説明

金属材−金属材接合用塗料及びそれを用いて得られた金属材−金属材接合用塗装金属材並びにそれを用いた金属材と金属材の接合方法

【課題】二つの金属材を強固に接合せしめることの出来る塗料と、それを用いて得られた塗装金属材、及び二つの金属材の接合方法を提供する。
【解決手段】80重量%までのポリブチレンテレフタレート樹脂と20重量%以上の水酸基含有ポリエステル樹脂とを組み合わせ、それら2種の樹脂と共に、該水酸基含有ポリエステル樹脂に対して0〜50重量%の割合となる硬化剤を溶剤に配合せしめて、かかる水酸基含有ポリエステル樹脂を溶解させ、更にポリブチレンテレフタレート樹脂を溶解乃至は微細に分散させてなる状態に調製されていることを特徴とする金属材−金属材接合用塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材−金属材接合用塗料及びそれを用いて得られた金属材−金属材接合用塗装金属材並びにそれを用いた金属材と金属材の接合方法に係り、特に、二つの金属材を相互に接合せしめるために、かかる金属材の接合面に塗布される塗料と、そのような塗料が塗布されてなる金属材からなる塗装製品、更にはそのような塗料を用いた二つの金属材の接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属材(部材)同士を接合して、一体化せしめてなる接合物は、家庭用機器から輸送用機器、更には工業用機械器具に至る、あらゆる分野における各種構成部品乃至は製品として用いられてきており、そのような接合物を与える二つの金属材は、リベット等による機械的締結の他、溶接に代表される材質的結合(溶融接合法、液相−固相反応接合法、固相接合法等)や、接着に代表される化学的結合によって、接合せしめられている(非特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、そのような金属材同士の接合に採用される、溶接によって代表される材質的結合手法にあっては、一般的に、その接合を行なうための装置や操作が大型化、複雑化したり、接合のための熱エネルギーの消費量が大きく、そのために材質変化を惹起したりして、接合コストが高くなる等の問題を内在しているのであり、また、接着に代表される化学的結合手法にあっては、その接合操作が容易で且つ簡単なことにより、これまでに、各種の接着剤が提案され、例えば、上記の非特許文献1においては、熱硬化性樹脂系、熱可塑性樹脂系、ゴム系、複合系等の各種の合成高分子接着剤が明らかにされているが、それら従来の接着剤には、一般に、耐熱性に劣り、接着強度が充分でなかったり、また、特別な表面改質処理が必要とされる等の問題を内在するものであった。
【0004】
例えば、特許文献1においては、金属の表面を活性化し、接着性に優れたプライマー層を強固に付着させた接合用金属部材を得るべく、金属基材の表面に、例えば、レーザ処理によってエネルギーを加え、かかる基材表面に金属水酸化物を形成した状態で、所定の化合物を含むプライマーを塗布し、形成されるプライマー層中の化合物を、基材表面の金属水酸化物の水酸基に、直接共有結合させるようにした手法が明らかにされているが、そこでは、基材表面に対して、レーザ処理等の特別な表面改質処理を加える必要があるところから、接合操作が面倒なものとなり、また、改質処理のための装置が必要となって、接合コストが上昇するという問題も内在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−5838号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本金属学会編、「改訂6版 金属便覧」(丸善株式会社発行)、第991〜1003頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、二つの金属材を、それらの接合面に何等特別な表面改質処理を施すことなく、簡単に且つ強固に接合せしめることの出来る塗料と、それを用いて得られた塗装金属材、更にはそのような塗料を用いて二つの金属材を効果的に且つ経済的に有利に接合せしめる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組合せにて、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載から把握することの出来る発明思想に基づいて認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0009】
(1) 金属材と金属材とを接合せしめるために、それら金属材の少なくとも何れか一方の接合面に塗布される塗料にして、
80重量%までのポリブチレンテレフタレート樹脂と20重量%以上の水酸基含有ポリエステル樹脂とを組み合わせ、それら2種の樹脂と共に、該水酸基含有ポリエステル樹脂に対して0〜50重量%の割合となる硬化剤を溶剤に配合せしめて、かかる水酸基含有ポリエステル樹脂を溶解させ、更にポリブチレンテレフタレート樹脂を溶解乃至は微細に分散させてなる状態に調製されていることを特徴とする金属材−金属材接合用塗料。
(2) 前記ポリブチレンテレフタレート樹脂が、繊維状乃至は粉粒状の無機フィラーを含有している前記態様(1)に記載の金属材−金属材接合用塗料。
(3) 前記水酸基含有ポリエステル樹脂が、8000以上の数平均分子量と、20℃以上のガラス転移点を有している前記態様(1)又は(2)に記載の金属材−金属材接合用塗料。
(4) 前記硬化剤が、ブロック化ポリイソシアネート化合物、アミノ樹脂及びフェノール樹脂からなる群より選択される前記態様(1)乃至(3)の何れか一つに記載の金属材−金属材接合用塗料。
(5) 前記溶剤が、イソホロン又はN−メチル−2−ピロリドンからなる単溶剤又はそれを主成分とする混合溶剤である前記態様(1)乃至(4)の何れか一つに記載の金属材−金属材接合用塗料。
(6) 前記水酸基含有ポリエステル樹脂と前記硬化剤の合計量に対して、硬化触媒が、更に、0〜1.0重量%の割合で添加されている前記態様(1)乃至(5)の何れか一つに記載の金属材−金属材接合用塗料。
(7) 前記ポリブチレンテレフタレート樹脂が、加熱により前記溶剤に溶解されて得られた溶液を冷却することによって析出せしめられて、微細な固形物として分散させられている前記態様(1)乃至(6)の何れか一つに記載の金属材−金属材接合用塗料。
(8) 金属材の接合面に、前記態様(1)乃至(7)の何れか一つに記載の塗料が、0.5〜10g/m2 の割合で塗布されていることを特徴とする金属材−金属材接合用塗装金属材。
(9) 前記塗料の塗布によって形成された塗料層が加熱処理されて、焼き付けられている前記態様(8)に記載の金属材−金属材接合用塗装金属材。
(10) 前記金属材が、アルミニウム若しくはその合金からなるアルミニウム材である前記態様(8)又は(9)に記載の金属材−金属材接合用塗装金属材。
(11) 接合されるべき二つの金属材のそれぞれの接合面に、前記態様(1)乃至(7)の何れか一つに記載の塗料を、0.5〜10g/m2 の割合で塗布して、加熱乾燥することにより、それぞれ、塗膜を形成せしめた後、それら二つの金属材の塗膜形成面を対向させて重ね合わせ、加熱・加圧することによって、それら二つの金属材を接合せしめることを特徴とする金属材と金属材の接合方法。
(12) 接合されるべき二つの金属材の一方のものの接合面に、前記態様(1)乃至(7)の何れか一つに記載の塗料を、0.5〜10g/m2 の割合で塗布して、加熱乾燥することにより、塗膜を形成せしめた後、その得られた一方の金属材の塗膜形成面上に他方の金属材の接合面を対向させて重ね合わせ、加熱・加圧することによって、それら二つの金属材を接合せしめることを特徴とする金属材と金属材の接合方法。
(13) 接合されるべき二つの金属材の少なくとも何れか一方の接合面に、前記態様(1)乃至(7)の何れか一つに記載の塗料を、0.5〜10g/m2 の割合で塗布する一方、それら二つの金属材の接合面を対向させて重ね合わせ、加熱することによって、それら二つの金属材を接合せしめることを特徴とする金属材と金属材の接合方法。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明に従う金属材−金属材接合用塗料にあっては、それら二つの金属材の接合のために、ポリブチレンテレフタレート樹脂と水酸基含有ポリエステル樹脂の二つの樹脂成分の所定量が用いられていると共に、かかる水酸基含有ポリエステル樹脂は溶解され、更にポリブチレンテレフタレート樹脂が溶解乃至は微細な固形物乃至は粒子として分散せしめられてなる液状形態において、塗料が構成されていることによって、それら二つの樹脂成分の存在にて、一方の金属材の所定の接合面に対して、他方の金属材を簡単に且つ効果的に接合せしめ得て、強固な一体的接合物として、有利に得ることが出来ることとなったのである。
【0011】
しかも、かかる本発明に従う塗料を用いて、それを金属材の接合面に対して塗布するに際しては、金属材の接合面には、何等特別な表面改質処理を施す必要がなく、そのまま塗布することが出来、そして形成される塗膜を介して、加熱下に、接合されるべき金属材を接合せしめるようにすることによって、二つの金属材の確実な接合が効果的に実現され得ることとなるのである。このため、本発明に従う金属材の接合操作は、従来よりも遙かに容易に且つ経済的にも有利に実施され得るのである。
【0012】
また、本発明に従う金属材接合用の塗料には、樹脂成分の一つとしてポリブチレンテレフタレート樹脂を含んでいることにより、耐熱性があり、そのために、そのような塗料を用いて二つの金属材を接合せしめて得られた接合物は、高温下に晒されても、接合強度の低下が効果的に抑制乃至は阻止され得ることとなるところから、かかる接合物を高温環境下で使用される製品乃至は部品として、例えば伝熱管とコルゲートフィンやプレートフィン等とを組み付けてなる熱交換器等として有利に採用することが出来るという特徴も発揮され得るのである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ところで、かかる本発明に従う金属材−金属材接合用塗料において、その必須の構成成分の一つであるポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂は、金属材に対する接着性を高めると共に、塗料に耐熱性をも付与する成分であって、よく知られているように、テレフタル酸又はテレフタル酸ジメチルと1,4−ブタンジオールを主成分として重縮合して得られる、熱可塑性で、結晶性の樹脂であって、本発明では、公知の各種のものが、そのまま、用いられることとなる。また、このPBT樹脂には、更なる耐熱性等を付与するために、ガラス繊維やガラスビーズ、粉体ガラス等の繊維状乃至は粉粒状の無機フィラーが適宜に含有せしめられることとなる。なお、この無機フィラーの含有量としては、塗料として悪影響をもたらさない限りにおいて適宜の割合が選定されるが、一般に、50重量%までの割合において含有せしめられることとなる。
【0014】
そして、この無機フィラーを含有せしめた、或いは含有せしめられていないPBT樹脂は、種々市販されており、例えば、東レ(株)製の、トレコン1401X06(フィラー不含)、トレコン1401X04(フィラー不含)、トレコン1201G−15(ガラス繊維15%含有)、トレコン1101G−30(ガラス繊維30%含有);三菱エンジニアリングプラスチック(株)製の、ノバデュラン5008(フィラー不含)、ノバデュラン5020(フィラー不含)、ノバデュラン5026(フィラー不含)、ノバデュラン5010G15(ガラス繊維15%含有)、ノバデュラン5010G45(ガラス繊維45%含有);ポリプラスチックス(株)製の、ジュラネックス2002(フィラー不含)、ジュラネックス2000(フィラー不含)、ジュラネックス3105(ガラス繊維15%含有)、ジュラネックス3405(ガラス繊維45%含有)等を挙げることが出来、それらの中から適宜に選択されることとなる。
【0015】
また、本発明に従う塗料の他の一つの必須の成分たる水酸基含有ポリエステル樹脂は、多塩基酸成分と多価アルコール成分を主成分として得られる重縮合物からなる、水酸基を含有する公知のポリマーであって、塗料中に溶解乃至は微細に分散せしめられてなる上記PBT樹脂と協働して、接合されるべき金属材に対して優れた接着力を発現させ、また、PBT樹脂の粒子状分散体の形成に際して、その粒子形成をより容易と為し、且つ安定化させ得る効果を発揮するものである。なお、この水酸基含有ポリエステル樹脂としては、その数平均分子量(Mn)が8000以上であるものが、好適に用いられることとなる。この数平均分子量が低くなると、引張剪断接着強さが低下する傾向となるからである。また、かかる水酸基含有ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、20℃以上であることが望ましく、更に、45℃以上であるものが、より有利に用いられることとなる。ここで、かかるガラス転移温度が20℃よりも低くなると、本発明に従う塗料を塗布してなるプレコート金属材、特にその板状物が積み重ねられて保存される際に、それら塗装金属材の耐ブロッキング性が低下して、その作業性や取扱性に問題が惹起される恐れがある。
【0016】
なお、かくの如き本発明において用いられる水酸基含有ポリエステル樹脂は、各種市販されており、その中から適宜に選択されて、用いられることとなる。例えば、東洋紡績(株)製品であるバイロン200(Tg:67℃、水酸基価:6KOHmg/g、Mn:17000)、バイロン290(Tg:72℃、水酸基価:5KOHmg/g、Mn:22000)、バイロン660(Tg:55℃、水酸基価:14KOHmg/g、Mn:8000)、バイロンGK880(Tg:84℃、水酸基価:5KOHmg/g、Mn:18000)、バイロンBX−7000(Tg:60℃、水酸基価:2KOHmg/g、Mn:32000)、バイロンGK330(Tg:16℃、水酸基価:9KOHmg/g、Mn:17000);ユニチカ(株)製のエリーテルUE−9200(Tg:65℃、水酸基価:6KOHmg/g、Mn:15000)、エリーテルUE−9600(Tg:70℃、水酸基価:8KOHmg/g、Mn:18000)等を挙げることが出来る。
【0017】
そして、それらPBT樹脂と水酸基含有ポリエステル樹脂とは、本発明に従う塗料において、前者は80重量%までの割合となるように、従って後者は20重量%以上となる割合において、組み合わされて、用いられることとなる。それら2種の樹脂成分の配合比率において、PBT樹脂が80重量%を超えるようになると、溶剤による溶解が困難となったり、また水酸基含有ポリエステル樹脂の配合量が少なくなるために、かかるPBT樹脂の分散が不充分となって、本発明の目的を充分に達成し難くなる問題を惹起する。なお、本発明に従う塗料によって接合される二つの金属材間の引張剪断接着強さを更に充分に発揮せしめる上において、PBT樹脂は、塗料中において少なくとも5重量%以上の割合で用いられることが望ましい。また、それらPBT樹脂と水酸基含有ポリエステル樹脂とは、好ましくは、それぞれ5〜70重量%及び95〜30重量%の割合において、有利に用いられるのである。
【0018】
また、本発明に従う塗料においては、水酸基含有ポリエステル樹脂を硬化させることの出来る公知の硬化剤が、かかる水酸基含有ポリエステル樹脂に対して、0〜50重量%の割合において、好ましくは5〜30重量%の割合において、添加、配合せしめられることとなる。このような硬化剤の添加によって、接合された二つの金属材間の引張剪断接着強さが、更に有効に向上せしめられ得るのであるが、そのような硬化剤の添加量が増大すると、接着性が低下する傾向となるところから、その過剰の添加は避けるべきである。そして、本発明にあっては、そのような硬化剤として、ブロック化ポリイソシアネート化合物、アミノ樹脂、フェノール樹脂等の公知の各種のものが、適宜に用いられることとなるが、その中でも、接着力を発現し易い硬化剤としては、ブロック化ポリイソシアネート化合物やアミノ樹脂が、好適に用いられる。
【0019】
ここで、そのような硬化剤として用いられるブロック化ポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、ブロック化剤でブロックしたものである。そして、そこにおいて、ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルへキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4(又は2,6)−ジイソシアネート、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の環状脂肪族ジイソシアネート化合物;前記ポリイソシアネート化合物と多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂又は水等との付加物、若しくは前記ポリイソシアネート化合物同士の環状重合体、更に、イソシアネートビュレット体等を挙げることが出来る。特に、これらポリイソシアネート化合物の中でも、衛生上の面において、脂肪族ジイソシアネート化合物が、好ましく用いられる。
【0020】
さらに、かかるポリイソシアネート化合物をブロック化するためのブロック化剤としては、公知の各種のブロック化剤の中から、適宜に選択することが出来るが、本発明に従う塗料の乾燥温度は、使用可能な溶剤に鑑みて、200℃以上が望ましいことから、ブロック化されたものの解離温度は、塗料貯蔵時の安定性を良くするためにも、100〜200℃となるように、ブロック化剤を選定することが望ましい。そして、そのようなブロック化剤としては、例えば、ホルムアミドオキシム、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトアルドキシム等のオキシム系ブロック化剤;ε−カプロラクタム、β−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等のラクタム系ブロック化剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル等のアルコール系ブロック化剤;マロン酸ジメチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系ブロック化剤等を挙げることが出来る。
【0021】
なお、このブロック化剤にてイソシアネート基をブロックしてなるブロック化ポリイソシアネート化合物も、各社から市販されており、例えば、旭化成ケミカルズ(株)製のデュラネート17B−60PX(固形分60%)、デュラネートTPA−B80E(固形分80%)、デュラネートMF−B60X(固形分60%)、デュラネートE402−B80T(固形分80%);デグッサ・ジャパン社製のベスタゴンB1530(固形分100%)、ベスタゴンB1065(固形分100%)、ベスタナットB1358(固形分100%)、ベスタナットB1370(固形分60%)等があり、それらの中から、適宜に選定されることとなる。
【0022】
また、上記した硬化剤のうちの一つであるアミノ樹脂としては、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等を用いることが出来、より具体的には、メチル化尿素樹脂、メチルエーテル化尿素樹脂、ブチルエーテル化尿素樹脂、メチルエーテルとブチルエーテルの混合エーテル化尿素樹脂;メチロール化メラミン樹脂、メチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化メラミン樹脂、メチルエーテルとブチルエーテルの混合エーテル化メラミン樹脂等のメラミン樹脂;メチロール化ベンゾグアナミン樹脂、メチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、ブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、メチルエーテルとブチルエーテルの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂等を挙げることが出来る。市販品としては、例えば、日本サイテックインダストリーズ(株)製のサイメル303(固形分100%)、サイメル235(固形分100%)、マイコート506(固形分100%)、サイメル1123(固形分100%)、UFR65(固形分100%)、UFR300(固形分60%)等を用いることが出来る。
【0023】
さらに、硬化剤としてのフェノール樹脂には、望ましくは、レゾールタイプのフェノール樹脂、その中でも、メタクレゾール樹脂が好ましく用いられ、例えば、住友デュレズ(株)製のスミライトレジンPR−53893A(固形分50%)等の市販品を用いることが出来る。
【0024】
加えて、本発明に従う塗料には、上記の硬化剤と共に、必要に応じて、その硬化触媒が添加され、それによって、接合される二つの金属材間の引張剪断接着強さの効果的な向上が図られ得る。そこでは、用いられる硬化剤の種類によって、適切な硬化触媒が適宜に選択されることとなる。例えば、硬化材がブロック化ポリイソシアネート化合物である場合には、周知の錫系、ジルコニウム系、アルミニウム系、ビスマス系等の有機金属触媒が好適に用いられ、またアミノ樹脂やフェノール樹脂が硬化剤として用いられる場合にあっては、周知のリン酸系やスルホン酸系等の酸が、好適に用いられることとなる。なお、その添加量としては、水酸基含有ポリエステル樹脂と硬化剤の合計量の1重量%以下となるような割合において、用いられることが望ましい。
【0025】
そして、本発明に従う塗料は、上記したPBT樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、硬化剤等を、金属材表面に均一に塗布するために、適当な溶剤を用いて、液状形態に調製されることとなるが、PBT樹脂は、溶解形態において用いられる他、溶剤に溶解し難いものであるところから、有利には、溶剤中に微細に分散せしめられた形態において存在せしめられ、これによって、本発明に従う二つの金属材間の有効な接合が容易に実現され得るのである。なお、そのようなPBT樹脂の微細な分散は、公知の適宜の手法によって行ない得るものであるが、特に、本発明にあっては、PBT樹脂を所定の溶剤に添加せしめた後、加熱して、かかるPBT樹脂を溶剤に溶解せしめ、そして、その得られた溶液を冷却することによって、析出せしめて、微細な固形物粒子として、一般に、200μm以下程度の大きさにおいて、分散せしめられるようにすることが望ましい。
【0026】
なお、かかる塗料の調製に用いられる溶剤としては、o−クロロフェノール、ジクロロベンゼン、ベンジルアルコール、フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒等の公知の溶剤の中から適宜に選択され得るが、特に、単溶剤では、イソホロン又はN−メチル−2−ピロリドンが好適に用いられ、また混合溶剤としても、イソホロンやN−メチル−2−ピロリドンを主成分とし、特に60%以上の割合で含有し、沸点が200℃以上である組成のものが、好適に用いられる。なお、そこで、イソホロンやN−メチル−2−ピロリドンに混合せしめられる溶剤としては、一般に、200℃以上の沸点を有するものであって、特に、溶解性パラメータ(δ)が9〜10であるものが望ましく、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点202℃、δ=9.6)、ジエチレングリコール(沸点245℃、δ=9.1)、DBE(デュポン社製品;グルタル酸ジメチルとアジピン酸ジメチルとコハク酸ジメチルとの混合物、沸点205℃、δ=9.4)等が、好適に用いられることとなる。
【0027】
そして、かくの如くして調製された本発明に従う塗料が塗布される金属材(部材)は、所定の形状を呈するものであって、板材、形材、棒材等の各種の形状のものが対象とされる。更に、その材質としては、アルミニウム若しくはその合金からなるものが好適ではあるが、鉄乃至は鋼材質や銅若しくはその合金材質等、他の金属材質のものであっても、同様の効果を得ることが出来る。加えて、異なる金属材質の金属材の接合にも、本発明に従う塗料は、有効に適用され得るものである。
【0028】
また、本発明に従う塗料を、金属材の接合されるべき接合面に塗布するに際しては、浸漬、吹付け、ロールコート等の公知の塗布手法が、適宜に採用され、そして、その塗装によって形成された塗料層が、熱風乾燥、赤外線照射、高周波加熱等の周知の加熱手段を用いて加熱されることによって、乾燥され、焼き付けられることとなる。なお、このようにして、金属材の所定の接合面上に形成された塗膜は、適宜の厚さとされることとなるが、本発明にあっては、本発明に従う塗料の塗布によって、固形分が0.5〜10g/m2 の割合となるような厚さにおいて、目的とする塗膜が形成されるのである。なお、この塗膜量が少なくなる(厚さが薄くなる)と、接合強度が低下して、本発明の目的が充分に達成され得なくなるからであり、また塗膜量が10g/m2 を超えても、塗料コストが嵩むだけであり、接合強度が向上することはない。
【0029】
そして、かくの如く本発明に従う塗料が塗布されて、所定の塗料層乃至は塗膜が形成されてなる一方の金属材には、そのような塗料層乃至は塗膜を介して、目的とする他方の金属材が接合せしめられるのであるが、そのような接合手法の具体的な一つとしては、接合されるべき二つの金属材のそれぞれの接合面に、上述の如き本発明に従う塗料を、0.5〜10g/m2 の割合で塗布して、加熱乾燥することにより、更には焼き付けることにより、それぞれ、所定の塗膜を形成せしめた後、それら二つの塗装金属材の塗膜形成面を対向させて重ね合わせ、加熱・加圧することによって、それら二つの塗装金属材を接合せしめるようにする手法が、採用される。
【0030】
このような接合手法によれば、二つの塗装金属材の塗膜同士が重ね合わされて、加熱圧着されるものとなるところから、それら金属材間に充分な厚さの塗膜が介在せしめられることとなるのであって、これにより、それら金属材のより強固な接合が実現され得ると共に、乾燥(焼付け)により固化した塗膜を有する塗装金属材を用いて接合するものであるところから、接合操作において、塗装金属材が取り扱い易くなることに加えて、重ね合わせ部の中央部位における溶剤の残留に基づくところの接合不充分部位の発生の問題等を何等顧慮することなく、板状の金属材同士の接合も効果的に行ない得るのである。
【0031】
また、かかる接合方法とは異なり、上記した塗装金属材の一つを用い、それと、塗装されていない金属材とを重ね合わせて、同様に接合せしめる手法も、有利に採用することが出来る。
【0032】
すなわち、接合されるべき二つの金属材の一方のものの接合面に、上記した本発明に従う塗料を、0.5〜10g/m2 の割合で塗布して、加熱乾燥することにより、塗膜を形成せしめた後、その得られた一方の金属材(塗装金属材)の塗膜形成面上に、他方の金属材(非塗装金属材)の接合面を対向させて重ね合わせ、加熱・加圧することによって、それら二つの金属材を接合せしめる手法であり、これによって、塗膜重畳による作用・効果を除き、上記した接合方法と同様な作用・効果を享受することが出来るのである。
【0033】
さらに、本発明にあっては、上記した二つの接合方法の他にも、本発明に従う塗料を塗布して形成される塗料層を乾燥させることなく、直ちに、二つの金属材の接合を行なうようにすることも可能である。具体的には、接合されるべき二つの金属材の少なくとも何れか一方の接合面に、前記した本発明に従う塗料を、0.5〜10g/m2 の割合で供給、塗布する一方、それら二つの金属材の接合面を対向させて重ね合わせ、加熱することによって、それら二つの金属材を接合せしめることからなる手法であって、これによって、加熱乾燥等の操作を施すことなく、塗料の塗布後に、直ちに、金属材の接合を行ない得る利点を享受することが出来ることとなる。
【0034】
なお、上記した接合方法の何れにおいても、本発明に従う塗料からなる塗膜乃至は塗料層を介して重ね合わされた二つの金属材の接合のために、その加熱、更には加圧(圧着)が行なわれることとなるのであって、これにより、塗膜乃至は塗料層中のPBT樹脂を可塑化、溶融せしめると共に、水酸基含有ポリエステル樹脂の架橋、硬化を進行せしめ、以て、重ね合わされた二つの金属材の接合をより強固なものと為し得て、優れた一体化接合物として、有利に得ることが出来ることとなるのである。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明の代表的な実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0036】
(1)PBT樹脂分散液の作製
1Lのフラスコに、市販のPBT樹脂(東レ株式会社製トレコン1401X06)と共に、下記表1に示される水酸基含有ポリエステル樹脂及び下記表2に示される溶剤のそれぞれ一つを用い、それらを、下記表3〜表5に示される割合において仕込み、加熱、攪拌しながら、液温を上げて、水酸基含有ポリエステル樹脂と共に、PBT樹脂を溶解せしめた。溶解温度は、全て200℃とした。次いで、この得られた樹脂溶液を冷却することにより、水酸基含有ポリエステル樹脂溶液中にPBT樹脂が微細に分散した、各種の分散液の他、それら樹脂の一つが溶剤に完全に溶解せしめられてなる均一な樹脂溶液を得た。なお、実験例21,22及び53,54においては、塗料1として、変性ポリプロピレンを主成分とする市販の接着剤(三井化学株式会社製ユニストールR−300)を用い、また実験例43,44及び55,56においては、塗料2として、熱可塑性ポリエステル樹脂を主成分とする市販の接着剤(東洋紡績株式会社製バイロンGK−88CS)を用いて、それぞれの塗膜を形成した。
【0037】
そして、この得られた各種のPBT分散液等について、その粘度を、25℃において、B型粘度計(ロータはNo.3を使用)にて測定する一方、それぞれの分散液等におけるPBT樹脂の分散状態を観察し、以下の基準に基づいて評価し、それぞれの結果を、下記表3〜表5に併せ示した。
完全溶解:液は透明で分散物が存在していない
○ :平均粒径が10μm未満の分散粒子となっている分散液
○△ :平均粒径が10〜30μmの分散粒子の分散液
△ :平均粒径が30μmを越える大きさの分散粒子の分散液
× :樹脂が塊となり、分散しない状態
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
(2)塗料の作製
上記した(1)において得られた各種の分散液等を用い、それらを、それぞれ攪拌しながら、硬化剤としてのブロック化ポリイソシアネート化合物(デグッサ・ジャパン社製ベスタナットB1379)を、それぞれ、必要に応じて、下記表3〜表5に示される条件下において添加して、実験例1〜56に係る各種の塗料を作製した。なお、実験例15〜18については、PBT樹脂が塊状に分散した分散液となったが、それを、そのまま、塗料として用いた。
【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
【表5】

【0044】
(3)塗料の評価−I
上記の(2)で作製された、前記表3に示される各種の塗料を用い、それぞれ、厚さ:1.0mmのアルミニウム合金板(A5182−H24)に、バーコーターにて、下記表6に示される各種の塗布量(固形分;塗膜量)となるように塗装した後、オーブンにて、260℃(最高到達温度)で30秒間(焼付け時間)焼き付けることにより、各種のアルミニウム合金塗装板(プレコート板)を作製した。
【0045】
次いで、上記方法で作製されたアルミニウム合金塗装板を20mm×70mmのサイズに切断した。そして、この切断した2枚のアルミニウム合金塗装板を、200℃に加熱されたホットプレート上で、1分50秒の間加熱せしめた後、直ちに、一方の塗装板を他方の塗装板に対してそれらの塗装面が対向するようにして、10mm×20mmの端部重なり部をもって重ね合わせ、そしてその上から、予め200℃に加熱しておいた1kgfのおもりを載せて、15秒間保持した後、ホットプレート上から取り出し、放冷することにより、各種の接着試験片を作製した。
【0046】
そして、この得られた接着試験片について、引張試験機を用いて、雰囲気温度:25℃又は180℃において、重ね合わせた2枚のアルミニウム合金塗装板の端部を、それぞれ引張して(引張速度:5mm/分)、引張剪断接着強さを測定し、その結果を、下記表6に併せ示した。
【0047】
【表6】

【0048】
かかる表6の結果から明らかなように、本発明に従う実験例1〜12に係る各塗料においては、それぞれの塗装後のアルミニウム合金塗装板同士の間の引張剪断接着強さが、引張試験時の雰囲気温度が25℃の場合は勿論のこと、180℃であっても、7MPa以上となり、それらの間が高い接着性において接合されていることを示した。特に、高温下においても高い接着強さが確保され得ているのである。
【0049】
これに対して、実験例13,14の場合にあっては、アルミニウム合金板に塗装された塗膜量が少ないために、充分な引張剪断接着強さを発揮することが出来ず、また、実験例15〜18の場合にあっては、PBT樹脂の分散が不充分であって、有効な塗膜を形成することが困難であったため、接着力がなく、引張剪断接着強さは0となった。加えて、実験例19,20において示されるように、引張試験時の雰囲気温度が180℃となると、塗膜量が少ない場合においては、引張剪断接着強さが全くなくなってしまうことも明らかとなった。更に、市販の接着剤を用いた場合においても、実験例22に示される如く、引張剪断接着強さを全く認めることが出来なかった。
【0050】
(4)塗料の評価−II
上記の(2)で作製された、前記表4に示される各種の塗料を用い、それぞれ、厚さ:1.0mmのアルミニウム合金板(A5182−H24)に、バーコーターにて、下記表7に示される各種の塗布量(固形分;塗膜量)となるように塗装した後、オーブンにて、260℃(最高到達温度)で30秒間、焼き付けることにより、各種のアルミニウム合金塗装板を作製した。
【0051】
次いで、かかる方法で作製されたアルミニウム合金塗装板を、20mm×70mmのサイズに切断した。そして、この切断したアルミニウム合金塗装板を、塗装されていない、厚さ:1.0mm、サイズ:20mm×70mmの、上記と同様なアルミニウム合金板と共に、200℃に加熱されたホットプレート上で、1分50秒の間加熱した後、直ちに、無塗装板を塗装板に端部が10mm×20mm重なるようにして載せ、その上から、予め200℃に加熱しておいた1kgfのおもりを載せ、15秒間保持した後、ホットプレートから取り出し、放冷することにより、各種の接着試験片を作製した。
【0052】
その後、かかる得られた各種の接着試験片について、それぞれ、上記の(3)の場合と同様にして、25℃又は180℃の雰囲気下において引張試験を行ない(引張速度:5mm/min)、破断荷重を測定して、その結果を、下記表7に併せ示した。
【0053】
【表7】

【0054】
かかる表7の結果から明らかなように、本発明に従う実験例23〜34に係る各塗料においては、それぞれの塗装後のアルミニウム合金塗装板と無塗装のアルミニウム合金板との間の引張剪断接着強さが、引張試験時の雰囲気温度が25℃の場合は勿論のこと、180℃であっても、7MPa以上となり、それらの間が高い接着性において接合されていることを示し、更に、高温下における接着性においても、優れた接着性を発揮していることが明らかとなった。
【0055】
これに対して、実験例35,36及び41,42に示される如く、塗膜量が少なく、充分な厚さの塗膜が形成され得ない場合にあっては、充分な引張剪断接着強さを発揮することは困難であり、また、引張試験時の雰囲気温度が180℃にもなると、接着力がなくなり、引張剪断接着強さが0となった。また、実験例37〜40の場合にあっては、PBT樹脂の分散が不充分で、有効な塗膜を形成することが出来ず、そのために、接着力は殆ど発揮されないものとなった。更に、実験例43,44に示される如く、熱可塑性ポリエステル樹脂のみを用いた接着剤を用いた場合にあっては、常温(25℃)下においては、ある程度の接着力を発揮するものの、高温(180℃)になると、接着力が全く発揮され得ないものとなった。
【0056】
(5)塗料の評価−III
上記の(2)で作製された、前記表5に示される各種の塗料を用い、厚さ:1.0mmの20mm×70mmの大きさのアルミニウム合金板(A5182−H24)と、直径:15mm×長さ:70mmのアルミニウム合金棒(A6063−F)との接合を行なった。即ち、かかるアルミニウム合金板にアルミニウム合金棒を10mmの長さにおいて重ね、その接触部に、上記各塗料をスポイトにて供給した後、その状態を保持しつつ、250℃に加熱したオーブンに収容し、5分間保持した後、放冷することにより、各種の接着試験片を作製した。
【0057】
次いで、かかる得られた接着試験片について、25℃又は180℃の雰囲気下で引張試験を行ない(引張速度:5mm/min)、破断荷重を測定して、その結果を、下記表8に併せ示した。
【0058】
【表8】

【0059】
かかる表8の結果から明らかなように、本発明に従う実験例45〜50に係る各塗料においては、アルミニウム合金板とアルミニウム合金棒との間の引張剪断接着強さが、25℃の雰囲気温度においても、また180℃の高温の雰囲気温度においても、高い接着性を示すものであることが明らかとなった。
【0060】
これに対して、実験例51〜56に係る塗料を用いた場合にあっては、接着強度が全く認められなかったり、また、25℃の雰囲気下においては、ある程度の接着強度を示すものの、180℃の雰囲気下においては、全く接着強度を喪失してしまうことが明らかとなった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材と金属材とを接合せしめるために、それら金属材の少なくとも何れか一方の接合面に塗布される塗料にして、
80重量%までのポリブチレンテレフタレート樹脂と20重量%以上の水酸基含有ポリエステル樹脂とを組み合わせ、それら2種の樹脂と共に、該水酸基含有ポリエステル樹脂に対して0〜50重量%の割合となる硬化剤を溶剤に配合せしめて、かかる水酸基含有ポリエステル樹脂を溶解させ、更にポリブチレンテレフタレート樹脂を溶解乃至は微細に分散させてなる状態に調製されていることを特徴とする金属材−金属材接合用塗料。
【請求項2】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂が、繊維状乃至は粉粒状の無機フィラーを含有している請求項1に記載の金属材−金属材接合用塗料。
【請求項3】
前記水酸基含有ポリエステル樹脂が、8000以上の数平均分子量と、20℃以上のガラス転移点を有している請求項1又は請求項2に記載の金属材−金属材接合用塗料。
【請求項4】
前記硬化剤が、ブロック化ポリイソシアネート化合物、アミノ樹脂及びフェノール樹脂からなる群より選択される請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の金属材−金属材接合用塗料。
【請求項5】
前記溶剤が、イソホロン又はN−メチル−2−ピロリドンからなる単溶剤又はそれを主成分とする混合溶剤である請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の金属材−金属材接合用塗料。
【請求項6】
前記水酸基含有ポリエステル樹脂と前記硬化剤の合計量に対して、硬化触媒が、更に、0〜1.0重量%の割合で添加されている請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の金属材−金属材接合用塗料。
【請求項7】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂が、加熱により前記溶剤に溶解されて得られた溶液を冷却することによって析出せしめられて、微細な固形物として分散させられている請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の金属材−金属材接合用塗料。
【請求項8】
金属材の接合面に、請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の塗料が、0.5〜10g/m2 の割合で塗布されていることを特徴とする金属材−金属材接合用塗装金属材。
【請求項9】
前記塗料の塗布によって形成された塗料層が加熱処理されて、焼き付けられている請求項8に記載の金属材−金属材接合用塗装金属材。
【請求項10】
前記金属材が、アルミニウム若しくはその合金からなるアルミニウム材である請求項8又は請求項9に記載の金属材−金属材接合用塗装金属材。
【請求項11】
接合されるべき二つの金属材のそれぞれの接合面に、請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の塗料を、0.5〜10g/m2 の割合で塗布して、加熱乾燥することにより、それぞれ、塗膜を形成せしめた後、それら二つの金属材の塗膜形成面を対向させて重ね合わせ、加熱・加圧することによって、それら二つの金属材を接合せしめることを特徴とする金属材と金属材の接合方法。
【請求項12】
接合されるべき二つの金属材の一方のものの接合面に、請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の塗料を、0.5〜10g/m2 の割合で塗布して、加熱乾燥することにより、塗膜を形成せしめた後、その得られた一方の金属材の塗膜形成面上に他方の金属材の接合面を対向させて重ね合わせ、加熱・加圧することによって、それら二つの金属材を接合せしめることを特徴とする金属材と金属材の接合方法。
【請求項13】
接合されるべき二つの金属材の少なくとも何れか一方の接合面に、請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の塗料を、0.5〜10g/m2 の割合で塗布する一方、それら二つの金属材の接合面を対向させて重ね合わせ、加熱することによって、それら二つの金属材を接合せしめることを特徴とする金属材と金属材の接合方法。


【公開番号】特開2011−219561(P2011−219561A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88008(P2010−88008)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000002277)住友軽金属工業株式会社 (552)
【出願人】(502314920)バルスパーロック株式会社 (4)
【Fターム(参考)】