説明

部分耕耘直播装置

【課題】不耕起状態の圃場を耕耘爪により部分的に耕起して施肥や播種を行う耕起溝を形成すると共に、耕耘爪の後方に放擲される土塊を捕集しながら耕起溝上に播種床を形成する整地体を備えた部分耕耘直播装置において、前記整地体の終端と圃場面との隙間から土塊が飛散することを防止する。
【解決手段】耕耘爪11の後方に放擲される土塊を捕集しながら耕起溝D1上に播種床Fを形成する整地体28の終端に、この整地体28の終端幅よりも広幅に形成した弾性カバー31を垂下させて取り付けることによって、該弾性カバー31を介して整地体28の終端と圃場面との実質的な隙間が狭くなるように構成し、耕耘爪11の回転駆動速度を高めた時や圃場が乾燥している場合であっても、耕耘爪11の後方に放擲される土塊の飛散を当該弾性カバー31で抑制しながら的確に捕集できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不耕起状態の圃場を部分的に耕起して播種を行う部分耕耘直播装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタ等の牽引走行車に備える昇降リンク機構を介して連結される部分耕耘直播装置を、耕耘軸の軸方向に所定の播種条間を存して複数本放射状に取り付けた耕耘爪と、該耕耘爪を回転駆動させることにより不耕起状態の圃場に耕起溝を形成し、且つ耕耘爪の後方に放擲される土塊を捕集して耕起溝上に播種床を形成する耕耘ユニットと、該耕耘ユニットの後方に、前記播種床に播種溝を形成する溝切り刃と、肥料ホッパを備えて播種溝の側方に肥料を施肥する施肥装置と、種子ホッパを備えて播種溝に種子を播種する施肥装置と、種子を播種した後の播種溝に覆土する覆土板と、覆土した播種溝の上部を押圧整地する鎮圧ローラとを備える播種ユニットによって構成したものを本出願人自ら出願している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特願2006−070296号(図1−図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した特許文献1のものでは、耕耘爪の回転駆動速度を高めた時や圃場が乾燥している場合、耕耘爪の後方に放擲される土塊を捕集しながら耕起溝上に播種床を形成する整地体(リヤカバー)の終端と圃場面との隙間から土塊が飛散し易く、それによって当該整地体の埋め戻し作用により良好な播種床を形成するための土の量が不足することがあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、耕耘軸の軸方向に所定の播種条間を存して複数本の耕耘爪を放射状に取り付け、該耕耘爪を回転駆動させることにより不耕起状態の圃場に耕起溝を形成し、且つ耕耘爪の後方に放擲される土塊を捕集して耕起溝上に播種床を形成する耕耘ユニットと、該耕耘ユニットの後方に、前記播種床に播種溝を形成する溝切り手段と、播種溝に播種する播種装置と、播種した後の播種溝に覆土する覆土手段と、覆土した播種溝の上部を押圧整地する鎮圧手段とを備える播種ユニットを設けた部分耕耘直播装置において、前記耕耘ユニットには、整地体を有し、該整地体の終端から垂下する弾性カバーを設けたことを第1の特徴としている。
そして、整地体の終端幅よりも弾性カバーを広幅に形成したことを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明によれば、耕耘ユニットには、播種床を形成する整地体を有し、該整地体の終端から垂下する弾性カバーを設けたことによって、この弾性カバーを介して整地体の終端と圃場面との実質的な隙間を狭くすることができるので、耕耘爪の回転駆動速度を高めた時や圃場が乾燥している場合であっても、耕耘爪の後方に放擲される土塊の飛散を当該弾性カバーで抑制しながら的確に捕集できるようになり、従来のように、整地体の埋め戻し作用により播種床を形成するための土の量が不足するといった不具合が起こらず、耕起溝上に良好な播種床を形成できるようになる。そして、弾性カバーによって播種床が強圧されることがないので、安定した播種床を形成することが可能である。
そして、請求項2の発明によれば、整地体の終端幅よりも弾性カバーを広幅に形成したことによって、従来の課題である整地体の終端と圃場面との隙間から土塊が飛散することを更に確実に防止することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2は、トラクタ等の牽引走行車に備える昇降リンク機構を介して連結される部分耕耘直播装置1の側面図と平面図であって、この部分耕耘直播装置1は、前記昇降リンク機構に着脱可能に連結される耕耘ユニット2と、この耕耘ユニット2から後方に突出するツールバー3に、ホルダ4及び平行リンク機構5を介して昇降可能に連結した播種ユニット6を備えている。
【0007】
そして、耕耘ユニット2は、牽引走行車の機体側からPTO動力が入力されるギヤケース7と、このギヤケース7の左右の両側には、耕耘ユニット2の横伝動筒を兼ねる筒状アーム8L,8Rとを備え、左側筒状アーム8Lの外端(左端側)には伝動ケースであるチェンケース9、一方右側筒状アーム8Rの外端(右端側)には図示しないサイドプレートを固設すると共に、所定の播種条間を存して複数本の耕耘爪11を放射状に螺設した耕耘軸12をチェンケース9とサイドプレートの間に回転可能に支承することによって、所謂サイドドライブ方式の伝動機構を構成している。そして、耕耘ユニット2の後方には、耕深調節用の尾輪13をツールバー3に支持している。
【0008】
一方、播種ユニット6は、各播種条毎に肥料Mを収容する肥料ホッパ14を備えて播種溝D2の側方に肥料Mを施肥する施肥装置15と、種子ホッパ16を備えて播種溝D2に種子Sを播種する施肥装置17と、両ホッパ14,15内から肥料や種子Sを播種溝D2に向けて繰り出すスライドロール式の繰出装置18と、播種溝D2を形成(作溝)する溝切り手段である溝切り刃19、更に種子Sを播種した後の播種溝D2に覆土する覆土手段である覆土板20、播種溝D2の上部を押圧する鎮圧手段である鎮圧ローラ21及び接地輪22等を備えている。
【0009】
更に詳しくは、上述したギヤケース7に入力されるPTO動力は、チェンケース9を介して耕耘軸12に伝達されるようになっており、この耕耘軸12の軸方向に所定の播種条間を存して放射状に螺設した複数本の耕耘爪11を、部分耕耘直播装置1が牽引されるトラクタ等の車輪と同一の回転方向(正転方向)、即ち図中A矢印方向に回転駆動させることにより、不耕起状態の圃場において、種子Sの播種位置のみを部分耕起して幅狭な耕起溝D1を形成できるようになっている。
【0010】
また、上述した耕耘爪11の上方を覆う側面視で円弧状に形成したロータリカバー25は、耕耘ユニット2の略全幅を覆っており、更にその後端には、支点Pを回動中心として上下回動可能なリヤカバー26を耕耘ユニット2の略全幅に亘って設けている。そして、このリヤカバー26は、ロータリカバー25に設けた支持部材25aに連結するロッド27を介して上下高さ位置(回動高さ位置)を調節することができるようになっている。
【0011】
そして、正回転駆動する耕耘爪11により耕起破砕された土塊は耕耘爪11の後方に放擲されるので、その土塊を効率よく捕集して耕起溝D1上に適切な播種床Fを形成すべく、耕耘爪11の後方側を覆う整地体28をリヤカバー26の下面側に押し当てた状態でナット30,30を用いて螺設できるように構成している。尚、整地体28の上部側には、リヤカバー26への取り付け用のPボタン29,29を溶着してある。(図3参照)
【0012】
ところが、耕耘爪11の回転駆動速度を高めた時や圃場が乾燥している場合、耕耘爪11の後方に放擲される土塊を捕集しながら耕起溝D1上に播種床Fを形成する整地体28(リヤカバー)の終端と圃場面との隙間から土塊が飛散し易く、それによって当該整地体28の埋め戻し作用により良好な播種床を形成するための土の量が不足するといった不具合を従来は有していた。
【0013】
そこで、本発明では、耕起溝D1上に播種床Fを形成する整地体28の終端から垂下する弾性カバー31を設ける(螺設する)ことによって、この弾性カバー31を介して整地体28の終端と圃場面との実質的な隙間を狭くすることができるので、耕耘爪11の回転駆動速度を高めた時や圃場が乾燥している場合であっても、耕耘爪11の後方に放擲される土塊の飛散を当該弾性カバー31で抑制しながら的確に捕集できるようになり、従来のように、整地体28の埋め戻し作用により播種床Fを形成するための土の量が不足するといった不具合が起こらず、耕起溝D1上に良好な播種床Fを形成できるようになる。そして、弾性カバー31によって播種床Fが強圧されることがないので、安定した播種床Fを形成することが可能である。
【0014】
更に詳しくは、上述した整地体28は、図3に示す平面図(a)と背面図(b)のように、耕耘爪11の後方側を覆ってその後端側が徐々に狭くなるコの字の土塊捕集形状に形成すると共に、その左右両側片28a,28aの下側を広幅となるように形成した鋼板からなり、このような形状によって、耕耘爪11の後方に放擲される土塊の飛散を抑制しながら当該土塊を効率的に捕集して適切な播種床Fを形成することができるようにしている。尚、整地体28の上部側には、該整地体28をリヤカバー26への取り付ける際に用いるPボタン29,29を溶着すると共に、整地体28の下部側、即ち終端側には、弾性カバー31を螺設するための取り付け孔28b,28bを穿設してある。
【0015】
そして、整地体28の終端側に取り付ける弾性カバー31の形状を、図4〜図6に示すように、整地体28の終端幅よりも弾性カバー31を広幅に形成することによって、従来の課題である整地体(リヤカバー)28の終端と圃場面との隙間から土塊が飛散することを更に確実に防止できるようにしている。特に、図6に示す実施例では、コの字の土塊捕集形状を有する整地体28の終端形状、即ち整地体28の左右両側片28a,28aに倣わせて弾性カバー31を取り付けることによって、土塊の捕集も効率的に行えるようにしている。尚、上述した各実施例における弾性カバー31は、その取付部を整地体28の下面側に押し当てた状態で、Pボタン32,32を溶着した押えプレート33で押さえながら上面側からナット34,34を用いて螺設できるようにしてある。
【0016】
ところで、部分耕耘する圃場の土が湿っている場合は、耕耘爪11の後方に放擲される土塊が鋼板製の整地体28の下面側に付着して、均質な播種床Fを形成できなくなる虞があることから、図7に示すように、整地体28に土塊が衝突する部分に大穴Hを開けると共に、この大穴Hを整地体28の下面側から塞ぐ合成ゴム板35を、Pボタン32,32を溶着した押えプレート36,37で押さえながら上面側からナット34,34を用いて螺設することによって、当該ゴム板35に付着する土塊を部分耕耘直播装置1の振動を利用して振るい落とせるように構成してもよい。
【0017】
また、図4〜図6に例示した整地体28の終端と圃場面との隙間から土塊が飛散することを防止する合成ゴムからなる弾性カバー31を、図8及び図9に示すように、整地体28に土塊が衝突する部分まで延出させて整地体28の下面側に螺設することによって、当該弾性カバー31に付着する土塊を部分耕耘直播装置1の振動を利用して振るい落とせるように構成することも可能である。
【0018】
以上説明した本発明の部分耕耘直播装置1によれば、不耕起状態の圃場において、耕耘爪11により種子Sの播種位置のみを部分耕起して幅狭な耕起溝D1を形成すると共に、耕耘爪11の後方に放擲される土塊を整地体28と、該整地体28の終端から垂下するように取り付けた弾性カバー31とで確実に捕集しながら、前記耕起溝D1に土塊を埋め戻して適切な播種床Fを形成した後、溝切り刃19により播種溝D2を形成(作溝)し、次いで肥料ホッパ14から播種溝D2の側方への肥料Mの施肥と、種子ホッパ16から播種溝D2への種子Sの播種を行いながら、覆土板20による播種溝D2への覆土と、この覆土した後を鎮圧ローラ21の押圧によって鎮圧することで、良好な部分耕起直播が実行されるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】部分耕耘直播装置の側面図。
【図2】部分耕耘直播装置の一部省略平面図。
【図3】整地体の平面図(a)と背面図(b)。
【図4】弾性カバーの第1実施例を示す平面図(a)と背面図(b)。
【図5】弾性カバーの第2実施例を示す平面図(a)と背面図(b)。
【図6】弾性カバーの第3実施例を示す平面図(a)と背面図(b)。
【図7】土塊の付着を防止するゴム板の取り付け構成を示す平面図。
【図8】弾性カバーの第4実施例を示す平面図。
【図9】弾性カバーの第5実施例を示す平面図。
【符号の説明】
【0020】
2 耕耘ユニット
6 播種ユニット
11 耕耘爪
12 耕耘軸
17 播種装置
19 溝切り手段
20 覆土手段
21 鎮圧手段
28 整地体
31 弾性カバー
D1 耕起溝
D2 播種溝
F 播種床

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘軸(12)の軸方向に所定の播種条間を存して複数本の耕耘爪(11)を放射状に取り付け、該耕耘爪(11)を回転駆動させることにより不耕起状態の圃場に耕起溝(D1)を形成し、且つ耕耘爪(11)の後方に放擲される土塊を捕集して耕起溝(D1)上に播種床(F)を形成する耕耘ユニット(2)と、該耕耘ユニット(2)の後方に、前記播種床(F)に播種溝(D2)を形成する溝切り手段(19)と、播種溝(D2)に播種する播種装置(17)と、播種した後の播種溝(D2)に覆土する覆土手段(20)と、覆土した播種溝(D2)の上部を押圧整地する鎮圧手段(21)とを備える播種ユニット(6)を設けた部分耕耘直播装置において、前記耕耘ユニット(2)には、整地体(28)を有し、該整地体(28)の終端から垂下する弾性カバー(31)を設けたことを特徴とする部分耕耘直播装置。
【請求項2】
整地体(28)の終端幅よりも弾性カバー(31)を広幅に形成した請求項1に記載の部分耕耘直播装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−61586(P2008−61586A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243573(P2006−243573)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】