車両強制停止装置
【課題】不正目的で特定施設や場所に向かって進入する不審車両を強制停止させるための車両強制停止装置を提供する。
【解決手段】並列する2本の鋼管柱2の上部間を水平横方向の横繋ぎ鋼管3により連結して衝突受けユニット4が構成され、並列する衝突受けユニット4の各鋼管柱2の相対峙する上部間を、それぞれ水平縦方向の縦繋ぎ鋼管5により連結して衝突受けフレーム体6が構成され、衝突受けフレーム体6を構成する車両衝突側の各鋼管柱2に、路面上を車両進入方向に向かって伸びる反力受け鋼管7が連結され、反力受け鋼管7同士は少なくともその前部を底繋ぎ鋼管8により連結されて成る。
【解決手段】並列する2本の鋼管柱2の上部間を水平横方向の横繋ぎ鋼管3により連結して衝突受けユニット4が構成され、並列する衝突受けユニット4の各鋼管柱2の相対峙する上部間を、それぞれ水平縦方向の縦繋ぎ鋼管5により連結して衝突受けフレーム体6が構成され、衝突受けフレーム体6を構成する車両衝突側の各鋼管柱2に、路面上を車両進入方向に向かって伸びる反力受け鋼管7が連結され、反力受け鋼管7同士は少なくともその前部を底繋ぎ鋼管8により連結されて成る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の進入を防止する車両強制停止装置の技術分野に属し、更に云うと、不正目的で特定施設や場所に向かって進入する不審車両を強制停止させるための車両強制停止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不正目的で特定施設や場所に向かって進入する不審車両を強制停止させるための車両強制停止装置が様々考えられている。最も一般的な車両強制停止装置は、バリケードであるが、主として侵入できない旨の注意を喚起することを目的としており、車両が衝突してくることを前提に、車両が特定の領域内へ突入することを防止することを目的とした車両強制停止装置は少ない。そうしたことを鑑みた車両強制停止装置として下記の特許文献1、2がある。
【0003】
特許文献1は、地中へ埋設されたケーシング内に上下方向に移動する昇降シリンダーが立設され、前記シリンダーの伸縮により地上に出没する柱形状のゲート体とで成り、通常時には地中内へ埋設され、緊急時には車両の衝突にも耐えうる前記ゲート体が出没することで不審車両の進入を阻止する構成が開示されている。
【0004】
また、特許文献2の車両強制停止装置140は、図14に示すように、中空角柱の横倒し形状に形成され、車両との衝突時に走行をブロックする止め部材141と、該止め部材141の一端側に結合された緩衝本体142と、他端側に結合され路面上に置かれる反力受け部材143とで構成されている。前記反力受け部材143は、止め部材141側に向けて背高となる略三角形状であり一定の間隔Sを空けて複数結合されており、前記止め部材141の裏側(車両側の反対側)は反力受け部材143側から緩衝本体142側にわたるブロック材144が設けられている。
【0005】
この車両強制停止装置140の車両を停止する方法について、下記のように記載されている。即ち、図15A、Bに示すように、「車両はまず反力受け部材143に乗り上げ、ついで緩衝部材142に衝突する。車両が反力受け部材143に乗り上げると、反力受け部材143に車両の自重が付加され路面に押し付けられるため、車両が緩衝本体142に衝突しても全体が滑らず止め部材141のブロック材144と路面との摩擦抵抗が極度に増加され」て車両を停止させる。
また、図15C、Dに示すように、「小型車が高速で衝突する又は大型車が衝突したときは、反力受け部材143を乗り越えて、緩衝本体142に突き当たるため、止め部材141と緩衝本体142の結合部分を支点に回転し、ブロック材144と路面との摩擦抵抗を増幅させて車両をより早く停止させることができる」点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−79416号公報
【特許文献2】特開2006−132172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1、2には以下のような問題点がある。
先ず、特許文献1の車両強制停止装置は、地中へ予め埋設されるものである。つまり、設置場所が固定されて変更がきかない構成である。したがって、設置場所以外の場所からの不審車両の進入には全く対応できないものである。また、車両の衝突に耐え得るゲート体を地中から出没させる複雑な構成で部材点数も多いため、その運搬作業や設置作業は大がかりなものとなり面倒でコストもかかる。
【0008】
特許文献2の車両強制停止装置140は、車両の自重を利用して停止させる点は認められる。しかし、下記に示す問題点がある。
先ず、明細書内には上記したように、車両が反力受け部材143に乗り上げて同反力受け部材143に車両の自重が付加されることで車両の進入を停止させる(図15A、B参照)点が記載されている。しかし、前記複数の反力受け部材143…は、図14に示すように、略三角形状で一定の間隔Sを空けて止め部材141に結合される構成である。つまり、反力受け部材143間にはスペースが存在する。そのため、例えば幅狭のタイヤを有する小型車が進入する際に、同タイヤは前記反力受け部材143の上面には乗り上げず反力受け部材143、143間の隙間S内に進入できてしまう。すると、車両は止め材141へ衝突しそのまま押し進めて楽に進入できしまう。
【0009】
また、上述したように、小型車が高速で衝突する又は大型車が衝突した際には、止め部材141と緩衝本体142の結合部分を支点に回転させてブロック材144と路面の摩擦抵抗を増幅させて停止させる(図15C、D参照)点が記載されている。そのため、不審者が車両強制停止装置140の手前で車両を止め、前記反力受け部材143を持ち上げて、進行方向の反対側へ回転させやすく、一旦反対側へ回転させてしまえば、進入車両は止め部材141の裏側を押して容易に進入できる構造である。
上記の点から特許文献2は、車両の自重を効果的且つ確実に利用して車両の進入を停止する車両強制停止装置とは言えないものである。
【0010】
本発明の目的は、上記問題点を解決することであり、構造が簡単で持ち運びができ、且つ運搬時の収納に適したコンパクト形状に分割して設置、運搬効率を向上でき、不審車両の自重を効果的に且つ確実に利用して、前記車両の進入を阻止する車両強制停止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る車両強制停止装置は、
並列する2本の鋼管柱の上部間を水平横方向の横繋ぎ鋼管により連結して衝突受けユニットが構成され、
並列する前記衝突受けユニットの各鋼管柱の相対峙する上部間を、それぞれ水平縦方向の縦繋ぎ鋼管により連結して衝突受けフレーム体が構成され、
前記衝突受けフレーム体を構成する車両衝突側の各鋼管柱に、路面上を車両進入方向に向かって伸びる反力受け鋼管が連結され、前記反力受け鋼管同士は少なくともその前部を底繋ぎ鋼管により連結されて成ることを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載した車両強制停止装置において、
衝突受けユニット同士を連結する縦繋ぎ鋼管、及び反力受け鋼管同士を連結する底繋ぎ鋼管は二つに分割した構成とされ、連結手段により着脱可能に連結して車両強制停止装置を二分割可能な構成とされていることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載した車両強制停止装置において、
2本の鋼管柱同士を連結する横繋ぎ鋼管、及び前記反力受け鋼管は二つに分割した構成とされ、連結手段により着脱可能に連結して車両強制停止装置を三分割可能な構成とされていることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載した車両強制停止装置において、
車両強制停止装置を構成する縦繋ぎ鋼管及び底繋ぎ鋼管の両端部に、ねじ孔がそれぞれ設けられ、同ねじ孔に異形鉄筋がねじ込まれており、隣接する車両強制停止装置は前記のように突き出た異形鉄筋同士を連結手段により接続可能な構成としていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜4に記載した車両強制停止装置は、以下の効果を奏する。
車両強制停止装置は、2本の鋼管柱を横繋ぎ鋼管により連結して衝突受けユニットを構築し、並列する前記衝突受けユニットの各鋼管柱を縦繋ぎ鋼管により連結して衝突受けフレーム体を構成し、前記衝突受けフレーム体の車両衝突側の各鋼管柱に、路面上を車両進入方向に向かって伸びる反力受け鋼管が連結し、同反力受け鋼管同士は少なくともその前部を底繋ぎ鋼管により連結されて成る構成とした。つまり、全部材を鋼管とするパイプフレーム構造であるため、構造が簡単で持ち運びができ、使い勝手が良い。のみならず、衝突時には鋼管によるへこみ変形により大きな衝突力に対して十分な吸収性能を発揮することができる利点もある。
【0016】
また、車両の自重を受ける前記反力受け鋼管同士を底繋ぎ鋼管により連結して、特許文献2のようにタイヤが進入できるスペースを無くしたので、不審車両の自重を反力受け鋼管で確実に受けて利用し車両の進入を停止できる。のみならず、不審者が車両強制停止装置の前記反力受け鋼管を持ち上げて反対側へ回転させることが至難な形状及び構造であるので、車両強制停止装置の停止効果を確実に発揮できる。
【0017】
更に、前記衝突受けユニット同士を連結する縦繋ぎ鋼管、及び反力受け鋼管同士を連結する底繋ぎ鋼管は二つに分割した構成とされ、連結手段により着脱可能に連結し車両強制停止装置を二分割可能な構成とされている。
又は2本の鋼管柱同士を連結している横繋ぎ鋼管、及び前記反力受け鋼管は二つに分割した構成とされ、連結手段により着脱可能に連結して車両強制停止装置を三分割可能な構成とされている。したがって、車両強制停止装置をコンパクトに分割して効果的に収納して運搬効率を飛躍的に向上することができる。のみならず、設置時には二〜三に分割した各パーツを前記連結手段により誰でも容易に組み立てられるので設置作業の効率がすこぶる良い。
【0018】
前記車両強制停止装置を構成する縦繋ぎ鋼管及び底繋ぎ鋼管の両端部にねじ孔が設けられ、同ねじ孔に異形鉄筋がねじ込まれており、隣接する車両強制停止装置は前記のように突き出た異形鉄筋同士を連結手段により接続可能な構成としたので、連結する車両強制停止装置の数を自在に調整して、大小様々な車両や複数台の車両の進入に対して即座に対応できる多様性がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る車両強制停止装置の概要を示す後方全体斜視図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】Aは、車両強制停止装置を縦繋ぎ鋼管及び底繋ぎ鋼管の中央位置で分解可能な連結手段を実施した状態を示す平面図である。Bは、Aの側面図である。
【図4】Aは、車両強制停止装置を横繋ぎ鋼管及び反力受け鋼管の中央位置で分解可能な連結手段を実施した状態を示す平面図である。Bは、Aの側面図である。
【図5】車両の自重を利用して進入を停止する概要を示す参考図である。
【図6】本発明の異なる車両強制停止装置の概要を示す後方全体斜視図である
【図7】図6の側面図である。
【図8】Aは、図6の車両強制停止装置を縦繋ぎ鋼管及び底繋ぎ鋼管の中央位置で分解可能な連結手段を実施した状態を示す平面図である。Bは、Aの側面図である。
【図9】Aは、図6の車両強制停止装置を横繋ぎ鋼管及び反力受け鋼管の中央位置で分解可能な連結手段を実施した状態を示す平面図である。Bは、Aの側面図である。
【図10】Aは、複数の車両強制停止装置を並列的に連結する手段を講じた車両強制停止装置の一例を示す斜視図である。Bは、複数の車両強制停止装置を並列的に連結して配置した実施例3の一例を示した斜視図である。
【図11】車両強制停止装置の縦繋ぎ鋼管及び底繋ぎ鋼管の両端から突き出た異形鉄筋同士を連結する一例を示す拡大図である。
【図12】複数の車両強制停止構装置をワイヤーネットで連結して構築した実施例4を示す全体斜視図である。
【図13】図12の車両強制停止構造物の車両衝突時の停止状況の一例を示す参考図である。
【図14】従来の車両強制停止装置を示す斜視図である。
【図15】A〜Dは、従来の車両強制停止装置の車両を停止する要領を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
並列する2本の鋼管柱2の上部間を水平横方向Xの横繋ぎ鋼管3により連結して衝突受けユニット4が構成される。
並列する前記衝突受けユニット4、4の各鋼管柱2、2の相対峙する上部間を、それぞれ水平縦方向Yの縦繋ぎ鋼管5、5により連結して衝突受けフレーム体6が構成される。
前記衝突受けフレーム体6を構成する車両衝突側Fの各鋼管柱2、2に路面上を車両進入方向に向かって伸びる反力受け鋼管7、7が連結され、前記反力受け鋼管7、7同士は少なくともその前部を底繋ぎ鋼管8により連結されて構成されている。
前記衝突受けユニット4、4同士を連結する縦繋ぎ鋼管5、及び反力受け鋼管7、7同士を連結する底繋ぎ鋼管8の略中央位置は二つに分割した構成とされ、連結手段9により着脱可能に連結して車両強制停止装置を二分割可能な構成とされている。
又は2本の鋼管柱2、2同士を連結している横繋ぎ鋼管3、3、及び前記反力受け鋼管7、7の略中央位置は二つに分割した構成とされ、連結手段10により着脱可能に連結して車両強制停止装置を三分割可能な構成とされている。
【実施例1】
【0021】
以下に、本発明を図示した実施例に基づいて説明する。
本発明の車両強制停止装置1の実施例として直置きタイプを図1、2に示した。図1は、車両強制停止装置1の後方全体斜視図を示し、図2は側面図を示した。
前記車両強制停止装置1は、並列する2本の鋼管柱2の上部間が水平横方向Xの横繋ぎ鋼管3により連結して衝突受けユニット4が構成され、並列する前記衝突受けユニット4、4の各鋼管柱2、2の相対峙する上部間を、それぞれ水平縦方向Yの縦繋ぎ鋼管5、5により連結して衝突受けフレーム体6が構成され、前記衝突受けフレーム体6を構成する車両衝突側Fの各鋼管柱2、2に路面上を車両進入方向に向かって伸びる反力受け鋼管7、7が連結され、前記反力受け鋼管7、7同士はその前部を底繋ぎ鋼管8により連結されて構築されている。
【0022】
前記衝突受けユニット4を構成する2本の鋼管柱2は、車両の衝突に対して抵抗力を発揮可能なハの字形状に上部を幅狭とする一定の開脚角度を付けて溶接等により横繋ぎ鋼管3により連結されている。勿論、鋼管柱2を直立状態で連結することもできるが、その際には鋼管柱2の径を大きくして抵抗力を発揮可能にする必要がある。この衝突受けユニット4は、高さ約2000mmで上部の幅が約1500mmで組み立てられている。また、前記衝突受けユニット4を支持する鋼管柱2の底面には、車両強制停止装置1の重量を支持可能な大きさと形状の支持プレート20が取り付けられている。勿論、この限りではなく、衝突受けユニット4を十分に支持し設置できる程度に鋼管柱2の径が大きい場合には、支持プレート20を取り付ける必要は特にはない。
【0023】
前記衝突受けユニット4、4同士を連結する上記縦繋ぎ鋼管5、5は、溶接等により連結され、同衝突受けユニット4同士の上部幅が1500mmとして平面視が正方形となるように組み上げて衝突受けフレーム体6を形成している。因みに、図示例の車両衝突側F(以下、単に衝突側Fと云う。)の縦繋ぎ鋼管5は、車両の衝突をブロック可能にその長さが2500mmとされ、両端部が500mm程度突き出る配置に連結され、その径が例えば400φを有している。したがって、車両による大きな衝突に対しても鋼管によるへこみ変形により十分な吸収性能を発揮することができる。一方、後方側Bの縦繋ぎ鋼管5は、直接車両が衝突する虞がないため1500mm程度の短い鋼管を使用して、重量をなるべく最小にする構成が望ましい。本実施例では前記縦繋ぎ鋼管5により連結する衝突受けユニット4は2個であるが、この限りではなく、適宜その数を増加させて大型の緩衝受けフレーム体6に構築することも可能である。
【0024】
上記反力受け鋼管7、7は、前記衝突受けフレーム体6の衝突側Fの2カ所の鋼管柱2、2の下部にそれぞれ溶接により連結されており、その長さは図示例では約2000mmである。そして、反力受け鋼管7、7同士はその前部(先端部)を底繋ぎ鋼管8により連結されている。前記底繋ぎ鋼管8は、前記縦繋ぎ鋼管5と同様に反力受け鋼管7、7間より長く両端部がある程度突き出る配置に連結される。したがって、車両は必ず前部の底繋ぎ鋼管8に乗り上げるため自重は確実に反力受け鋼管7へ付加できる。
図示例のように、反力受け鋼管7の前部に底繋ぎ鋼管8を取り付ける限りではなく、反力受け鋼管7、7の中間位置又は後部に格子状に複数の底繋ぎ鋼管8…を設けて実施することもできる。
上記したように車両強制停止装置1は、全て鋼管で成るパイプフレーム構造物であるので、構造が簡単で、軽量であり組み立てや運搬作業が簡便である。
【0025】
上記の構成とされた車両強制停止装置1は、更に効率的に運搬するべく分割可能な構成とされている。
その一例を図3A、Bに示した。この例は車両強制停止装置1を、2つの衝突受けユニット4、4同士を連結している縦繋ぎ鋼管5、及び反力受け鋼管7、7同士を連結している底繋ぎ鋼管8の略中央位置で二つに分割するものである。
そのため、前記縦繋ぎ鋼管5と底繋ぎ鋼管8は、その略中央位置が二つに分割する構成とされ、両者は前記縦繋ぎ鋼管5と底繋ぎ鋼管8の略中央位置に設けた連結手段9で着脱可能に連結されている。
この連結手段9は、2枚のボルト孔を有するフランジ9a、9aとボルト9b、ナット9cとで構成されており、分割された縦繋ぎ鋼管5及び底繋ぎ鋼管8の両分割面にそれぞれフランジ9a、9aを各ボルト孔を一致させた位置で取り付け、ボルト9b…ナット9cにより両者を締め付けて一体的に組み合わせる構成である。したがって、前記ボルト9b・ナット9cを取り外せば、直ぐに車両強制停止装置1を二つに分解でき運搬スペースを最大限に活用して効率の良い運搬が可能になる。のみならず、組み立て作業は二つに分割されたパーツを連結手段9のボルト9b、ナット9cで締め付けるのみであるので、誰でも容易に且つ迅速に組み立てて設置することができる。
【0026】
車両強制停止装置1を分割する方法は上記の限りではなく、図4A、Bに示す方法で実施することもできる。
即ち、2本の鋼管柱2、2同士を連結している横繋ぎ鋼管3及び反力受け鋼管7の略中央位置で分割する方法である。この方法は三つのパーツに分けることで、よりコンパクトに収納して効率的な運搬に寄与できる利点がある。
そのため、前記横繋ぎ鋼管3と反力受け鋼管7の略中央位置は二つに分割した構成とされ、両者を連結手段10により着脱可能に連結されている。この連結手段10は上記連結手段9と同様の構成であり、説明を省略する。
【0027】
上記の構成とされた車両強制停止装置1は、図5に示すように、進入車両が前記底繋ぎ鋼管8と反力受け鋼管7に乗り上げて衝突側Fの縦繋ぎ鋼管5に衝突すると、同縦繋ぎ鋼管5がへこみ変形により衝突を吸収すると共に、底繋ぎ鋼管8により車両の自重を確実に反力受け鋼管7へ付加させて路面の摩擦力と相まって、車両の進入を強制的に停止させることができるのである。
【実施例2】
【0028】
本発明の実施例は、図1〜5に示した車両強制停止装置1は直置きタイプの限りではない。同様の技術的思想に基づいて図6〜9に示す床堀・埋戻しタイプとする車両強制停止装置1’を実施することもできる。
この車両強制停止装置1’は、並列する2本の鋼管柱2’の上部間が水平横方向Xの横繋ぎ鋼管3’により連結して衝突受けユニット4’が構築され、並列する前記衝突受けユニット4’、4’の各鋼管柱2’、2’の相対峙する上部間を、それぞれ水平縦方向Yの縦繋ぎ鋼管5’、5’により連結して衝突受けフレーム体6’が構成する点は同じである。
前記衝突受けフレーム体6’の衝突側Fの鋼管柱2’の下部から路面上へ伸びる2本の反力受け鋼管7’、7’が連結されるが、この反力受け鋼管7’、7’は、それぞれ各衝突受けユニット4’を構成する2本の鋼管柱2’、2’の底部を共通に支持可能な長さを有し、前記2本の鋼管柱2’の底部と溶接により連結される構成である点が相違する。つまり、反力受け鋼管7’が車両強制停止装置1’の底部フレームとなる構成である。前記2本の反力受け鋼管7’同士は、その前部と後部を底繋ぎ鋼管8’、8’により連結されている。勿論、この限りではなく複数の底繋ぎ鋼管8’を格子状に連結しても良い。
前記反力受け鋼管7’の全長は、約4500mmとされ、衝突側Fに約2000mm延長するように配置されている。この車両強制停止装置1’は、図示の通り完全なフレーム体であるので、強度が非常に強い利点がある。
【0029】
上記構成の車両強制停止装置1’は、実施例1の図3、4に示したと同様に二〜三のパーツに分割してコンパクト化することができる。
図8A、Bに、縦繋ぎ鋼管5’及び底繋ぎ鋼管8’の中央位置で二つに分割でき連結手段9’により着脱可能に連結した構成を示した。また、図9A、Bに、横繋ぎ鋼管3及び反力受け鋼管7’の中央位置でそれぞれ二分割して合計三分割にでき連結手段10’により着脱可能に連結した構成を示した。これらの分割方法及び連結手段9’、10’は上述したと同様であるため説明は省略する。
【実施例3】
【0030】
本発明の車両強制停止装置1、1’は、実施例1、2に記載した車両強制停止装置1、1’(以下、単に車両強制停止装置1と記載する)を図10に示すように複数個並列に配置可能な構成とされている。
即ち、図11に示すように、縦繋ぎ鋼管5と底繋ぎ鋼管8の両端には異形鉄筋11a、11aがねじ込めるように予めねじ孔50(80)が設けられている。このねじ孔50(80)へ異形鉄筋11aをねじ込んで用意した複数の車両強制停止装置1の異形鉄筋11a、11aの先端に、それぞれカプラー12、12の一端をねじ込み、前記カプラー12、12のそれぞれの他端へ繋ぎ鉄筋11bの両端をねじ込んで、車両強制停止装置1同士を並列的に連結することができる(図10B参照)。このようにして、連結する車両強制停止装置1の数を自在に調整して、大小様々な車両や複数台の車両の進入に対しても直ぐに対応することができる。
【実施例4】
【0031】
本発明の車両強制停止装置1は、図12、13に示すように隣接する車両強制停止装置1、1同士を、それぞれの反力受け鋼管7、7の間をワイヤーネット13で繋いで実施することもできる。
つまり、前記ワイヤーネット13は隣り合う反力受け鋼管7の上面に載置され、その上から同反力受け鋼管7に向かってスタッドジベル14を打って固定される。この連結構造は、実施例3に比して車両強制停止装置1、1同士の連結強度が低くかなりのあそびがある。したがって、図13に示すように、大型の車両が車両強制停止装置1…へ衝突し一方向へ押し進めると、大型車両の自重によりスタッドジベル14が変形し、その力によりワイヤーネット13で並列的に複数連結された車両強制停止装置1…が前記あそびの範囲内で変位し、ワイヤーネットを引っ掛けることによりワイヤーネット13が固定されて前記車両の回りを囲んで進入を止めることができる。したがって、簡易な設置構成で、大きな効果を望める。
【0032】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、本発明は、上記実施例の構成に限定されない。その目的と要旨を逸脱しない範囲において、当業者が必要に応じて行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のため言及する。
【符号の説明】
【0033】
1 車両強制停止装置
2 鋼管柱
3 横繋ぎ鋼管
4 衝突受けユニット
5 縦繋ぎ鋼管
6 衝突受けフレーム体
7 反力受け鋼管
8 底繋ぎ鋼管
9、10 連結手段
11a、11b異形鉄筋
12 カプラー
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の進入を防止する車両強制停止装置の技術分野に属し、更に云うと、不正目的で特定施設や場所に向かって進入する不審車両を強制停止させるための車両強制停止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不正目的で特定施設や場所に向かって進入する不審車両を強制停止させるための車両強制停止装置が様々考えられている。最も一般的な車両強制停止装置は、バリケードであるが、主として侵入できない旨の注意を喚起することを目的としており、車両が衝突してくることを前提に、車両が特定の領域内へ突入することを防止することを目的とした車両強制停止装置は少ない。そうしたことを鑑みた車両強制停止装置として下記の特許文献1、2がある。
【0003】
特許文献1は、地中へ埋設されたケーシング内に上下方向に移動する昇降シリンダーが立設され、前記シリンダーの伸縮により地上に出没する柱形状のゲート体とで成り、通常時には地中内へ埋設され、緊急時には車両の衝突にも耐えうる前記ゲート体が出没することで不審車両の進入を阻止する構成が開示されている。
【0004】
また、特許文献2の車両強制停止装置140は、図14に示すように、中空角柱の横倒し形状に形成され、車両との衝突時に走行をブロックする止め部材141と、該止め部材141の一端側に結合された緩衝本体142と、他端側に結合され路面上に置かれる反力受け部材143とで構成されている。前記反力受け部材143は、止め部材141側に向けて背高となる略三角形状であり一定の間隔Sを空けて複数結合されており、前記止め部材141の裏側(車両側の反対側)は反力受け部材143側から緩衝本体142側にわたるブロック材144が設けられている。
【0005】
この車両強制停止装置140の車両を停止する方法について、下記のように記載されている。即ち、図15A、Bに示すように、「車両はまず反力受け部材143に乗り上げ、ついで緩衝部材142に衝突する。車両が反力受け部材143に乗り上げると、反力受け部材143に車両の自重が付加され路面に押し付けられるため、車両が緩衝本体142に衝突しても全体が滑らず止め部材141のブロック材144と路面との摩擦抵抗が極度に増加され」て車両を停止させる。
また、図15C、Dに示すように、「小型車が高速で衝突する又は大型車が衝突したときは、反力受け部材143を乗り越えて、緩衝本体142に突き当たるため、止め部材141と緩衝本体142の結合部分を支点に回転し、ブロック材144と路面との摩擦抵抗を増幅させて車両をより早く停止させることができる」点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−79416号公報
【特許文献2】特開2006−132172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1、2には以下のような問題点がある。
先ず、特許文献1の車両強制停止装置は、地中へ予め埋設されるものである。つまり、設置場所が固定されて変更がきかない構成である。したがって、設置場所以外の場所からの不審車両の進入には全く対応できないものである。また、車両の衝突に耐え得るゲート体を地中から出没させる複雑な構成で部材点数も多いため、その運搬作業や設置作業は大がかりなものとなり面倒でコストもかかる。
【0008】
特許文献2の車両強制停止装置140は、車両の自重を利用して停止させる点は認められる。しかし、下記に示す問題点がある。
先ず、明細書内には上記したように、車両が反力受け部材143に乗り上げて同反力受け部材143に車両の自重が付加されることで車両の進入を停止させる(図15A、B参照)点が記載されている。しかし、前記複数の反力受け部材143…は、図14に示すように、略三角形状で一定の間隔Sを空けて止め部材141に結合される構成である。つまり、反力受け部材143間にはスペースが存在する。そのため、例えば幅狭のタイヤを有する小型車が進入する際に、同タイヤは前記反力受け部材143の上面には乗り上げず反力受け部材143、143間の隙間S内に進入できてしまう。すると、車両は止め材141へ衝突しそのまま押し進めて楽に進入できしまう。
【0009】
また、上述したように、小型車が高速で衝突する又は大型車が衝突した際には、止め部材141と緩衝本体142の結合部分を支点に回転させてブロック材144と路面の摩擦抵抗を増幅させて停止させる(図15C、D参照)点が記載されている。そのため、不審者が車両強制停止装置140の手前で車両を止め、前記反力受け部材143を持ち上げて、進行方向の反対側へ回転させやすく、一旦反対側へ回転させてしまえば、進入車両は止め部材141の裏側を押して容易に進入できる構造である。
上記の点から特許文献2は、車両の自重を効果的且つ確実に利用して車両の進入を停止する車両強制停止装置とは言えないものである。
【0010】
本発明の目的は、上記問題点を解決することであり、構造が簡単で持ち運びができ、且つ運搬時の収納に適したコンパクト形状に分割して設置、運搬効率を向上でき、不審車両の自重を効果的に且つ確実に利用して、前記車両の進入を阻止する車両強制停止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る車両強制停止装置は、
並列する2本の鋼管柱の上部間を水平横方向の横繋ぎ鋼管により連結して衝突受けユニットが構成され、
並列する前記衝突受けユニットの各鋼管柱の相対峙する上部間を、それぞれ水平縦方向の縦繋ぎ鋼管により連結して衝突受けフレーム体が構成され、
前記衝突受けフレーム体を構成する車両衝突側の各鋼管柱に、路面上を車両進入方向に向かって伸びる反力受け鋼管が連結され、前記反力受け鋼管同士は少なくともその前部を底繋ぎ鋼管により連結されて成ることを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載した車両強制停止装置において、
衝突受けユニット同士を連結する縦繋ぎ鋼管、及び反力受け鋼管同士を連結する底繋ぎ鋼管は二つに分割した構成とされ、連結手段により着脱可能に連結して車両強制停止装置を二分割可能な構成とされていることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載した車両強制停止装置において、
2本の鋼管柱同士を連結する横繋ぎ鋼管、及び前記反力受け鋼管は二つに分割した構成とされ、連結手段により着脱可能に連結して車両強制停止装置を三分割可能な構成とされていることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載した車両強制停止装置において、
車両強制停止装置を構成する縦繋ぎ鋼管及び底繋ぎ鋼管の両端部に、ねじ孔がそれぞれ設けられ、同ねじ孔に異形鉄筋がねじ込まれており、隣接する車両強制停止装置は前記のように突き出た異形鉄筋同士を連結手段により接続可能な構成としていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜4に記載した車両強制停止装置は、以下の効果を奏する。
車両強制停止装置は、2本の鋼管柱を横繋ぎ鋼管により連結して衝突受けユニットを構築し、並列する前記衝突受けユニットの各鋼管柱を縦繋ぎ鋼管により連結して衝突受けフレーム体を構成し、前記衝突受けフレーム体の車両衝突側の各鋼管柱に、路面上を車両進入方向に向かって伸びる反力受け鋼管が連結し、同反力受け鋼管同士は少なくともその前部を底繋ぎ鋼管により連結されて成る構成とした。つまり、全部材を鋼管とするパイプフレーム構造であるため、構造が簡単で持ち運びができ、使い勝手が良い。のみならず、衝突時には鋼管によるへこみ変形により大きな衝突力に対して十分な吸収性能を発揮することができる利点もある。
【0016】
また、車両の自重を受ける前記反力受け鋼管同士を底繋ぎ鋼管により連結して、特許文献2のようにタイヤが進入できるスペースを無くしたので、不審車両の自重を反力受け鋼管で確実に受けて利用し車両の進入を停止できる。のみならず、不審者が車両強制停止装置の前記反力受け鋼管を持ち上げて反対側へ回転させることが至難な形状及び構造であるので、車両強制停止装置の停止効果を確実に発揮できる。
【0017】
更に、前記衝突受けユニット同士を連結する縦繋ぎ鋼管、及び反力受け鋼管同士を連結する底繋ぎ鋼管は二つに分割した構成とされ、連結手段により着脱可能に連結し車両強制停止装置を二分割可能な構成とされている。
又は2本の鋼管柱同士を連結している横繋ぎ鋼管、及び前記反力受け鋼管は二つに分割した構成とされ、連結手段により着脱可能に連結して車両強制停止装置を三分割可能な構成とされている。したがって、車両強制停止装置をコンパクトに分割して効果的に収納して運搬効率を飛躍的に向上することができる。のみならず、設置時には二〜三に分割した各パーツを前記連結手段により誰でも容易に組み立てられるので設置作業の効率がすこぶる良い。
【0018】
前記車両強制停止装置を構成する縦繋ぎ鋼管及び底繋ぎ鋼管の両端部にねじ孔が設けられ、同ねじ孔に異形鉄筋がねじ込まれており、隣接する車両強制停止装置は前記のように突き出た異形鉄筋同士を連結手段により接続可能な構成としたので、連結する車両強制停止装置の数を自在に調整して、大小様々な車両や複数台の車両の進入に対して即座に対応できる多様性がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る車両強制停止装置の概要を示す後方全体斜視図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】Aは、車両強制停止装置を縦繋ぎ鋼管及び底繋ぎ鋼管の中央位置で分解可能な連結手段を実施した状態を示す平面図である。Bは、Aの側面図である。
【図4】Aは、車両強制停止装置を横繋ぎ鋼管及び反力受け鋼管の中央位置で分解可能な連結手段を実施した状態を示す平面図である。Bは、Aの側面図である。
【図5】車両の自重を利用して進入を停止する概要を示す参考図である。
【図6】本発明の異なる車両強制停止装置の概要を示す後方全体斜視図である
【図7】図6の側面図である。
【図8】Aは、図6の車両強制停止装置を縦繋ぎ鋼管及び底繋ぎ鋼管の中央位置で分解可能な連結手段を実施した状態を示す平面図である。Bは、Aの側面図である。
【図9】Aは、図6の車両強制停止装置を横繋ぎ鋼管及び反力受け鋼管の中央位置で分解可能な連結手段を実施した状態を示す平面図である。Bは、Aの側面図である。
【図10】Aは、複数の車両強制停止装置を並列的に連結する手段を講じた車両強制停止装置の一例を示す斜視図である。Bは、複数の車両強制停止装置を並列的に連結して配置した実施例3の一例を示した斜視図である。
【図11】車両強制停止装置の縦繋ぎ鋼管及び底繋ぎ鋼管の両端から突き出た異形鉄筋同士を連結する一例を示す拡大図である。
【図12】複数の車両強制停止構装置をワイヤーネットで連結して構築した実施例4を示す全体斜視図である。
【図13】図12の車両強制停止構造物の車両衝突時の停止状況の一例を示す参考図である。
【図14】従来の車両強制停止装置を示す斜視図である。
【図15】A〜Dは、従来の車両強制停止装置の車両を停止する要領を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
並列する2本の鋼管柱2の上部間を水平横方向Xの横繋ぎ鋼管3により連結して衝突受けユニット4が構成される。
並列する前記衝突受けユニット4、4の各鋼管柱2、2の相対峙する上部間を、それぞれ水平縦方向Yの縦繋ぎ鋼管5、5により連結して衝突受けフレーム体6が構成される。
前記衝突受けフレーム体6を構成する車両衝突側Fの各鋼管柱2、2に路面上を車両進入方向に向かって伸びる反力受け鋼管7、7が連結され、前記反力受け鋼管7、7同士は少なくともその前部を底繋ぎ鋼管8により連結されて構成されている。
前記衝突受けユニット4、4同士を連結する縦繋ぎ鋼管5、及び反力受け鋼管7、7同士を連結する底繋ぎ鋼管8の略中央位置は二つに分割した構成とされ、連結手段9により着脱可能に連結して車両強制停止装置を二分割可能な構成とされている。
又は2本の鋼管柱2、2同士を連結している横繋ぎ鋼管3、3、及び前記反力受け鋼管7、7の略中央位置は二つに分割した構成とされ、連結手段10により着脱可能に連結して車両強制停止装置を三分割可能な構成とされている。
【実施例1】
【0021】
以下に、本発明を図示した実施例に基づいて説明する。
本発明の車両強制停止装置1の実施例として直置きタイプを図1、2に示した。図1は、車両強制停止装置1の後方全体斜視図を示し、図2は側面図を示した。
前記車両強制停止装置1は、並列する2本の鋼管柱2の上部間が水平横方向Xの横繋ぎ鋼管3により連結して衝突受けユニット4が構成され、並列する前記衝突受けユニット4、4の各鋼管柱2、2の相対峙する上部間を、それぞれ水平縦方向Yの縦繋ぎ鋼管5、5により連結して衝突受けフレーム体6が構成され、前記衝突受けフレーム体6を構成する車両衝突側Fの各鋼管柱2、2に路面上を車両進入方向に向かって伸びる反力受け鋼管7、7が連結され、前記反力受け鋼管7、7同士はその前部を底繋ぎ鋼管8により連結されて構築されている。
【0022】
前記衝突受けユニット4を構成する2本の鋼管柱2は、車両の衝突に対して抵抗力を発揮可能なハの字形状に上部を幅狭とする一定の開脚角度を付けて溶接等により横繋ぎ鋼管3により連結されている。勿論、鋼管柱2を直立状態で連結することもできるが、その際には鋼管柱2の径を大きくして抵抗力を発揮可能にする必要がある。この衝突受けユニット4は、高さ約2000mmで上部の幅が約1500mmで組み立てられている。また、前記衝突受けユニット4を支持する鋼管柱2の底面には、車両強制停止装置1の重量を支持可能な大きさと形状の支持プレート20が取り付けられている。勿論、この限りではなく、衝突受けユニット4を十分に支持し設置できる程度に鋼管柱2の径が大きい場合には、支持プレート20を取り付ける必要は特にはない。
【0023】
前記衝突受けユニット4、4同士を連結する上記縦繋ぎ鋼管5、5は、溶接等により連結され、同衝突受けユニット4同士の上部幅が1500mmとして平面視が正方形となるように組み上げて衝突受けフレーム体6を形成している。因みに、図示例の車両衝突側F(以下、単に衝突側Fと云う。)の縦繋ぎ鋼管5は、車両の衝突をブロック可能にその長さが2500mmとされ、両端部が500mm程度突き出る配置に連結され、その径が例えば400φを有している。したがって、車両による大きな衝突に対しても鋼管によるへこみ変形により十分な吸収性能を発揮することができる。一方、後方側Bの縦繋ぎ鋼管5は、直接車両が衝突する虞がないため1500mm程度の短い鋼管を使用して、重量をなるべく最小にする構成が望ましい。本実施例では前記縦繋ぎ鋼管5により連結する衝突受けユニット4は2個であるが、この限りではなく、適宜その数を増加させて大型の緩衝受けフレーム体6に構築することも可能である。
【0024】
上記反力受け鋼管7、7は、前記衝突受けフレーム体6の衝突側Fの2カ所の鋼管柱2、2の下部にそれぞれ溶接により連結されており、その長さは図示例では約2000mmである。そして、反力受け鋼管7、7同士はその前部(先端部)を底繋ぎ鋼管8により連結されている。前記底繋ぎ鋼管8は、前記縦繋ぎ鋼管5と同様に反力受け鋼管7、7間より長く両端部がある程度突き出る配置に連結される。したがって、車両は必ず前部の底繋ぎ鋼管8に乗り上げるため自重は確実に反力受け鋼管7へ付加できる。
図示例のように、反力受け鋼管7の前部に底繋ぎ鋼管8を取り付ける限りではなく、反力受け鋼管7、7の中間位置又は後部に格子状に複数の底繋ぎ鋼管8…を設けて実施することもできる。
上記したように車両強制停止装置1は、全て鋼管で成るパイプフレーム構造物であるので、構造が簡単で、軽量であり組み立てや運搬作業が簡便である。
【0025】
上記の構成とされた車両強制停止装置1は、更に効率的に運搬するべく分割可能な構成とされている。
その一例を図3A、Bに示した。この例は車両強制停止装置1を、2つの衝突受けユニット4、4同士を連結している縦繋ぎ鋼管5、及び反力受け鋼管7、7同士を連結している底繋ぎ鋼管8の略中央位置で二つに分割するものである。
そのため、前記縦繋ぎ鋼管5と底繋ぎ鋼管8は、その略中央位置が二つに分割する構成とされ、両者は前記縦繋ぎ鋼管5と底繋ぎ鋼管8の略中央位置に設けた連結手段9で着脱可能に連結されている。
この連結手段9は、2枚のボルト孔を有するフランジ9a、9aとボルト9b、ナット9cとで構成されており、分割された縦繋ぎ鋼管5及び底繋ぎ鋼管8の両分割面にそれぞれフランジ9a、9aを各ボルト孔を一致させた位置で取り付け、ボルト9b…ナット9cにより両者を締め付けて一体的に組み合わせる構成である。したがって、前記ボルト9b・ナット9cを取り外せば、直ぐに車両強制停止装置1を二つに分解でき運搬スペースを最大限に活用して効率の良い運搬が可能になる。のみならず、組み立て作業は二つに分割されたパーツを連結手段9のボルト9b、ナット9cで締め付けるのみであるので、誰でも容易に且つ迅速に組み立てて設置することができる。
【0026】
車両強制停止装置1を分割する方法は上記の限りではなく、図4A、Bに示す方法で実施することもできる。
即ち、2本の鋼管柱2、2同士を連結している横繋ぎ鋼管3及び反力受け鋼管7の略中央位置で分割する方法である。この方法は三つのパーツに分けることで、よりコンパクトに収納して効率的な運搬に寄与できる利点がある。
そのため、前記横繋ぎ鋼管3と反力受け鋼管7の略中央位置は二つに分割した構成とされ、両者を連結手段10により着脱可能に連結されている。この連結手段10は上記連結手段9と同様の構成であり、説明を省略する。
【0027】
上記の構成とされた車両強制停止装置1は、図5に示すように、進入車両が前記底繋ぎ鋼管8と反力受け鋼管7に乗り上げて衝突側Fの縦繋ぎ鋼管5に衝突すると、同縦繋ぎ鋼管5がへこみ変形により衝突を吸収すると共に、底繋ぎ鋼管8により車両の自重を確実に反力受け鋼管7へ付加させて路面の摩擦力と相まって、車両の進入を強制的に停止させることができるのである。
【実施例2】
【0028】
本発明の実施例は、図1〜5に示した車両強制停止装置1は直置きタイプの限りではない。同様の技術的思想に基づいて図6〜9に示す床堀・埋戻しタイプとする車両強制停止装置1’を実施することもできる。
この車両強制停止装置1’は、並列する2本の鋼管柱2’の上部間が水平横方向Xの横繋ぎ鋼管3’により連結して衝突受けユニット4’が構築され、並列する前記衝突受けユニット4’、4’の各鋼管柱2’、2’の相対峙する上部間を、それぞれ水平縦方向Yの縦繋ぎ鋼管5’、5’により連結して衝突受けフレーム体6’が構成する点は同じである。
前記衝突受けフレーム体6’の衝突側Fの鋼管柱2’の下部から路面上へ伸びる2本の反力受け鋼管7’、7’が連結されるが、この反力受け鋼管7’、7’は、それぞれ各衝突受けユニット4’を構成する2本の鋼管柱2’、2’の底部を共通に支持可能な長さを有し、前記2本の鋼管柱2’の底部と溶接により連結される構成である点が相違する。つまり、反力受け鋼管7’が車両強制停止装置1’の底部フレームとなる構成である。前記2本の反力受け鋼管7’同士は、その前部と後部を底繋ぎ鋼管8’、8’により連結されている。勿論、この限りではなく複数の底繋ぎ鋼管8’を格子状に連結しても良い。
前記反力受け鋼管7’の全長は、約4500mmとされ、衝突側Fに約2000mm延長するように配置されている。この車両強制停止装置1’は、図示の通り完全なフレーム体であるので、強度が非常に強い利点がある。
【0029】
上記構成の車両強制停止装置1’は、実施例1の図3、4に示したと同様に二〜三のパーツに分割してコンパクト化することができる。
図8A、Bに、縦繋ぎ鋼管5’及び底繋ぎ鋼管8’の中央位置で二つに分割でき連結手段9’により着脱可能に連結した構成を示した。また、図9A、Bに、横繋ぎ鋼管3及び反力受け鋼管7’の中央位置でそれぞれ二分割して合計三分割にでき連結手段10’により着脱可能に連結した構成を示した。これらの分割方法及び連結手段9’、10’は上述したと同様であるため説明は省略する。
【実施例3】
【0030】
本発明の車両強制停止装置1、1’は、実施例1、2に記載した車両強制停止装置1、1’(以下、単に車両強制停止装置1と記載する)を図10に示すように複数個並列に配置可能な構成とされている。
即ち、図11に示すように、縦繋ぎ鋼管5と底繋ぎ鋼管8の両端には異形鉄筋11a、11aがねじ込めるように予めねじ孔50(80)が設けられている。このねじ孔50(80)へ異形鉄筋11aをねじ込んで用意した複数の車両強制停止装置1の異形鉄筋11a、11aの先端に、それぞれカプラー12、12の一端をねじ込み、前記カプラー12、12のそれぞれの他端へ繋ぎ鉄筋11bの両端をねじ込んで、車両強制停止装置1同士を並列的に連結することができる(図10B参照)。このようにして、連結する車両強制停止装置1の数を自在に調整して、大小様々な車両や複数台の車両の進入に対しても直ぐに対応することができる。
【実施例4】
【0031】
本発明の車両強制停止装置1は、図12、13に示すように隣接する車両強制停止装置1、1同士を、それぞれの反力受け鋼管7、7の間をワイヤーネット13で繋いで実施することもできる。
つまり、前記ワイヤーネット13は隣り合う反力受け鋼管7の上面に載置され、その上から同反力受け鋼管7に向かってスタッドジベル14を打って固定される。この連結構造は、実施例3に比して車両強制停止装置1、1同士の連結強度が低くかなりのあそびがある。したがって、図13に示すように、大型の車両が車両強制停止装置1…へ衝突し一方向へ押し進めると、大型車両の自重によりスタッドジベル14が変形し、その力によりワイヤーネット13で並列的に複数連結された車両強制停止装置1…が前記あそびの範囲内で変位し、ワイヤーネットを引っ掛けることによりワイヤーネット13が固定されて前記車両の回りを囲んで進入を止めることができる。したがって、簡易な設置構成で、大きな効果を望める。
【0032】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、本発明は、上記実施例の構成に限定されない。その目的と要旨を逸脱しない範囲において、当業者が必要に応じて行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のため言及する。
【符号の説明】
【0033】
1 車両強制停止装置
2 鋼管柱
3 横繋ぎ鋼管
4 衝突受けユニット
5 縦繋ぎ鋼管
6 衝突受けフレーム体
7 反力受け鋼管
8 底繋ぎ鋼管
9、10 連結手段
11a、11b異形鉄筋
12 カプラー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列する2本の鋼管柱の上部間を水平横方向の横繋ぎ鋼管により連結して衝突受けユニットが構成され、
並列する前記衝突受けユニットの各鋼管柱の相対峙する上部間を、それぞれ水平縦方向の縦繋ぎ鋼管により連結して衝突受けフレーム体が構成され、
前記衝突受けフレーム体を構成する車両衝突側の各鋼管柱に、路面上を車両進入方向に向かって伸びる反力受け鋼管が連結され、前記反力受け鋼管同士は少なくともその前部を底繋ぎ鋼管により連結されて成ることを特徴とする、車両強制停止装置。
【請求項2】
衝突受けユニット同士を連結する縦繋ぎ鋼管、及び反力受け鋼管同士を連結する底繋ぎ鋼管は二つに分割した構成とされ、連結手段により着脱可能に連結して車両強制停止装置を二分割可能な構成とされていることを特徴とする、請求項1に記載した車両強制停止装置。
【請求項3】
2本の鋼管柱同士を連結する横繋ぎ鋼管、及び前記反力受け鋼管は二つに分割した構成とされ、連結手段により着脱可能に連結して車両強制停止装置を三分割可能な構成とされていることを特徴とする、請求項1に記載した車両強制停止装置。
【請求項4】
車両強制停止装置を構成する縦繋ぎ鋼管及び底繋ぎ鋼管の両端部に、ねじ孔がそれぞれ設けられ、同ねじ孔に異形鉄筋がねじ込まれており、隣接する車両強制停止装置は前記のように突き出た異形鉄筋同士を連結手段により接続可能な構成としていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載した車両強制停止装置。
【請求項1】
並列する2本の鋼管柱の上部間を水平横方向の横繋ぎ鋼管により連結して衝突受けユニットが構成され、
並列する前記衝突受けユニットの各鋼管柱の相対峙する上部間を、それぞれ水平縦方向の縦繋ぎ鋼管により連結して衝突受けフレーム体が構成され、
前記衝突受けフレーム体を構成する車両衝突側の各鋼管柱に、路面上を車両進入方向に向かって伸びる反力受け鋼管が連結され、前記反力受け鋼管同士は少なくともその前部を底繋ぎ鋼管により連結されて成ることを特徴とする、車両強制停止装置。
【請求項2】
衝突受けユニット同士を連結する縦繋ぎ鋼管、及び反力受け鋼管同士を連結する底繋ぎ鋼管は二つに分割した構成とされ、連結手段により着脱可能に連結して車両強制停止装置を二分割可能な構成とされていることを特徴とする、請求項1に記載した車両強制停止装置。
【請求項3】
2本の鋼管柱同士を連結する横繋ぎ鋼管、及び前記反力受け鋼管は二つに分割した構成とされ、連結手段により着脱可能に連結して車両強制停止装置を三分割可能な構成とされていることを特徴とする、請求項1に記載した車両強制停止装置。
【請求項4】
車両強制停止装置を構成する縦繋ぎ鋼管及び底繋ぎ鋼管の両端部に、ねじ孔がそれぞれ設けられ、同ねじ孔に異形鉄筋がねじ込まれており、隣接する車両強制停止装置は前記のように突き出た異形鉄筋同士を連結手段により接続可能な構成としていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載した車両強制停止装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−112155(P2012−112155A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261067(P2010−261067)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】
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