181】
可変電源140が調整部の例であり、停止信号発生部190またはトリガ発生部230が測定期間制御部の例であり、基準電圧Vrが第1の値の例であり、基準電圧Vr2が第2の値の例であり、パルス発生部10が信号発生部の例である。車体フレーム500が本体部の例であり、後輪570およびエンジン580が駆動部の例であり、自動二輪車1が輸送機器の例である。
【0182】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0183】
本発明は、超音波を用いて検出対象物までの距離等の情報を測定するために利用することができる。
【符号の説明】
【0184】
1 自動二輪車
10 パルス発生部
20 送信波形発生部
30 発振器
40 送信出力部
50,50a,50b 送信素子
60,60a,60b 受信素子
70 検波部
80 増幅部
90 反射時間測定部
100 保持信号発生部
110,120 ピーク保持部
130,200 加算部
140 可変電源
141 NOT回路
142 FET
143〜145,232〜234 抵抗
146 可変電源IC
150 サンプル保持部
160 差分検出部
170,220 比較部
180,210 基準電圧発生部
190 停止信号発生部
230 トリガ発生部
231 スイッチング素子
235 コンデンサ
236 トリガ回路
237 スイッチ切換部
300,300a,300b 超音波距離測定装置
400 超音波傾斜測定装置
410 フロントカウル
420 リアカウル
430 サイドカバー
500 車体フレーム
510 ヘッドパイプ
520 フロントフォーク
530 前輪
540 ハンドル
550 リアスイングアーム
560 リアクッションユニット
570 後輪
580 エンジン
590 シート
700 ECU
AV 加算電圧
BS 基準信号
CS 比較信号
CV 制御電圧
DS 検波信号
E 地面
HS サンプル保持信号
HV サンプル保持電圧
MS マスク信号
OS 発振信号
P1,P2 有効期間
PS1,PS2 ピーク保持信号
PV1,PV2 ピーク保持電圧
r1,r2,R1,R2 反射成分
RS0,RS1 受信信号
SS 停止信号
SV 電源電圧
T 周期
T1〜T6,T45 測定期間
TS トリガ信号
TS0,TS1 送信信号
Vr,Vr2 基準電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に設定される測定期間で測定対象までの距離を測定するために用いられる超音波距離計測装置であって、
各測定期間において超音波を送信する送信部と、
前記送信部から送信される超音波が測定対象で反射されることにより生じる反射波を受信し、受信された反射波の強度に対応する受信信号を出力する受信部と、
各測定期間において、前記受信部から出力される受信信号において最初に出現するピークの時間軸上の位置に基づいて前記送信部による超音波の送信から前記受信部による反射波の受信までの時間を算出する時間算出部と、
各測定期間において、前記受信部から出力される受信信号において出現する1または複数のピークを検出し、検出された1または複数のピークの値を取得する検出部と、
一の測定期間において前記検出部により取得された値に基づいて、前記一の測定期間に続く次の測定期間において最初のピークが出現するとともに最初のピークの出現後における他のピークの出現が抑制されるように、前記次の測定期間において前記送信部により送信される超音波の強度を調整する調整部とを備えることを特徴とする超音波距離計測装置。
【請求項2】
少なくとも一の測定期間において前記検出部により取得された最初のピークの値に基づいて、前記一の測定期間において送信された超音波に起因する他のピークが前記一の測定期間に続く次の測定期間内で検出されないように前記一の測定期間の長さを増加させる測定期間制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の超音波距離計測装置。
【請求項3】
前記測定期間制御部は、前記一の測定期間において前記検出部により取得された最初のピークの値および前記一の測定期間の直前の測定期間において前記検出部により取得された最初のピークの値に基づいて前記一の測定期間の長さを増加させることを特徴とする請求項2記載の超音波距離計測装置。
【請求項4】
前記測定期間制御部は、
前記直前の測定期間において前記検出部により取得された最初のピークの値に対する前記一の測定期間において前記検出部により取得された最初のピークの値の増加の程度が予め定められた第1の値以上である場合に、前記一の測定期間の長さを増加させることを特徴とする請求項3記載の超音波距離計測装置。
【請求項5】
前記増加の程度は、前記一の測定期間において前記検出部により取得された最初のピークの値と前記直前の測定期間において前記検出部により取得された最初のピークの値との差であることを特徴とする請求項4記載の超音波距離計測装置。
【請求項6】
前記測定期間制御部は、
前記一の測定期間において前記検出部により取得された最初のピークの値が予め定められた第2の値以上である場合に、前記一の測定期間の長さを増加させることを特徴とする請求項2記載の超音波距離計測装置。
【請求項7】
測定期間の開始時点をそれぞれ規定するための周期的なパルスを有する基準信号を発生する信号発生部をさらに備え、
前記送信部は、前記信号発生部により発生される基準信号の各パルスに応答して超音波を送信し、
前記測定期間制御部は、前記信号発生部により発生される基準信号において前記一の測定期間に続く次の測定期間の開始時点のパルスの出力を阻止することにより前記一の測定期間の長さを増加させることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の超音波距離計測装置。
【請求項8】
測定期間の開始時点をそれぞれ規定するためのパルスを有する基準信号を発生するとともに前記基準信号のパルスの周期を変更可能に構成された信号発生部をさらに備え、
前記送信部は、前記信号発生部により発生される基準信号の各パルスに応答して超音波を送信し、
前記測定期間制御部は、前記信号発生部により発生される基準信号における前記一の測定期間を規定するパルスの周期を増加させることにより前記一の測定期間の長さを増加させることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の超音波距離計測装置。
【請求項9】
前記調整部は、各測定期間において前記検出部により取得された最初のピークの値および次のピークの値の予め定められた演算の結果に基づいて、前記次の測定期間において前記送信部により送信される超音波の強度を調整することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の超音波距離計測装置。
【請求項10】
本体部と、
前記本体部を移動させる駆動部と、
前記本体部に設けられる請求項1〜9のいずれかに記載の超音波距離計測装置とを備えることを特徴とする輸送機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−251952(P2012−251952A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126697(P2011−126697)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】