説明

釣り用履き物

【課題】耐摩耗性及び防滑性に優れた釣り用履き物2の提供。
【解決手段】釣り用履き物2は、アッパー4、ミッドソール6、面ファスナー8及びアウトソール10を備えている。アウトソール10は、面ファスナー8によってミッドソール6と積層されている。アウトソール10は、爪先部24、踵部26及び主部28からなる。爪先部24及び踵部26は、ゴム組成物が架橋されることで得られる。このゴム組成物は、ガラス繊維を含んでいる。主部は、ゴム組成物が架橋されることで得られる。このゴム組成物は、ガラス繊維を含んでいない。爪先部24及び踵部26は、加硫接着によって主部28と接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り人に着用される履き物に関する。
【背景技術】
【0002】
船釣りにおいて、足が濡れることを防ぐ目的で、釣り人がブーツを着用することがある。このブーツは、ゴム組成物が架橋されてなるアウトソールを備えている。デッキの上は、濡れていることが多い。デッキでのスリップを抑制する目的で、アウトソールにブチルゴムが用いられることがある。アウトソールは、その底面に凹凸模様を備えている。このアウトソールは、「ラジアルソール」と称されている。ラジアルソールを備えたブーツが、株式会社シマノ発行の「2007 Fishing Tackle Catalogue」の第227ページに開示されている。
【0003】
アウトソールが、面ファスナーにてミッドソールに接合されたブーツが存在する。このアウトソールは、ミッドソールから着脱自在である。このブーツでは、摩耗したアウトソールがミッドソールから剥がされる。ミッドソールには、新品のアウトソールが接合される。このブーツは、アウトソールのみが交換されることで、長期間にわたって使用されうる。
【非特許文献1】株式会社シマノ発行の「2007 Fishing Tackle Catalogue」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブチルゴムが用いられたアウトソールは、耐摩耗性に劣る。特に、爪先部及び踵部は、摩滅しやすい。爪先部及び踵部が摩滅したブーツが使用され続けると、ミッドソールも摩滅する。ミッドソールが摩滅したブーツにおいて、アウトソールが交換されても、アウトソールがミッドソールから容易に離脱してしまう。耐摩耗性に優れた材料も存在するが、この材料は、一般的には、デッキの上での防滑性に劣る。
【0005】
本発明の目的は、耐摩耗性及び防滑性に優れた釣り用履き物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る釣り用履き物は、アッパー、ミッドソール及びアウトソールを備える。このアウトソールは、爪先部、踵部及び主部を有する。この爪先部及び踵部の一方又は両方は、短繊維を含むゴム組成物からなる。主部は、短繊維を含まないゴム組成物からなる。
【0007】
好ましくは、爪先部、踵部及び主部の基材ゴムは、ブチルゴムである。好ましい短繊維は、ガラス繊維である。短繊維の量は、基材ゴム100質量部に対して3質量部以上40質量部以下が好ましい。アウトソールがミッドソールに対して着脱自在である履き物において、短繊維の配合が特に効果を奏する。
【0008】
他の観点によれば、本発明に係る釣り用履き物は、アッパー、ミッドソール及びアウトソールを備える。このアウトソールは、爪先部、踵部及び主部を有する。この爪先部及び踵部の一方又は両方は、短繊維を含む第一ゴム組成物からなる。主部は、短繊維を含む第二ゴム組成物からなる。この第一ゴム組成物における短繊維の量は、第二ゴム組成物における短繊維の量よりも多い。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る釣り用履き物では、短繊維により、爪先部及び踵部の摩耗が抑制される。主部は、短繊維を含まないか、又は少量の短繊維を含むので、短繊維によって防滑性が阻害されない。この履き物は、耐摩耗性及び防滑性の両方に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る釣り用履き物2が示された正面図である。この履き物2は、ブーツである。ブーツ2は、アッパー4、ミッドソール6、面ファスナー8及びアウトソール10を備えている。図示されていないが、ブーツ2はインソールも備えている。
【0012】
アッパー4は、 典型的には、ポリ塩化ビニルからなる。このアッパー4は、強度及び剛性に優れる。図示されていないが、アッパー4は、その内面に裏地を備えている。アッパー4が、他の合成樹脂からなってもよい。アッパー4が、ゴムからなってもよい。アッパー4は、足部12及び脛部14を備えている。足部12は、人体の足を包み、足を保護する。脛部14は、人体の脛を包み、脛を保護する。
【0013】
ミッドソール6は、ゴム組成物が架橋されてなる。ミッドソール6には、強度に優れたゴムが用いられる。好ましいゴムとしては、天然ゴム、ブタジエンゴム及びスチレン−ブタジエンゴムが例示される。ミッドソール6は、接着剤によってアッパー4と接合されている。ミッドソール6が、加硫接着によってアッパー4と接合されてもよい。ミッドソール6が合成樹脂からなってもよい。ミッドソール6は、その外縁にリブ16を備えている。リブ16は、下向きに垂下している。
【0014】
面ファスナー8は、フック面18とループ面20とを備えている。フック面18は、接着剤によってミッドソール6に接合されている。ループ面20は、接着剤によってアウトソール10に接合されている。フック面18がアウトソール10に接合され、ループ面20がミッドソール6に接合されてもよい。典型的な面ファスナー8は、ベルクロ社のマジックテープ(登録商標)である。ミッドソール6のリブ16は、面ファスナー8よりも下方にまで延在している。
【0015】
アウトソール10は、面ファスナー8によってミッドソール6と積層されている。アウトソール10の上部は、リブ16に囲まれている。リブ16により、アウトソール10のミッドソール6からの意図せぬ離脱が防止される。アウトソール10は、接地面22を有する。地面との擦動によって接地面22が摩耗した場合、アウトソール10がミッドソール6から剥がされる。そして、新たなアウトソール10が面ファスナー8によって接合される。図示されていないが、接地面22は凹凸模様を備えている。この凹凸模様は、デッキ上での排水に寄与する。凹凸模様により、優れた防滑性が達成されうる。
【0016】
図2は、図1のブーツのアウトソール10が示された底面図である。図1及び2に示されるように、アウトソール10は、爪先部24、踵部26及び主部28からなる。図2において二点鎖線で示されているのは、人体の拇指球30である。拇指球30の直下は、主部28である。
【0017】
爪先部24は、ゴム組成物が架橋されることで得られる。爪先部24は、加硫接着によって主部28と接合されている。ゴム組成物の基材ゴムとしては、ブチルゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム及びアクリロニトリル−ブタジエンゴムが例示される。後述される主部28の基材ゴムと同一のゴムが、爪先部24に用いられうる。
【0018】
爪先部24のゴムは、硫黄によって架橋されている。有機過酸化物架橋、金属塩架橋、電子線架橋等が採用されてもよい。爪先部24のゴム組成物には、加硫促進剤、架橋助剤、補強材、充填剤、老化防止剤、軟化剤、着色剤等の添加剤が、必要に応じて適量配合される。
【0019】
爪先部24のゴム組成物は、短繊維を含んでいる。短繊維は、爪先部24に分散している。短繊維により、爪先部24の耐摩耗性が高められている。このアウトソール10は、長持ちする。このアウトソール10により、ミッドソール6のリブ16の摩滅が抑制されうる。短繊維を含むので、爪先部24の硬度は高い。高硬度の爪先部24は、変形しにくく、従ってミッドソール6から離脱しにくい。
【0020】
好ましい短繊維は、ガラス繊維である。ガラス繊維は、高硬度である。ガラス繊維の一部が爪先部24の底面から露出することにより、ガラス繊維の引っ掻き効果が得られうる。引っ掻き効果により、爪先部24の防滑性が高められうる。爪先部24に、炭素繊維、金属繊維又は有機繊維が分散してもよい。
【0021】
短繊維の太さは、1μm以上が好ましい。太さが1μm以上である短繊維により、爪先部24の耐摩耗性が高められる。この観点から、太さは3μm以上がより好ましい。太さは、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
【0022】
短繊維の長さは、0.1mm以上が好ましい。長さが0.1mm以上である短繊維は、爪先部24から離脱しにくい。この観点から、長さは0.2mm以上がより好ましく、0.5mm以上が特に好ましい。ゴム組成物の混練作業の容易の観点から、長さは30mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。
【0023】
短繊維のアスペクト比は、2以上が好ましい。アスペクト比が2以上である短繊維は、爪先部24から離脱しにくい。この観点から、アスペクト比は10以上がより好ましく、20以上が特に好ましい。アスペクト比は100以下が好ましく、70以下がより好ましい。
【0024】
短繊維の量は、基材ゴム100重量部に対して3質量部以上が好ましい。量が3質量部以上である爪先部24は、耐摩耗性に優れる。この観点から、量は5質量部以上がより好ましく、10質量部以上が特に好ましい。爪先部24の柔軟性の観点から、短繊維の量は40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、25質量部以下が特に好ましい。
【0025】
踵部26は、ゴム組成物が架橋されることで得られる。踵部26は、加硫接着によって主部28と接合されている。踵部26には、爪先部24と同一のゴム組成物が用いられている。換言すれば、踵部26には短繊維が分散している。爪先部24と同様、踵部26も、短繊維によってその耐摩耗性が高められている。爪先部24及び踵部26の一方のみが短繊維を含んでもよい。
【0026】
主部28は、ゴム組成物が架橋されることで得られる。ゴム組成物の基材ゴムとしては、ブチルゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム及びアクリロニトリル−ブタジエンゴムが例示される。特に好ましいゴムは、ブチルゴムである。ブチルゴムは、ウエットグリップ性に優れる。主部28及び爪先部24にブチルゴムが用いられることにより、主部28と爪先部24との優れた接合力が達成されうる。主部28及び踵部26にブチルゴムが用いられることにより、主部28と踵部26との優れた接合力が達成されうる。
【0027】
主部28のゴムは、硫黄によって架橋されている。有機過酸化物架橋、金属塩架橋、電子線架橋等が採用されてもよい。主部28のゴム組成物には、加硫促進剤、架橋助剤、補強材、充填剤、老化防止剤、軟化剤、着色剤等の添加剤が、必要に応じて適量配合される。
【0028】
主部28のゴム組成物は、短繊維を含んでいない。この主部28は柔軟であり、かつウエットグリップ性に優れている。前述の通り、拇指球30の直下は主部28である。主部28には、拇指球30からの大きな力が加わる。この主部28に短繊維を含まないゴム組成物が用いられることにより、優れた防滑性が達成されうる。
【0029】
主部28のゴム組成物が、短繊維を含んでもよい。この場合、短繊維は少量である。少量の短繊維は、主部28のウエットグリップ性を阻害しない。主部28の短繊維の量は、爪先部24又は踵部26の短繊維の量よりも少なく設定される。これにより、爪先部24又は踵部26の耐摩耗性と主部28のウエットグリップ性とが両立されうる。爪先部24又は踵部26における基材ゴム100質量部に対する短繊維の量Xと、主部28における基材ゴム100質量部に対する短繊維の量Yとの差(X−Y)は5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。
【0030】
図2において、矢印Lで示されているのはアウトソール10の全長であり、矢印Ltで示されているのは爪先部24の長さである。爪先部24の耐摩耗性の観点から、この比率は3%以上が好ましく、5%以上がより好ましい。防滑性の観点から、全長Lに対する長さLtの比率は20%以下が好ましい。
【0031】
爪先部24の耐摩耗性の観点から、アウトソール10の底面の面積に対する爪先部24の底面の面積の比率は3%以上が好ましく、5%以上がより好ましい。防滑性の観点から、この比率は20%以下が好ましい。
【0032】
図2において矢印Lhで示されているのは、踵部26の長さである。踵部26の耐摩耗性の観点から、全長Lに対する長さLhの比率は3%以上が好ましく、5%以上がより好ましい。防滑性の観点から、この比率は20%以下が好ましい。
【0033】
踵部26の耐摩耗性の観点から、アウトソール10の底面の面積に対する踵部26の底面の面積の比率は3%以上が好ましく、5%以上がより好ましい。防滑性の観点から、この比率は20%以下が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る履き物は、種々の釣り場において利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る釣り用履き物(ブーツ)が示された正面図である。
【図2】図2は、図1のブーツのアウトソールが示された底面図である。
【符号の説明】
【0036】
2・・・釣り用履き物(ブーツ)
4・・・アッパー
6・・・ミッドソール
8・・・面ファスナー
10・・・アウトソール
16・・・リブ
18・・・フック面
20・・・ループ面
24・・・爪先部
26・・・踵部
28・・・主部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパー、ミッドソール及びアウトソールを備えており、
このアウトソールが、爪先部、踵部及び主部を有しており、
この爪先部又は踵部が短繊維を含むゴム組成物からなり、主部が短繊維を含まないゴム組成物からなる釣り用履き物。
【請求項2】
上記爪先部、踵部及び主部の基材ゴムがブチルゴムである請求項1に記載の履き物。
【請求項3】
上記短繊維がガラス繊維である請求項1に記載の履き物。
【請求項4】
上記短繊維の量が、基材ゴム100質量部に対して3質量部以上40質量部以下である請求項1に記載の履き物。
【請求項5】
上記アウトソールがミッドソールに対して着脱自在である請求項1に記載の履き物。
【請求項6】
アッパー、ミッドソール及びアウトソールを備えており、
このアウトソールが、爪先部、踵部及び主部を有しており、
この爪先部又は踵部が短繊維を含む第一ゴム組成物からなり、主部が短繊維を含む第二ゴム組成物からなり、
この第一ゴム組成物における短繊維の量が第二ゴム組成物における短繊維の量よりも多い釣り用履き物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−172180(P2009−172180A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14503(P2008−14503)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】