説明

軸間角度補正方法

【課題】 複数軸をもつ機械の軸間角度補正が高精度に且つ容易に行える方法の提供。
【解決手段】 機械16のテーブル12に置かれた一の基準球36上の指定移動軸方向位置での測定軸方向形状情報をテーブル12の直線移動により同一基準球36上の複数の異なる指定移動軸方向位置について取得する基準球測定工程(S10)と、該形状情報に基づき該基準球36の測定軸方向形状のピーク点での該センサー14よりの測定軸方向位置情報を各指定移動軸方向位置について求めるピーク検出工程(S12)と、該各ピーク点の位置情報に基づきテーブル12の実際の移動方向を表わす実直線情報を求める誤差情報取得工程(S14)と、該実直線情報に基づき補正用情報を求める補正用情報取得工程(S16)と、該補正用情報に基づき該センサー14よりの測定軸方向位置情報を補正する補正工程(S20)と、を備えたことを特徴とする軸間角度補正方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軸間角度補正方法、特に複数軸をもつ機械の軸間角度誤差に起因する位置情報の測定誤差を除去するための誤差測定手法、及び補正計算手法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、形状測定を行うため形状測定機が用いられる。形状測定の高精度化のためには誤差の低減が重要である。誤差にはいろいろな要因があるが、複数軸をもつ形状測定機においては、特に各軸運動誤差の低減が重要である。
【0003】
そこで、形状測定機においては、通常、その組み立て精度の向上により、各軸運動誤差の低減化が試みられる。
しかしながら、ワークの高精度化に伴って、測定機にもより高精度が要求される。現状では、例えば測定機のY軸テーブルのメカの組み立て精度は、20μm/200mm(0.0057度)以内が限界とされている。一方、非球面形状等の高精度なワークでは、より確かな直角度が要求される。
【0004】
このため高精度なワークを扱う機械においては、各軸運動誤差の更なる低減化が必要となるが、メカの組み立て精度向上による各軸運動誤差の低減化には前述のような限界があるので、更なる誤差低減化は困難である。
【0005】
また従来においては、運動誤差による影響の低減化を試みるため、校正用ゲージを基準に機械の各軸運動精度を測定することが行われている。
従来においては、誤差測定方法として、例えば機械のスケール誤差、真直度及び直角度を測定するものであるが、反転法による校正用ゲージの測定を行うものがある(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−302202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来方式でも、校正用ゲージの反転前後で、校正用ゲージの装置への位置決め、同一箇所の測定及び誤差計算が必要であるので、測定の容易化は改善の余地が残されていた。
また前記従来方式でも、誤差の測定結果に基づいて補正値を求め、測定値を補正するという考え方自体は存在するが、その具体的な補正計算方法は未だ確立されていない。
【0007】
したがって、複数軸をもつ機械の分野においては、より高精度に及び容易に軸間角度誤差に起因する測定誤差を低減することのできる技術の開発が急務であった。
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、複数軸をもつ機械の軸間角度補正を高精度に及び容易に行うことのできる軸間角度補正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが、複数軸をもつ機械の軸間角度補正の高精度化、容易化について鋭意検討を重ねた結果、まず以下に示されるような校正用ゲージの選択、誤差測定原理の選択、及びこれらの組み合わせが非常に重要であることに気付いた。
【0009】
すなわち、本発明者らは、機械の軸間角度補正を高精度及び容易に行うため、校正用ゲージとして数ある校正用ゲージの中から一の基準球を選択した。また本発明者らは、誤差測定原理として数ある原理の中から、測定軸に対してテーブルの実際の移動方向が正確に所望の角度であるならば、同一基準球上の複数の異なる移動軸方向位置での各ピーク点が、測定軸に対し正確に所望の角度をなす理想直線上に正確に一致するというものを選択した。
そして、本発明においては、前述のような校正用ゲージと誤差測定原理との有意義的な組み合わせにより、従来極めて困難であった、複数軸をもつ機械の軸間角度補正の更なる高精度化及び容易化を図ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、前記目的を達成するために本発明にかかる軸間角度補正方法は、テーブルと、センサーと、を備えた機械の測定軸に対するテーブル移動軸の角度誤差補正を行う軸間角度補正方法において、基準球測定工程と、ピーク検出工程と、誤差情報取得工程と、補正用情報取得工程と、補正工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
ここで、前記テーブルは、基準平面上に設けられた基準直線に対し該基準平面上において所望の角度をなすであろう移動軸に沿って該基準平面上を直線移動する。
また前記センサーは、前記基準平面上に設けられた基準直線である測定軸を有し、前記テーブル上に置かれる物体上の点の測定軸方向位置情報を得るためのものとする。
【0012】
前記基準球測定工程は、前記テーブル上に置かれた一の基準球上の指定移動軸方向位置で該基準球上を測定軸方向に走査して測定軸方向形状情報を取得する。該基準球測定工程は、該形状情報の取得を、前記テーブルの直線移動により、同一基準球上の複数の異なる指定移動軸方向位置について行う。
前記ピーク検出工程は、前記基準球測定工程で得られた測定軸方向形状情報に基づいて前記基準球上の指定移動軸方向位置での測定軸方向形状がピークとなるピーク点での、前記センサーよりの測定軸方向位置情報を検出する。該ピーク検出工程は、該ピーク点の検出を、前記同一基準球上の各指定移動軸方向位置について行う。
【0013】
前記誤差情報取得工程は、前記ピーク検出工程で求められた各ピーク点の位置情報に基づいて前記テーブルの実際の移動方向を表わす実直線を求める。誤差情報取得工程は、該テーブルの理想の移動方向を表わす理想直線に対する該実直線の傾きに関する情報を求める。
前記補正用情報取得工程は、前記誤差情報取得工程で求められた実直線の傾きに起因する、前記テーブルに置かれる物体上の点の測定軸方向位置に関する測定誤差を補正するための補正用情報を求める。
前記補正工程は、前記補正用情報取得工程で求められた補正用情報に基づいて、前記センサーよりの測定軸方向位置情報を補正する。
【0014】
ここにいう基準平面とは、軸間角度補正の要求精度よりも高精度な平面度を有するものをいう。
ここにいう基準直線は、軸間角度補正の要求精度よりも高精度な真直度を有するものをいう。
ここにいう基準球とは、軸間角度補正の要求精度よりも高精度な半径、及び真球度を有する高精度球をいう。本発明においては、基準球の中でも、テーブルへの配置の容易性等に優れている基準半球が特に好ましい。
【0015】
なお、本発明においては、前記測定軸に対し90度をなすであろう移動軸をもつ形状測定機テーブルの直角度補正を行うものである。
前記基準球測定工程は、前記形状測定機のセンサーにより、前記テーブル上に置かれた一の基準球上の指定移動軸方向位置で基準球上を測定軸方向に走査して測定軸方向形状情報を取得する。該基準球測定工程は、該形状情報の取得を、前記テーブルの直線移動により同一基準球上の複数の異なる指定移動軸方向位置について行う。
【0016】
前記誤差情報取得工程は、前記測定軸に対し90度をなす理想直線に対する前記実直線の傾きに関する情報を求める。
前記補正工程は、前記補正用情報取得工程で求められた補正用情報に基づいて、前記センサーよりの測定軸方向位置情報を補正し、前記形状測定機テーブルの直角度補正を行うことが好適である。
【0017】
本発明において、前記補正用情報取得工程は、前記誤差情報取得工程で求められた実直線の傾き情報及び各ピーク点の位置情報に基づいて、補正後の測定軸方向位置情報を得るための数式情報(補正後の測定軸方向位置情報=前記センサーよりの測定軸方向位置情報−前記実直線の傾き情報*移動軸方向位置情報+前記各ピーク点の位置情報に基づいて定められた定数情報)を求める。
前記補正工程は、前記センサーよりの測定軸方向位置情報、及び前記移動軸方向位置情報を、前記補正用情報取得工程で求められた数式情報に代入し、該センサーよりの測定軸方向位置情報を補正することが好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかる軸間角度補正方法によれば、前記誤差測定原理に基づいて、前記基準球測定工程と、前記ピーク検出工程と、前記補正用情報取得工程と、を組み合わせることとしたので、複数軸をもつ機械の軸間角度補正を、より高精度に及び容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施形態について説明する。
図1には本発明の一実施形態にかかる軸間角度補正方法を行うための軸間角度補正装置の概略構成が示されている。なお、図1Aは装置を側方より見た図、図1Bは装置を上方より見た図、図1Cは装置のブロック図である。
【0020】
同図に示す軸間角度補正装置10は、Y軸テーブル(テーブル)12及びセンサー14をもつ輪郭形状測定機(機械,形状測定機)16のY軸テーブル12の直角度補正を行う。
Y軸テーブル12は、例えば石定盤18に平行な基準XY平面(基準平面)上に設けられた測定軸(基準直線)20に対し、石定盤18に平行な基準XY平面上において90度(所望の角度)をなすであろう移動軸22に沿って、石定盤18上を直線移動する。
【0021】
センサー14は、石定盤18に平行な基準XY平面上に設けられた基準直線である測定軸20を有し、Y軸テーブル12に置かれる物体上の点のZ座標情報と共に、Z座標情報に対応するX座標情報(測定軸方向位置情報)を出力する。
【0022】
本実施形態において特徴的なことは、軸間角度補正装置10が、基準球測定手段24と、ピーク検出手段26と、誤差情報取得手段28と、補正用情報取得手段30と、補正手段32と、を備えたことである。
【0023】
ここで、基準球測定手段24は、例えば測定機本体34、基準半球(基準球)36、測定機本体34の測定制御を行うためのソフトウェア等を含むコンピュータ38を含み、基準球測定工程(S10)を行う。
すなわち、基準球測定手段24は、Y軸テーブル12上に置かれた一の基準半球36上の指定Y座標(移動軸方向位置)で該基準半球36上を測定軸(X軸)20に沿って走査してXZ断面輪郭形状情報(形状情報)を取得する。基準球測定手段24は、XZ断面輪郭形状情報の取得を、Y軸テーブル12の移動軸22方向への直線移動により、同一基準半球36上の複数の異なる指定Y座標について行う。
【0024】
またピーク検出手段26は、例えば補正計算を行うソフトウェア等を含むコンピュータ38等を含み、ピーク検出工程(S12)を行う。
すなわち、ピーク検出手段26は、基準球測定手段24で得られたXZ断面輪郭形状情報に基づいて、基準半球36上の指定Y座標でのXZ断面輪郭形状のZ座標がピークとなるピーク点を求め、該ピーク点でのセンサー14よりのX座標情報を検出する。ピーク検出手段26は、該ピーク点の検出を、同一基準半球36上の各指定Y座標について行う。
【0025】
誤差情報取得手段28は、例えば補正計算を行うソフトウェア等を含むコンピュータ等38を含み、誤差情報取得工程(S14)を行う。
すなわち、誤差情報取得手段28は、ピーク検出手段26で求められた各ピーク点のX座標情報及びY座標情報に基づいて、Y軸テーブル12の実際の移動方向を表わす実直線を求める。誤差情報取得手段28は、Y軸テーブル12の理想の移動方向を表す理想直線に対する、前記実直線の傾きθに関する情報を求める。
【0026】
補正用情報取得手段30は、例えば補正計算を行うソフトウェア等を含むコンピュータ38等を含み、補正用情報取得工程(S16)を行う。
すなわち、補正用情報取得手段30は、誤差情報取得手段28で求められた実直線の傾きθに起因する、Y軸テーブル12に置かれる物体上の点のX座標に関する測定誤差を補正するための補正用情報を求める。補正用情報取得手段30は、補正用情報をコンピュータ38のメモリ40に記憶しておく。
【0027】
そして、ワーク測定手段42によるワーク測定工程(S18)での測定結果に対し、後述する補正工程(S20)が行われる。
ワーク測定手段42は、基準半球36に代えてワーク44を用いるが、前記基準球測定手段24と基本的に同様の構成、例えば測定機本体34、測定機本体34の測定制御を行うためのソフトウェア等を含むコンピュータ38を含み、ワーク測定工程(S18)を行う。
すなわち、ワーク測定工程(S18)では、基準半球36に代えて、ワーク44をY軸テーブル12上に置き、ワーク測定手段42によりワーク44の形状測定を行う。
【0028】
補正手段32は、例えば補正計算を行うソフトウェア等を含むコンピュータ38等を含み、補正工程(S20)を行う。
すなわち、補正手段32は、ワーク測定工程(S18)でワーク44の形状を測定して得られたセンサー14よりのX座標情報を、メモリ40の補正用情報(補正用情報取得手段26で求められた補正用情報)に基づいて補正する。
【0029】
このように本実施形態にかかる軸間角度補正装置10は、輪郭形状測定機16のY軸テーブル12の直角度に起因する、ワーク44上の点のX座標情報に関する測定誤差を補正することがきる。
したがって、本実施形態においては、輪郭形状測定機16の直角度にかかわらず、より信頼性の高いX座標情報及びY座標情報を得ることができる。形状演算手段46は、補正工程(S20)で得られた座標情報を用いて形状演算工程(S22)を行うことにより、更に信頼性の高いワーク44の形状情報を求めることができる。
【0030】
なお、本実施形態において、Y軸テーブル12に置かれる物体上の点のY座標情報は、Y軸テーブル12の移動軸22上に設けられたY軸センサー50により求められる。
また本実施形態において、センサー14は、石定盤18上にコラム52を介して設けられている。センサー14は、プローブ54を含む。センサー14のX軸方向の運動精度、Z軸方向の運動精度は、直角度の要求精度に比較し、より高精度なものを用いている。
【0031】
以下に、本実施形態にかかる軸間角度補正方法について、より具体的に説明する。
輪郭形状測定機では、ワークの三次元形状情報を複数の二次元形状情報に基づいて求めており、これらの二次元形状情報を取得するため、Y軸テーブルを設けている。
すなわち、プローブの位置がワーク上の指定Y座標となるようにY軸テーブルを停止させる。形状測定機のセンサーにより、Y軸テーブルに置かれたワーク上をX軸方向に走査しながら、ワーク上の点のZ座標情報をX座標情報と共に取得する。このようにして得られたZ座標情報及びX座標情報で構成されるXZ断面輪郭形状情報の取得を、Y軸テーブルの直線移動により、同一ワーク上の複数の異なるY座標について行う。
このようにして得られた各Y座標でのXZ断面輪郭形状情報を、それぞれX座標を合わせて結合することにより、ワークの三次元形状情報を求めている。
【0032】
ここで、Y軸テーブルの直角度、つまり測定軸に対するテーブルの実際の移動方向が、理想の移動方向からずれていると、プローブがワーク上の同一点に位置しても、Y座標によって、センサーよりのX座標情報が異なる。これにより、各XZ断面輪郭形状情報のX座標及びY座標の関係が正確に得られないことがあるので、高精度な三次元形状情報が求められないことがある。
したがって、形状測定機では、複数のXZ断面輪郭形状情報に基づいて、一の三次元形状情報を求めるためには、各XZ断面輪郭形状情報間のX座標及びY座標の関係を正確に求めることが非常に重要ある。
【0033】
そこで、本実施形態においては、Y軸テーブルの直角度にかかわらず、正確なX座標情報を得るため、形状測定機により一の基準半球を測定し、その測定結果に基づいてY軸テーブルの直角度を求め、さらに、Y軸テーブルの直角度による測定誤差を補正するための補正用情報を取得している。
【0034】
<基準球測定>
本実施形態においては、図2に示されるように基準半球36の半割面とY軸テーブル12の載置面とを対向させて、基準半球36をY軸テーブル12上に置き、前記輪郭形状測定機16で基準半球36の形状測定を行う。
【0035】
すなわち、本実施形態においては、図3(A)に示されるように基準半球36上の指定Y座標Y(Y=80)で、プローブ54をX軸方向に移動させると、プローブ54は基準半球36の輪郭形状に沿って上下する。この上下運動をセンサー14で電気信号に変換し、指定Y座標Y(Y=80)でのXZ断面輪郭形状情報60、つまりZ座標情報と共にX座標情報を得ている。
【0036】
次にY軸テーブルを移動し、同図(B)に示されるような指定Y座標Y(Y=100)でのXZ断面輪郭形状情報62の取得を、同図(A)に示されるような指定Y座標Yでの形状情報の取得と同様に行う。
そして、Y軸テーブルを移動し、同図(C)に示されるような指定Y座標Y(Y=120)でのXZ断面輪郭形状情報64の取得を、同図(A)に示されるような指定Y座標Yでの形状情報の取得と同様に行う。
【0037】
<ピーク検出>
前記ピーク検出工程は、XZ断面輪郭形状情報60のピーク点Pに基づいて、基準半球36上の指定Y座標Y(Y=80)での、基準半球36上の点のZ座標が最大(ピーク)となるピーク点Pを求め、ピーク点Pに対応する、センサー14よりのX座標情報Xを検出する。
【0038】
同様にピーク検出工程は、XZ断面輪郭形状情報62のピーク点Pに基づいて、基準半球36上の指定Y座標Y(Y=100)での、基準半球36上の点のZ座標が最大となるピーク点Pを求め、ピーク点Pに対応する、センサー14よりのX座標情報Xを検出する。
また前記ピーク検出工程は、XZ断面輪郭形状情報64のピーク点Pに基づいて、基準半球36上の指定Y座標Y(Y=120)での、基準半球36上の点のZ座標が最大となるピーク点Pを求め、ピーク点Pに対応する、センサー14よりのX座標情報Xを検出する。
【0039】
ここで、測定軸(X軸)20に対してY軸テーブル12の実際の移動方向が正確に90度であるならば、ピーク点P(X,Y)、ピーク点P(X,Y)、ピーク点P(X,Y)は、測定軸(X軸)20に対し正確に90度をなす理想直線上に正確に一致するはずである。
しかしながら、実際には、Y軸テーブル12の直角度により、各ピーク点P,P,Pのズレが生じるので、各ピーク点P,P,PのX座標情報及びY座標情報に基づいて、センサー14よりのX座標情報を補正する。
【0040】
<誤差情報取得>
このために本実施形態においては、誤差情報取得工程が、ピーク検出工程で求められたピーク点PのX座標情報X及びY座標情報Y、ピーク点PのX座標情報X及びY座標情報Y、並びにピーク点PのX座標情報X及びY座標情報Yに基づいて、Y軸テーブルの実際の移動方向を表わす実直線を求める。例えば三のピーク点P,P,Pの座標情報より、最小二乗法で、例えば図4に示されるような実直線70を決定する。
誤差情報取得工程は、測定軸20に対し90度をなす理想の移動方向を表わす理想直線72に対する実直線70の傾きθに関する情報を求める。
【0041】
<補正用情報取得>
そして、補正用情報取得工程は、誤差情報取得工程で求められた実直線70の傾き情報θ、並びに、各ピーク点のX座標情報及びY座標情報に基づいて、補正後のX座標情報を得るための数式情報を求める。数式情報を以下に示す。
補正後のX座標情報=センサー14よりのX座標情報−実直線70の傾きθ情報*Y軸センサー50よりのY座標情報+各ピーク点P,P,Pの座標情報に基づいて定められた定数情報
【0042】
前述のような工程を、図4を参照しつつ、説明する。
同図において、ピーク検出工程で求められた基準半球のピーク点P,P,PでのX座標情報とY座標情報を、以下の値とする。
Y:80.0(Y)、100.0(Y)、120.0(Y
X:92.5(X)、100.0(X)、107.5(X
【0043】
そして、補正用情報取得工程では、例えばX=100のピーク点P(X,Y)を基準にして、以下の数式情報を求める。
補正後のX軸座標情報=センサー14よりのX座標情報−(107.5−92.5)/(120.0−80.0)*Y軸センサー50よりのY座標情報+定数
=センサー14よりのX座標情報−0.375*Y軸センサー50よりのY座標情報+37.5
【0044】
前記数式において、(107.5−92.5)/(120.0−80.0)は、Y軸テーブル12の実際の移動方向(=実直線70の傾きθ)である。
【0045】
<補正>
前記補正工程は、前記ワーク測定工程で得られたセンサー14よりの補正前のX座標情報、及びY軸センサー50よりの補正前のY座標情報を、前記数式情報に代入し、該センサー14よりのX座標情報を補正し、補正後のX座標情報を求める。
【0046】
<形状演算>
本実施形態においては、このようにして求められた補正後のX座標情報に基づいて、ワークの各Y座標でのXZ断面輪郭形状情報を求めているので、ワークの各Y座標でのXZ断面輪郭形状情報間において、(X,Y)平面上での位置情報の誤差が少ない。
本実施形態においては、前述のようなワークの各Y座標でのXZ断面輪郭形状情報から、より信頼性の高いワークの三次元形状情報を求めている。
【0047】
従来方式においても、スケール誤差、真直度と共に直角度の評価を行うものであるが、直角度の評価自体は行っている。しかしながら、従来方式では、複数の基準球が二次元配列されている校正用ゲージを用いている。従来方式では、校正用ゲージ自体のもつ誤差の影響、ないし校正用ゲージの装置への配置の誤差の影響を除去するため、反転法を用いる必要がある。
【0048】
このため、従来方式を用いたのでは、人手による校正用ゲージの反転が必要であり、また校正用ゲージの反転前後で、例えば校正用ゲージの装置への配置、複数の球測定、計算等の作業を行う必要があり、作業が複雑であり、また面倒である。
また従来方式のように反転法を用いても、校正用ゲージの反転前後での作業が面倒、複雑である割には、満足のゆく校正用ゲージ自体のもつ誤差の影響の除去や、校正用ゲージの装置への配置の誤差の除去が困難である。
【0049】
これに対し、本実施形態においては、直角度のみに特化しており、校正用ゲージとしての一の基準球の精度自体が、従来方式のもの、つまり複数の基準球を二次元配列する際の精度、該校正用ゲージの装置への配置の際の精度よりも高い点に着目している。かつ測定軸に対してY軸テーブル移動軸が正確に90度であるならば、同一基準球上の異なるY座標でのピーク点が、理想直線上に正確に一致するという原理に着目している。
【0050】
このように本実施形態においては、校正用ゲージとして一の高精度球を用いているので、校正用ゲージ自体のもつ誤差の影響、方向性による影響を、従来方式、つまり校正用ゲージに複数の基準球を二次元配列する際の誤差、ないし校正用ゲージを装置に配置する際の誤差の影響に比較し、無視できる程、非常に小さくしている。これにより、本実施形態においては、反転法を用いることなく、簡単な誤差測定、補正計算等により、Y軸テーブルの直角度情報のみを高精度に及び容易に測定することができる。
【0051】
また本実施形態においては、校正用ゲージの反転、その反転前後での各種作業が大幅に省略化されるので、Y軸テーブルの直角度補正が容易となる。特に従来方式では、人手による校正用ゲージの反転等の作業を行う必要があったため、コンピュータによる直角度測定の完全な自動化が困難であった。これに対し、本実施形態では、例えばY軸テーブルの各指定Y座標への移動等も、コンピュータによる制御によって行えるので、直角度測定を完全に自動化することができる。したがって、本実施形態では、従来方式に比較し、より容易に直角度補正を行うことができる。
【0052】
なお、前記各構成では、ピーク点を求める箇所として、同一基準球上のY座標の異なる三箇所を用いた例について説明したが、そのほか、同一基準球上で移動軸方向位置が異なれば、二箇所、四箇所以上を用いることもできる。ピーク点を二箇所とした場合は、例えば二箇所のピーク点を通る実直線を決定することができる。ピーク点を三箇所以上とした場合は、例えば最小二乗法で実直線を決定することができる。
【0053】
前記構成では、一の基準球を用いた例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数の基準球を用いることもできる。例えばテーブル上に複数の基準球を並べ、各基準球ごとにピーク値からその位置での直角度を求め、Y軸テーブルの全ストロークに渡って直角度を補正することもできる。
前記構成では、基準球として、完全な球状のもの、ないし部分的に球状部分を含むものを用いることもできるが、テーブルへの配置の容易性に優れている半球状のものを用いることが、特に好ましい。
【0054】
前記構成では、テーブルの直角度補正を行った例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数軸をもつ機械(測定機、加工機)の軸間角度の補正に用いることができる。
前記構成では、テーブルのXY間の直角度を補正した例について説明したが、YZ間、ZX間の直角度補正も、XY間の直角度補正と同様に行える。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1A】本発明の一実施形態にかかる軸間角度補正方法を行うための軸間角度補正装置の概略構成の側面図である。
【図1B】本発明の一実施形態にかかる軸間角度補正方法を行うための軸間角度補正装置の概略構成の上面図である。
【図1C】本発明の一実施形態にかかる軸間角度補正方法を行うための軸間角度補正装置の概略構成のブロック図である。
【図2】本実施形態にかかる基準球測定工程の説明図である。
【図3】図2に示した基準球測定工程で得られた形状情報、及びピーク検出工程の説明図である。
【図4】テーブルの直角度の説明図である。
【符号の説明】
【0056】
10 軸間角度補正装置
12 Y軸テーブル(テーブル)
14 センサー
16 輪郭形状測定機(機械,形状測定機)
20 測定軸
22 移動軸
24 基準球測定手段
26 ピーク検出手段
28 誤差情報取得手段
30 補正用情報取得手段
32 補正手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準平面上に設けられた基準直線に対し該基準平面上において所望の角度をなすであろう移動軸に沿って基準平面上を直線移動するテーブルと、
前記基準平面上に設けられた基準直線である測定軸を有し、前記テーブル上に置かれる物体上の点の測定軸方向位置情報を得るためのセンサーと、
を備えた機械の測定軸に対するテーブル移動軸の角度誤差補正を行う軸間角度補正方法において、
前記テーブルに置かれた一の基準球上の指定移動軸方向位置で該基準球上を測定軸方向に走査して測定軸方向形状情報を取得し、該形状情報の取得を、前記テーブルの直線移動により、同一基準球上の複数の異なる指定移動軸方向位置について行う基準球測定工程と、
前記基準球測定工程で得られた測定軸方向形状情報に基づいて前記基準球上の指定移動軸方向位置での測定軸方向形状がピークとなるピーク点での前記センサーよりの測定軸方向位置情報を検出し、該ピーク点の検出を、前記同一基準球上の各指定移動軸方向位置について行うピーク検出工程と、
前記ピーク検出工程で求められた各ピーク点の位置情報に基づいて前記テーブルの実際の移動方向を表わす実直線を求め、該テーブルの理想の移動方向を表わす理想直線に対する該実直線の傾きに関する情報を求める誤差情報取得工程と、
前記誤差情報取得工程で求められた実直線の傾きに起因する、前記テーブルに置かれる物体上の点の測定軸方向位置に関する測定誤差を補正するための補正用情報を求める補正用情報取得工程と、
前記補正用情報取得工程で求められた補正用情報に基づいて、前記センサーよりの測定軸方向位置情報を補正する補正工程と、
を備えたことを特徴とする軸間角度補正方法。
【請求項2】
請求項1記載の軸間角度補正方法において、
前記測定軸に対し90度をなすであろう移動軸をもつ形状測定機テーブルの直角度補正を行うものであり、
前記基準球測定工程は、前記形状測定機のセンサーにより、該形状測定機のテーブル上に置かれた一の基準球上の指定移動軸方向位置で該基準球上を測定軸方向に走査して測定軸方向形状情報を取得し、該形状情報の取得を、該テーブルの直線移動により同一基準球上の複数の異なる指定移動軸方向位置について行い、
前記誤差情報取得工程は、前記測定軸に対し90度をなす理想直線からの前記実直線の傾きに関する情報を求め、
前記補正工程は、前記補正用情報取得工程で求められた補正用情報に基づいて、前記センサーよりの測定軸方向位置情報を補正し、前記形状測定機テーブルの直角度補正を行うことを特徴とする軸間角度補正方法。
【請求項3】
請求項2記載の軸間角度補正方法において、
前記補正用情報取得工程は、前記誤差情報取得工程で求められた実直線の傾き情報、及び各ピーク点の位置情報に基づいて、補正後の測定軸方向位置情報を得るための数式情報(補正後の測定軸方向位置情報=前記センサーよりの測定軸方向位置情報−前記実直線の傾き情報*移動軸方向位置情報+前記各ピーク点の位置情報に基づいて定められた定数情報)を求め、
前記補正工程は、前記センサーよりの測定軸方向位置情報、及び前記移動軸方向位置情報を、前記補正用情報取得工程で求められた数式情報に代入し、該センサーよりの測定軸方向位置情報を補正することを特徴とする軸間角度補正方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−258612(P2006−258612A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−76566(P2005−76566)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】