説明

還元剤タンク

【課題】還元剤タンク内の凍結した液体還元剤の解凍性能をより高め、且つ温度センサを用いて還元剤タンク内の液体還元剤が解凍されたかどうかを正確に検知する。
【解決手段】液体還元剤を貯蔵するタンク本体11と、タンク本体11に設けられタンク本体11内の底部から液体還元剤を吸い込む吸込管12と、タンク本体11内の液体還元剤の温度を検知する温度センサ13と、タンク本体11内の液体還元剤の水位を検知する水位センサと、タンク本体11内の液体還元剤の濃度を検知する濃度センサと、タンク本体11に設けられ解凍用媒体が循環する解凍用媒体循環パイプ14と、タンク本体11内の底部に配設され解凍用媒体循環パイプ14の一部を取り囲む箱型隔壁部材15とを備え、箱型隔壁部材15内に吸込管12の入口部及び温度センサ13の検知部22を配設し、箱型隔壁部材15外に前記水位センサの検知部及び前記濃度センサの検知部を配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体還元剤を貯蔵する還元剤タンクに係り、特に、タンク本体底部に解凍用媒体循環パイプを取り囲む箱型隔壁部材を設けた還元剤タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
SCRシステムは尿素(尿素水)を還元剤として使用しエンジンの排気ガス中のNOx(窒素酸化物)を浄化するものである。尿素水は還元剤タンク(尿素タンク)に貯蔵されエンジンの排気管内に適宜供給されるが、極寒地では長時間の車両停車中等に尿素タンク内の尿素水が凍結してSCRシステムの作動ができなくなることがある。そこで、エンジン冷却水によって尿素タンク内の尿素水を解凍するが、尿素水の解凍性能を高めるため尿素タンク底部にエンジン冷却水が循環するエンジン冷却水循環パイプを取り囲むように箱型隔壁部材を設け、その箱型隔壁部材内に熱を閉じ込めることによって吸込管入口やセンサ(水位センサ、濃度センサ)の検知部付近の凍結した尿素水を速やかに解凍する技術が開発されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3687918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の上記発明は吸込管入口、水位センサの検知部及び濃度センサの検知部を取り囲むように箱型隔壁部材を設けるものであり、これら三部品各々の熱容量分、解凍性能は低下する。また、本来SCRシステムを作動させるためには第一に吸込管周りの尿素水を解凍させるのが重要であり、上記三部品の解凍を同じレベルで考える上記発明に対し優先度を考慮した方が解凍性能はより高められる。
【0005】
また、特許文献1では尿素水が解凍されたかどうかの検知に関し示唆がないが、尿素水が解凍されたかどうかを検知してSCRシステムを作動可能かどうか判断する必要がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、還元剤タンク内の凍結した液体還元剤の解凍性能をより高め、且つ温度センサを用いて還元剤タンク内の液体還元剤が解凍されたかどうかを正確に検知することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、液体還元剤を貯蔵するタンク本体と、該タンク本体に設けられ前記タンク本体内の底部から液体還元剤を吸い込む吸込管と、前記タンク本体内の液体還元剤の温度を検知する温度センサと、前記タンク本体内の液体還元剤の水位を検知する水位センサと、前記タンク本体内の液体還元剤の濃度を検知する濃度センサと、前記タンク本体に設けられ解凍用媒体が循環する解凍用媒体循環パイプと、前記タンク本体内の底部に配設され前記解凍用媒体循環パイプの一部を取り囲む箱型隔壁部材とを備え、該箱型隔壁部材内に前記吸込管の入口部及び前記温度センサの検知部を配設し、前記箱型隔壁部材外に前記水位センサの検知部及び前記濃度センサの検知部を配設したものである。
【0008】
また、前記箱型隔壁部材の前記吸込管の入口部付近に、前記吸込管の入口部に装着されるフィルタの掃除又は交換のための孔部を設けても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、還元剤タンク内の凍結した液体還元剤の解凍性能をより高め、且つ温度センサを用いて還元剤タンク内の液体還元剤が解凍されたかどうかを正確に検知することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る還元剤タンクの斜視図である。
【図2】図2は、SCRシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0012】
図2に本実施形態に係る還元剤タンク(尿素タンク)10が用いられるSCRシステム1を示す。このSCRシステム1は、車両に搭載されるエンジン2に適用されるものである。
【0013】
図2に示すように、SCRシステム1においては、例えば、エンジン(例えば、ディーゼルエンジン)2に接続された排気管3には、排気上流側から順に、尿素水を排気管3内に噴射する尿素噴射ノズル4と、排気管3内に噴射された尿素水から生成されるアンモニアで排気ガス中のNOx(窒素酸化物)を還元浄化するSCR触媒(選択還元触媒)5とが配設される。尿素水は尿素タンク10に貯蔵されており、尿素供給配管6を介して尿素供給ポンプ7に供給される。そして、尿素供給ポンプ7はECU(エンジン制御ユニット乃至電子制御ユニット)8により制御され、排気温度センサ(図示せず)により検知されるSCR触媒5の入口の排気温度がSCR触媒5の活性温度に達したとき、排気ガス中のNOxの量に見合った量の尿素水を尿素噴射ノズル4に供給する。
【0014】
図1に本実施形態に係る尿素タンク10の構造を示す。図1中、吸水口等は省略している。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る尿素タンク10は、尿素水を貯蔵する略直方体形状のタンク本体11と、タンク本体11の上部からタンク本体11の底部に向かい垂下され、タンク本体11の底部から尿素水を吸い込む吸込管12と、タンク本体11内の尿素水の温度を検知する温度センサ13と、タンク本体11内の尿素水の水位を検知する水位センサ(図示せず)と、タンク本体11内の尿素水の濃度を検知する濃度センサ(図示せず)と、タンク本体11内の凍結した尿素水を解凍するための解凍用媒体(本実施形態では、エンジン冷却水)が循環する解凍用媒体循環パイプ(本実施形態では、エンジン冷却水循環パイプ)14と、タンク本体11内の底部に配設され、エンジン冷却水循環パイプ14の一部を取り囲む箱型隔壁部材15とを備えている。
【0016】
本実施形態では、吸込管12の出口部(上端部)は、タンク本体11上部に設けられた開口部を閉塞する天蓋16に取り付けられている。
【0017】
エンジン冷却水循環パイプ14は、天蓋16からタンク本体11の底部に向かい垂下され、エンジン冷却水をエンジン2側からタンク本体11内に供給するための供給管部17と、天蓋16からタンク本体11の底部に向かい垂下され、エンジン冷却水をタンク本体11内からエンジン2側に戻すための戻し管部18と、供給管部17の下端と戻し管部18の下端とを接続する略U字状の屈曲管部19とから構成されており、全体として側面視で略L字状に形成されている。即ち、エンジン冷却水循環パイプ14の入口部(供給管部17の上端部)及び出口部(戻し管部18の上端部)は、天蓋16に取り付けられいる。また、屈曲管部19は、吸込管12の入口部(下端部)及び温度センサ16の検知部22を取り囲むように平面視で略U字状に屈曲されている。
【0018】
温度センサ13は、天蓋16に取り付けられた基部20と、基部20からタンク本体11の底部に向かい垂下され、電極等が内装される延出部21と、延出部21の下端部に形成された検知部22とから構成されている。
【0019】
水位センサの基部及び濃度センサの基部は、タンク本体11に取り付けられていても良く、天蓋16に取り付けられていても良い。
【0020】
本実施形態の箱型隔壁部材15は天板23と底板24と側板25とから構成されており、これら天板23、底板24及び側板25は耐食性に優れた材料(例えば、ステンレス)からなる。天板23には、吸込管12、温度センサ13の延出部21、エンジン冷却水循環パイプ14の供給管部17及び戻し管部18がそれぞれ挿通される挿通穴26、27、28が形成されている。本実施形態では、天板23はエンジン冷却水循環パイプ14の供給管部17及び戻し管部18が挿通される挿通穴28の部分で分割されており、分割された天板23でエンジン冷却水循環パイプ14の供給管部17及び戻し管部18を側方から挟み込むようになっている。さらに、本実施形態では、吸込管12、温度センサ13の延出部21、エンジン冷却水循環パイプ14の供給管部17及び戻し管部18と、各挿通穴26、27、28との間には隙間があり、その隙間26、27、28を通って尿素水が箱型隔壁部材15外から箱型隔壁部材15内に導入されるようになっている。
【0021】
本実施形態に係る尿素タンク10では、箱型隔壁部材15内に、吸込管12の入口部及び温度センサ13の検知部22を配設している。また、図示はしないが、本実施形態に係る尿素タンク10では、水位センサの検知部及び濃度センサの検知部は箱型隔壁部材15外側の適宜箇所に各々配設されている。即ち、本実施形態に係る尿素タンク10では、箱型隔壁部材15外に、水位センサの検知部及び濃度センサの検知部を配設している。
【0022】
ところで、吸込管12の入口部にはゴミ取りのためのフィルタを装着するが、吸込管12の入口部を箱型隔壁部材15内に閉じ込めるとフィルタ掃除乃至交換等の作業に手間がかかる虞がある。そこで、吸込管12の入口部付近の箱型隔壁部材15の上部(天板23)乃至側部(側板25)にフィルタ掃除乃至交換のための孔部29を設けると良い。本実施形態では、吸込管12の入口部付近の箱型隔壁部材15の側板25に孔部29を設けている。箱型隔壁部材15には、孔部29の一部又は全部を閉塞する熱逃げ防止用の蓋(図示せず)を設けるとさらに有利である。
【0023】
以上の構成からなる本実施形態の作用を説明する。
【0024】
図2に示されるSCRシステム1では、温度センサ13で検知されるタンク本体11内の尿素水の温度が所定値より低くなったときに吸込管12の入口部付近の尿素水が凍結したと診断してエンジン冷却水をエンジン冷却水循環パイプ14に供給する。また、温度センサ13で検知されるタンク本体11内の尿素水の温度が上記所定値以上になったときに吸込管12の入口部付近の尿素水が解凍されたと診断してエンジン冷却水の供給を停止すると共にSCRシステム10を作動させるようにする。
【0025】
また、フィルタ掃除乃至交換時は吸込管12等を箱型隔壁部材15ごとタンク本体11外に取り出す。吸込管12の入口部付近の箱型隔壁部材15にフィルタ掃除乃至交換のための孔部29を設けていることによって、フィルタ掃除や交換時等には箱型隔壁部材15を吸込管12等から外すことなく吸込管12の入口部に装着されるフィルタの掃除や交換が可能となる。
【0026】
本実施形態に係る尿素タンク10では、尿素水を貯蔵するタンク本体11と、タンク本体11に設けられ、タンク本体11内の底部から尿素水を吸い込む吸込管12と、タンク本体11内の尿素水の温度を検知する温度センサ13と、タンク本体11内の尿素水の水位を検知する水位センサと、タンク本体11内の尿素水の濃度を検知する濃度センサと、タンク本体11に設けられ、エンジン冷却水が循環するエンジン冷却水循環パイプ14と、タンク本体11内の底部に配設され、エンジン冷却水循環パイプ14の一部を取り囲む箱型隔壁部材15とを備え、箱型隔壁部材15内に吸込管12の入口部及び温度センサ13の検知部22を配設し、箱型隔壁部材15外に前記水位センサの検知部及び前記濃度センサの検知部を配設したので、箱型隔壁部材15内部にある部品の熱容量が小さくなり、吸込管12の入口部付近の凍結した尿素水の解凍性能が向上するため、SCRシステム1を作動できるまでの待ち時間が短縮される。
【0027】
即ち、本実施形態では、優先度を考慮して吸込管12の入口部及び温度センサ13の検知部22を箱型隔壁部材15内に配設し、水位センサの検知部及び濃度センサの検知部を箱型隔壁部材15外に配設して、吸込管12の入口部及び温度センサ13の検知部22の二部品近傍の尿素水の解凍を優先して行うことで、箱型隔壁部材15内部にある部品の熱容量を小さくしているのである。
【0028】
また、本実施形態に係る尿素タンク10では、吸込管12の入口部及び温度センサ13の検知部22を箱型隔壁部材15内に配設したので、吸込管12の入口部近傍の尿素水の温度を正確に検知することができ、温度センサ13を用いて尿素タンク10内の尿素水が解凍されたかどうかを正確に検知することが可能になる。
【0029】
また、本実施形態に係る尿素タンク10では、箱型隔壁部材15の吸込管12の入口部付近に、吸込管12の入口部に装着されるフィルタの掃除又は交換のための孔部29を設けたので、フィルタ掃除や交換時等には吸込管12等を箱型隔壁部材15ごとタンク本体11外に取り出し箱型隔壁部材15を吸込管12等から外すことなく吸込管12の入口部に装着されるフィルタの掃除や交換が可能となり、フィルタ掃除乃至交換の作業性が向上する。
【0030】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず他の様々な実施形態を採ることが可能である。
【0031】
例えば、還元剤タンク10に貯蔵される液体還元剤は尿素水には限定はされず、他の液体還元剤であっても良い。
【符号の説明】
【0032】
10 還元剤タンク(尿素タンク)
11 タンク本体
12 吸込管
13 温度センサ
14 解凍用媒体循環パイプ(エンジン冷却水循環パイプ)
15 箱型隔壁部材
22 温度センサの検知部
29 孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体還元剤を貯蔵するタンク本体と、該タンク本体に設けられ前記タンク本体内の底部から液体還元剤を吸い込む吸込管と、前記タンク本体内の液体還元剤の温度を検知する温度センサと、前記タンク本体内の液体還元剤の水位を検知する水位センサと、前記タンク本体内の液体還元剤の濃度を検知する濃度センサと、前記タンク本体に設けられ解凍用媒体が循環する解凍用媒体循環パイプと、前記タンク本体内の底部に配設され前記解凍用媒体循環パイプの一部を取り囲む箱型隔壁部材とを備え、該箱型隔壁部材内に前記吸込管の入口部及び前記温度センサの検知部を配設し、前記箱型隔壁部材外に前記水位センサの検知部及び前記濃度センサの検知部を配設したことを特徴とする還元剤タンク。
【請求項2】
前記箱型隔壁部材の前記吸込管の入口部付近に、前記吸込管の入口部に装着されるフィルタの掃除又は交換のための孔部を設けた請求項1に記載の還元剤タンク。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−117390(P2011−117390A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276725(P2009−276725)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】