説明

軸流型脱穀装置

【課題】 軸流型の扱胴を前後に軸支した扱室の下方に、受網から漏下した処理物を選別ケースで受止めて揺動風選処理する選別部を配備した軸流型脱穀装置において、穀粒回収効率が高く、かつ、排出ワラ屑の細断処理を良好に行うことができるようにする。
【解決手段】 選別ケース20に、受網18から漏下してきた処理物を受ける粗選別用チャフシーブ33、粗選別用チャフシーブ33を漏下した処理物を受ける精選別用のグレンシーブ35を配備するとともに、選別ケース20の後部上方箇所に排出用チャフシーブ37を配備し、この排出用チャフシーブ37の後端を粗選別用チャフシーブ33の搬送面より高く位置させて選別部後端の排塵口23に臨設してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸流型の扱胴を前後に軸支した扱室の下方に、受け網を漏下した処理物を選別ケースで揺動風選処理する選別部を配備した軸流型脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軸流型脱穀装置の選別部の構造としては、例えば、特許文献1に開示されているように、選別ケースの前部に受網の前部から漏下した処理物を後方に揺動移送する波板状のグレンパン、グレンパンの終端に至った処理物および受網の前後中間部位から漏下した処理物を後方に揺動移送しながら篩い選別する粗選別用チャフシーブ、この粗選別用チャフシーブを漏下してきた処理物を篩い選別する精選別用のグレンシーブ、前記粗選別用チャフシーブの終端に至った処理物および受網の後部から落下してきた処理物を後方に揺動移送しながら処理物の絡みをほぐすストローラック、および、ストローラックでほぐされて落下した処理物、グレンシーブの終端に至った処理物、等を揺動移送しながら篩い選別する後部チャフシーブを装備したものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−103148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構造の選別部においては、グレンシーブで漏下しなかったワラ屑類を後部チャフシーブに受け渡して移送するために、後部チャフシーブの前端をグレンシーブの終端に近接させるとともに、グレンシーブの搬送面と後部チャフシーブの搬送面とが略同直線的に連なるように、後部チャフシーブがゆるい傾斜をもって配置されている。このために、ゆるい傾斜の後部チャフシーブで搬送される処理物は搬送抵抗少なく円滑に後方移送されるが、その反面、後部チャフシーブでの滞留時間が短くなってワラ屑類に紛れ込んだ穀粒が落下回収されることなく排塵口に送られてしまいやすくなる。
【0005】
また、後部チャフシーブがゆるい傾斜姿勢で配備されることで、後部チャフシーブの終端位置が低いものとなり、後部チャフシーブで搬送されたワラ屑類が排塵口の低い位置から排出されることになる。このため、排塵口の後方に回転チョッパなどの細断装置が散布性能を高めるために高く配備された場合、排塵口の低い位置から回転チョッパに供給されたワラ屑は充分な細断作用を受けることなく短絡通過しやすくなる。
【0006】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、穀粒回収効率が高く、かつ、ワラ屑の細断処理を良好に行うことができるようにすることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、軸流型の扱胴を前後に軸支した扱室の下方に、受網から漏下した処理物を選別ケースで受止めて揺動風選処理する選別部を配備した軸流型脱穀装置において、
前記選別ケースに、受網から漏下してきた処理物を受ける粗選別用チャフシーブ、粗選別用チャフシーブを漏下した処理物を受ける精選別用のグレンシーブを配備するとともに、選別ケースの後部上方箇所に粗選別用チャフシーブからの処理物を受ける排出用チャフシーブを配備し、この排出用チャフシーブの後端を粗選別用チャフシーブの搬送面より高く位置させて選別部後端の排塵口に臨設してあることを特徴とする。
【0008】
上記構成によると、粗選別用チャフシーブの搬送面は後上がり傾斜角度が比較的きついものとなるので、この粗選別用チャフシーブにおける処理物の滞留時間が長くなり、ワラ屑類にきつく絡み込んだ穀粒が揺動移送中に分離回収される機会が高まる。
【0009】
従って、第1の発明によると、ワラ屑類と共に穀粒が排出されることを抑制して、穀粒回収効率の高い脱穀選別処理を行うことができる。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記排出用チャフシーブの後端を前記選別ケースの上端と略同じ高さに設定してあるものである。
【0011】
上記構成によると、排出用チャフシーブの後端をできる限り高い位置に配置することができ、第1の発明を好適に実施することができる。
【0012】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、
前記粗選別用チャフシーブの後方に、粗選別用チャフシーブの後端から処理物を受け取るストローラックを配備し、このストローラックの下方に前記排出用チャフシーブの前部を入り込ませてあるものである。
【0013】
上記構成によると、粗選別用チャフシーブの後端に到達した処理物に強く絡まった塊があっても、ストローラックによる揺動移送中に解して排出用チャフシーブに受け渡すことができ、排出用チャフシーブにおける穀粒の分離回収を一層効率良く行うことができる。
【0014】
第4の発明は、上記第1〜3のいずれか一つの発明において、
前記排塵口の後方に、排出されてきたワラ屑を細断処理する回転チョッパを配備してあるものである。
【0015】
上記構成によると、排出用チャフシーブによって送られたワラ屑類を高い位置から排塵口に送り出して回転チョッパに投入することができ、細断ワラ屑の散布性能を高めるために回転チョッパが高い位置に配備されていても、高い位置からの投入によって充分な細断作用をワラ屑類に与えることができ、切り残しのない良好な細断を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に、本発明に係る軸流脱穀装置を搭載したコンバインの全体側面が、また、図2に、その全体平面がそれぞれ示されている。このコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2にキャビン付きの運転部3、全稈投入式に構成された軸流型脱穀装置4、および、アンローダ5を備えた穀粒タンク6が搭載されるとともに、軸流型脱穀装置4の前部に支点p周りに上下揺動自在に刈取り作物搬送用のフィーダ7が配備され、このフィーダ7の前端に機体横幅と略同幅の刈幅を有する刈取り部8が連結された構造となっている。
【0017】
前記刈取り部8には、バリカン型の刈取り装置9と、刈り取った作物を横送りして前記フィーダ7の始端部に送り込むオーガ10が備えられており、フィーダ7と走行機体2との間に架設された油圧シリンダ11の伸縮作動によって刈取り部8がフィーダ7と一体に揺動昇降されるようになっている。また、刈取り部8の前部上方に、植立した作物を後方に掻き込む掻込みリール12が装備されている。
【0018】
図3に示すように、軸流型脱穀装置4の上半部には、扱歯15を螺旋状に植設した扱胴16が前後水平に軸支された扱室17が設けられるとともに、この扱室17の下方に沿って受網(コンケーブ)18が配備され、また、扱室17の下方には、受網18から漏下した処理物を1番物(精粒)、2番物、および、排塵とに選別する選別部19が配備されている。
【0019】
前記選別部19には、受網18から漏下した処理物を後方に揺動移送しながら篩い選別する選別ケース20が装備されるとともに、選別部19の前端部には選別ケース20に向けて選別風を供給する唐箕21が配備されており、また、軸流型脱穀装置4の後端には、扱室17の後端下部に形成された送塵口22から排出された大きいワラ屑類、および、選別部19の後端に形成された排塵口23から排出されたワラ屑類を細断処理する回転チョッパ24が配備されている。
【0020】
前記選別部19の下部には1番回収部25と2番回収部26がそれぞれ配備され、回収された1番物は横送りスクリュー27で搬送されて装置外に搬出された後、揚送装置28によって前記穀粒タンク6に送込まれ、また、回収された2番物は横送りスクリュー29で搬送されて装置外に搬出された後、還元装置30で搬送されて選別ケース20の前部に還元供給されるようになっている。
【0021】
図4に前記選別ケース20の詳細な構造が示されている。この選別ケース20は樹脂成形されたものであり、自脱型脱穀装置の選別部に使用されるものが多少改造されて流用されている。そして、この選別ケース20の前部には受網18の前部から漏下した処理物および還元された2番物を後方に揺動移送する波板状のグレンパン31、グレンパン31の終端に至った処理物をほぐす篩い線32、篩い線32の後端に至った処理物および受網18の前後中間部位から漏下した処理物を後方に揺動移送しながら篩い選別する粗選別用チャフシーブ33、篩い線32および粗選別用チャフシーブ33から漏下した処理物を篩い選別する精選別用のグレンパン34およびグレンシーブ35、前記粗選別用チャフシーブ33の終端に至った処理物および受網18の後部から落下してきた処理物を後方に揺動移送しながら処理物の絡みをほぐすストローラック36、および、ストローラック36から落下した処理物を後方に揺動移送しながら篩い選別して残ったワラ屑類を排塵口23に送り出す排出用チャフシーブ37がそれぞれ装備されている。
【0022】
前記グレンパン31はその揺動移送中に処理物をその比重差によって上下に層分けする、いわゆる比重差選別を行うものであり、比重の大きい穀粒類を下層に、比重の小さいワラ屑類を上層に分けて次の篩い線32に送り出すように構成されている。なお、このグレンパン31の上面には幅寄せ用リブ38が傾斜して設けられており、2番物の還元供給等によって機体右側に片寄りがちとなる処理物を後方移送しながら選別幅全体に分散させるようになっている。
【0023】
このようにグレンパン31によって凡そ上下2層に仕分けられた処理物が篩い線32上に移動すると、下層の穀粒類は直ちに落下してグレンパン34およびグレンシーブ35に供給され、また、篩い線32から落下しなかった上層のワラ屑類およびこれに紛れ込んでいる穀粒類が粗選別用チャフシーブ33に受け渡されてゆく。従って、扱室17の前部で多量に発生される穀粒の多くが早い段階で篩い線32を通ってグレンシーブ35に送り込まれ、2番回収部26への穀粒混入のない精度の高い選別が効率よく行われる。
【0024】
図5に示すように、粗選別用チャフシーブ33は、多数のリップ板33aを所定間隔をもって前後に配備して構成され、グレンパン31および篩い線32より一段低く配備されている。そして、各リップ板33aは、その上端の支点aを中心にして前後揺動可能に支持されるとともに、各リップ板33aの下端が前後に長い支持枠33bにそれぞれ枢支連結されており、支持枠33bの前後移動に連動して全部のリップ板33aの角度が変更されるようになっている。つまり、支持枠33bが前方に移動すると各リップ板33aの角度がゆるくなってチャフ開度が小さくなり、逆に、支持枠33bが後方に移動すると各リップ板33aの角度がきつくなってチャフ開度が大きくなるのである。そして、詳細な構造の説明は省略するが、このチャフシーブ33はチャフ開度が小さくなる方向にバネ付勢されており、受網18から漏下する処理物の量が多くなるに連れて、チャフ板33aが処理物の重量によって下方に揺動してチャフ開度が大きくなり、処理物の漏下が促進されてチャフシーブ33上での処理物滞留のない揺動移送が行われ、逆に、受網18から漏下する処理物の量が少なくなるに連れて、チャフ板33aがバネ付勢力によって上方に揺動されてチャフ開度が小さくなり、ワラ屑の漏下の少ない選別が行われれて選別精度が高められるようになっている。
【0025】
前記ストローラック36は、上辺を鋸歯形状に形成した後向き片持ち状の複数本のラック板36aを左右に並列配備して構成されており、粗選別用チャフシーブ33の終端に至ったワラ屑類の塊を後方に送りながらほぐすことで、これに絡み込んでいる穀粒を分離回収するものである。そして、このストローラック36は、その前端部が粗選別用チャフシーブ33の搬送面と略同等の高さ配置されるとともに、その後端が選別ケース20の上端近くに位置するよう後ろ上がり傾斜姿勢に配備されている。
【0026】
また、排出用チャフシーブ37は、複数のリップ板37aを所定間隔をもって前後に配備して構成されており、前記唐箕21からの選別風を後方上方に向けて案内するようにリップ板37aの傾斜角度が所定角度に固定されている。また、この排出用チャフシーブ37は、前記ストローラック36と略平行な後ろ上がり傾斜姿勢に配備されて、その前半部がストローラック36の下方に潜り込み配置されるとともに、その後端が選別ケース20の上端近くに配置され、搬送終端に至ったワラ屑を高い位置で排塵口23に送り出すようになっている。
【0027】
〔別実施例〕
【0028】
(1)前記ストローラック36を省略して、粗選別用チャフシーブ33から排出用チャフシーブ37へ直接に処理物を受け渡す形態で実施することもできる。
【0029】
(2)前記排出用チャフシーブ37におけるリップ板37aの角度を人為的に調節可能に構成して、排塵機能を調整できるようにして実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】コンバインの全体平面図
【図3】脱穀装置の縦断側面図
【図4】選別ケースの平面図
【図5】選別ケースの一部を拡大した縦断側面図
【符号の説明】
【0031】
16 扱胴
17 扱室
18 受網
19 選別部
20 選別ケース
23 排塵口
24 回転ンチョッパ
33 粗選別用チャフシーブ
35 グレンシーブ
36 ストローラック
37 排出用チャフシーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸流型の扱胴を前後に軸支した扱室の下方に、受網から漏下した処理物を選別ケースで受止めて揺動風選処理する選別部を配備した軸流型脱穀装置において、
前記選別ケースに、受網から漏下してきた処理物を受ける粗選別用チャフシーブ、粗選別用チャフシーブを漏下した処理物を受ける精選別用のグレンシーブを配備するとともに、選別ケースの後部上方箇所に粗選別用チャフシーブからの処理物を受ける排出用チャフシーブを配備し、この排出用チャフシーブの後端を粗選別用チャフシーブの搬送面より高く位置させて選別部後端の排塵口に臨設してあることを特徴とする軸流型脱穀装置。
【請求項2】
前記排出用チャフシーブの後端を前記選別ケースの上端と略同じ高さに設定してある請求項1記載の軸流型脱穀装置。
【請求項3】
前記粗選別用チャフシーブの後方に、粗選別用チャフシーブの後端から処理物を受け取るストローラックを配備し、このストローラックの下方に前記排出用チャフシーブの前部を入り込ませてある請求項1または2記載の軸流型脱穀装置。
【請求項4】
前記排塵口の後方に、排出されてきたワラ屑を細断処理する回転チョッパを配備してある請求項1〜3のいずれか一項に記載の軸流型脱穀装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−288235(P2006−288235A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111086(P2005−111086)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】