説明

間仕切構造を備えた建物

【課題】建具を開放して連続した大空間を形成する際に、見栄えのよい大空間を演出することのできる間仕切構造有した建物を提供する。
【解決手段】建具31と、床面18に設置されて建具31を支持する床ガイドレール51とを備え、床ガイドレール51に沿って建具31を移動させて屋内空間を仕切る間仕切構造において、床ガイドレール51が収納される収納空間部64を床面下に形成した。また、床仕上材17A,17B間の隙間に配置されるとともに床面18の一部を構成する両面床材61の一方の面に、床ガイドレール51を取り付けた。これにより、建具31による間仕切を行わない場合には、両面床材61を反転させることで、床ガイドレール51を収納空間部64に収納することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具を用いて屋内の空間を仕切る間仕切構造を備えた建物に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の屋内において、部屋同士を仕切るために間仕切パネル等の可動式の建具が用いられることがある。建具によって間仕切された場合には隣接する部屋同士が区切られ、建具を収納した場合には隣接する部屋同士が連続した大空間となる。このため、部屋の利用状況に応じて空間面積を変更するには、上記可動式の建具を含む間仕切構造が有効である。
【0003】
従来の間仕切構造としては、建具を天井に吊り下げた上吊りレール方式を採用する場合が多い。
【0004】
上吊りレール方式の間仕切構造を説明すると、図7(a)に示すように、天井81には下方に向けて開口する天井レール82が設けられている。天井レール82の内部には複数の支持ローラ83が転動可能に設けられ、その支持ローラ83上にガイド部84が載置されている。ガイド部84には向かい合う支持ローラ83間及び天井レール82の下部開口を通されて下方へ延びる連結部85が一体に設けられ、連結部85が建具86の上部に連結されている。これにより、建具86は支持ローラ83及び天井レール82を介して天井81に吊り下げられた状態となっている。
【0005】
このような上吊りレール方式の間仕切構造では、天井81側において建具86の荷重を支えなければならないため、天井81の強度を高める必要があり、コスト高となる問題がある。また、天井81側の構造が複雑化するばかりか、強度維持のために天井レール82の占有領域も自然と大きくなる。さらには、床87と建具86との隙間からの光漏れ等が避けられず、間仕切性能が低いという問題もあった。
【0006】
上吊りレール方式の間仕切構造において、天井81側だけで建具86の荷重を支えるのではなく、床87側にて荷重の一部を支えるようにしたものも提案されている。すなわち、図7(a)に示すように、建具86の下端に補助車輪88を設け、その補助車輪88によって建具86の移動を円滑にしながら、建具86の荷重の一部を支える工夫である。この場合、補助車輪88により床87が傷付かないよう、補助車輪88の走行経路、すなわち建具86の移動経路に沿うようにして保護シート89が床87上に貼り付けられている。しかしながら、このような補助車輪88を用いても、光漏れ等の間仕切性能低下の問題は解消できないし、そればかりか連続した大空間を形成するために建具86を収納した際に保護シート89が床87上に残存してしまい、見栄えが悪いという新たな問題が発生する。
【0007】
また、上吊りレール方式以外の間仕切構造として、床レール方式の間仕切構造も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
床レール方式の間仕切構造について説明すると、図7(b)に示すように、床91上に床レール92が埋設され、その床レール92には建具93の下端に転動可能に設けられた走行車輪94が載せられている。一方、建具93の上端にはスライダ95が一体に設けられ、天井96に埋め込まれた天井レール97に案内されるようになっている。このような床レール方式の間仕切構造では、建具93の荷重は走行車輪94及び床レール92を介して、天井96よりも強度の高い床91側が支えるため、建具93の荷重を支えるための強度上の問題をクリアし易い利点がある。
【0009】
しかしながら、床レール方式の間仕切構造においては、連続した大空間を形成するために建具93を収納した際、床レール92が床91上に残存してしまい、見栄えが悪く、折角の大空間による開放感を削いでしまう。この問題は、凹凸のある床レール92とせざるを得ないために床レール92が目立ってしまうといった要因により、上吊りレール方式において保護シート89を貼り付けた場合よりも顕著となる。また、床レール方式の間仕切構造においても、上吊りレール方式の場合と同様、建具93の下方に走行車輪94のためのスペースが存在するため、床91と建具93との間の隙間からの光漏れ等、間仕切性能が低いという問題も解消されていない。
【特許文献1】特開2000−145260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、建具を間仕切状態から開放して連続した大空間を形成する際に、見栄えのよい大空間を演出することのできる間仕切構造を備えた建物を提供することを主たる目的とするものである。
【0011】
また、本発明の更なる目的は、上記主たる目的を達成し得る建物を容易に又は低コストで実現することや、空間が仕切られた際の隙間が気にならないようにして間仕切性能を向上させること等にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するのに有効な手段につき、必要に応じて作用、効果、より踏み込んだ具体的手段等を示しつつ説明する。なお、理解を容易にするため、発明の実施の形態において対応する主要な構成を括弧書きで適宜示すが、この括弧書きで示した具体的構成に限定されない。
【0013】
本発明は、建具(建具31)と、床面(床面18)に設置されて建具を支持する床ガイドレール(床ガイドレール51)とを備え、床ガイドレールに沿って建具を移動させて屋内空間を仕切る間仕切構造を有した建物であって、前記床ガイドレールが収納される収納空間部(収納空間部64)を床面下に形成したことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、建具で間仕切を行わず屋内空間を連続させる場合に、床ガイドレールを収納空間部に収納することができ、連続した空間を演出する際に床ガイドレールが開放感を阻害していた従来の問題を解消することができる。また、床ガイドレールは建具を移動支持する関係上、多くの場合、全長が長くなる。このような事情であっても床面下に収納空間部を設けることで、床ガイドレール収納時の作業性がよくなる。
【0015】
上記収納空間部は、前記屋内空間を仕切る際に床ガイドレールが設置される床面下に形成するとよい。全長が長くなりがちな床ガイドレールをそれ自身の設置箇所に対応した床面下に収納することで、その収納作業性が一層高まるからである。
【0016】
前記床面を構成する床材(床仕上材17A,17B等)を複数設け、前記床ガイドレールが設置される領域には前記収納空間部に連通する床材間の隙間を形成し、さらに、その隙間に嵌め込まれて前記各床材とともに床面を構成しかつ前記床ガイドレールが設けられる取付板(両面床材61)を設けることが好ましい。床ガイドレールだけを取り外して収納するのではなく、それが取り付けられて床面の一部を構成する取付板とともに収納すればよく、取扱いが容易になるからである。
【0017】
前記取付板の一方の面に前記床ガイドレールを設け、前記取付板を反転させた状態でも前記床材間の隙間に当該取付板を嵌め込み可能とし、その嵌め込み状態では隣接する床材とともに床面を構成しかつ前記床ガイドレールが床下側を向くことで前記収納空間部に収納されるようにするのが一層好ましい。これにより、取付板を表裏反転するだけで床ガイドレールの収納空間部への作業が完了し、収納作業が一層簡単なものとなるからである。なお、この場合において、取付板の表裏両面とも隣接する床材と同一材質、同一模様、同一色彩とすれば、建具の使用時も不使用時も取付板と床材との一体感が高められる。
【0018】
前記床ガイドレールと建具との間には、建具の移動抵抗を低減させる低抵抗化部材(ボールローラ58)を設け、前記床ガイドレールには、建具の移動方向に沿って前記低抵抗化部材をガイドするガイド部(巾木部53)を設けるとよい。これにより、低抵抗化部材により建具の移動抵抗を低減させることができ、低抵抗化部材がガイド部にガイドされて建具の移動方向が規定されるため、円滑に屋内空間を仕切ったり開放することができるからである。
【0019】
前記床ガイドレールには建具の移動方向に沿いかつ建具の下方領域(ブラケット57やボールローラ58の設置領域)を隠す巾木部(巾木部53)を上方に延設することもできる。これによれば、床ガイドレールが建具の下方領域を隠す巾木として機能するので、間仕切された部屋等の美観が向上するとともに、間仕切された部屋間での光漏れが低減されて間仕切性能が向上する。また、このような巾木部は従来の床ガイドレールと比べかなり高さ寸法が大きくなるが、このような巾木部を設けることができるのは、床ガイドレールを収納可能としたことにより初めて実現できることであり、床ガイドレールの収納効果と巾木による間仕切性能の向上効果とが相俟って、快適な屋内環境を実現することができる。さらに、前記ガイド部に巾木部の機能を兼用させることが可能である。
【0020】
また、天井面(天井面24)に設置されて前記建具を支持する天井ガイドレール(天井ガイドレール41A,41B)を、前記床ガイドレールの真上位置に設けるとよい。天井ガイドレールと床ガイドレールとにより、建具の傾倒防止を図りつつ、建具を両ガイドレール沿って円滑にガイドすることができるようになるからである。
【0021】
この天井ガイドレールの設けられる領域には天井材(天井下地材23A,23B)間の隙間を形成し、その隙間に面する両天井材の端部に前記天井ガイドレールをそれぞれ設け、両天井ガイドレール間には、前記建具の上端から当該建具の幅方向全域に延びかつ上方へ延出された板状のスライドレール(スライドレール46)を配置するとよい。これにより、天井ガイドレールが設けられる天井側の隙間は比較的小さくて済み、天井ガイドレールが天井の見切りとして機能し得る。また、天井ガイドレール間に建具側に設けたスライドレールを挟み込ませることで、建具上端と天井面との間の隙間を埋めることができ、間仕切された部屋間での光漏れ等が低減されて間仕切性能が一層向上する。
【0022】
さらに、前記建具を収納する収納部(収納部66)を前記床ガイドレールの端部に連続して形成するとよい。建具を収納部に収納すれば、間仕切から開放された連続した大空間が形成されるばかりか、建具が美観の妨げとならないからである。
【0023】
ここで、上記発明は、建物ユニット(建物ユニット11A,11B)を複数用いて組み立てられるユニット建物において好適に実施される。
【0024】
すなわち、所定の隣接する建物ユニットが向かい合って位置決めされた状態においてそれぞれの建物ユニットに設けられた床材間又は床梁間に隙間が形成されるように構成し、その隙間に連通される床面下方領域によって前記収納空間部を形成することができる。
【0025】
このようなユニット工法の建物によれば、収納空間部が建物ユニット間に形成されることで、個別の建物ユニット内に専用の収納空間部を設けなくてもよく、製造コストが低減される。また、上記隙間を利用して前記取付板を取り付けることができる。さらに、建物ユニットの設置箇所に応じて床材の固定位置を予め工場において調整しておけばよいことから、現場での施工も容易になる利点がある。
【0026】
また、前記天井ガイドレールを天井材間に設ける構成を採用する場合、前記隣接する建物ユニットの天井材間に前記床材間の隙間より小さい隙間が形成されるように構成するのが一層好ましい。床板間の隙間とともに建物ユニットの組み立てにより天井材間の隙間も形成することができれば製造コストの一層の低減に寄与するし、床面及び天井面の隙間位置の整合をとりやすいため、建具を床面及び天井面でガイドさせる場合において両者間での誤差が生じにくい利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、発明を具体化した一実施形態について図1乃至図5を参照しつつ説明する。なお、図1は間仕切構造を示し建具の側方からみた縦断面図、図2は床ガイドレールの収納状態を示す要部縦断面図、図3は建物を構成する建物ユニットの概略斜視図、図4は建物の間取りを例示し、(a)は間仕切状態を、(b)は建具開放状態をそれぞれ示す平面図、図5は建具とその収納部を示す説明図である。
【0028】
本実施形態における建物は、予め工場で製造された複数の建物ユニットが組み合わされた上で仕上処理を現場施工によって補うユニット構造の建物であり、さらに詳細には、鉄骨を利用したラーメンユニット構造からなる建物である。
【0029】
建物に用いられる各建物ユニットのうち一部の建物ユニット、すなわち、図3に示された第1建物ユニット11Aとそれに隣接して設けられる第2建物ユニット11Bとの関係について説明する。なお、以下においては、両建物ユニット11A,11Bがそれぞれ有する共通の構成については同一符号の末尾に「A」及び「B」の符号を付することで区別し、特に区別なく説明する場合は「A」及び「B」の記号を省略する。
【0030】
図3に示すように、両建物ユニット11A,11Bはベースフレームを基本骨格としている。すなわち、ベースフレームは、溝形鋼を主体として枠組みされた下側梁12A,12B及び上側梁13A,13Bを上下に配置するとともに、それらの各隅部に柱となる角形鋼(図示せず)の上下両端を溶接することで、直方体状の枠体として構成されている。このベースフレームに外壁,床材,天井材等を工場において予め組み付けることにより、箱状の両建物ユニット11A,11Bが構成されている。これら両建物ユニット11A,11Bの側部のうち少なくとも互いの対向面はそれぞれ開口されている。そして、これら開口部同士が位置合わせされるように建築現場において両建物ユニット11A,11Bが基礎の上に配設され、基礎と下側梁12A,12Bとがアンカーボルト等によって締結される。
【0031】
次いで、これら両建物ユニット11A,11Bのうち特に両者の境界部付近の詳細について説明する。
【0032】
図1に示すように、下側梁12A,12Bの上面には根太等のスペーサ15A,15Bが固定されており、スペーサ15A,15B上には合板またはパーティクルボードからなる床下地材16A,16Bが設けられている。さらに床下地材16A,16Bの上面にはフローリングからなる床仕上材17A,17Bが固定されている。そして、床仕上材A,17Bの上面が室内空間の床面18となっている。
【0033】
一方、上側梁13A,13Bの下面には根太等のスペーサ21A,21Bを介して1枚または2枚の石膏ボードよりなる天井下地材23A,23Bが設けられている。そして、天井下地材23A,23Bの表面(下面)にはクロス等が天井仕上材として貼り付けられて、天井面24が形成されている。
【0034】
ここで、第1建物ユニット11Aと第2建物ユニット11Bとは、その向かい合う端面同士を完全に突き合わせるのではなく、少なくともその下部と上部とは若干の隙間を有した状態で固定されている。したがって、図1に示すように、第1建物ユニット11Aと第2建物ユニット11Bとの下側対向部では、下側梁12A,12B、スペーサ15A,15B、床下地材16A,16B、床仕上材17A,17Bのそれぞれの向かい合う端面間が離間されている。同様に、第1建物ユニット11Aと第2建物ユニット11Bとの上側対向部では、上側梁13A,13B、スペーサ21A,21B、天井下地材23A,23Bのそれぞれの向かい合う端面間が離間されている。
【0035】
但し、本実施形態では、上側対向部のスペーサ21A,21B、天井下地材23A,23Bの間隔が下側対向部のそれよりも小さくなっている。また、下側対向部では、下側梁12A,12B、スペーサ15A,15Bのそれぞれが同一間隔とされ、床下地材16A,16B、床仕上材17A,17Bのそれぞれが同一間隔とされているが、下側梁12A,12B、スペーサ15A,15Bの間隔よりも、床下地材16A,16B、床仕上材17A,17Bの間隔の方が大きくなっている。したがって、スペーサ15A,15Bと床下地材16A,16Bとの間には段差部が形成されている。
【0036】
なお、第1建物ユニット11Aと第2建物ユニット11Bとの対向部のうち、その他の部分、特に壁部分では、必ずしも隣接する部材間に隙間があいている必要はない。これらの建物ユニット11A,11B間の各部の間隔設定は、各建物ユニット11A,11Bの工場での製造に際して梁12,13に対する各部材の固定位置を調整することにより実現される。
【0037】
上記両建物ユニット11A,11B間には、上側対向部及び下側対向部の各隙間を利用して間仕切構造が構築されている。
【0038】
まず、間仕切構造において間仕切の主たる機能を担う建具31について説明する。なお、本実施形態における建具31は間仕切パネルとして機能するものである。建具31は、その主要骨組として、上框32と下框33とそれらの両端部を繋ぐ縦框(図示せず)とを有し、それらによって構成された矩形枠内に複数の桟34が固定されている。これらにより形成された枠体の両面(図1の左右側)には、面材35がそれぞれ固定されている。面材35は対応する部屋のイメージにあわせた化粧仕上げがなされている。以上により、建具本体36が構成されている。建具本体36は、床面18から天井面24までの高さ(天井高)とほぼ同じ高さ寸法に形成されているが、正確には天井高よりも若干高さ寸法が小さくなっている。
【0039】
両建物ユニット11A,11B間の天井側に形成される隙間には、天井ガイドレール41A,41Bが設けられている。天井ガイドレール41A,41Bはガイドレール部42A,42Bを備え、両ガイドレール部42A,42Bは天井下地材23A,23Bの互いに向かい合う端面に配設されている。両ガイドレール部42A,42Bは建具31の幅方向(図1の奥行き方向)に連続するように形成されるとともに、両ガイドレール部42A,42Bの間には僅かな隙間が形成されている。したがって、両ガイドレール部42A,42Bは天井側の見切りとしての機能を有している。両ガイドレール部42A,42Bの上端位置からは互いに離間する方向へ折り曲げられた固定板部43A,43Bが一体形成されている。そして、固定板部43A,43Bは、スペーサ21A,21Bに対してビス
止めされている。
【0040】
一方、建具本体36の上端部には、スライドレール46が設けられている。スライドレール46は、上框32の上面にビス等で固定される固定板部47を備えている。その固定板部47には、その中央位置から上方へ起立するスライドレール部48が一体に設けられている。固定板部47及びスライドレール部48は建具36の幅方向(図1の奥行き方向)の全域にわたるように延びている。そして、スライドレール部48は、前記両ガイドレール部42A,42B間の隙間に差し込まれ、両ガイドレール部42A,42Bの延びる方向へスライドする際のガイドとされる。
【0041】
床面18上には、床ガイドレール51が固定されている。床ガイドレール51は、前記両ガイドレール部42A,42Bと鉛直方向で同一位置となるように配置されるとともに、両ガイドレール部42A,42Bと同様に建具31の幅方向(図1の奥行き方向)に連続するように形成されている。床ガイドレール51は、床面18に当接される当接板部52と、その当接板部52の幅方向両端部から起立した一対の巾木部53とから構成されている。すなわち、間仕切時において建具本体36は壁として機能し、その下端部では床ガイドレール51の巾木部53が所謂巾木として見えるように工夫されている。床ガイドレール51の当接板部52上面には、防音性能に優れたシート材54が接着等により固定されている。
【0042】
建具本体36の下端部には、面材35の幅方向全域にわたって下方に延出された固定フレーム56が設けられている。固定フレーム56は下框33の下面に固定されている。固定フレーム56の下面にはブラケット57が固定されている。ブラケット57にはボールローラ58が全方向へ転動自在に取り付けられている。ボールローラ58は面材35の幅方向に複数設けられ、前記シート材54上に載置されている。
【0043】
この状態では、建具31の荷重は、複数のボールローラ58を介して床面18(より正確にはシート材54上)にかかる。また、巾木部53の上端位置と建具本体36の下端位置との間には若干の隙間が形成されているだけであり、その隙間からは固定フレーム56の上端部が若干見える程度である。そのため、ブラケット57やボールローラ58等の建具31の下部領域は巾木部53によって隠された状態となっている。
【0044】
また、一対の巾木部53はガイド部としても機能しており、巾木部53により固定フレーム56の移動範囲が規制され、これとともに天井側ではスライドレール部48が両ガイドレール部42A,42B間で移動範囲が規制される。これにより、建具31の上下でのガイド機能が確立され、建具31の移動経路が規定されている。また、この状態では、建具本体36の上端位置と天井面24との間に若干の隙間が生じるが、この隙間はスライドレール部48により塞がれている。さらに、天井側においてスライドレール部48が両ガイドレール部42A,42Bによって若干の遊びをもって挟まれていることにより、建具31の傾倒防止機能も有している。
【0045】
ここで、前記床ガイドレール51は、床面18の中でも取付板を構成する両面床材61の一方の面にビス62によって固定されている。両面床材61は、両建物ユニット11A,11Bの床仕上材17A,17Bの隙間に配置されている。すなわち、両面床材61はその隙間を丁度埋めるだけの幅寸法とされ、各建物ユニット11A,11Bの下側対向部間に沿って直線的に延びる長尺状に形成されている。
【0046】
両面床材61は、床仕上材17A,17Bよりも板材が厚く形成されており、より詳細には床仕上材17A,17Bの2倍の板厚とされている。そして、両面床材61は表裏両面ともに床仕上材17A,17Bと同一材質で構成され、かつ同一の模様を有するととも
に同一の色彩を呈している。これにより、両面床材61の表裏いずれの面が床面18上に露出されても、隣接する床仕上材17A,17Bとの区別が殆どわからず、床仕上材17A,17Bとの境界線が若干見えるに過ぎない。
【0047】
両面床材61を下方から支持するために、各スペーサ15A,15B上に受け板63A,63Bが設けられている。なお、受け板63A,63B間の隙間はスペーサ15A,15B間と同一間隔とされている。建具31の荷重を両面床材61が受けると、その荷重は受け板63A,63B及びスペーサ15A,15Bを介して下側梁12A,12Bによって受けられる。したがって、建具31の荷重を床面18において受けても強度上の問題が生じることはない。
【0048】
床ガイドレール51は両面床材61の一方の面において、幅方向(図1における左右方向)の中央部に配置されており、建具31の中心に対して対称形とされている。また、床ガイドレール51のレール幅よりも、その下方の各建物ユニット11A,11B間の隙間の方が十分に幅広となっており、この幅広空間が収納空間部64となっている。したがって、両面床材61を表裏反転させて受け板63A,63B上に取り付けると、図2に示すように、収納空間部64に床ガイドレール51が収納され、その一方で、床面18上には両側の床仕上材17A,17Bに連続した平面を両面床材61によって形成することができる。
【0049】
さて、図4には室内における空間のつながりを変更した場合の例を示した。図4(a)に示すように、本実施形態におけるユニット建物の屋内は、リビングルームR1、キッチンダイニングルームR2、休憩ルームR3、玄関ホールC1、浴室C2、洗面室C3など、それぞれが壁や間仕切によって区画されている。本実施形態では、リビングルームR1とキッチンダイニングルームR2とは複数の上記建具31が端面を合わせた状態で配置されることにより仕切られており、同じくキッチンダイニングルームR2と休憩ルームR3も複数の建具31によって仕切られている。また、建具31の収納部66は、耐力壁以外の壁を利用した間仕切壁67の一部を利用して形成されている。収納部66は、図5に示すように、複数枚の建具31を面材35の面同士重ね合せた状態で収納できる幅寸法を有している。
【0050】
なお、図示しないが、床ガイドレール51は、その端部が収納部66の出入口の直前位置に配置されている。両面床材61についても同様である。これは上記したように両面床材61を反転させるに必要な作業空間の確保のためである。
【0051】
このような屋内スペースにおいて、各建具31を間仕切壁67に形成された収納部66に収納した場合、リビングルームR1、キッチンダイニングルームR2、休憩ルームR3が全て連続した広大な空間が形成される。これにより、開放感に優れたスペースを必要に応じて確保することができる。この場合、単に各建具31を収納部66に収納しただけでは、床ガイドレール51が床面18上に突出された状態となってしまう。この点、図2に示すように、両面床材61を床面18から取り外して反転させ、再度、同一箇所に嵌め込むことにより、床ガイドレール51を両建物ユニット11A,11B間の床下空間に収納することができる。その結果、図4(b)に示すように、リビングルームR1とキッチンダイニングルームR2との境界や、キッチンダイニングルームR2と休憩ルームR3との境界から床ガイドレール51が姿を消し、広大な空間の連続感が高められる。
【0052】
なお、リビングルームR1、キッチンダイニングルームR2、休憩ルームR3を間仕切りする場合には、両面床材61を再度反転させれば床ガイドレール51が床面18上に設置され、その後、建具31を収納部66から引き出すことにより間仕切を行うことができる。
【0053】
以上説明した構造を有することにより、本実施形態においては以下に示す有利な効果が得られる。
【0054】
建具31を下方でガイドする床ガイドレール51を両面床材61に取り付け、この両面床材61を反転させることにより、床下の収納空間部64に収納するようにした。また、両面床材61を反転させて収納空間部64に床ガイドレール51を収納した状態では、床仕上材17A,17Bと同一材質,同一模様,同一色彩の両面床材61の表面が床仕上材17A,17Bとともに床面18を形成するようにした。その結果、建具31を間仕切に使用しない場合において、上記のように両面床材61を反転させることで、広大な空間の連続感を高めることができる。
【0055】
両面床材61を床仕上材17A,17Bよりも板厚を厚く形成したので、建具31の荷重に耐えることができる。また、両面床材61の幅方向両端部を、受け板63A,63B及びスペーサ15A,15Bを介して鋼材からなる下側梁12A,12Bにより受けられるようにした。したがって、建具31の耐荷重性能に優れる。
【0056】
建具31の移動を下方でガイドする床ガイドレール51の両側に巾木部53を設けた。これにより、建具31のガイド方向を規定するのみならず、建具31による間仕切時には建具31が壁となるとともに巾木部53が建具31下方の空間を閉塞する巾木として機能するので、間仕切された部屋の美観が向上するとともに、間仕切された部屋間での光漏れが低減されて間仕切性能が向上する。
【0057】
また、巾木部53を有した床ガイドレール51を設けることができるのは、上記のように両面床材61を反転させて床ガイドレール51を収納することができるようにしたからに他ならない。従来の構成において巾木部53を設けると、建具31の開放時に例えば50〜100mmといった所定高さの巾木部53が残ってしまい、到底実用に供し得ないからである。この意味において床ガイドレール51を容易に隠すことのできる構成は有用である。
【0058】
床ガイドレール51で建具31の下端部をガイドするとともに、天井ガイドレール41A,41Bで建具31の上端部をガイドすることにより、建具31の傾倒が防止されるとともに、建具31の移動経路を一定なものとすることができる。
【0059】
天井ガイドレール41A,41Bには、天井下地材23A,23Bの互いに向かい合う端面に配設される両ガイドレール部42A,42Bを設け、両ガイドレール部42A,42Bの間には僅かな隙間が形成されるようにした。これにより、両ガイドレール部42A,42Bに、建具31のガイドとしての機能の他、天井側の見切りとしての機能をもたせることができる。また、両ガイドレール部42A,42B間に、建具31の上端部をガイドするスライドレール部48を挟み込ませ、スライドレール部48を建具31の移動範囲全域に設けた。これにより、スライドレール部48が天井面24と建具本体36の上端面との間の隙間を埋めることになり、間仕切された部屋間での光漏れが低減されて間仕切性能が一層向上する。
【0060】
床ガイドレール51を収納する収納空間部64を形成するための隙間、両面床材61を床面18に納めるための床下地材16A,16B及び床仕上材17A,17Bのそれぞれの隙間、並びに天井ガイドレール41A,41Bを天井面24に納めるための天井下地材23A,23Bの隙間は、いずれも両建物ユニット11A,11Bの間に形成されるものである。したがって、各隙間の形成は両建物ユニット11A,11Bの工場での製造に際して梁12,13に対する各部材の固定位置を調整することにより実現することができる
。その結果、例えば建物ユニット11A,11B内に予め溝を形成したり、専用の空間部を形成しておかなくてもよく、間仕切構造の製造コストを低減することができる。
【0061】
なお、以上説明した実施の形態に限らず、例えば以下に別例として示した形態で実施することもできる。
【0062】
・図6に示すように、ボールローラ58を建具31側ではなく床ガイドレール51側に固定したものであってもよい。この場合、建具31を収納部66に収納した段階でボールローラ58が露出されるため、ボールローラ58の破損時の交換などが容易になり、メンテナンス性が高まる。また、全方向に転動可能なボールローラ58に代えて、一方向に転動可能な車輪タイプのものを使用してもよい。
【0063】
・両面床材61として、床仕上材17A,17Bと同一のものを使用し、その裏面同士を接着等により一体化したものとすることも可能である。このように構成すれば、両面床材61専用の板材を製作する必要がなく、製造コストをさらに低減することができる。
【0064】
・建具31上部のガイド構造は、上記実施形態に示した薄型のものが見栄えの観点から好ましいものの、図7(b)に示した従来のガイド構造を採用してもよい。
【0065】
・床ガイドレール51を両面床材61の一方の面に取り付け、この両面床材61を反転させることで床ガイドレール51を床下の収納空間部64に収納するようにしたが、他の方法により床ガイドレール51を床下に収納するようにしてもよい。例えば、両面床材61と同様の寸法の床材であって床ガイドレール51を有しないものを収納空間部64に収納しておき、床ガイドレール51の不要時には収納されている床材と交換するようにしてもよい。また、両面床材61を反転させるために、両面床材61の幅方向中央部に回転軸を設け必要に応じて180度回転させるようにしてもよい。この場合、床ガイドレール51が露出した位置とその反転位置とでそれぞれ位置決めする手段を例えば両面床材61の長手方向端部に設けるのが好ましい。いずれにしても、床ガイドレール51は間仕切の機能を担保するために基本的に長尺のものであるから、床下に収納するのが現実的であり、特に当該床ガイドレール51の設置箇所の直下となる床下に収納することが好ましい。
【0066】
・収納空間部64を床下への開放空間とせず、所定箇所で塞いだ閉鎖空間としてもよい。閉塞箇所としては、少なくとも床ガイドレール51の収納時において巾木部53の先端が干渉しないだけの空間を確保することのできる箇所とする。また、その閉塞手段としては室内断熱性能の維持のために断熱材を用いるのが好ましい。また、天井側の両建物ユニット11A,11B間の隙間についても同様であり、少なくともスライドレール部48に干渉しない箇所において天井面24から繋がる隙間を閉塞することができる。
【0067】
・建具31が収納される収納部66が間仕切壁67でなくてもよい。また、隣接する建具31の側端面同士が突き合わされる位置関係とならず、天井ガイドレール41及び床ガイドレール51が複数並設されて各ガイドレール41,51に各建具31がガイドされて、全体として引き違いタイプとなったものであってもよい。
【0068】
・建具31は部屋と部屋とを仕切るもの以外にも、部屋と廊下とを仕切る等、屋内空間を仕切るものであればどのような仕切り態様であってもよい。また、建具31は窓を有するもの等、どのようなバリエーションのものであってもよい。さらに、鉄骨ラーメンユニット構造以外の建物にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本実施形態における間仕切構造を示し、建具の側方からみた縦断面図。
【図2】床ガイドレールの収納状態を示す要部縦断面図。
【図3】建物を構成する一対の建物ユニットの概略斜視図。
【図4】建物の間取りを例示するものであり、(a)は間仕切状態を、(b)は建具開放状態をそれぞれ示す平面図。
【図5】建具とその収納部を示す説明図。
【図6】間仕切構造の別例を示す要部縦断面図。
【図7】(a)は上吊りレール式の従来の間仕切構造、(b)は下レール式の従来の間仕切構造を示す側面図。
【符号の説明】
【0070】
11A,11B…建物ユニット、12A,12B…下側梁、13A,13B…上側梁、15A,15B…スペーサ、16A,16B…床材を構成する床下地材、17A,17B…床材を構成する床仕上材、18…床面、21A,21B…スペーサ、23A,23B…天井材を構成する天井下地材、24…天井面、31…建具、35…面材、36…建具本体、41A,41B…天井ガイドレール、46…スライドレール、51…床ガイドレール、52…当接板部、53…巾木部、54…シート材、56…固定フレーム、57…ブラケット、58…低抵抗化部材を構成するボールローラ、61…取付板としての両面床材、63…受け板、64…収納空間部、66…収納部、67…間仕切壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建具と、床面に設置されて建具を支持する床ガイドレールとを備え、床ガイドレールに沿って建具を移動させて屋内空間を仕切る間仕切構造を有した建物であって、前記床ガイドレールが収納される収納空間部を床面下に形成したことを特徴とする建物。
【請求項2】
前記収納空間部を、前記屋内空間を仕切る際に床ガイドレールが設置される床面下に形成した請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記床面を構成する床材を複数設け、前記床ガイドレールが設置される領域には前記収納空間部に連通する床材間の隙間を形成し、さらに、その隙間に嵌め込まれて前記各床材とともに床面を構成しかつ前記床ガイドレールが設けられる取付板を設けた請求項1又は2に記載の建物。
【請求項4】
前記取付板の一方の面に前記床ガイドレールが設けられるものであり、前記取付板を反転させた状態でも前記床材間の隙間に当該取付板を嵌め込み可能とし、その嵌め込み状態では隣接する床材とともに床面を構成しかつ前記床ガイドレールが床下側を向くことで前記収納空間部に収納される請求項3に記載の建物。
【請求項5】
前記床ガイドレールと建具との間には、建具の移動抵抗を低減させる低抵抗化部材を設け、前記床ガイドレールには、建具の移動方向に沿って前記低抵抗化部材をガイドするガイド部を設けた請求項1乃至4のいずれかに記載の建物。
【請求項6】
前記床ガイドレールには建具の移動方向に沿いかつ建具の下方領域を隠す巾木部を上方に延設した請求項1乃至5のいずれかに記載の建物。
【請求項7】
天井面に設置されて前記建具を支持する天井ガイドレールを、前記床ガイドレールの真上位置に設けた請求項1乃至6のいずれかに記載の建物。
【請求項8】
前記天井ガイドレールの設けられる領域には天井材間の隙間を形成し、その隙間に面する両天井材の端部に前記天井ガイドレールをそれぞれ設け、両天井ガイドレール間には、前記建具の上端から当該建具の幅方向全域に延びかつ上方へ延出された板状のスライドレールを配置した請求項7に記載の建物。
【請求項9】
前記建具を収納する収納部を前記床ガイドレールの端部に連続して形成した請求項1乃至8のいずれかに記載の建物。
【請求項10】
建物ユニットを複数個並べて形成されるユニット建物であって、所定の隣接する建物ユニットの向かい合う床材間に形成される隙間を介して連通される床面下方領域によって、前記収納空間部を形成した請求項1乃至9のいずれかに記載の建物。
【請求項11】
前記隣接する建物ユニットの天井材間に前記床材間の隙間より小さい隙間が形成されるように構成した請求項10に記載の建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−170104(P2007−170104A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−371661(P2005−371661)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】