説明

車両用自動開閉装置

【課題】 単一の操作部の操作により開閉体の手動開閉、途中停止を可能として、手動による開閉体の開閉操作性を向上させることと、開放補助力発生手段が装着された開閉体を途中位置に確実に保持させることである。
【解決手段】 テールゲートを開閉駆動する電動モータとテールゲートとの間に動力伝達経路を断続する電磁クラッチを設け、操作者により操作されるアウターハンドルをテールゲートに設ける。テールゲートが閉鎖認識範囲と開放認識範囲との間の途中位置にあるときにアウターハンドルが操作されると電磁クラッチは接続状態に切り替えられ、これによりガスステーの付勢力に抗してテールゲートを途中位置で保持させることができる。一方、テールゲートが閉鎖認識範囲あるいは開放認識範囲にあるときには、アウターハンドルを操作しても電磁クラッチは遮断状態に維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジを介して上下方向に開閉自在に車体に装着される開閉体を駆動源により自動的に開閉するとともに、駆動源と開閉体との間に設けたクラッチを遮断状態に切り替えることにより、手動によっても開閉体の開閉操作を行い得るようにした車両用自動開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワゴン車やワンボックス車等の車両では、車体の後端部にバックドアを設け、このバックドアを開閉して荷物の積み下ろし等を行うようにしている。通常、このようなバックドアは車体のルーフ部に設けられたヒンジを介して車体に装着され、ヒンジを回転中心として上下方向に開閉する上ヒンジ下開き式つまり跳ね上げ式とされており、この場合、バックドアは開放時に大きく上方に跳ね上げられることになるので、テールゲートやリフトゲートあるいはリヤハッチ等とも呼ばれている。
【0003】
このようなバックドアを備えた車両では、バックドアと車体との間には開放補助力発生手段としてのガスステーが装着されており、ガスステーはバックドアが所定開度以上に開いたときに内部ガス圧で伸長してドアを開方向に付勢し、その付勢力で開閉操作力を軽減させるとともに、全開位置に達したバックドアを保持するようになっている。反対に、バックドアが所定開度以下に閉じた場合には、ガスステーの付勢力はバックドアの自重を下回り、バックドアは自重により閉方向に付勢される。
【0004】
一方、跳ね上げ式のバックドアを自動的に開閉するようにした車両用自動開閉装置としては、バックドアを開閉駆動する駆動源としての電動モータとバックドアとの間に動力伝達経路を断続するクラッチを設け、このクラッチを遮断状態に切り替えることによりバックドアの手動開閉操作を容易に行い得るようにしたものが知られている。このような自動開閉装置が搭載された車両においても、バックドアと車体との間にはガスステーが装着され、バックドアを手動で開閉操作する際の開閉操作をガスステーにより補助するようにしている。
【0005】
ガスステーが装着された車両では、所定開度以上に開いたバックドアは全開位置に向けて付勢されるので、たとえば全開位置に障害物が有る場合など、バックドアを全開位置より手前の途中位置で停止させたい場合には、ガスステーの付勢力に抗してドアを手で押さえておく必要があり不便である。そこで、たとえば特許文献1に示される自動開閉装置では、自動開閉装置に設けられるクラッチを接続状態に切り替えるためのタッチセンサをバックドアに設け、クラッチが遮断状態とされた状態のもとでガスステーにより開方向に付勢される範囲内にある途中位置にまで手動でバックドアが開かれたときに操作者がタッチセンサに触れたときには、モータを停止させた状態のままクラッチを接続状態に切り替えて、バックドアを途中位置で保持させるようにしている。また、バックドアにタッチセンサとは別に解除スイッチを設け、バックドアが途中位置で保持された後に解除スイッチが操作されたときには、再度クラッチを遮断状態に切り替えるようにしている。
【特許文献1】特開2004−338586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示される自動開閉装置では、クラッチを接続状態に切り替えるためのタッチスイッチに加えて、クラッチを遮断状態に切り替えるための解除スイッチをバックドアに設ける必要があるので、バックドアを手動により開閉操作し、さらに途中位置で停止させる際の操作は煩雑であった。
【0007】
また、特許文献1に示される自動開閉装置では、タッチスイッチはバックドアの後方面に設けられているが、タッチスイッチをバックドアの後方面に設けるようにすると、バックドアが開かれるに連れてタッチスイッチは上方を向くことになるので、バックドアが途中位置にあるときにこれを操作することは困難となる。したがって、バックドアが途中位置にあっても操作し易いように、クラッチを遮断状態に切り替える解除スイッチとともにバックドアの下端部にタッチスイッチを設けることが考えられる。しかしながら、タッチスイッチをバックドアの下端部に設けるようにすると、バックドアの下端部に機能の異なる複数のスイッチが設けられることになり、操作者によるスイッチの誤操作の要因となり、操作性が低下することになる。
【0008】
一方、クラッチが接続状態に切り替えられて途中位置で保持されたバックドアはガスステーにより開方向に付勢された状態となっているので、その付勢力が自動開閉装置の途中停止保持力を上回るとその位置を維持し続けることが困難となるという課題があった。特に、摩擦式のクラッチを用いた開閉装置では、ガスステーの付勢力によりクラッチの摩擦係合部に滑りが生じ、バックドアを途中位置に保持し続けることは困難であった。
【0009】
本発明の目的は、単一の操作部の操作により開閉体の手動開閉、途中停止を可能として、手動による開閉体の開閉操作性を向上させることにある。
【0010】
本発明の他の目的は、開放補助力発生手段が装着された開閉体を途中位置に確実に保持させ得る車両用自動開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の車両用自動開閉装置は、ヒンジを介して上下方向に開閉自在に車体に装着される開閉体を自動的に開閉する車両用自動開閉装置であって、前記開閉体を開閉駆動する駆動源と、前記開閉体に設けられ、操作者により操作される開閉操作部と、前記車体と前記開閉体との間に装着され、前記開閉体を開方向に付勢する開放補助力発生手段と、前記開閉体と前記駆動源との間に設けられ、前記開閉操作部の操作により前記開閉体と前記駆動源との間の動力伝達経路を断続するクラッチとを有し、前記クラッチが遮断状態とされた状態のもとで前記開閉体が全閉位置から半ドア位置までの閉鎖認識範囲あるいは全開位置から所定範囲内の開放認識範囲にあるときには、前記開閉操作部が操作されても前記クラッチを遮断状態に維持することを特徴とする。
【0012】
本発明の車両用自動開閉装置は、前記開閉体は所定開度以上に開いたときに前記開放補助力発生手段により開方向に付勢され、所定開度以下のときには自重により閉方向に付勢されることを特徴とする。
【0013】
本発明の車両用自動開閉装置は、前記開閉操作部の操作により前記クラッチが接続状態に切り替えられた状態のまま所定時間経過したときには、前記開閉体を保持解除動作させることを特徴とする。
【0014】
本発明の車両用自動開閉装置は、前記開閉体の開閉方向への移動を検出する移動検出手段を備え、前記開閉操作部の操作により前記クラッチが接続状態に切り替えられた状態のもとで前記開閉体が開閉方向へ移動したことが前記移動検出手段により検出されたときには、前記駆動源を作動させて前記開閉体を移動した分だけ戻すことを特徴とする。
【0015】
本発明の車両用自動開閉装置は、前記開閉操作部の操作により前記クラッチが接続状態に切り替えられた後に再度前記開閉操作部が操作されたときには、前記クラッチを遮断状態に切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、開閉体が閉鎖認識範囲あるいは開放認識範囲にあるときには開閉操作部が操作されてもクラッチは遮断状態に維持され、開閉体が閉鎖認識範囲と開放認識範囲との間の途中位置にあるときには開閉操作部の操作によりクラッチは接続状態に切り替えられるので、単一の操作部により開閉体の手動による開閉操作や途中停止が可能となり、手動による開閉体の開閉操作性を向上させることができる。また、クラッチを接続状態に切り替えて開閉体を途中停止させた後に再度開閉操作部が操作されると、クラッチは遮断状態に切り替えられるので、途中停止した開閉体を再度手動で開閉操作する際の操作性が向上する。
【0017】
また、本発明によれば、開閉操作部の操作によりクラッチが接続状態に切り替えられた状態のまま所定時間経過したときには、開閉体を保持解除動作させるようにしたので、クラッチを接続状態に維持することによる電力消費を抑制してバッテリ上がりを防止することができる。
【0018】
さらに、本発明によれば、開放補助力発生手段による付勢力や開閉体の自重等により途中停止する開閉体が開閉方向に移動したときには、駆動源を作動させて開閉体を移動した分だけ戻すようにしたので、開放補助力発生手段が装着された開閉体を途中位置に確実に保持させて、開閉体が不意に開閉方向に移動することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施の形態である車両用自動開閉装置が設けられた車両の後端部を示す側面図であり、図2は図1に示す車両のテールゲートが開かれた状態を示す側面図である。
【0021】
図1に示すように、車両11の後端部の開口には開閉体としてのテールゲート12が設けられており、このテールゲート12はヒンジ13を介して車体14のルーフ部14aに装着され、図1に示すように略垂直となる全閉位置と、図2に示すように略水平となる全開位置との間の約90度の範囲で上下方向に開閉自在となっている。
【0022】
車両11には、テールゲート12を自動的に開閉するために、車両用自動開閉装置21(以下、開閉装置21とする。)が設けられており、この開閉装置21は車体14のピラー部14bの内部に搭載される駆動ユニット22を有している。
【0023】
図3は図2に示す駆動ユニットの詳細を示す正面図であり、この駆動ユニット22にはテールゲート12を開閉駆動する駆動源として電動モータ23が設けられ、電動モータ23には制御装置24が接続されている。制御装置24としてはCPUやメモリ等を備えたマイクロコンピュータが用いられ、車室内や携帯端末等に設けられた図示しない開閉スイッチからの開閉指令信号に応じて電動モータ23の作動を制御する。
【0024】
電動モータ23の出力は図示しない減速機構により所定の回転数にまで減速して出力軸25に伝達され、出力軸25の回転運動を直線往復運動に変換するために、駆動ユニット22にはラックアンドピニオン式の動力変換機構26が設けられている。動力変換機構26は出力軸25に固定されるピニオンギヤ27とピニオンギヤ27に噛み合うラック28とを有しており、ラック28は車体14に固定されたガイドレール29に支持されて略上下方向に直線往復動自在となっている。また、ラック28の上端部には連結ロッド31の一端が揺動自在に連結され、連結ロッド31の他端はテールゲート12に揺動自在に連結されており、これによりラック28の直線往復運動は連結ロッド31を介してテールゲート12の開閉運動に変換される。したがって、電動モータ23が作動して出力軸25が回転すると、その回転運動がピニオンギヤ27を介してラック28の直線往復運動に変換されるとともにテールゲート12の開閉運動に変換され、テールゲート12は自動開閉動作する。
【0025】
テールゲート12の開閉位置を検出するために、駆動ユニット22には電動モータ23の回転に比例したパルス信号を出力する図示しない回転センサが設けられており、この回転センサからのパルス信号をテールゲート12の基準位置(たとえば全閉位置)を基準としてカウントすることにより、制御装置24はテールゲート12の開閉位置を認識することができる。この場合、テールゲート12が基準位置となったときに検出信号を出力する図示しない基準位置センサが設けられ、基準位置センサからの検出信号を受けたときを起点としてパルス信号のカウントが開始される。そして、制御装置24は検出されたテールゲート12の開閉位置に基づいてテールゲート12の自動開閉動作を制御する。
【0026】
図3に示すように、テールゲート12の手動による開閉操作を可能とするために、電動モータ23とテールゲート12との間(図示する場合では出力軸25との間)の動力伝達経路には電磁クラッチ32が設けられている。この電磁クラッチ32は、電動モータ23に連動する図示しない駆動側の摩擦板とテールゲート12の開閉動作に連動する図示しない従動側の摩擦板およびこれらの摩擦板を圧着させるための電磁力を発生する図示しないクラッチコイルとを備えた摩擦式となっており、クラッチコイルに対する通電を制御することにより、テールゲート12と電動モータ23との間の動力伝達経路を断続することができる。
【0027】
電磁クラッチ32のクラッチコイルは図示しない配線を介して制御装置24に接続されており、電磁クラッチ32の作動制御は制御装置24により行われる。テールゲートが全閉位置や半ドア位置あるいは全開位置にあってその動作が停止しているときには、電磁クラッチは遮断状態とされており、この状態から図示しない開閉スイッチが操作されてテールゲート12の自動開閉動作が行われる際には、電磁クラッチ32は接続状態に切り替えられ、電動モータ23の動力がテールゲート12に伝達される。一方、テールゲート12が手動により開閉操作されるときには、電磁クラッチ32は遮断状態に切り替えられ、テールゲート12を電動モータ23から切り離してテールゲート12を手動で開閉操作する際の操作力を低減させる。
【0028】
図1、図2に示すように、テールゲート12の手動による開閉操作を補助するために、車体14とテールゲート12との間には開放補助力発生手段としての一対のガスステー33が車両11の開口の左右に装着されている。ガスステー33は内部にガスが封入された図示しないシリンダ機構を有しており、テールゲート12が所定開度以上、つまりニュートラル位置N以上に開いたときに内部ガス圧により伸長してテールゲート12を開方向に付勢する。これにより、テールゲート12を手動で開く際には、ニュートラル位置Nにまでテールゲート12を移動させれば、それ以降の範囲ではガスステー33の付勢力により操作力が軽減される。また、全開位置にまで開かれたときには、テールゲート12はガスステー33の付勢力により全開位置に保持される。一方、テールゲート12が所定開度以下、つまりニュートラル位置N以下にまで閉じられた場合には、ガスステー33の付勢力はテールゲート12の自重を下回り、テールゲート12は自重により閉方向に付勢される。
【0029】
図4は図1および図2に示すテールゲートを車両後方側から見た斜視図であり、図5はテールゲートの閉鎖認識範囲と開放認識範囲を概略で示す説明図である。
【0030】
図4に示すように、テールゲート12の下端部にはロック機構34が設けられており、全閉位置にあるテールゲート12はこのロック機構34により全閉位置に保持される。ロック機構34は、全閉位置に保持されるテールゲート12を自動的にアンラッチ状態つまりロックを解除した状態にまで移行させる図示しないリリーサ機構と、開いた状態から半ドア位置にまで閉じられたテールゲート12を自動的に全閉位置にまで引き込む図示しないクローザ機構とを有しており、リリーサ機構とクローザ機構はテールゲート12の自動開閉動作に連動して制御装置24によりその作動が制御される。
【0031】
また、テールゲート12の後方面には開閉操作部としてのアウターハンドル35が設けられており、テールゲート12が全閉位置あるいは半ドア位置にあるときにアウターハンドル35が運転者等の操作者により操作されると、ロック機構34が解除されてテールゲート12を手動で開閉操作することができる。
【0032】
アウターハンドル35には図示しない操作スイッチが設けられており、操作者によりアウターハンドル35が操作されると操作スイッチから操作信号が出力され、その操作信号は図示しない配線を介して制御装置24に入力される。テールゲート12が全閉位置あるいは半ドア位置にあるときに操作スイッチからの操作信号が制御装置24に入力されると、制御装置24によりリリーサが駆動されてロック機構34はアンラッチ状態に切り替えられる。このとき、テールゲート12は自動開閉動作されておらず、電磁クラッチ32は遮断状態とされているので、テールゲート12の手動による開閉操作が可能となる。このように、テールゲート12が閉じられている状態のときにアウターハンドル35を操作することにより、ロック機構34を解除して手動によりテールゲート12を開閉操作することができる。
【0033】
また、手動により開閉操作されるテールゲート12が閉鎖認識範囲R1と開放認識範囲R2との間の途中位置にあるときには、アウターハンドル35の操作により電磁クラッチ32は接続状態と遮断状態とに切り替えられる。つまり、テールゲート12が閉鎖認識範囲R1と開放認識範囲R2との間の途中位置にあるときにはアウターハンドル35を操作することにより電磁クラッチ32を断続することができる。
【0034】
ここで、閉鎖認識範囲R1は、図5に示すように、全閉位置から半ドア位置までの範囲つまりテールゲート12が閉鎖されていると制御装置24に認識される範囲に設定され、開放認識範囲R2は全開位置から所定範囲内の範囲つまりテールゲート12が開放されていると制御装置24に認識される範囲であって、自動閉作動を指令可能な範囲に設定されている。
【0035】
したがって、電磁クラッチ32が遮断状態とされた状態のもとで手動により開閉操作されるテールゲート12が途中位置にあるときにアウターハンドル35を操作すれば、電磁クラッチ32を接続状態に切り替えてガスステー33の付勢力に抗してテールゲート12を途中位置で保持させることができる。また、アウターハンドル35を操作して電磁クラッチ32を接続状態に切り替えてテールゲート12を途中停止させた後に、再度アウターハンドル35を操作することにより、電磁クラッチ32を遮断状態に切り替えてテールゲート12を再度手動により開閉操作できる状態とすることができる。
【0036】
このように、テールゲート12が途中位置にあるときには、操作者はアウターハンドル35を操作することにより、電磁クラッチ32を接続状態と遮断状態とに切り替えて、テールゲート12の手動開閉操作と途中停止とを行うことができる。
【0037】
一方、電磁クラッチ32が遮断状態とされた状態のもとでテールゲート12が閉鎖認識範囲R1あるいは開放認識範囲R2にあるときには、アウターハンドル35が操作されても制御装置24は電磁クラッチ32を接続状態に切り替えず、遮断状態に維持するようになっている。これにより、全閉位置にあるテールゲート12を手動で開閉操作する際にアウターハンドル35を操作してロック機構34を解除しても、アウターハンドル35の操作により電磁クラッチ32が接続状態に切り替えられることがなく、単一の操作部つまりアウターハンドル35により、テールゲート12の手動開閉操作や途中停止操作を容易に行うことができる。
【0038】
このように、この開閉装置21では、テールゲート12が閉鎖認識範囲R1と開放認識範囲R2との間の途中位置にあるときにはアウターハンドル35の操作により電磁クラッチ32の断続を可能とするとともに、テールゲート12が閉鎖認識範囲R1あるいは開放認識範囲R2にあるときにはアウターハンドル35が操作されても電磁クラッチ32を遮断状態に維持するようにしたので、自動閉作動を指令するスイッチと共用化でき、単一のアウターハンドル35によりテールゲート12の手動による開閉操作や途中停止を可能として、手動によるテールゲート12の開閉操作性を向上させることができる。また、単一のアウターハンドル35によりテールゲート12の手動開閉や途中停止、保持解除の操作を行うことができるので、これらを別々の操作部により行う場合に比して、その誤操作を低減させることができる。
【0039】
図6(a)、(b)は、それぞれ途中位置に保持されたテールゲートを停止位置に保持するための制御を説明するための説明図であり、移動検出手段としての制御装置24は、アウターハンドル35の操作により途中停止したときのテールゲート12の停止位置Sを回転センサからのパルス信号のカウント値として記憶するとともに、その停止位置Sを基準としたパルス信号のカウントにより、テールゲート12の停止位置Sからの開閉方向への移動を検出するようになっている。
【0040】
そして、アウターハンドル35の操作により電磁クラッチ32が接続状態に切り替えられた状態のもとで、テールゲート12が停止位置Sから開閉方向に移動したことを検出したときには、制御装置24は電動モータ23を作動させてテールゲート12を移動した分だけ戻すようにしている。つまり、図6(a)に示すように、テールゲート12がニュートラル位置Nより上方つまり開側で途中停止され、ガスステー33の付勢力により上方つまり開方向に移動したときには、制御装置24は電動モータ23を作動させることによりテールゲート12を下方つまり閉方向に移動させるダウン制御をして、テールゲート12を元の停止位置Sにまで自動閉動作させる。反対に、図6(b)に示すように、テールゲート12がニュートラル位置Nより下方で途中停止され、自重により下方つまり閉方向に移動したときには、制御装置24は電動モータ23を作動させることによりテールゲート12を上方つまり開方向に移動させるアップ制御をして、テールゲート12を元の停止位置Sまで自動開動作させる。これにより、テールゲート12は、ガスステー33の付勢力や自重に抗して、常に停止位置Sに保持されることになる。
【0041】
このように、この開閉装置21では、ガスステー33の付勢力やテールゲート12の自重により途中停止するテールゲート12が停止位置Sから開閉方向に移動したときには、電動モータ23を作動させてテールゲート12を移動した分だけ戻すようにしたので、ガスステー33が装着されたテールゲート12を途中位置に確実に保持させて、テールゲート12が不意に開閉方向に移動することを防止することができる。
【0042】
電磁クラッチ32は、クラッチコイルに通電されることにより接続状態に切り替えられるので、テールゲート12が長時間に渡って途中位置で保持されると、車両11に搭載される図示しない電源つまりバッテリが消耗するおそれがある。そのため、この開閉装置21では、アウターハンドル35が操作されて電磁クラッチ32が接続状態に切り替えられた状態のまま所定時間以上経過したときには、テールゲート12を保持解除動作させて途中停止を解除するようにしている。
【0043】
保持解除動作として行われる動作としては、所定時間経過後に自動的に電磁クラッチ32を遮断状態に切り替えて手動によりテールゲート12を全閉位置あるいは全開位置にまで移動させる手動操作と、所定時間経過後に自動的にテールゲート12を自動閉動作させて全閉位置にまで移動させる自動閉動作と、所定時間経過後に自動的にテールゲート12を自動開動作させて全開位置にまで移動させる自動開動作とが有り、これらの動作の中から予め選択された動作が行われる。たとえば、保持解除動作として手動操作が選択されたときには、テールゲート12が途中位置で保持されてから所定時間経過したときに電磁クラッチ32は自動的に遮断状態に切り替えられる。このとき、操作者による手動操作が行われない場合を考慮して、電磁クラッチ32を遮断状態に切り替えたときにテールゲート12の全閉位置に向けての落下が検出されたときには、たとえば電磁クラッチ32を断続的に接続する等の落下検知制御を行って、急激にテールゲート12が閉じられることを防止するようにしている。このような保持解除動作により、電磁クラッチ32が接続状態に切り替えられてから所定時間経過した後には、テールゲート12は全閉位置あるいは全開位置にまで移動され、電磁クラッチ32は遮断状態に切り替えられることになる。
【0044】
このように、この開閉装置21では、電磁クラッチ32が接続状態に切り替えられてから所定時間経過したときには、保持解除動作によりテールゲート12を全閉位置あるいは全開位置に移動させて、電磁クラッチ32を遮断状態に切り替えるようにしたので、電磁クラッチ32を接続状態に維持することによる電力消費を抑制してバッテリの消耗を抑制することができる。
【0045】
図7はテールゲートを途中位置で保持させる制御を示すフローチャート図であり、図8はテールゲートの途中停止を解除する制御を示すフローチャート図であり、以下に、これらのフローチャート図に基づいて開閉装置21の制御について説明する。
【0046】
まず、ステップS1においてテールゲート12が自動開閉動作中であるかが判断されるとともに、ステップS2においてクローザ機構やリリーサ機構が作動中であるかが判断され、これらのいずれも作動中でないと判断されると、ステップS3においてテールゲート12が全閉位置あるいは半ドア位置に有るか否かが判断される。ステップS3においてテールゲート12が全閉位置あるいは半ドア位置にあると判断されると、ステップS4において、アウターハンドル35の操作スイッチ(アウターハンドルSW)がONされたか、つまりアウターハンドル35が操作されたか否かが判断され、アウターハンドル35が操作されたと判断されると、ステップS5においてロック機構34が解除され、ステップS6においてロック機構34の解除が完了したか否かが判断される。
【0047】
ロック機構34が解除されると、テールゲート12は手動による開閉操作が可能な状態となり、ステップS7においてテールゲート12は手動で任意の位置に移動される。ステップS7においてテールゲート12が手動により開閉操作されると、ステップS8〜S10において、テールゲート12の自動開閉動作が開始されたか、テールゲート12が半ドア位置にあるか、図示しないセレクトレバーがP(駐車)レンジ以外あるいは車両11に車速があるかが判断され、これらのいずれにも該当しないと判断された場合には、ステップS11においてアウターハンドル35が操作されたか否かが判断される。そして、ステップS11においてアウターハンドル35が操作されたと判断されると、ステップS12においてテールゲート12が保持許可範囲内つまり閉鎖認識範囲R1と開放認識範囲R2との間の途中位置に有るか否かが判断され、ステップS12においてテールゲート12が保持許可範囲内にあると判断されると、ステップS13において警告音の吹鳴と警告表示が成された後、ステップS14において電磁クラッチ32が接続状態つまりONに切り替えられる。これにより、テールゲート12はガスステー33や自重による付勢力に抗して途中位置で保持される。
【0048】
なお、ステップS1,S2およびステップS8〜S10のいずれかに該当すると判断された場合には、ルーチンは終了される。なお、図7、図8に示される結合子1〜4は、それぞれ同一の符号間でルーチンが連続していることを示している。
【0049】
一方、テールゲート12が途中位置に保持されてからの制御は、図8に示すフローチャートにしたがって行われる。まず、図7に示す制御により、電磁クラッチ32が接続状態に切り替えられると、ステップS15においてアウターハンドル35が操作されたか否かが判断され、ステップS15においてアウターハンドル35が操作されたと判断された場合には、ステップS16において警告音の吹鳴と警告表示が成された後、ステップS17において電磁クラッチ32が遮断状態つまりOFFに切り替えられる。これにより、テールゲート12は手動による開閉操作が可能な状態とされ、ステップS18においてテールゲート12は手動で任意の位置に移動される。そして、ステップS19においてテールゲート12の自動開閉動作が開始されたと判断され、あるいはステップS20においてテールゲート12が半ドア位置にあると判断されるとルーチンが終了される。一方、ステップS20においてテールゲート12が半ドア位置ではないと判断された場合には、ルーチンはステップS7にリターンされ、テールゲート12を再度途中停止させることが可能とされる。
【0050】
ステップS15においてアウターハンドル35が操作されていないと判断された場合には、ステップS21において電磁クラッチ32が接続状態に切り替えられてから所定時間経過したか否かが判断され、所定時間経過したと判断された場合には、ステップS22において警告音の吹鳴と警告表示が成された後、ステップS23〜S25において選択される保持解除動作が行われる。つまり、保持解除動作としてステップS23の手動操作が選択されたときには、ステップS26において電磁クラッチ32がOFFされ、ステップS27においてテールゲート12の落下が検知されないときにはルーチンは終了する。一方、ステップS27においてテールゲート12の落下が検知されたときにはステップS28において落下検知制御が行われた後、ルーチンは終了する。また、保持解除動作としてステップS24の自動閉動作あるいはステップS25の自動開動作が選択されたときには、それぞれステップS29あるいはステップS30においてテールゲート12は自動閉動作あるいは自動開動作され、ルーチンは終了する。また、保持解除動作としてステップS23〜S25のいずれもが選択されない場合には、ステップS31において、その他の保持解除動作あるいはステップS23〜S25のいずれかの保持解除動作が行われる。
【0051】
一方、ステップS21において電磁クラッチ32が接続状態に切り替えられてから所定時間経過していないと判断された場合には、ステップS32においてテールゲート12が開閉方向に移動しているか否かが判断され、テールゲート12が移動していると判断された場合には、ステップS33において移動方向がアップ側つまり開方向か否かが判断される。そして、ステップS33においてテールゲート12がアップ側つまり全開位置側に移動していると判断された場合には、ステップS34においてテールゲート12はダウン制御つまり電動モータ23により閉方向に駆動され、元の停止位置Sに戻される。また、ステップS33においてテールゲート12がダウン側つまり全閉位置側に移動していると判断された場合には、ステップS35においてテールゲート12はアップ制御つまり電動モータ23により開方向に駆動され、元の停止位置Sに戻される。そして、ステップS36において予め規定された回数以上にアップ制御あるいはダウン制御が成されたと判断された場合には、ルーチンはステップS22に飛ばされ、ステップS23〜S25における保持解除動作がされた後、ルーチンは終了される。
【0052】
また、ステップS32においてテールゲート12が移動していないと判断された場合には、ステップS37においてセレクトレバーがPレンジ以外あるいは車両11に車速が有ると判断されるまでルーチンは繰り返され、ステップS37においてセレクトレバーがPレンジ以外あるいは車両11に車速が有ると判断されると、ルーチンはステップS22に飛ばされ、ステップS23〜S25における保持解除動作がされた後、ルーチンは終了される。
【0053】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、本実施の形態においては、開閉体は車両11の後端部に設けられたテールゲート12とされているが、これに限らず、ヒンジ13を介して上下方向に開閉自在に車体14に装着される開閉体であれば、たとえばセダン車等に設けられるトランクリッドであってもよい。
【0054】
また、本実施の形態においては、開閉操作部はテールゲート12の後端面に設けられたアウターハンドル35とされているが、これに限らず、たとえば、テールゲート12の下端部に設けられて開放認識範囲にあるテールゲート12を自動閉動作させるためのクローズスイッチを開閉操作部として用いるようにしてもよい。
【0055】
さらに、本実施の形態においては、開放補助力発生手段としては、車体14とテールゲート12との間に装着される一対のガスステー33が用いられているが、これに限らず、ガスステー33は車両11の開口の一方側にだけ設けても良く、また、トーションバー等を用いるようにしてもよい。
【0056】
さらに、本実施の形態においては、クラッチとしては摩擦式の電磁クラッチ32が用いられているが、これに限らず、電動モータ23とテールゲート12の間の動力伝達経路を断続することができるものであれば、他の形式のクラッチを用いるようにしてもよい。また、クラッチは電動モータ23と出力軸25との間に限らず、テールゲート12と電動モータ23との間に設けられていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施の形態である車両用自動開閉装置が設けられた車両の後端部を示す側面図である。
【図2】図1に示す車両のテールゲートが開かれた状態を示す側面図である。
【図3】図2に示す駆動ユニットの詳細を示す正面図である。
【図4】図1および図2に示すテールゲートを車両後方側から見た斜視図である。
【図5】テールゲートの閉鎖認識範囲と開放認識範囲を概略で示す説明図である。
【図6】(a)、(b)は、それぞれ途中位置に保持したテールゲートを停止位置に保持するための制御を説明するための説明図である。
【図7】テールゲートを途中位置で保持させる制御を示すフローチャート図である。
【図8】テールゲートの途中停止を解除する制御を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0058】
11 車両
12 テールゲート
13 ヒンジ
14 車体
14a ルーフ部
14b ピラー部
21 車両用自動開閉装置
22 駆動ユニット
23 電動モータ
24 制御装置
25 出力軸
26 動力変換機構
27 ピニオンギヤ
28 ラック
29 ガイドレール
31 連結ロッド
32 電磁クラッチ
33 ガスステー
34 ロック機構
35 アウターハンドル
N ニュートラル位置
R1 閉鎖認識範囲
R2 開放認識範囲
S 停止位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジを介して上下方向に開閉自在に車体に装着される開閉体を自動的に開閉する車両用自動開閉装置であって、
前記開閉体を開閉駆動する駆動源と、
前記開閉体に設けられ、操作者により操作される開閉操作部と、
前記車体と前記開閉体との間に装着され、前記開閉体を開方向に付勢する開放補助力発生手段と、
前記開閉体と前記駆動源との間に設けられ、前記開閉操作部の操作により前記開閉体と前記駆動源との間の動力伝達経路を断続するクラッチとを有し、
前記クラッチが遮断状態とされた状態のもとで前記開閉体が全閉位置から半ドア位置までの閉鎖認識範囲あるいは全開位置から所定範囲内の開放認識範囲にあるときには、前記開閉操作部が操作されても前記クラッチを遮断状態に維持することを特徴とする車両用自動開閉装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用自動開閉装置において、前記開閉体は所定開度以上に開いたときに前記開放補助力発生手段により開方向に付勢され、所定開度以下のときには自重により閉方向に付勢されることを特徴とする車両用自動開閉装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両用自動開閉装置において、前記開閉操作部の操作により前記クラッチが接続状態に切り替えられた状態のまま所定時間経過したときには、前記開閉体を保持解除動作させることを特徴とする車両用自動開閉装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用自動開閉装置において、前記開閉体の開閉方向への移動を検出する移動検出手段を備え、前記開閉操作部の操作により前記クラッチが接続状態に切り替えられた状態のもとで前記開閉体が開閉方向へ移動したことが前記移動検出手段により検出されたときには、前記駆動源を作動させて前記開閉体を移動した分だけ戻すことを特徴とする車両用自動開閉装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用自動開閉装置において、前記開閉操作部の操作により前記クラッチが接続状態に切り替えられた後に再度前記開閉操作部が操作されたときには、前記クラッチを遮断状態に切り替えることを特徴とする車両用自動開閉装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−265982(P2006−265982A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−87596(P2005−87596)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】