防音パネル
【課題】FRP製防音パネルでも、意匠性の維持・確保が簡単に得られる構成を提供するものである。
【解決手段】芯材と、前記芯材の両側に配置された繊維強化プラスチック製スキン材と、前記スキン材を相互に接続する繊維強化プラスチック材からなるリブ材とを含むサンドイッチパネルで構成された防音パネルであって、前記防音パネルは少なくとも立設した略平面部を有する壁部と、建築物躯体に固定する取付部とから構成され、前記壁部の片側および/または両側表面に樹脂シートを張り付けたことを特徴とする防音パネル。
【解決手段】芯材と、前記芯材の両側に配置された繊維強化プラスチック製スキン材と、前記スキン材を相互に接続する繊維強化プラスチック材からなるリブ材とを含むサンドイッチパネルで構成された防音パネルであって、前記防音パネルは少なくとも立設した略平面部を有する壁部と、建築物躯体に固定する取付部とから構成され、前記壁部の片側および/または両側表面に樹脂シートを張り付けたことを特徴とする防音パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄道沿線や道路に併設される繊維強化プラスチック製の防音パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば鉄道軌道や自動車道路の平地、高架部分には、沿線地域住民への騒音を緩和する目的で主としてコンクリート製や鉄系金属製の防音パネルが設置されている。これらの材質を用いると、その比重が大きいこともあり、質量則に係わる遮音性能の原理上、鉄道車輌や自動車から発生する騒音に対する防音性能は得られていた。しかし、コンクリート製の防音パネルに於いては、土木・建材用途で問題視されているコンクリートの中性化によって補強鉄筋に錆が発生し、錆による膨張によってコンクリート表面にクラックを発生させ、防音パネルを剥落させたり、あるいは防音パネル本体の耐久性を著しく低下させたりする危険性があった。
【0003】
このようなコンクリート製防音パネルの問題点を解決する方法として、樹脂を強化繊維で強化してなる繊維強化プラスチック(以下、FRPと称する)製の防音パネルが検討されている。このようなFRP製防音パネルとしては、木材や低密度樹脂を芯材とし、その両側にスキン材としてFRPを貼り付けたFRP製サンドイッチパネルが開示されている(例えば特許文献1参照)。また、特許文献1には、FRP製サンドイッチパネルのスキン材の表面には、耐候性を付与させるため主に熱硬化性樹脂から成るゲルコートや塗装により構成されていることが開示されている。しかしながら、FRP製サンドイッチパネルの表面をゲルコート塗布あるいは塗装したとしても、長期間の屋外暴露による太陽光(紫外線)、水分、ヒートサイクルによってパネル表面が劣化する問題が起こるケースもあった。
【0004】
他の文献によれば、芯材と、芯材の両側に位置するFRP製スキン材とで構成される防音部を有し、該防音部自身の一部に建築躯体への取付部を設けた構成について開示されている(特許文献2参照)。この文献に於いても、FRP製スキン材の表面について意匠性の改善に関する記載は無い。
【0005】
更に、道路や鉄道に側縁に設置される、防音パネルが形成するパネル面や壁面を有効に活用できる防音パネル、防音壁の設置方法が開示されている(特許文献3参照)。この中では、防音パネルに情報表示部を取付け、道路や鉄道の利用者に対して種々の情報を提供することで、防音パネルに情報表示媒体としての機能を具備され、防音パネルのパネル面を有効に活用することが記載されているが、FRP製サンドイッチパネルの記載、FRP製スキン材の意匠性に係わる記載は無く、本発明とは目的を異とする発明である。
【0006】
このように、パネル表面に関する意匠性の維持確保の点から、FRP製サンドイッチパネルの実用化は進んでいない。
【特許文献1】特開2002−088721号公報
【特許文献2】特開2002−155713号公報
【特許文献3】特開2003−342917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、FRP製防音パネル表面の意匠性を容易に維持・確保できるFRP製防音パネルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するための本発明は、以下の構成からなる。すなわち、
(1)芯材と芯材の両側に配置された繊維強化プラスチック製スキン材と両側のスキン材を接続する繊維強
化プラスチック材からなるリブ材を含むサンドイッチパネルで構成された防音パネルに於いて、少なくとも、壁部の少なくとも1面に樹脂シートを貼り付けたことを特徴するFRP製防音パネル。
(2)防音パネルの壁部の少なくとも1面のスキン層の表面粗さがRa=1〜5μmの範囲であることを特徴とする(1)記載のFRP製防音パネル。
(3)防音パネルの下部に延長されたスカート部を有することを特徴とする(1)又は(2)記載の防音パネル。
(4)防音パネルの壁部の少なくとも一面の樹脂シート貼付面の表面に溝形状を概略一定間隔で形成したことを特徴とする(1)または(2)、(3)記載のFRP製防音パネル。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、FRP製防音パネル壁部の少なくとも一面に樹脂シートを貼り付けることにより、表面意匠性を容易に維持確保できるFRP製防音パネルを提供することができる。また、FRP製防音パネルに溝を設けることで樹脂シートをさらに容易に貼り付けることができたり、スカート部を設けることでより大きな面積の樹脂シートを貼り付けることが可能になる。
【0010】
その他の効果として、都市部では鉄道や道路が高架構造を採る場合が多く、そこに設置されたFRP製防音パネルは周囲の景観に大きく影響するため樹脂シートに地域景観に合わせたデザイン施すことにより、沿線地域への景観改善効果が得られる。また樹脂シートに広告等を施せば、広告収入の獲得が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態を、図に従ってさらに詳細に説明する。なお、本発明が図面に記載された態様に限定される訳ではない。
【0012】
本発明の防音パネル1は、図1に示すように、建築物躯体20に固定するための取付部11と、FRP製サンドイッチパネル2からなる壁部8の片側および/または両側表面に樹脂シート3を張り付けた構造を有するものである。防音パネル1は、取付部11に設けられた複数の貫通孔13によって、後述する締結部材12により所定の位置に固定されている。
【0013】
防音パネル1は、コンクリート製の鉄道高架橋や高速道路高架構造等の建築物躯体20の側縁に設置されるため、建築物躯体20に形成される取付部表面21に防音パネル取付部11を介して取り付けられる。
【0014】
壁部8は、図2に示すように、FRP製サンドイッチパネル2で構成されている。これは、芯材6と、芯材6の両側に配置されたFRPスキン材4と、両側のFRPスキン材4を接続するFRPからなるリブ材5から構成されたものである。
【0015】
芯材6は、防音パネル1を成形する上でFRP製サンドイッチパネル2の内部空間を埋めるために必要となるスペーサとして防音とともに曲げ剛性確保の役割をするものであり、成形時の圧力に耐え得る程度の強度を持ち、できるだけ軽量な材質のものが好ましい。その材質としては、例えば、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂などの熱可塑性の発泡プラスチックでもよいし、フェノール樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性の発泡プラスチックであってもよい。または木材などの軽量材を用いることが好ましい、施工工事の際、防音パネルの重量増加を抑え、取付作業が容易に実施できる点で、特にウレタン樹脂が好ましく用いられる。
【0016】
芯材6の好ましい厚さは10〜100mmの範囲であり、より好ましくは30〜70mmの範囲内である。また、発泡プラスチックを用いる場合の発泡倍率は10〜40倍の範囲が軽量性、圧縮強度の点で適しているが、より好ましくは20〜30倍の発泡倍率が軽量化と強度の点で好ましい。木質材を用いる場合は軽量化の点から比重が0.1〜0.5の範囲が好ましく、バルサ材やファルカタ材が好ましい。
【0017】
また、風荷重に対する必要な曲げ強度を満たすために、表裏両面に配置されたFRPスキン材4と、これらFRPスキン材4を接続するリブ材5から構成される。FRPスキン材4やリブ材5に用いられるFRPの強化繊維としては、高強度、高弾性の繊維が望ましく、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、セラミック繊維などが好適に用いられる。使用する繊維は一種類に限定されず、複数種類を組み合わせても良い。また、使用する繊維の形態としては、例えば、繊維長が1〜3mmである短繊維、マット、連続繊維からなるクロス、ストランドなどを好適に用いることができる。ここで、軽量で高強度のFRPを得るためには、炭素繊維が最も好ましいが、コストとのバランスを取るため、ガラス繊維/炭素繊維のハイブリッド、あるいはガラス繊維のものも好ましい。
【0018】
炭素繊維を用いると振動減衰性が向上するため、特に鉄道高架橋での使用に適している。さらに用いる炭素繊維の種類は、炭素繊維が備える高い強度および弾性率を考えると、材質等の面から特に限定されるものではないが、より低コスト化のためには、いわゆるラージ・トウの炭素繊維を用いるのが最も好ましい。例えば、炭素繊維糸1本のフィラメント数が通常の10,000本未満のものではなく、10,000〜300,000本の範囲、より好ましくは50,000〜150,000本の範囲にあるトウ状の炭素繊維フィラメント糸を使用するほうが、樹脂の含浸性、補強繊維基材としての取り扱い性、さらには補強繊維基材の経済性おいて、より優れるため、好ましい。また、必要に応じて、あるいは要求される機械特性などに応じて、補強繊維の層を複数層に積層して補強繊維基材を形成し、その補強繊維基材に樹脂を含浸することも好ましい態様である。積層する補強繊維層には、一方向に引き揃えた繊維層や織物層を適宜積層でき、その繊維配向方向も、要求される強度の方向に応じて適宜選択できる。FRPスキン材の体積繊維含有率は15〜60%が好ましく、30〜50%がより好ましい。
【0019】
体積繊維含有率が15%未満になるとFRP製スキン材として十分な強度剛性を保持することができず、
強風・突風によって発生する風荷重に耐えられず破損が生じる恐れが出てくる。また、この風荷重に十分耐えうるFRP製スキン材の厚さにすると、FRP製防音パネルの重量が増加してしまい、本来の軽量化の目的に反してしまう。一方、60%を越えることはFRP成形作業で用いられる強化繊維種類や樹脂選定、および成形条件の制限、成形時間のタクトタイムが増大するなどの不都合が生じコストアップ要因となる。
【0020】
また、強化繊維に含浸させる樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が好適に用いられるが、これらの中でも、良好な作業性と成形後の優れた機械特性という点を考慮すると、不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂が特に好ましく用いられる。これらの樹脂中に層状化合物(例えば、マイカ、二硫化モリブデン、窒化硼素など)や針状化合物(例えば、ゾノトライト、チタン酸カリ、炭素繊維など)、粒状および板状化合物(例えば、フェライト、タルク、クレーなど)などの制振剤を添加することができる。制振剤を添加することによって、無機物結晶同士あるいは無機物とマトリクスとの相互運動による摩擦熱への変換がなされて弾性率と密度が増大し、振動物体の運動エネルギーを消散させて、パネルの振動を軽減することができる。
【0021】
また、上記の樹脂中に難燃剤(例えば、水酸化アルミニウム、臭素、無機質粉など)を添加して、難燃性を向上させることができる。フェノール樹脂はそれ自体で難燃性に優れており、かつ安価であるため好ましく使用される。
【0022】
FRPスキン材4の厚みは芯材6の厚み比で0.05〜0.2の範囲であることが好ましい、0.05未満では強風時の風荷重に対しての十分な強度が確保できなくなる恐れがあり、また0.2を越える場合では軽量化の効果が損なわれる恐れがある。
【0023】
また、リブ材5の構成としては厚さが1〜3mmの範囲、配置される間隔は300〜600mmの間隔が強度、軽量化の点で好ましい。使用する芯材の材質によっては、リブ材5の厚さや間隔を適宜調整することができる。
【0024】
防音パネル1の好ましい成形方法としては、順次部位毎に積層と樹脂含浸とを繰り返し人間の手作業で行うハンドレイアップによる成形法や、いわゆるRTM(Resin Transfer Molding)法や、RIM(Resin Injection Molding)、また片面の成形型上に補強繊維と芯材等の成形基材を配置した後、樹脂拡散媒体+バックフィルムにて被覆+減圧した後、樹脂を注入含浸させるSCRIMP(Seemann Composites Resin Infusion Molding)成形法、両面型から形成されるキャビティ内に強化繊維および芯材を配置した後、真空減圧を行い、樹脂を注入・含浸させる真空アシストRTM成形法などの一体成形法の採用が成形作業の効率の点で好ましい。
【0025】
取付部11は、図1に示すように、防音パネル1の下部に壁部8と略垂直になるように設け、防音パネル1が建築物躯体20上で自立できる形状にすることにより、取付作業を容易に実施することができる。また、取付部11には、防音パネル1を建築物躯体20に取り付けるため、締結部材12を通す複数の貫通孔13を設けている。取付部11の構造は、FRP製サンドイッチパネル2と同様の構造を有するが、FRPスキン材4の厚さを増大したり、場合によっては鉄、アルミなどの金属製角パイプ材を内包する構造であってもよい。
【0026】
取付部11は、図1に示した態様以外にも、図9に示すように、壁部8と略同一平面状に取付部11を設けることもできる。建築物躯体20の幅が十分に確保されず、図1に示すような取付部11を載置できない場合には、図9に示す方法で防音パネル1を建築物躯体20に取り付けても良い。
【0027】
本発明で用いられる樹脂シート3は、プラスチック製で例えばポリ塩化ビニル、オレフィン樹脂、フッ素樹脂などが好ましい。樹脂シート3の貼付面にはアクリル樹脂系などの粘着性材料を施しておくと、防音パネル1の壁部8表面への貼り付けが容易に行うことができる。シートの厚さは30〜300ミクロン程度が取り扱いの点で好ましい。汚れや紫外線による劣化を防止するため樹脂シート表面にフッ素系樹脂材をラミネートしたものも好ましい。樹脂シート3を貼ると、防音パネル1の表面に塗布されたゲルコートの劣化や塗装のはがれを防止することが期待できる。また、樹脂シート3に景観対策を施したり、広告を掲載したりすることも可能である。また、後述するスカート部7を設けると、建築物躯体20表面を被覆することも可能である。
【0028】
また、防音パネル1の樹脂シート3貼り付け面は、壁部8の片側および/または両側であることが好ましい。このとき、貼付面の表面粗さは、Ra=1〜5μmの範囲であることが好ましい。
貼り付け面の表面粗さRaが5μmを越える場合は、樹脂シート3の貼り付け性が悪化し、外力により容易に剥がれてしまう恐れがあるからである。
【0029】
この表面粗さを得る方法としては、成形用型の表面粗さを予め所定の粗さで仕上げておき、それをFRP成形時転写する方法でも良い。または、FRP製サンドイッチパネル2の成形後にサンドペーパ、ショットブラストなどにより表面を視予定の粗さに仕上げても良い。この方法に依れば、FRP成形面の離型剤が除去されるため貼付力の安定に有効である。
【0030】
また、表面粗さRaが1μm未満の場合は、接着性能は殆ど変わらない事に加え、FRP製成形型の製作費やメンテナンス費用が高くなるなどのデメリットが生じる。
【0031】
また、防音パネル1には、図3や図4に示すように、壁部8と略同一平面上に、取付部11を介して延設されたスカート部7を設けることも好ましい。スカート部7は、壁部8と反対側に延設されるものであって、 FRPスキン材4のみを延設しても、FRP製サンドイッチパネル2全体を延設しても、どちらの態様も可能である。スカート部7の大きさ、風荷重の設定等により、いずれかを選択することができる。
【0032】
さらに、スカート部7を設けると、樹脂シート3を貼付可能な表面積を増やすことができたり、建築物躯体20表面を被覆することができたりすることから、建築物躯体20を含めた構造物全体の意匠性を維持改善することが可能となる。
【0033】
またさらに、スカート部7が取付部11を兼ねる態様を取ることも可能である。建築物躯体20の大きさや経年劣化等の理由により、防音パネル1の軽量化が不可欠な場合、スカート部7および取付部11の両方を用いて、建築物躯体20と締結固定することもできる。この場合も、樹脂シート3を貼り付けることにより、スカート部7の締結固定部分を被覆することができ、建築物躯体20を含めた構造物全体の意匠性を維持改善することが可能となる。
【0034】
防音パネル1の貼り付け面には、図5や図6に示すような溝9を予め形成しておくと、樹脂シート3の貼り付け時の目印となり、水平垂直方向の位置合わせが簡単に実施できる。溝9を一定間隔で設けておくと、樹脂シート3の大きさに依らず貼付が可能となる。溝の幅は1〜3mmで深さは0.3〜1mm程度が好ましい。形状は円弧・楕円形状が成形上の引っ掛かりとならないため好ましい。また、溝のピッチは50mm〜100mm程度が好ましい。更に、図6に示す格子状でも良いし、樹脂シートの大きさ・形状に合わせたものでも良い
また、防音パネル1には、図7や図8に示すように、FRP製サンドイッチパネルから構成される補強材10を設けても良い。補強材10は、取付部11と一体化することにより、強度、剛性の改善を図っている。
補強材は2〜4ヶ所の配置が好ましく、間隔は概略等分配置が製作上好ましい。
【0035】
図10は防音パネル1を建築物躯体20に取り付ける一実施態様を図10に示す。取付部11には、締結部材12により大きな荷重が作用する場合が有り、必要に応じてFRPスキン材4の厚さを増大したり、場合によっては鉄、アルミなどの金属製角パイプ材を内包することも強度確保の点で好ましい。建築物躯体20に埋設され延在するアンカーボルト14を貫通孔13に通した上、座金15とナット16を締め付け、建築物躯体20と固定される。この時、貫通孔13とアンカーボルト14との隙間には、充填材17を施すのが好ましい。
【0036】
アンカーボルト14はJSS(社団法人日本鋼構造境界規格)に準拠し、材質は一般構造用圧延鋼(JIS G 3101(2004))のSS400、SS490、あるいは建築構造用圧延鋼(JIS G 3138(2005))のSNR400A,SNR490B等から選択できる。
【0037】
充填材17はセメントと水の混合体から成るセメントミルク、セメントと水と細骨材からなるモルタル材などを用いることができる。
【0038】
樹脂シート3を貼り付けた使用例を図11および図12に示す。図11は、景観対策を施した樹脂シート3を防音パネル1の外側に貼り付けた場合の実施態様を示す。鉄道や道路の高架部の防音パネルとして用いた場合、景観性に優れ地域貢献が最大限可能となる防音パネルとなる。
【0039】
図12は広告を施した樹脂シート3を防音パネル1に貼り付けた場合の実施態様を示す。鉄道や道路の高架部の防音パネル1として用いた場合、高い宣伝効果を得ることが可能となる。
【0040】
本発明では鉄道や道路に設置された防音パネルの外側に対する樹脂シート3の貼付を示したが、場合によっては、内側に貼ることによって運転者への安全意識の注意喚起や、道路状況の変化を事前に運転者へ伝えることができ、安全面での効果も期待できる。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
図1に示す防音パネル1を以下のように製作した。壁部の大きさは、巾1200mm×高さ1500mm×厚さ100mmとした。この寸法を反映した防音パネル1の成形型に、離型剤を塗布した後、ゲルコート樹脂を概ね0.4mmの厚さで塗布し硬化させた。その後、片側FRPスキン材4の補強繊維基材としてガラスストランドマット(#230)、ガラスロービングクロス0/90°ストランドマット(#1700)、一方向炭素繊維クロス(#200)を垂直方向に配置し、ガラスロービングクロス0/90°ストランドマット(#1700)、芯材として比重0.05の発泡ウレタンフォーム厚さ92mmを配置し、反対側も対称になるように、前述の補強繊維基材の積層を行った。また、表裏面を構成するFRPスキン材4を連結するリブ材5としては、400mmピッチで配置した0/±45°/ストランドマット(#230)を、50mm幅となるように両側のFRPスキン材4とラップさせる様に配置した。取付部11は、壁部8と同様にウレタンフォームの芯材6を挟んで両側に補強繊維基材を配置した。
【0042】
上型を被せた後、金型内部を真空に減圧し、不飽和ポリエステル樹脂に所定量の硬化剤を撹拌混合した状態で、成形型内へ注入・含浸させ、架橋反応により硬化させた後、成形型から脱型し防音パネル1を得た。脱型した後、樹脂シート3を貼り付ける壁部8表面に、サンドブラストにより表面処理を実施した。このとき、JIS1994に沿って、表面粗さ計で粗さを測定した所、Ra=3.5μmの粗さであった。
【0043】
その後、粘着材を片面に施された厚さ200ミクロンのポリ塩化ビニルフィルムを防音パネルの壁部8の片側に貼付け、本発明の防音パネル1とした。
(実施例2)
成形用下型の表面に縦横100ピッチで巾1mm高さ0.5mmの凸型の半円筒形状を形成し、実施例1と同様の防音パネル1の成形を行った。下型の成形面には型上の円筒形状が反転され、溝9が形成された。その後、粘着材を片面に施されたポリ塩化ビニルフィルムを防音パネル1の壁部8の片側に貼付け、本発明の防音パネル1とした。貼付の際に位置合わせとして目印になると共に、周囲の温度が変化した場合に、防音パネル1との線膨張差による樹脂シート3の膨らみ発生を抑制し、意匠性に優れた防音パネルとして十分な効果を発現することができた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る防音パネルして、意匠性に優れ、軽量で取り扱い性に優れた、鉄道軌道および自動車道路での利用が可能である。この分野以外にも、商業地区または住宅地周辺で工場など騒音対策に防音パネルとしての設置も可能であるし、冬季かつ豪雪地帯でのスノーシェルターとしての利用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るFRP製防音パネルの斜視図である。
【図2】本発明に係るFRP製防音パネルの内部構造を示した断面を含む斜視図である。
【図3】本発明に係るスカート部を備えたFRP製防音パネルの斜視図である。
【図4】本発明に係るスカート部を備えたFRP製防音パネルの内部構造を示した断面を含む斜視図である。
【図5】本発明に係るFRP製防音パネルの壁部に設けた溝を示した斜視図である。
【図6】本発明に係る壁部に設けた溝形状を示す断面図である。
【図7】本発明に係る補強材を備えたFRP製防音パネルの斜視図である。
【図8】図7を裏側から見たFRP製防音パネルの斜視図である。
【図9】本発明の他の実施態様に係るFRP製防音パネルの斜視図である。
【図10】本発明に係るFRP製防音パネルの取付部の拡大断面図である。
【図11】本発明に係る一実施態様を示す斜視図である。
【図12】本発明に係る別の実施態様を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1:防音パネル
2:FRP製サンドイッチパネル
3:樹脂シート
4:FRPスキン材
5:リブ材
6:芯材
7:スカート部
8:壁部
9:溝
10:補強材
11:取付部
12:締結部材
13:貫通孔
14:アンカーボルト
15:座金
16:ナット
17:充填材
20:建築物躯体
21:取付部表面
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄道沿線や道路に併設される繊維強化プラスチック製の防音パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば鉄道軌道や自動車道路の平地、高架部分には、沿線地域住民への騒音を緩和する目的で主としてコンクリート製や鉄系金属製の防音パネルが設置されている。これらの材質を用いると、その比重が大きいこともあり、質量則に係わる遮音性能の原理上、鉄道車輌や自動車から発生する騒音に対する防音性能は得られていた。しかし、コンクリート製の防音パネルに於いては、土木・建材用途で問題視されているコンクリートの中性化によって補強鉄筋に錆が発生し、錆による膨張によってコンクリート表面にクラックを発生させ、防音パネルを剥落させたり、あるいは防音パネル本体の耐久性を著しく低下させたりする危険性があった。
【0003】
このようなコンクリート製防音パネルの問題点を解決する方法として、樹脂を強化繊維で強化してなる繊維強化プラスチック(以下、FRPと称する)製の防音パネルが検討されている。このようなFRP製防音パネルとしては、木材や低密度樹脂を芯材とし、その両側にスキン材としてFRPを貼り付けたFRP製サンドイッチパネルが開示されている(例えば特許文献1参照)。また、特許文献1には、FRP製サンドイッチパネルのスキン材の表面には、耐候性を付与させるため主に熱硬化性樹脂から成るゲルコートや塗装により構成されていることが開示されている。しかしながら、FRP製サンドイッチパネルの表面をゲルコート塗布あるいは塗装したとしても、長期間の屋外暴露による太陽光(紫外線)、水分、ヒートサイクルによってパネル表面が劣化する問題が起こるケースもあった。
【0004】
他の文献によれば、芯材と、芯材の両側に位置するFRP製スキン材とで構成される防音部を有し、該防音部自身の一部に建築躯体への取付部を設けた構成について開示されている(特許文献2参照)。この文献に於いても、FRP製スキン材の表面について意匠性の改善に関する記載は無い。
【0005】
更に、道路や鉄道に側縁に設置される、防音パネルが形成するパネル面や壁面を有効に活用できる防音パネル、防音壁の設置方法が開示されている(特許文献3参照)。この中では、防音パネルに情報表示部を取付け、道路や鉄道の利用者に対して種々の情報を提供することで、防音パネルに情報表示媒体としての機能を具備され、防音パネルのパネル面を有効に活用することが記載されているが、FRP製サンドイッチパネルの記載、FRP製スキン材の意匠性に係わる記載は無く、本発明とは目的を異とする発明である。
【0006】
このように、パネル表面に関する意匠性の維持確保の点から、FRP製サンドイッチパネルの実用化は進んでいない。
【特許文献1】特開2002−088721号公報
【特許文献2】特開2002−155713号公報
【特許文献3】特開2003−342917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、FRP製防音パネル表面の意匠性を容易に維持・確保できるFRP製防音パネルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するための本発明は、以下の構成からなる。すなわち、
(1)芯材と芯材の両側に配置された繊維強化プラスチック製スキン材と両側のスキン材を接続する繊維強
化プラスチック材からなるリブ材を含むサンドイッチパネルで構成された防音パネルに於いて、少なくとも、壁部の少なくとも1面に樹脂シートを貼り付けたことを特徴するFRP製防音パネル。
(2)防音パネルの壁部の少なくとも1面のスキン層の表面粗さがRa=1〜5μmの範囲であることを特徴とする(1)記載のFRP製防音パネル。
(3)防音パネルの下部に延長されたスカート部を有することを特徴とする(1)又は(2)記載の防音パネル。
(4)防音パネルの壁部の少なくとも一面の樹脂シート貼付面の表面に溝形状を概略一定間隔で形成したことを特徴とする(1)または(2)、(3)記載のFRP製防音パネル。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、FRP製防音パネル壁部の少なくとも一面に樹脂シートを貼り付けることにより、表面意匠性を容易に維持確保できるFRP製防音パネルを提供することができる。また、FRP製防音パネルに溝を設けることで樹脂シートをさらに容易に貼り付けることができたり、スカート部を設けることでより大きな面積の樹脂シートを貼り付けることが可能になる。
【0010】
その他の効果として、都市部では鉄道や道路が高架構造を採る場合が多く、そこに設置されたFRP製防音パネルは周囲の景観に大きく影響するため樹脂シートに地域景観に合わせたデザイン施すことにより、沿線地域への景観改善効果が得られる。また樹脂シートに広告等を施せば、広告収入の獲得が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態を、図に従ってさらに詳細に説明する。なお、本発明が図面に記載された態様に限定される訳ではない。
【0012】
本発明の防音パネル1は、図1に示すように、建築物躯体20に固定するための取付部11と、FRP製サンドイッチパネル2からなる壁部8の片側および/または両側表面に樹脂シート3を張り付けた構造を有するものである。防音パネル1は、取付部11に設けられた複数の貫通孔13によって、後述する締結部材12により所定の位置に固定されている。
【0013】
防音パネル1は、コンクリート製の鉄道高架橋や高速道路高架構造等の建築物躯体20の側縁に設置されるため、建築物躯体20に形成される取付部表面21に防音パネル取付部11を介して取り付けられる。
【0014】
壁部8は、図2に示すように、FRP製サンドイッチパネル2で構成されている。これは、芯材6と、芯材6の両側に配置されたFRPスキン材4と、両側のFRPスキン材4を接続するFRPからなるリブ材5から構成されたものである。
【0015】
芯材6は、防音パネル1を成形する上でFRP製サンドイッチパネル2の内部空間を埋めるために必要となるスペーサとして防音とともに曲げ剛性確保の役割をするものであり、成形時の圧力に耐え得る程度の強度を持ち、できるだけ軽量な材質のものが好ましい。その材質としては、例えば、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂などの熱可塑性の発泡プラスチックでもよいし、フェノール樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性の発泡プラスチックであってもよい。または木材などの軽量材を用いることが好ましい、施工工事の際、防音パネルの重量増加を抑え、取付作業が容易に実施できる点で、特にウレタン樹脂が好ましく用いられる。
【0016】
芯材6の好ましい厚さは10〜100mmの範囲であり、より好ましくは30〜70mmの範囲内である。また、発泡プラスチックを用いる場合の発泡倍率は10〜40倍の範囲が軽量性、圧縮強度の点で適しているが、より好ましくは20〜30倍の発泡倍率が軽量化と強度の点で好ましい。木質材を用いる場合は軽量化の点から比重が0.1〜0.5の範囲が好ましく、バルサ材やファルカタ材が好ましい。
【0017】
また、風荷重に対する必要な曲げ強度を満たすために、表裏両面に配置されたFRPスキン材4と、これらFRPスキン材4を接続するリブ材5から構成される。FRPスキン材4やリブ材5に用いられるFRPの強化繊維としては、高強度、高弾性の繊維が望ましく、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、セラミック繊維などが好適に用いられる。使用する繊維は一種類に限定されず、複数種類を組み合わせても良い。また、使用する繊維の形態としては、例えば、繊維長が1〜3mmである短繊維、マット、連続繊維からなるクロス、ストランドなどを好適に用いることができる。ここで、軽量で高強度のFRPを得るためには、炭素繊維が最も好ましいが、コストとのバランスを取るため、ガラス繊維/炭素繊維のハイブリッド、あるいはガラス繊維のものも好ましい。
【0018】
炭素繊維を用いると振動減衰性が向上するため、特に鉄道高架橋での使用に適している。さらに用いる炭素繊維の種類は、炭素繊維が備える高い強度および弾性率を考えると、材質等の面から特に限定されるものではないが、より低コスト化のためには、いわゆるラージ・トウの炭素繊維を用いるのが最も好ましい。例えば、炭素繊維糸1本のフィラメント数が通常の10,000本未満のものではなく、10,000〜300,000本の範囲、より好ましくは50,000〜150,000本の範囲にあるトウ状の炭素繊維フィラメント糸を使用するほうが、樹脂の含浸性、補強繊維基材としての取り扱い性、さらには補強繊維基材の経済性おいて、より優れるため、好ましい。また、必要に応じて、あるいは要求される機械特性などに応じて、補強繊維の層を複数層に積層して補強繊維基材を形成し、その補強繊維基材に樹脂を含浸することも好ましい態様である。積層する補強繊維層には、一方向に引き揃えた繊維層や織物層を適宜積層でき、その繊維配向方向も、要求される強度の方向に応じて適宜選択できる。FRPスキン材の体積繊維含有率は15〜60%が好ましく、30〜50%がより好ましい。
【0019】
体積繊維含有率が15%未満になるとFRP製スキン材として十分な強度剛性を保持することができず、
強風・突風によって発生する風荷重に耐えられず破損が生じる恐れが出てくる。また、この風荷重に十分耐えうるFRP製スキン材の厚さにすると、FRP製防音パネルの重量が増加してしまい、本来の軽量化の目的に反してしまう。一方、60%を越えることはFRP成形作業で用いられる強化繊維種類や樹脂選定、および成形条件の制限、成形時間のタクトタイムが増大するなどの不都合が生じコストアップ要因となる。
【0020】
また、強化繊維に含浸させる樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が好適に用いられるが、これらの中でも、良好な作業性と成形後の優れた機械特性という点を考慮すると、不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂が特に好ましく用いられる。これらの樹脂中に層状化合物(例えば、マイカ、二硫化モリブデン、窒化硼素など)や針状化合物(例えば、ゾノトライト、チタン酸カリ、炭素繊維など)、粒状および板状化合物(例えば、フェライト、タルク、クレーなど)などの制振剤を添加することができる。制振剤を添加することによって、無機物結晶同士あるいは無機物とマトリクスとの相互運動による摩擦熱への変換がなされて弾性率と密度が増大し、振動物体の運動エネルギーを消散させて、パネルの振動を軽減することができる。
【0021】
また、上記の樹脂中に難燃剤(例えば、水酸化アルミニウム、臭素、無機質粉など)を添加して、難燃性を向上させることができる。フェノール樹脂はそれ自体で難燃性に優れており、かつ安価であるため好ましく使用される。
【0022】
FRPスキン材4の厚みは芯材6の厚み比で0.05〜0.2の範囲であることが好ましい、0.05未満では強風時の風荷重に対しての十分な強度が確保できなくなる恐れがあり、また0.2を越える場合では軽量化の効果が損なわれる恐れがある。
【0023】
また、リブ材5の構成としては厚さが1〜3mmの範囲、配置される間隔は300〜600mmの間隔が強度、軽量化の点で好ましい。使用する芯材の材質によっては、リブ材5の厚さや間隔を適宜調整することができる。
【0024】
防音パネル1の好ましい成形方法としては、順次部位毎に積層と樹脂含浸とを繰り返し人間の手作業で行うハンドレイアップによる成形法や、いわゆるRTM(Resin Transfer Molding)法や、RIM(Resin Injection Molding)、また片面の成形型上に補強繊維と芯材等の成形基材を配置した後、樹脂拡散媒体+バックフィルムにて被覆+減圧した後、樹脂を注入含浸させるSCRIMP(Seemann Composites Resin Infusion Molding)成形法、両面型から形成されるキャビティ内に強化繊維および芯材を配置した後、真空減圧を行い、樹脂を注入・含浸させる真空アシストRTM成形法などの一体成形法の採用が成形作業の効率の点で好ましい。
【0025】
取付部11は、図1に示すように、防音パネル1の下部に壁部8と略垂直になるように設け、防音パネル1が建築物躯体20上で自立できる形状にすることにより、取付作業を容易に実施することができる。また、取付部11には、防音パネル1を建築物躯体20に取り付けるため、締結部材12を通す複数の貫通孔13を設けている。取付部11の構造は、FRP製サンドイッチパネル2と同様の構造を有するが、FRPスキン材4の厚さを増大したり、場合によっては鉄、アルミなどの金属製角パイプ材を内包する構造であってもよい。
【0026】
取付部11は、図1に示した態様以外にも、図9に示すように、壁部8と略同一平面状に取付部11を設けることもできる。建築物躯体20の幅が十分に確保されず、図1に示すような取付部11を載置できない場合には、図9に示す方法で防音パネル1を建築物躯体20に取り付けても良い。
【0027】
本発明で用いられる樹脂シート3は、プラスチック製で例えばポリ塩化ビニル、オレフィン樹脂、フッ素樹脂などが好ましい。樹脂シート3の貼付面にはアクリル樹脂系などの粘着性材料を施しておくと、防音パネル1の壁部8表面への貼り付けが容易に行うことができる。シートの厚さは30〜300ミクロン程度が取り扱いの点で好ましい。汚れや紫外線による劣化を防止するため樹脂シート表面にフッ素系樹脂材をラミネートしたものも好ましい。樹脂シート3を貼ると、防音パネル1の表面に塗布されたゲルコートの劣化や塗装のはがれを防止することが期待できる。また、樹脂シート3に景観対策を施したり、広告を掲載したりすることも可能である。また、後述するスカート部7を設けると、建築物躯体20表面を被覆することも可能である。
【0028】
また、防音パネル1の樹脂シート3貼り付け面は、壁部8の片側および/または両側であることが好ましい。このとき、貼付面の表面粗さは、Ra=1〜5μmの範囲であることが好ましい。
貼り付け面の表面粗さRaが5μmを越える場合は、樹脂シート3の貼り付け性が悪化し、外力により容易に剥がれてしまう恐れがあるからである。
【0029】
この表面粗さを得る方法としては、成形用型の表面粗さを予め所定の粗さで仕上げておき、それをFRP成形時転写する方法でも良い。または、FRP製サンドイッチパネル2の成形後にサンドペーパ、ショットブラストなどにより表面を視予定の粗さに仕上げても良い。この方法に依れば、FRP成形面の離型剤が除去されるため貼付力の安定に有効である。
【0030】
また、表面粗さRaが1μm未満の場合は、接着性能は殆ど変わらない事に加え、FRP製成形型の製作費やメンテナンス費用が高くなるなどのデメリットが生じる。
【0031】
また、防音パネル1には、図3や図4に示すように、壁部8と略同一平面上に、取付部11を介して延設されたスカート部7を設けることも好ましい。スカート部7は、壁部8と反対側に延設されるものであって、 FRPスキン材4のみを延設しても、FRP製サンドイッチパネル2全体を延設しても、どちらの態様も可能である。スカート部7の大きさ、風荷重の設定等により、いずれかを選択することができる。
【0032】
さらに、スカート部7を設けると、樹脂シート3を貼付可能な表面積を増やすことができたり、建築物躯体20表面を被覆することができたりすることから、建築物躯体20を含めた構造物全体の意匠性を維持改善することが可能となる。
【0033】
またさらに、スカート部7が取付部11を兼ねる態様を取ることも可能である。建築物躯体20の大きさや経年劣化等の理由により、防音パネル1の軽量化が不可欠な場合、スカート部7および取付部11の両方を用いて、建築物躯体20と締結固定することもできる。この場合も、樹脂シート3を貼り付けることにより、スカート部7の締結固定部分を被覆することができ、建築物躯体20を含めた構造物全体の意匠性を維持改善することが可能となる。
【0034】
防音パネル1の貼り付け面には、図5や図6に示すような溝9を予め形成しておくと、樹脂シート3の貼り付け時の目印となり、水平垂直方向の位置合わせが簡単に実施できる。溝9を一定間隔で設けておくと、樹脂シート3の大きさに依らず貼付が可能となる。溝の幅は1〜3mmで深さは0.3〜1mm程度が好ましい。形状は円弧・楕円形状が成形上の引っ掛かりとならないため好ましい。また、溝のピッチは50mm〜100mm程度が好ましい。更に、図6に示す格子状でも良いし、樹脂シートの大きさ・形状に合わせたものでも良い
また、防音パネル1には、図7や図8に示すように、FRP製サンドイッチパネルから構成される補強材10を設けても良い。補強材10は、取付部11と一体化することにより、強度、剛性の改善を図っている。
補強材は2〜4ヶ所の配置が好ましく、間隔は概略等分配置が製作上好ましい。
【0035】
図10は防音パネル1を建築物躯体20に取り付ける一実施態様を図10に示す。取付部11には、締結部材12により大きな荷重が作用する場合が有り、必要に応じてFRPスキン材4の厚さを増大したり、場合によっては鉄、アルミなどの金属製角パイプ材を内包することも強度確保の点で好ましい。建築物躯体20に埋設され延在するアンカーボルト14を貫通孔13に通した上、座金15とナット16を締め付け、建築物躯体20と固定される。この時、貫通孔13とアンカーボルト14との隙間には、充填材17を施すのが好ましい。
【0036】
アンカーボルト14はJSS(社団法人日本鋼構造境界規格)に準拠し、材質は一般構造用圧延鋼(JIS G 3101(2004))のSS400、SS490、あるいは建築構造用圧延鋼(JIS G 3138(2005))のSNR400A,SNR490B等から選択できる。
【0037】
充填材17はセメントと水の混合体から成るセメントミルク、セメントと水と細骨材からなるモルタル材などを用いることができる。
【0038】
樹脂シート3を貼り付けた使用例を図11および図12に示す。図11は、景観対策を施した樹脂シート3を防音パネル1の外側に貼り付けた場合の実施態様を示す。鉄道や道路の高架部の防音パネルとして用いた場合、景観性に優れ地域貢献が最大限可能となる防音パネルとなる。
【0039】
図12は広告を施した樹脂シート3を防音パネル1に貼り付けた場合の実施態様を示す。鉄道や道路の高架部の防音パネル1として用いた場合、高い宣伝効果を得ることが可能となる。
【0040】
本発明では鉄道や道路に設置された防音パネルの外側に対する樹脂シート3の貼付を示したが、場合によっては、内側に貼ることによって運転者への安全意識の注意喚起や、道路状況の変化を事前に運転者へ伝えることができ、安全面での効果も期待できる。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
図1に示す防音パネル1を以下のように製作した。壁部の大きさは、巾1200mm×高さ1500mm×厚さ100mmとした。この寸法を反映した防音パネル1の成形型に、離型剤を塗布した後、ゲルコート樹脂を概ね0.4mmの厚さで塗布し硬化させた。その後、片側FRPスキン材4の補強繊維基材としてガラスストランドマット(#230)、ガラスロービングクロス0/90°ストランドマット(#1700)、一方向炭素繊維クロス(#200)を垂直方向に配置し、ガラスロービングクロス0/90°ストランドマット(#1700)、芯材として比重0.05の発泡ウレタンフォーム厚さ92mmを配置し、反対側も対称になるように、前述の補強繊維基材の積層を行った。また、表裏面を構成するFRPスキン材4を連結するリブ材5としては、400mmピッチで配置した0/±45°/ストランドマット(#230)を、50mm幅となるように両側のFRPスキン材4とラップさせる様に配置した。取付部11は、壁部8と同様にウレタンフォームの芯材6を挟んで両側に補強繊維基材を配置した。
【0042】
上型を被せた後、金型内部を真空に減圧し、不飽和ポリエステル樹脂に所定量の硬化剤を撹拌混合した状態で、成形型内へ注入・含浸させ、架橋反応により硬化させた後、成形型から脱型し防音パネル1を得た。脱型した後、樹脂シート3を貼り付ける壁部8表面に、サンドブラストにより表面処理を実施した。このとき、JIS1994に沿って、表面粗さ計で粗さを測定した所、Ra=3.5μmの粗さであった。
【0043】
その後、粘着材を片面に施された厚さ200ミクロンのポリ塩化ビニルフィルムを防音パネルの壁部8の片側に貼付け、本発明の防音パネル1とした。
(実施例2)
成形用下型の表面に縦横100ピッチで巾1mm高さ0.5mmの凸型の半円筒形状を形成し、実施例1と同様の防音パネル1の成形を行った。下型の成形面には型上の円筒形状が反転され、溝9が形成された。その後、粘着材を片面に施されたポリ塩化ビニルフィルムを防音パネル1の壁部8の片側に貼付け、本発明の防音パネル1とした。貼付の際に位置合わせとして目印になると共に、周囲の温度が変化した場合に、防音パネル1との線膨張差による樹脂シート3の膨らみ発生を抑制し、意匠性に優れた防音パネルとして十分な効果を発現することができた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る防音パネルして、意匠性に優れ、軽量で取り扱い性に優れた、鉄道軌道および自動車道路での利用が可能である。この分野以外にも、商業地区または住宅地周辺で工場など騒音対策に防音パネルとしての設置も可能であるし、冬季かつ豪雪地帯でのスノーシェルターとしての利用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るFRP製防音パネルの斜視図である。
【図2】本発明に係るFRP製防音パネルの内部構造を示した断面を含む斜視図である。
【図3】本発明に係るスカート部を備えたFRP製防音パネルの斜視図である。
【図4】本発明に係るスカート部を備えたFRP製防音パネルの内部構造を示した断面を含む斜視図である。
【図5】本発明に係るFRP製防音パネルの壁部に設けた溝を示した斜視図である。
【図6】本発明に係る壁部に設けた溝形状を示す断面図である。
【図7】本発明に係る補強材を備えたFRP製防音パネルの斜視図である。
【図8】図7を裏側から見たFRP製防音パネルの斜視図である。
【図9】本発明の他の実施態様に係るFRP製防音パネルの斜視図である。
【図10】本発明に係るFRP製防音パネルの取付部の拡大断面図である。
【図11】本発明に係る一実施態様を示す斜視図である。
【図12】本発明に係る別の実施態様を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1:防音パネル
2:FRP製サンドイッチパネル
3:樹脂シート
4:FRPスキン材
5:リブ材
6:芯材
7:スカート部
8:壁部
9:溝
10:補強材
11:取付部
12:締結部材
13:貫通孔
14:アンカーボルト
15:座金
16:ナット
17:充填材
20:建築物躯体
21:取付部表面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、前記芯材の両側に配置された繊維強化プラスチック製スキン材と、前記スキン材を相互に接続する繊維強化プラスチック材からなるリブ材とを含むサンドイッチパネルで構成された防音パネルであって、前記防音パネルは少なくとも立設した略平面部を有する壁部と、建築物躯体に固定する取付部とから構成され、前記壁部の片側および/または両側表面に樹脂シートを張り付けたことを特徴とする防音パネル。
【請求項2】
前記壁部の少なくとも一面のスキン材の表面粗さがRa=1〜5μmの範囲であることを特徴とする請求項1記載の防音パネル。
【請求項3】
前記取付部を介して、前記壁部と略同一平面となるように延設されたスカート部をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の防音パネル。
【請求項4】
前記壁部の少なくとも一面の表面に、複数の溝を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防音パネル。
【請求項1】
芯材と、前記芯材の両側に配置された繊維強化プラスチック製スキン材と、前記スキン材を相互に接続する繊維強化プラスチック材からなるリブ材とを含むサンドイッチパネルで構成された防音パネルであって、前記防音パネルは少なくとも立設した略平面部を有する壁部と、建築物躯体に固定する取付部とから構成され、前記壁部の片側および/または両側表面に樹脂シートを張り付けたことを特徴とする防音パネル。
【請求項2】
前記壁部の少なくとも一面のスキン材の表面粗さがRa=1〜5μmの範囲であることを特徴とする請求項1記載の防音パネル。
【請求項3】
前記取付部を介して、前記壁部と略同一平面となるように延設されたスカート部をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の防音パネル。
【請求項4】
前記壁部の少なくとも一面の表面に、複数の溝を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防音パネル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−209572(P2009−209572A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52959(P2008−52959)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
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