説明

車両用ブレーキのキャリパー

【課題】 1方のキャリパー片と他方のキャリパー片との接合係止力を大きくすることなどである。
【解決手段】 キャリパー片の接合面に1方のキャリパー片1にはスライド溝2を長く連続して設け、他方のキャリパー片3にはスライド凸部4を長く連続して設けて、このキャリパー片3のスライド凸部4を、キャリパー片1にスライド溝2に、スライドさせて挿入して2個のキャリパー片を接合係止したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【背景技術】
【0001】
従来は、車両用ブレーキのキャリパーに2個又は3個以上のパッドを設けてこのパッドで車軸やホイールなどに固定した円板状のローターを挟むことにより自動車などの車両を制動する車両用ブレーキのキャリパーがある。
【先行技術文献】
【0002】
【特許文献】
【特許文献】 従来の車両用ブレーキのキャリパーとして、特開2007ー71245号公報(「0020」「0021」欄、図2)に車両用ブレーキ装置として主に自動二輪車に取り付けたキャリパーとパッドなどが記載されているた特許文献がある。
【0003】
【特許文献1】 特開2007ー71245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両用ブレーキのキャリパーは、1方のキャリパー片と他方のキャリパー片との2個のキャリパー片を前後方向に並べ、2個のキャリパー片に、複数箇所に間隔をおいて共通のボルト穴を、設け、このボルト穴にボルトを挿通してナットで2個のキャリパー片を接合係止したものがある。
この従来のキャリパーに、キャリパーの中に間隔をおいて前後方向に並設した2個のパッドの間に円板状のローターを、設けたものがあり、この2個のパッドでローターに前後方向から強い力で圧接して制動すると、この従来のキャリパーでは間隔をおいて数本のボルトとナットとの接合係止であって、非連続の接合係止であるとともにボルト軸とその両端のボルト頭、ナットによる間隔をおいた点状の接合係止であり、両キャリパー片の接合係止面積はボルトの断面積の合計面積であるために接合係止面積が小さいので、係止力が大きくない、小さいという問題点などがあった。
更に、2個のパッドでローターを前後方向両側から強い力で圧接して制動する際に、前後方向に接合係止した両側キャリパー片に大きな反発力が加わわり、この反発力を制止できるだけの強固で接合係止力を大きくしたキャリパーの出現が要望されている。
【問題を解決するための手段】
【0005】
1方のキャリパー片の接合面に、入口部より奥行側を溝の大きさを水平方向の幅を大きくしたスライド溝を、キャリパー片の接合面に沿って左側部は右上がり形状で右側部は右下がり形状の円弧状又は円形に連続して左右対称に設けるとともに他方のキャリパー片の接合面に、基部より先端部を凸部の大きさを水平方向の幅を大きくしたスライド凸部を、キャリパー片の接合面に沿って左側部は右上がり形状で右側部は右下がり形状の円弧状又は円形の1部の形状に連続して左右対称に設け、この他方のキャリパー片のスライド凸部を、前記1方のキャリパー片のスライド溝に、スライドさせて挿入して2個のキャリパー片を接合係止したものである。
【発明の効果】
【0006】
この発明の車両用ブレーキのキャリパーは、1方のキャリパー片の接合面に、入口部より奥行側を溝の大きさを水平方向の幅を大きくしたスライド溝を、キャリパー片の接合面に沿って左側部は右上がり形状で右側部は右下がり形状の円弧状又は円形に連続して左右対称に設けるとともに他方のキャリパー片の接合面に、基部より先端部を凸部の大きさを水平方向の幅を大きくしたスライド凸部を、キャリパー片の接合面に沿って左側部は右上がり形状で右側部は右下がり形状の円弧状又は円形の1部の形状に連続して左右対称に設け、この他方のキャリパー片のスライド凸部を、前記1方のキャリパー片のスライド溝に、スライドさせて挿入して2個のキャリパー片を接合係止したから、他方のキャリパー片のスライド凸部を、1方のキャリパー片のスライド溝に、スライドさせて挿入するだけで2個のキャリパー片を接合係止することができるので簡単に接合係止することができるとともに2個のキャリパー片を接合係止が左側と右側ともスライド凸部とスライド溝とにより連続して接合係止であるので接合係止面積が連続して大きいためにキャリパーの接合係止力を増大することができるし、接合係止力を増大したために強く制動してもキャリパー片とキャリパー片とが分離することを防止することができる。
更に、接合係止力を増大したために強く制動してもキャリパー片とキャリパー片とが分離することを防止することができるので、このキャリパーを使用することにより更に強い力で圧接して強く制動することができるし、特に超高速で走行するレースカーなどの車両に有効にできるという効果がある。
【0007】
請求項2の車両用ブレーキのキャリパーは、スライド溝が、入口から中間まで水平方向の溝で、この水平方向の溝の中間から先端部に、水平方向溝より上下方向に大きくした角形溝を連続した溝であるとともにスライド凸部が、入口から中間まで水平方向の凸部で、この水平方向の凸部の中間から先端部に、水平方向溝より上下方向に大きくした角形凸部を連続した凸部にしたから、この水平方向のスライド凸部と連続した角形スライド凸部を、水平方向の溝と連続した角形溝に、スライドさせて挿入して簡単に接合係止することができるし、角形凸部が角形溝に連続して良く接合係止することができる。
【0008】
請求項3の車両用ブレーキのキャリパーは、スライド溝が、入口から中間まで水平方向の溝で、この水平方向の溝の中間から先端部に、水平方向溝より上下方向に大きくした傾斜溝を連続した溝であるとともにスライド凸部が、入口から中間まで水平方向のスライド凸部で、この水平方向の凸部の中間から先端部に、水平方向溝より上下方向に大きくした傾斜凸部を、連続した凸部にしたから、この水平方向のスライド凸部と連続した傾斜スライド凸部を、水平方向の溝と連続した傾斜溝に、スライドさせて挿入して簡単に接合係止することができるし、傾斜スライド凸部が傾斜溝に連続して良く接合係止することができる。
【0009】
請求項4の車両用ブレーキのキャリパーは、スライド溝が、入口から中間まで水平方向の溝で、この水平方向の溝の中間から先端部に、水平方向溝より上下方向に大きくした片面円弧形溝を連続した溝であるとともにスライド凸部が、入口から中間まで水平方向の凸部で、この水平方向の凸部の中間から先端部に、水平方向凸部より上下方向に大きくした片面円弧形凸部を連続した凸部であるから、この水平方向のスライド凸部と連続した片面円弧形凸部を、水平方向の溝と連続した片面円弧形溝に、スライドさせて挿入して簡単に接合係止することができるし、片面円弧形凸部が片面円弧形溝に連続して良く接合係止することができる。
【0010】
請求項5の車両用ブレーキのキャリパーは、スライド溝が、入口から中間まで水平方向の溝で、この水平方向の溝の中間から先端部に、水平方向溝より上下方向に大きくした片面1部円形溝を連続した溝であるとともにスライド凸部が、入口から中間まで水平方向の凸部で、この水平方向の凸部の中間から先端部に、水平方向凸部より上下方向に大きくした片面1部円形凸部を連続した凸部であるから、この水平方向のスライド凸部と連続した片面1部円形凸部を、水平方向の溝と連続した片面1部円形溝に、スライドさせて挿入して簡単に接合係止することができるし、片面1部円形凸部が片面1部円形溝に連続して良く接合係止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【0012】
【図1】 本発明品の正面図である。
【図2】 同じく平面図である。
【図3】 図1の要部AーA拡大端面図である。
【図4】 1方のキャリパー片の正面図である。
【図5】 他方のキャリパー片の背面図である。
【図6】 接合係止前の要部拡大端面図である。
【図7】 第2本発明品の要部拡大端面図である。
【図8】 第3本発明品の要部拡大端面図である。
【図9】 第4本発明品の要部拡大端面図である。
【図10】 第5本発明品の要部拡大端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1方のキャリパー片の接合面に、入口部より奥行側を溝の大きさを水平方向の幅を大きくしたスライド溝を、キャリパー片の接合面に沿って左側部は右上がり形状で右側部は右下がり形状の円弧状又は円形に連続して左右対称に設けるとともに他方のキャリパー片の接合面に、基部より先端部を凸部の大きさを水平方向の幅を大きくしたスライド凸部を、キャリパー片の接合面に沿って左側部は右上がり形状で右側部は右下がり形状の円弧状又は円形の1部の形状に連続して左右対称に設け、この他方のキャリパー片のスライド凸部を、前記1方のキャリパー片のスライド溝に、スライドさせて挿入して2個のキャリパー片を接合係止したものである。
【実施例1】
【0014】
車両用ブレーキのキャリパーの鍛造した1方のキャリパー片1は接合面にスライド溝2を設け(図4図示)、このスライド溝2は入口部より奥行側を溝の大きさを水平方向の幅を大きくしたスライド溝(図3図示)であるとともにキャリパー片の接合面に沿って左側部は右上がり形状で右側部は右下がり形状の円形の1部形状に連続(長さL)して左右対称に設ける。
鍛造した他方のキャリパー片3は接合面にスライド凸部4を設け(図5図示)、このスライド凸部4は基部より先端部を凸部の大きさを水平方向の幅を大きくしたスライド凸部4(図3図示)であるとともにキャリパー片の接合面に沿って左側部は右上がり形状で右側部は右下がり形状の円形の1部形状に連続(長さL)して左右対称に設ける。
この他方のキャリパー片3を図5図示の状態から裏返してこのキャリパー片3を右下側のスライド凸部4から図4図示の1方のキャリパー片1のスライド溝2にスライドさせて順次右回転するように挿入して2個のキャリパー片を接合係止した車両用ブレーキのキャリパー5である。
【0015】
この実施例1の車両用ブレーキのキャリパーはキャリパー片1の中央部を除いて左側部と右側部との双方に円形の1部形状に連続したスライド凸部4とスライド溝2とを設けて接合係止面の長く連続した状態で接合係止してキャリパーの接合係止力を増大したものについて説明したが、スライド凸部とスライド溝の形状を円形の1部形状に代えて円弧状にしたものも良く、同様の効果を奏する。なお、2個のキャリパー片1,3の左右方向両端に着脱自在具を設けて仮着し、他方のキャリパー片のスライド凸部4が1方のキャリパー片のスライド溝2から離脱することを防止すると良い。
【実施例2】
【0016】
実施例2の車両用ブレーキのキャリパーは、実施例1と同様に1方のキャリパー片11と他方のキャリパー片13とからなるもので実施例1と異なる構成は図7図示のように、スライド溝12は入口から中間まで水平方向の溝でその先端部を水平方向溝より上下方向に大きくした角形溝を連続した溝であり、スライド凸部14は入口から中間まで水平方向のスライド凸部でその先端部を水平方向に大きくした角形凸部である。
この他方のキャリパー片13のスライド凸部14を1方のキャリパー片11のスライド溝12にスライドさせて挿入して2個のキャリパー片を接合係止した車両用ブレーキのキャリパーである。
【実施例3】
【0017】
実施例3の車両用ブレーキのキャリパーは、実施例1と同様に1方のキャリパー片21と他方のキャリパー片23とからなるもので実施例1と異なる構成は図8図示のように、スライド溝22は入口から中間まで水平方向の溝でその先端部を水平方向溝より上下方向に大きくした傾斜溝を連続した溝であり、スライド凸部24は入口から中間まで水平方向のスライド凸部でその先端部を水平方向に大きくした傾斜凸部である。
この他方のキャリパー片23のスライド凸部24を1方のキャリパー片21のスライド溝22にスライドさせて挿入して2個のキャリパー片を接合係止した車両用ブレーキのキャリパーである。
【実施例4】
【0018】
実施例4の車両用ブレーキのキャリパーは、実施例1と同様に1方のキャリパー片31と他方のキャリパー片33とからなるもので実施例1と異なる構成は図9図示のように、スライド溝32は入口から中間まで水平方向の溝でその先端部を水平方向溝より上下方向に大きくした片面円弧形溝を連続した溝であり、スライド凸部34は入口から中間まで水平方向のスライド凸部でその先端部を水平方向に大きくした片面円弧形凸部である。
この他方のキャリパー片33のスライド凸部34を1方のキャリパー片31のスライド溝32にスライドさせて挿入して2個のキャリパー片を接合係止した車両用ブレーキのキャリパーである。
【実施例5】
【0019】
実施例5の車両用ブレーキのキャリパーは、実施例1と同様に1方のキャリパー片41と他方のキャリパー片43とからなるもので実施例1と異なる構成は図10図示のように、スライド溝42は入口から中間まで水平方向の溝でその先端部を水平方向溝より上下方向に大きくした片面1部円形溝を連続した溝であり、スライド凸部44は入口から中間まで水平方向のスライド凸部でその先端部を水平方向に大きくした片面1部円形凸部である。
この他方のキャリパー片43のスライド凸部44を1方のキャリパー片41のスライド溝42にスライドさせて挿入して2個のキャリパー片を接合係止した車両用ブレーキのキャリパーである。
【符号の説明】
【0020】
1 1方のキャリパー片
2 スライド溝
3 他方のキャリパー片
4 スライド凸部
5 車両用ブレーキのキャリパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1方のキャリパー片と他方のキャリパー片との2個のキャリパー片の接合面同志を接合する車両用ブレーキのキャリパーにおいて、1方のキャリパー片の接合面に、入口部より奥行側を溝の大きさを上下方向の幅を次第に大きくしたスライド溝を、キャリパー片の接合面に沿って左側部は右上がり形状で右側部は右下がり形状の円形の1部の形状又は円弧状の形状に連続して左右対称に設けるとともに他方のキャリパー片の接合面に、基部より先端部を凸部の大きさを上下方向の幅を次第に大きくしたスライド凸部を、キャリパー片の接合面に沿って左側部は右上がり形状で右側部は右下がり形状の円形の1部の形状又は円弧状の形状に連続して左右対称に設け、該他方のキャリパー片のスライド凸部を、前記1方のキャリパー片のスライド溝に、スライドさせて挿入して2個のキャリパー片を接合係止したことを特徴とする車両用ブレーキのキャリパー。
【請求項2】
スライド溝が、入口から中間まで水平方向の溝で、該水平方向の溝の中間から先端部に、水平方向溝より上下方向に大きくした角形溝を連続した溝であるとともにスライド凸部が、入口から中間まで水平方向の凸部で、該水平方向の凸部の中間から先端部に、水平方向溝より上下方向に大きくした角形凸部を連続した凸部であることを特徴とする請求項1記載の車両用ブレーキのキャリパー。
【請求項3】
スライド溝が、入口から中間まで水平方向の溝で、該水平方向の溝の中間から先端部に、水平方向溝より上下方向に大きくした傾斜溝を連続した溝であるとともにスライド凸部が、入口から中間まで水平方向のスライド凸部で、該水平方向の凸部の中間から先端部に、水平方向溝より上下方向に大きくした傾斜凸部を、連続した凸部であることを特徴とする請求項1記載の車両用ブレーキのキャリパー。
【請求項4】
スライド溝が、入口から中間まで水平方向の溝で、該水平方向の溝の中間から先端部に、水平方向溝より上下方向に大きくした片面円弧形溝を連続した溝であるとともにスライド凸部が、入口から中間まで水平方向の凸部で、該水平方向の凸部の中間から先端部に、水平方向凸部より上下方向に大きくした片面円弧形凸部を連続した凸部であることを特徴とする請求項1記載の車両用ブレーキのキャリパー。
【請求項5】
スライド溝が、入口から中間まで水平方向の溝で、該水平方向の溝の中間から先端部に、水平方向溝より上下方向に大きくした片面1部円形溝を連続した溝であるとともにスライド凸部が、入口から中間まで水平方向の凸部で、該水平方向の凸部の中間から先端部に、水平方向凸部より上下方向に大きくした片面1部円形凸部を連続した凸部であることを特徴とする請求項1記載の車両用ブレーキのキャリパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−255836(P2010−255836A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122519(P2009−122519)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(599148226)株式会社エンドレスアドバンス (2)
【Fターム(参考)】