開閉体制御装置
【課題】外乱があった場合でも挟み込みを正確に検出でき、誤判定の生じない開閉体制御装置を提供する。
【解決手段】モータの負荷の変化量を検出する負荷変化量検出手段と、車両に対する外乱を検出する外乱検出手段と、開閉体に挟み込まれる異物を検出する異物検出手段と、挟み込みの有無を判定する判定手段とを備える。ドア開閉などの外乱が検出された場合は、モータの回転速度変化量が閾値を超えたこと、および、異物が検出されたことの2つの条件が同時に満たされたときに、挟み込みがあったものと判定する。一方、外乱が検出されない場合は、モータの回転速度変化量が閾値を超えたこと、または、異物が検出されたことのいずれかの条件が満たされれば、挟み込みがあったものと判定する。
【解決手段】モータの負荷の変化量を検出する負荷変化量検出手段と、車両に対する外乱を検出する外乱検出手段と、開閉体に挟み込まれる異物を検出する異物検出手段と、挟み込みの有無を判定する判定手段とを備える。ドア開閉などの外乱が検出された場合は、モータの回転速度変化量が閾値を超えたこと、および、異物が検出されたことの2つの条件が同時に満たされたときに、挟み込みがあったものと判定する。一方、外乱が検出されない場合は、モータの回転速度変化量が閾値を超えたこと、または、異物が検出されたことのいずれかの条件が満たされれば、挟み込みがあったものと判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における窓などの開閉体を開閉するための開閉体制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に用いられる窓開閉制御装置(以下、「パワーウィンドウ装置」という。)は、スイッチの操作によりモータを正転または逆転させてドアの窓ガラスを昇降させ、窓を開閉する装置である。図12は、一般的なパワーウィンドウ装置の電気的構成を示したブロック図である。1は窓の開閉動作を制御するCPUからなる制御部、2はモータ3を駆動するモータ駆動回路、4はモータ3の回転に同期したパルスを出力するロータリエンコーダ、5はロータリエンコーダ4から出力されるパルスを検出するパルス検出回路、6はROMやRAM等から構成されるメモリ、7は窓の開閉を操作するための操作スイッチである。
【0003】
操作スイッチ7を操作すると、制御部1に窓開閉指令が与えられ、モータ駆動回路2によりモータ3が正転または逆転する。モータ3の回転により、モータ3と連動する窓開閉機構が作動して窓の開閉が行われる。パルス検出回路5はロータリエンコーダ4から出力されるパルスを検出し、制御部1はこの検出結果に基づき窓の開閉量やモータ速度を算出して、モータ駆動回路2を介してモータ3の回転を制御する。
【0004】
図13は、操作スイッチ7の一例を示した概略構成図である。操作スイッチ7は、軸Qを中心としてab方向に回転可能な操作ノブ71と、この操作ノブ71と一体に設けられたロッド72と、公知のスライドスイッチ73とから構成される。74はスライドスイッチ73のアクチュエータ、20は操作スイッチ7が組み込まれるスイッチユニットのカバーである。ロッド72の下端は、スライドスイッチ73のアクチュエータ74と係合しており、操作ノブ71がab方向に回転すると、ロッド72を介してアクチュエータ74がcd方向に移動し、その移動位置に応じてスライドスイッチ73の接点(図示省略)が切り換えられる。
【0005】
操作ノブ71は、オート閉AC、マニュアル閉MC、中立N、マニュアル開MO、オート開AOの各位置へ切換可能となっている。図13は、操作ノブ71が中立Nの位置にある状態を示している。この位置から操作ノブ71をa方向に一定量回転させて、マニュアル閉MCの位置にすると、マニュアル動作で窓が閉じるマニュアル閉動作が行われ、この位置よりさらにa方向に操作ノブ71を回転させてオート閉ACの位置にすると、オート動作で窓が閉じるオート閉動作が行われる。また、操作ノブ71を中立Nの位置からb方向に一定量回転させて、マニュアル開MOの位置にすると、マニュアル動作で窓が開くマニュアル開動作が行われ、この位置よりさらにb方向に操作ノブ71を回転させてオート開AOの位置にすると、オート動作で窓が開くオート開動作が行われる。操作ノブ71には、図示しないバネが設けられており、回転した操作ノブ71から手を離すと、操作ノブ71はバネの力により中立Nの位置に復帰する。
【0006】
マニュアル動作の場合は、操作ノブ71がマニュアル閉MCまたはマニュアル開MOの位置に手で保持され続ける間だけ、窓を閉じる動作または開ける動作が行われ、操作ノブ71から手を離してノブが中立Nの位置に復帰すると、窓の閉動作または開動作は停止する。一方、オート動作の場合は、一旦、操作ノブ71がオート閉ACまたはオート開AOの位置まで回転されると、その後は操作ノブ71から手を離してノブが中立Nの位置に復帰しても、窓の閉動作または開動作が継続して行われる。
【0007】
図14は、車両の各窓に設けられる窓開閉機構の一例を示した図である。100は自動車の窓、101は窓100を開閉する窓ガラス、102は窓開閉機構である。窓ガラス101は、窓開閉機構102の作動により昇降動作を行い、窓ガラス101の上昇により窓100が閉じ、窓ガラス101の下降により窓100が開く。窓開閉機構102において、103は窓ガラス101の下端に取り付けられた支持部材である。104は一端が支持部材103に係合され、他端がブラケット106に回転可能に支持された第1アーム、105は一端が支持部材103に係合され、他端がガイド部材107に係合された第2アームである。第1アーム104と第2アーム105とは、それぞれの中間部において軸を介して連結されている。3は前述のモータ、4は前述のロータリエンコーダである。ロータリエンコーダ4はモータ3の回転軸に連結されており、モータ3の回転量に比例した数のパルスを出力する。所定時間内にロータリエンコーダ4から出力されるパルスを計数することにより、モータ3の回転速度を検出することができる。また、ロータリエンコーダ4の出力から、モータ3の回転量(窓ガラス101の移動量)を算出することができる。
【0008】
109はモータ3により回転駆動されるピニオン、110はピニオン109と噛合して回転する扇形のギヤである。ギヤ110は、第1アーム104に固定されている。モータ3は正逆方向に回転可能であり、正逆方向への回転によりピニオン109およびギヤ110を回転させて、第1アーム104を正逆方向へ回動させる。これに追随して、第2アーム105の他端がガイド部材107の溝に沿って横方向にスライドし、支持部材103が上下方向に移動して窓ガラス101を昇降させ、窓100を開閉する。
【0009】
以上のようなパワーウィンドウ装置において、操作ノブ71が図13のオート閉ACの位置にあってオート閉動作が行われる場合は、物体の挟み込みを検出する機能が備わっている。すなわち、図15に示したように、窓100が閉まる途中で窓ガラス101の隙間に物体Zが挟み込まれた場合、これを検知して窓100の閉動作を開動作へ切り換えるようになっている。オート閉動作中は窓100が自動的に閉じるので、挟まれた物体Zが損傷したりするのを防ぐため、挟み込み検出機能が働いて窓100の閉動作が禁止される。
【0010】
挟み込みの検出にあたっては、パルス検出回路5の出力であるモータ3の回転速度を制御部1が随時読み込み、現在の回転速度と以前の回転速度とを比較して、その比較結果に基づいて挟み込みの有無を判定する。窓100に物体Zの挟み込みが発生すると、モータ3の負荷が増大して回転速度が低下するため、速度の変化量が大きくなり、この速度変化量が所定の閾値を超えたときに、物体Zが挟み込まれたと判定する。閾値はメモリ6にあらかじめ記憶されている。
【0011】
また、挟み込みを検出する別の手段として、車両の窓枠に挟み込み検出用のセンサを設ける方法もある。例えば、下記の特許文献1には、窓枠に圧電センサを取り付け、この圧電センサに物体が接触したときにセンサから出力される信号に基づいて、挟み込みを検出する装置が記載されている。また、下記の特許文献2には、窓の開口部に容量性センサを設けるとともに、窓の位置を検出する位置センサを設け、容量センサの出力の変化と、位置センサの出力とに基づいて、挟み込みを検出する装置が記載されている。
【特許文献1】特開平10−76843号公報
【特許文献2】特表2004−506110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、モータ3の回転速度の変動は、異物の挟み込みだけではなく、ドアを閉じたときの振動や、凹凸の多い悪路を走行中の振動によっても発生する。したがって、前述のようなモータの回転速度の変化量に基づいて挟み込みを検出する方法では、ドアの開閉時や悪路走行中において、異物が挟み込まれていないにもかかわらず、異物が挟み込まれたと誤判定して窓が開いてしまうことが起こりうる。この対策として、挟み込みを判定するための閾値を高く設定することが考えられるが、閾値を高くすると挟み込み荷重が大きくなって、挟み込まれた物体が損傷しやすくなるなどの問題がある。一方、特許文献1や特許文献2のように、窓枠に取り付けられたセンサによって挟み込みを検出する方法では、センサに物体が触れることによって、誤検出が生じるおそれがある。
【0013】
そこで、本発明の課題は、外乱があった場合でも挟み込みを正確に検出でき、誤判定の生じない開閉体制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る開閉体制御装置は、車両に備わる開閉体を開閉するためのモータの負荷の変化量を検出する負荷変化量検出手段と、車両に対する外乱を検出する外乱検出手段と、開閉体に挟み込まれる異物を検出する異物検出手段と、挟み込みの有無を判定する判定手段とを備える。判定手段は、外乱検出手段が外乱を検出した場合において、負荷変化量検出手段が検出したモータの負荷の変化量が所定値を超えており、かつ、異物検出手段が異物を検出したときに、開閉体に異物が挟み込まれたと判定する。
【0015】
本発明においては、車両に外乱が加わった場合でも、モータの負荷変化量が所定値を超えており、かつ、異物が検出されたことを以って、挟み込みが発生したと判定するので、外乱があっても、モータの負荷変化量が小さかったり、異物が検出されなかったりした場合は、挟み込みとは判定されない。したがって、外乱によって誤判定が生じるおそれがなく、挟み込みを正確に検出することができる。また、挟み込み判定用の閾値を高くしなくても誤判定が生じないので、挟み込み荷重を小さくして、挟まれた物体の損傷などを防止することができる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態においては、外乱検出手段が外乱を検出しない場合において、負荷変化量検出手段が検出したモータの負荷の変化量が所定値を超えたとき、または、異物検出手段が異物を検出したときに、開閉体に異物が挟み込まれたと判定する。
【0017】
これによると、外乱のない状態では、モータの負荷変化量が所定値を超えるか、あるいは、異物が検出されるかのいずれかが生じたときに、挟み込みが検出されるので、挟み込みのあった場合にこれを迅速かつ正確に検出して、開閉体の閉動作を開動作または停止に切り替えることができる。
【0018】
本発明における外乱検出手段としては、車両のドアの開閉を検出するスイッチを備え、ドア開またはドア閉を外乱として検出するものを用いることができる。
【0019】
外乱検出手段としてドア開閉検出スイッチを用いた場合は、ドア開またはドア閉を検出した後、所定時間が経過するまでは、外乱検出状態を維持するのが好ましい。ドア開またはドア閉が行われた後、一定時間はドア開閉による振動が発生しているので、この振動を外乱として取り扱うことで、挟み込みをより正確に検出することができる。
【0020】
また、外乱検出手段としてドア開閉検出スイッチを用いた場合、上記のように所定時間が経過するまで外乱検出状態を維持することに代えて、開閉体が所定量移動するまで外乱検出状態を維持するようにしてもよい。ドア開またはドア閉が行われると、その衝撃により開閉体はドアの開閉速度に応じた量だけ移動するので、この移動の間は外乱が発生しているものとして取り扱うことで、挟み込みをより正確に検出することができる。
【0021】
本発明における外乱検出手段としては、上述したドア開閉検出スイッチ以外にも、種々のものを採用することができる。例えば、車両の速度を検出する車速センサを備え、一定以上の車速を外乱として検出する外乱検出手段を用いることができる。また、車両に加わる加速度を検出する加速度センサを備え、一定以上の加速度を外乱として検出する外乱検出手段を用いてもよい。また、車両外部の気温を検出する外気温センサを備え、一定以下の外気温を外乱として検出する外乱検出手段を用いることできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、車両に外乱が加わった場合でも、モータの負荷変化量が所定値を超えており、かつ、異物が検出されたことを以って、挟み込みが発生したと判定するので、外乱によって誤判定が生じるおそれがなく、挟み込みを正確に検出することができる。また、挟み込み判定用の閾値を高くしなくても誤判定が生じないので、挟み込み荷重を小さくして、挟まれた物体の損傷などを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、本発明の実施形態であるパワーウィンドウ装置の電気的構成を示したブロック図である。図1では、図12と同一部分に同一符号を付してある。1は窓の開閉動作を制御するCPUからなる制御部、2はモータ3を駆動するモータ駆動回路、4はモータ3の回転に同期したパルスを出力するロータリエンコーダ、5はロータリエンコーダ4から出力されるパルスを検出するパルス検出回路、6はROMやRAM等から構成されるメモリ、7は窓の開閉を操作するための操作スイッチである。操作スイッチ7は、図13に示したものと同じである。メモリ6には、挟み込み判定用の閾値が記憶されている。
【0024】
8は車両のドアの開閉を検出するドア開閉検出スイッチであって、例えばドアの開閉に連動して車内のランプの点灯を制御するカーテシーランプスイッチを用いることができる。もちろん、カーテシーランプスイッチとは別に、専用の検出スイッチを設けてもよい。9は車両の速度を検出する車速センサ、10は窓に挟み込まれる異物を検出する感圧センサである。感圧センサ10は、圧電センサなどから構成される。
【0025】
図2と図3は、車両の各窓に設けられる窓開閉機構の一例を示した図であって、それぞれ図14と図15に対応している。図2、図3において、図14、図15と同一部分には同一符号を付してある。図2に示されるように、上述した感圧センサ10は、窓100の上部の窓枠部分に取り付けられており、図3に示されるように、窓ガラス101の隙間に物体Zが挟み込まれると、感圧センサ10に物体Zが押し付けられて、感圧センサ10から検出信号が出力される。なお、ここでは感圧センサ10が窓100の上部のみに設けられているが、窓100の両側部にも感圧センサ10を設けてもよい。
【0026】
図1において、操作スイッチ7を操作すると、制御部1に窓開閉指令が与えられ、モータ駆動回路2によりモータ3が正転または逆転する。モータ3の回転により、モータ3と連動する窓開閉機構102(図2、図3)が作動して窓100の開閉が行われる。パルス検出回路5はロータリエンコーダ4から出力されるパルスを検出し、制御部1はこの検出結果に基づき窓100の開閉量やモータ3の回転速度を算出して、モータ駆動回路2を介してモータ3の回転を制御する。
【0027】
以上の構成において、ロータリエンコーダ4およびパルス検出回路5は、制御部1とともに本発明における負荷変化量検出手段の一実施形態を構成する。また、ドア開閉検出スイッチ8と車速センサ9は、制御部1とともに本発明における外乱検出手段の一実施形態を構成する。また、感圧センサ10は、制御部1とともに本発明における異物検出手段の一実施形態を構成する。また、制御部1は本発明における判定手段の一実施形態を構成する。また、窓ガラス101は本発明における開閉体の一実施形態を構成する。
【0028】
図4は、本発明の実施形態に係るパワーウィンドウ装置の基本的な動作を示したフローチャートである。図中の「SW」は「操作スイッチ7」を表している(以下のフローチャートにおいても同じ)。ステップS1で、操作スイッチ7がマニュアル閉MCの位置にあれば、マニュアル閉動作の処理が行われ(ステップS2)、ステップS3で、操作スイッチ7がオート閉ACの位置にあれば、オート閉動作の処理が行われ(ステップS4)、ステップS5で、操作スイッチ7がマニュアル開MOの位置にあれば、マニュアル開動作の処理が行われ(ステップS6)、ステップS7で、操作スイッチ7がオート開AOの位置にあれば、オート開動作の処理が行われる(ステップS8)。また、ステップS7で、操作スイッチ7がオート開AOの位置になければ、操作スイッチ7は中立Nの位置にあって、何も処理を行わない。ステップS2、S4、S6、S8の詳細については、以下に順を追って説明する。
【0029】
図5は、図4のステップS2での「マニュアル閉処理」の詳細手順を示している。この手順は、制御部1を構成するCPUにより実行される。最初に、マニュアル閉動作により窓100が完全に閉じたか否かをロータリエンコーダ4の出力に基づいて判定する(ステップS11)。窓100が完全に閉じれば(ステップS11:YES)処理を終了し、完全に閉じてなければ(ステップS11:NO)、モータ駆動回路2から正転信号を出力してモータ3を正転させ、窓100を閉じる(ステップS12)。続いて、窓100が完全に閉じたか否かを判定し(ステップS13)、完全に閉じれば(ステップS13:YES)処理を終了し、完全に閉じてなければ(ステップS13:NO)、挟み込みを検出したか否かを判定する(ステップS14)。この挟み込み検出については、後で詳細に説明する。
【0030】
図3で示したような物体Zの挟み込みがあった場合は(ステップS14:YES)、モータ駆動回路2から逆転信号を出力してモータ3を逆転させ、窓100を開く(ステップS15)。これによって、挟み込みが解除される。そして、窓100が完全に開いたか否かを判定し(ステップS16)、完全に開けば(ステップS16:YES)処理を終了し、完全に開いてなければ(ステップS16:NO)、ステップS15へ戻ってモータ3の逆転を継続する。
【0031】
ステップS14で挟み込みが検出されなかった場合は(ステップS14:NO)、操作スイッチ7がマニュアル閉MCの位置にあるか否かを判定する(ステップS17)。操作スイッチ7がマニュアル閉MCの位置にあれば(ステップS17:YES)、ステップS12へ戻ってモータ3の正転を継続し、マニュアル閉MCの位置になければ(ステップS17:NO)、オート閉ACの位置にあるか否かを判定する(ステップS18)。操作スイッチ7がオート閉ACの位置にあれば(ステップS18:YES)、後述(図6)のオート閉処理に移り(ステップS19)、オート閉ACの位置になければ(ステップS18:NO)、マニュアル開MOの位置にあるか否かを判定する(ステップS20)。操作スイッチ7がマニュアル開MOの位置にあれば(ステップS20:YES)、後述(図7)のマニュアル開処理に移り(ステップS21)、マニュアル開MOの位置になければ(ステップS20:NO)、オート開AOの位置にあるか否かを判定する(ステップS22)。操作スイッチ7がオート開AOの位置にあれば(ステップS22:YES)、後述(図8)のオート開処理に移り(ステップS23)、操作スイッチ7がオート開AOの位置になければ(ステップS22:NO)、何も処理せずに終了する。
【0032】
図6は、図4のステップS4での「オート閉処理」の詳細手順を示している。この手順は、制御部1を構成するCPUにより実行される。最初に、オート閉動作により窓100が完全に閉じたか否かをロータリエンコーダ4の出力に基づいて判定する(ステップS31)。窓100が完全に閉じれば(ステップS31:YES)、処理を終了し、完全に閉じてなければ(ステップS31:NO)、ステップS32へ移行する。
【0033】
ステップS32では、モータ駆動回路2へ正転信号を出力してモータ3を正転させ、窓100を閉じる。続いて、窓100が完全に閉じたか否かを判定し(ステップS33)、完全に閉じれば(ステップS33:YES)、処理を終了し、完全に閉じてなければ(ステップS33:NO)、ステップS34へ移行して、挟み込みを検出したか否かを判定する。この挟み込み検出については、後で詳細に説明する。
【0034】
図3で示したような物体Zの挟み込みがあった場合は(ステップS34:YES)、モータ駆動回路2から逆転信号を出力してモータ3を逆転させ、窓100を開く(ステップS35)。これによって、挟み込みが解除される。そして、窓100が完全に開いたか否かを判定し(ステップS36)、完全に開けば(ステップS36:YES)、処理を終了し、完全に開いてなければ(ステップS36:NO)、ステップS35へ戻ってモータ3の逆転を継続する。
【0035】
ステップS34で挟み込みが検出されなかった場合は(ステップS34:NO)、操作スイッチ7がマニュアル開MOの位置にあるか否かを判定する(ステップS37)。操作スイッチ7がマニュアル開MOの位置にあれば(ステップS37:YES)、後述(図7)のマニュアル開処理に移り(ステップS38)、マニュアル開MOの位置になければ(ステップS37:NO)、オート開AOの位置にあるか否かを判定する(ステップS39)。操作スイッチ7がオート開AOの位置にあれば(ステップS39:YES)、後述(図8)のオート開処理に移り(ステップS40)、操作スイッチ7がオート開AOの位置になければ(ステップS39:NO)、ステップS32へ戻ってオート閉動作を継続し、窓100を閉じる。
【0036】
図7は、図4のステップS6での「マニュアル開処理」の詳細手順を示している。この手順は、制御部1を構成するCPUにより実行される。最初に、マニュアル開動作により窓100が完全に開いたか否かをロータリエンコーダ4の出力に基づいて判定する(ステップS51)。窓100が完全に開けば(ステップS51:YES)処理を終了し、完全に開いてなければ(ステップS51:NO)、モータ駆動回路2から逆転信号を出力してモータ3を逆転させ、窓100を開ける(ステップS52)。続いて、窓100が完全に開いたか否かを判定し(ステップS53)、完全に開けば(ステップS53:YES)処理を終了し、完全に開いてなければ(ステップS53:NO)、操作スイッチ7がマニュアル開MOの位置にあるか否かを判定する(ステップS54)。操作スイッチ7がマニュアル開MOの位置にあれば(ステップS54:YES)、ステップS52へ戻ってモータ3の逆転を継続し、マニュアル開MOの位置になければ(ステップS54:NO)、オート開AOの位置にあるか否かを判定する(ステップS55)。操作スイッチ7がオート開AOの位置にあれば(ステップS55:YES)、後述(図8)のオート開処理に移り(ステップS56)、オート開AOの位置になければ(ステップS55:NO)、マニュアル閉MCの位置にあるか否かを判定する(ステップS57)。操作スイッチ7がマニュアル閉MCの位置にあれば(ステップS57:YES)、前述(図5)のマニュアル閉処理に移り(ステップS58)、マニュアル閉MCの位置になければ(ステップS57:NO)、オート閉ACの位置にあるか否かを判定する(ステップS59)。操作スイッチ7がオート閉ACの位置にあれば(ステップS59:YES)、前述(図6)のオート閉処理に移り(ステップS60)、操作スイッチ7がオート閉ACの位置になければ(ステップS59:NO)、何も処理せずに終了する。
【0037】
図8は、図4のステップS8での「オート開処理」の詳細手順を示している。この手順は、制御部1を構成するCPUにより実行される。最初に、オート開動作により窓100が完全に開いたか否かをロータリエンコーダ4の出力に基づいて判定する(ステップS71)。窓100が完全に開けば(ステップS71:YES)処理を終了し、完全に開いてなければ(ステップS71:NO)、モータ駆動回路2から逆転信号を出力してモータ3を逆転させ、窓100を開ける(ステップS72)。続いて、窓100が完全に開いたか否かを判定し(ステップS73)、完全に開けば(ステップS73:YES)処理を終了し、完全に開いてなければ(ステップS73:NO)、操作スイッチ7がマニュアル閉MCの位置にあるか否かを判定する(ステップS74)。操作スイッチ7がマニュアル閉MCの位置にあれば(ステップS74:YES)、前述(図5)のマニュアル閉処理に移り(ステップS75)、マニュアル閉MCの位置になければ(ステップS74:NO)、オート閉ACの位置にあるか否かを判定する(ステップS76)。操作スイッチ7がオート閉ACの位置にあれば(ステップS76:YES)、前述(図6)のオート閉処理に移り(ステップS77)、操作スイッチ7がオート閉ACの位置になければ(ステップS76:NO)、ステップS72へ戻って、モータ3の逆転を継続する。
【0038】
図9は、図5のステップS14および図6のステップS34における挟込検出処理の詳細を示したフローチャートである。ステップS101では、パルス検出回路5の出力に基づいて、モータ3の回転速度を検出する。検出された回転速度は順次、メモリ6に記憶される。続いて、メモリ6に記憶されたモータ3の回転速度を読み出して、現在の回転速度と以前の回転速度とを比較し、回転速度の変化量を算出する(ステップS102)。
【0039】
次に、外乱が検出されたか否かを、ドア開閉検出スイッチ8の出力に基づいて判定する(ステップS103)。ドアが開かれた場合、またはドアが閉じられた場合は、ドア開閉検出スイッチ8の出力状態が変化するので、制御部1はこの変化によりドア開またはドア閉を外乱として検出する。この場合、ドアが開閉されてからしばらくの間は、開閉による振動が発生しているので、制御部1は、ドアの開閉を検出した後、所定時間が経過するまでは、外乱検出状態を維持する。
【0040】
ステップS103での判定の結果、外乱が検出された場合は(ステップS103:YES)、ステップS104へ移行する。ステップS104では、ステップS102で算出されたモータ3の回転速度の変化量が、所定値すなわちメモリ6に記憶されている閾値を超えたか否かを判定する。図3のような物体Zの挟み込みが発生していない場合は、モータ3に過大な負荷がかからず、回転速度が安定しているため、回転速度の変化量は小さいが、物体Zの挟み込みが発生すると、モータ3の負荷が増大して回転速度が低下するため、回転速度の変化量が大きくなる。
【0041】
ステップS104での判定の結果、モータ3の回転速度の変化量が閾値を超えた場合は(ステップS104:YES)、ステップS105へ移行する。ステップS105では、異物が検出されたか否かを、感圧センサ10の出力に基づいて判定する。異物の挟み込みがない場合は、感圧センサ10に異物が接触しないため、感圧センサ10から検出信号は出力されない。これに対して、異物の挟み込みがあると、異物と接触した感圧センサ10から検出信号が出力される。
【0042】
ステップS105での判定の結果、異物が検出された場合は(ステップS105:YES)、ステップS108へ移行し、最終的に異物の挟み込みがあったものと判定する。このように判定されると、図5のステップS15や図6のステップS35で説明したように、モータ駆動回路2から逆転信号を出力してモータ3を逆転させ、窓100を開く。これによって、挟み込み荷重が減少するので、挟み込まれた物体Zに損傷などが生じるのを防止することができる。
【0043】
ステップS103で外乱が検出された場合であっても、ステップS104において、モータ3の回転速度の変化量が閾値を超えない場合(ステップS104:NO)、または、ステップS105において、異物が検出されない場合(ステップS105:NO)は、異物の挟み込みがあったとは判定せず、処理を終了する。
【0044】
ステップS103で外乱が検出されなかった場合は(ステップS103:NO)、ステップS106へ移行し、ステップS104と同じ要領で、モータ3の回転速度の変化量が閾値を超えたか否かを判定する。判定の結果、回転速度の変化量が閾値を超えた場合は(ステップS106:YES)、ステップS108へ移行して、異物の挟み込みがあったものと判定する。一方、回転速度の変化量が閾値を超えていない場合は(ステップS106:NO)、ステップS107へ移行し、ステップS105と同じ要領で、異物が検出されたか否かを判定する。判定の結果、異物が検出された場合は(ステップS107:YES)、ステップS108へ移行して、異物の挟み込みがあったものと判定する。一方、異物が検出されない場合は(ステップS107:NO)、異物の挟み込みがあったとは判定せず、処理を終了する。
【0045】
このように、図9の手順においては、外乱が検出された場合に、モータ3の回転速度変化量が閾値を超えたこと(ステップS104)、および、異物が検出されたこと(ステップS105)の2つの条件が同時に満たされたときに、初めて挟み込みがあったものと判定している。このため、外乱によってモータ3の回転速度変化量が閾値を超えたとしても、それだけでは挟み込みがあったとは判定されず、また、感圧センサ10に物体が接触したとしても、それだけでは挟み込みがあったとは判定されないので、誤判定が生じるおそれがなく、挟み込みを正確に検出することができる。また、挟み込み判定用の閾値を高くしなくても誤判定が生じないので、挟み込み荷重を小さくして、挟まれた物体Zの損傷などを防止することができる。
【0046】
また、図9の手順においては、外乱が検出されない場合に、モータ3の回転速度変化量が閾値を超えたこと(ステップS106)、または、異物が検出されたこと(ステップS107)のいずれかの条件が満たされれば、挟み込みがあったものと判定している。このため、外乱のない通常状態では、モータ3の回転速度変化量が閾値を超えるか、異物が検出された時点で、挟み込みが発生したと判定されるので、挟み込みを迅速かつ正確に検出して、モータ3を逆転させることで窓100を開くことができる。
【0047】
なお、ドアの開閉動作が行われると、開閉の際の衝撃により一定時間は振動が発生しているが、図9のステップS103においては、上述したように、ドア開閉検出スイッチ8がドア開またはドア閉を検出した後、所定時間が経過するまでは外乱検出状態が維持され、この間の振動が外乱として取り扱われる。したがって、この間は、ステップS104で回転速度変化量が閾値を超え、かつステップS105で異物が検出されない限り、挟み込みとは判定されないので、挟み込みをより正確に検出することができる。
【0048】
また、上記のように所定時間が経過するまで外乱検出状態を維持することに代えて、窓ガラス101が所定量移動するまで外乱検出状態を維持するようにしてもよい。ドア開またはドア閉が行われると、その衝撃により窓ガラス101はドアの開閉速度に応じた量だけ移動する。そこで、この移動の間は外乱が発生しているものとして取り扱うことで、上記の場合と同様に、挟み込みをより正確に検出することができる。窓ガラス101の移動量は、ロータリエンコーダ4により検出することができる。
【0049】
図9のステップS103では、ドア開閉検出スイッチ8の出力のみに基づいて外乱の有無を検出したが、ドア開閉検出スイッチ8と車速センサ9のそれぞれの出力に基づいて外乱の有無を検出してもよい。すなわち、ドア開閉検出スイッチ8によりドアの開閉が検出されたことと、車速センサ9により一定以上の車速が検出されたことの少なくとも一方が成立した場合に、外乱を検出するようにしてもよい。車速センサ9が検出した車速値が大きい場合は、車両が高速で走行していて、道路の状態などにより振動が発生しやすいため、一定以上の車速は外乱となりうる。
【0050】
また、図5のステップS15や図6のステップS35では、モータ駆動回路2から逆転信号を出力してモータ3を逆転させ、窓100を開くようにしたが、モータ駆動回路2から停止信号を出力してモータ3を停止させ、窓100の閉動作を停止するようにしてもよい。
【0051】
本発明は、上述した実施形態以外にも、種々の実施形態を採用することができる。例えば、上記実施形態では、異物検出手段として感圧センサ10を用いた例を挙げたが、図10に示すように、感圧センサ10に代えて静電容量センサ11を用いてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、外乱検出手段としてドア開閉検出スイッチ8や車速センサ9を用いた例を挙げたが、図11に示すように、これらに加えて、加速度センサ12や外気温センサ13を外乱検出手段として用いてもよい。加速度センサ12は、車両に加わる振動や衝撃に基づく加速度を検出するセンサであって、一定以上の加速度を外乱として検出する。車両が凹凸の多い道路(悪路)を走行する場合は、車体に大きな振動が発生して加速度が加わるため、一定以上の加速度は外乱となる。外気温センサ13は、車両外部の気温を検出するセンサであって、一定以下の外気温を外乱として検出する。冬場などに外気温が下がって、窓に氷の付着などが生じると、窓を開閉する際の抵抗が大きくなってモータ3の負荷が増大するので、外気温の低下も一種の外乱となりうる。外乱検出手段としては、このほかにも、例えばエンジン始動用モータの回転を検出するものなどが考えられる。
【0053】
また、上記実施形態では、モータ3の回転速度の変化量に基づいてモータ負荷の変化量を検出したが、これに代えて、モータ3に流れる電流の変化量に基づいてモータ負荷の変化量を検出するようにしてもよい。この場合は、負荷変化量検出手段として、モータ電流を検出する電流検出回路を設ければよい。
【0054】
さらに、上記実施形態では、開閉体として車両の窓ガラスを例に挙げたが、本発明は、車両の後部扉やサンルーフなどの開閉体を制御する場合にも適用することができる。また、本発明は、車両だけでなく、建物におけるドアや扉の開閉を制御する場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係るパワーウィンドウ装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図2】本発明における窓開閉機構の一例を示した図である。
【図3】窓に物体が挟み込まれた状態を示す図である。
【図4】パワーウィンドウ装置の基本的な動作を示したフローチャートである。
【図5】マニュアル閉処理の詳細手順を表したフローチャートである。
【図6】オート閉処理の詳細手順を表したフローチャートである。
【図7】マニュアル開処理の詳細手順を表したフローチャートである。
【図8】オート開処理の詳細手順を表したフローチャートである。
【図9】挟込検出処理の詳細手順を表したフローチャートである。
【図10】本発明の他の実施形態に係るパワーウィンドウ装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係るパワーウィンドウ装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図12】一般的なパワーウィンドウ装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図13】操作スイッチの一例を示した概略構成図である。
【図14】窓開閉機構の一例を示した図である。
【図15】窓に物体が挟み込まれた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 制御部
2 モータ駆動回路
3 モータ
4 ロータリエンコーダ
5 パルス検出回路
6 メモリ
7 操作スイッチ
8 ドア開閉検出スイッチ
9 車速センサ
10 感圧センサ
11 静電容量センサ
12 加速度センサ
13 外気温センサ
100 窓
101 窓ガラス
102 窓開閉機構
Z 物体
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における窓などの開閉体を開閉するための開閉体制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に用いられる窓開閉制御装置(以下、「パワーウィンドウ装置」という。)は、スイッチの操作によりモータを正転または逆転させてドアの窓ガラスを昇降させ、窓を開閉する装置である。図12は、一般的なパワーウィンドウ装置の電気的構成を示したブロック図である。1は窓の開閉動作を制御するCPUからなる制御部、2はモータ3を駆動するモータ駆動回路、4はモータ3の回転に同期したパルスを出力するロータリエンコーダ、5はロータリエンコーダ4から出力されるパルスを検出するパルス検出回路、6はROMやRAM等から構成されるメモリ、7は窓の開閉を操作するための操作スイッチである。
【0003】
操作スイッチ7を操作すると、制御部1に窓開閉指令が与えられ、モータ駆動回路2によりモータ3が正転または逆転する。モータ3の回転により、モータ3と連動する窓開閉機構が作動して窓の開閉が行われる。パルス検出回路5はロータリエンコーダ4から出力されるパルスを検出し、制御部1はこの検出結果に基づき窓の開閉量やモータ速度を算出して、モータ駆動回路2を介してモータ3の回転を制御する。
【0004】
図13は、操作スイッチ7の一例を示した概略構成図である。操作スイッチ7は、軸Qを中心としてab方向に回転可能な操作ノブ71と、この操作ノブ71と一体に設けられたロッド72と、公知のスライドスイッチ73とから構成される。74はスライドスイッチ73のアクチュエータ、20は操作スイッチ7が組み込まれるスイッチユニットのカバーである。ロッド72の下端は、スライドスイッチ73のアクチュエータ74と係合しており、操作ノブ71がab方向に回転すると、ロッド72を介してアクチュエータ74がcd方向に移動し、その移動位置に応じてスライドスイッチ73の接点(図示省略)が切り換えられる。
【0005】
操作ノブ71は、オート閉AC、マニュアル閉MC、中立N、マニュアル開MO、オート開AOの各位置へ切換可能となっている。図13は、操作ノブ71が中立Nの位置にある状態を示している。この位置から操作ノブ71をa方向に一定量回転させて、マニュアル閉MCの位置にすると、マニュアル動作で窓が閉じるマニュアル閉動作が行われ、この位置よりさらにa方向に操作ノブ71を回転させてオート閉ACの位置にすると、オート動作で窓が閉じるオート閉動作が行われる。また、操作ノブ71を中立Nの位置からb方向に一定量回転させて、マニュアル開MOの位置にすると、マニュアル動作で窓が開くマニュアル開動作が行われ、この位置よりさらにb方向に操作ノブ71を回転させてオート開AOの位置にすると、オート動作で窓が開くオート開動作が行われる。操作ノブ71には、図示しないバネが設けられており、回転した操作ノブ71から手を離すと、操作ノブ71はバネの力により中立Nの位置に復帰する。
【0006】
マニュアル動作の場合は、操作ノブ71がマニュアル閉MCまたはマニュアル開MOの位置に手で保持され続ける間だけ、窓を閉じる動作または開ける動作が行われ、操作ノブ71から手を離してノブが中立Nの位置に復帰すると、窓の閉動作または開動作は停止する。一方、オート動作の場合は、一旦、操作ノブ71がオート閉ACまたはオート開AOの位置まで回転されると、その後は操作ノブ71から手を離してノブが中立Nの位置に復帰しても、窓の閉動作または開動作が継続して行われる。
【0007】
図14は、車両の各窓に設けられる窓開閉機構の一例を示した図である。100は自動車の窓、101は窓100を開閉する窓ガラス、102は窓開閉機構である。窓ガラス101は、窓開閉機構102の作動により昇降動作を行い、窓ガラス101の上昇により窓100が閉じ、窓ガラス101の下降により窓100が開く。窓開閉機構102において、103は窓ガラス101の下端に取り付けられた支持部材である。104は一端が支持部材103に係合され、他端がブラケット106に回転可能に支持された第1アーム、105は一端が支持部材103に係合され、他端がガイド部材107に係合された第2アームである。第1アーム104と第2アーム105とは、それぞれの中間部において軸を介して連結されている。3は前述のモータ、4は前述のロータリエンコーダである。ロータリエンコーダ4はモータ3の回転軸に連結されており、モータ3の回転量に比例した数のパルスを出力する。所定時間内にロータリエンコーダ4から出力されるパルスを計数することにより、モータ3の回転速度を検出することができる。また、ロータリエンコーダ4の出力から、モータ3の回転量(窓ガラス101の移動量)を算出することができる。
【0008】
109はモータ3により回転駆動されるピニオン、110はピニオン109と噛合して回転する扇形のギヤである。ギヤ110は、第1アーム104に固定されている。モータ3は正逆方向に回転可能であり、正逆方向への回転によりピニオン109およびギヤ110を回転させて、第1アーム104を正逆方向へ回動させる。これに追随して、第2アーム105の他端がガイド部材107の溝に沿って横方向にスライドし、支持部材103が上下方向に移動して窓ガラス101を昇降させ、窓100を開閉する。
【0009】
以上のようなパワーウィンドウ装置において、操作ノブ71が図13のオート閉ACの位置にあってオート閉動作が行われる場合は、物体の挟み込みを検出する機能が備わっている。すなわち、図15に示したように、窓100が閉まる途中で窓ガラス101の隙間に物体Zが挟み込まれた場合、これを検知して窓100の閉動作を開動作へ切り換えるようになっている。オート閉動作中は窓100が自動的に閉じるので、挟まれた物体Zが損傷したりするのを防ぐため、挟み込み検出機能が働いて窓100の閉動作が禁止される。
【0010】
挟み込みの検出にあたっては、パルス検出回路5の出力であるモータ3の回転速度を制御部1が随時読み込み、現在の回転速度と以前の回転速度とを比較して、その比較結果に基づいて挟み込みの有無を判定する。窓100に物体Zの挟み込みが発生すると、モータ3の負荷が増大して回転速度が低下するため、速度の変化量が大きくなり、この速度変化量が所定の閾値を超えたときに、物体Zが挟み込まれたと判定する。閾値はメモリ6にあらかじめ記憶されている。
【0011】
また、挟み込みを検出する別の手段として、車両の窓枠に挟み込み検出用のセンサを設ける方法もある。例えば、下記の特許文献1には、窓枠に圧電センサを取り付け、この圧電センサに物体が接触したときにセンサから出力される信号に基づいて、挟み込みを検出する装置が記載されている。また、下記の特許文献2には、窓の開口部に容量性センサを設けるとともに、窓の位置を検出する位置センサを設け、容量センサの出力の変化と、位置センサの出力とに基づいて、挟み込みを検出する装置が記載されている。
【特許文献1】特開平10−76843号公報
【特許文献2】特表2004−506110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、モータ3の回転速度の変動は、異物の挟み込みだけではなく、ドアを閉じたときの振動や、凹凸の多い悪路を走行中の振動によっても発生する。したがって、前述のようなモータの回転速度の変化量に基づいて挟み込みを検出する方法では、ドアの開閉時や悪路走行中において、異物が挟み込まれていないにもかかわらず、異物が挟み込まれたと誤判定して窓が開いてしまうことが起こりうる。この対策として、挟み込みを判定するための閾値を高く設定することが考えられるが、閾値を高くすると挟み込み荷重が大きくなって、挟み込まれた物体が損傷しやすくなるなどの問題がある。一方、特許文献1や特許文献2のように、窓枠に取り付けられたセンサによって挟み込みを検出する方法では、センサに物体が触れることによって、誤検出が生じるおそれがある。
【0013】
そこで、本発明の課題は、外乱があった場合でも挟み込みを正確に検出でき、誤判定の生じない開閉体制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る開閉体制御装置は、車両に備わる開閉体を開閉するためのモータの負荷の変化量を検出する負荷変化量検出手段と、車両に対する外乱を検出する外乱検出手段と、開閉体に挟み込まれる異物を検出する異物検出手段と、挟み込みの有無を判定する判定手段とを備える。判定手段は、外乱検出手段が外乱を検出した場合において、負荷変化量検出手段が検出したモータの負荷の変化量が所定値を超えており、かつ、異物検出手段が異物を検出したときに、開閉体に異物が挟み込まれたと判定する。
【0015】
本発明においては、車両に外乱が加わった場合でも、モータの負荷変化量が所定値を超えており、かつ、異物が検出されたことを以って、挟み込みが発生したと判定するので、外乱があっても、モータの負荷変化量が小さかったり、異物が検出されなかったりした場合は、挟み込みとは判定されない。したがって、外乱によって誤判定が生じるおそれがなく、挟み込みを正確に検出することができる。また、挟み込み判定用の閾値を高くしなくても誤判定が生じないので、挟み込み荷重を小さくして、挟まれた物体の損傷などを防止することができる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態においては、外乱検出手段が外乱を検出しない場合において、負荷変化量検出手段が検出したモータの負荷の変化量が所定値を超えたとき、または、異物検出手段が異物を検出したときに、開閉体に異物が挟み込まれたと判定する。
【0017】
これによると、外乱のない状態では、モータの負荷変化量が所定値を超えるか、あるいは、異物が検出されるかのいずれかが生じたときに、挟み込みが検出されるので、挟み込みのあった場合にこれを迅速かつ正確に検出して、開閉体の閉動作を開動作または停止に切り替えることができる。
【0018】
本発明における外乱検出手段としては、車両のドアの開閉を検出するスイッチを備え、ドア開またはドア閉を外乱として検出するものを用いることができる。
【0019】
外乱検出手段としてドア開閉検出スイッチを用いた場合は、ドア開またはドア閉を検出した後、所定時間が経過するまでは、外乱検出状態を維持するのが好ましい。ドア開またはドア閉が行われた後、一定時間はドア開閉による振動が発生しているので、この振動を外乱として取り扱うことで、挟み込みをより正確に検出することができる。
【0020】
また、外乱検出手段としてドア開閉検出スイッチを用いた場合、上記のように所定時間が経過するまで外乱検出状態を維持することに代えて、開閉体が所定量移動するまで外乱検出状態を維持するようにしてもよい。ドア開またはドア閉が行われると、その衝撃により開閉体はドアの開閉速度に応じた量だけ移動するので、この移動の間は外乱が発生しているものとして取り扱うことで、挟み込みをより正確に検出することができる。
【0021】
本発明における外乱検出手段としては、上述したドア開閉検出スイッチ以外にも、種々のものを採用することができる。例えば、車両の速度を検出する車速センサを備え、一定以上の車速を外乱として検出する外乱検出手段を用いることができる。また、車両に加わる加速度を検出する加速度センサを備え、一定以上の加速度を外乱として検出する外乱検出手段を用いてもよい。また、車両外部の気温を検出する外気温センサを備え、一定以下の外気温を外乱として検出する外乱検出手段を用いることできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、車両に外乱が加わった場合でも、モータの負荷変化量が所定値を超えており、かつ、異物が検出されたことを以って、挟み込みが発生したと判定するので、外乱によって誤判定が生じるおそれがなく、挟み込みを正確に検出することができる。また、挟み込み判定用の閾値を高くしなくても誤判定が生じないので、挟み込み荷重を小さくして、挟まれた物体の損傷などを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、本発明の実施形態であるパワーウィンドウ装置の電気的構成を示したブロック図である。図1では、図12と同一部分に同一符号を付してある。1は窓の開閉動作を制御するCPUからなる制御部、2はモータ3を駆動するモータ駆動回路、4はモータ3の回転に同期したパルスを出力するロータリエンコーダ、5はロータリエンコーダ4から出力されるパルスを検出するパルス検出回路、6はROMやRAM等から構成されるメモリ、7は窓の開閉を操作するための操作スイッチである。操作スイッチ7は、図13に示したものと同じである。メモリ6には、挟み込み判定用の閾値が記憶されている。
【0024】
8は車両のドアの開閉を検出するドア開閉検出スイッチであって、例えばドアの開閉に連動して車内のランプの点灯を制御するカーテシーランプスイッチを用いることができる。もちろん、カーテシーランプスイッチとは別に、専用の検出スイッチを設けてもよい。9は車両の速度を検出する車速センサ、10は窓に挟み込まれる異物を検出する感圧センサである。感圧センサ10は、圧電センサなどから構成される。
【0025】
図2と図3は、車両の各窓に設けられる窓開閉機構の一例を示した図であって、それぞれ図14と図15に対応している。図2、図3において、図14、図15と同一部分には同一符号を付してある。図2に示されるように、上述した感圧センサ10は、窓100の上部の窓枠部分に取り付けられており、図3に示されるように、窓ガラス101の隙間に物体Zが挟み込まれると、感圧センサ10に物体Zが押し付けられて、感圧センサ10から検出信号が出力される。なお、ここでは感圧センサ10が窓100の上部のみに設けられているが、窓100の両側部にも感圧センサ10を設けてもよい。
【0026】
図1において、操作スイッチ7を操作すると、制御部1に窓開閉指令が与えられ、モータ駆動回路2によりモータ3が正転または逆転する。モータ3の回転により、モータ3と連動する窓開閉機構102(図2、図3)が作動して窓100の開閉が行われる。パルス検出回路5はロータリエンコーダ4から出力されるパルスを検出し、制御部1はこの検出結果に基づき窓100の開閉量やモータ3の回転速度を算出して、モータ駆動回路2を介してモータ3の回転を制御する。
【0027】
以上の構成において、ロータリエンコーダ4およびパルス検出回路5は、制御部1とともに本発明における負荷変化量検出手段の一実施形態を構成する。また、ドア開閉検出スイッチ8と車速センサ9は、制御部1とともに本発明における外乱検出手段の一実施形態を構成する。また、感圧センサ10は、制御部1とともに本発明における異物検出手段の一実施形態を構成する。また、制御部1は本発明における判定手段の一実施形態を構成する。また、窓ガラス101は本発明における開閉体の一実施形態を構成する。
【0028】
図4は、本発明の実施形態に係るパワーウィンドウ装置の基本的な動作を示したフローチャートである。図中の「SW」は「操作スイッチ7」を表している(以下のフローチャートにおいても同じ)。ステップS1で、操作スイッチ7がマニュアル閉MCの位置にあれば、マニュアル閉動作の処理が行われ(ステップS2)、ステップS3で、操作スイッチ7がオート閉ACの位置にあれば、オート閉動作の処理が行われ(ステップS4)、ステップS5で、操作スイッチ7がマニュアル開MOの位置にあれば、マニュアル開動作の処理が行われ(ステップS6)、ステップS7で、操作スイッチ7がオート開AOの位置にあれば、オート開動作の処理が行われる(ステップS8)。また、ステップS7で、操作スイッチ7がオート開AOの位置になければ、操作スイッチ7は中立Nの位置にあって、何も処理を行わない。ステップS2、S4、S6、S8の詳細については、以下に順を追って説明する。
【0029】
図5は、図4のステップS2での「マニュアル閉処理」の詳細手順を示している。この手順は、制御部1を構成するCPUにより実行される。最初に、マニュアル閉動作により窓100が完全に閉じたか否かをロータリエンコーダ4の出力に基づいて判定する(ステップS11)。窓100が完全に閉じれば(ステップS11:YES)処理を終了し、完全に閉じてなければ(ステップS11:NO)、モータ駆動回路2から正転信号を出力してモータ3を正転させ、窓100を閉じる(ステップS12)。続いて、窓100が完全に閉じたか否かを判定し(ステップS13)、完全に閉じれば(ステップS13:YES)処理を終了し、完全に閉じてなければ(ステップS13:NO)、挟み込みを検出したか否かを判定する(ステップS14)。この挟み込み検出については、後で詳細に説明する。
【0030】
図3で示したような物体Zの挟み込みがあった場合は(ステップS14:YES)、モータ駆動回路2から逆転信号を出力してモータ3を逆転させ、窓100を開く(ステップS15)。これによって、挟み込みが解除される。そして、窓100が完全に開いたか否かを判定し(ステップS16)、完全に開けば(ステップS16:YES)処理を終了し、完全に開いてなければ(ステップS16:NO)、ステップS15へ戻ってモータ3の逆転を継続する。
【0031】
ステップS14で挟み込みが検出されなかった場合は(ステップS14:NO)、操作スイッチ7がマニュアル閉MCの位置にあるか否かを判定する(ステップS17)。操作スイッチ7がマニュアル閉MCの位置にあれば(ステップS17:YES)、ステップS12へ戻ってモータ3の正転を継続し、マニュアル閉MCの位置になければ(ステップS17:NO)、オート閉ACの位置にあるか否かを判定する(ステップS18)。操作スイッチ7がオート閉ACの位置にあれば(ステップS18:YES)、後述(図6)のオート閉処理に移り(ステップS19)、オート閉ACの位置になければ(ステップS18:NO)、マニュアル開MOの位置にあるか否かを判定する(ステップS20)。操作スイッチ7がマニュアル開MOの位置にあれば(ステップS20:YES)、後述(図7)のマニュアル開処理に移り(ステップS21)、マニュアル開MOの位置になければ(ステップS20:NO)、オート開AOの位置にあるか否かを判定する(ステップS22)。操作スイッチ7がオート開AOの位置にあれば(ステップS22:YES)、後述(図8)のオート開処理に移り(ステップS23)、操作スイッチ7がオート開AOの位置になければ(ステップS22:NO)、何も処理せずに終了する。
【0032】
図6は、図4のステップS4での「オート閉処理」の詳細手順を示している。この手順は、制御部1を構成するCPUにより実行される。最初に、オート閉動作により窓100が完全に閉じたか否かをロータリエンコーダ4の出力に基づいて判定する(ステップS31)。窓100が完全に閉じれば(ステップS31:YES)、処理を終了し、完全に閉じてなければ(ステップS31:NO)、ステップS32へ移行する。
【0033】
ステップS32では、モータ駆動回路2へ正転信号を出力してモータ3を正転させ、窓100を閉じる。続いて、窓100が完全に閉じたか否かを判定し(ステップS33)、完全に閉じれば(ステップS33:YES)、処理を終了し、完全に閉じてなければ(ステップS33:NO)、ステップS34へ移行して、挟み込みを検出したか否かを判定する。この挟み込み検出については、後で詳細に説明する。
【0034】
図3で示したような物体Zの挟み込みがあった場合は(ステップS34:YES)、モータ駆動回路2から逆転信号を出力してモータ3を逆転させ、窓100を開く(ステップS35)。これによって、挟み込みが解除される。そして、窓100が完全に開いたか否かを判定し(ステップS36)、完全に開けば(ステップS36:YES)、処理を終了し、完全に開いてなければ(ステップS36:NO)、ステップS35へ戻ってモータ3の逆転を継続する。
【0035】
ステップS34で挟み込みが検出されなかった場合は(ステップS34:NO)、操作スイッチ7がマニュアル開MOの位置にあるか否かを判定する(ステップS37)。操作スイッチ7がマニュアル開MOの位置にあれば(ステップS37:YES)、後述(図7)のマニュアル開処理に移り(ステップS38)、マニュアル開MOの位置になければ(ステップS37:NO)、オート開AOの位置にあるか否かを判定する(ステップS39)。操作スイッチ7がオート開AOの位置にあれば(ステップS39:YES)、後述(図8)のオート開処理に移り(ステップS40)、操作スイッチ7がオート開AOの位置になければ(ステップS39:NO)、ステップS32へ戻ってオート閉動作を継続し、窓100を閉じる。
【0036】
図7は、図4のステップS6での「マニュアル開処理」の詳細手順を示している。この手順は、制御部1を構成するCPUにより実行される。最初に、マニュアル開動作により窓100が完全に開いたか否かをロータリエンコーダ4の出力に基づいて判定する(ステップS51)。窓100が完全に開けば(ステップS51:YES)処理を終了し、完全に開いてなければ(ステップS51:NO)、モータ駆動回路2から逆転信号を出力してモータ3を逆転させ、窓100を開ける(ステップS52)。続いて、窓100が完全に開いたか否かを判定し(ステップS53)、完全に開けば(ステップS53:YES)処理を終了し、完全に開いてなければ(ステップS53:NO)、操作スイッチ7がマニュアル開MOの位置にあるか否かを判定する(ステップS54)。操作スイッチ7がマニュアル開MOの位置にあれば(ステップS54:YES)、ステップS52へ戻ってモータ3の逆転を継続し、マニュアル開MOの位置になければ(ステップS54:NO)、オート開AOの位置にあるか否かを判定する(ステップS55)。操作スイッチ7がオート開AOの位置にあれば(ステップS55:YES)、後述(図8)のオート開処理に移り(ステップS56)、オート開AOの位置になければ(ステップS55:NO)、マニュアル閉MCの位置にあるか否かを判定する(ステップS57)。操作スイッチ7がマニュアル閉MCの位置にあれば(ステップS57:YES)、前述(図5)のマニュアル閉処理に移り(ステップS58)、マニュアル閉MCの位置になければ(ステップS57:NO)、オート閉ACの位置にあるか否かを判定する(ステップS59)。操作スイッチ7がオート閉ACの位置にあれば(ステップS59:YES)、前述(図6)のオート閉処理に移り(ステップS60)、操作スイッチ7がオート閉ACの位置になければ(ステップS59:NO)、何も処理せずに終了する。
【0037】
図8は、図4のステップS8での「オート開処理」の詳細手順を示している。この手順は、制御部1を構成するCPUにより実行される。最初に、オート開動作により窓100が完全に開いたか否かをロータリエンコーダ4の出力に基づいて判定する(ステップS71)。窓100が完全に開けば(ステップS71:YES)処理を終了し、完全に開いてなければ(ステップS71:NO)、モータ駆動回路2から逆転信号を出力してモータ3を逆転させ、窓100を開ける(ステップS72)。続いて、窓100が完全に開いたか否かを判定し(ステップS73)、完全に開けば(ステップS73:YES)処理を終了し、完全に開いてなければ(ステップS73:NO)、操作スイッチ7がマニュアル閉MCの位置にあるか否かを判定する(ステップS74)。操作スイッチ7がマニュアル閉MCの位置にあれば(ステップS74:YES)、前述(図5)のマニュアル閉処理に移り(ステップS75)、マニュアル閉MCの位置になければ(ステップS74:NO)、オート閉ACの位置にあるか否かを判定する(ステップS76)。操作スイッチ7がオート閉ACの位置にあれば(ステップS76:YES)、前述(図6)のオート閉処理に移り(ステップS77)、操作スイッチ7がオート閉ACの位置になければ(ステップS76:NO)、ステップS72へ戻って、モータ3の逆転を継続する。
【0038】
図9は、図5のステップS14および図6のステップS34における挟込検出処理の詳細を示したフローチャートである。ステップS101では、パルス検出回路5の出力に基づいて、モータ3の回転速度を検出する。検出された回転速度は順次、メモリ6に記憶される。続いて、メモリ6に記憶されたモータ3の回転速度を読み出して、現在の回転速度と以前の回転速度とを比較し、回転速度の変化量を算出する(ステップS102)。
【0039】
次に、外乱が検出されたか否かを、ドア開閉検出スイッチ8の出力に基づいて判定する(ステップS103)。ドアが開かれた場合、またはドアが閉じられた場合は、ドア開閉検出スイッチ8の出力状態が変化するので、制御部1はこの変化によりドア開またはドア閉を外乱として検出する。この場合、ドアが開閉されてからしばらくの間は、開閉による振動が発生しているので、制御部1は、ドアの開閉を検出した後、所定時間が経過するまでは、外乱検出状態を維持する。
【0040】
ステップS103での判定の結果、外乱が検出された場合は(ステップS103:YES)、ステップS104へ移行する。ステップS104では、ステップS102で算出されたモータ3の回転速度の変化量が、所定値すなわちメモリ6に記憶されている閾値を超えたか否かを判定する。図3のような物体Zの挟み込みが発生していない場合は、モータ3に過大な負荷がかからず、回転速度が安定しているため、回転速度の変化量は小さいが、物体Zの挟み込みが発生すると、モータ3の負荷が増大して回転速度が低下するため、回転速度の変化量が大きくなる。
【0041】
ステップS104での判定の結果、モータ3の回転速度の変化量が閾値を超えた場合は(ステップS104:YES)、ステップS105へ移行する。ステップS105では、異物が検出されたか否かを、感圧センサ10の出力に基づいて判定する。異物の挟み込みがない場合は、感圧センサ10に異物が接触しないため、感圧センサ10から検出信号は出力されない。これに対して、異物の挟み込みがあると、異物と接触した感圧センサ10から検出信号が出力される。
【0042】
ステップS105での判定の結果、異物が検出された場合は(ステップS105:YES)、ステップS108へ移行し、最終的に異物の挟み込みがあったものと判定する。このように判定されると、図5のステップS15や図6のステップS35で説明したように、モータ駆動回路2から逆転信号を出力してモータ3を逆転させ、窓100を開く。これによって、挟み込み荷重が減少するので、挟み込まれた物体Zに損傷などが生じるのを防止することができる。
【0043】
ステップS103で外乱が検出された場合であっても、ステップS104において、モータ3の回転速度の変化量が閾値を超えない場合(ステップS104:NO)、または、ステップS105において、異物が検出されない場合(ステップS105:NO)は、異物の挟み込みがあったとは判定せず、処理を終了する。
【0044】
ステップS103で外乱が検出されなかった場合は(ステップS103:NO)、ステップS106へ移行し、ステップS104と同じ要領で、モータ3の回転速度の変化量が閾値を超えたか否かを判定する。判定の結果、回転速度の変化量が閾値を超えた場合は(ステップS106:YES)、ステップS108へ移行して、異物の挟み込みがあったものと判定する。一方、回転速度の変化量が閾値を超えていない場合は(ステップS106:NO)、ステップS107へ移行し、ステップS105と同じ要領で、異物が検出されたか否かを判定する。判定の結果、異物が検出された場合は(ステップS107:YES)、ステップS108へ移行して、異物の挟み込みがあったものと判定する。一方、異物が検出されない場合は(ステップS107:NO)、異物の挟み込みがあったとは判定せず、処理を終了する。
【0045】
このように、図9の手順においては、外乱が検出された場合に、モータ3の回転速度変化量が閾値を超えたこと(ステップS104)、および、異物が検出されたこと(ステップS105)の2つの条件が同時に満たされたときに、初めて挟み込みがあったものと判定している。このため、外乱によってモータ3の回転速度変化量が閾値を超えたとしても、それだけでは挟み込みがあったとは判定されず、また、感圧センサ10に物体が接触したとしても、それだけでは挟み込みがあったとは判定されないので、誤判定が生じるおそれがなく、挟み込みを正確に検出することができる。また、挟み込み判定用の閾値を高くしなくても誤判定が生じないので、挟み込み荷重を小さくして、挟まれた物体Zの損傷などを防止することができる。
【0046】
また、図9の手順においては、外乱が検出されない場合に、モータ3の回転速度変化量が閾値を超えたこと(ステップS106)、または、異物が検出されたこと(ステップS107)のいずれかの条件が満たされれば、挟み込みがあったものと判定している。このため、外乱のない通常状態では、モータ3の回転速度変化量が閾値を超えるか、異物が検出された時点で、挟み込みが発生したと判定されるので、挟み込みを迅速かつ正確に検出して、モータ3を逆転させることで窓100を開くことができる。
【0047】
なお、ドアの開閉動作が行われると、開閉の際の衝撃により一定時間は振動が発生しているが、図9のステップS103においては、上述したように、ドア開閉検出スイッチ8がドア開またはドア閉を検出した後、所定時間が経過するまでは外乱検出状態が維持され、この間の振動が外乱として取り扱われる。したがって、この間は、ステップS104で回転速度変化量が閾値を超え、かつステップS105で異物が検出されない限り、挟み込みとは判定されないので、挟み込みをより正確に検出することができる。
【0048】
また、上記のように所定時間が経過するまで外乱検出状態を維持することに代えて、窓ガラス101が所定量移動するまで外乱検出状態を維持するようにしてもよい。ドア開またはドア閉が行われると、その衝撃により窓ガラス101はドアの開閉速度に応じた量だけ移動する。そこで、この移動の間は外乱が発生しているものとして取り扱うことで、上記の場合と同様に、挟み込みをより正確に検出することができる。窓ガラス101の移動量は、ロータリエンコーダ4により検出することができる。
【0049】
図9のステップS103では、ドア開閉検出スイッチ8の出力のみに基づいて外乱の有無を検出したが、ドア開閉検出スイッチ8と車速センサ9のそれぞれの出力に基づいて外乱の有無を検出してもよい。すなわち、ドア開閉検出スイッチ8によりドアの開閉が検出されたことと、車速センサ9により一定以上の車速が検出されたことの少なくとも一方が成立した場合に、外乱を検出するようにしてもよい。車速センサ9が検出した車速値が大きい場合は、車両が高速で走行していて、道路の状態などにより振動が発生しやすいため、一定以上の車速は外乱となりうる。
【0050】
また、図5のステップS15や図6のステップS35では、モータ駆動回路2から逆転信号を出力してモータ3を逆転させ、窓100を開くようにしたが、モータ駆動回路2から停止信号を出力してモータ3を停止させ、窓100の閉動作を停止するようにしてもよい。
【0051】
本発明は、上述した実施形態以外にも、種々の実施形態を採用することができる。例えば、上記実施形態では、異物検出手段として感圧センサ10を用いた例を挙げたが、図10に示すように、感圧センサ10に代えて静電容量センサ11を用いてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、外乱検出手段としてドア開閉検出スイッチ8や車速センサ9を用いた例を挙げたが、図11に示すように、これらに加えて、加速度センサ12や外気温センサ13を外乱検出手段として用いてもよい。加速度センサ12は、車両に加わる振動や衝撃に基づく加速度を検出するセンサであって、一定以上の加速度を外乱として検出する。車両が凹凸の多い道路(悪路)を走行する場合は、車体に大きな振動が発生して加速度が加わるため、一定以上の加速度は外乱となる。外気温センサ13は、車両外部の気温を検出するセンサであって、一定以下の外気温を外乱として検出する。冬場などに外気温が下がって、窓に氷の付着などが生じると、窓を開閉する際の抵抗が大きくなってモータ3の負荷が増大するので、外気温の低下も一種の外乱となりうる。外乱検出手段としては、このほかにも、例えばエンジン始動用モータの回転を検出するものなどが考えられる。
【0053】
また、上記実施形態では、モータ3の回転速度の変化量に基づいてモータ負荷の変化量を検出したが、これに代えて、モータ3に流れる電流の変化量に基づいてモータ負荷の変化量を検出するようにしてもよい。この場合は、負荷変化量検出手段として、モータ電流を検出する電流検出回路を設ければよい。
【0054】
さらに、上記実施形態では、開閉体として車両の窓ガラスを例に挙げたが、本発明は、車両の後部扉やサンルーフなどの開閉体を制御する場合にも適用することができる。また、本発明は、車両だけでなく、建物におけるドアや扉の開閉を制御する場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係るパワーウィンドウ装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図2】本発明における窓開閉機構の一例を示した図である。
【図3】窓に物体が挟み込まれた状態を示す図である。
【図4】パワーウィンドウ装置の基本的な動作を示したフローチャートである。
【図5】マニュアル閉処理の詳細手順を表したフローチャートである。
【図6】オート閉処理の詳細手順を表したフローチャートである。
【図7】マニュアル開処理の詳細手順を表したフローチャートである。
【図8】オート開処理の詳細手順を表したフローチャートである。
【図9】挟込検出処理の詳細手順を表したフローチャートである。
【図10】本発明の他の実施形態に係るパワーウィンドウ装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係るパワーウィンドウ装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図12】一般的なパワーウィンドウ装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図13】操作スイッチの一例を示した概略構成図である。
【図14】窓開閉機構の一例を示した図である。
【図15】窓に物体が挟み込まれた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 制御部
2 モータ駆動回路
3 モータ
4 ロータリエンコーダ
5 パルス検出回路
6 メモリ
7 操作スイッチ
8 ドア開閉検出スイッチ
9 車速センサ
10 感圧センサ
11 静電容量センサ
12 加速度センサ
13 外気温センサ
100 窓
101 窓ガラス
102 窓開閉機構
Z 物体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に備わる開閉体を開閉するためのモータの負荷の変化量を検出する負荷変化量検出手段と、
前記車両に対する外乱を検出する外乱検出手段と、
前記開閉体に挟み込まれる異物を検出する異物検出手段と、
前記外乱検出手段が外乱を検出した場合において、前記負荷変化量検出手段が検出したモータの負荷の変化量が所定値を超えており、かつ、前記異物検出手段が異物を検出したときに、前記開閉体に異物が挟み込まれたと判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする開閉体制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の開閉体制御装置において、
前記判定手段は、前記外乱検出手段が外乱を検出しない場合において、前記負荷変化量検出手段が検出したモータの負荷の変化量が所定値を超えたとき、または、前記異物検出手段が異物を検出したときに、前記開閉体に異物が挟み込まれたと判定することを特徴とする開閉体制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の開閉体制御装置において、
前記外乱検出手段は、車両のドアの開閉を検出するスイッチを備え、ドア開またはドア閉を外乱として検出することを特徴とする開閉体制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の開閉体制御装置において、
前記外乱検出手段は、ドア開またはドア閉を検出した後、所定時間が経過するまでは、外乱検出状態を維持することを特徴とする開閉体制御装置。
【請求項5】
請求項3に記載の開閉体制御装置において、
前記外乱検出手段は、ドア開またはドア閉を検出した後、前記開閉体が所定量移動するまでは、外乱検出状態を維持することを特徴とする開閉体制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の開閉体制御装置において、
前記外乱検出手段は、車両の速度を検出する車速センサを備え、一定以上の車速を外乱として検出することを特徴とする開閉体制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の開閉体制御装置において、
前記外乱検出手段は、車両に加わる加速度を検出する加速度センサを備え、一定以上の加速度を外乱として検出することを特徴とする開閉体制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載の開閉体制御装置において、
前記外乱検出手段は、車両外部の気温を検出する外気温センサを備え、一定以下の外気温を外乱として検出することを特徴とする開閉体制御装置。
【請求項1】
車両に備わる開閉体を開閉するためのモータの負荷の変化量を検出する負荷変化量検出手段と、
前記車両に対する外乱を検出する外乱検出手段と、
前記開閉体に挟み込まれる異物を検出する異物検出手段と、
前記外乱検出手段が外乱を検出した場合において、前記負荷変化量検出手段が検出したモータの負荷の変化量が所定値を超えており、かつ、前記異物検出手段が異物を検出したときに、前記開閉体に異物が挟み込まれたと判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする開閉体制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の開閉体制御装置において、
前記判定手段は、前記外乱検出手段が外乱を検出しない場合において、前記負荷変化量検出手段が検出したモータの負荷の変化量が所定値を超えたとき、または、前記異物検出手段が異物を検出したときに、前記開閉体に異物が挟み込まれたと判定することを特徴とする開閉体制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の開閉体制御装置において、
前記外乱検出手段は、車両のドアの開閉を検出するスイッチを備え、ドア開またはドア閉を外乱として検出することを特徴とする開閉体制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の開閉体制御装置において、
前記外乱検出手段は、ドア開またはドア閉を検出した後、所定時間が経過するまでは、外乱検出状態を維持することを特徴とする開閉体制御装置。
【請求項5】
請求項3に記載の開閉体制御装置において、
前記外乱検出手段は、ドア開またはドア閉を検出した後、前記開閉体が所定量移動するまでは、外乱検出状態を維持することを特徴とする開閉体制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の開閉体制御装置において、
前記外乱検出手段は、車両の速度を検出する車速センサを備え、一定以上の車速を外乱として検出することを特徴とする開閉体制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の開閉体制御装置において、
前記外乱検出手段は、車両に加わる加速度を検出する加速度センサを備え、一定以上の加速度を外乱として検出することを特徴とする開閉体制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載の開閉体制御装置において、
前記外乱検出手段は、車両外部の気温を検出する外気温センサを備え、一定以下の外気温を外乱として検出することを特徴とする開閉体制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−218004(P2007−218004A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−41727(P2006−41727)
【出願日】平成18年2月19日(2006.2.19)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月19日(2006.2.19)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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