説明

通信モジュール

【課題】筐体内で電磁波を抑制して筐体からの不要放射を低減する。
【解決手段】コネクタの挿抜に用いられる開口部(前部開口部22、後部開口部24)を持つ筐体(4)内に電磁波発生源(例えば、LDドライバ部32)を含む通信モジュールであって、筐体(4)内に電磁波減衰部(16A、16B)を備える。電磁波減衰部(16A、16B)は、前記筐体の空間部(26)が持つ遮断周波数を空間幅によって変更するとともに前記電磁波を減衰させる減衰領域を設定し、不要放射となる電磁波を筐体内で減衰させ、開口部からの不要放射を防止している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信モジュールの電磁波の漏洩抑制技術に関し、例えば、コネクタを挿抜する筐体からの電磁波の漏洩を抑制する通信モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
活線挿抜が可能なプラガブル高速通信モジュール等の通信モジュールでは、活線挿抜用コネクタを着脱させる開口部を備える。また、この通信モジュールには筐体内に電磁波発生源が存在しており、この電磁波発生源で発生した電磁波が筐体の開口部から漏洩すると、電磁妨害波(EMI:Electro Magnetic Interference )を生じる。斯かる通信モジュールを用いる通信装置では、多チャンネルのモジュールを実装した状態で、EMI規格を満足することが要請される。
【0003】
このような通信モジュールに関し、光コネクタを備えるハウジングの内面及びハウジングの正面に導電性材料よりなる放電用突起を形成することが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−93908公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、通信モジュールの筐体にある開口部は他の通信機器とのコネクタ接続に不可欠であって、この開口部を閉塞することができない。このような開口部を備えた筐体から漏洩する電磁波抑制には電波吸収体対策がとられてきたが、電波吸収体の設置は部材費や組立コストをアップさせる。また、電波吸収体を設置しても、開口部から引き出される信号線路からの電磁波漏洩を防止することができない。
【0006】
そこで、本開示の通信モジュールの目的は、筐体内で電磁波を抑制し、電磁波の不要放射を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の通信モジュールは、コネクタを挿抜する通信モジュールであって、前記コネクタを挿抜する開口部を有する筐体の空間部に、該空間部を伝搬する特定領域の電磁波を減衰させる電磁波減衰部を備える。該電磁波減衰部は、不要放射となる電磁波を筐体内で減衰させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の通信モジュールによれば、次のような効果が得られる。
【0009】
(1) 通信モジュールの筐体内に電磁波減衰部を備えることにより、不要放射となる電磁波を筐体内で減衰させるので、電磁波の筐体外への不要放射を抑制でき、EMI特性を向上させることができる。
【0010】
(2) 筐体外に電磁波吸収のための部材を設置しないので、通信モジュールの小型化を妨げることがない。
【0011】
そして、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面及び各実施の形態を参照することにより、一層明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施の形態に係るプラガブル通信モジュールの一例を示す断面図である。
【図2】プラガブル通信モジュールの内部構造の一例を示す図である。
【図3】電磁波減衰構造の一例を示す図である。
【図4】電磁波の減衰状態を示す図である。
【図5】電磁波減衰部の長さに応じた電磁波の減衰量を示す図である。
【図6】電磁波減衰部の電磁波減衰特性を示す図である。
【図7】第2の実施の形態に係るプラガブル通信モジュールの筐体及び電磁波減衰部の一例を示す分解斜視図である。
【図8】電磁波減衰部を備えたプラガブル通信モジュールの筐体を示す図である。
【図9】第3の実施の形態に係るプラガブル通信モジュールの筐体及び電磁波減衰部の一例を示す分解斜視図である。
【図10】電磁波減衰部を備えたプラガブル通信モジュールの筐体の一例を示す図である。
【図11】第4の実施の形態に係るプラガブル通信モジュールの筐体の一例を示す斜視図である。
【図12】筐体の電磁波減衰及び遮断周波数を示す図である。
【図13】第5の実施の形態に係るプラガブル通信モジュールの筐体の一例を示す斜視図である。
【図14】筐体の電磁波減衰及び遮断周波数を示す図である。
【図15】プラガブル通信モジュールの実施例を示す斜視図である。
【図16】プラガブル通信モジュールの実施例を示す分解斜視図である。
【図17】XFPモジュールの比較例に係る筐体を示す斜視図である。
【図18】XFPモジュールの筐体内の電磁波(中心周波数5〔GHz〕短パルス)の広がりを示す図である。
【図19】XFPモジュールの筐体内の電磁波(中心周波数10〔GHz〕短パルス)の広がりを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔第1の実施の形態〕
【0014】
第1の実施の形態について、図1及び図2を参照する。図1は第1の実施の形態に係るプラガブル通信モジュールの一例である縦断面を示し、図2はプラガブル通信モジュールの内部構造の一例を示している。
【0015】
プラガブル通信モジュール2(以下、「通信モジュール2」と称する)は、本開示の通信モジュールの一例であって、活線挿抜可能な通信モジュールである。この通信モジュール2は、図1及び図2に示すように、筐体4、光コネクタ部6、8、光送信部10、光受信部12、回路基板14及び電磁波減衰部16A、16Bを備えている。
【0016】
筐体4は、亜鉛、ステンレス等の金属体で構成された角筒体であって、本体部18と、蓋部20とで構成され、前部側に前部開口部22、後部側に後部開口部24を備えている。これら前部開口部22及び後部開口部24は通信モジュール2のインターフェイス部であって、外部とのコネクタ接続のための開口部を構成している。そして、本体部18は、平板部及び側板部を以て回路基板14等を設置する第1の空間部26を備えた角筒体であって、本体部18にある窓部28は蓋部20で開閉される。
【0017】
本体部18及び蓋部20で形成された空間部26には光部品である光コネクタ部6、8及び回路基板14が設置され、これらは本体部18及び蓋部20に設けられた支持部30によって支持されている。回路基板14には、光送信部10及び光受信部12等の回路部品が配置されている。
【0018】
光コネクタ部6、8は、筐体4の前部開口部22側に配置され、導波路である光ファイバと接続される。この実施の形態では、光コネクタ部6は光送信部10側に設置され、光送信部10から発せられた光の送出部を構成している。また、光コネクタ部8は光受信部12側に設置され、光ファイバからの光の受光部を構成している。
【0019】
光送信部10は、レーザ光を発生する光源であって、レーザダイオード(LD:Laser Diode )等の発光素子で構成される。光受信部12は、レーザ光を検出する光検出部であって、PD(Photo Detector)で構成される。光送信部10及び光受信部12は回路基板14に接続され、筐体4の前部開口部22側に配置されている。
【0020】
回路基板14には、光送信部10のレーザダイオード(LD)の駆動手段としてLDドライバ部32が設置されているとともに、送信回路や受信回路等が備えられている。LDドライバ部32は光送信部10のレーザダイオードの駆動手段であり、高周波帯域の電磁波36を放射する電磁波発生源である。そして、回路基板14にはコネクタ部34が形成され、このコネクタ部34は筐体4と絶縁間隔を設定して後部開口部24から露出され、ホスト側回路基板側のコネクタ部と着脱可能である。
【0021】
そして、電磁波減衰部16A、16Bは、電磁波発生源を内包する筐体4内に設置され、筐体4の内部で空間共振を利用して所定の遮断周波数を持つ減衰領域を設定し、電磁波36を減衰させる手段である。この実施の形態では、筐体4の空間部26が持つ遮断周波数fc1 に対し、電磁波減衰部16A、16Bでは遮断周波数fc2 の減衰領域を筐体4の空間部26に設定し、遮断周波数fc2 以下の電磁波36を減衰させる。各電磁波減衰部16A、16Bは、具体的には、本体部18の内壁面に2つの突部38を回路基板14を挟んで備えている。各突部38は、漏洩する電磁波36に対応した遮断周波数fc2 を設定する開口幅と、電磁波36を伝搬させる長さとを以て電磁波の減衰領域を設定している。
【0022】
通信モジュール2では、筐体4に金属材料が用いられるので、その空間部26は方形導波管を構成し、既述の遮断周波数fc1 が設定される。これに対し、空間部26に設置される突部38を筐体4と同一材料で構成すれば、突部38を設置した領域の開口幅及び長さの設定により、特定の遮断周波数fc2 及び帯域幅のフィルタを構成するとともに、減衰器を構成する。従って、電磁波減衰部16A、16Bに設定される遮断周波数fc2 以下の電磁波の漏洩を防止できる。
【0023】
次に、筐体4の空間部26における遮断周波数及び電磁波減衰について、図3及び図4を参照する。図3は空間部の形状を示し、図4は電磁波の減衰状態を示している。
【0024】
(1) 電磁波減衰部16A、16Bを備えていない筐体4の場合(遮断周波数fc1
【0025】
筐体4は直方体であり、その空間部26は方形導波管を構成する。この空間部26は、本体部18の平板部42及び側板部44、46で構成され、側板部44、46の間隔(空間部26の空間幅)である横幅をa1 、縦幅をbとすると、空間部26の遮断周波数fc1 は、
fc1 =(c/2π){(mπ/a1 2 +(nπ/b)2 1/2 ・・・(1)
となる。式(1) において、cは光速(2.998×108 〔m/s〕)、係数m、nはm、n≧0を満たす整数である。
【0026】
式(1) において、a1 >bであれば、
fc1 ≒c/2a1 ・・・(2)
となる。a1 =15〔mm〕とすれば、式(2) から、
fc1 ≒c/2a1 =2.998×108 /0.0015×2
≒9.94〔GHz〕 ・・・(3)
となる。即ち、空間部26の空間形状(空洞形状)からすれば、理論的には9.94〔GHz〕以下の周波数の電磁波は伝搬できないこととなる。即ち、筐体4に設定される空間形状即ち、空間幅により空間共振周波数が決まり、それにより固有の伝搬周波数が決定され、放射される電磁波の周波数が決まる。そして、実際には、筐体4の長さが短ければ、9.94〔GHz〕以下の周波数の電磁波36が後部開口部24から筐体4の外部に不要放射されてしまう。
【0027】
このように、方形導波管を構成する筐体4は、LDドライバ部32から発せられた電磁波36に対してフィルタを構成している。また、後部開口部24からの不要放射に関し、後部開口部24にある回路基板14には電磁波36を抑制する機能はなく、開口があれば筐体4から電磁波36の不要放射が生じることになる。
【0028】
また、LDドライバ部32から発せられる電磁波36の周波数が判れば(実際には測定により周波数は既知)、その筐体4の空間部26で構成される伝送路の空間共振周波数を最適化することにより、筐体4から外部へのEMIを低減できる。
【0029】
(2) 電磁波減衰部16A、16Bを備えた場合(電磁波減衰部16A、16Bの遮断周波数fc2
【0030】
筐体4内に電磁波減衰部16A、16Bを備えれば、図3に示すように、空間部26に空間幅の異なる第2の空間部48が形成される。この空間部48の領域も空間部26内にあって方形導波管を構成する。この空間部48は、空間部26を構成する側板部44、46の内側に形成された各突部38の間隔(空間幅)である横幅をa2 (<a1 )、縦幅をbとすると、横幅a2 は、突部38の厚さの2倍の幅だけ横幅a1 より小さくなる。
【0031】
突部38の厚さをdとすると、横幅a2 は、
2 =a1 −2d<a1 ・・・(4)
である。
【0032】
そこで、電磁波減衰部16A、16Bを備える空間部48の空間幅である横幅a2 の場合の遮断周波数fc2 は、
fc2 =(c/2π){(mπ/a2 2 +(nπ/b)2 1/2 ・・・(5)
となる。式(5) においても、c及び係数m、nは式(1) と同様である。
【0033】
この遮断周波数fc2 は、式(4) の関係から、
fc2 >fc1 ・・・(6)
となる。
【0034】
式(5) において、a2 >bであれば、式(2) と同様に、
fc2 ≒c/2a2 ・・・(7)
となる。ここで、a1 =15〔mm〕、d=1.5〔mm〕とすれば、横幅a2 は、式(4) から、a2 =13〔mm〕となる。この場合、遮断周波数fc2 は、式(7) から、
fc2 ≒c/2a2 =2.998×108 /0.0013×2
≒11.5〔GHz〕
となる。即ち、電磁波減衰部16A、16Bでは、11.5〔GHz〕以下の周波数の電磁波が減衰することになる。
【0035】
(3) 空間部48の領域での電磁波36の減衰量
【0036】
電磁波減衰部16A、16Bの空間部48では、既述の遮断周波数fc2 が設定されても、電磁波36の伝搬距離が短ければ、十分な減衰は生じない。そこで、電磁波減衰部16A、16Bには長手方向に長さtを設定する。この長さtの設定により、図4に示すように、電磁波36の減衰が生じる。
【0037】
この減衰量は、
減衰量=−10log (−αt)=8.6859αt〔dB〕 ・・・(8)
で与えられ、式(8) において、αは減衰係数、tは電磁波減衰部16A、16Bの長さであり、減衰量は、減衰係数αと長さtとの積に比例して増大する。
【0038】
減衰係数αは、
α={(π/a2 2 −k2 }/2 ・・・(9)
である。式(9) において、k=ω/c=2πfc/cである。
【0039】
周波数10〔GHz〕の電磁波36に対する突部38の長さtの電磁波減衰部16A、16Bの区間(減衰領域)での減衰量を求めると、周波数fc=10〔GHz〕とすれば、
k=ω/c=2πfc/c
=2π×10×109 ÷2.998×108
=209.58 ・・・(10)
であり、減衰係数αは、a2 =13〔mm〕とすると、式(9) から、
α={(π/0.013)2 −209.582 }÷2
=120.317
となる。これらにより、長さtに対する減衰量は、
減衰量=8.6859×120.312×t〔dB〕 ・・・(11)
となり、長さtに比例して増加する。
【0040】
斯かる関係から、周波数10〔GHz〕の減衰量〔dB〕は、a2 =13〔mm〕とすれば、図5及び図6に示すように、長さtに比例して増加することとなる。図5は長さtと減衰量〔dB〕との関係を示す減衰量テーブルの一例であり、図6は長さtと減衰量〔dB〕との関係を示す減衰量直線の一例を示している。
【0041】
この通信モジュール2では筐体4の内部に設置された電磁波減衰部16A、16Bで電磁波36を減衰させることができる。後部開口部24からの電磁波36の不要放射を抑制することができる。
【0042】
以上述べたように、第1の実施の形態の特徴事項や効果は以下の通りである。
【0043】
(1) 方形導波管と見做すことができる筐体4に突部38が設置され、この突部38を設置した領域の空間幅及び長さにより遮断周波数fcが決定される。遮断周波数fcと、突部38の長さtで設定される領域が電磁波発生(放射)源(この場合、LDドライバ部32)を含むように構成すれば、LDドライバ部32から放射される電磁波36を減衰させることができる。即ち、各突部38間の既述の幅a2 を設定し、筐体4の内部に遮断周波数以上の狭部を設けることで、この狭部が狭いほど、遮断周波数fcを高速側にシフトすることができる。
【0044】
(2) 斯かる構成の電磁波減衰部16A、16Bを設定すれば、電磁波36の減衰及び不要放射を防止でき、通信モジュール2のEMI特性を改善できる。
【0045】
(3) 特に、通信モジュール2の駆動時、電磁波発生源から後部開口部24までの間に電磁波減衰部16A、16Bを設定すればよい。
【0046】
(4) 通信モジュール2において、発生する電磁波36の周波数に応じて伝搬周波数をずらすことができ、外部へのEMIを抑制できる。
【0047】
(5) 筐体4の各突部38間で決定される遮断周波数と、突部38の長さtで減衰量を変更できる。
【0048】
(6) 電磁波減衰部16A、16Bの一例である突部38は、筐体4の本体部18と一体化部材であってもよいし、又は筐体4の本体部18と別部材であってもよい。突部38が本体部18と一体化構成であれば、本体部18に対して突部38を加工段階で位置決めでき、本体部18や筐体部4の堅牢化を図ることができる。また、突部38が筐体4の本体部18と別部材であれば、任意に交換でき、所望の大きさのものに変更することにより、遮断周波数や電磁波の減衰量を調整(例えば、加減)することができる。
【0049】
(7) 上記実施の形態では、従前のように電波吸収体を使用する等の部品点数を増やすことがなく、有効なEMI対策が可能である。
【0050】
〔第2の実施の形態〕
【0051】
次に、第2の実施の形態について、図7及び図8を参照する。図7は通信モジュールの筐体と減衰ブロック体を示し、図8は減衰ブロック体を備えた筐体を示している。図7及び図8において、図1及び図2と同一部分には同一符号を付してある。
【0052】
この実施の形態では、通信モジュール2の筐体4は、図7及び図8に示すように、長方形状の平板部42に長手方向に側板部44、46及び短手方向に側板部50を備えた箱体である。側板部50には既述のコネクタ部6、8を引き出す開孔52が形成されている。
【0053】
電磁波減衰部16A、16Bにはそれぞれ減衰ブロック体54を備えている。各減衰ブロック体54には固定ねじ56で固定するためのねじ孔58が形成されている。各側板部44、46には固定ねじ56を貫通させるための透孔60が形成されている。減衰ブロック体54は、筐体4と同一の金属等の良導体で構成すればよい。
【0054】
斯かる構成では、図8のAに示すように、筐体4の側板部44、46の内壁面に減衰ブロック体54を配置し、各減衰ブロック体54のねじ孔58を透孔60に合わせ、固定ねじ56を筐体4の外側から透孔60を貫通させてねじ孔58に取り付ける。このように各減衰ブロック体54を筐体4内に固定すれば、筐体4の空間部26に既述の電磁波減衰部16A、16Bが設定される。各減衰ブロック体54は固定ねじ56による筐体4との一体化により、筐体4と等電位化される。
【0055】
減衰ブロック体54は、図8のBに示すように、高さbに対し、異なる幅dとして例えば、d1 、d2 、d3 (d1 <d2 <d3 )の数種類を用意すれば、幅d1 、d2 、d3 によって異なる遮断周波数fcを選択することができる。即ち、電磁波減衰部16A、16Bにおける空間部48の空間幅a3 、a4 、a5 は式(4) から、
3 =a1 −2d1 ・・・(12)
4 =a1 −2d2 ・・・(13)
5 =a1 −2d3 ・・・(14)
となり、異なる遮断周波数fc3 、fc4 、fc5 (fc3 >fc4 >fc5 )が設定される。
【0056】
この実施の形態のように、筐体4の空間部26に減衰ブロック体54を設置し、既述の突部38(図2、図3)を筐体4と分割して着脱可能に構成すれば、所望の幅を持つ減衰ブロック体54を選択し、遮断周波数を変更することができる。
【0057】
各減衰ブロック体54は、同一の長さtに設定すれば、電磁波の減衰量を同一にできるが、その長さtを変更し、又は長さtの異なる減衰ブロック体54に交換すれば、筐体4内で電磁波36の減衰量を調整できる。
【0058】
〔第3の実施の形態〕
【0059】
次に、第3の実施の形態について、図9及び図10を参照する。図9は通信モジュールの筐体と減衰ブロック体を示し、図10は減衰ブロック体の突出量の調整状態を示している。図9及び図10において、図7及び図8と同一部分には同一符号を付してある。
【0060】
第2の実施の形態では異なる幅d(d1 、d2 、d3 )の減衰ブロック体54を用いているが、第3の実施の形態では、図9に示すように、一定の幅dを持つ減衰ブロック体54を使用し、減衰ブロック体54の取付け位置を変更可能にした構成である。
【0061】
各減衰ブロック体54には、固定ねじ62の先端側にある支持部64を貫通させる透孔66が形成されている。この場合、透孔66は支持部64の軸受けを構成する。固定ねじ62は、支持部64と、支持部64より径大なねじ部68と、支持部64の中心部にねじ孔69とを備えている。このねじ孔69には固定ねじ70が取り付けられ、支持部64に減衰ブロック体54が拘束される。筐体4の側板部44、46には、固定ねじ62のねじ部68を固定するためのねじ部72が形成されている。
【0062】
斯かる構成によれば、図10に示すように、筐体4の側板部44、46のねじ部72に筐体4の外部から固定ねじ62を取り付ける。筐体4内に突出させた固定ねじ62の支持部64を減衰ブロック体54の透孔66に挿入し、固定ねじ70を取り付ければ、減衰ブロック体54が固定ねじ62の支持部64に支持された状態となる。即ち、固定ねじ62の支持部64が透孔66より径小であれば、固定ねじ62を自由に回動させることができる。固定ねじ62を筐体4の外部から回動させれば、減衰ブロック体54を筐体4内で矢印X1 、X2 (図10)の方向に移動させ、空間部48の空間幅a2 を調整することができ、所望の遮断周波数fcを設定することができる。
【0063】
この実施の形態では、既述の突部38(図2、図3、図4)の位置を変更できる可変構造に構成したものである。即ち、筐体4に位置を変更できる減衰ブロック体54を設置し、減衰ブロック体54の位置を変更すれば、空間幅a6 を調整することができ、所望の遮断周波数とともに減衰量を設定することができる。
【0064】
〔第4の実施の形態〕
【0065】
次に、第4の実施の形態について、図11及び図12を参照する。図11は通信モジュールの筐体と電磁波減衰部を示し、図12は電磁波の減衰状態を示している。図11及び図12において、図1及び図2と同一部分には同一符号を付してある。
【0066】
この第4の実施の形態では、図11に示すように、筐体4の側板部44、46に形成された突部38の対向面部を傾斜面74に形成している。この傾斜面74は、筐体4内に設定される開口幅(空間幅)a2 を電磁波36の伝搬方向に連続的に遮断周波数fcを増加又は減少させる手段の一例である。
【0067】
電磁波減衰部16A、16Bの突部38間の幅は、図12に示すように、傾斜面74によって最も狭い幅をa20、最も広い幅をa2tとすると、空間幅は幅a20から幅a2tに突部38の長さtの間で連続的に変化している。このため、幅a20における遮断周波数をfc20、幅a2tにおける遮断周波数をfc2tとすれば、電磁波減衰部16A、16Bの遮断周波数はfc20〜fc2tに分布し、長さtの区間で減衰が生じる。
【0068】
この実施の形態では、既述の突部38(図2、図3)の対向面をテーパ面に構成したものである。即ち、突部38の対向面を傾斜面74に形成すれば、空間部48の空間幅a20から幅a2tに変化する長さtの区間で幅広い周波数帯域での減衰が得られる。
【0069】
〔第5の実施の形態〕
【0070】
次に、第5の実施の形態について、図13及び図14を参照する。図13は通信モジュールの筐体と電磁波減衰部を示し、図14は電磁波の減衰状態を示している。図13及び図14において、図1及び図2と同一部分には同一符号を付してある。
【0071】
この第5の実施の形態では、図13に示すように、筐体4の側板部44、46に形成された突部38の対向面部をステップ状に複数の段部として例えば、3つの段部76、78、80を形成している。これら段部76、78、80は、筐体4内に設定される開口幅(空間幅)a2 を電磁波36の伝搬方向に段階的に遮断周波数fcを増加又は減少させる手段の一例である。
【0072】
図14に示すように、突部38の長さtに対し、段部76、78、80の長さをt1 、t2 、t3 (t1 =t2 =t3 又はt1 ≠t2 ≠t3 )とすれば、
t=t1 +t2 +t3 ・・・(15)
となる。各長さt1 、t2 、t3 の開口幅をa21、a22、a23とすれば、電磁波減衰部16A、16Bの突部38間の遮断周波数fcは式(7) のfc2 ≒c/2a2 により求められ、fc21、fc22、fc23(fc21<fc22<fc23)となる。このように長さtの区間で電磁波減衰部16A、16Bの遮断周波数fc21、fc22、fc23が分布し、長さtの区間で減衰が生じる。
【0073】
このように突部38の対向面に複数の段部76、78、80を形成すれば、空間部48の空間幅a21、a22、a23に変化する長さtの区間で幅広い周波数帯域での減衰が得られる。
【0074】
斯かる構成では、ステップ状に形成された突部38により、ステップ状に異なる複数の遮断周波数を設定できるので、広い周波数帯域での減衰量を得ることができる。
【0075】
〔他の実施の形態〕
【0076】
(1) 上記実施の形態では、通信モジュールとして、光通信用モジュールを例示しているが、本開示の通信モジュールはこれに限定されない。電磁波等、他の通信媒体にも適用できるものである。
【0077】
(2) 上記実施の形態では、筐体4内に電磁波発生源を備える構成を例示しているが、筐体4内に電磁波発生源を備える構成に限定されない。筐体4の外部に電磁波発生源を備える構成であってもよい。また、電磁波発生源は、外部の電磁波発生源に接続されるコネクタや配線部材から電磁波を発生する場合には、それが電磁波発生源となるものである。
【0078】
(3) 上記実施の形態では、電磁波減衰部16A、16B間の空間幅として横幅aを変更する例を示しているが、縦幅bを変更する構成としてもよい。
【0079】
(4) 上記実施の形態では、電磁波減衰部16A、16Bにおける空間部として方形導波管を例示しているが、円形導波管としてもよい。
【0080】
(5) 上記実施の形態では、電磁波減衰部16A、16Bは筐体4の側板部44、46の内壁に突部38や減衰ブロック体54を設置した構成としているが、これに限定されない。LDドライバ部等の電磁波発生源を挟む側板部44、46の間隔を所定範囲(長さtの区間)で狭める構成としてもよい。
【実施例】
【0081】
次に、実施例について、図15及び図16を参照する。図15は通信モジュールの実施例を示し、図16は分解した通信モジュールを示している。図15及び図16において、図1、図2及び図7と同一部分には同一符号を付してある。
【0082】
この通信モジュール2は、図15に示すように、筐体4に本体部18と蓋部20とを備え、本体部18の前面部を閉塞するコネクタ筐体82を備えている。コネクタ筐体82には、コネクタ挿抜孔84、86が形成されている。筐体4の後部には既述の後部開口部24が形成され、側板部44、46には通信モジュール2を通信装置側に係止させる係止溝88が形成されている。
【0083】
本体部18の空間部26には、図16に示すように、光コネクタ部6、8、光送信部10、光受信部12及び回路基板14を合体した回路部材が設置される。光コネクタ部6、8には長方形の支持プレート90が装着され、この支持プレート90の溝部92には、本体部18の側板部44、46の内側に突出した係止部94が挿入される。光コネクタ部6、8は、コネクタ筐体82の背面側にある開孔52に挿入され、コネクタ筐体82のコネクタ挿抜孔84、86に挿入される。
【0084】
本体部18の空間部26には、回路基板14を固定する複数の固定部95、光コネクタ部6、8を分離する分離壁96、蓋部20を取り付ける複数の固定部98、回路基板14にあるコネクタ部34と空間部26とを分離する分離壁100が設置されている。分離壁100は、回路基板14の支持手段を兼用している。固定部95は上記実施の形態の支持部30を兼用する。
【0085】
空間部26には、既述の電磁波減衰部16A、16Bを構成する減衰ブロック体54が固定ねじ56で固定される。この固定構造は第2の実施の形態と同様であるので、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0086】
固定部95は、固定部98に比較し、1/2程度の高さを備えており、回路基板14を本体部18の中間部に支持する。固定部95、98には、それぞれねじ孔102が設けられ、固定部95には回路基板14が透孔104を貫通させた固定ねじ106によって固定される。回路基板14にあるコネクタ部34は、筐体4の後部開口部24に配置される。また、固定部98には蓋部20が透孔108を貫通させた固定ねじ110によって固定される。
【0087】
そして、回路基板14には、既述のLDドライバ部32が設置され、これが電磁波発生源を構成している。
【0088】
斯かる構成の通信モジュール2では、上記実施の形態で説明した通り、LDドライバ部32から発せられる電磁波を筐体4の内部で設定された遮断周波数fc及びその遮断周波数を含む周波数帯域で減衰させ、後部開口部24からの不要放射を防止できる。
【0089】
この実施例では、筐体4と同一の金属材料で構成されたコネクタ筐体82が筐体4の前部開口部22を閉塞しているので、前部開口部22からの不要放射が抑制されている。しかし、前部開口部22が開放状態であっても、既述のような電磁波の減衰機能により、前部開口部22からの不要放射を防止できることは言うまでもない。
【0090】
〔比較例〕
【0091】
比較例であるXFP(10 Gigabit Small Form Factor Pluggable)モジュールについて、図17、図18及び図19を参照する。図17は、XFPモジュールの筐体、図18及び図19は電磁波の伝搬及び漏洩状態を示している。
【0092】
このXFPモジュール200の筐体4は、図17に示すように、電磁波減衰部16A、16Bを備えていない場合である。この筐体4は、平板部42及び側板部44、46、50を備えている。
【0093】
この筐体4に既述のLDドライバ部32等の電磁波発生源を構成すれば、中心周波数が5〔GHz〕の短パルスの電磁波36は、図18に示すように、筐体4の空間部26に沿って広がり伝搬する。この場合、電磁波発生源(LDドライバ部32)に近い程、電界強度が強くなることを示している。
【0094】
また、中心周波数が10〔GHz〕の短パルスの電磁波36は、図19に示すように、筐体4の空間部26に沿って広がり伝搬し、後部開口部24から不要放射が生じている。この場合、電磁波発生源に近い程、電界強度が強くなるが、既述の電磁波減衰部16A、16Bがない筐体4では、電磁波の減衰はなく、強い電界強度を持つ不要放射が生じている。
【0095】
これに対し、電磁波減衰部16A、16Bを備えた構成では、突部38間で遮断周波数と長さ方向で減衰量が得られる。既述の通り、例えば、間隔a2 =12〔mm〕、長さt=30〔mm〕程度あれば、10〔GHz〕の周波数の電磁波36を20〔dB〕以上減衰させることができる。
【0096】
上記実施例は通信モジュールについて説明したが、同じような形状の通信モジュール、例えば、USB(Universal Serial Bus)であっても、同じように本発明を適用することができる。
【0097】
次に、以上述べた実施例を含む実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。以下の付記に本発明が限定されるものではない。
【0098】
(付記1) コネクタを挿抜する通信モジュールであって、
前記コネクタを挿抜する開口部を有する筐体と、
前記筐体の空間部に設置され、該空間部を伝搬する特定領域の電磁波を減衰させる電磁波減衰部と、
を備えることを特徴とする通信モジュール。
【0099】
(付記2) 前記電磁波減衰部は、前記筐体と同一又は別部材であることを特徴とする付記1に記載の通信モジュール。
【0100】
(付記3) 前記電磁波減衰部は、前記筐体の前記空間部に突出する突部を備え、該突部により前記空間部の前記遮断周波数を変更したことを特徴とする付記1に記載の通信モジュール。
【0101】
(付記4) 前記突部は、突出長を調整可能とし、該突出量より前記空間部の遮断周波数を変更可能にしたことを特徴とする付記3に記載の通信モジュール。
【0102】
(付記5) 前記突部は、前記空間部に向かう面部を傾斜面とし、該傾斜面により前記電磁波の伝搬方向の前記空間幅を連続的に異ならせて前記遮断周波数を増加又は減少させたことを特徴とする付記3に記載の通信モジュール。
【0103】
(付記6) 前記突部は、前記空間部に向かう面部を突出長が異なる複数の段部とし、該段部により前記電磁波の伝搬方向の前記空間幅を段階的に異ならせて前記遮断周波数を増加又は減少させたことを特徴とする付記3に記載の通信モジュール。
【0104】
以上説明したように、通信モジュールの最も好ましい実施の形態等について説明したが、本発明は上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0105】
2 通信モジュール
4 筐体
6、8 光コネクタ部
16A、16B 電磁波減衰部
22 前部開口部
24 後部開口部
26、48 空間部
32 LDドライバ部
36 電磁波
38 突部
54 減衰ブロック体
74 傾斜面
76、78、80 段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタを挿抜する通信モジュールであって、
前記コネクタを挿抜する開口部を有する筐体と、
前記筐体の空間部に設置され、該空間部を伝搬する特定領域の電磁波を減衰させる電磁波減衰部と、
を備えることを特徴とする通信モジュール。
【請求項2】
前記電磁波減衰部は、前記筐体と同一又は別部材であることを特徴とする請求項1に記載の通信モジュール。
【請求項3】
前記電磁波減衰部は、前記筐体の前記空間部に突出する突部を備え、該突部により前記空間部の前記遮断周波数を変更したことを特徴とする請求項1に記載の通信モジュール。
【請求項4】
前記突部は、突出長を調整可能とし、該突出量より前記空間部の遮断周波数を変更可能にしたことを特徴とする請求項3に記載の通信モジュール。
【請求項5】
前記突部は、前記空間部に向かう面部を傾斜面とし、該傾斜面により前記電磁波の伝搬方向の前記空間幅を連続的に異ならせて前記遮断周波数を増加又は減少させたことを特徴とする請求項3に記載の通信モジュール。
【請求項6】
前記突部は、前記空間部に向かう面部を突出長が異なる複数の段部とし、該段部により前記電磁波の伝搬方向の前記空間幅を段階的に異ならせて前記遮断周波数を増加又は減少させたことを特徴とする請求項3に記載の通信モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2012−64743(P2012−64743A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207603(P2010−207603)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(309015134)富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社 (72)
【Fターム(参考)】