説明

連結構造

【課題】
ホゾパイプと固定具で連結された二部材に引張荷重が作用した際、固定具による部材のヒビ割れを抑制可能な連結構造を提供すること。
【解決手段】
一方材11と他方材21との境界面から対向して延びる軸孔13、23に差し込まれるホゾパイプ31と、一方材11および他方材21に設けた側孔17、27に差し込まれ且つホゾパイプ31の側周面に設けたピン孔32を貫通するドリフトピン34などの固定具と、を用いた一方材11と他方材21との連結構造において、一方材11と他方材21には、ホゾパイプ31とほぼ平行またはほぼ直角にラグスクリュー35をねじ込む。これによって部材を強化でき、二部材に引張荷重が作用した際も、固定具による部材のヒビ割れを抑制でき、連結構造の許容耐力が向上して、建築物などの安全性も一段と向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築などにおいて、棒状の二部材をつなぐ連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築を始めとする各種の木構造において、棒状の二部材を引き寄せて連結する箇所は極めて多い。二部材を連結する場合、荷重条件が緩い箇所であれば、釘や接着剤だけを用いた簡素な方法も可能だが、建築物の骨格などであれば、強度を確保するためホゾを加工するなどの対策が必要になる。例えば土台の上面に柱を据え付ける場合、柱の水平移動を防止するため、柱の下端面の中央にホゾを加工して、対する土台の上面にホゾ穴を加工して、双方を嵌め合わせている。このようなホゾを用いる方法は古くから知られているが、部材の断面欠損による強度の低下や、施工時に調整を要するなどの課題があり、近年は各種金物を用いることも多い。
【0003】
二部材の端面同士を接触させて直線状に連結する場合や、一方の部材の側面に他方の部材の端面を接触させてT字状やL字状に連結する場合、前記のようなホゾとホゾ穴の代替としてホゾパイプを用いることがある。ホゾパイプは、従来のホゾと同等の機能を担うもので、鋼管を所定の長さに切り出しただけの単純な形状で、その側周面には複数のピン孔を形成してある。なお連結される二部材には、あらかじめ接触面を貫通する軸孔を加工しておき、この中にホゾパイプを埋め込む。
【0004】
ホゾパイプの使用例を図8に示す。この図では、横材と下柱をT字状に連結する箇所と、下柱と上柱を一直線に連結する箇所にホゾパイプを使用しており、各部材には、ホゾパイプと同径の軸孔を加工してある。さらにホゾパイプと部材を一体化するため、部材の側面からホゾパイプのピン孔にドリフトピンを打ち込んでいる。そのため部材の側面には、反対面に貫通する側孔を加工してある。なおドリフトピンは、鋼製の丸棒を所定の長さに切り出したもので、また側孔は、ピン孔に応じた位置に加工してあり、しかもドリフトピンを摩擦だけで保持できる内径としてある。
【0005】
ホゾパイプに関する先行技術の例としては、下記特許文献が挙げられる。文献1では、木造住宅において、筋違を横架材に高強度で固定する際に用いる固定金物が開示されている。この固定金物は、ほぞパイプと取付プレートを溶接で一体化した構成で、取付プレートを横長形状とすることで、柱と筋違を一体的に固定可能で、強度や施工性に優れている。
【0006】
また文献2では、柱の負担を軽減することを目的として、木造軸組構造における筋かい金物取付け構造が開示されている。この技術は、筋かいに引張荷重が作用した際、木製柱に及ぶ力学的負担を軽減することを目的としており、木製柱の内部に埋め込まれたホゾパイプと、木製土台と木製柱との角部に配置された三角形状の筋かい取付け金物と、を複数のボルトで連結している。筋かい取付け金物は、ボルトを介してホゾパイプに連結されており、筋かいに作用した引張荷重は、ホゾパイプの全域を介して木製柱に受け止められ、柱に加わる応力が軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−106073号公報
【特許文献2】特開2008−297849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ホゾパイプは、汎用の鋼管を所定の長さに切り出した後、側周面にピン孔を形成しただけの単純な形状であり、溶接作業などが不要で製造費用を抑制でき、しかも引張荷重やせん断荷重に対して十分な強度を確保できる。なお柱などの部材には、あらかじめ軸孔や側孔を加工する必要があるが、これらは汎用のドリルでも対応でき、加工費用や作業性に問題はなく、さらに現地での施工作業も容易である。
【0009】
しかしホゾパイプと部材は、ドリフトピンやボルトなど棒状の固定具だけで一体化している。そのため、連結された二部材に引張荷重が作用した際、固定具がこの荷重を一手に受け止めて部材を引き裂こうとする。その結果、図8のように、側孔を基点として部材の長手方向(木目の方向)にヒビ割れが発生しやすく、これが限度を超えて成長すると部材が破損する恐れもある。この点は、ドリフトピンの本数や直径を増やすことで改善できるが、部材の厚さや断面形状などの制約から対応が難しい場合もある。
【0010】
このような要因から、ホゾパイプを用いた連結構造を設計する際は、ドリフトピンなどの固定具による部材のヒビ割れを考慮して許容耐力を決めることが多い。そのため、ヒビ割れの発生や成長を抑制できるならば、連結構造の許容耐力を向上でき、建築物の安全性も一段と向上することが期待できる。また許容耐力に十分な余裕があれば、より小断面の部材を使用して、構造物の軽量化や小形化も実現できる。
【0011】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、ホゾパイプと固定具で連結された二部材に引張荷重が作用した際、固定具による部材のヒビ割れを抑制可能な連結構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、一方材と他方材との境界面から対向して延びる軸孔に差し込まれるホゾパイプと、前記一方材および前記他方材に設けた側孔に差し込まれ且つ前記ホゾパイプの側周面に設けたピン孔を貫通する固定具と、を備え、前記一方材および前記他方材には、前記ホゾパイプと略平行または略直角にラグスクリューをねじ込んでいることを特徴とする連結構造である。
【0013】
本発明は、木造建築を始めとする各種の木構造において、横材と柱など、棒状の二部材を連結するためのもので、便宜上、連結される二部材のうち一方を一方材と称し、残る一方を他方材と称するものとする。なお一方材と他方材のいずれとも、集成材を含む木質素材とする。また一方材と他方材は、必ず面接触しているが、その配置は自在であり、二部材がT字状やL字状になる場合のほか、二部材の端面同士が接触して直線状になる場合もあり、さらに一方材の側面から斜方向に他方材が突出する場合もある。
【0014】
ホゾパイプは、鋼管を切り出したもので従来と何ら変わりがなく、一方材と他方材を跨ぐように埋め込まれる。そのため一方材と他方材には、ホゾパイプを埋め込むための軸孔をあらかじめ加工しておく。当然ながら軸孔は、二部材を正しく配置した際、同心にそろう必要があり、しかもホゾパイプと同径として隙間が生じないようにする。そのほかホゾパイプは、文字通り中空状であるが、強度などとの兼ね合いで中実の丸棒状とすることもできる。なおホゾパイプを軸孔に埋め込んだだけでは、引張荷重に対抗できない。そのため一方材と他方材のいずれにも、ドリフトピンなどの固定具を差し込んでいる。
【0015】
固定具は、鋼製の細長い棒状で、部材とホゾパイプを一体化する機能を担い、部材の側面に加工してある側孔に差し込む。固定具の具体例としては、ドリフトピンやボルトが挙げられる。側孔に差し込まれた固定具は、ホゾパイプを貫通する必要があり、ホゾパイプの側周面には製造段階でピン孔を形成してある。なおドリフトピンは、側孔との摩擦だけで部材の内部に保持される。またボルトを使用する場合、その先端を反対面に貫通させてナットを取り付ける。
【0016】
固定具は、一方材と他方材のそれぞれに一本だけ使用することも有り得るが、通常は各部材に対して複数本を使用する。また全ての固定具を平行にそろえることは稀であり、通常は隣接する固定具を直角に配置して、荷重を広範囲に分散させる。
【0017】
ラグスクリューは、汎用の木ネジを大形化したもので、側周面には螺旋状に延びるネジ部を形成してあり、従来から木造建築などで使用されている。ネジ部が部材の中に食い込むことで木質繊維の移動を規制して、ヒビ割れの発生や成長を抑制できる。本発明は、このようなラグスクリューの特徴を利用して、連結構造の耐力を向上するものである。なおラグスクリューの使用数やねじ込み方法は自在であり、二部材を貫通するようにねじ込む場合もあれば、二部材を貫通させない場合もある。ただしラグスクリューは、施工性や効果を考慮して、ホゾパイプとほぼ平行またはほぼ直角にねじ込むものとする。
【0018】
ラグスクリューをねじ込むことで部材が強化され、二部材に過大な引張荷重が作用した際も、ドリフトピンなどの固定具によって部材が引き裂かれることを防止でき、連結構造の耐力が向上する。なお二部材を貫通するようにラグスクリューをねじ込んだ場合、ホゾパイプや固定具に作用する負荷が軽減され、一段と連結構造の耐力が向上する。
【0019】
請求項2記載の発明は、二部材の配置やラグスクリューのねじ込み方法を限定するもので、一方材の側面と他方材の端面が接触しており、ラグスクリューは、ホゾパイプと略平行しており且つ一方材の側面から他方材に向けてねじ込んであり、該ラグスクリューのネジ部は、一方材と他方材の両方に跨っていることを特徴とする。本発明は、一方材の側面に他方材の端面が接触するT字状またはL字状の連結構造を想定しており、一方材側の軸孔は側面に加工するが、他方材側は端面に加工する。なお他方材の端面を斜方向に切断することで、他方材を斜方向に突出させることもできる。
【0020】
ラグスクリューは、一方材の各側面のうち、他方材と接触する面の反対からねじ込み、その先端側は、一方材と他方材の境界を通り過ぎて他方材に到達させる。したがってホゾパイプとラグスクリューは、ほぼ平行に並び、二部材に引張荷重が作用した際は、ラグスクリューもこの荷重を受け止める。なお、ラグスクリューのねじ込みを終えた際、そのネジ部は、一方材と他方材の両方に跨っているものとする。そのため部材の経年変形でラグスクリューに緩みが生じることはない。
【0021】
請求項3記載の発明も、二部材の配置やラグスクリューのねじ込み方法を限定するもので、一方材と他方材の端面同士が接触して略直線状に並んでおり、ラグスクリューは、ホゾパイプおよび固定具のいずれとも略直角にねじ込んであり且つ固定具から見て一方材と他方材との境界側に位置することを特徴とする。本発明は、一方材と他方材の端面同士が接触して直線状に並ぶことを想定しているが、部材の端面を斜方向に切断して若干の交角を持たせることもできる。このように二部材を直線状に並べる場合、これらを貫通するようにラグスクリューをねじ込むことが難しい。そのためラグスクリューは、部材の側面からホゾパイプに対してほぼ直角にねじ込むことを想定しており、対向する部材に到達することはない。
【0022】
さらにラグスクリューは、単純に一方材や他方材の側面にねじ込む訳ではなく、特定の固定具に対して直角にねじ込み、しかもその固定具から見て、干渉しない程度の距離を空けて二部材の境界面側に位置するものとする。なお一本の部材に複数の固定具を差し込んでいる場合、全ての固定具に対して、この要領でラグスクリューをねじ込むこともできるが、一部の固定具に限定することもできる。
【0023】
このように、固定具に隣接してラグスクリューをねじ込むことで、固定具の近傍を重点的に強化できる。そのため二部材に引張荷重が作用した際も、固定具による部材のヒビ割れを抑制できる。しかも過大な引張荷重によって固定具が移動した際は、ラグスクリューが固定具と接触して、それ以上の移動を押さえ込み、連結構造の破損を防止できる。
【発明の効果】
【0024】
請求項1記載の発明のように、面接触している二部材の境界を跨ぐようにホゾパイプを埋め込み、さらにドリフトピンなどの固定具でホゾパイプと部材を一体化する連結構造において、部材にラグスクリューをねじ込むことで、部材を強化できる。そのため、二部材に引張荷重が作用した際、固定具による部材のヒビ割れを抑制でき、連結構造の許容耐力が向上する。これによって建築物などの安全性も一段と向上するほか、許容耐力に十分な余裕がある場合、より小断面の部材を使用して、構造物の軽量化や小形化を実現できる。なおラグスクリューは、汎用品を使用可能で、しかも下孔を加工するだけでねじ込み可能で、作業性や費用面でも優れている。
【0025】
請求項2記載の発明のように、一方材と他方材をT字状やL字状に連結する構造において、ホゾパイプとほぼ平行して二部材を貫通するようにラグスクリューをねじ込むことで、ホゾパイプのほか、ラグスクリューでも二部材が連結され、強度が向上する。
【0026】
請求項3記載の発明のように、一方材と他方材の端面同士を接触させて直線状に連結する構造において、固定具に隣接してラグスクリューをねじ込むことで、固定具の近傍を重点的に強化でき、二部材に引張荷重が作用した際も、ヒビ割れの発生や成長を抑制できる。しかも過大な引張荷重によって固定具が移動した際は、ラグスクリューが固定具と接触して、それ以上の移動を押さえ込み、連結構造の破損を極限まで引き延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による連結構造の形状例を示す斜視図で、横材と柱をT字状に連結している。
【図2】図1の横材と柱を連結した後の斜視図と、その中央部の縦断面図である。
【図3】図2のB−B線を切断線とした縦断面図である。
【図4】垂直方向に並ぶ下部材と上部材の連結構造を示す斜視図である。
【図5】図4の下部材と上部材を連結した後の縦断面図と、その際のラグスクリューなどの配置を示す斜視図である。
【図6】横材と斜材の連結構造を示す斜視図で、横材の上面から斜め上方に斜材が突出している。
【図7】本発明の使用例を示す斜視図で、下弦材と上弦材と縦材と筋交いでトラスを構成している。
【図8】ホゾパイプとドリフトピンを用いた一般的な連結構造の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明による連結構造の形状例を示している。この連結構造は、水平に配置した横材11の上面に柱21を載せたT字状であり、横材11を一方材として、柱21を他方材とする。そして横材11と柱21を連結するため、双方の境界を跨ぐようにホゾパイプ31を埋め込み、さらに横材11と柱21のそれぞれをホゾパイプ31と一体化するため、双方の側面から固定具を打ち込んでいる。
【0029】
ホゾパイプ31は、鋼製のパイプを所定の長さに切り出して、その側周面を貫通するピン孔32を複数組形成したもので、図では直交する二方向に計六組のピン孔32を形成してある。またホゾパイプ31を埋め込むため、横材11の上面には裏側に貫通する軸孔13を加工してあり、対する柱21の下面中央には長手方向に延びる軸孔23を加工してあり、両軸孔13、23でホゾパイプ31の全体を埋め込むことができる。なお軸孔13、23の内径とホゾパイプ31の外径は等しく、ホゾパイプ31を埋め込んだ際、双方は隙間なく密着する。
【0030】
ホゾパイプ31を横材11や柱21と一体化するための固定具には、ドリフトピン34を使用している。ドリフトピン34は、鋼製の単純な丸棒であり、横材11や柱21の側面に加工してある側孔17、27に打ち込まれて、摩擦だけで保持される。ドリフトピン34は、ホゾパイプ31のピン孔32を貫通するように打ち込む必要があり、側孔17、27は軸孔13、23と交差して反対面に達している。
【0031】
ラグスクリュー35は、一般的な木ネジを大形化したもので、ドライバーなどの工具を掛けるための頭部36と、側周面に螺旋状のネジが形成されたネジ部37などで構成され、横材11の下面から柱21に向けてねじ込まれる。ただしネジ部37の外径は、最低でも8mm程度であり、横材11と柱21にはあらかじめ下孔15、25を加工してある。当然ながら双方の下孔15、25は、同心にそろう必要がある。なおこの図では四本のラグスクリュー35を使用しており、下孔15、25も四組加工してある。
【0032】
図2は、図1の横材11と柱21を連結した後の状態と、その中央部の縦断面を示している。ホゾパイプ31は、全体が横材11と柱21の中に埋め込まれており、ドリフトピン34の端面だけが側孔17、27の中に現れている。またラグスクリュー35は、頭部36を除く全体が横材11と柱21の中に埋め込まれており、部材の表面に現れる部品が少なく、後工程で壁材や付属品などを自在に取り付けることができる。さらに縦断面図のように、ホゾパイプ31は、横材11と柱21のいずれとも隙間なく埋め込まれており、水平荷重を円滑に伝達できる。なおホゾパイプ31のピン孔32は計六組だが、下から二番目のものは、構造上、ドリフトピン34を打ち込んでいない。
【0033】
図3は、図2のB−B線を切断線とした縦断面である。この図は、柱21を対角線上で切断しており、柱21の幅が図2の縦断面図よりも約1.4倍長くなっている。またラグスクリュー35は、頭部36を除くほぼ全域がネジ部37となっており、ねじ込みを終えた際、ネジ部37は横材11と柱21を跨いでいる。そのため横材11が乾燥などで収縮して、頭部36が浮き上がった際も、二部材を緩むことなく連結できる。ただしネジ部37が横材11と柱21を跨ぐため、ねじ込みの際、柱21を横材11に引き寄せることができない。そのため施工時は、まずホゾパイプ31とドリフトピン34で横材11と柱21を密着させた後、ラグスクリュー35をねじ込む。
【0034】
図4は、垂直方向に並ぶ下部材12と上部材22の連結構造である。この連結構造は、下部材12と上部材22の端面同士を接触させて長尺化するもので、下部材12を一方材として、上部材22を他方材とする。下部材12と上部材22は、横断面形状が等しい角棒であり、下部材12の上端面の中央と、上部材22の下端面の中央には、長手方向に延びる軸孔13、23を加工してあり、この中にホゾパイプ31を埋め込み、さらに両部材の側面からドリフトピン34を打ち込み、双方を一体化している。
【0035】
このように二部材の端面同士が接触する連結構造において、その境界に向けてラグスクリュー38をねじ込むには、斜方向に下孔15、25を加工する必要がある。しかしこの加工は、作業性が悪く精度の確保も難しい。さらにねじ込み後、ラグスクリュー38の頭部36が部材から大きく突出する。この点を解消するため本発明では、ラグスクリュー38をホゾパイプ31に対して直角にねじ込んでいる。ただし単純にねじ込んでいる訳ではなく、ドリフトピン34の移動を規制できるよう、下孔15、25は、側孔17、27と対になるように設けている。
【0036】
下孔15、25は、対になる側孔17、27と直角に加工してあり、しかもその側孔17、27から見て、二部材の境界側に位置している。なお対になる下孔15、25と側孔17、27は、干渉しない程度に接近させている。この図では、ホゾパイプ31との兼ね合いから、一箇所の側孔17、27に対して二箇所に下孔15、25を加工してある。また下部材12と上部材22のいずれとも、側孔17、27を三箇所に加工してあるが、その全てに対して下孔15、25を加工して、ラグスクリュー38をねじ込んでいる。
【0037】
図5は、図4の下部材12と上部材22を連結した後の縦断面と、その際のラグスクリュー38などの配置を示している。下部材12と上部材22は、ホゾパイプ31とドリフトピン34で連結されており、またドリフトピン34と交差するようにラグスクリュー38をねじ込んでいる。そのため右下の斜視図のように、ラグスクリュー38は、ドリフトピン34の移動を規制するような配置となっており、二部材に引張荷重が作用した際も、ドリフトピン34で部材を引き裂くことは困難である。さらに過大な引張荷重によってドリフトピン34が移動した際は、ラグスクリュー38と接触することで、それ以上の移動を強固に規制する。
【0038】
図6は、横材11と斜材29の連結構造である。図1の連結構造は、横材11と柱21をT字状に連結しているが、この図のように、斜め上方に延びる斜材29を連結することもできる。なおこの図では、横材11を一方材として、斜材29を他方材とする。斜材29の下端面は、斜方向に切断してあり、この面を横材11の上面に接触させると、斜材29は斜め上方に突出する。またホゾパイプ31を埋め込む軸孔13、23は、斜材29の長手方向に加工してある訳ではなく、垂直方向に加工してある。そのため軸孔23は、斜材29を貫通しないよう、図のやや右寄りに加工してある。同様にラグスクリュー35は、斜材29を貫通しないよう、図のやや右寄りに二本だけをねじ込んでいる。そのほか固定具にはボルト39を使用しており、これを側孔17、27に差し込んだ後、その先端にナット33を螺合する。
【0039】
図7は、本発明の使用例を示している。本発明は、T字状や直線状など、様々な位置関係の二部材を連結可能で、この図のようなトラスを組む際も、全面的に使用可能である。下弦材41と上弦材42は、図4と同じ構造で複数の部材を直線状に連結したもので、また下弦材41と上弦材42を結ぶ縦材43の両端は、図1と同じ構造でT字状に連結してある。さらに筋交い44は、図6と同じ構造で連結してある。
【符号の説明】
【0040】
11 横材(一方材)
12 下部材(一方材)
13 軸孔
15 下孔
17 側孔
21 柱(他方材)
22 上部材(他方材)
23 軸孔
25 下孔
27 側孔
29 斜材(他方材)
31 ホゾパイプ
32 ピン孔
33 ナット
34 ドリフトピン(固定具)
35 ラグスクリュー
36 頭部
37 ネジ部
38 ラグスクリュー
39 ボルト(固定具)
41 下弦材
42 上弦材
43 縦材
44 筋交い


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方材(11、12)と他方材(21、22、29)との境界面から対向して延びる軸孔(13、23)に差し込まれるホゾパイプ(31)と、前記一方材(11、12)および前記他方材(21、22)に設けた側孔(17、27)に差し込まれ且つ前記ホゾパイプ(31)の側周面に設けたピン孔(32)を貫通する固定具(34、39)と、を備え、前記一方材(11、12)および前記他方材(21、22)には、前記ホゾパイプ(31)と略平行または略直角にラグスクリュー(35、38)をねじ込んでいることを特徴とする連結構造。
【請求項2】
前記一方材(11)の側面と前記他方材(21)の端面が接触しており、前記ラグスクリュー(35)は、前記ホゾパイプ(31)と略平行しており且つ前記一方材(11)の側面から前記他方材(21)に向けてねじ込んであり、該ラグスクリュー(35)のネジ部(37)は、前記一方材(11)と前記他方材(21)の両方に跨っていることを特徴とする請求項1記載の連結構造。
【請求項3】
前記一方材(12)と前記他方材(22)の端面同士が接触して略直線状に並んでおり、前記ラグスクリュー(38)は、前記ホゾパイプ(31)および前記固定具(34、39)のいずれとも略直角にねじ込んであり且つ前記固定具(34、39)から見て前記一方材(12)と前記他方材(22)との境界側に位置することを特徴とする請求項1記載の連結構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−136912(P2012−136912A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291602(P2010−291602)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(501138161)
【Fターム(参考)】