説明

車速連動式散布機

【課題】
走行車輪の回転に準じて繰出インペラーが回転するようにしてタンク内の散布物を吐出するようにすることにより、作業者が例え未熟、経験の浅い者であっても散布量のバラツキはなく、計算通りの面積当たりの散布量を全域にわたって均一に散布できる車速連動式散布機を得る。
【解決手段】
走行車輪1を備え、この走行車輪1の回転に準じて繰出インペラー9が回転するようにしてタンク4内の散布物を吐出するようにしてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車輪を備えた車速連動式散布機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の散布機は、走行(散布)スピードに合わせて吐出量が変化しないために、予め計算してある吐出量を走行(散布)スピードに合わせて手動により段階的に切り変え、面積当たりの散布量をトータル的な散布量となるように作業者の目測や感に頼った散布を行っている。また、繰出インペラーを有しない散布機においては、シャッターの開度による吐出量の変化と走行(散布)スピードを複雑な計算あるいは目測や感に頼って散布を行っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
解決しようとする問題は、かかる従来のものでは前記したように走行(散布)スピードに合わせて行う吐出量の調節、または吐出量に合わせた走行(散布)スピードの変化を作業者の目測や感に頼っているので、作業者が未熟、経験の浅い者である場合には定められた面積当たりの散布量が散布できないために散布による効果が弱まったり、散布量の過剰によって害になったりすることもあるし、また従来の一般的な変速機のその多段変速機構は2軸、3軸構造であるために、大きなスペースを必要として全体が大きくなり高価かつ重量が重くなるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、走行車輪を備え、この走行車輪の回転に準じ繰出インペラーが回転してタンク内の散布物を吐出するようにしたものであって、前記走行車輪と繰出インペラーとの間に内部に多段変速機構を有する内装式多段変速機を備えかつこの内装式多段変速機を、一端側に突出して前記走行車輪に接続される入力軸と、他端側に突出して前記繰出インペラーに接続される出力軸と、前記多段変速機構の切換操作を外部から行うための変速レバーとで構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、走行(散布)スピードの変化に比例して吐出量が変る車速連動型とすることにより、作業者が例え未熟、経験の浅い者であっても散布量のバラツキがなく、計算通りの面積当たりの散布量を全域にわたって均一に(適量)散布できるし、また繰出インペラーの回転数を変えて吐出量を変更調節する変速機構をコンパクトな内装式多段変速機とすることにより、小型で多段でかつ多段階の切換えが容易にできて安価になるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
走行車輪を備え、この走行車輪の回転に準じ繰出インペラーが回転してタンク内の散布物を吐出するようにすると共に、前記走行車輪と繰出インペラーとの間に内部に多段変速機構を有する内装式多段変速機を備えることにより、実現した。
【実施例1】
【0007】
図1は本発明の一実施例を示す側面図、図2は図1を正面からみた図、図3は内装式多段変速機を示す外観斜視図である。
【0008】
図において、1は車体枠2に装備した走行車輪、3は車体枠2に連設した操作ハンドル、4は車体枠2に搭載した粉剤タンク、5は粉剤タンク4の落下口に連設した繰出機構、6は繰出機構5の吐出側に設けた拡散部材、7は繰出機構5の繰出インペラーで、走行車輪1の回転が内装式多段変速機8を介して伝動されてこれが走行車輪1の回転に準じて回転するようになっている。
【0009】
内装式多段変速機8は、内部に多段変速機構を有しかつその一端側に突出する入力軸(図示せず)に連設される変速機取付ネジ8aと、前記入力軸に設けた入力側スプロケット8bと、他端側に突出する出力軸(図示せず)に連設される変速機取付ネジ8cと、前記出力軸に設けた出力側スプロケット8dとで構成されている。なお、この内装式多段変速機8の多段変速機構の切換操作は、操作ハンドル3側に設けた変速レバー9によりワイヤー9aを介して行うようになっている。
【0010】
この内装式多段変速機8は、両端側の変速機取付ネジ8a,8cをそれぞれ支持金具10により支持されて車体枠2に取り付けられると共に、入力側スプロケット8bはチェーン11により走行車輪1の軸に接続されかつ出力側スプロケット8dはチェーン12により繰出インペラー7の軸に接続されている。なお、内装式多段変速機8には、図示しないがラチェット機構を装着してある。
【0011】
このような構成状態では、両変速機取付ネジ8a,8cで表される入力軸と出力軸とが走行車輪1の軸と平行で繰出インペラー7の軸とも平行となる軸機構となっているので、走行車輪1の軸動力を内装式多段変速機8の入力側スプロケット8bへ、または内装式多段変速機8の出力側スプロケット8dの軸動力を繰出インペラー7の軸へ動力を伝達することが容易になる。
【0012】
本機(手押し一輪車)は、例えば畦道を走行しながらその走行中に走行車輪1の回転と同調して両チェーン11,12及び内装式多段変速機8を介して回転する繰出インペラー7により拡散部材6から左右両側に散布して、左右両側にある色々な作物の裾に散布物(粒状肥料)を散布する。
【0013】
その際に、走行(散布)スピードは手押しということもあって大幅に変化するが、走行車輪1の回転数に準じて繰出インペラー7の回転数が同調するので、走行(散布)スピードの変化に関係なく拡散部材6からの面積当たりの散布量は常時同じになる。
【0014】
本機が停止すれば繰出インペラー7も走行車輪1の停止に伴って停止して自動的に散布しなくなるので、シャッターが不要になるし、再度走行すれば同じく繰出インペラー7も走行車輪1の回転に伴って回転して自動的に散布するようになる。
【0015】
そして、本機が後退することがあれば、内装式多段変速機8のラチェット機構が自動的に働いて繰出インペラー7に走行車輪1の回転が伝わらず繰出インペラー7が回転しないので、後退中に散布がなされず、無駄かつ過剰な後退中の散布がなくなる。
【0016】
今、繰出インペラー7の回転数を変えて吐出量の変更調節をするときには、変速レバー9を操作ハンドル3の手元で切り換えれば良いのであるが、変速レバー9の切り換えは多段変速機構の多段階の広範な変速になるので、好みの吐出量の選択(切換え)が容易に行える。しかもこの内装式多段変速機8はコンパクトにまとまっているので、小型で多段でかつ多段階の切換えが容易にできて安価になるものである。
【0017】
上記実施例では、変速レバー9を操作ハンドル3側に設けてレバーの操作性を上げるようにしたものを示したが、レバー操作は内装式多段変速機8の部分(例えば図3のワイヤー9aの部分)で行っても良い。
【実施例2】
【0018】
前記実施例1では本機を一輪車として説明したが、走行車輪1の数はその駆動方式によっても左右されるので何個でも良いし、例えば前記実施例1と同じ手押しタイプのものであれば前後二輪車にすれば、一輪車に比べて車体枠2の走行安定性が得られるので作業性が良くなる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、車輪で走行するタイプの散布機に広く活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1を示す側面図である。
【図2】図1を正面からみた図である。
【図3】内装式多段変速機を示す外観斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1:走行車輪
2:車体枠
3:操作ハンドル
4:粉剤タンク
5:繰出機構
6:拡散部材
7:繰出インペラー
8:内装式多段変速機
8a:変速機取付ネジ
8b:入力側スプロケット
8c:変速機取付ネジ
8d:出力側スプロケット
9:変速レバー
9a:ワイヤー
10:支持金具
11:チェーン
12:チェーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車輪を備え、この走行車輪の回転に準じ繰出インペラーが回転してタンク内の散布物を吐出するようにした車速連動式散布機であって、
前記走行車輪と繰出インペラーとの間に内部に多段変速機構を有する内装式多段変速機を備えかつこの内装式多段変速機を、一端側に突出して前記走行車輪に接続される入力軸と、他端側に突出して前記繰出インペラーに接続される出力軸と、前記多段変速機構の切換操作を外部から行うための変速レバーとで構成したことを特徴とする車速連動式散布機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−191807(P2006−191807A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3915(P2005−3915)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年10月31日 日本茶業技術協会発行の「茶業研究報告 第98号(別冊)」に発表
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(303060354)有限会社東製作所 (6)
【Fターム(参考)】