説明

金属配線形成用の転写基板及び前記転写用基板による金属配線の形成方法

【課題】転写法により被転写物に金属配線を形成するための転写用基板であって、被転写物側の加熱温度を低くすることのできるもの、及び、金属配線の形成方法を提供する
【解決手段】本発明は、基板と、前記基板上に形成された少なくとも一つの金属配線素材と、前記金属配線素材の表面上に形成された少なくとも1層の被覆層と、前記基板と前記金属配線素材との間に形成された下地金属膜と、からなり、前記金属配線素材を被転写物に転写させるための転写用基板であって、前記金属配線素材は、純度99.9重量%以上、平均粒径0.01μm〜1.0μmである金粉等の金属粉末を焼結してなる成形体であり、前記被覆層は、金等の所定の金属又は合金であって、前記金属配線素材と相違する組成の金属又は合金からなり、かつ、その合計厚さは1μm以下であり、前記下地金属膜は、金等の所定の金属又合金からなる転写用基板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ、化合物ウェハ、MEMSウェハ等の被転写物上へ金属配線を形成するための転写用基板及びこれを利用する金属配線方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ等の電子部品の実装密度の高密度化に伴い、その実装方法は旧来のワイヤボンディング法から、フリップチップボンディング法のような回路基板に半導体チップを直付けするワイヤレス実装法が主流となってきている。この実装方法を用いる電子部品の製造工程は、デバイスウェハの半導体チップ上の端子電極又は半導体チップへの接続用外部電極にバンプを形成して金属配線を構成し、これを基板上へフェイスダウンボンディングするものである。また、バンプの形成の前には、端子電極等の上にメタライズ処理を施してバリアメタル層を形成し、その上にバンプ形成されるのが一般的である。
【0003】
バンプ形成工程の従来の方法としては、めっき法を用いるものが一般的であった。めっき法により形成されるバンプは、緻密で良好な電気伝導特性を有することから電極として有用であると考えられている。しかしながら、めっき法によるバンプ形成は、今後より進行すると考えられる金属配線の微細化に十分に対応できないとの懸念がある。そこで、特許文献1のような転写基板を用いた転写法によるバンプ形成法が提案されている。
【0004】
転写基板によるバンプ形成法では、予めガラス等の基板にバンプとなる配線素材を形成した転写用基板を作製する。そして、予めメタライズ処理されたウェハに転写基板を被せて加圧、加熱し、配線素材をウェハに転写させバンプを形成する方法である。この方法は、加圧、加熱の制御により転写用基板上の任意の配線素材を、ウェハの任意の位置に転写することができ、金属配線の微細化を可能とすると共に、ウェハ上の不良セクタへの配線形成を回避することができ素材の無駄も回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−144870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の転写基板を用いるバンプ形成の過程では、転写用基板及びウェハの加熱が必要である。具体的には、上記従来の転写基板では、ウェハ側の加熱温度を300〜400℃とし、転写基板側の加熱温度を100〜200℃としている。しかし、ウェハ側の加熱温度を高温(300℃以上)にすることは、ウェハ上に半導体回路が形成されている場合において、回路へのダメージが懸念される。よって、本来、バンプ転写時の加熱温度は低い方が好ましいのであるが、ウェハ側の加熱温度を安易に下げることはできない。これは、従来の転写用基板上のバンプは、一般にめっき法で形成されるが、めっきで形成されるバンプをウェハに確実に転写させるためには、ウェハとバンプとが十分に接合する必要があり、そのためには高温加熱が必要だからである。
【0007】
そして、ウェハ上の半導体回路保護の観点からみると、ウェハ上に半導体回路を形成した後にはできるだけ少ない工程でバンプが形成できる方が好ましい。この点、上記のような転写時の加熱のみならず、バリア層形成のためのメタライズ処理も半導体回路にとっては負荷となっている。
【0008】
本発明は、上記課題を背景とするものであり、転写法によりウェハ等の被転写物上に金属配線を形成するための転写用基板について、高温加熱等の被転写物が受ける負荷を軽減することのできるものを提供する。また、この転写用基板を用いた、金属配線の形成方法についても開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決すべく、まず、転写基板の転写温度の低温化を図るべく、本発明者等の有する技術的知見を考慮して検討を行った。そして、高純度であり、微細粒径の金属粉末を焼結してなる成形体は、比較的低温でも被転写物に接合可能であること、及び、それが金属配線として機能することを見出した。
【0010】
そして、本発明者等は、更に検討を重ね、上記のような金属粉末の焼結体は、その表面性状に起因して転写が容易であること、及び、焼結体の表面にその表面状態を維持可能な範囲で金属を被覆させることで、金属被覆層を従来のバリアメタル層として作用させることができると考え本発明に想到した。
【0011】
即ち、本発明は、基板と、前記基板上に形成された少なくとも一つの金属配線素材と、前記金属配線素材の表面上に形成された少なくとも1層の被覆層と、前記基板と前記金属配線素材との間に形成された下地金属膜と、からなり、前記金属配線素材を被転写物に転写させるための転写用基板であって、前記金属配線素材は、純度99.9重量%以上、平均粒径0.01μm〜1.0μmである金粉、銀粉、白金粉、パラジウム粉、銅粉から選択される一種以上の金属粉末を焼結してなる成形体であり、前記被覆層は、金、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、クロム、チタン、タングステン、タンタル、ニッケル、銅、ジルコニウムの何れかの金属又はこれらの合金であって、前記金属配線素材と相違する組成の金属又は合金からなり、かつ、その合計厚さは1μm以下であり、前記下地金属膜は、金、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、クロム、チタン、タングステン、タンタル、ニッケル、銅、ジルコニウムの何れかの金属又はこれらの合金からなる、転写用基板である。
【0012】
以下、本発明につき詳細に説明する。上記の通り、本発明に係る転写用基板は、被転写物(ウェハ)に転写させる金属配線素材(バンプ)として、所定の金属粉末を焼結して形成した焼結体を適用することを特徴とする。この焼結体からなる金属配線素材は、従来技術のめっきにより形成される緻密なものとは異なり多孔質であり、その表面には微小な凹凸が存在する。そして、転写時において焼結体は、被転写物表面と点接触で接する。本発明者等によれば、この多孔質が形成する点接触状態により、被転写物面との接合に要する温度を低減することができると考える。そして、これにより転写時の被転写物側の温度を従来よりも低い温度(300℃以下)にすることができる。
【0013】
この焼結体からなる金属配線素材について、焼結する金属粉末の純度、粒径の金属を規定するのは、純度については、転写後のバンプとしたときの導電性を考慮するものである。つまり、純度が99.9重量%未満であると必要な通電性を確保できないおそれがあるからである。また、金属粉末の粒径については、1.0μmを超える粒径の金属粉では、成形体に大きな隙間が生じ易くなり、最終的に必要な通電性を確保できないからである。尚、金属粉末の粒径は細かいことが好ましいが0.01μm未満の粒径の粉末は取扱い性に劣ることから、0.01μmを下限とする。
【0014】
焼結体からなる金属配線素材は、多孔質であるが、その密度は金属粉の密度の0.45〜0.95倍となっているものが好ましい。焼結を進行させると金属配線素材は緻密なものとなり、その密度はバルク体である金属の密度に近似する。バルク金属の密度の0.95倍を超える金属配線素材は硬すぎるため、転写が困難となる。一方、バルク金属の0.45倍未満となると、金属粉同士の接触が不十分となり導電性に乏しく、金属配線として好ましくない。
【0015】
また、金属配線素材は金粉、銀粉、白金粉、パラジウム粉、銅粉、又は、これら金属の合金粉より構成させる。バンプとしての導電性を考慮したものである。金属配線素材は、これらの金属粉末の1種類のみを焼結したものでも良いが、2種以上を混合しても良い。例えば、金粉を単独で焼結しても良いが、金粉とパラジウム粉とを混合する、金粉と銀粉とを混合する等してこれを焼結しても良い。
【0016】
そして、本発明では、金属粉末の焼結体からなる金属配線素材の表面上に金属の被覆層を備える。この被覆層は、転写後に被転写物と金属配線素材(バンプ)との間に存在しバリアメタル層として作用する。これにより、被転写物についてのメタライズ処理が不要となり、被転写物への負荷を軽減することができる。但し、上記した焼結体表面の点接触による接合の容易性を維持するため、被覆層の厚さは焼結体の表面状態が維持できる程度に薄いものであることが必要である。そのため、被覆層の厚さは1μm以下にすることを要する。但し、被覆層の下限値としては0.003μmとするのが好ましい。これより薄いと金属膜としての連続性を確保するのが困難となるからである。
【0017】
被覆層を構成する金属は、金、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、クロム、チタン、タングステン、タンタル、ニッケル、銅、ジルコニウムの何れかの金属又は合金であり、金属配線素材と相違する金属である。また、被覆層の構造は、緻密質の薄膜状のものが好ましい。また、単層であっても良いが、複数の金属による多層構造であっても良く、合計の厚さが1μm以下であれば良い。
【0018】
金属配線素材は、基板に直接形成されることはなく、基板と金属配線素材との間には、下地金属膜が形成される。基板にはガラス基板を用いることが多くなるが、ガラスは金属との接合性に乏しく、直接金属配線素材を形成すると、転写用基板の取扱い時に脱落するおそれがある。そこで、金属配線素材の密着性確保のため下地金属膜を形成する。この下地金属膜は、金、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、クロム、チタン、タングステン、タンタル、ニッケル、銅、ジルコニウムの何れかの金属又は合金からなる。
【0019】
この下地金属膜は、金属配線素材と同じ組成の金属であっても良い。この点は被覆層と相違する。但し、好ましいのは、相違する組成の金属膜である。金属配線素材と同一の組成とすると、金属配線素材と下地金属膜との密着性が高くなり、被転写物への転写時に金属配線素材が基板に残留するおそれがある。但し、下地金属膜と金属配線素材とを同一の組成で構成しても、転写時の加熱条件の調整等により金属配線素材と被転写物との密着性を高くし、残留を回避することができることから、必ずしも組成を異にすることが要求されるものではない。
【0020】
下地金属膜は、厚さ1〜100nmとするのが好ましい。1nm未満では、下地金属膜と基板との密着性が低く、金属配線素材の密着性を確保することができない。また、上限については特に制限はないが、100nmを超える厚さにしても効果に相違はない。そして、上記の範囲内で下地金属膜の厚さを調整することで、金属配線素材の転写率の調整を行うことができる。これは、下地金属膜と金属配線素材とが同じ材質の場合(例えば、ガラス基板に下地金属膜としてAuを、金属配線素材としてAu粉末を用いた場合)、下地金属膜と金属配線素材との密着性が高くなるため、下地金属膜の厚さを薄くすることで、転写時に下地金属膜を基板から剥離させることができる。この下地金属膜を薄くして、転写時に剥離させる方法は、下地金属膜を厚くする場合よりも、金属配線素材の残留を抑制することができる場合があるため効果的な転写率の調整となる。このように転写時の剥離を狙って下地金属膜を薄くする場合、その厚さは金属配線素材を構成する金属粉末の平均粒子径の1/3以下とするのが好ましい。
【0021】
下地金属膜は、単層でも良いが複数層形成しても良い。例えば、ガラス基板にチタン膜を形成し、その上に金膜を形成しても良い。このような多層膜を熱処理してチタンを最表面に拡散させると共に酸化させ酸化物を形成しても良い。
【0022】
尚、Cr、W、TiW等は酸化し易い金属であり、これらを単層で用いる場合、その表面を酸素プラズマ処理して表面酸化膜を安定化させておいても良い。この酸素プラズマ処理とは、オゾンや酸素雰囲気中での大気圧又は減圧下のプラズマ処理である。
【0023】
金属配線素材を形成する基板は、材質としては、ガラス或いは樹脂補強されたガラスが一般的であるが、その他、シリコン、コバール等の金属も適用できる。また、その厚さも特に制限はないが、取扱い性や転写の安定性を考慮して50〜500μmとするのが好ましい。
【0024】
本発明に係る転写用基板の製造工程としては、ガラス等の基板に対し、下地金属膜を形成し、その後金属配線素材の形成を行い、更に、被覆層を形成する。下地金属膜の形成は、スパッタリング法、めっき法、CVD法等の各種の薄膜製造プロセスが適用できる。
【0025】
一方、金属配線素材の形成について、これまで述べたように、本発明においては、金属粉を焼結して金属配線素材を形成する。この金属粉からなる金属配線素材の形成にあたっては、金属粉に適宜に有機溶剤を添加した金属ペーストを用いて成形することが好ましい。ペーストは、後述するように多様な方法で塗布可能であり、また、配線の微細化にも対応できるからである。
【0026】
金属ペーストの有機溶剤としては、エステルアルコール、ターピネオール、パインオイル、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、カルビトールが好ましい。例えば、好ましいエステルアルコール系の有機溶剤として、2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンタイソブチレート(C1224)を挙げることができる。本溶剤は、比較的低温で乾燥させることができるからである。
【0027】
また、上記有機溶剤に加えて、金属ペーストは、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、アルキッド樹脂から選択される一種以上を含有していても良い。これらの樹脂等を更に加えると金属ペースト中の金属粉の凝集が防止されてより均質となり、偏りのないバンプが形成できる。尚、アクリル系樹脂としては、メタクリル酸メチル重合体を、セルロース系樹脂としては、エチルセルロースを、アルキッド樹脂としては、無水フタル酸樹脂を、それぞれ挙げることができる。そして、これらの中でも特にエチルセルロースが好ましい。
【0028】
金属ペーストの塗布工程は特に限られるものはなく、例えば、バンプ形状の型を基板上に載置し、これに金属ペーストを充填しても良い。また、従来のめっき法によるバンプ形成と同様、レジストを使用しても良い。金属ペーストの塗布方法としては、スピンコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、滴下したペーストをシリコンゴム製のへらで広げることで孔内に充填する方法等、種々の方法を用いることができる。
【0029】
金属ペースト塗布後は、金属ペーストを塗布・乾燥した後に焼結することを要する。これにより、ペースト中の金属粒子どうし、及び接合部材の接合面(ペースト塗布面)と金属粒子との間に、互いに点接触した近接状態が形成され、金属配線素材としての形状が安定する。この焼結の温度は、80〜300℃とするのが好ましい。80℃未満では点接触が生じないからである。一方、300℃を超える温度で焼結すると、焼結が過度に進行し、金属粉末間のネッキングが進行して強固に結合し、硬すぎる状態となるからである。また、300℃を超える加熱はガラス基板の変形が生じる恐れがある。尚、焼結の際の加熱時間は、30〜120分とするのが好ましい。短時間では焼結炉の温度が安定せず十分な焼結ができず、また、あまりに長時間とすると生産性が損なわれるからである。また、この焼結は、圧力の負荷のない状態で行なうのが好ましい。
【0030】
被覆層の形成は、薄膜状の被覆層については、下地金属と同様に、スパッタリング法、めっき法、CVD法等の各種の薄膜製造プロセスが適用できる。
【0031】
次に本発明に係る転写用基板による被転写物への金属配線の形成方法は、基本的には従来の転写法によるものと同一である。即ち、転写用基板を金属配線素材が形成された面が被転写物(ウェハ)に対向した状態で重ね、転写用基板及び被転写物を加熱すると共に金属配線素材を被転写物に押圧し、金属配線素材を被転写物に接合させた後に、転写用基板を除去するものである。このとき本発明においては、転写用基板の加熱温度を80〜200℃とし、被転写物の加熱温度を80〜300℃とするものである。
【0032】
本発明では、被転写物の加熱温度を80〜300℃と従来の転写基板による転写工程よりも低温とすることができる。そして、この被転写物の加熱温度については、好ましくは100〜200℃とする。転写用基板からの金属配線素材を確実に転写させるため、そして、被転写物から転写基板への熱伝導による過熱を効果的に防ぐためである。また、転写用基板の加熱温度としては、100〜200℃とするのがより好ましい。
【0033】
また、この転写法では金属配線素材の被転写物への押圧即ち加圧が必要であるが、この圧力は、金属配線素材の降伏強度以下とすることが好ましい。降伏強度を大きく超えた加圧は金属配線素材を変形させ、所定の高さや形状を確保できないからである。具体的には、金属配線素材の降伏強度に対して0.1〜1.5倍の加圧力とすることが好ましい。
【0034】
尚、被転写物には、金属配線を形成する部位に、予め、転写用基板の金属配線素材を構成する金属を含む金属からなる電極膜を形成するのが好ましい。確実に金属配線素材を転写させるためである。但し、完全な同一組成とする必要はない。例えば、金属配線素材が金粉と銀粉との混合体からなる場合、被転写物への電極膜を金で構成すれば良い。また、この電極膜は、単層でも多層でも良く、最表面が金属配線素材と同系の金属からなっていれば良い。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、本発明に係る転写用基板は、転写時の被転写物の加熱温度を低温としても安定的に金属配線素材を転写させることができる。これにより、被転写物上の半導体チップ等のダメージを抑制できる。更に、本発明によれば、被転写物のメタライズ処理を行うことなく、バンプ下部にメタル層を形成することができるため、この点からも被転写物が受ける負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態における金属配線の形成工程を概略説明する図。
【0037】
第1実施形態:ガラス基板を用いて転写用基板を製造し、これを用いてSiウェハへの金属配線形成を行った。
【0038】
(転写用基板の製造)
まず、ガラス基板(直径寸法100mm、4インチ、平均厚さ500μm)に下地金属膜としてPtをスパッタリングにより成膜した。Pt膜形成は、逆スパッタ(Ar圧力2.8×10−1Pa、RF出力250W、スパッタ時間60秒)でガラス基板をクリーニングした後、Ptターゲットを用いてAr圧力7.0×10−1Pa、DC出力500W、スパッタ時間115秒の条件で成膜し、厚さ20nmのPt膜を形成した。
【0039】
次に、Au粉末からなる金属ペーストを用いて、ガラス基板上に金属配線素材を形成した。ここで使用した金属ペーストは、湿式還元法により製造された純度99.95重量%の金粉(平均粒径:0.3μm)と、有機溶剤としてエステルアルコール(2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンタイソブチレート(C1224))を混合して調整されたものである。金属配線素材の形成にあたっては、ガラス基板にフォトレジストを塗布し、通常のフォトリソグラフ技術を用いて複数の貫通孔を形成した。そして、金属ペーストをフォトレジストの表面に滴下し、スピンコート法によってフォトレジストの貫通孔内に金ペーストを充填した。次に、ペースト塗布後の基板を50℃以下の温度で保持された乾燥器にて乾燥した。乾燥した金属ペースト上に被覆層を形成した。
【0040】
その後、レジストを有機溶剤で剥離した。レジスト剥離後、基板を電気炉に入れて金粉末を焼結させて金属配線素材を形成した。焼結温度は90℃で1時間加熱した。本実施形態では、基板上に矩形の金属配線素材(直径寸法50μm、高さ25μm)を等間隔に100個形成した。
【0041】
尚、被覆層の形成は、めっき法による被覆層形成は、適宜に市販のめっき液を用いて推奨される条件で成膜した。尚、被覆層はスパッタリング法で形成することもでき、これも市販のスパッタリングターゲット材を使用できる。
【0042】
(ウェハへの転写)
上記で製造した転写用基板を用いて、Siウェハへの配線形成を行った。図1は、その工程を説明する図である。図1のように、本実施形態で製造した転写用ガラス基板を上部加熱ブロックに吸着設置し、配線を形成するSiウェハ(寸法100mm、4インチ)を下部加熱ブロックに設置する。Siウェハの表面には、電極膜としてTi/Pt/Au(厚さ50nm/50nm/200nm)が形成されている。転写用基板及びSiウェハの設置後、上部加熱ブロックを下降させ、転写用基板をSiウェハに密着させる。そして、上部加熱ブロックを150℃、下部加熱ブロックを150℃に加熱し、加圧力30MPaで上部加熱ブロックを押圧し、この押圧状態を10分間維持した。時間経過後、上部加熱ブロックを上昇させた。尚、このときの加圧力は、予め150℃以下で測定した金粉末焼結体の降伏強度(21MPa)の1.4倍に設定している。
【0043】
上部加熱ブロック上昇後、転写用基板の金属配線素材の残存を確認したが、転写残りは存在せず、Siウェハ上に全ての金属配線素材が転写されており、金属配線の形成が確認された。また、転写された金属配線について、その個々の高さを測定し、ばらつきを確認したが、±0.5μmの範囲内にあり、その形状も良好であることが確認された。
【0044】
第2実施形態:ここでは、転写基板上の金属配線素材を構成する金属粉末(金属ペースト)、下地金属膜、被覆層の構成を種々変更して転写用基板を製造し、それぞれを用いてSiウェハへの金属配線形成を行った。転写用基板の製造条件は、金属粉末の種類及び下地金属形成のためのターゲット材質(下地金属膜が合金の場合は、同一組成の合金ターゲットを使用した)以外は、第1実施形態と同様である。製造した転写用基板の構成は以下の通りである。
【0045】
【表1】

【0046】
上記の各種転写用基板を用いて、Siウェハへの金属配線形成を行った。これらの試験については、Siウェハ上の金属膜を一部変更している。また、下部ブロックの加熱温度も一部変更している。この試験結果を表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
上記表2からわかるように、金属配線素材を各種の金属粉末で形成した場合、或いは、下地金属膜を変更した場合のいずれにおいても300℃以下の低温で確実な転写が可能であることが確認できる。もっとも、いくら低温であってもウェハ側の加熱温度が低い場合には転写率が悪化する傾向がある(試験No.29)。
【0049】
また、粒径の粗い金属粉末を用いた場合(試験No.30)、ウェハ側の加熱温度を比較的高めにしても、転写率に劣ることがわかる。更に、被覆層に関してみると、厚さ1μmを超えた場合、転写率の低下が見られる(試験No.31、32)。
【0050】
第3実施形態:ここでは、第2実施形態の試料No.20〜32について、第2実施形態と同様にしてバンプ形成を行い。バンプのシェア強度(接合力)を測定した。ここでの加圧力は2種(1MPa、5MPa)設定した。また、シェア強度の測定はボンディングテスタにて行った。その結果を表3に示す。
【0051】
【表3】

【0052】
表3から、金粉末焼結体の降伏強度(21MPa)を考慮すると、被覆層の厚さが1μmを超えている場合(試験No.6(試料No.25)と試験No.10(試料No.29))、シェア強度が20MPaより小さく強度不足となっていた。そして、被覆層厚さを1μm以下にした試料では、いずれも良好な強度を保持していた。これは、上述のように、被覆層が厚くなると金属配線素材の表面状態を維持することができず、焼結体としての接合性が低下したためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、半導体ウェハ、化合物ウェハ、MEMSウェハ等の被転写物上への金属配線形成において、従来よりも低温の加工工程を提供することができ、金属配線の微細化、品質保持に貢献することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された少なくとも一つの金属配線素材と、前記金属配線素材の表面上に形成された少なくとも1層の被覆層と、前記基板と前記金属配線素材との間に形成された下地金属膜と、からなり、前記金属配線素材を被転写物に転写させるための転写用基板であって、
前記金属配線素材は、純度99.9重量%以上、平均粒径0.01μm〜1.0μmである金粉、銀粉、白金粉、パラジウム粉、銅粉から選択される一種以上の金属粉末を焼結してなる成形体であり、
前記被覆層は、金、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、クロム、チタン、タングステン、タンタル、ニッケル、銅、ジルコニウムの何れかの金属又はこれらの合金であって、前記金属配線素材と相違する組成の金属又は合金からなり、かつ、その合計厚さは1μm以下であり、
前記下地金属膜は、金、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、クロム、チタン、タングステン、タンタル、ニッケル、銅、ジルコニウムの何れかの金属又はこれらの合金からなる、転写用基板。
【請求項2】
下地金属膜は、金属配線素材と相違する組成の金属又は合金からなる請求項1記載の転写用基板。
【請求項3】
下地金属膜は、厚さ1〜100nmである請求項1又は請求項2記載の転写用基板。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の転写用基板を被転写物に対向させて重ね、前記転写用基板及び前記被転写物を加熱すると共に、前記転写用基板を押圧して金属配線素材を前記被転写物に接合して転写する金属配線の形成方法であって、
前記転写用基板の加熱温度を80〜200℃とし、前記被転写物の加熱温度を80〜300℃とする方法。
【請求項5】
転写用基板を押圧する際の圧力を、金属配線素材の降伏強度の0.1〜1.5倍とする請求項4記載の金属配線の形成方法。
【請求項6】
被転写物に転写用基板の金属配線素材を構成する金属を含む金属からなる電極膜を形成した後、金属配線素材を転写する請求項4又は請求項5記載の金属配線の形成方法。
【請求項7】
転写用基板の金属配線素材を、純度99.9重量%以上、平均粒径0.01μm〜1.0μmである金粉、銀粉、白金粉、パラジウム粉、銅粉から選択される一種以上の金属粉末と有機溶剤とからなる金属ペーストを塗布し、焼結して製造する請求項4〜請求項6のいずれかに記載の金属配線の形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−110174(P2013−110174A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252138(P2011−252138)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(509352945)田中貴金属工業株式会社 (99)
【Fターム(参考)】