説明

釣り竿用の竿体及びその製造方法

【課題】 釣り竿用竿体を提供する。
【解決手段】 最外層を、強化繊維cを交差する状態に配置してあるクロスプリプレグからなる補強パターン3と、補強パターン3より竿軸線方向長さが長く、かつ、強化繊維cを一方向に引き揃え配置してある引揃プリプレグからなる外側メインパターンとで構成する。補強パターン3を玉口相当位置に、外側メインパターンを補強パターン3より竿尻側に位置させて、補強パターン3の竿尻端と外側メインパターンの竿先端とを隣接する状態で配置してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竿体の玉口の最外層に装飾的効果を伴った補強構造を備えている釣り竿用の竿体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した補強構造として、玉口に金属製の口金を装着していた(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−215510号公報(段落番号〔0022〕、図4及び図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した玉口部位に口金を装備するものでは、口金が竿体の玉口径より大きな径で形成されているために突出する状態となっている。このような口金を備えた釣り竿は、鮎竿や渓流竿等の振出式の延べ竿と称されるものであり、小径側の竿体を大径側の竿体内に収納して、全長を収縮状態に切り換える構成を採っている。
しかし、上記した振出式の延べ竿では、竿先の玉口径と竿尻端の径とが大きく違わない、いわゆる、竿軸線方向に沿ったテーパが緩やかなものであるので、小径側の竿体の玉口外径と大径側の竿体の玉口内径との間の間隙が小さく、小径側の竿体の口金部分まで大径側の竿体内に収納することに苦慮していた。
したがって、各竿体での口金装着部分が大径側の竿体内に収納できないこととなる場合には、振出式の延べ竿全体としての仕舞い寸法が長くなって、持ち運び等の扱いが良好ではなかった。
【0005】
本発明の目的は、玉口部位の口金装着部位に、材料の変更等によって工夫を加え、釣り竿用竿体を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、最外層を、強化繊維を交差する状態で編み込んだクロスプリプレグからなる補強パターンと、前記補強パターンより竿軸線方向長さが長く、かつ、強化繊維を一方向に引き揃え配置してある引揃プリプレグからなる外側メインパターンとで構成し、前記補強パターンを玉口相当位置に、前記外側メインパターンを前記補強パターンより竿尻側に位置させて、前記補強パターンの竿尻端と前記外側メインパターンの竿先端とを隣接する状態で配置してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
つまり、口金を使用する代わりに、強化繊維を交差する状態に編み込んであるクロスプリプレグからなる補強パターンを使用することとする。
そして、最外層として補強パターンを玉口部位に配置するにあたって、メインパターンを竿体の全長に亘る状態に巻回し、そのメインパターンの玉口部分に補強パターンを重ねて配置することも考えられる。
そうすると、補強パターンの外径がメインパターンの外径より大きくなるところから、その分補強パターンが突出することとなり、口金を装着する場合と代わりはない。
これに対して、本願発明においては、最外層を、補強パターンと外側メインパターンとで構成することとし、竿尻側に配置した外側メインパターンの竿先側に隣接する状態で補強パターンを配置した。
このような構成によって、補強パターンの表面を外側メインパターンの表面より突出しない状態または大きく突出しない状態に構成できることになり、大径側の竿体の玉口内径と小径側の竿体の玉口外径との間隙を従来構成のものより大きく採ることができ、小径側の竿体の補強パターンを施した玉口を大径側の竿体の玉口内に収納すること、または、収納できない場合でも十分に近接させて設けることができる。
また、竿体を製作する工程のなかで補強パターンを施すことができ、口金のように、別個に製作する工程を必要としない。
しかも、補強パターンが強化繊維を交差する状態に配置してあるクロスプリプレグで出来ているので、装飾効果が高く口金に匹敵する力強さを提示できる。
【0008】
〔効果〕
以上のように、補強パターンを玉口の装飾に導入することによって、釣り竿の仕舞い寸法を十分に短いものとでき、竿の軽量化、及び、製作上の工程の簡素化を図ることができる。
【0009】
請求項2に係る発明の特徴構成は、請求項1に係る発明において、前記外側メインパターンと前記補強パターンとの内側に位置する内側層を、前記外側メインパターンの軸線方向長さと前記補強パターンの軸線方向長さとの合計長さを備えるとともに、強化繊維を一方向に引き揃え配置してある引揃プリプレグから構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
つまり、補強パターンと外側メインパターンとで最外層を構成したが、内側層において、強化繊維を一方向に引き揃えた引揃プリプレグからなる内側メインパターンを配置することによって、その内側メインパターンに補強パターンと外側メインパターンとを取り付けることとなるので、補強パターンと外側メインパターンとが分離することを抑制できる。
【0011】
請求項3に係る発明の特徴構成は、一方向に引き揃えた強化繊維群に熱硬化性樹脂を含浸させて構成したプリプレグシートからなるメインパターンと、交差する状態に配置してある強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグシートからなる補強パターンとを、マンドレルに巻回して釣り竿用の竿体を形成する竿体製造方法であって、
前記メインパターンを構成するに、竿の周方向に沿った竿先辺と竿尻辺とを3プライ以上巻回可能な長さの幅に構成するとともに、前記竿先辺に対して交差する二辺を竿体の長さに相当する長さに構成し、前記竿先辺と前記二辺のうちの一辺とが交差することとなる角部相当位置に、2プライ分の円周方向長さに相当する幅で切り取られた矩形の切欠部を形成して構成し、
前記補強パターンを、1プライ分に相当する円周方向幅と前記切欠部の竿軸線方向に相当する長さに等しい長さとを有するプリプレグシートを裁断して構成し、
前記メインパターンをマンドレルに複数プライ巻回して竿素材を構成するとともに、前記竿素材における前記メインパターンの切欠部の存在によって小径となっている竿先側小径部の外周面に、補強パターンを1プライ分巻回して竿体を構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0012】
〔作用効果〕
最外層に、補強パターンと外側メインパターンとを配置構成するに、次ぎのように、補強パターンとメインパターンとを形成する。つまり、竿の周方向に沿った竿先辺と竿尻辺とを3プライ以上巻回可能な長さの幅に構成するとともに、前記竿先辺に交差する二辺を竿体の長さに相当する長さに構成して、メインパターンの形状を、一旦、通常の台形状のシートに構成する。この台形状のシートから、前記竿先辺と前記二辺のうちの一辺とが交差することとなる角部相当位置に、2プライ分の円周方向長さに相当する幅を備えた矩形の切欠部を形成するように裁断する。つまり、台形状のシートの四隅の一角部を切り取って、補強パターンをこの部分に嵌め込む構成としている。
したがって、メインパターンをマンドレルに巻回して竿素材を形成すると、竿素材の竿先側に、前記切欠部の存在によって、1プライ分の小径巻回部が形成されるとともに、小径巻回部の竿尻側には3プライ分の大径巻回部が形成される。小径巻回部の外周面に補強パターンを巻回する。
補強パターンは、強化繊維を交差させて編み込んだものであるので、一方向に強化繊維を引き揃えたプリプレグより厚みが厚い。したがって、補強パターンを1プライ分巻回した状態であっても、補強プリプレグと外側メインパターンとの外径差を小さなものにできて、段差の少ない状態にできる。
しかも、補強パターンの部分は外側メインパターンの外周面よりは突出しない状態とできるので、このような補強パターンを小径側の竿体の玉口部分に施された場合に、大径側の竿体の玉口内に収納することが容易になり、釣り竿としての仕舞い寸法を短いものに抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
〔第1実施形態〕
穂先竿から元竿まで複数本の竿体1を振出式に接続する渓流竿A等に使用される竿体1について説明する。
竿体1を製造する際に使用される、プリプレグ製のメインパターン2を形成する点に説明する。図2に示すように、炭素繊維等の強化繊維cを竿軸線方向に沿って引き揃え、引き揃えた強化繊維群にエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて、プリプレグシートを形成する。
【0014】
図2に示すように、仕上裁断を行う前の仮想線a部分を含んだプリプレグシートの形状を次ぎのようにする。竿先辺2Aの幅(L1+L2)を3プライ分の長さに設定するとともに、竿尻辺2Bの幅L3を3プライ分の長さに設定し、プリプレグシートを略台形状のものに形成する。台形状に形成したプリプレグシートにおける竿先端側でかつ外層側に相当する角部相当位置に、2プライ分の長さの長方形に切欠いた切欠部2aを形成するように仕上裁断を行う。このように裁断したものをメインパターン2と称する。メインパターン2は、厚さ0.05mm〜0.15mm位になっている。
以上より、メインパターン2における幅L1でかつ竿の長さに相当する部分で内側層を構成し、幅L2の部分で外側層を構成する。
【0015】
次に、補強パターン3について説明する。図3に示すように、炭素繊維等の強化繊維cを縦横に交差させて編み込んだものに、エポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて形成したプリプレグシートを、一辺3Aの長さを2プライ分の長さに設定した四角形に裁断し、補強パターン3を構成する。補強パターン3は、強化繊維cを編み込んだものであるので、厚みはメインパターン2に比べて厚く、2.5mm〜3.5mmである。一辺3Aの長さは20mm〜30mmの寸法を採る。
【0016】
以上のように形成された、メインパターン2と補強パターン3を使用して竿体1を製作する。
図2及び3に示すように、マンドレル4にメインパターン2を3プライ巻回して竿素材を構成する。竿先端側には切欠部2aが形成されているので、この切欠部2aの影響で竿先端側では1プライ分だけしか巻き付けられてはいない。この部分を小径巻回部2Cと称し、この小径巻回部2Cに隣接する竿尻側に位置し3プライ分巻回した部分を大径巻回部2Dと称する。
【0017】
次に補強パターン3を巻回する。図3に示すように、小径巻回部2Cの上から補強パターン3を1プライ分だけ巻回する。補強パターン3はメインパターン2に比べて厚いので、1プライ分を巻回するものであっても、メインパターン2を2プライ分巻回した場合と略同様の厚みを呈することとなる。したがって、図4に示すように、補強パターン3を巻回した外周面と大径巻回部2Dの外周面とは、段差の少ない状態に形成される。
【0018】
図3に示すように、補強パターン3は、強化繊維cが編み込まれているので、竿体1の玉口部位に施されて装飾効果を発揮し、釣り人に力強さをアピールすることができる。しかも、補強パターン3の外周面と大径巻回部2Dの外周面との段差が小さくなっているので、小径側の竿体1を大径側の竿体1内に収納する場合に、小径側の竿体1の玉口部分の大径側の竿体1の玉口先端から突出する量を抑制できて、渓流竿A全体の仕舞い寸法を極力短くできる。
【0019】
上記したように、メインパターン2と補強パターン3とを巻回した後、図示はしていないが、ポリエステル等の成形テープを螺旋状に巻回し、マンドレル4に装着した状態で焼成し、焼成後成形テープを剥離し、所定長さに裁断し、所定のテーパ面に研磨加工して竿体1を形成する。
【0020】
〔第2実施形態〕
ここでは、メインパターン2を4枚使用する形態について説明する。図5に示すように、メインパターン2の内訳は、第1層では強化繊維cを竿の周方向に沿って引き揃えている第1メインパターン2E、第2層では強化繊維cを竿軸線方向に沿って引き揃えている第2メインパターン2F、第3層では強化繊維cを竿の周方向に沿って引き揃えている第3メインパターン2Gを重ね合わせて使用する。
【0021】
上記した3枚のメインパターン2E、2F、2Gにおいては、竿先辺、竿尻辺とを1プライ分の円周方向幅L1に設定してあり、竿軸線方向に沿った長さL4は竿体1の長さを確保できる長さに設定されている。4枚目の第4メインパターン2Hの竿軸線方向に沿った長さL5は前記した補強パターン3の分だけ短くなっており、竿先辺の長さL2を2プライ分の幅に設定してある。
【0022】
以上のように形成された4枚のメインパターン2E、2F、2G、2Hと第1実施形態で示した補強パターン3とをマンドレル4に巻回することによって、補強パターン3の外周面とメインパターン2Hの外周面との段差のない竿体1を構成できる。
【0023】
〔別実施構造〕
(1)ここでは、メインパターン2に形成する切欠部2bの形状を三角形状に設定したものを説明する。図6に示すように、三角形状の切欠部2bを備えたメインパターンを第5メインパターン2Jとし、この第5メインパターン2Jにおける竿先辺2Kと巻き終わり辺2Mとが交差する角部相当位置に切欠部2bを形成するために、竿先辺2Kにおいて、1プライ分の円周方向幅L1を確保する。この竿先辺2Kの巻き終わり辺2M側の端部dから、巻き終わり辺2Mにおける前記角部相当位置から長さL3の幅位置eに向けて斜めの切断線を想定し、その切断線に沿って切断して三角形状の切欠部2bを形成する。
このような三角形状の切欠部2bを形成したメインパターン2Jと第1実施形態で説明した補強パターン3とで竿体1を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】各竿体を収縮させた渓流竿を示す側面図
【図2】メインパターンをマンドレルに巻回する前の状態を示す斜視図
【図3】メインパターンをマンドレルに巻回し、補強パターンを巻回する前の状態を示す斜視図
【図4】補強パターンを巻回した状態を示す斜視図
【図5】3枚の内側メインパターンと1枚の外側メインパターン、補強パターンを巻回する前の状態を示す斜視図
【図6】異なる切欠部を有するメインパターンとその切欠部相当位置に施す補強パターンを巻回する前の状態を示す斜視図
【符号の説明】
【0025】
2 メインパターン
2A 竿先辺
2B 竿尻辺
2M 巻き終わり辺
2a 切欠部
3 補強パターン
c 強化繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外層を、強化繊維を交差する状態で編み込んだクロスプリプレグからなる補強パターンと、前記補強パターンより竿軸線方向長さが長く、かつ、強化繊維を一方向に引き揃え配置してある引揃プリプレグからなる外側メインパターンとで構成し、前記補強パターンを玉口相当位置に、前記外側メインパターンを前記補強パターンより竿尻側に位置させて、前記補強パターンの竿尻端と前記外側メインパターンの竿先端とを隣接する状態で配置してある釣り竿用の竿体。
【請求項2】
前記外側メインパターンと前記補強パターンとの内側に位置する内側層を、前記外側メインパターンの軸線方向長さと前記補強パターンの軸線方向長さとの合計長さを備えるとともに、強化繊維を一方向に引き揃え配置してある引揃プリプレグから構成してある請求項1記載の釣り竿用の竿体。
【請求項3】
一方向に引き揃えた強化繊維群に熱硬化性樹脂を含浸させて構成したプリプレグシートからなるメインパターンと、交差する状態に配置してある強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグシートからなる補強パターンとを、マンドレルに巻回して釣り竿用の竿体を形成する竿体製造方法であって、
前記メインパターンを構成するに、竿の周方向に沿った竿先辺と竿尻辺とを3プライ以上巻回可能な長さの幅に構成するとともに、前記竿先辺に対して交差する二辺を竿体の長さに相当する長さに構成し、前記竿先辺と前記二辺のうちの一辺とが交差することとなる角部相当位置に、2プライ分の円周方向長さに相当する幅で切り取られた矩形の切欠部を形成して構成し、
前記補強パターンを、1プライ分に相当する円周方向幅と前記切欠部の竿軸線方向に相当する長さに等しい長さとを有するプリプレグシートを裁断して構成し、
前記メインパターンをマンドレルに複数プライ巻回して竿素材を構成するとともに、前記竿素材における前記メインパターンの切欠部の存在によって小径となっている竿先側小径部の外周面に、補強パターンを1プライ分巻回して竿体を構成してある竿体製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−319133(P2007−319133A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156306(P2006−156306)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】