説明

車両用ミラー装置

【課題】回動機構の駆動力を小さくする。
【解決手段】車両用ドアミラー装置10では、鏡面調整ユニット16が作動されて、傾動体20がケース18に対し傾動されることで、傾動板22及びミラー28が傾動体20と一体に傾動されて、ミラー28の鏡面30A角度が調整される。ここで、自動変速機46のシフトレンジが「R」レンジに変更された際には、回動モータ38が駆動されて、移動ギヤ42が回動されることで、ミラー28が傾動板22に対し回動されて、ミラー28の鏡面30A角度が下側へ変更される。このため、回動モータ38は、駆動によりミラー28を回動させればよく、鏡面調整ユニット16及びブラケット14を回動させる必要がないため、回動モータ38の駆動力を小さくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のミラーの鏡面角度が変更される車両用ミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載された電動リモコンバックミラーでは、電動モータにミラーが連結されており、電動モータが駆動操作されることで、ミラーの鏡面角度が調整される。さらに、ソレノイドに保持ブラケットを介してミラーが連結されており、ソレノイドが作動されることで、保持ブラケットが回動されて、ミラーの鏡面角度が変更される。
【0003】
しかしながら、この電動リモコンバックミラーでは、ソレノイドが保持ブラケットを回動させると共に、保持ブラケットが電動モータを保持している。このため、ソレノイドがミラーの鏡面角度を変更する際には、ソレノイドがミラーのみならず保持ブラケット及び電動モータも回動させる必要がある。これにより、ソレノイドの駆動力を大きくする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−9347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、回動機構の駆動力を小さくできる車両用ミラー装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の車両用ミラー装置は、車両に設けられるミラーと、車体側に支持されると共に、前記ミラーを保持する傾動部が設けられ、前記傾動部が傾動されることで前記ミラーの鏡面角度が調整される傾動機構と、前記傾動部に対し前記ミラーを回動させることで前記ミラーの鏡面角度が変更される回動機構と、を備えている。
【0007】
請求項2に記載の車両用ミラー装置は、請求項1に記載の車両用ミラー装置において、前記ミラーを前記傾動部に係止させ、前記傾動部に対し前記ミラーが回動される際に前記ミラーの前記傾動部への係止が解除される係止部材を備えている。
【0008】
請求項3に記載の車両用ミラー装置は、請求項2に記載の車両用ミラー装置において、前記回動機構が前記係止部材による前記ミラーの前記傾動部への係止を解除する。
【0009】
請求項4に記載の車両用ミラー装置は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用ミラー装置において、前記回動機構が前記ミラーに面接触する。
【0010】
請求項5に記載の車両用ミラー装置は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の車両用ミラー装置において、前記ミラー及び前記傾動部の少なくとも一方に設けられ、前記ミラーと前記傾動部とを接触させる凸部を備えている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の車両用ミラー装置では、車体側に傾動機構が支持されており、傾動機構に傾動部が設けられている。さらに、傾動部がミラーを保持しており、傾動部が傾動されることで、ミラーの鏡面角度が調整される。
【0012】
ここで、回動機構が傾動機構の傾動部に対しミラーを回動させることで、ミラーの鏡面角度が変更される。このため、回動機構がミラーの鏡面角度を変更する際には、回動機構が傾動機構を回動させる必要がなく、回動機構の駆動力を小さくできる。
【0013】
請求項2に記載の車両用ミラー装置では、係止部材がミラーを傾動機構の傾動部に係止させる。このため、ミラーを傾動部に強固に保持できる。
【0014】
さらに、傾動部に対しミラーが回動される際に、係止部材によるミラーの傾動部への係止が解除される。このため、係止部材が傾動部に対するミラーの回動を制限することを抑制できる。
【0015】
請求項3に記載の車両用ミラー装置では、回動機構が係止部材によるミラーの傾動部への係止を解除する。このため、簡単な構成で係止部材によるミラーの傾動部への係止を解除できる。
【0016】
請求項4に記載の車両用ミラー装置では、回動機構がミラーに面接触する。このため、回動機構とミラーとの接触部分の磨耗を抑制できる。
【0017】
請求項5に記載の車両用ミラー装置では、ミラー及び傾動部の少なくとも一方に凸部が設けられており、凸部がミラーと傾動部とを接触させている。このため、ミラーと傾動部との接触面積が低減されることで、ミラーと傾動部との液体(水等)の表面張力による吸着を抑制でき、回動機構が傾動部に対しミラーを容易に回動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置を示す車幅方向外方から見た断面図(図3の1−1線断面図)である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置におけるミラーの鏡面角度の変更状態を示す車幅方向外方から見た断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置を示す車両後方から見た正面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態の変形例に係る車両用ドアミラー装置を示す車幅方向外方から見た断面図(図3の1−1線位置断面図)である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置を示す車幅方向外方から見た断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置におけるミラーの鏡面角度の変更状態を示す車幅方向外方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
図1には、本発明の車両用ミラー装置が適用された第1の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置10が車幅方向外方(車両右方)から見た断面図(図3の1−1線断面図)にて示されており、図3には、車両用ドアミラー装置10が車両後方から見た正面図にて示されている。なお、図面では、車両前方を矢印FRで示し、車幅方向外方を矢印WOで示し、上方を矢印UPで示している。
【0020】
本実施の形態に係る車両用ドアミラー装置10は、車両のドア(フロントドア)の上下方向中間部の前端外側に設置されている。
【0021】
図1及び図3に示す如く、車両用ドアミラー装置10は、外周部材としての略直方体形容器状のバイザ12を備えており、バイザ12内は、車両後側へ開口されている。
【0022】
バイザ12内には、剛性部材としての略板状のブラケット14が固定されており、ブラケット14は、例えば金属製にされて、バイザ12に比し剛性が高くされている。ブラケット14の車幅方向内側部は、ドア(車体側)に支持されており、これにより、車両用ドアミラー装置10がドアに設置されている。
【0023】
バイザ12内には、傾動機構としての電動式の鏡面調整ユニット16(鏡面角度調整装置)が設けられている。
【0024】
鏡面調整ユニット16の車両前側部分には、略半球形容器状のケース18が設けられており、ケース18内は、車両後側に開口されている。ケース18の底壁は、ブラケット14の車両後側に固定されており、これにより、鏡面調整ユニット16がブラケット14に設置(支持)されている。また、ケース18内には、傾動手段としての一対の傾動モータ(図示省略)が固定されている。
【0025】
鏡面調整ユニット16の車両前後方向中間部分には、傾動体20(ミラーホルダインナ)が設けられており、傾動体20は、ケース18に傾動(揺動)可能に保持されている。傾動体20には、略円筒状の摺動筒20Aが設けられており、摺動筒20Aは、車両前側へ向かうに従い径が徐々に小さくされている。摺動筒20Aは、ケース18内に収容されており、摺動筒20Aは、ケース18の周壁に対し摺動可能にされている。摺動筒20Aの車両後側端には、略円盤状の装着板20Bが一体に設けられている。
【0026】
鏡面調整ユニット16の車両後側端には、傾動部(規制部)としての略平板状の傾動板22(ストッパ)が設けられており、傾動板22は、傾動体20の装着板20Bに着脱可能に装着されている。
【0027】
ケース18内の一対の傾動モータは、バイザ12内又は車体側の制御装置24に電気的に接続されており、制御装置24には、車両の調整操作装置26が電気的に接続されている。車両の乗員(特に運転手)により調整操作装置26が操作された際には、制御装置24の制御により一対の傾動モータが駆動されることで、傾動体20がケース18に対し上下方向及び車幅方向へ傾動されて、傾動板22が傾動体20と一体に傾動される。
【0028】
バイザ12内には、鏡面調整ユニット16の車両後側において、略矩形平板状のミラー28が設けられており、ミラー28は、バイザ12の開口部分に配置されている。ミラー28の車両後側部分には、ミラー本体30(鏡体)が設けられており、ミラー本体30は、反射膜の車両後側面が鏡面30Aにされている。また、ミラー本体30の車両前側及び外周は、ミラーホルダ32(ミラーホルダアウタ)によって被覆されている。
【0029】
鏡面調整ユニット16の傾動板22とミラー28のミラーホルダ32との間には、回動機構としてのミラー角度変更機構34(リバース用ユニット)が設けられている。
【0030】
ミラー角度変更機構34には、回動軸36(ヒンジ)が設けられており、回動軸36は、傾動板22の下端とミラーホルダ32の下端とを回動可能に連結して、傾動板22にミラー28を保持させている。回動軸36の軸方向は、車幅方向にされており、ミラー28は、回動軸36(下端)を中心として、傾動板22に対し車両前後方向へ回動可能にされている。
【0031】
傾動板22の上端には、車両前側において、回動手段としての回動モータ38が固定されており、回動モータ38の出力軸は、回動軸36に対し平行に配置されている。回動モータ38の出力軸には、出力ギヤ40が同軸上に固定されており、出力ギヤ40は、平歯車にされて、軸方向に対し外歯40Aが平行に配置されている。通常時(回動モータ38が駆動されない際)においては、回動モータ38の出力軸の回転が制限されており、これにより、出力ギヤ40の回転が制限されている。
【0032】
ミラーホルダ32の上端には、移動部としての略三角柱状の移動ギヤ42が固定されており、移動ギヤ42は、ミラーホルダ32から車両前側へ突出されている。移動ギヤ42の下面には、車両前側端部を除き、複数のギヤ歯42Aが形成されており、ギヤ歯42Aは、回動モータ38の出力軸に対し平行に配置されている。ギヤ歯42Aは、回動モータ38の出力ギヤ40の外歯40Aに噛合されており、これにより、ミラーホルダ32が傾動板22に当接(接触)された状態で、ミラー28の傾動板22に対する車両前後方向への回動が規制されている。
【0033】
回動モータ38は、上記制御装置24に電気的に接続されており、制御装置24には、車両の自動変速機46(変速機)が電気的に接続されている。自動変速機46には、車両の操作装置としてのシフトレバー装置48が機械的又は電気的に接続されており、車両の乗員(運転手)によりシフトレバー装置48が操作されることで、自動変速機46のシフトレンジが例えば「P」レンジ(パーキングレンジ)、「R」レンジ(リバースレンジ)、「N」レンジ(ニュートラルレンジ)、「D」レンジ(ドライブレンジ)等に変更される。
【0034】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0035】
以上の構成の車両用ドアミラー装置10では、ミラー角度変更機構34において、ミラー28側の移動ギヤ42(ギヤ歯42A)が鏡面調整ユニット16の傾動板22側の回動モータ38の出力ギヤ40(外歯40A)に噛合されることで、ミラー28のミラーホルダ32が傾動板22に当接された状態で、ミラー28の傾動板22に対する車両前後方向への回動が規制されている。
【0036】
調整操作装置26が操作された際には、制御装置24の制御により、鏡面調整ユニット16が作動されて、一対の傾動モータが駆動されることで、傾動体20がケース18に対し上下方向及び車幅方向へ傾動されて、傾動板22及びミラー28が傾動体20と一体に傾動される。これにより、ミラー28の鏡面30A角度(鏡面30Aが向けられる方向)が調整されて、乗員(運転手)のミラー28による視認範囲が調整される。
【0037】
シフトレバー装置48が操作されて、自動変速機46のシフトレンジが「R」レンジに変更された際(所定の機会)には、制御装置24の制御により、ミラー角度変更機構34が作動されて、回動モータ38が正方向へ駆動されることで、出力ギヤ40の正方向への回転により移動ギヤ42が車両後側へ回動されて、ミラー28が下端(回動軸36)を中心として鏡面調整ユニット16の傾動板22に対し車両後側(変更方向)へ回動される。これにより、図2に示す如く、ミラー28の鏡面30A角度が下側へ変更されて、鏡面30Aが向けられる方向が車両後斜め下方へ変更されることで、乗員(運転手)がミラー28によって車両の後輪及びその周辺を視認可能にされる。
【0038】
なお、回動モータ38が正方向へ駆動される際には、出力ギヤ40の外歯40Aが移動ギヤ42下面の車両前側端部(ギヤ歯42A非形成部)に当接されて、出力ギヤ40の回転が規制されることで、制御装置24が、回動モータ38に流れるロック電流を検出して、回動モータ38の正方向への駆動を停止させる。また、例えば回動軸36にミラー28の回動を規制するストッパを設けることにより、ミラー28の車両後側への回動をストッパが規制することで、制御装置24が、回動モータ38に流れるロック電流を検出して、回動モータ38の正方向への駆動を停止させてもよい。
【0039】
その後、シフトレバー装置48が操作されて、自動変速機46のシフトレンジが「R」レンジ以外に変更された際には、制御装置24の制御により、ミラー角度変更機構34が作動されて、回動モータ38が逆方向へ駆動されることで、出力ギヤ40の逆方向への回転により移動ギヤ42が車両前側へ回動されて、ミラー28が下端(回動軸36)を中心として鏡面調整ユニット16の傾動板22に対し車両前側(復帰方向)へ回動される。これにより、図1に示す如く、ミラー28のミラーホルダ32が傾動板22に当接されて、ミラー28の鏡面30A角度が調整操作装置26の操作によるミラー28の鏡面30A角度に復帰される。
【0040】
なお、回動モータ38が逆方向へ駆動される際には、ミラーホルダ32が傾動板22に当接されて、出力ギヤ40の回転が規制されることで、制御装置24が、回動モータ38に流れるロック電流を検出して、回動モータ38の逆方向への駆動を停止させる。
【0041】
ところで、仮に、調整操作装置26の操作によるミラー28の鏡面30A角度が検出(センシング)されて制御装置24によって記憶された上で、自動変速機46のシフトレンジが「R」レンジに変更された際に制御装置24の制御により鏡面調整ユニット16が作動されてミラー28の鏡面30A角度が下側へ変更された後に、自動変速機46のシフトレンジが「R」レンジ以外に変更された際に制御装置24の制御により鏡面調整ユニット16が作動されてミラー28の鏡面30A角度が検出されつつ上記記憶された角度に復帰されるとする。
【0042】
この場合、ミラー28の鏡面30A角度を検出する装置及びミラー28の鏡面30A角度を記憶する電子回路が必要であるのみならず、制御装置24による制御が複雑であるため、システムが高価である。さらに、特にミラー28の鏡面30A角度の検出精度や制御装置24の制御精度が低いと、自動変速機46のシフトレンジが「R」レンジに変更された後に「R」レンジ以外に変更された際にミラー28の鏡面30A角度が調整操作装置26の操作によるミラー28の鏡面30A角度に正確には復帰できない可能性がある。しかも、自動変速機46のシフトレンジが「R」レンジに変更された後に「R」レンジ以外に変更されることが繰り返される毎に、ミラー28の鏡面30A角度が調整操作装置26の操作によるミラー28の鏡面30A角度から少しずつずれてしまう可能性がある。
【0043】
ここで、本実施の形態に係る車両用ドアミラー装置10では、上述の如く、自動変速機46のシフトレンジが「R」レンジに変更された際にミラー28のミラーホルダ32が鏡面調整ユニット16の傾動板22に当接された状態から制御装置24の制御によりミラー28が傾動板22に対し車両後側へ回動された後に、自動変速機46のシフトレンジが「R」レンジ以外に変更された際に制御装置24の制御によりミラー28が傾動板22に対し車両前側へ回動されてミラーホルダ32が傾動板22に当接された状態に復帰される。
【0044】
このため、ミラー28の鏡面30A角度を検出かつ記憶する必要がないのみならず、制御装置24による制御が簡単であるため、システムを安価にできる。しかも、ミラーホルダ32が傾動板22に当接された状態からミラー28が傾動板22に対し回動された後にミラーホルダ32が傾動板22に当接された状態に復帰されるため、ミラー28の鏡面30A角度が調整操作装置26の操作によるミラー28の鏡面30A角度に精度良く復帰できる。
【0045】
また、回動モータ38は、駆動によりミラー28を回動させればよく、鏡面調整ユニット16(傾動板22を含む)及び鏡面調整ユニット16が設置されるブラケット14を回動させる必要がない。このため、回動モータ38の駆動力を小さくでき、回動モータ38を小型できて、コストを低減できる。
【0046】
さらに、自動変速機46のシフトレンジが「R」レンジに変更された際には、ミラー28が鏡面調整ユニット16の傾動板22に対し回動されるのみで、鏡面調整ユニット16及びブラケット14が回動されないのみならず、鏡面調整ユニット16の傾動体20及び傾動板22も傾動されない。このため、ミラー28が回動によりバイザ12に当接することを抑制でき、ミラー28の回動可能角度を大きくできて、ミラー28の鏡面30A角度を大きく変更できる。これにより、バイザ12が小型のものである場合でも、乗員(運転手)がミラー28によって車両の後輪及びその周辺を充分に視認できる。
【0047】
しかも、自動変速機46のシフトレンジが「R」レンジに変更された際には、ミラー28のみが回動されて、鏡面調整ユニット16及びブラケット14は回動されない。このため、自動変速機46のシフトレンジが「R」レンジに変更された際に回動される部位(すなわち車両の振動により振動し易い部位)の重量を、ミラー28のみの重量にできて小さくでき、車両の振動によるミラー28のびびりを抑制できて、ミラー28による視認性が低下することを抑制できる。
【0048】
(変形例)
図4には、本発明の車両用ミラー装置が適用された第1の実施の形態の変形例に係る車両用ドアミラー装置60が車幅方向外方(車両右方)から見た断面図(図3の1−1線位置断面図)にて示されている。
【0049】
本変形例に係る車両用ドアミラー装置60では、ミラー角度変更機構34において、傾動板22の上端における回動モータ38の出力軸が、回動軸36に対し垂直に配置されており、回動モータ38の出力ギヤ40は、ウォームにされて、周方向に対し外歯40Aが傾斜配置されている。
【0050】
ミラー28のミラーホルダ32上端における移動ギヤ42では、下面のギヤ歯42Aが回動軸36に対し傾斜配置されており、ギヤ歯42Aは、回動モータ38の出力ギヤ40の外歯40Aに噛合されている。
【0051】
ここで、本変形例でも、上記第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0052】
さらに、傾動板22上端の回動モータ38の出力ギヤ40がウォームにされて、ミラー28上端の移動ギヤ42(ギヤ歯42A)が出力ギヤ40(外歯40A)に噛合されている。このため、傾動板22に対するミラー28のガタツキを効果的に抑制でき、車両の振動によるミラー28のびびりを一層抑制できて、ミラー28による視認性が低下することを一層抑制できる。
【0053】
[第2の実施の形態]
図5には、本発明の車両用ミラー装置が適用された第2の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置70が車幅方向外方(車両右方)から見た断面図にて示されている。
【0054】
本実施の形態に係る車両用ドアミラー装置70は、上記第1の実施の形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。なお、図5及び図6では、ブラケット14と鏡面調整ユニット16の傾動板22以外とが図示を省略されている。
【0055】
図5に示す如く、本実施の形態に係る車両用ドアミラー装置70では、鏡面調整ユニット16において、傾動板22の車両後側面に、低減手段としての柱状の凸部22Aが所定数形成されており、凸部22Aは、傾動板22から車両後側へ突出されると共に、突出端面(車両後側面)が湾曲されている(平面状にされてもよい)。また、傾動板22には、貫通孔72が形成されており、貫通孔72は、傾動板22を車両前後方向に貫通している。
【0056】
ミラー角度変更機構34では、回動軸36に付勢手段としての捩りコイルスプリング74が設けられており、捩りコイルスプリング74の中央部分に回動軸36が挿通されている。捩りコイルスプリング74の一端は、傾動板22に係止されると共に、捩りコイルスプリング74の他端は、ミラー28のミラーホルダ32に係止されており、捩りコイルスプリング74は、ミラー28を車両前側へ付勢して傾動板22の凸部22Aに当接(接触)させている。このため、ミラー28の傾動板22に対する車両前側への回動が係止されている。
【0057】
回動モータ38は、傾動板22の車両前側に連結固定されており、回動モータ38の出力軸は、回動軸36に対し平行に配置されている。
【0058】
移動ギヤ42は、略長尺矩形柱状(ロッド状)にされて、傾動板22に保持されており、移動ギヤ42は、軸方向を回動軸36に対し垂直に配置されて、傾動板22に対し車両前後方向へスライド可能にされている。移動ギヤ42は、鏡面調整ユニット16の装着板20Bを貫通しており、移動ギヤ42は、傾動板22に対する車両後側へのスライドを許容されると共に例えば鏡面調整ユニット16のケース18によって傾動板22に対する車両前側へのスライドを規制(ロック)される位置に配置されている。移動ギヤ42の車両後側端には、球状の押圧部42Bが一体に形成されており、押圧部42Bの車両後側部分は、傾動板22の貫通孔72に挿入されている。
【0059】
移動ギヤ42の上面には、長手方向(車両前後方向)中間部において、複数のギヤ歯42Aが形成されており、ギヤ歯42Aは、回動モータ38の出力軸に対し平行に配置されている。ギヤ歯42Aは、回動モータ38の出力ギヤ40の外歯40Aに噛合されており、これにより、移動ギヤ42の傾動板22に対する車両前後方向へのスライドが制限されている。また、移動ギヤ42の上面の車両前側端部は、ギヤ歯42A間の歯底面に対し、上側に配置されている。
【0060】
ミラー28のミラーホルダ32には、接触部として略半球状の押圧凹部76が形成されており、押圧凹部76は、ミラーホルダ32から車両前側に開放されている。押圧凹部76は、移動ギヤ42の車両後側に配置されており、押圧凹部76の周面の曲率半径は、移動ギヤ42の押圧部42Bの周面の曲率半径に比し、僅かに大きくされている。
【0061】
傾動板22の貫通孔72内には、係止部材としてのラッチ78が設けられている。ラッチ78の車両前側部分には、略楕円柱状の解除部80が設けられており、解除部80の上部には、支持軸82が設けられている。支持軸82は、回動軸36に平行に配置されると共に、傾動板22に支持されており、ラッチ78は、支持軸82を中心として回動可能にされると共に、解除部80の下部は、移動ギヤ42の車両後側に配置されている。解除部80の車両後側には、略L字形棒状の係止部84が一体に設けられており、係止部84の先端側部分(車両後側部分)は、下側へ延出されている。
【0062】
支持軸82には、係止手段としてのスプリング86(捩りコイルスプリング)が設けられており、スプリング86の中央部分には、支持軸82が挿通されている。スプリング86の一端は、傾動板22に係止されると共に、スプリング86の他端は、ラッチ78に係止されており、スプリング86は、ラッチ78の係止部84が下側へ回動する方向へラッチ78を付勢している。
【0063】
ミラー28のミラーホルダ32には、係合部として断面略L字状の凹部88が形成されており、凹部88の車両前側部分は、ミラーホルダ32から車両前側に開放されると共に、凹部88の車両後側部分は、下側に延出されている。凹部88には、スプリング86の付勢力により、ラッチ78の係止部84が挿入(係合)されており、これにより、ミラー28の傾動板22に対する車両後側への回動が係止されている。
【0064】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0065】
以上の構成の車両用ドアミラー装置70では、ミラー28のミラーホルダ32が鏡面調整ユニット16の傾動板22の凸部22Aに当接されると共に、ミラー28側のミラーホルダ32の凹部88に傾動板22側のラッチ78の係止部84が挿入されることで、ミラー28の傾動板22に対する車両前後方向への回動が規制されている。
【0066】
調整操作装置26が操作された際には、制御装置24の制御により、鏡面調整ユニット16が作動されて、一対の傾動モータが駆動されることで、傾動体20がケース18に対し上下方向及び車幅方向へ傾動されて、傾動板22及びミラー28が傾動体20と一体に傾動される。これにより、ミラー28の鏡面30A角度(鏡面30Aが向けられる方向)が調整されて、乗員(運転手)のミラー28による視認範囲が調整される。
【0067】
シフトレバー装置48が操作されて、自動変速機46のシフトレンジが「R」レンジに変更された際(所定の機会)には、制御装置24の制御により、ミラー角度変更機構34が作動されて、回動モータ38が正方向へ駆動されることで、出力ギヤ40の正方向への回転により移動ギヤ42が車両後側へスライドされる。このため、図6に示す如く、移動ギヤ42が、ラッチ78の解除部80を車両後側かつ上側へ押圧して、ラッチ78を支持軸82を中心としてスプリング86の付勢力に抗して回動させることで、ラッチ78の係止部84が、上側に回動されて、ミラーホルダ32の凹部88への挿入を解除される。さらに、移動ギヤ42の押圧部42Bがミラーホルダ32の押圧凹部76を車両後側へ押圧することで、ミラー28が下端(回動軸36)を中心として捩りコイルスプリング74の付勢力に抗して鏡面調整ユニット16の傾動板22に対し車両後側(変更方向)へ回動される。これにより、ミラー28の鏡面30A角度が下側へ変更されて、鏡面30Aが向けられる方向が車両後斜め下方へ変更されることで、乗員(運転手)がミラー28によって車両の後輪及びその周辺を視認可能にされる。
【0068】
なお、回動モータ38が正方向へ駆動される際には、出力ギヤ40の外歯40Aが移動ギヤ42上面の車両前側端部(ギヤ歯42A非形成部)に当接されて、出力ギヤ40の回転が規制されることで、制御装置24が、回動モータ38に流れるロック電流を検出して、回動モータ38の正方向への駆動を停止させる。また、例えば回動軸36や捩りコイルスプリング74にミラー28の回動を規制するストッパを設けることにより、ミラー28の車両後側への回動をストッパが規制することで、制御装置24が、回動モータ38に流れるロック電流を検出して、回動モータ38の正方向への駆動を停止させてもよい。
【0069】
その後、シフトレバー装置48が操作されて、自動変速機46のシフトレンジが「R」レンジ以外に変更された際には、制御装置24の制御により、ミラー角度変更機構34が作動されて、回動モータ38が逆方向へ駆動されることで、出力ギヤ40の逆方向への回転により移動ギヤ42が車両前側へスライドされる。このため、図5に示す如く、移動ギヤ42の押圧部42Bによるミラーホルダ32の押圧凹部76の車両後側への押圧が解除されることで、ミラー28が下端(回動軸36)を中心として捩りコイルスプリング74の付勢力によって鏡面調整ユニット16の傾動板22に対し車両前側(復帰方向)へ回動される。これにより、ミラー28のミラーホルダ32が傾動板22の凸部22Aに当接されて、ミラー28の鏡面30A角度が調整操作装置26の操作によるミラー28の鏡面30A角度に復帰される。さらに、移動ギヤ42によるラッチ78の解除部80の車両後側かつ上側への押圧が解除されて、ラッチ78が支持軸82を中心としてスプリング86の付勢力によって回動されることで、ラッチ78の係止部84が、下側に回動されて、ミラーホルダ32の凹部88に挿入される。
【0070】
なお、回動モータ38が逆方向へ駆動される際には、移動ギヤ42が車両前側へのスライドを規制される位置に到達されて、出力ギヤ40の回転が規制されることで、制御装置24が、回動モータ38に流れるロック電流を検出して、回動モータ38の逆方向への駆動を停止させる。
【0071】
以上により、本実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0072】
また、上述の如く、ミラー28のミラーホルダ32が鏡面調整ユニット16の傾動板22の凸部22Aに当接された状態で、ミラーホルダ32の凹部88にラッチ78の係止部84が挿入されることで、ミラー28の傾動板22に対する車両前後方向への回動が係止される。このため、ミラー28を傾動板22に強固に保持でき、車両の振動によるミラー28のびびりを一層抑制できて、ミラー28による視認性が低下することを一層抑制できる。
【0073】
さらに、自動変速機46のシフトレンジが「R」レンジに変更されて、ミラー28が傾動板22に対し回動される際には、ラッチ78の係止部84がミラーホルダ32の凹部88への挿入を解除されて、ラッチ78によるミラー28の傾動板22への係止が解除される。このため、ラッチ78が傾動板22に対するミラー28の回動を制限することを防止できる。
【0074】
しかも、自動変速機46のシフトレンジが「R」レンジに変更されて、ミラー28が傾動板22に対し回動される際には、ミラー28を傾動板22に対し回動させる移動ギヤ42が、ラッチ78の解除部80を車両後側かつ上側に押圧して、ラッチ78によるミラー28の傾動板22への係止を解除する。このため、簡単な構成でラッチ78によるミラー28の傾動板22への係止を解除できる。
【0075】
また、傾動板22の凸部22Aがミラーホルダ32に当接(特に点接触)されている。このため、ミラーホルダ32と傾動板22との接触面積が低減されることで、ミラーホルダ32と傾動板22との液体(水等)の表面張力による吸着を抑制でき、移動ギヤ42によるミラーホルダ32の押圧により傾動板22に対しミラー28を容易に回動させることができる。
【0076】
さらに、ミラーホルダ32の押圧凹部76の周面の曲率半径は、移動ギヤ42の押圧部42Bの周面の曲率半径に比し、僅かに大きくされており、押圧部42Bが押圧凹部76を押圧する際には、押圧部42Bの周面が押圧凹部76の周面に面接触する。このため、押圧部42Bの周面及び押圧凹部76の周面の磨耗を抑制できる。
【0077】
なお、本実施の形態では、傾動板22に凸部22Aを設けた。しかしながら、傾動板22及びミラーホルダ32の少なくとも一方に凸部22Aを設ければよい。さらに、上記第1の実施の形態(変形例を含む)において、傾動板22及びミラーホルダ32の少なくとも一方に凸部22Aを設けてもよい。
【0078】
また、上記第1の実施の形態(変形例を含む)及び第2の実施の形態では、自動変速機46のシフトレンジが「R」レンジに変更された際にミラー28を傾動板22に対し回動させる。しかしながら、他の所定の機会にミラー28を傾動板22に対し回動させてもよい。
【0079】
さらに、上記第1の実施の形態(変形例を含む)及び第2の実施の形態では、ミラー28を下端を中心として傾動板22に対し回動させる。しかしながら、ミラー28の他の部分(例えば上端、車幅方向外側端又は車幅方向内側端)を中心としてミラー28を傾動板22に対し回動させてもよい。
【0080】
しかも、上記第1の実施の形態(変形例を含む)及び第2の実施の形態では、所定の機会にミラー28を傾動板22に対し車両後側へ回動させる。しかしながら、所定の機会にミラー28を傾動板22に対し車両前側へ回動させてもよい。
【0081】
例えば、車両の方向指示器(操作装置)が操作された際(所定の機会)に、車両の進行方向が変更される側(方向指示器が操作された側)の車両用ドアミラー装置10、60、70において、ミラー28を車幅方向外側端を中心として傾動板22に対し車両後側に回動させて、ミラー28を車幅方向外側へ向けてもよい。
【0082】
また、上記第1の実施の形態(変形例を含む)及び第2の実施の形態では、回動モータ38による移動ギヤ42の移動によりミラー28を傾動板22に対し回動させる。しかしながら、ソレノイド(回動手段)のプランジャの突出又は吸引や電磁石(回動手段)の磁力による吸着力又は反発力によりミラー28を傾動板22に対し回動させてもよい。
【0083】
さらに、上記第1の実施の形態(変形例を含む)及び第2の実施の形態では、鏡面調整ユニット16を電動式のものにした。しかしながら、鏡面調整ユニット16を手動式のものにして、ミラー28を手動により傾動可能にしてもよい。
【0084】
また、上記第1の実施の形態(変形例を含む)及び第2の実施の形態では、鏡面調整ユニット16の傾動体20に傾動板22、ミラー28及びミラー角度変更機構34が着脱可能に装着されているため、鏡面調整ユニット16の傾動体20に傾動板22、ミラー28及びミラー角度変更機構34を装着する場合と、鏡面調整ユニット16の傾動体20にミラー28のみを装着する場合と、を選択可能にされている。これにより、例えば、鏡面調整ユニット16の傾動体20にミラー28のみを装着していた車両において、後の選択(部品交換)により鏡面調整ユニット16の傾動体20に傾動板22、ミラー28及びミラー角度変更機構34を装着することができる。
【0085】
さらに、上記第1の実施の形態(変形例を含む)及び第2の実施の形態では、本発明を車両用ドアミラー装置10、60、70に適用した。しかしながら、本発明を他の車外や車内のミラー装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0086】
10 車両用ドアミラー装置(車両用ミラー装置)
16 鏡面調整ユニット(傾動機構)
22 傾動板(傾動部)
22A 凸部
28 ミラー
30A 鏡面
34 ミラー角度変更機構(回動機構)
60 車両用ドアミラー装置(車両用ミラー装置)
70 車両用ドアミラー装置(車両用ミラー装置)
78 ラッチ(係止部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられるミラーと、
車体側に支持されると共に、前記ミラーを保持する傾動部が設けられ、前記傾動部が傾動されることで前記ミラーの鏡面角度が調整される傾動機構と、
前記傾動部に対し前記ミラーを回動させることで前記ミラーの鏡面角度が変更される回動機構と、
を備えた車両用ミラー装置。
【請求項2】
前記ミラーを前記傾動部に係止させ、前記傾動部に対し前記ミラーが回動される際に前記ミラーの前記傾動部への係止が解除される係止部材を備えた請求項1記載の車両用ミラー装置。
【請求項3】
前記回動機構が前記係止部材による前記ミラーの前記傾動部への係止を解除する請求項2記載の車両用ミラー装置。
【請求項4】
前記回動機構が前記ミラーに面接触する請求項1〜請求項3の何れか1項記載の車両用ミラー装置。
【請求項5】
前記ミラー及び前記傾動部の少なくとも一方に設けられ、前記ミラーと前記傾動部とを接触させる凸部を備えた請求項1〜請求項4の何れか1項記載の車両用ミラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−52781(P2013−52781A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192870(P2011−192870)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】