説明

車両用燃料ガス検出装置

【課題】この発明は、車両用燃料ガス検出装置において、燃料ガス検出手段自体の交換を含めたメンテナンスを容易に行うことを可能とし、燃料ガス検出手段の信頼性を高め、漏洩した燃料ガスの精度の高い検出を可能とすることを目的とする。
【解決手段】この発明は、車両に搭載された燃料電池と前記燃料電池に燃料ガスを供給する燃料ガスタンクとを有する燃料電池システムを備え、前記燃料電池システムから漏洩した燃料ガスを検出する燃料ガス検出手段を備えた車両用燃料ガス検出装置において、前記燃料ガスタンクを前記車両のフロアパネルの下面に下側から取り付け固定し、前記燃料ガスタンクが固定されているフロアパネルの燃料ガスタンク近傍に孔を開け、前記燃料ガス検出手段を前記孔が開けられているフロアパネルの上面に上側から取り付けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両用燃料ガス検出装置に係り、特に、燃料ガス検出手段自体の交換を含めたメンテナンスを容易に行うことが可能で、燃料ガス検出手段の信頼性を高め、漏洩した燃料ガスの精度の高い検出が可能な車両用燃料ガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムを設けた車両においては、燃料ガスタンクまたは燃料ガス用配管等から燃料ガスが漏れた場合を考慮して、燃料ガスの漏れを検出可能な車両用燃料ガス検出装置を設けている。車両用燃料ガス検出装置には、図5に示すものがある。図5において、101は車両、102はフロアパネル、103は車室、104は収納空間である。車両101は、車両後部のフロアパネル102の上側に車室103を設け、下側に後述する燃料ガスタンク106・107の収納空間104を設けている。
車両101の燃料電池システム105は、車両前部のフロントルームに燃料電池を搭載し、車両後部のフロアパネル102の下側の収納空間104に2つの燃料ガスタンク106・107を収納し、燃料ガスタンク106・107をフロアパネル102の下面108に下側から取り付け固定している。燃料電池システム105は、燃料ガスタンク106・107から燃料ガスである水素ガスを燃料ガス用配管により燃料電池に供給し、電気を発生する。
前記車両101は、燃料電池システム105から漏洩した燃料ガスを検出する車両用燃料ガス検出装置109を設けている。車両用燃料ガス検出装置109は、燃料ガスを検出する燃料ガス検出手段であるガスセンサ110を備えている。ガスセンサ110は、本体111に検知部位112を設け、本体111を燃料ガスタンク106・107の上方のフロアパネル102の下面108に下側から取り付けている。車両用燃料ガス検出装置109は、ガスセンサ110の検知部位112により燃料ガスである水素ガスの漏洩を検出すると、例えば、警報を発し、燃料ガスの供給を遮断し、換気を行う等の処理をする。
【0003】
従来の車両用燃料ガス検出装置には、フロアパネルの下側の設置室に燃料ガスタンクを設置し、燃料ガスタンクが設置された設置室の天井を構成するフロアパネルに下側から上面側に突出する燃料ガス捕集凹部を形成し、フロアパネルの下側から燃料ガス捕集凹部に燃料ガス検出手段を取り付け、漏洩源となる燃料ガスタンク等よりも高い位置に燃料ガス検出手段を設置して検出精度を高めたものがある。
【特許文献1】特開2007−274786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の図5に示す車両用燃料ガス検出装置109においては、燃料ガスタンク106・107または燃料ガス用配管等から燃料ガスが漏洩したときに、効果的に燃料ガスを検出する必要がある。このため、従来は、ガスセンサ110を、燃料ガスタンク106・107上方のフロアパネル102のなるべく高い位置に、直接あるいは固定用ブラケットを介して、フロアパネル102の下面108に下側から取り付けていた。
ところが、従来の車両用燃料ガス検出装置109は、燃料ガスタンク106・107がフロアパネル102の下面108に取付けられた状態において、この燃料ガスタンク106・107上方のフロアパネル102の下面108に取り付けられたガスセンサ110にアクセスする場合に、燃料ガスタンク106・107が障害となってアクセスが非常に困難であった。
このため、従来の車両用燃料ガス検出装置109は、ガスセンサ110の故障時等の交換性を悪化させる問題があり、また、ガスセンサ110の動作チェックのために検知部位112に燃料ガスの水素ガスを吹き付ける等の作業も困難な問題があった。さらに、従来の車両用燃料ガス検出装置109は、ガスセンサ110をフロアパネル102の下面108の最も高い位置に取付けても、ガスセンサ110の検知部位112は最低でも本体111の厚み分だけ下方位置となってしまうため、燃料ガス漏洩時の効果的な検知が困難な問題があった。
【0005】
この発明は、車両用燃料ガス検出装置において、燃料ガス検出手段自体の交換を含めたメンテナンスを容易に行うことを可能とし、燃料ガス検出手段の信頼性を高め、漏洩した燃料ガスの精度の高い検出を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、車両に搭載された燃料電池と前記燃料電池に燃料ガスを供給する燃料ガスタンクとを有する燃料電池システムを備え、前記燃料電池システムから漏洩した燃料ガスを検出する燃料ガス検出手段を備えた車両用燃料ガス検出装置において、前記燃料ガスタンクを前記車両のフロアパネルの下面に下側から取り付け固定し、前記燃料ガスタンクが固定されているフロアパネルの燃料ガスタンク近傍に孔を開け、前記燃料ガス検出手段を前記孔が開けられているフロアパネルの上面に上側から取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明の車両用燃料ガス検出装置は、燃料ガス検出手段自体を整備する場合に、フロアパネルの上面の燃料ガス検出手段に上側からアクセスして作業を行うことができるので、燃料ガス検出手段自体の交換を含めたメンテナンスを容易に行うことが可能である。
また、この発明の車両用燃料ガス検出装置は、フロアパネルの下側の燃料ガスタンクを含めた燃料系部品にアクセスして交換する場合において、フロアパネルの上側の燃料ガス検出手段を誤って破損する可能性が低いので、燃料ガス検出手段の信頼性を高めることが可能である。
さらに、この発明の車両用燃料ガス検出装置は、燃料ガス検出手段を、燃料ガスタンクの上方の最も漏洩した燃料ガスが溜まりやすい位置に取り付けているため、精度の高い検出が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明は、メンテナンスを容易にし、燃料ガス検出手段の信頼性を高め、漏洩した燃料ガスの精度の高い検出を可能とするために、燃料ガスタンク近傍のフロアパネルに孔を開け、孔が開けられたフロアパネルの上面に上側から燃料ガス検出手段を取り付けている。
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0009】
図1〜図4は、この発明の実施例を示し、図1は車両後部のフロアパネルの断面図、図2は車両後部のフロアパネルを外した状態の平面図、図3はガスセンサの組立状態を示す斜視図、図4はカバーを外した状態の電気部品の斜視図である。図1において、1は車両、2はフロアパネル、3は車室、4は収納空間である。
車両1は、車両後部のフロアパネル2の上側に車室3を設け、下側に後述する燃料ガスタンク10・11の収納空間4を設けている。収納空間4は、図2に示すように、フロアパネル2の下側において、左右の平行するリヤサイドメンバ5・6と、リヤサイドメンバ5・6の前側を連結したクロスメンバ7と、リヤサイドメンバ5・6の後端を連結したリヤバンパメンバ8とにより囲まれている。
前記車両1には、燃料電池システム9を設けている。燃料電池システム9は、車両前部のフロントルームに燃料電池を搭載し、図1・図2に示すように、車両後部のフロアパネル2の下側の収納空間4に略円筒形状の燃料ガスタンク10・11を収納し、燃料ガスタンク10・11をフロアパネル2の下面12に下側から固定部材により取り付け固定している。
燃料ガスタンク10・11は、図2に示すように、長手方向を車両1の左右方向に向けて、車両1の前後方向において平行するように並べて配置されている。燃料ガスタンク10・11には、車両1の左側の端部にバルブ13・14を設け、燃料ガスを充填するための充填系燃料ガス用配管15を接続し、燃料ガスを燃料電池に供給するための供給系燃料ガス用配管16を接続し、供給系燃料ガス用配管16に減圧用のレギュレータ17・18を介設している。充填系燃料ガス用配管15、供給系燃料ガス用配管16、レギュレータ17・18は、車両1の左側に配置している。
前記燃料電池システム9は、燃料ガスタンク10・11から燃料ガスである水素ガスを供給系燃料ガス用配管16によりレギュレータ17・18を介して燃料電池に供給し、電気を発生する。
【0010】
前記車両1は、燃料電池システム9から漏洩した燃料ガスを検出する車両用燃料ガス検出装置19を設けている。車両用燃料ガス検出装置19は、燃料ガスの水素ガスを検出する燃料ガス検出手段であるガスセンサ20を備えている。ガスセンサ20は、本体21に検知部位22を設けている。前記2つの燃料ガスタンク10・11が固定されているフロアパネル2には、図1・図2に示すように、車両1の左側であって、後ろ側の燃料ガスタンク11のバルブ14近傍に、下面12から上面23に貫通する孔24を開けている。前記ガスセンサ20は、孔24が開けられたフロアパネル2の上面23に上側から取り付けている。
これにより、この車両用燃料ガス検出装置19は、ガスセンサ20自体を整備する場合に、フロアパネル2の上面23のガスセンサ20に上側からアクセスして作業を行うことができるので、ガスセンサ20自体の交換を含めたメンテナンスを容易に行うことが可能である。
また、この車両用燃料ガス検出装置19は、フロアパネル2の下面12に固定した燃料ガスタンク10・11を含めた燃料系部品(充填系燃料ガス用配管15、供給系燃料ガス用配管16、レギュレータ17・18等)にアクセスして交換する場合において、フロアパネル2の上面23に取り付けたガスセンサ20を誤って破損する可能性が低いので、ガスセンサ20の信頼性を高めることが可能である。
さらに、この車両用燃料ガス検出装置19は、ガスセンサ20の検知部位22をフロアパネル2の下面12よりも上側に位置させ、燃料ガスタンク10・11の上方の最も燃料ガスが溜まりやすい位置にガスセンサ20を取り付けているため、漏洩した燃料ガスについて精度の高い検出が可能である。
【0011】
前記ガスセンサ20は、図1に示すように、シール部材25を介して取り付けている。シール部材25は、円環形状に形成し、通孔26を備えている。具体的には、図3に示すように、フロアパネル2の下面12に孔24を塞がないように固定用ブラケット27の上方に突出するボス28・28を当て、フロアパネル2の上面23に円環形状のシール部材25を通孔26が孔24に一致するように当て、シール部材25の通孔26にガスセンサ20の検知部位22を一致させて本体21を当てる。この状態から、締結ねじ29・29をガスセンサ20の本体21の通孔30・30とフロアパネル2の通孔31・31とに挿通し、固定用ブラケット26のボス28・28に螺着することで、フロアパネル2の上面23にシール部材25を介してガスセンサ20を取り付けている。
これにより、この車両用燃料ガス検出装置19は、漏洩した燃料ガスの車室3内への侵入を防ぐことができるので、ガスセンサ20を車室3外に設けているときと同等の信頼性を備えることが可能である。
【0012】
前記フロアパネル2の上面23には、図4に示すように、ガスセンサ20に隣接して電気部品28を設けるとともに、ガスセンサ20と電気部品32とを一体で覆うカバー33を取り付けている。電気部品32は、キャパシタ32A、メインスイッチ32B、補機用バッテリ32C等からなり、車両1の左側に配置したガスセンサ20に隣接して、車両1の左右方向に延びるように配置している。カバー33は、右用カバー部33Rと左用カバー部33Lとからなり、これらを一体に連結して長四角形状の天板部の前後左右の各辺縁から周壁を垂下した車両1の左右方向に長い有蓋無底長四角蓋形状に形成し、ガスセンサ20と電気部品32のキャパシタ32A、メインスイッチ32B、補機用バッテリ32Cとを覆って取り付けている。
これにより、この車両用燃料ガス検出装置19は、ガスセンサ20が周囲に配置された電気部品32のキャパシタ32A、メインスイッチ32B、補機用バッテリ32Cとともに一つのカバー33で覆われるため、複数の部品の保護が可能となり、部品点数を削減することができる。
また、この車両用燃料ガス検出装置19は、ガスセンサ20と電気部品32とが一つのカバー33で覆われるため、乗員が容易に触れることができないので、燃料ガスを燃料とする車両1において燃料ガスが漏洩しているかどうかを正確に計測するガスセンサ20の信頼性を高めることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0013】
この発明の車両用燃料ガス検出装置は、燃料ガス検出手段のメンテナンスを容易にし、信頼性を高め、精度の高い検出を可能とするものであり、車両のフロアパネルの下面に燃料ガスタンクを固定したその他の車両にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】車両用燃料ガス検出装置の実施例を示す車両後部のフロアパネルの断面図である。
【図2】車両用燃料ガス検出装置の実施例を示す車両後部のフロアパネルを外した状態の平面図である。
【図3】車両用燃料ガス検出装置の実施例を示すガスセンサの組立状態を示す斜視図である。
【図4】車両用燃料ガス検出装置の実施例を示すカバーを外した状態の電気部品の斜視図である。
【図5】車両用燃料ガス検出装置の従来例を示す車両後部のフロアパネルの断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 車両
2 フロアパネル
3 車室
4 収納空間
9 燃料電池システム
10・11 燃料ガスタンク
12 下面
13・14 バルブ
15 充填系燃料ガス用配管
16 供給系燃料ガス用配管
17・18 レギュレータ
19 車両用燃料ガス検出装置
20 ガスセンサ
21 本体
22 検知部位
23 上面
24 孔
25 シール部材
27 固定用ブラケット
29・29 締結ねじ
32 電気部品
33 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された燃料電池と前記燃料電池に燃料ガスを供給する燃料ガスタンクとを有する燃料電池システムを備え、
前記燃料電池システムから漏洩した燃料ガスを検出する燃料ガス検出手段を備えた車両用燃料ガス検出装置において、
前記燃料ガスタンクを前記車両のフロアパネルの下面に下側から取り付け固定し、
前記燃料ガスタンクが固定されているフロアパネルの燃料ガスタンク近傍に孔を開け、
前記燃料ガス検出手段を前記孔が開けられているフロアパネルの上面に上側から取り付けたことを特徴とする車両用燃料ガス検出装置。
【請求項2】
前記燃料ガス検出手段は、シール部材を介してフロアパネルに取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の車両用燃料ガス検出装置。
【請求項3】
前記フロアパネルの上面には、前記燃料ガス検出手段に隣接して電気部品を設けるとともに、前記燃料ガス検出手段と電気部品とを一体で覆うカバーを取り付けたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の車両用燃料ガス検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−12959(P2010−12959A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175254(P2008−175254)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】