説明

車両用ドアミラー

【課題】反射鏡ユニットの周縁部に配設した発光部の点灯視認性が良好で、しかも、ドアミラーの有効視界範囲を十分に確保することができる車両用ドアミラーの提供を図る。
【解決手段】反射鏡ユニット1を構成する鏡体2の周縁とホルダー3の周縁フランジ3aとの間に、それらの周縁相互が部分的に径方向に離間した状態にして発光用の間隙4を設け、ここに灯具ユニットの発光部10Lを臨設配置してある。これにより、ドライバーは発光部10Lからの出射光を直接視認することができ、また、間隙4の形成に伴う鏡体2の反射面積の減少を小さく抑制できてドアミラーの有効視界範囲を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアミラーの中には、例えば、特許文献1に示されているように、反射鏡ユニットの鏡体を保持するホルダーの周縁フランジの内周縁に部分的に開窓部を形成し、ここに鏡体裏側に内蔵したインジケータ等の導光体の発光面を臨設配置したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許明細書第7,510,311号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の開示技術では、光源の出射光が鏡体の側方に配置した導光体の発光面から該鏡体の反射面に沿って照射される。このため、ドライバーには間接照明光として視認され、例えば、後続車接近警告灯システム等の緊急警告用に供した場合に、点灯視認性に欠けてしまうことは否めない。
【0005】
一方、この他に、前述のホルダーの周縁フランジの内周縁を部分的に鏡体の反射面中央に向けて拡幅して形成し、その頂面に開窓部を形成して、ここに前述の導光体の発光面を臨設配置した技術も開示されている。
【0006】
この場合、導光体の発光面からの出射光をドライバーが直接視認できるため、前述のような不具合を生じることはないが、ホルダーの周縁フランジが部分的に鏡体の反射面中央側に拡幅されているため、鏡体の反射面積が狭められてドアミラーの有効視界範囲が狭くなってしまう。
【0007】
そこで、本発明は反射鏡ユニットの周縁部に配設した発光部の点灯視認性が良好で、しかも、ドアミラーの有効視界範囲を十分に確保することができる車両用ドアミラーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用ドアミラーにあっては、反射鏡ユニットの鏡体の周縁と、該鏡体を保持するホルダーの周縁フランジとの間に、周縁相互を部分的に径方向に離間して形成した発光用の間隙を設け、該間隙に灯具ユニットの発光部を臨設配置したことを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、灯具ユニットの発光部を鏡体の反射面と同じ向きに配設できるため、ドライバーは鏡体の反射面により後写視認するのと同様に、発光部からの出射光を直接視認することができて、点灯視認性を良好にすることができる。
【0010】
また、発光部を臨設配置した間隙は、鏡体の周縁とホルダーの周縁フランジとの間に、周縁相互が部分的に径方向に離間した状態として形成してあるため、鏡体の反射面積の減少を小さく抑制でき、従って、ドアミラーの有効視界範囲を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る車両用ドアミラーの反射鏡ユニットの一実施形態を示す正面図。
【図2】図1に示した反射鏡ユニットの分解斜視図。
【図3】図1のA−A線における要部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面と共に詳述する。
【0013】
図1,図2に示す本実施形態の反射鏡ユニット1は、鏡体2と、該鏡体2を図外の鏡体作動ユニットに組付けるための合成樹脂製のホルダー3と、を備えている。
【0014】
鏡体2は、例えば透明な板ガラス等の素地板材2aの一面に、アルミ蒸着またはクロム蒸着によって反射膜2bを設けて構成している(図3参照)。
【0015】
ホルダー3は、鏡体2を嵌合可能な大きさの合成樹脂製の周縁フランジ3aを有する板状部材として構成され、該ホルダー3は、鏡体2の反射膜2bを設けた面と周面とを内包して、適宜の接着材により該鏡体2と接着固定してある。
【0016】
反射鏡ユニット1の所要部位、例えば、ドライバーが視認し易い一側上部のコーナー部分には、鏡体2の周縁とホルダー3の周縁フランジ3aとの間に、周縁相互を部分的に径方向に離間して形成した発光用の間隙4を設けてある。
【0017】
図1に示す例では、ホルダー3の周縁フランジ3aに対して、鏡体2の周縁の曲率半径を大きく設定して該鏡体2の周縁をホルダー3の周縁フランジ3aよりも径方向内側へずらすことによって、前述の間隙4を設けてある。
【0018】
そして、この間隙4に後述する灯具ユニット10の発光部10Lを臨設配置してある。
【0019】
発光部10Lは、間隙4の最大幅部分に、その弯曲形状に馴染むように略半月形に形成してある。
【0020】
本実施形態では、反射鏡ユニット1を、灯具ユニット内蔵タイプとして構成してあり、鏡体2の背面とホルダー3との間に灯具ユニット10を収納配設してある。
【0021】
具体的には図3に示すように、ホルダー3には前記間隙4に対応した周側近傍位置、即ち、一側上部のコーナー部分に、鏡体2の背面との間に閉空間を形成する凹部5を形成してある。
【0022】
そして、この凹部5に灯具ユニット10の光学系を含む回路基盤12を配設してある。
【0023】
本実施形態では、灯具ユニット10は、光源11と、該光源11の点灯制御を行う回路基盤12と、光源11の出射光を受光して発光面13aに導光する導光体13と、を備えている。
【0024】
光源11は回路基盤12に連結固定してあり、該回路基盤12の一端部を前記凹部5の内側に設定した段部5a上に適宜の止着手段により固定してある。この段部5aには通電部材配設孔5bを設けて、ここに、例えば通電部材として回路基盤12側の接続コネクタ12aを図外のグロメットを介して挿通し、シール性を確保している。
【0025】
そして、この接続コネクタ12aに図外の電源側ハーネスのコネクタを接続して通電可能としてある。図3に示す例では、通電部材配設孔5bに接続コネクタ12aを圧入挿通するようにしているが、ここから、回路基盤12側のハーネスを引き出して電源側ハーネスに接続することも可能である。
【0026】
また、光源11は点灯により発熱するため、凹部5の所要部位に通気孔7を設けて放熱作用が得られるようにしている。この通気孔7には通気性の防水フィルム8を設けて、シールの徹底を図っている。
【0027】
導光体13は、内部導光性に優れた適宜の合成樹脂材からなる。この導光体13は発光面13aと受光面13bと反射面13cとを有し、受光面13bを前記光源11に近接して対向配置し、発光面13aを前記発光用の間隙4に臨設配置してある。
【0028】
即ち、本実施形態ではこの導光体13の発光面13aが前述の発光部10Lを構成している。従って、導光体13は略半月形の断面形状としてホルダー3とは別体に型成形してある。
【0029】
一方、前記凹部5は、図2に示すように導光体13が嵌合可能な溝部6を備え、ここに導光体13を嵌合して固着してある。この溝部6に対する導光体13の固着は、例えば、熱板による溶着、または、超音波溶着、あるいは接着剤または両面接着テープによる接着等、適宜の固着手段を採用することができる。
【0030】
導光体13は、発光面13aに隣接して、該発光面13aよりも鏡体2の板厚相当の寸法で低く有段成形した係止段部14を備えている。この係止段部14に鏡体2の周縁部を係止して接着することにより、導光体13の配設部周りのシールの徹底と、該導光体13の確実な抜止め固定とを行っている。
【0031】
以上の構成からなる本実施形態の車両用ドアミラーによれば、反射鏡ユニット1を構成する鏡体2の周縁とホルダー3の周縁フランジ3aとの間に、それらの周縁相互が部分的に径方向に離間した状態にして発光用の間隙4を設けてあって、ここに灯具ユニット10の発光部10Lを臨設配置してある。
【0032】
これにより、灯具ユニット10の発光部10Lを鏡体2の反射面と同じ向きに配設できるため、ドライバーは鏡体2の反射面により後写視認するのと同様に、発光部10Lからの出射光を直接視認することができて、点灯視認性を良好にすることができる。
【0033】
そして、上述のように発光部10Lを臨設配置した間隙4は、鏡体2の周縁とホルダー3の周縁フランジ3aとの間に、それらの周縁相互が部分的に離間した状態として形成してあるため、鏡体2の反射面積の減少を小さく抑制できる。即ち、鏡体2の反射面が部分的にホルダー3の周縁フランジ3aで覆われる構造とはならないため、ドアミラーの有効視界範囲を十分に確保することができる。
【0034】
ここで、本実施形態ではホルダー3の所要部位に鏡体2の背面との間に閉空間を形成する凹部5を設け、ここに灯具ユニット10の光学系を含む回路基盤12を配設して、灯具ユニット内蔵タイプの反射鏡ユニット1を構成している。
【0035】
これにより、ドアミラーの部品構成をコンパクトに集約できて、設計の自由度を高めることができる。また、凹部5により鏡体2の背面に閉空間を構成しているため、回路基盤12等の電気・電子部品の防水,防塵のためのシール施工を簡単にすることができる。
【0036】
また、灯具ユニット10の光学系に、光源11の出射光を導光する導光体13を用いて、その発光面13aを前述の発光部10Lとして構成している。
【0037】
これにより、光源11の光を導光体13によって任意の位置に導光することができて、発光部10Lの配設レイアウトの自由度を高められる。
【0038】
また、導光体13はホルダー3とは別体として発光面13a,受光面13b,反射面13cを持つブロック状に型成形してあり、これを前記凹部5に設けた溝部6に嵌合して溶着もしくは接着して固定してある。
【0039】
これにより、導光体13のホルダー3への組付け時の位置決めを容易に行えると共に、組付け精度を高めることができる。
【0040】
しかも、この導光体13は、その発光面13aに隣接して係止段部14を備え、ここに鏡体2の周縁部を係止して接着してあるため、導光体13の配設部周りのシールの徹底と、該導光体13の確実な抜止め固定とを行うことができる。
【0041】
本実施形態では導光体13をホルダー3と別体成形しているが、該導光体13を二色成形(ダブルモールド)によりホルダー3と一体成形することも可能で、より高精度で発光部10Lを設定することができる。
【0042】
なお、導光体13としてホルダー3と別体にブロック状に型成形したものを例示したが、光ファイバーを用いることも可能である。
【0043】
また、発光部10Lを導光体13の発光面13aで構成した構造を例示しているが、光学系に導光体13を用いずに、光源11を間隙4に直接配設して、光源11自体を発光部10Lとすることも可能である。
【0044】
更に、前記実施形態では光学系を含む回路基盤12を、鏡体2の背面とホルダー3に設けた凹部5とで形成される閉空間に収納配設した灯具ユニット内蔵タイプの反射鏡ユニット1を例示しているが、灯具ユニット10を反射鏡ユニット1と別構成として、導光手段により間隙4に隣接配置した発光部10Lに導光するように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…反射鏡ユニット
2…鏡体
3…ホルダー
3a…周縁フランジ
4…発光用の間隙
5…凹部
6…溝部
10…灯具ユニット
10L…発光部
11…光源
12…回路基盤
13…導光体
13a…発光面
14…係止段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射鏡ユニットの鏡体の周縁と、該鏡体を保持するホルダーの周縁フランジとの間に、周縁相互を部分的に径方向に離間して形成した発光用の間隙を設け、該間隙に灯具ユニットの発光部を臨設配置したことを特徴とする車両用ドアミラー。
【請求項2】
前記ホルダーは、前記間隙に対応した周側近傍位置で、前記鏡体の背面との間に閉空間を形成する凹部を備え、該凹部に前記灯具ユニットの光学系を含む回路基盤を配設したことを特徴とする請求項1に記載の車両用ドアミラー。
【請求項3】
前記灯具ユニットの光学系が、光源と、該光源の出射光を受光して発光面に導光する導光体を備え、該導光体の発光面を前記発光部としたことを特徴とする請求項2に記載の車両用ドアミラー。
【請求項4】
前記導光体は、前記ホルダーと別体成形されている一方、前記ホルダーの凹部は、前記導光体が嵌合可能な溝部を備え、該溝部に前記導光体を嵌合して溶着もしくは接着して固定したことを特徴とする請求項3に記載の車両用ドアミラー。
【請求項5】
前記導光体は、前記発光面に隣接して、該発光面よりも低く有段成形されて、前記鏡体の周縁部に係止する係止段部を備えたことを特徴とする請求項4に記載の車両用ドアミラー。
【請求項6】
前記導光体が、二色成形により前記ホルダーと一体成形されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用ドアミラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−49345(P2013−49345A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188110(P2011−188110)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】