説明

車両の駆動装置

【課題】軸線方向に関する寸法増加を抑制できる車両の駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動装置2は、動力伝達経路に配置された第1モータ・ジェネレータ4をブレーキ30を利用してロックできる。第1モータ・ジェネレータ4は、ケース17に固定されたインナステータ4aと、インナステータ4aの外周に同軸に配置されたアウタロータ4bとを有している。ブレーキ30は、バンドブレーキとして構成されておりアウタロータ4bの外周側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達経路に配置された電動機をブレーキを利用してロックできる車両の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるハイブリッド車両に搭載された駆動装置として、遊星歯車機構として構成された動力分配機構のキャリアに内燃機関が、サンギアに第1モータ・ジェネレータが、リングギアに第2モータ・ジェネレータがそれぞれ連結され、第2モータ・ジェネレータが内側にステータ、外側にロータを持つアウタロータ型のモータ・ジェネレータとして構成され、第2モータ・ジェネレータをロックするためのブレーキが設けられたものが知られている(特許文献1)。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2が存在する。
【0003】
【特許文献1】特開2006−46445号公報
【特許文献2】特開平6−328950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の駆動装置は、電動機をロックするためのブレーキが、第2モータ・ジェネレータの軸線方向の隣に配置されているため、そのブレーキの配置スペース確保のため駆動装置の軸線方向に関する寸法が増加するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、軸線方向に関する寸法増加を抑制できる車両の駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両の駆動装置は、動力伝達経路に配置された電動機をブレーキを利用してロックできる車両の駆動装置において、前記電動機は、ケースに固定されたインナステータと、前記インナステータの外周に同軸に配置されたアウタロータとを有し、前記ブレーキは、前記アウタロータの外周側に配置されているものである(請求項1)。
【0007】
この駆動装置によれば、電動機をロックするためのブレーキがアウタロータの外周側に配置されているため、軸線方向にブレーキを配置するスペースを確保する必要がないので、軸線方向に関する寸法増加を抑制することができる。
【0008】
本発明の駆動装置の一態様において、前記ブレーキは、前記アウタロータの外周に沿って延びるブレーキバンドを前記ロータの外周に押し付けることにより前記電動機をロックするバンドブレーキとして構成されてもよい(請求項2)。この態様によれば、ブレーキバンドの横幅をアウタロータの横幅まで拡大できるため、ブレーキ容量を容易に拡大できる。そのため、他の形式のブレーキに比べて少ない力でブレーキ容量を確保できるので、ブレーキバンドを駆動するための駆動手段の小型化を達成できる。また、湿式多板ブレーキ等は否制動時でも摩擦板間に存在するオイルの剪断力によっていわゆる引き摺りトルクが発生するが、バンドブレーキは否制動時にこうした引き摺りトルクが生じないため、本態様はブレーキの搭載に伴う損失を低減できる利点がある。
【0009】
この態様において、前記ブレーキは、前記ブレーキバンドに接続された駆動ユニットを備え、前記駆動ユニットは、前記ケースとは別体のサブアッセンブリとして構成されてもよい(請求項3)。この場合には、駆動ユニットの構成要素が別々にケースに設けられている場合と比べて駆動ユニットの取付、点検及び整備等の取り扱いが容易になる利点がある。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明の駆動装置によれば、軸線方向にブレーキを配置するスペースを確保する必要がないので、軸線方向に関する寸法増加を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第1の形態)
図1は本発明の一形態に係る駆動装置が組み込まれた車両の全体構成を概略的に示しており、図2は図1に示された駆動装置の要部を詳細に示している。また、図3は図2のIII-III線に関する断面模式図である。車両1はいわゆるハイブリッド車両として構成されている。周知のようにハイブリッド車両は、内燃機関を走行用の駆動力源として備えるとともに、電動機を他の走行用の駆動力源として備えた車両である。車両1は、駆動輪と内燃機関とが車両前部に位置するFFレイアウトの車両として構成されている。
【0012】
これらの図に示すように、駆動装置2は、内燃機関3と、電動機としての第1モータ・ジェネレータ4と、内燃機関3及び第1モータ・ジェネレータ4がそれぞれ連結された動力分配機構5と、車両1の駆動輪10に動力を出力するためのカウンタドライブギア6とを備えている。また、駆動装置2には変速機構7を介してカウンタドライブギア6に連結された第2モータ・ジェネレータ8が設けられている。カウンタドライブギア6の動力はドリブンギア9及び差動装置10を介して左右の駆動輪11に伝達される。
【0013】
内燃機関3は、火花点火型の多気筒内燃機関として構成されており、その動力は入力軸15を介して動力分配機構5に伝達される。入力軸15と内燃機関3との間にはダンパ16が介在しており、内燃機関3のトルク変動はダンパ16にて吸収される。第1モータ・ジェネレータ4と第2モータ・ジェネレータ8とは電動機としての機能と発電機としての機能とを兼ね備えている。第1モータ・ジェネレータ4はアウタロータ型のモータ・ジェネレータとして構成されており、ケース17に固定されたインナステータ4aと、そのインナステータ4aの外周に同軸に配置されたアウタロータ4bとを備えている。第2モータ・ジェネレータ8はインナロータ型のモータ・ジェネレータとして構成されており、ケース17に固定されたステータ8aと、そのステータ8aの内周側に同軸に配置されたロータ8bとを備えている。
【0014】
動力分配機構5は、相互に差動回転可能な3つの要素を持つシングルピニオン型の遊星歯車機構として構成されており、外歯歯車であるサンギアSu1と、そのサンギアSu1に対して同軸的に配置された内歯歯車であるリングギアRi1と、これらのギアSu1、Ri1に噛み合うピニオン20を自転かつ公転自在に保持するキャリアCr1とを備えている。この形態では、入力軸15がキャリアCr1に、第1モータ・ジェネレータ4がサンギアSu1に、カウンタドライブギア6がリングギアRi1にそれぞれ連結されている。
【0015】
減速機構7は、第2モータ・ジェネレータ8の回転を減速してカウンタドライブギア6に伝達するための機構であり、相互に差動回転可能な3つの要素を持つシングルピニオン型の遊星歯車機構として構成されている。減速機構7は外歯歯車であるサンギアSu2と、そのサンギアSu2に対して同軸的に配置された内歯歯車であるリングギアRi2と、これらのギアSu2、Ri2に噛み合うピニオン25を自転自在に保持するキャリアCr2とを備えている。この形態では、サンギアSu2が第2モータ・ジェネレータ8に、リングギアRi2がカウンタドライブギア6にそれぞれ連結されており、キャリアCr2はケース17に固定されている。これにより、第2モータ・ジェネレータ8の回転が減速されて出力ギア6に伝達されるとともに、第2モータ・ジェネレータ8の動力が増幅されて出力ギア6に伝達される。
【0016】
駆動装置2には、第1モータ・ジェネレータ4をロックする係合状態とそのロックを解除する解放状態とを切り替えることにより駆動モードを変更できるブレーキ30がアウタロータ4bの外周側に配置されている。このブレーキ30により、第1モータ・ジェネレータ4を使用した電気的な無段変速を実現する駆動モードと第1モータ・ジェネレータ4を使用しない固定変速段を実現する駆動モードとを選択的に実行できる。ブレーキ30はバンドブレーキとして構成されており、アウタロータ4bの外周に沿って延びるブレーキバンド31と、ブレーキバンド31を締付けたり緩めたりするための駆動ユニット32とを備えている。駆動ユニット32によってブレーキバンド31が締付けられると、ブレーキバンド31はアウタロータ4bの外周に押し付けられる。第1モータ・ジェネレータ4はその摩擦力によりロックされる。
【0017】
ブレーキバンド31はその固定端31aがケース17に固定されており、固定端31aの反対側の可動端31bは駆動ユニット32に接続されている。駆動ユニット32は、作動油を加圧する電動ポンプ33と、電動ポンプ33にて加圧された作動油の油圧を保持する蓄圧機構34と、ブレーキバンド31の可動端31bに接続された油圧シリンダ装置35と、蓄圧機構34から供給された油圧を制御して油圧シリンダ装置33に供給する油圧制御機構36とを備えている。駆動ユニット32は、これらの構成要素33〜36が互いに組み合わされることによりケース17とは別体のサブアッセンブリとして構成される。従って、駆動ユニット32の取付、点検及び整備等の取り扱いが各構成要素がケース17内に別々に組み込まれる場合に比べて容易になっている。駆動ユニット32の各構成要素は周知の構造を持っているため詳細な説明を省略する。油圧制御機構36には所定の油圧回路が構成されており、駆動装置2を制御する不図示のコンピュータがその油圧回路内に設けられた電磁弁を操作することにより、油圧シリンダ装置33に対する油圧の供給状態を制御する。これにより、第1モータ・ジェネレータ4をロックする係合状態とそのロックを解除する解放状態とを切り替えることができる。
【0018】
以上の形態によれば、ブレーキ30がアウタロータ4bの外周側に配置されているため、軸線Ax(図2参照)の方向(軸線方向)にブレーキ33を配置するスペースを確保する必要がないので、軸線方向に関する寸法増加を抑制することができる。また、ブレーキ30がバンドブレーキとして構成されているため、ブレーキバンド31の横幅をアウタロータ4bの横幅まで拡大でき、ブレーキ容量を容易に拡大できる。そのため、他の形式のブレーキに比べて少ない力でブレーキ容量を確保できるので、駆動ユニット32を容易に小型化できる。また、湿式多板ブレーキ等は否制動時でも摩擦板間に存在するオイルの剪断力によっていわゆる引き摺りトルクが発生するが、バンドブレーキは否制動時にこうした引き摺りトルクが生じないため、ブレーキの搭載に伴う損失を低減できる利点がある。
【0019】
本発明は上記の形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。上記形態に係る駆動装置2の構造は一例に過ぎない。例えば図4に示す形態で本発明を実施することができる。図4は、本発明の他の形態に係る駆動装置が適用された車両の全体構成を概略的に示した図である。なお、上記形態と共通の構成には図4に同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0020】
図4の車両100はハイブリッド車両として構成されており、その車両100に適用された駆動装置102は、カウンタドライブギア6に噛み合うカウンタドリブンギア103と、このギア103と同軸の中間ギア104とを備えていて、中間ギア104の動力は差動装置10を経由して左右の駆動輪11に伝達される。カウンタドリブンギア103には、第2モータ・ジェネレータ8の動力が出力される出力ギア105が噛み合っている。なお、第2モータ・ジェネレータ8と出力ギア105との間に減速機構を介在させることにより、第2モータジェネレータ8の回転を減速させてカウンタドリブンギア103に伝達することも可能である。この形態においても、第1モータ・ジェネレータ4のアウタロータ4bの外周側にブレーキ30が配置されているため、上記形態と同様の効果を達成できる。
【0021】
本発明に係るブレーキのタイプはバンドブレーキに限らない。アウタロータの外周側に配置できる限りにおいて、本発明に係るブレーキを湿式多板型のブレーキとして構成することもできるし、アウタロータの外周にブレーキシューを押し付けるドラム型のブレーキとして構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一形態に係る駆動装置が適用された車両の全体構成を概略的に示した図。
【図2】図1に示された駆動装置の要部を詳細に示した図。
【図3】図2のIII-IIIに関する断面模式図。
【図4】本発明の他の形態に係る駆動装置が適用された車両の全体構成を概略的に示した図。
【符号の説明】
【0023】
1、100 車両
2、102 駆動装置
4 第1モータ・ジェネレータ(電動機)
6 出力ギア(出力部材)
17 ケース
10 駆動輪
30 ブレーキ
31 ブレーキバンド
32 駆動ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝達経路に配置された電動機をブレーキを利用してロックできる車両の駆動装置において、
前記電動機は、ケースに固定されたインナステータと、前記インナステータの外周に同軸に配置されたアウタロータとを有し、
前記ブレーキは、前記アウタロータの外周側に配置されていることを特徴とする車両の駆動装置。
【請求項2】
前記ブレーキは、前記アウタロータの外周に沿って延びるブレーキバンドを前記アウタロータの外周に押し付けることにより前記電動機をロックするバンドブレーキとして構成されている請求項1に記載の車両の駆動装置。
【請求項3】
前記ブレーキは、前記ブレーキバンドに接続された駆動ユニットを備え、
前記駆動ユニットは、前記ケースとは別体のサブアッセンブリとして構成されている請求項2に記載の車両の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−120540(P2010−120540A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296817(P2008−296817)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】