説明

釣り用履き物

【課題】排水性に優れ、しかも砂場や岩場で使用されても良好な排水性が維持される釣り用履き物2の提供。
【解決手段】釣り用履き物2は、アッパー4、インソール34及びアウトソール14を備えている。アウトソール14は、ベース26、多数のブロック28及びスパイクピン30を備えている。ブロック28の一部はベース26に埋設されており、残余の部分はベース26の底面から下方に向けて突出して突出部41を形成している。ベース26は、排水孔42を備えている。排水孔42は、ベース26を貫通している。排水孔42は、隣り合う2つの突出部の間に位置している。この履き物2では、ブロック28が接地し、排水孔42の下側開口46は地面から離間する。2つの突出部41の間隔Wは、2mm以上15mm以下である。突出部41の突出代Lは、1mm以上25mm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り人に着用される履き物に関する。詳細には、本発明は、内部に水が進入する釣り場で用いられる履き物に関する。
【背景技術】
【0002】
波が高いときの磯釣りでは、海水が足場に達して靴に進入することがある。釣り人が海水を汲み上げてバケツに蓄えるときにも、この海水がこぼれ出して靴に進入することがある。さらに、雨天時の釣りでも、水が靴に進入することがある。靴に水が溜まると、総重量が重くなる。さらに、溜まった水は、靴の着用感を阻害する。靴には、排水性が要求される。
【0003】
排水性が考慮された釣り用の靴が、下記の非特許文献1に開示されている。この靴は、メッシュ状のアッパーを備えている。この靴はまた、複数の排水孔を備えている。靴に進入した水の大部分は、進入直後に主としてアッパーを通過して排出される。一方、進入後に底に溜まった水は、排水孔から徐々に排出される。底に溜まった水の排出の観点から、排水孔はなるべく靴の下方に形成されるのが好ましい。
【非特許文献1】株式会社シマノ発行「2004総合カタログ」第186頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
釣りは、砂場や岩場でもなされる。靴で砂や岩が踏まれると、砂や先端が鋭利な岩片が排水孔に進入して残存することがある。残存した砂や岩片は排水孔を塞ぎ、排水性を阻害する。
【0005】
本発明の目的は、排水性に優れ、しかも砂場や岩場で使用されても良好な排水性が維持される釣り用履き物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る釣り用履き物は、アッパーとアウトソールとを備える。このアウトソールは、ベースと、このベースの底面から下方に向けて突出する複数の突出部と、このベースを上下方向に貫通する排水孔を備える。この排水孔は、隣り合う2つの突出部の間に位置する。
【0007】
好ましくは、排水孔を挟んで位置する2つの突出部の間隔は、2mm以上15mm以下である。好ましくは、排水孔に隣接する突出部のベースからの突出代は、1mm以上25mm以下である。好ましくは、個々の排水孔の下側開口面積は、0.3mm以上20.0mm以下である。
【発明の効果】
【0008】
この釣り用履き物では、排水孔によって優れた排水性が発揮される。排水孔は隣接する突出部の間に位置しており、その下側開口は地面から離れている。この排水孔には、砂、岩片等が進入しにくい。この履き物では、優れた排水性が持続する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0010】
図1は本発明の一実施形態に係る釣り用履き物2が示された正面図であり、図2はその平面図である。図1には、履き物2のアウトサイドが示されている。この履き物2は、アッパー4、ヒールガード6、アウトサイドガード8、インサイドガード10、紐12及びアウトソール14を備えている。図2では、紐12の図示が省略されている。
【0011】
アッパー4は、メッシュ状の生地からなる。アッパー4は、透水性である。アッパー4は、ハトメ16を備えている。このハトメ16には、紐12が通されている。アッパー4はまた、フラップ17も備えている。
【0012】
ヒールガード6は、アッパー4の踵近傍を覆っている。ヒールガード6は、硬質の合成樹脂からなる。図1に示されるように、ヒールガード6は開口18を備えている。図2に示されるように、ヒールガード6は左右一対のアーム20を備えている。アーム20は、着用者の足首の爪先側にまで延在している。アーム20は、その先端に貫通孔22を備えている。
【0013】
アウトサイドガード8は、アッパー4のアウトサイドを覆っている。アウトサイドガード8は、開口24を備えている。インサイドガード10は、アッパー4のインサイドを覆っている。図示されていないが、インサイドガード10もアウトサイドガード8と同様の開口を備えている。アウトサイドガード8及びインサイドガード10は、ヒールガード6と同様の硬質樹脂からなる。
【0014】
図3は、図1の釣り用履き物2が示された底面図である。図3には、右足用の履き物2が示されている。左足用の履き物2は、図3に示された形状が反転された形状を呈する。この履き物2のアウトソール14は、ベース26と、多数のブロック28と、スパイクピン30とを備えている。ベース26は、架橋ゴムからなる。ベース26には、耐摩耗性及び強度に優れたゴムが用いられる。ブロック28は、硬質樹脂からなる。スパイクピン30は、金属材料からなる。ベース26は、その側壁に多数の瘤状突起32を備えている。この履き物2が岩場で着用されたときは、まず瘤状突起32が岩と接触する。この瘤状突起32により、アッパー4と岩との激しい衝突が防止され、アッパー4が岩と激しく擦れ合うことが防止される。換言すれば、この瘤状突起32はアッパー4を保護する。
【0015】
図4は図3のIV−IV線に沿った断面図であり、図5は図3のV−V線に沿った断面図である。図4及び図5には、アッパー4及びアウトソール14と共に、インソール34が示されている。インソール34は多孔質であり、通水性を備えている。履き物2が、インソール34とアウトソール14との間にミッドソールを備えてもよい。
【0016】
図4及び図5から明らかなように、スパイクピン30はフランジ36、軸38及び先端部40からなる。フランジ36及び軸38は、ブロック28に埋設されている。この埋設により、スパイクピン30がブロック28に堅固に固定されている。先端部40は、ブロック28から下方に突出している。この先端部40が地面に突き刺さることにより、履き物2のスリップが防止される。
【0017】
図4及び図5から明らかなように、ブロック28の一部はベース26に埋設されている。この埋設により、ブロック28がベース26に堅固に固定されている。ブロック28の残余の部分は、ベース26の底面から下方に向けて突出しており、突出部41を形成している。
【0018】
図4及び図5から明らかなように、ベース26は5個の排水孔42を備えている。排水孔42は上下方向に延びており、ベース26を貫通している。排水孔42は、上側開口44及び下側開口46を備えている。排水孔42は、履き物2の排水性を高める。排水孔42はまた、履き物2の通気性をも高め、蒸れを防止する。
【0019】
この履き物2の製造では、金型にブロック28が配置され、さらにこの金型に未架橋ゴム組成物が充填される。ゴム組成物は加熱によって架橋反応を起こし、アウトソール14が得られる。このアウトソール14では、ブロック28の一部がベース26に埋設されている。一方、アッパー4にヒールガード6、アウトサイドガード8及びインサイドガード10が接合される。接合は、縫合によって達成される。接合が、接着剤によってなされてもよい。次に、このアッパー4にアウトソール14が接合される。接合は、接着剤によって達成される。次に、次に、アウトソール14にインソール34が積層され、このインソール34が接着剤によってアウトソール14に接合されて、履き物2が完成する。
【0020】
この履き物2が着用されるときは、まず着用者が足を履き物2に入れる。次に、ハトメ16及びアーム20の貫通孔22を通された紐12が締められて、縛られる。前述のようにアーム20は足首の爪先側にまで至っているので、紐12が締められることでアーム20がアッパー4を着用者の足首に強く押圧する。このとき、アーム20に働く張力はヒールガード6の全体に及ぶ。この張力により、ヒールガード6の直下のアッパー4は着用者の踵を強く押圧する。足首及び踵の押圧により、履き物2が足にフィットする。釣り場では釣り人が激しい動作を行うこともあるが、足にフィットした履き物2はこの動作を妨げない。ヒールガード6、アウトサイドガード8及びインサイドガード10は硬質なので、履き物2の安定性に寄与する。さらに、ヒールガード6、アウトサイドガード8及びインサイドガード10は、アッパー4の保護にも寄与する。
【0021】
波等によって履き物2に水が進入したときでも、アッパー4がメッシュ状なので水はアッパー4を透過して排出される。排出は、ヒールガード6の開口18、アウトサイドガード8の開口24及びインサイドガード10の開口を通じてもなされる。さらに、インソール34が多孔質なので、水はこのインソール34を透過してアウトソール14に至り、排水孔42を通じて排水される。排水孔42は、アッパー4及び開口18、24から排出され得ない水をも排出する。この履き物2は、排水性に優れる。釣り人は、踵を上げた姿勢をとることが多く、履き物2の中の水は爪先側に偏在する傾向がある。図3から明らかなように、この履き物2では排水孔42が土踏まずよりも爪先側に位置している。これにより、水がより確実に排出される。
【0022】
図5から明らかなように、排水孔42は隣り合う2つの突出部41の間に位置している。この履き物2では、ブロック28が接地する。ブロック28は、あたかも橋桁の役割を果たすので、排水孔42の下側開口46は地面から離間している。この排水孔42には、砂、岩片等が進入しにくい。この履き物2では、排水孔42が塞がれて排水性が阻害されることが生じにくい。
【0023】
図5において両矢印Wで示されているのは、排水孔42を挟んで位置する2つの突出部41の間隔である。排水孔42に砂、岩片等が進入しにくいとの観点から、間隔Wは15mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。排水孔42の形成の容易の観点から、間隔Wは2mm以上が好ましい。
【0024】
図5において両矢印Lで示されているのは、排水孔42に隣接する突出部41のベース26からの突出代である。突出代Lは、下側開口46と地面との距離でもある。排水孔42に砂、岩片等が進入しにくいとの観点から、突出代Lは1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましい。通常は、突出代Lは25mm以下である。
【0025】
個々の排水孔42の下側開口46の面積は、0.3mm以上20.0mm以下が好ましい。面積が0.3mm以上に設定されることにより、優れた排水性及び通気性が発揮される。この観点から、面積は0.5mm以上がより好ましい。面積が20.0mm以下に設定されることにより、排水孔42への砂、岩片等の進入が抑制される。この観点から、面積は12.0mm以下がより好ましく、8.0mm以下が特に好ましい。
【0026】
この履き物2では、ブロック28(すなわち突出部41)がベース26の材質とは異なる材質からなるが、ベース26の材質と同じ材質からなりベース26と一体に成形された突出部が形成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係る履き物は、磯、船等の種々の釣り場において利用されうる。本発明に係る履き物が、ウェーダーに装着されてもよい。ブーツ又は地下足袋において、隣り合う2つの突出部の間に位置する排水孔が形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る釣り用履き物が示された正面図である。
【図2】図2は、図1の釣り用履き物が示された平面図である。
【図3】図3は、図1の釣り用履き物が示された底面図である。
【図4】図4は、図3のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図5は、図3のV−V線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0029】
2・・・釣り用履き物
4・・・アッパー
6・・・ヒールガード
8・・・アウトサイドガード
10・・・インサイドガード
14・・・アウトソール
18、24・・・開口
20・・・アーム
26・・・ベース
28・・・ブロック
30・・・スパイクピン
32・・・瘤状突起
34・・・インソール
42・・・排水孔
44・・・上側開口
46・・・下側開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパーとアウトソールとを備えており、
このアウトソールが、ベースと、このベースの底面から下方に向けて突出する複数の突出部と、このベースを上下方向に貫通する排水孔を備えており、
この排水孔が、隣り合う2つの突出部の間に位置している釣り用履き物。
【請求項2】
上記排水孔を挟んで位置する2つの突出部の間隔が2mm以上15mm以下である請求項1に記載の釣り用履き物。
【請求項3】
上記排水孔に隣接する突出部のベースからの突出代が1mm以上25mm以下である請求項1又は2に記載の釣り用履き物。
【請求項4】
個々の排水孔の下側開口面積が0.3mm以上20.0mm以下である請求項1から3のいずれかに記載の釣り用履き物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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