車両用灯具
【課題】スポット配光パターンを照射する車両用灯具において、視認性の低下を抑制する。
【解決手段】スポットビーム照射用灯具ユニット10は、第1LED11および第2LED12を搭載するための光源搭載部13と、第1LED11および第2LED12からの光の一部を遮蔽してスポット配光パターンを形成する液晶シェード20とを備える。液晶シェード20は、スポット配光パターンにおける明暗の境界をぼかすための透過率可変部を備える。
【解決手段】スポットビーム照射用灯具ユニット10は、第1LED11および第2LED12を搭載するための光源搭載部13と、第1LED11および第2LED12からの光の一部を遮蔽してスポット配光パターンを形成する液晶シェード20とを備える。液晶シェード20は、スポット配光パターンにおける明暗の境界をぼかすための透過率可変部を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポット配光パターンを形成可能な車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、対向車へのグレアを抑制しつつ、車両から20m以上前方の道路形状や各種標識の視認性を向上するために、通常のロービームに加えてスポットビームを照射可能に構成された車両用灯具が知られている(例えば特許文献1参照)。車両周囲の状況に応じてスポットビームを移動させることにより、運転者に視認性に優れた照明を提供できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭47−6689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば上述の特許文献1に開示されるように、金属製のシャッターを用いて光源からの光の一部を遮光してスポットビームを形成した場合、スポットビームの明暗境界線が路面や道路標識などにはっきりと投影され、本来の目的とは逆に視認性が低下するおそれがある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、スポット配光パターンを照射する車両用灯具において、視認性の低下を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用灯具は、光源を搭載するための光源搭載部と、光源からの光を制御してスポット配光パターンを形成するスポット配光形成部とを備える。スポット配光形成部は、スポット配光パターンにおける明暗の境界をぼかすためのぼかし部を備える。
【0007】
スポット配光形成部は、光源からの光の一部を遮蔽してスポット配光パターンを形成する液晶シェードを備えてもよい。
【0008】
液晶シェードは、一対の透明基板と、一対の透明基板の間に設けられた液晶層であって、液晶の配置された液晶領域と、液晶の配置されていない非液晶領域とを有する液晶層と、液晶領域に対応する部分に配置された一対の偏光板と、非液晶領域の周囲に沿うように形成された透過率可変部であって、内縁から外縁かけて光透過率が減少するよう形成された透過率可変部とを備えてもよい。
【0009】
前方車の存在を示す情報を受信した場合に、液晶シェードを制御して前方車の位置に対応する部分の光量を減光する制御部をさらに備えてもよい。
【0010】
制御部は、霧の発生情報を受信した場合に、液晶シェードを制御して水平線よりも上方を照射する部分の光量を減光してもよい。
【0011】
スポット配光形成部を通過した光を灯具前方に照射するレンズと、レンズに形成された熱線反射膜と、をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スポット配光パターンを照射する車両用灯具において、視認性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係るスポットビーム照射用灯具ユニットが組み込まれた車両用前照灯の概略断面図である。
【図2】本実施形態に係るスポットビーム照射用灯具ユニットを説明するための図である。
【図3】図3(a)および図3(b)は、液晶シェードを説明するための図である。
【図4】本実施形態に係る車両用前照灯により車両前方に形成される配光パターンを説明するための図である。
【図5】車両用前照灯のシステム構成を説明するための図である。
【図6】液晶シェードの変形例を説明するための図である。
【図7】車両用前照灯の高さから見た前方視野を示す図である。
【図8】路面5m〜40m間の反射特性を示す図である。
【図9】スポットビームの最大/最小路面照度目標を示す図である。
【図10】スポットビームの最大/最小光度目標を示す図である。
【図11】図11(a)および図11(b)は、道路標識・案内標識の設置基準を示す図である。
【図12】案内標識に対するドライバの認知行動を示す図である。
【図13】道路種別と判読距離を示す図である。
【図14】標識板白色輝度の診断評価基準を示す図である。
【図15】順応輝度とその順応輝度下で感じる視対象輝度の明るさの関係を示す図である。
【図16】スポットビームの照射光度を示す図である。
【図17】左向き度且つ鉛直線方向のスポットビームの光度分布を示す図である。
【図18】上向き度且つ水平方向のスポットビームの光度分布を示す図である。
【図19】スポットビームのスクリーン配光例を示す図である。
【図20】図20(a)〜図20(c)は、図19に示す配光を達成するための3つの配光を示す図である。
【図21】拡散配光を形成する光学系の実施例を示す図である。
【図22】図22(a)および図22(b)は、標識配光を形成する光学系の実施例を示す図である。
【図23】図23(a)および図23(b)は、集光配光を形成する光学系の実施例を示す図である。
【図24】集光配光を形成する光学系の別の実施例を示す図である。
【図25】ベースビームの配光例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係るスポットビーム照射用灯具ユニットが組み込まれた車両用前照灯の概略断面図である。図1に示すように、車両用前照灯24は、ハイビーム照射用灯具ユニット26と、ロービーム照射用灯具ユニット28と、スポットビーム照射用灯具ユニット10とを備える。
【0016】
図1に示す車両用前照灯24は、車両の車幅方向の左右に1灯ずつ配置される前照灯であり、その構造は実質的に左右同等なので代表して車両右側に配置される車両用前照灯の構造を説明する。
【0017】
図1に示すように、車両用前照灯24は、ランプボディ32と、ランプボディ32の前端開口部に取り付けられた透光カバー34とで形成される灯室36内に、ハイビーム照射用灯具ユニット26、ロービーム照射用灯具ユニット28、およびスポットビーム照射用灯具ユニット10が収容された構成となっている。各灯具ユニットは、それぞれ図示しない支持部材によって、ランプボディ32に取り付けられている。また、灯具の存在領域に開口部を有するエクステンション部材38がランプボディ32または透光カバー34に固定され、ランプボディ32の前面開口部と灯具との間の領域が前方に対して覆われている。
【0018】
ロービーム照射用灯具ユニット28は、従来周知の反射型の灯具ユニットであり、光源バルブ40と、リフレクタ42とを有する。ロービーム照射用灯具ユニット28は、光源バルブ40から出射した光をリフレクタ42に反射させて、リフレクタ42から前方に向かう光の一部を図示しない遮光板でカットして所定のカットオフラインを有するロービーム用の配光パターンを形成する。光源バルブ40の先端には光源バルブ40から直接前方に出射する光をカットするシェード44が設けられている。なお、ロービーム照射用灯具ユニットの構成は特にこれに限定されない。
【0019】
ハイビーム照射用灯具ユニット26もまた、反射型の灯具ユニットであり、光源バルブ46と、リフレクタ48とを有する。ハイビーム照射用灯具ユニット26は、光源バルブ46から出射した光をリフレクタ48に反射させて、ハイビーム用の配光パターンを形成する。なお、ハイビーム照射用灯具ユニットの構成は特にこれに限定されない。
【0020】
図2は、本実施形態に係るスポットビーム照射用灯具ユニット10を説明するための図である。本実施形態に係るスポットビーム照射用灯具ユニット10は、プロジェクタ型の灯具ユニットとして構成されている。スポットビーム照射用灯具ユニット10は、液晶シェードを用いて光源からの光を制御し、スポット配光パターンを照射する。
【0021】
スポットビーム照射用灯具ユニット10は、光源としての第1LED11および第2LED12と、第1LED11および第2LED12を搭載するための板状部材である光源搭載部13と、第1LED11からの光を前方へ反射する第1リフレクタ14と、第2LED12からの光を前方へ反射する第2リフレクタ15と、第1リフレクタ14および第2リフレクタ15からの反射光の一部を遮光する液晶シェード20と、液晶シェード20を通過した光を灯具前方に投影する投影レンズ16とを備える。
【0022】
投影レンズ16は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズである。投影レンズ16は、その後側焦点面(すなわち投影レンズ16の後側焦点Fを含む焦点面)上に形成される像を、反転像として灯具前方に投影する。投影レンズ16の後方側表面上には、熱線反射膜17が形成されている。熱線反射膜17は、太陽光の熱線が液晶シェード20に集光して液晶シェード20が損傷するのを防止する。
【0023】
第1LED11および第2LED12は、1mm四方程度の大きさの発光チップを有する白色発光ダイオードである。第1LED11は、その照射方向が鉛直上方を向くように光源搭載部13の上面に配置される。第2LED12は、その照射方向が鉛直下方を向くように光源搭載部13の下面に配置される。
【0024】
第1リフレクタ14および第2リフレクタ15は、鉛直断面形状が略楕円形状であり、水平断面形状が楕円をベースとした自由曲面形状を有する反射面が内側に形成された反射部材である。第1リフレクタ14は、その第1焦点が第1LED11と略一致し、第2焦点が投影レンズ16の後側焦点Fと略一致するように配置される。第2リフレクタ15は、その第1焦点が第2LED12と略一致し、第2焦点が投影レンズ16の後側焦点Fと略一致するように配置される。
【0025】
液晶シェード20は、投影レンズ16の後側焦点Fにおいて、光軸Axと直交する鉛直面に沿って配置されている。液晶シェード20は、第1リフレクタ14および第2リフレクタ15からの反射光の一部を遮蔽してスポット配光パターンを形成する。液晶シェード20の駆動方式は特に限定されず、TN(Twisted Nematic)方式、VA(Vertical Alignment)方式、IPS(In-Plane Switching)方式等を用いることができる。
【0026】
図3(a)および図3(b)は、液晶シェード20を説明するための図である。図3(a)は、液晶シェード20の概略断面図であり、図3(b)は、液晶シェード20の概略正面図である。
【0027】
図3(a)に示すように、液晶シェード20は、車両前後方向に所定間隔をおいて配置された一対の透明基板21と、これら一対の透明基板21の間に配置された液晶層22と、一対の透明基板21の外面に配置された一対の偏光板23とを備えてなり、その周囲を枠体25により固定支持されている。
【0028】
一対の透明基板21は、いずれもガラス基板で構成されており、各透明基板21の内面には、図示しない透明電極および配向膜が形成されている。そして、これら一対の透明基板21は、図3(b)に示すように光軸Axを中心として横長矩形状に形成されており、第1リフレクタ14および第2リフレクタ15からの反射光のほぼ全てを後方側の透明基板21に入射させるようになっている。
【0029】
液晶層22においては、一対の透明基板21の間における一部領域にのみ液晶が配置されている。言い換えると、液晶層22は、液晶の配置された液晶領域22aと、液晶の配置されていない非液晶領域22bとを有する。図3(b)に液晶領域22aおよび非液晶領域22bを示す。非液晶領域22bは、光軸Axを中心とした横長矩形状の領域である。非液晶領域22bの大きさは、車両前方に投影するスポットビームの大きさに応じて任意に設定できる。例えば、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上において上下方向に±2度且つ左右方向に±3度の大きさのスポット配向パターンが形成されるよう非液晶領域22bの大きさを定めることができる。液晶領域22aは、液晶層22における非液晶領域22bの外側の領域である。
【0030】
一対の偏光板23は、一対の透明基板21の外面における、液晶領域22aに対応する部分にのみ配置されている。透明基板21の外面における非液晶領域22bに対応する部分には偏光板が配置されていない。
【0031】
一対の透明基板の間の略全域にわたって液晶を配置し、これに対応して偏光板も透明基板の外面の略全域にわたって配置した場合も、一部の領域の光透過率が高くなるよう液晶の配向状態を制御することでスポット配光パターンを形成可能である。但し、この場合、第1リフレクタ14および第2リフレクタ15からの反射光が一対の偏光板および液晶層を通過することになるので、スポットビームの強度が低下する。本実施形態のように、非液晶領域22bを設けることにより、スポットビームの強度低下を抑制できる。
【0032】
図3(b)に示すように、液晶シェード20は、非液晶領域22bの周囲に沿うように形成された透過率可変部27(破線で図示された領域)を備える。透過率可変部27は、非液晶領域22bを囲うように設けられた枠状の領域である。この透過率可変部27は、その枠状領域の内縁27aから外縁27bかけて光透過率が徐々に減少するよう、液晶の配向状態が制御される。例えば、内縁27aの光透過率が非液晶領域22bの光透過率の80%程度となり、内縁27aから外縁27bにかけてリニアに光透過率が減少し、外縁27bの光透過率が非液晶領域22bの光透過率の20%程度となるように制御される。
【0033】
図4は、本実施形態に係る車両用前照灯により車両前方に形成される配光パターンを説明するための図である。図4は、車両が片側1車線(両側2車線)の直線舗装道路を走行している場合において、車両用前照灯24の位置から車両前方路面を透視的に見て示す図に、車両用前照灯24から照射される光により車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを重ねて示す図である。
【0034】
図4には、水平線H−Hと、鉛直線V−Vと、水平線H−Hと鉛直線V−Vの交点であるH−V点(透視図の消点)とが図示されている。図4には、配光パターンとして、ロービーム照射用灯具ユニット28により照射されるロービーム配光パターンLBと、スポットビーム照射用灯具ユニット10により照射されるスポット配光パターンSBとが図示されている。スポット配光パターンSBは、スポットビーム照射用灯具ユニット10の光軸を移動させることにより、上下左右方向に移動可能である。
【0035】
図4に示すように、スポット配光パターンSBは、液晶シェード20の非液晶領域22bを通過した光により形成されるホットゾーンHZと、液晶シェード20の透過率可変部27を通過した光により形成される光強度変化ゾーンVZとから構成される。光強度変化ゾーンVZは、内縁部から外縁部にかけて光強度が減少している。このように、ホットゾーンHZの周囲に光強度変化ゾーンVZを設けることにより、スポット配光パターンSBの明暗境界がぼかされ、目立たなくなる。これにより、明暗境界線の存在による視認性の低下を回避でき、スポットビームを照射する本来の目的、すなわち視認性の向上を達成できる。
【0036】
スポットビーム照射用灯具ユニット10を図1に示すように車両用前照灯24に組み込む場合、スポットビーム照射用灯具ユニット10の光軸Axは、車両用前照灯24の光軸から見て2度下、且つ3度左に位置するようにしてもよい。そうすることにより、スポットビーム照射用灯具ユニット10のホットゾーンHZは、スポットビーム照射用灯具ユニット10の角度で左6度〜0度、上0度〜下4度となる。
【0037】
スポットビーム照射用灯具ユニット10は、対向車や先行車(以下、前方車と呼ぶ)の存在状況や車速、道路形状等の条件により、光軸Axを移動可能に構成されてもよい。また、液晶領域22aは、液晶の作動により透過率を変化させることが可能であるので、前方車の存在状況に応じて液晶領域22aの透過率を変化させてもよい。例えば、前方車が存在する場合には、その前方車の位置に対応する部分の光量を減光しつつ、その周囲の光量を高めるような制御を行ってもよい。これにより、前方車にグレアを与えることなく、前方車の周囲の視認性を高めることができる。また、先行車が存在しない場合には、案内標識を適切な明るさで視認できるように透過率を制御してもよい。
【0038】
図5は、車両用前照灯のシステム構成を説明するための図である。なお、本明細書において示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0039】
図5に示すように、車両用前照灯システム60は、前方監視システムECU50と、配光制御ECU51と、車載カメラ52と、レーザレーダ53と、車速センサ54と、ヘッドランプスイッチ55と、ワイパスイッチ56と、ドライバ回路57と、ロービーム照射用灯具ユニット28と、ハイビーム照射用灯具ユニット26と、スポットビーム照射用灯具ユニット10と、スポットメカ駆動装置58とを備える。
【0040】
前方監視システムECU50は、車載カメラ52やレーザレーダ53などの情報を基に、前方車の検出、走路形状の測定を行う。走路形状は、GPSナビゲーションシステムを用いて行ってもよい。
【0041】
配光制御ECU51は、前方監視システムECU50からの前方車の存在情報や道路形状、車速センサ54からの自車の車速情報などを基に配光制御内容を決定し、ドライバ回路57に伝達する。ドライバ回路57は、その内容に基づきロービーム照射用灯具ユニット28、ハイビーム照射用灯具ユニット26、スポットビーム照射用灯具ユニット10の点灯制御や調光を行う。また、ドライバ回路57は、スポットメカ駆動装置58を駆動し、スポットビーム照射用灯具ユニット10の光軸を移動させる。
【0042】
以下、車両用前照灯システム60の制御例を説明する。ロービーム照射用灯具ユニット28は、ヘッドランプスイッチ55のオンにより常時点灯する。スポットビーム照射用灯具ユニット10は、車両が停止状態や一定車速以下の場合には、光軸Axの前方延長点が仮想鉛直スクリーン上におけるH−V点から下向き2度且つ左向き3度の点に位置するよう制御される。そして、車速が例えば40km/h以上となった場合、点灯を開始し、80km/hでフルパワーで点灯する。
【0043】
路上に前方車が存在しない場合、ハイビーム照射用灯具ユニット26が点灯される。また、スポットビーム照射用灯具ユニット10は、ハイビームを補助するために、光軸Axの前方延長点がH−V点から下向き0.5度且つV−V線上に位置し、液晶領域22aの透過率が最大となるように制御される。
【0044】
対向車は存在するが先行車が存在しない場合、スポットビーム照射用灯具ユニット10は、遠方障害物の視認性を向上するために、光軸Axの前方延長点がH−V点から下向き0.5度且つ左向き3度の点に位置するよう制御される。それとともに、スポットビーム照射用灯具ユニット10は、液晶領域22aの透過率を最大あるいは最適に調整し、案内板の視認性を向上させる。
【0045】
また、前方監視システムECU50および配光制御ECU51は、ワイパスイッチ56の状態や車載カメラ52の情報を基に霧の発生を判定する。霧が発生していると判定された場合、スポットビーム照射用灯具ユニット10は、霧による光膜の発生を抑えるべく、液晶シェード20を制御して水平線H−Hよりも上方を照射する部分の光量を減光する。光膜の発生を抑えることにより、グレアを抑制できる。
【0046】
霧の発生時には、レーンマーク(白線)と路面との輝度コントラストが晴天時に比べ低下する。従って、輝度コントラストに基づいても霧の発生を判定できる。なお、雨天時にはレーンマークと路面の輝度コントラストは高くなるが、雨天時でも路面が冠水している場合にはレーンマークが全く見えなくなるので、輝度コントラストは霧発生時よりも低下する。
【0047】
図6は、液晶シェードの変形例を説明するための図である。図6に示す液晶シェード20は、液晶領域22aおよび非液晶領域22bの形状が図3に示す液晶シェードと異なっている。図6に示す液晶シェード20は、略上半分の領域が非液晶領域22bとされ、略下半分の領域が液晶領域22aとされている。また、光軸Axの周辺領域が非液晶領域22bとされている。本変形例に係る液晶シェード20においても、非液晶領域22bの周囲に沿うように透過率可変部27(破線で図示された領域)が設けられている。透過率可変部27は、非液晶領域22bに近づくにつれ、光透過率が徐々に減少するよう液晶の配向状態が制御される。本変形例においても透過率可変部27を設けることにより、スポット配光パターンの明暗境界がぼかされ、目立たなくなる。これにより、明暗境界線の存在による視認性の低下を回避できる。
【0048】
上述の実施形態では、スポットビームの外縁をぼかす技術について説明した。より視認性に優れたスポットビームを提供するためには、路面の輝度分布を考慮してスポットビームの明暗境界をぼかす必要がある。以下、視認性に優れたスポットビームについて考察する。
【0049】
図7は、車両用前照灯の高さ(0.65m)から見た前方視野を示す。スポットビームは、車両前方10m(3.7度)より前方の路面を照らす。10mより前方には主視認対象が存在する。そのため、10mより前方の照射範囲の路面にムラが発生すると非常に器になり、煩わしさを感じる。そこで、夜間、この範囲がどの程度のムラとなると気づくかが問題となる。
【0050】
霧の視程は霧の中で視対象の見える限界距離で決められている。そして、そのときの限界輝度コントラストは5%とされている。これは、霧の中では5%の輝度コントラスト以下ではムラとして気づかなくなるということである。従って、路面の輝度勾配も路面に光が到達していると気がつく範囲内では手前路面(高輝度)から遠方路面(低輝度)の路面輝度を5%以下で単調減少させる必要がある。遠方路面から考える場合には単調増加である。この条件を満たさないと路面にムラが発生する。
【0051】
次に、5%の輝度勾配はどの程度の視角サイズがあると気づくかが問題となる。これについては、視力の観点から説明する。視力はC環の隙間を弁別できる視角サイズ(単位は分)の逆数で定義される。1分のC環の隙間を弁別できる眼は視力1と定義される。しかしながら、昼間に矯正視力で1.5あった視力も環境の明るさで変化し、夜間(順応輝度1cd/m2)では0.7程度に低下する。視力0.7の分解能は約1.5分である。従って、路面のムラを感じさせないようにするためには、手前路面(高輝度)から遠方路面(低輝度)を視角サイズ1.5分で分割し、その路面輝度勾配で考えれば、その輝度勾配が5%以下の単調減少であれば路面のムラは気にならないと考えられる。
【0052】
図8は、路面5m〜40m間の反射特性を示す。図8において、横軸は前方距離(m)縦軸は輝度係数(cd/m2/lx)である。輝度係数に照度を乗算することにより輝度に変換できる。図8に示すように、輝度係数は、車両前方に行くに従いやや低下傾向にあるが、ほぼ一定(0.01cd/m2/lx)である。従って、路面の輝度勾配の代替として路面照度で規定しても差し支えない。
【0053】
図9は、スポットビームの最大/最小路面照度目標を示す。図9は、1灯時の最大路面照度目標90および最小路面照度目標91を示す。最大路面照度目標90は、10m〜45m(約0.8度)間では60〜30lxへと単調減少させ、45m〜75m間ではさらに減衰率を高め、1.5分あたりの減衰率5%にて路面照度を減衰させている。最小路面照度目標91は、10m〜75m間を約10lx程度で単調減少させている。
【0054】
2灯合成であれば、最大の路面輝度は10m〜45m間で1.2〜0.6cd/m2に単調減少し、さらに45m〜75m間では0.6cd/m2〜約0.3cd/m2に単調減少する。
【0055】
なお、現状のガスディスチャージヘッドランプ(GDHL)のロービーム1灯における5lx到達距離は70m程度である。スポットビームはベースビーム(すなわちロービーム)に付加して使用する。
【0056】
図9に示す最小路面照度目標であっても75mより前方の照度を向上させるので使用効果が発生する。l
【0057】
なお、路面輝度L(cd/m2)は、ヘッドランプからの照射距離をD(m)、その照射光度をI(cd)、それによる照度をE(lx)、路面の輝度係数をR(=0.01で一定)(cd/m2/lx)とすれば、下記の(1)式で計算される。
L=R×E=R×I/D2=0.01×I/D2 ・・・(1)
【0058】
図10は、スポットビームの最大/最小光度目標を示す。図10は、1灯時の最大光度目標100および最小光度目標101を示す。図10に示す最大/最小光度目標は、上記の前提条件を基にしたスポットビームの配光である。図10に示すように、仮想鉛直スクリーン上におけるH−V点から下向き0.5度の光度を最大約80,000cd〜最小約30,000cdとし、それ以下では単調減少させる。H−V点から下向き3度で最大約8,000cd〜最小約2,000cdとしている。
【0059】
スポットビームの配光をこのような配光とすれば、路面の輝度ムラは発生せず、遠方の視認性を高めることができる。なお、スポットビームを1車両あたり1灯装着する場合には、上記の光度の2倍に設定することが望ましい。
【0060】
次に、路上標識の視認性対策について述べる。ヘッドランプで照明した場合の案内標識の見え方として、暗すぎて見えないという見え方や、明るすぎて眩しいという見え方は避けるべきである。この条件を標識の設置基準を勘案して求める。
【0061】
図11(a)および(b)は、道路標識・案内標識の設置基準を示す(国土交通省中部地方整備局道路部、道路設計要領第8章・道路付属物に基づいて作成)。案内標識の中でも大型のものは、路上設置高(板下)5m、文字サイズ30cmが設置基準である。案内板のサイズは文字数にもよるが、4車線の主要幹線道路の表尋の案内板サイズは、2.4m×2.4m、最も大型の案内板は高速道路のインタチェンジ案内板で3.5m×3.5mである。その他、さらに大型の標示板としては高速道路料金徴収所の予告標識がある。これは、オーバーヘッド式では横6.45m×縦1.2mである。
【0062】
図12は、案内標識に対するドライバの認知行動を示す(高宮他、高齢ドライバーの標識地名判読距離に関する研究,第19回交通工学研究発表会論文報告集,pp.189-192,1999に基づいて作成)。図12には、標識を認知する視認距離、標識の内容を判断し始める判読距離、標識が視線から外れて見づらくなる消失距離などが示されている。
【0063】
図13は、道路種別と判読距離を示す。道路の種別・交通量にもよるが、主要幹線道路では100m程度、高速道路ではその倍の200m程度の判読距離を確保する必要があると考えられる。一方、消失距離は31m以下、消失角は7度以上を推奨している。
【0064】
図14は、標識板白色輝度の診断評価基準を示す。一般道路の案内標識は青地に白字、高速道路では緑地に白字が標準となっている。図14は、社団法人全国道路標識・標示業協会が案内標識としての適正な文字部の輝度を調査したものである。
【0065】
図14における評価点の意味を以下に説明する。評価0は、標識の機能・性能に影響しないレベルである。評価3は、標識の機能・性能にただちに影響しないレベル(改修・修繕を要する)である。評価9は、標識の機能・性能に強く影響する(更新を要する)レベルである。従って、ヘッドランプでは、3.5cd/m2以上を保証することが望まれる。
【0066】
一方、光が明るすぎると不快感を感じる。図15は、順応輝度とその順応輝度下で感じる視対象輝度の明るさの関係を示す。ヘッドランプの順応輝度を1cd/m2とすると200cd/m2が眩しさを感じる境界である。従って、ヘッドランプによる標識の照明輝度範囲は、3.5cd/m2〜200cd/m2とする必要があると考えられる。
【0067】
次に、上記の輝度をヘッドランプ配光で保証するために、標識の再帰反射特性を知る必要がある。この反射特性は、社団法人全国道路標識・標示業協会で調査されている。その結果によると、再帰反射輝度係数は、10年経年使用の標識で洗浄保守前でも約200(cd/m2/lx)以上が保持されていると報告されている。この係数に基づいて計算すれば、標識の輝度3.5〜200cd/m2を確保するのに必要なヘッドランプによる照射輝度は、0.035〜2lxとなる。
【0068】
次に、案内標識視認・高速道路料金徴収所の予告標識に必要なヘッドランプ照射光度について説明する。ここでは、ヘッドランプによる照射照度0.035〜2lxを確保するのに必要な照射光度を、高速道路における200m先の案内標識および料金徴収所の予告標識と、31m先(視角7度)の幹線道路案内標識とについて求める。
【0069】
まず、200m先の高速道路案内標識と料金徴収所の予告標識について述べる。高速道路の案内標識は板下5m、縦3.5m×横3.5m、料金徴収所の予告標識は板下5m、縦1.2m×横6.45mである。案内標識の存在範囲は高さ方向5〜8.5m、幅方向0〜3.5m、予告標識の存在範囲は高さ方向5〜6.25m、幅方向0〜6.45mとなる。これらをヘッドランプの取付高さ0.65mを考慮してスクリーンの角度範囲に変換すると、案内標識では上下方向で約1〜2度、左右方向で約−1〜−2度、予告標識では上下方向で約1〜1.5度、左右方向で0〜約−2度となる。この範囲を0.035〜2lxで照明するのに必要な光度は1400〜80000cdで、1灯では700〜40000cdとなる。
【0070】
次に、片側2車線の幹線道路(1車線幅3.5m)の消失位置31mにおける案内標識と料金徴収所の予告標識について述べる。ここでは、自車が片側2車線道路の追い越し車線を走行しているとする。案内標識の存在範囲は高さ方向5〜8.5m、幅方向3.5〜7m、予告標識の存在範囲は高さ方向5〜6.25m、幅方向0〜6.45mとなる。これらをヘッドランプの取付高さ0.65mを考慮してスクリーンの角度範囲に変換すると、案内標識では上下方向は約8〜15度、左方向で−8〜−15度となる。予告標識では上下方向で約8〜10度、左右方向で0〜約−13度となる。なお、幹線道路では案内標識は通常、曲路には設置されないが、高速道路では考慮しておく必要がある。100km/h走行の旋回半径460mの屈曲点CPは約5度である。従って、200m前方では+5度の照射範囲拡大を考慮しておけばよい。この範囲を0.035〜2lxで照明するのに必要な光度は35〜2000cdで、1灯では17.5〜1000cdとなる。
【0071】
図16は、スポットビームの照射光度を示す。図16は、上記の結果を基に前方200m〜31mの範囲に位置する道路標識と料金徴収所の予告標識を0.035〜2lxで照明するのに必要な光度を示す。
【0072】
直線道路における標識類はスクリーンの第2象限に位置する。道路標識と料金徴収所の予告標識は図16に示した軌跡に従ってそのサイズが変化する。200m先で700〜40000cd必要であったヘッドランプ1灯の照明は、31m先では17.5〜1000cdとなり、スクリーン上の位置も変化する。
【0073】
上記の結果を基に案内標識を中心に各種標識の視認性を遠方(200m前方)から消失角7度位置(31m前方)まで違和感(暗すぎたり、明るすぎて眩しい)なく確保するためには、仮想鉛直スクリーン上におけるH−V点から上向き1度且つ左向き1度を40,000cd以下、上向き8度且つ左向き8度を1,000cd以下、上向き2度且つ左向き2度を700cd以上、上向き15度且つ左向き15度を17.5cd以上とする必要がある。
【0074】
図17は、左向き1度且つ鉛直線方向のスポットビームの光度分布を示す。また、図18は、上向き1度且つ水平方向のスポットビームの光度分布を示す。上向き1度且つ左向き1度が40,000cd以下、上向き8度且つ左向き8度が1,000cd以下、上向き2度且つ左向き2度が700cd以上、上向き15度且つ左向き15度が17.5cd以上という条件を満足させるように単調減少の光度分布としている。
【0075】
図19は、スポットビームのスクリーン配光例を示す。図19は、路面の視認性に関する配光要件(図9および図10)、案内標識の視認性に関する配光要件(図17および図18)をベースに作成した最大光度の等光度分布図である。
【0076】
スクリーン配光の第2象限は案内標識の視認性を確保するように設定しており、第2象限、第3象限は路面にムラが発生しないようにすると共に、所定光度が自車線範囲内をカバーするようにしている。そして、スクリーン配光の第1象限は、対向車へ与えるグレアを抑制するようにシャープカットオフを形成している。
【0077】
等光度線は内側から80,000cd、50,000cd、20,000cd、10,000cd、5,000cdである。最大光度は下向き0.5度且つ左向き1.5度の角度位置で100,000cdを目標光度としている。なお、最小光度は図示しないが、同位置で35,000cdとしている。このスポットビームは、対向車や先行車の存在状況に対応して、ベースビーム(ロービーム)に追加点灯する。なお、このようなスポットビーム配光をLEDヘッドランプ1灯で達成するのは難しい。
【0078】
図20(a)〜(c)は、図19に示す配光を達成するための3つの配光を示す。図19に示す配光は、図20(a)に示す拡散配光、図20(b)に示す標識配光、および図20(c)に示す集光配光の3つの配光の合成で成立させるのが容易である。図20(a)の拡散配光は、第3、第4象限に中心光度は低いがワイドな配光としている。図20(b)の標識配光は、第2象限のほぼ全域を照明し、案内標識に視認に必要な配光を形成すると共に、H−V点下近傍にやや高光度の部分を形成している。図20(c)の集光配光は、スポットビームの最大光度部を形成する。それゆえ、ビームの左右拡散は他の2つに比べ狭くしている。これらの配光と光学系の構成例を以下で説明する。
【0079】
図21は、拡散配光を形成する光学系の実施例を示す。図21に示す拡散配光光学系は、LED210からの光を放物柱反射鏡211で反射することにより、拡散配光を形成する。
【0080】
図22(a)および(b)は、標識配光を形成する光学系の実施例を示す。図22(a)は、標識配光光学系の概略断面図である。図22(a)に示すように、本光学系は、投影レンズを用いたプロジェクタ型の光学系を採用しており、LED220と、LED220からの光を反射するリフレクタ221と、リフレクタ221で反射した光の一部を遮光するシェード222と、シェード222を通過した光を前方に投影する投影レンズ223とを備える。シェード222は、ガラス基板224上に遮光パターン225が印刷されている。図22(b)は、シェード222の遮光パターンを示す。図22(b)に示すように、シェード222の遮光パターンは、図20(b)に示す標識配光を形成するために必要なカットオフ形状を有するとともに、カットオフ近傍や第2象限の案内標識に対応した位置に調光用のグレデーション印刷パターンが形成されている。
【0081】
図23(a)および(b)は、集光配光を形成する光学系の実施例を示す。図23(a)は、集光配光光学系の概略断面図である。図23(a)に示すように、本光学系は、投影レンズを用いたプロジェクタ型の光学系を採用しており、LED230と、LED230からの光を反射するリフレクタ231と、リフレクタ231で反射した光の一部を遮光するシェード232と、シェード232を通過した光を前方に投影する投影レンズ233とを備える。シェード232は、ガラス基板234上に遮光パターン235が印刷されている。図23(b)は、シェード232の遮光パターンを示す。図23(b)に示すように、シェード232の遮光パターンは、図20(c)に示す集光配光を形成するために必要なグレデーション印刷パターンが形成されている。
【0082】
図24は、集光配光を形成する光学系の別の実施例を示す。図24に示す光学系もまた、投影レンズを用いたプロジェクタ型の光学系であり、LED240と、LED240からの光を反射するリフレクタ241と、リフレクタ241で反射した光の一部を遮光するシェード242と、シェード242を通過した光を前方に投影する投影レンズ243とを備える。本光学系は、シェード242の形態が図23に示す光学系と異なる。
【0083】
なお、スポットビームの配光は、LEDを用いた3つの光学ユニットで構成しなければならないというものでもない。レンズの焦点距離や反射鏡の焦点距離を適切に選択する(上下・左右の拡散を調整する)ことができれば、LEDを用いた2つの光学ユニット(例えば、図22(a)および(b)に示す光学系および図23(a)および(b)に示す光学系の組み合わせ)でも構成できる。
【0084】
本例のように、標識配光と集光配光とを別々のランプユニットで構成した場合、対向車のみ存在する場合には標識配光ランプユニットと集光配光ランプユニットを点灯する。対向車と先行車が同時に存在する場合には集光配光ランプユニットのみ点灯する。また、霧発生時には標識配光のスポットビームを消灯することが望ましい。
【0085】
図25は、ベースビームの配光例を示す。図25に示すようなベースビーム(ヘッドランプスイッチをオンした後、常時点灯するロービームタイプの配光を有するビーム)は、図24に示す集光配光のランプユニットと、図21に示す拡散配光のランプユニットで実現できる。
【0086】
以上説明したスポットビームの特徴を以下にまとめる。
【0087】
(1)遠方路面照射用スポットビーム
これは、一定車速以上でLEDベースビームに追加点灯するLEDスポットビームである。そのスポットビームは、水平線H−H近傍に最大光度を有し、そのスポットビームの第3象限の配光は、下向き0.5度且つ左向き1度の角度位置の光度を最大80,000〜最小30,000cdとし、下向き3度且つ左向き1度の角度位置の光度を8,000〜2,000cdとしている。また、それらの角度位置を結ぶ線上において、下向き0.5度且つ左向き1度の角度位置から下側に離れるに従い光度が単調減少すると共に、左向き1度且つ鉛直線上の10mから75m範囲の路面照度目標が視角サイズ1.5分あたりの減少率0〜5%にて単調減少する。このような遠方路面照射用スポットビームを採用することにより、路面に暗部が目立つこともなく、路上物体の視認性を向上することができる。
【0088】
(2)案内板照明用スポットビーム
これは、(1)に記載した遠方路面照射用スポットビームにおいて、第2象限の配光は上向き1度且つ左向き1度の角度位置の光度を40,000cd以下、上向き8度且つ左向き8度の角度位置の光度を1,000cd以下、上向き2度且つ左向き2度の角度位置の光度を700cd以上、上向き15度且つ左向き15度の角度位置の光度を17.5cd以上とし、さらにそれらの角度位置を結ぶ線上において、上向き1度且つ左向き1度の角度位置から離れるに従い光度が単調減少するようにしたものである。このような案内板照明用スポットビームを採用することにより、案内標識は眩しすぎず・暗く見にくくもならず、快適に視認することができる。
【0089】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0090】
10 スポットビーム照射用灯具ユニット、 11 第1LED、 12 第2LED、 13 光源搭載部、 14 第1リフレクタ、 15 第2リフレクタ、 16 投影レンズ、 17 熱線反射膜、 20 液晶シェード、 21 透明基板、 22 液晶層、 23 偏光板、 24 車両用前照灯、 25 枠体、 26 ハイビーム照射用灯具ユニット、 27 透過率可変部、 28 ロービーム照射用灯具ユニット。
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポット配光パターンを形成可能な車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、対向車へのグレアを抑制しつつ、車両から20m以上前方の道路形状や各種標識の視認性を向上するために、通常のロービームに加えてスポットビームを照射可能に構成された車両用灯具が知られている(例えば特許文献1参照)。車両周囲の状況に応じてスポットビームを移動させることにより、運転者に視認性に優れた照明を提供できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭47−6689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば上述の特許文献1に開示されるように、金属製のシャッターを用いて光源からの光の一部を遮光してスポットビームを形成した場合、スポットビームの明暗境界線が路面や道路標識などにはっきりと投影され、本来の目的とは逆に視認性が低下するおそれがある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、スポット配光パターンを照射する車両用灯具において、視認性の低下を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用灯具は、光源を搭載するための光源搭載部と、光源からの光を制御してスポット配光パターンを形成するスポット配光形成部とを備える。スポット配光形成部は、スポット配光パターンにおける明暗の境界をぼかすためのぼかし部を備える。
【0007】
スポット配光形成部は、光源からの光の一部を遮蔽してスポット配光パターンを形成する液晶シェードを備えてもよい。
【0008】
液晶シェードは、一対の透明基板と、一対の透明基板の間に設けられた液晶層であって、液晶の配置された液晶領域と、液晶の配置されていない非液晶領域とを有する液晶層と、液晶領域に対応する部分に配置された一対の偏光板と、非液晶領域の周囲に沿うように形成された透過率可変部であって、内縁から外縁かけて光透過率が減少するよう形成された透過率可変部とを備えてもよい。
【0009】
前方車の存在を示す情報を受信した場合に、液晶シェードを制御して前方車の位置に対応する部分の光量を減光する制御部をさらに備えてもよい。
【0010】
制御部は、霧の発生情報を受信した場合に、液晶シェードを制御して水平線よりも上方を照射する部分の光量を減光してもよい。
【0011】
スポット配光形成部を通過した光を灯具前方に照射するレンズと、レンズに形成された熱線反射膜と、をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スポット配光パターンを照射する車両用灯具において、視認性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係るスポットビーム照射用灯具ユニットが組み込まれた車両用前照灯の概略断面図である。
【図2】本実施形態に係るスポットビーム照射用灯具ユニットを説明するための図である。
【図3】図3(a)および図3(b)は、液晶シェードを説明するための図である。
【図4】本実施形態に係る車両用前照灯により車両前方に形成される配光パターンを説明するための図である。
【図5】車両用前照灯のシステム構成を説明するための図である。
【図6】液晶シェードの変形例を説明するための図である。
【図7】車両用前照灯の高さから見た前方視野を示す図である。
【図8】路面5m〜40m間の反射特性を示す図である。
【図9】スポットビームの最大/最小路面照度目標を示す図である。
【図10】スポットビームの最大/最小光度目標を示す図である。
【図11】図11(a)および図11(b)は、道路標識・案内標識の設置基準を示す図である。
【図12】案内標識に対するドライバの認知行動を示す図である。
【図13】道路種別と判読距離を示す図である。
【図14】標識板白色輝度の診断評価基準を示す図である。
【図15】順応輝度とその順応輝度下で感じる視対象輝度の明るさの関係を示す図である。
【図16】スポットビームの照射光度を示す図である。
【図17】左向き度且つ鉛直線方向のスポットビームの光度分布を示す図である。
【図18】上向き度且つ水平方向のスポットビームの光度分布を示す図である。
【図19】スポットビームのスクリーン配光例を示す図である。
【図20】図20(a)〜図20(c)は、図19に示す配光を達成するための3つの配光を示す図である。
【図21】拡散配光を形成する光学系の実施例を示す図である。
【図22】図22(a)および図22(b)は、標識配光を形成する光学系の実施例を示す図である。
【図23】図23(a)および図23(b)は、集光配光を形成する光学系の実施例を示す図である。
【図24】集光配光を形成する光学系の別の実施例を示す図である。
【図25】ベースビームの配光例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係るスポットビーム照射用灯具ユニットが組み込まれた車両用前照灯の概略断面図である。図1に示すように、車両用前照灯24は、ハイビーム照射用灯具ユニット26と、ロービーム照射用灯具ユニット28と、スポットビーム照射用灯具ユニット10とを備える。
【0016】
図1に示す車両用前照灯24は、車両の車幅方向の左右に1灯ずつ配置される前照灯であり、その構造は実質的に左右同等なので代表して車両右側に配置される車両用前照灯の構造を説明する。
【0017】
図1に示すように、車両用前照灯24は、ランプボディ32と、ランプボディ32の前端開口部に取り付けられた透光カバー34とで形成される灯室36内に、ハイビーム照射用灯具ユニット26、ロービーム照射用灯具ユニット28、およびスポットビーム照射用灯具ユニット10が収容された構成となっている。各灯具ユニットは、それぞれ図示しない支持部材によって、ランプボディ32に取り付けられている。また、灯具の存在領域に開口部を有するエクステンション部材38がランプボディ32または透光カバー34に固定され、ランプボディ32の前面開口部と灯具との間の領域が前方に対して覆われている。
【0018】
ロービーム照射用灯具ユニット28は、従来周知の反射型の灯具ユニットであり、光源バルブ40と、リフレクタ42とを有する。ロービーム照射用灯具ユニット28は、光源バルブ40から出射した光をリフレクタ42に反射させて、リフレクタ42から前方に向かう光の一部を図示しない遮光板でカットして所定のカットオフラインを有するロービーム用の配光パターンを形成する。光源バルブ40の先端には光源バルブ40から直接前方に出射する光をカットするシェード44が設けられている。なお、ロービーム照射用灯具ユニットの構成は特にこれに限定されない。
【0019】
ハイビーム照射用灯具ユニット26もまた、反射型の灯具ユニットであり、光源バルブ46と、リフレクタ48とを有する。ハイビーム照射用灯具ユニット26は、光源バルブ46から出射した光をリフレクタ48に反射させて、ハイビーム用の配光パターンを形成する。なお、ハイビーム照射用灯具ユニットの構成は特にこれに限定されない。
【0020】
図2は、本実施形態に係るスポットビーム照射用灯具ユニット10を説明するための図である。本実施形態に係るスポットビーム照射用灯具ユニット10は、プロジェクタ型の灯具ユニットとして構成されている。スポットビーム照射用灯具ユニット10は、液晶シェードを用いて光源からの光を制御し、スポット配光パターンを照射する。
【0021】
スポットビーム照射用灯具ユニット10は、光源としての第1LED11および第2LED12と、第1LED11および第2LED12を搭載するための板状部材である光源搭載部13と、第1LED11からの光を前方へ反射する第1リフレクタ14と、第2LED12からの光を前方へ反射する第2リフレクタ15と、第1リフレクタ14および第2リフレクタ15からの反射光の一部を遮光する液晶シェード20と、液晶シェード20を通過した光を灯具前方に投影する投影レンズ16とを備える。
【0022】
投影レンズ16は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズである。投影レンズ16は、その後側焦点面(すなわち投影レンズ16の後側焦点Fを含む焦点面)上に形成される像を、反転像として灯具前方に投影する。投影レンズ16の後方側表面上には、熱線反射膜17が形成されている。熱線反射膜17は、太陽光の熱線が液晶シェード20に集光して液晶シェード20が損傷するのを防止する。
【0023】
第1LED11および第2LED12は、1mm四方程度の大きさの発光チップを有する白色発光ダイオードである。第1LED11は、その照射方向が鉛直上方を向くように光源搭載部13の上面に配置される。第2LED12は、その照射方向が鉛直下方を向くように光源搭載部13の下面に配置される。
【0024】
第1リフレクタ14および第2リフレクタ15は、鉛直断面形状が略楕円形状であり、水平断面形状が楕円をベースとした自由曲面形状を有する反射面が内側に形成された反射部材である。第1リフレクタ14は、その第1焦点が第1LED11と略一致し、第2焦点が投影レンズ16の後側焦点Fと略一致するように配置される。第2リフレクタ15は、その第1焦点が第2LED12と略一致し、第2焦点が投影レンズ16の後側焦点Fと略一致するように配置される。
【0025】
液晶シェード20は、投影レンズ16の後側焦点Fにおいて、光軸Axと直交する鉛直面に沿って配置されている。液晶シェード20は、第1リフレクタ14および第2リフレクタ15からの反射光の一部を遮蔽してスポット配光パターンを形成する。液晶シェード20の駆動方式は特に限定されず、TN(Twisted Nematic)方式、VA(Vertical Alignment)方式、IPS(In-Plane Switching)方式等を用いることができる。
【0026】
図3(a)および図3(b)は、液晶シェード20を説明するための図である。図3(a)は、液晶シェード20の概略断面図であり、図3(b)は、液晶シェード20の概略正面図である。
【0027】
図3(a)に示すように、液晶シェード20は、車両前後方向に所定間隔をおいて配置された一対の透明基板21と、これら一対の透明基板21の間に配置された液晶層22と、一対の透明基板21の外面に配置された一対の偏光板23とを備えてなり、その周囲を枠体25により固定支持されている。
【0028】
一対の透明基板21は、いずれもガラス基板で構成されており、各透明基板21の内面には、図示しない透明電極および配向膜が形成されている。そして、これら一対の透明基板21は、図3(b)に示すように光軸Axを中心として横長矩形状に形成されており、第1リフレクタ14および第2リフレクタ15からの反射光のほぼ全てを後方側の透明基板21に入射させるようになっている。
【0029】
液晶層22においては、一対の透明基板21の間における一部領域にのみ液晶が配置されている。言い換えると、液晶層22は、液晶の配置された液晶領域22aと、液晶の配置されていない非液晶領域22bとを有する。図3(b)に液晶領域22aおよび非液晶領域22bを示す。非液晶領域22bは、光軸Axを中心とした横長矩形状の領域である。非液晶領域22bの大きさは、車両前方に投影するスポットビームの大きさに応じて任意に設定できる。例えば、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上において上下方向に±2度且つ左右方向に±3度の大きさのスポット配向パターンが形成されるよう非液晶領域22bの大きさを定めることができる。液晶領域22aは、液晶層22における非液晶領域22bの外側の領域である。
【0030】
一対の偏光板23は、一対の透明基板21の外面における、液晶領域22aに対応する部分にのみ配置されている。透明基板21の外面における非液晶領域22bに対応する部分には偏光板が配置されていない。
【0031】
一対の透明基板の間の略全域にわたって液晶を配置し、これに対応して偏光板も透明基板の外面の略全域にわたって配置した場合も、一部の領域の光透過率が高くなるよう液晶の配向状態を制御することでスポット配光パターンを形成可能である。但し、この場合、第1リフレクタ14および第2リフレクタ15からの反射光が一対の偏光板および液晶層を通過することになるので、スポットビームの強度が低下する。本実施形態のように、非液晶領域22bを設けることにより、スポットビームの強度低下を抑制できる。
【0032】
図3(b)に示すように、液晶シェード20は、非液晶領域22bの周囲に沿うように形成された透過率可変部27(破線で図示された領域)を備える。透過率可変部27は、非液晶領域22bを囲うように設けられた枠状の領域である。この透過率可変部27は、その枠状領域の内縁27aから外縁27bかけて光透過率が徐々に減少するよう、液晶の配向状態が制御される。例えば、内縁27aの光透過率が非液晶領域22bの光透過率の80%程度となり、内縁27aから外縁27bにかけてリニアに光透過率が減少し、外縁27bの光透過率が非液晶領域22bの光透過率の20%程度となるように制御される。
【0033】
図4は、本実施形態に係る車両用前照灯により車両前方に形成される配光パターンを説明するための図である。図4は、車両が片側1車線(両側2車線)の直線舗装道路を走行している場合において、車両用前照灯24の位置から車両前方路面を透視的に見て示す図に、車両用前照灯24から照射される光により車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを重ねて示す図である。
【0034】
図4には、水平線H−Hと、鉛直線V−Vと、水平線H−Hと鉛直線V−Vの交点であるH−V点(透視図の消点)とが図示されている。図4には、配光パターンとして、ロービーム照射用灯具ユニット28により照射されるロービーム配光パターンLBと、スポットビーム照射用灯具ユニット10により照射されるスポット配光パターンSBとが図示されている。スポット配光パターンSBは、スポットビーム照射用灯具ユニット10の光軸を移動させることにより、上下左右方向に移動可能である。
【0035】
図4に示すように、スポット配光パターンSBは、液晶シェード20の非液晶領域22bを通過した光により形成されるホットゾーンHZと、液晶シェード20の透過率可変部27を通過した光により形成される光強度変化ゾーンVZとから構成される。光強度変化ゾーンVZは、内縁部から外縁部にかけて光強度が減少している。このように、ホットゾーンHZの周囲に光強度変化ゾーンVZを設けることにより、スポット配光パターンSBの明暗境界がぼかされ、目立たなくなる。これにより、明暗境界線の存在による視認性の低下を回避でき、スポットビームを照射する本来の目的、すなわち視認性の向上を達成できる。
【0036】
スポットビーム照射用灯具ユニット10を図1に示すように車両用前照灯24に組み込む場合、スポットビーム照射用灯具ユニット10の光軸Axは、車両用前照灯24の光軸から見て2度下、且つ3度左に位置するようにしてもよい。そうすることにより、スポットビーム照射用灯具ユニット10のホットゾーンHZは、スポットビーム照射用灯具ユニット10の角度で左6度〜0度、上0度〜下4度となる。
【0037】
スポットビーム照射用灯具ユニット10は、対向車や先行車(以下、前方車と呼ぶ)の存在状況や車速、道路形状等の条件により、光軸Axを移動可能に構成されてもよい。また、液晶領域22aは、液晶の作動により透過率を変化させることが可能であるので、前方車の存在状況に応じて液晶領域22aの透過率を変化させてもよい。例えば、前方車が存在する場合には、その前方車の位置に対応する部分の光量を減光しつつ、その周囲の光量を高めるような制御を行ってもよい。これにより、前方車にグレアを与えることなく、前方車の周囲の視認性を高めることができる。また、先行車が存在しない場合には、案内標識を適切な明るさで視認できるように透過率を制御してもよい。
【0038】
図5は、車両用前照灯のシステム構成を説明するための図である。なお、本明細書において示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0039】
図5に示すように、車両用前照灯システム60は、前方監視システムECU50と、配光制御ECU51と、車載カメラ52と、レーザレーダ53と、車速センサ54と、ヘッドランプスイッチ55と、ワイパスイッチ56と、ドライバ回路57と、ロービーム照射用灯具ユニット28と、ハイビーム照射用灯具ユニット26と、スポットビーム照射用灯具ユニット10と、スポットメカ駆動装置58とを備える。
【0040】
前方監視システムECU50は、車載カメラ52やレーザレーダ53などの情報を基に、前方車の検出、走路形状の測定を行う。走路形状は、GPSナビゲーションシステムを用いて行ってもよい。
【0041】
配光制御ECU51は、前方監視システムECU50からの前方車の存在情報や道路形状、車速センサ54からの自車の車速情報などを基に配光制御内容を決定し、ドライバ回路57に伝達する。ドライバ回路57は、その内容に基づきロービーム照射用灯具ユニット28、ハイビーム照射用灯具ユニット26、スポットビーム照射用灯具ユニット10の点灯制御や調光を行う。また、ドライバ回路57は、スポットメカ駆動装置58を駆動し、スポットビーム照射用灯具ユニット10の光軸を移動させる。
【0042】
以下、車両用前照灯システム60の制御例を説明する。ロービーム照射用灯具ユニット28は、ヘッドランプスイッチ55のオンにより常時点灯する。スポットビーム照射用灯具ユニット10は、車両が停止状態や一定車速以下の場合には、光軸Axの前方延長点が仮想鉛直スクリーン上におけるH−V点から下向き2度且つ左向き3度の点に位置するよう制御される。そして、車速が例えば40km/h以上となった場合、点灯を開始し、80km/hでフルパワーで点灯する。
【0043】
路上に前方車が存在しない場合、ハイビーム照射用灯具ユニット26が点灯される。また、スポットビーム照射用灯具ユニット10は、ハイビームを補助するために、光軸Axの前方延長点がH−V点から下向き0.5度且つV−V線上に位置し、液晶領域22aの透過率が最大となるように制御される。
【0044】
対向車は存在するが先行車が存在しない場合、スポットビーム照射用灯具ユニット10は、遠方障害物の視認性を向上するために、光軸Axの前方延長点がH−V点から下向き0.5度且つ左向き3度の点に位置するよう制御される。それとともに、スポットビーム照射用灯具ユニット10は、液晶領域22aの透過率を最大あるいは最適に調整し、案内板の視認性を向上させる。
【0045】
また、前方監視システムECU50および配光制御ECU51は、ワイパスイッチ56の状態や車載カメラ52の情報を基に霧の発生を判定する。霧が発生していると判定された場合、スポットビーム照射用灯具ユニット10は、霧による光膜の発生を抑えるべく、液晶シェード20を制御して水平線H−Hよりも上方を照射する部分の光量を減光する。光膜の発生を抑えることにより、グレアを抑制できる。
【0046】
霧の発生時には、レーンマーク(白線)と路面との輝度コントラストが晴天時に比べ低下する。従って、輝度コントラストに基づいても霧の発生を判定できる。なお、雨天時にはレーンマークと路面の輝度コントラストは高くなるが、雨天時でも路面が冠水している場合にはレーンマークが全く見えなくなるので、輝度コントラストは霧発生時よりも低下する。
【0047】
図6は、液晶シェードの変形例を説明するための図である。図6に示す液晶シェード20は、液晶領域22aおよび非液晶領域22bの形状が図3に示す液晶シェードと異なっている。図6に示す液晶シェード20は、略上半分の領域が非液晶領域22bとされ、略下半分の領域が液晶領域22aとされている。また、光軸Axの周辺領域が非液晶領域22bとされている。本変形例に係る液晶シェード20においても、非液晶領域22bの周囲に沿うように透過率可変部27(破線で図示された領域)が設けられている。透過率可変部27は、非液晶領域22bに近づくにつれ、光透過率が徐々に減少するよう液晶の配向状態が制御される。本変形例においても透過率可変部27を設けることにより、スポット配光パターンの明暗境界がぼかされ、目立たなくなる。これにより、明暗境界線の存在による視認性の低下を回避できる。
【0048】
上述の実施形態では、スポットビームの外縁をぼかす技術について説明した。より視認性に優れたスポットビームを提供するためには、路面の輝度分布を考慮してスポットビームの明暗境界をぼかす必要がある。以下、視認性に優れたスポットビームについて考察する。
【0049】
図7は、車両用前照灯の高さ(0.65m)から見た前方視野を示す。スポットビームは、車両前方10m(3.7度)より前方の路面を照らす。10mより前方には主視認対象が存在する。そのため、10mより前方の照射範囲の路面にムラが発生すると非常に器になり、煩わしさを感じる。そこで、夜間、この範囲がどの程度のムラとなると気づくかが問題となる。
【0050】
霧の視程は霧の中で視対象の見える限界距離で決められている。そして、そのときの限界輝度コントラストは5%とされている。これは、霧の中では5%の輝度コントラスト以下ではムラとして気づかなくなるということである。従って、路面の輝度勾配も路面に光が到達していると気がつく範囲内では手前路面(高輝度)から遠方路面(低輝度)の路面輝度を5%以下で単調減少させる必要がある。遠方路面から考える場合には単調増加である。この条件を満たさないと路面にムラが発生する。
【0051】
次に、5%の輝度勾配はどの程度の視角サイズがあると気づくかが問題となる。これについては、視力の観点から説明する。視力はC環の隙間を弁別できる視角サイズ(単位は分)の逆数で定義される。1分のC環の隙間を弁別できる眼は視力1と定義される。しかしながら、昼間に矯正視力で1.5あった視力も環境の明るさで変化し、夜間(順応輝度1cd/m2)では0.7程度に低下する。視力0.7の分解能は約1.5分である。従って、路面のムラを感じさせないようにするためには、手前路面(高輝度)から遠方路面(低輝度)を視角サイズ1.5分で分割し、その路面輝度勾配で考えれば、その輝度勾配が5%以下の単調減少であれば路面のムラは気にならないと考えられる。
【0052】
図8は、路面5m〜40m間の反射特性を示す。図8において、横軸は前方距離(m)縦軸は輝度係数(cd/m2/lx)である。輝度係数に照度を乗算することにより輝度に変換できる。図8に示すように、輝度係数は、車両前方に行くに従いやや低下傾向にあるが、ほぼ一定(0.01cd/m2/lx)である。従って、路面の輝度勾配の代替として路面照度で規定しても差し支えない。
【0053】
図9は、スポットビームの最大/最小路面照度目標を示す。図9は、1灯時の最大路面照度目標90および最小路面照度目標91を示す。最大路面照度目標90は、10m〜45m(約0.8度)間では60〜30lxへと単調減少させ、45m〜75m間ではさらに減衰率を高め、1.5分あたりの減衰率5%にて路面照度を減衰させている。最小路面照度目標91は、10m〜75m間を約10lx程度で単調減少させている。
【0054】
2灯合成であれば、最大の路面輝度は10m〜45m間で1.2〜0.6cd/m2に単調減少し、さらに45m〜75m間では0.6cd/m2〜約0.3cd/m2に単調減少する。
【0055】
なお、現状のガスディスチャージヘッドランプ(GDHL)のロービーム1灯における5lx到達距離は70m程度である。スポットビームはベースビーム(すなわちロービーム)に付加して使用する。
【0056】
図9に示す最小路面照度目標であっても75mより前方の照度を向上させるので使用効果が発生する。l
【0057】
なお、路面輝度L(cd/m2)は、ヘッドランプからの照射距離をD(m)、その照射光度をI(cd)、それによる照度をE(lx)、路面の輝度係数をR(=0.01で一定)(cd/m2/lx)とすれば、下記の(1)式で計算される。
L=R×E=R×I/D2=0.01×I/D2 ・・・(1)
【0058】
図10は、スポットビームの最大/最小光度目標を示す。図10は、1灯時の最大光度目標100および最小光度目標101を示す。図10に示す最大/最小光度目標は、上記の前提条件を基にしたスポットビームの配光である。図10に示すように、仮想鉛直スクリーン上におけるH−V点から下向き0.5度の光度を最大約80,000cd〜最小約30,000cdとし、それ以下では単調減少させる。H−V点から下向き3度で最大約8,000cd〜最小約2,000cdとしている。
【0059】
スポットビームの配光をこのような配光とすれば、路面の輝度ムラは発生せず、遠方の視認性を高めることができる。なお、スポットビームを1車両あたり1灯装着する場合には、上記の光度の2倍に設定することが望ましい。
【0060】
次に、路上標識の視認性対策について述べる。ヘッドランプで照明した場合の案内標識の見え方として、暗すぎて見えないという見え方や、明るすぎて眩しいという見え方は避けるべきである。この条件を標識の設置基準を勘案して求める。
【0061】
図11(a)および(b)は、道路標識・案内標識の設置基準を示す(国土交通省中部地方整備局道路部、道路設計要領第8章・道路付属物に基づいて作成)。案内標識の中でも大型のものは、路上設置高(板下)5m、文字サイズ30cmが設置基準である。案内板のサイズは文字数にもよるが、4車線の主要幹線道路の表尋の案内板サイズは、2.4m×2.4m、最も大型の案内板は高速道路のインタチェンジ案内板で3.5m×3.5mである。その他、さらに大型の標示板としては高速道路料金徴収所の予告標識がある。これは、オーバーヘッド式では横6.45m×縦1.2mである。
【0062】
図12は、案内標識に対するドライバの認知行動を示す(高宮他、高齢ドライバーの標識地名判読距離に関する研究,第19回交通工学研究発表会論文報告集,pp.189-192,1999に基づいて作成)。図12には、標識を認知する視認距離、標識の内容を判断し始める判読距離、標識が視線から外れて見づらくなる消失距離などが示されている。
【0063】
図13は、道路種別と判読距離を示す。道路の種別・交通量にもよるが、主要幹線道路では100m程度、高速道路ではその倍の200m程度の判読距離を確保する必要があると考えられる。一方、消失距離は31m以下、消失角は7度以上を推奨している。
【0064】
図14は、標識板白色輝度の診断評価基準を示す。一般道路の案内標識は青地に白字、高速道路では緑地に白字が標準となっている。図14は、社団法人全国道路標識・標示業協会が案内標識としての適正な文字部の輝度を調査したものである。
【0065】
図14における評価点の意味を以下に説明する。評価0は、標識の機能・性能に影響しないレベルである。評価3は、標識の機能・性能にただちに影響しないレベル(改修・修繕を要する)である。評価9は、標識の機能・性能に強く影響する(更新を要する)レベルである。従って、ヘッドランプでは、3.5cd/m2以上を保証することが望まれる。
【0066】
一方、光が明るすぎると不快感を感じる。図15は、順応輝度とその順応輝度下で感じる視対象輝度の明るさの関係を示す。ヘッドランプの順応輝度を1cd/m2とすると200cd/m2が眩しさを感じる境界である。従って、ヘッドランプによる標識の照明輝度範囲は、3.5cd/m2〜200cd/m2とする必要があると考えられる。
【0067】
次に、上記の輝度をヘッドランプ配光で保証するために、標識の再帰反射特性を知る必要がある。この反射特性は、社団法人全国道路標識・標示業協会で調査されている。その結果によると、再帰反射輝度係数は、10年経年使用の標識で洗浄保守前でも約200(cd/m2/lx)以上が保持されていると報告されている。この係数に基づいて計算すれば、標識の輝度3.5〜200cd/m2を確保するのに必要なヘッドランプによる照射輝度は、0.035〜2lxとなる。
【0068】
次に、案内標識視認・高速道路料金徴収所の予告標識に必要なヘッドランプ照射光度について説明する。ここでは、ヘッドランプによる照射照度0.035〜2lxを確保するのに必要な照射光度を、高速道路における200m先の案内標識および料金徴収所の予告標識と、31m先(視角7度)の幹線道路案内標識とについて求める。
【0069】
まず、200m先の高速道路案内標識と料金徴収所の予告標識について述べる。高速道路の案内標識は板下5m、縦3.5m×横3.5m、料金徴収所の予告標識は板下5m、縦1.2m×横6.45mである。案内標識の存在範囲は高さ方向5〜8.5m、幅方向0〜3.5m、予告標識の存在範囲は高さ方向5〜6.25m、幅方向0〜6.45mとなる。これらをヘッドランプの取付高さ0.65mを考慮してスクリーンの角度範囲に変換すると、案内標識では上下方向で約1〜2度、左右方向で約−1〜−2度、予告標識では上下方向で約1〜1.5度、左右方向で0〜約−2度となる。この範囲を0.035〜2lxで照明するのに必要な光度は1400〜80000cdで、1灯では700〜40000cdとなる。
【0070】
次に、片側2車線の幹線道路(1車線幅3.5m)の消失位置31mにおける案内標識と料金徴収所の予告標識について述べる。ここでは、自車が片側2車線道路の追い越し車線を走行しているとする。案内標識の存在範囲は高さ方向5〜8.5m、幅方向3.5〜7m、予告標識の存在範囲は高さ方向5〜6.25m、幅方向0〜6.45mとなる。これらをヘッドランプの取付高さ0.65mを考慮してスクリーンの角度範囲に変換すると、案内標識では上下方向は約8〜15度、左方向で−8〜−15度となる。予告標識では上下方向で約8〜10度、左右方向で0〜約−13度となる。なお、幹線道路では案内標識は通常、曲路には設置されないが、高速道路では考慮しておく必要がある。100km/h走行の旋回半径460mの屈曲点CPは約5度である。従って、200m前方では+5度の照射範囲拡大を考慮しておけばよい。この範囲を0.035〜2lxで照明するのに必要な光度は35〜2000cdで、1灯では17.5〜1000cdとなる。
【0071】
図16は、スポットビームの照射光度を示す。図16は、上記の結果を基に前方200m〜31mの範囲に位置する道路標識と料金徴収所の予告標識を0.035〜2lxで照明するのに必要な光度を示す。
【0072】
直線道路における標識類はスクリーンの第2象限に位置する。道路標識と料金徴収所の予告標識は図16に示した軌跡に従ってそのサイズが変化する。200m先で700〜40000cd必要であったヘッドランプ1灯の照明は、31m先では17.5〜1000cdとなり、スクリーン上の位置も変化する。
【0073】
上記の結果を基に案内標識を中心に各種標識の視認性を遠方(200m前方)から消失角7度位置(31m前方)まで違和感(暗すぎたり、明るすぎて眩しい)なく確保するためには、仮想鉛直スクリーン上におけるH−V点から上向き1度且つ左向き1度を40,000cd以下、上向き8度且つ左向き8度を1,000cd以下、上向き2度且つ左向き2度を700cd以上、上向き15度且つ左向き15度を17.5cd以上とする必要がある。
【0074】
図17は、左向き1度且つ鉛直線方向のスポットビームの光度分布を示す。また、図18は、上向き1度且つ水平方向のスポットビームの光度分布を示す。上向き1度且つ左向き1度が40,000cd以下、上向き8度且つ左向き8度が1,000cd以下、上向き2度且つ左向き2度が700cd以上、上向き15度且つ左向き15度が17.5cd以上という条件を満足させるように単調減少の光度分布としている。
【0075】
図19は、スポットビームのスクリーン配光例を示す。図19は、路面の視認性に関する配光要件(図9および図10)、案内標識の視認性に関する配光要件(図17および図18)をベースに作成した最大光度の等光度分布図である。
【0076】
スクリーン配光の第2象限は案内標識の視認性を確保するように設定しており、第2象限、第3象限は路面にムラが発生しないようにすると共に、所定光度が自車線範囲内をカバーするようにしている。そして、スクリーン配光の第1象限は、対向車へ与えるグレアを抑制するようにシャープカットオフを形成している。
【0077】
等光度線は内側から80,000cd、50,000cd、20,000cd、10,000cd、5,000cdである。最大光度は下向き0.5度且つ左向き1.5度の角度位置で100,000cdを目標光度としている。なお、最小光度は図示しないが、同位置で35,000cdとしている。このスポットビームは、対向車や先行車の存在状況に対応して、ベースビーム(ロービーム)に追加点灯する。なお、このようなスポットビーム配光をLEDヘッドランプ1灯で達成するのは難しい。
【0078】
図20(a)〜(c)は、図19に示す配光を達成するための3つの配光を示す。図19に示す配光は、図20(a)に示す拡散配光、図20(b)に示す標識配光、および図20(c)に示す集光配光の3つの配光の合成で成立させるのが容易である。図20(a)の拡散配光は、第3、第4象限に中心光度は低いがワイドな配光としている。図20(b)の標識配光は、第2象限のほぼ全域を照明し、案内標識に視認に必要な配光を形成すると共に、H−V点下近傍にやや高光度の部分を形成している。図20(c)の集光配光は、スポットビームの最大光度部を形成する。それゆえ、ビームの左右拡散は他の2つに比べ狭くしている。これらの配光と光学系の構成例を以下で説明する。
【0079】
図21は、拡散配光を形成する光学系の実施例を示す。図21に示す拡散配光光学系は、LED210からの光を放物柱反射鏡211で反射することにより、拡散配光を形成する。
【0080】
図22(a)および(b)は、標識配光を形成する光学系の実施例を示す。図22(a)は、標識配光光学系の概略断面図である。図22(a)に示すように、本光学系は、投影レンズを用いたプロジェクタ型の光学系を採用しており、LED220と、LED220からの光を反射するリフレクタ221と、リフレクタ221で反射した光の一部を遮光するシェード222と、シェード222を通過した光を前方に投影する投影レンズ223とを備える。シェード222は、ガラス基板224上に遮光パターン225が印刷されている。図22(b)は、シェード222の遮光パターンを示す。図22(b)に示すように、シェード222の遮光パターンは、図20(b)に示す標識配光を形成するために必要なカットオフ形状を有するとともに、カットオフ近傍や第2象限の案内標識に対応した位置に調光用のグレデーション印刷パターンが形成されている。
【0081】
図23(a)および(b)は、集光配光を形成する光学系の実施例を示す。図23(a)は、集光配光光学系の概略断面図である。図23(a)に示すように、本光学系は、投影レンズを用いたプロジェクタ型の光学系を採用しており、LED230と、LED230からの光を反射するリフレクタ231と、リフレクタ231で反射した光の一部を遮光するシェード232と、シェード232を通過した光を前方に投影する投影レンズ233とを備える。シェード232は、ガラス基板234上に遮光パターン235が印刷されている。図23(b)は、シェード232の遮光パターンを示す。図23(b)に示すように、シェード232の遮光パターンは、図20(c)に示す集光配光を形成するために必要なグレデーション印刷パターンが形成されている。
【0082】
図24は、集光配光を形成する光学系の別の実施例を示す。図24に示す光学系もまた、投影レンズを用いたプロジェクタ型の光学系であり、LED240と、LED240からの光を反射するリフレクタ241と、リフレクタ241で反射した光の一部を遮光するシェード242と、シェード242を通過した光を前方に投影する投影レンズ243とを備える。本光学系は、シェード242の形態が図23に示す光学系と異なる。
【0083】
なお、スポットビームの配光は、LEDを用いた3つの光学ユニットで構成しなければならないというものでもない。レンズの焦点距離や反射鏡の焦点距離を適切に選択する(上下・左右の拡散を調整する)ことができれば、LEDを用いた2つの光学ユニット(例えば、図22(a)および(b)に示す光学系および図23(a)および(b)に示す光学系の組み合わせ)でも構成できる。
【0084】
本例のように、標識配光と集光配光とを別々のランプユニットで構成した場合、対向車のみ存在する場合には標識配光ランプユニットと集光配光ランプユニットを点灯する。対向車と先行車が同時に存在する場合には集光配光ランプユニットのみ点灯する。また、霧発生時には標識配光のスポットビームを消灯することが望ましい。
【0085】
図25は、ベースビームの配光例を示す。図25に示すようなベースビーム(ヘッドランプスイッチをオンした後、常時点灯するロービームタイプの配光を有するビーム)は、図24に示す集光配光のランプユニットと、図21に示す拡散配光のランプユニットで実現できる。
【0086】
以上説明したスポットビームの特徴を以下にまとめる。
【0087】
(1)遠方路面照射用スポットビーム
これは、一定車速以上でLEDベースビームに追加点灯するLEDスポットビームである。そのスポットビームは、水平線H−H近傍に最大光度を有し、そのスポットビームの第3象限の配光は、下向き0.5度且つ左向き1度の角度位置の光度を最大80,000〜最小30,000cdとし、下向き3度且つ左向き1度の角度位置の光度を8,000〜2,000cdとしている。また、それらの角度位置を結ぶ線上において、下向き0.5度且つ左向き1度の角度位置から下側に離れるに従い光度が単調減少すると共に、左向き1度且つ鉛直線上の10mから75m範囲の路面照度目標が視角サイズ1.5分あたりの減少率0〜5%にて単調減少する。このような遠方路面照射用スポットビームを採用することにより、路面に暗部が目立つこともなく、路上物体の視認性を向上することができる。
【0088】
(2)案内板照明用スポットビーム
これは、(1)に記載した遠方路面照射用スポットビームにおいて、第2象限の配光は上向き1度且つ左向き1度の角度位置の光度を40,000cd以下、上向き8度且つ左向き8度の角度位置の光度を1,000cd以下、上向き2度且つ左向き2度の角度位置の光度を700cd以上、上向き15度且つ左向き15度の角度位置の光度を17.5cd以上とし、さらにそれらの角度位置を結ぶ線上において、上向き1度且つ左向き1度の角度位置から離れるに従い光度が単調減少するようにしたものである。このような案内板照明用スポットビームを採用することにより、案内標識は眩しすぎず・暗く見にくくもならず、快適に視認することができる。
【0089】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0090】
10 スポットビーム照射用灯具ユニット、 11 第1LED、 12 第2LED、 13 光源搭載部、 14 第1リフレクタ、 15 第2リフレクタ、 16 投影レンズ、 17 熱線反射膜、 20 液晶シェード、 21 透明基板、 22 液晶層、 23 偏光板、 24 車両用前照灯、 25 枠体、 26 ハイビーム照射用灯具ユニット、 27 透過率可変部、 28 ロービーム照射用灯具ユニット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を搭載するための光源搭載部と、
前記光源からの光を制御してスポット配光パターンを形成するスポット配光形成部と、
を備える車両用灯具であって、
前記スポット配光形成部は、スポット配光パターンにおける明暗の境界をぼかすためのぼかし部を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記スポット配光形成部は、前記光源からの光の一部を遮蔽してスポット配光パターンを形成する液晶シェードを備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記液晶シェードは、
一対の透明基板と、
前記一対の透明基板の間に設けられた液晶層であって、液晶の配置された液晶領域と、液晶の配置されていない非液晶領域とを有する液晶層と、
前記液晶領域に対応する部分に配置された一対の偏光板と、
前記非液晶領域の周囲に沿うように形成された透過率可変部であって、内縁から外縁かけて光透過率が減少するよう形成された透過率可変部と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前方車の存在を示す情報を受信した場合に、前記液晶シェードを制御して前方車の位置に対応する部分の光量を減光する制御部をさらに備えることを特徴とする請求項2または3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記制御部は、霧の発生情報を受信した場合に、前記液晶シェードを制御して水平線よりも上方を照射する部分の光量を減光することを特徴とする請求項4に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記スポット配光形成部を通過した光を灯具前方に照射するレンズと、
前記レンズに形成された熱線反射膜と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項1】
光源を搭載するための光源搭載部と、
前記光源からの光を制御してスポット配光パターンを形成するスポット配光形成部と、
を備える車両用灯具であって、
前記スポット配光形成部は、スポット配光パターンにおける明暗の境界をぼかすためのぼかし部を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記スポット配光形成部は、前記光源からの光の一部を遮蔽してスポット配光パターンを形成する液晶シェードを備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記液晶シェードは、
一対の透明基板と、
前記一対の透明基板の間に設けられた液晶層であって、液晶の配置された液晶領域と、液晶の配置されていない非液晶領域とを有する液晶層と、
前記液晶領域に対応する部分に配置された一対の偏光板と、
前記非液晶領域の周囲に沿うように形成された透過率可変部であって、内縁から外縁かけて光透過率が減少するよう形成された透過率可変部と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前方車の存在を示す情報を受信した場合に、前記液晶シェードを制御して前方車の位置に対応する部分の光量を減光する制御部をさらに備えることを特徴とする請求項2または3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記制御部は、霧の発生情報を受信した場合に、前記液晶シェードを制御して水平線よりも上方を照射する部分の光量を減光することを特徴とする請求項4に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記スポット配光形成部を通過した光を灯具前方に照射するレンズと、
前記レンズに形成された熱線反射膜と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の車両用灯具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2013−73691(P2013−73691A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209804(P2011−209804)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]