説明

電力変換装置

【課題】コンタクタオフ時の電圧平滑用キャパシタの放電機能に関して、信頼性の向上を図ることができる電力変換装置の提供。
【解決手段】電力変換装置であるインバータ装置140は、パワー半導体素子を有するインバータ回路12と、パワー半導体素子を駆動するドライバ回路21と、ドライバ回路21をPWM制御するコントローラ18と、電圧平滑用のキャパシタ500とを備える。そして、コンタクタ15が開状態とされると、急速放電制御回路24により放電用スイッチング素子26をオンして急速放電抵抗25によりキャパシタ500を放電させる放電機構を備えると共に、キャパシタ50に印加される電圧を入力とするドライバ電源回路27を設けた。そのため、キャパシタ500の残留電荷は、ドライバ電源回路27やドライバ電源回路27により電力が供給されるドライバ回路21によっても放電されることになり、放電信頼性の向上が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置(インバータ装置)が搭載される電気自動車では、電圧が200V〜400Vのバッテリが使用される。バッテリとインバータ装置との間にはコンタクタが設けられ、インバータ装置稼動時にはコンタクタをオンしてバッテリとインバータ装置とを接続し、インバータ装置非稼動時は、コンタクタをオフしてバッテリとインバータ装置を切り離すようにしている。
【0003】
インバータ装置には平滑用のキャパシタが設けられており、コンタクタをオフした後もインバータ装置内部に電圧が残っていると、インバータ装置を修理などする際に高電圧に触れる危険性がある。そのため、通常は、インバータ装置の内部に放電抵抗を用意し、キャパシタに残る電荷を5〜10分程度で42V以下にまで放電するにしている。ちなみに、42Vという値は、人が触れても軽度の感電で済む電圧とされ、さまざまな基準に使われている。
【0004】
しかし、5〜10分の放電時間では、複数のネジ等で固定されているインバータ装置の蓋を物理的に開けることが可能であり、できれば30秒以内にキャパシタの電荷を放電することが望ましい。このような短時間にキャパシタ電荷を放電するためには、例えば、電圧400Vのインバータ装置においてキャパシタに電荷が残っている場合、放電抵抗の値を20KΩ以下とする必要がある。しかしながら、例えば、20kΩの抵抗の場合 電圧400Vを印加した時の電力損失はV/ R=400/20000=8Wとなる。そのため、高温環境下でのディレーディグを考慮すると、30W定格の大型の抵抗を用いる必要があり、小型化が求められるインバータ装置にとっては大きなマイナスである。
【0005】
そこで、比較的低抵抗の放電抵抗と半導体スイッチとから構成された急速放電回路を設け、インバータ装置がバッテリから切り離されたときに、半導体スイッチをオンしてキャパシタの電荷を急速に放電する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−42459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の急速放電回路では、放電用スイッチである高圧トランジスタや、コンタクタがオフしたことを検知する検知回路や、コンタクタが実際にオフしたかどうかを判断するコンタクタオフ判断回路などを必要とし、回路が複雑となっている。そのため、回路が複雑となった分だけ故障の可能性が高くなり、故障が発生した場合には急速放電ができなくなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による電力変換装置は、ブリッジ接続されたパワー半導体素子を有し、開閉可能なコンタクタを介して直流電源に接続されるインバータ回路と、パワー半導体素子を駆動するドライバ回路と、ドライバ回路をPWM(パルス幅変調)制御してパワー半導体素子にスイッチング動作を行わせるドライバ回路制御部と、インバータ回路の入力側に並列接続された電圧平滑用キャパシタと、電圧平滑用キャパシタに並列接続されて該電圧平滑用キャパシタに印加される電圧を入力とし、ドライバ回路に電力を供給するドライバ電源回路と、電圧平滑用キャパシタの電荷を放電するための抵抗と該抵抗に直列接続された放電用スイッチング素子とから成り、電圧平滑用キャパシタに並列接続される放電回路と、コンタクタが開状態とされると、放電回路による電圧平滑用キャパシタの放電を行わせる放電制御部と、を備えたことを特徴とする。そのため、コンタクタが開状態の時には、放電回路による放電と、ドライバ電源回路およびそのドライバ電源回路から電力が供給されるドライバ回路による放電とが行われる。
なお、コンタクタが開状態とされた時に、無通電PWM制御をドライバ回路に対して行うようにしても良い。
さらに、放電回路による放電が正常に行われているか否かを検出する放電検出部をさらに備え、コンタクタが開状態とされ、かつ、放電回路による放電が正常に行われていないことが放電検出部により検出されたときに、無通電PWM制御を行うようにしても良い。
また、抵抗の温度を検出する抵抗用温度センサをさらに備え、コンタクタが開状態で、かつ、抵抗用温度センサにより検出された温度が所定上限温度を超えたときには、抵抗用温度センサにより検出された温度が所定上限温度を超えたとき放電回路による放電を停止し、無通電PWM制御を行うようにしても良い。
さらに、電力変換装置内の温度を検出する装置内温度センサを備え、ドライバ回路制御部は、装置内温度センサの検出温度に基づいて無通電PWM制御におけるキャリア周波の設定を変更するようにしても良い。
また、放電電力消費用の抵抗を、ドライバ電源回路の二次側にドライバ回路と並列に設けるようにしても良い。
さらにまた、ドライバ電源回路の入力部に、電圧平滑用キャパシタに対して並列に接続される入力キャパシタを設け、電圧平滑用キャパシタとの接続部から入力キャパシタまでの配線と入力キャパシタとによるインピーダンスを、接続部から電圧平滑用キャパシタまでの配線と電圧平滑用キャパシタとによるインピーダンスの20倍以上に設定するようにするのが好ましい。
また、ドライバ電源回路には、プリント基板上に実装されたスイッチング用トランジスタとトランスとが備えられ、トランジスタの一つの端子とトランスの一つの端子とを接続する配線パターンを、プリント基板のトランスの下方領域において幅広く広がる面状のパターンとしても良い。
さらに、配線パターン上であってトランジスタの近傍に、チェッカーチップを1以上配置しても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コンタクタオフ時の電圧平滑用キャパシタの放電機能に関して、信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ハイブリッド自動車の制御ブロックを示す図である。
【図2】インバータ装置140を説明する図である。
【図3】ドライバ電源回路27の回路構成を説明する図である。
【図4】消費電力調整動作の一例を示すフローチャートである。
【図5】インバータ装置140の構造を説明する図である。
【図6】ドライバ回路基板17上の電源回路レイアウトを説明する図である。
【図7】回路定数分布を説明する図である。
【図8】第2の実施の形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
−第1の実施の形態−
本発明の実施形態に係る電力変換装置は、ハイブリッド用の自動車や純粋な電気自動車に適用可能である。以下では、代表例として、本発明の実施形態に係る電力変換装置をハイブリッド自動車のインバータ装置に適用した場合について説明する。本発明の実施形態に係る電力変換装置は、自動車に搭載される車載電機システムの車載用電力変換装置、特に、車両駆動用電機システムに用いられ、搭載環境や動作的環境などが大変厳しい車両駆動用インバータ装置を例に挙げて説明する。
【0012】
車両駆動用インバータ装置は、車両駆動用電動機の駆動を制御する制御装置として車両駆動用電機システムに備えられ、車載電源を構成する車載バッテリ或いは車載発電装置から供給された直流電力を所定の交流電力に変換し、得られた交流電力を車両駆動用電動機に供給して車両駆動用電動機の駆動を制御する。また、車両駆動用電動機は発電機としての機能も有しているので、車両駆動用インバータ装置は運転モードに応じ、車両駆動用電動機の発生する交流電力を直流電力に変換する機能も有している。変換された直流電力は車載バッテリに供給される。
【0013】
なお、本実施形態の構成は、自動車やトラックなどの車両駆動用電力変換装置として最適であるが、これら以外の電力変換装置に対しても適用可能である。例えば、電車や船舶、航空機などの電力変換装置や、工場の設備を駆動する電動機の制御装置として用いられる産業用電力変換装置、あるいは、家庭の太陽光発電システムや家庭の電化製品を駆動する電動機の制御装置に用いられたりする、家庭用電力変換装置に対しても適用可能である。
【0014】
図1はハイブリッド自動車の制御ブロックを示す図である。図1において、ハイブリッド電気自動車(以下、「HEV」と記述する)110は電動車両の一種であり、2つの車両駆動用システムを備えている。その1つは、内燃機関であるエンジン120を動力源と
したエンジンシステムである。エンジンシステムは、主としてHEV110の駆動源として用いられる。もう1つは、モータジェネレータ192,194を動力源とした車載電機システムである。車載電機システムは、主としてHEV110の駆動源およびHEV110の電力発生源として用いられる。モータジェネレータ192,194は例えば同期機あるいは誘導機であり、運転方法によりモータとしても発電機としても動作するので、ここではモータジェネレータと記すこととする。
【0015】
車体のフロント部には前輪車軸114が回転可能に軸支されている。前輪車軸114の両端には1対の前輪112が設けられている。車体のリア部には後輪車軸(図示省略)が回転可能に軸支されている。後輪車軸の両端には1対の後輪が設けられている。本実施形態のHEVでは、動力によって駆動される主輪を前輪112とし、連れ回される従輪を後輪とする、いわゆる前輪駆動方式を採用しているが、この逆、すなわち後輪駆動方式を採用しても構わない。
【0016】
前輪車軸114の中央部には、前輪側デファレンシャルギア(以下、「前輪側DEF」と記述する)116が設けられている。前輪車軸114は、前輪側DEF116の出力側に機械的に接続されている。前輪側DEF116の入力側には、変速機118の出力軸が機械的に接続されている。前輪側DEF116は、変速機118によって変速されて伝達された回転駆動力を左右の前輪車軸114に分配する差動式動力分配機構である。変速機118の入力側には、モータジェネレータ192の出力側が機械的に接続されている。モータジェネレータ192の入力側には、動力分配機構122を介してエンジン120の出力側およびモータジェネレータ194の出力側が機械的に接続されている。なお、モータジェネレータ192,194および動力分配機構122は、変速機118の筐体の内部に収納されている。
【0017】
モータジェネレータ192,194は、回転子に永久磁石を備えた同期機である。固定子の電機子巻線に供給される交流電力がインバータ装置140,142によって制御されることにより、モータジェネレータ192,194の駆動が制御される。インバータ装置140,142にはバッテリ136が接続されており、バッテリ136とインバータ装置140,142との間において電力の授受が可能である。
【0018】
本実施形態では、HEV110は、モータジェネレータ192およびインバータ装置140からなる第1電動発電ユニットと、モータジェネレータ194およびインバータ装置142からなる第2電動発電ユニットとの2つを備え、運転状態に応じてそれらを使い分けている。すなわち、エンジン120からの動力によって車両を駆動している状況において、車両の駆動トルクをアシストする場合には、第2電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジン120の動力によって作動させて発電させ、その発電によって得られた電力によって第1電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させる。また、同様の状況において車両の車速をアシストする場合には、第1電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジン120の動力によって作動させて発電させ、その発電によって得られた電力によって第2電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させる。
【0019】
また、本実施形態では、バッテリ136の電力によって第1電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させることにより、モータジェネレータ192の動力のみによって車両の駆動ができる。さらに、本実施形態では、第1電動発電ユニットまたは第2電動発電ユニットを、発電ユニットとしてエンジン120の動力あるいは車輪からの動力によって作動させて発電させることにより、バッテリ136の充電ができる。
【0020】
バッテリ136は、さらに補機用のモータ195を駆動するための電源としても使用される。補機としては、たとえばエアコンディショナーのコンプレッサを駆動するモータ、あるいは制御用の油圧ポンプを駆動するモータがある。バッテリ136からインバータ装置43に供給された直流電力はインバータ装置43で交流の電力に変換され、モータ195に供給される。インバータ装置43はインバータ装置140,142と同様の機能を持ち、モータ195に供給する交流の位相や周波数、電力を制御する。たとえば、モータ195の回転子の回転に対し進み位相の交流電力を供給することにより、モータ195はトルクを発生する。一方、遅れ位相の交流電力を発生することで、モータ195は発電機として作用し、モータ195は回生制動状態の運転となる。このようなインバータ装置43の制御機能は、インバータ装置140,142の制御機能と同様である。モータ195の容量がモータジェネレータ192,194の容量より小さいので、インバータ装置43の最大変換電力はインバータ装置140,142より小さいが、インバータ装置43の回路構成は基本的にインバータ装置140,142の回路構成と同じである。
【0021】
インバータ装置140,142および43とキャパシタ500とは、電気的に密接な関係にある。さらに発熱に対する対策が必要な点が共通している。また装置の体積をできるだけ小さく作ることが望まれている。これらの点から以下で詳述する電力変換装置200は、インバータ装置140,142および43とキャパシタ500とを電力変換装置200の筐体内に内蔵している。この構成により、小型で信頼性の高い装置が実現できる。
【0022】
また、インバータ装置140,142および43とキャパシタ500とを一つの筐体に内蔵することで、配線の簡素化やノイズ対策において効果がある。また、キャパシタ500とインバータ装置140,142および43との接続回路のインダクタンスを低減でき、スパイク電圧を低減できると共に、発熱の低減や放熱効率の向上を図ることができる。
【0023】
次に、図2を用いて本実施の形態における放電機能について説明する。ここでは、代表例としてインバータ装置140を例に用いて説明する。図2はインバータ装置140の回路構成を説明する図であり、電圧平滑用のキャパシタ500も含めて記載した。インバータ装置140は、バッテリ136からのDC電圧をAC電圧に変換してモータジェネレータ192を駆動する。インバータ装置140とバッテリ136との接続および切り離しは、コンタクタ15によってコントロールされる。インバータ装置140は、インバータ回路12、ドライバ回路基板17、コントローラ18、急速放電制御回路24、急速放電抵抗25、放電用スイッチング素子26を備えている。ドライバ回路基板17には、インバータ回路12を駆動するためのドライバ回路21、およびドライバ回路21に電力を供給するドライバ電源回路27が設けられている。
【0024】
インバータ回路12は3相ブリッジ構成を成す電力用のパワー半導体素子により構成されており、各々2つのパワー半導体素子から成る上下アーム直列回路123U,123V,123WがU相、V相およびW相に対応して設けられている。上下アーム直列回路123U,123V,123Wは、それぞれ正極ラインPと負極ラインNに電気的に接続される。電圧平滑用のキャパシタ500はバッテリ136と並列に接続されており、バッテリ136およびキャパシタ500の間に直列に設けられたコンタクタ15を介することでインバータ回路12へ電圧を供給する。コンタクタ15の開閉は、エンジンコントローラ又はバッテリコントローラなどの上位コントローラ454により制御されており、例えばHEVではエンジン始動・停止動作と連携した上位コントローラ454からのコンタクタ開閉信号により動作する。
【0025】
インバータ回路12に設けられた各パワー半導体素子はドライバ回路21によって駆動制御される。ドライバ回路基板17上には、3相ブリッジ構成の各パワー半導体素子を駆動制御するための6相分のドライバ回路21が設けられている。各ドライバ回路21には、絶縁された電源がドライバ電源回路27によって供給される。ドライバ電源回路27には、高電圧電源であるバッテリ136から電力が供給される。一方、コントローラ18には、12V系電源19から電力が供給される。なお、電気自動車用のバッテリ136の場合、電圧200V〜400Vのバッテリが使用される。
【0026】
ドライバ回路21は、コントローラ18からの制御信号(PWM信号)に基づいて、インバータ回路12のパワー半導体素子のスイッチング制御を行う。コントローラ18には、目標トルク値や回転指令などのモータジェネレータ192を駆動するための指令が上位コントローラ454から入力される。また、コントローラ18には、不図示の電流センサで検出されたモータジェネレータ192の電機子巻線に供給される電流値や、モータジェネレータ192に設けられた不図示の回転磁極センサから出力された磁極位置などが入力される。
【0027】
コントローラ18はパワー半導体素子のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピュータを備えている。そのマイクロコンピュータは、目標トルク値に基づいてモータジェネレータ192のd軸およびq軸の電流指令値を演算し、この演算されたd軸,q軸の電流指令値と、電流センサの検出結果に基づくd軸,q軸の電流値との差分に基づいてd軸,q軸の電圧指令値を演算する。そして、演算されたd軸,q軸の電圧指令値を、検出された磁極位置に基づいてU相、V相、W相の電圧指令値に変換し、さらに、U相、V相、W相の電圧指令値に基づく基本波(正弦波)と搬送波(三角波)との比較に基づいてパルス状の変調波を生成し、この生成された変調波をPWM(パルス幅変調)信号としてドライバ回路21に出力する。
【0028】
ドライバ回路21は、下アームを駆動する場合、下アームPWM信号を絶縁かつ増幅し、これをドライブ信号として下アームのパワー半導体素子のゲート電極に出力する。同様に、上アームを駆動する場合には、上アームPWM信号を絶縁かつ増幅し、これをドライブ信号として上アームのパワー半導体素子のゲート電極に出力する。これにより、各パワー半導体素子は、入力されたドライブ信号に基づいてスイッチング動作する。
【0029】
本実施の形態では、急速放電抵抗25と放電用スイッチング素子26との直列回路が、バッテリ136および電圧平滑用キャパシタ500に対して並列に設けられている。放電用スイッチング素子26のオンオフは、急速放電制御回路24によって制御される。車両を停止してキーオフ操作がされると、上位コントローラ454によりコンタクタ15がオープンにされ、バッテリ136とインバータ装置140とが切り離される。
【0030】
ここで、インバータ装置140をバッテリ136から切り離した後、インバータ内部に電圧が残っていると、インバータ装置140を修理などする際に、高電圧に触れる危険性があるため、急速放電制御回路24により放電用スイッチング素子26をオン(導通状態)し、キャパシタ500に残る電荷を放電するようにしている。なお、放電が速やかに行われるように、急速放電抵抗25には比較的低抵抗のものが用いられる。
【0031】
また、修理等の為にインバータ装置140の筐体に設けられた蓋を開く場合にも、感電のおそれがあるので、それを防止するためにインターロックループ20が設けられている。図2に示すインターロックループ20の配線上には、電流源200と、筐体の蓋を開くとオープンするスイッチ201と、インターロックループ20がオープンになったことを検出するための抵抗202とが設けられている。図示していないが、インターロックループ20の配線は他の高圧装置等(バッテリ136、不図示のDC−DCコンバータなど)も経由しており、それぞれインターロック用のスイッチが設けられている。
【0032】
いずれか一つのスイッチがオープンしてインターロックループ20がオープンすると、抵抗202の両端の電位差がゼロになる。コントローラ18に設けられた検出回路180は抵抗202の電位差を検出する。コントローラ18は、検出回路180で検出される電位差がゼロとなったならばインターロックループ20がオープンになったと判定し、コンタクタオープンを要求する信号を上位コントローラ454に出力する。上位コントローラ454は、コントローラ18からの上記信号を受信したならばコンタクタ15をオープンする。
【0033】
一方、コントローラ18は、コンタクタオープンを要求する信号を出力した後に、急速放電制御回路24に放電指令を出力する。急速放電制御回路24は、コントローラ18からの放電指令を受信すると、放電用スイッチング素子26をオン(導通状態)し、急速放電抵抗25によりキャパシタ500の電荷を放電する。
【0034】
なお、急速放電制御回路24の構成については、例えば前述した特許文献1に記載されているような構成が採用される。ここでは、急速放電制御回路24の詳細構成についての説明を省略する。
【0035】
本実施の形態では、放電制御の信頼性に関してさらなる向上を図るために、ドライバ回路基板17を利用した放電機能を追加した。すなわち、ドライバ回路21等によりキャパシタ500の電荷を放電するようにした。そのため、従来のインバータ装置ではドライバ電源回路27の電源として12V電源19を使用しているが、本実施の形態では上述したようにバッテリ136をドライバ電源回路27の電源としている。
【0036】
図3はドライバ電源回路27の回路構成を説明する図である。ドライバ電源回路27はフライバック電源で構成され、6つの出力回路と1つのフィードバック回路とから成る合計7つの2次側回路を備えている。なお、図3では出力回路は1相分のみを記載した。
【0037】
図3において、C2は電源回路の入力フィルタキャパシタ、L1は電源トランス、T1は電源トランスL1に接続されたスイッチング用トランジスタ、SW1は2次側の電圧を一定の電圧となるようにフィードバック制御しながらスイッチング用トランジスタT1を駆動するスイッチングレギュレータ制御回路である。スイッチングレギュレータ制御回路SW1は、ドライバ電源回路27に電圧が印加されるとスイッチング用トランジスタT1の駆動を開始する。抵抗R10,R20は、キャパシタ500の電荷を放電させる際に電力を消費させるための抵抗である。
【0038】
2次側出力はダイオードD10とキャパシタC10とを備え、電圧が平滑化された後段にドライバ回路21が配置されている。ドライバ回路21は、パワー半導体素子T2を駆動する。パワー半導体素子T2は、図2に示したインバータ回路12に設けられた6つのパワー半導体素子の内の1つである。
【0039】
ドライバ電源回路27の動作電圧は30Vからバッテリ136の最大電圧まで、もしくは、30Vからモータジェネレータ192の最大誘起電圧まで動作可能としている。ドライバ電源回路27の最大動作電圧をバッテリ136の最大電圧かモータジェネレータ192の最大誘起電圧としているのは、次のような理由からである。すなわち、12V系電源19がオフ、コントローラ18が非動作、コンタクタ15がオフという状態において、モータジェネレータ192が回転している場合、モータジェネレータ192の誘起電圧がインバータ回路12内のダイオードを経由してキャパシタ500に印加され、キャパシタ500に、モータジェネレータ192の誘起電圧のピーク電圧が印加されるおそれがあるためである。
【0040】
そのため、ドライバ電源回路27は、モータジェネレータ192の誘起電圧のピーク電圧と等しい直流電圧が印加されても動作可能な設計としている。本実施の形態に示す例では、モータジェネレータ192の誘起電圧が最大で600Vになるため、ドライバ電源回路27は600Vの直流電圧が印加されても動作可能な設計とされている。
【0041】
本実施の形態では、図2に示すように、ドライバ電源回路27の入力を高電圧側(PNライン)から取ることで、ドライバ回路21によるスイッチングを行わなくても、ドライバ電源回路27自体(図3に示す抵抗R10、R20や後述する図6の制御IC1など)の電力消費によりキャパシタ500の電荷が放電される。
【0042】
次に、ドライバ回路基板17における消費電力、および放電時間について説明する。ここでは、キャパシタ500の放電開始時の電圧を350Vとし、その電圧350Vを42V以下とするまでの時間を放電時間として考える。ここでの電圧42Vは、人が触れても軽度の感電で済む電圧とされ、さまざまな基準に使われているものである。そして、放電時間の目標を30秒以内と設定した。ここで30秒以内と設定した理由は、車両用インバータ装置は一般的に複数のネジで密閉されているが、この複数のネジを取り外すのに要する最短時間から規定するとした場合、その最短時間は約30秒とされるからである。
【0043】
ドライバ回路基板17における消費電力による放電時間は、キャパシタ500の静電容量、ドライバ電源回路27に印加される電圧値、ドライバ回路基板17における消費電力により決まる。本実施の形態におけるドライバ回路基板17では、ドライバ回路21がパワー半導体素子T2をスイッチングしてない状態では、消費電力は2W程度となる。この程度の損失では、静電容量1000uFのキャパシタ500を電圧350Vから30秒以内に電圧42V以下まで放電することができなかった。
【0044】
そこで、図3に示したように抵抗R10、R20をドライバ電源回路27の二次側回路に設けることで、ドライバ回路基板17における消費電力を意図的に上げて、放電時間を短縮するようにしている。さらに、この抵抗R10、R20の抵抗値を減らして消費電力をさらに増加させることで、30秒以内に電圧42Vまで放電できるような設定とした。
【0045】
ただし、このような抵抗R10,R20による損失を利用する方法では、通常のインバータ動作時においても電力を消費することになる。そこで、次のような方法でドライバ回路基板17における消費電力を増加させるようにしても良い。ドライバ回路21は、スイッチング動作をしているときにはスイッチング動作をしていない時に比べて消費電力が増加する。例えば、ドライバ回路21がコントローラ18からPWM指令を受け、周波数12kHz程度でスイッチングしている状態における損失は8W程度となる。
【0046】
そこで、コントローラ18にセルフシャットオフ機能をもたせて、コンタクタ15がオフした後も、しばらくの間コントローラ18を動作させる。そして、モータジェネレータ192が無通電状態に維持されるようなPWM信号を、コントローラ18からドライバ回路21へ指令する。このような無通電PWMスイッチング動作を行わせてドライバ回路21の消費電力を増加させることで、図3に示したような抵抗R10,R20を設けなくても、放電時間を30秒以内に短縮することができる。
【0047】
ところで、無通電PWMスイッチング動作時における消費電力の大きさはPWM信号のキャリア周波数に依存し、キャリア周波数が高いほど消費電力が大きくなる。すなわち、PWM信号のキャリア周波数を変更してドライバ回路21の消費電力を調整することにより、放電時間の調整を行うことができる。図4は、そのような消費電力調整の一例を示したものであり、インバータ装置140の内部温度に応じてキャリア周波数を変更する場合の動作を示すフローチャートである。
【0048】
コントローラ18にはインバータ装置140に関する温度情報、例えば、図2に示すようにドライバ回路12の温度を検出する温度センサ29を設け、その温度センサ29の検出信号を温度情報としてコントローラ18に入力する。コントローラ18は、その温度情報に基づいてPWM信号のキャリア周波数を変更する。まず、図4のステップS10では、コンタクタ15がオフされたか否かを判定する。
【0049】
例えば、キーオフ操作によりコンタクタ15が上位コントローラ454によってオフされる場合には、コンタクタオフ指令が上位コントローラ454からコントローラ18に入力されるような構成としておく。そして、コントローラ18がそのコンタクタオフ指令を受信したか否かで、コンタクタ15がオフされたか否かを判定する。また、インバータ装置140の蓋が開けられるなどして、インターロックループ20がオープンしたとコントローラ18が判定した場合には、コントローラ18はその判定結果を上位コントローラ454に出力する。そして、コントローラ18は、その判定結果によりコンタクタ15がオフされたか否かを判定する。
【0050】
ステップS10でコンタクタ15がオフされたと判定されると、ステップS20へ進み、温度センサ29の検出温度(インバータ内部温度)が所定温度(ここでは、所定温度=85℃とする)を超えたか否かを判定する。この所定温度は、例えばスイッチング用トランジスタT1に許容される温度が用いられるなど、適宜設定される。
【0051】
ステップS20でインバータ内部温度が85℃を超えたと判定されるとステップS30へ進み、85℃を超えていないと判定されるとステップS40へ進む。ステップS20からステップS40へ進んだ場合には、30秒以内に電圧42Vまで放電できるように、PWM信号のキャリア周波数fcをfc=12kHzに設定して、ドライバ回路21により無通電PWMスイッチング動作を行わせる。一方、ステップS20からステップS30へ進んだ場合には、パワー半導体素子の発熱が抑えられるようにキャリア周波数fcをfc=7kHzに設定し、ドライバ回路21により無通電PWMスイッチング動作を行わせる。この場合、放電時間が延びることになる。
【0052】
なお、無通電PWMスイッチング動作とは、パワー半導体素子に電流が流れないような(すなわち、負荷であるモータジェネレータ192に電流が流れない)制御である。例えば、図2の下アーム側のパワー半導体素子をオフにした状態で、上アーム側のパワー半導体素子をスイッチング動作させるような制御をすると、パワー半導体素子に電流が流れないようにスイッチングさせることができる。
【0053】
ステップS50では、キャパシタ500の電圧が42Vを下回ったか否かを判定し、キャパシタ500の電圧が42Vを下回った場合にはステップS60に進む。なお、図2では図示を省略したが、電圧平滑用のキャパシタ500と並列に、キャパシタ500の電圧を検出するための電圧検出回路が設けられている。ステップS60では、コントローラ18の電源をセルフシャットオフする。
【0054】
このように、インバータ内部温度が高く、無通電PWMスイッチングを行うことでドライバ回路21やドライバ電源回路27のスイッチング用トランジスタT1の温度が許容温度を超えるおそれがある場合は、キャリア周波数を低く設定する。一方、インバータ内部温度が低く、ドライバ回路21やスイッチング用トランジスタT1等の部品の温度が十分低い場合には、無通電PWMスイッチングのキャリア周波数を高くすることで、より高速にキャパシタ電荷の放電を行うことが可能となる。なお、ここでいう温度情報は、インバータ内部温度以外に、インバータ装置を流れる冷却水の温度情報や、運転停止時にはほぼ水温と等しくなるパワー半導体素子の温度情報などであっても良い。
【0055】
次に、図5を用いて、本発明に関わるインバータ装置の構造について説明する。インバータ装置140は、図5に示すように筐体11内に収納されている。インバータ回路12を構成する部品(パワー半導体素子など)は一つにモジュール化され、その半導体モジュール35は冷却流路が形成された冷却ブロック30に固定されている。電圧平滑用キャパシタ500は容器13に収められ、冷却ブロック30に固定されている。
【0056】
31はキャパシタ500の本体と一体化されたバスバであって、半導体モジュール35の上方に配置されたラミネートバスバ32を介して半導体モジュール35のインバータ回路12に接続されている。ラミネートバスバ32の上方に配置されたドライバ回路基板17は、支柱37を介して冷却ブロック30に固定されている。19はコントローラ18を構成する部品が実装されている制御回路基板であり、筐体11内に設けられた金属板110上に搭載されている。ドライバ回路基板17の電源は、キャパシタバスバ31とラミネートバスバ32とを接続する接続部33から、電源ハーネス34を介してドライバ回路基板17へ入力されている。
【0057】
ここで、半導体モジュール35のPN端子ではなく、キャパシタバスバ31とラミネートバスバ32の接続部33から電源ハーネス34を用いて電源を入力している理由は、半導体モジュール35のPN端子から遠い箇所ほど、半導体モジュール35へ流入する電流の影響を受けにくく、電圧が安定しているためと、筐体11へのハーネス34の組み込みが容易に行えるからである。
【0058】
図6は、ドライバ回路基板17上の電源回路レイアウトを説明する図である。電源ハーネス34は、キャパシタバスバ31とラミネートバスバ32との接続部33と、ドライバ回路基板17の電源コネクタ36とを接続している。電源配線は電源コネクタ36のP端子から、電源入力キャパシタC2を経由して電源トランスL1の3番ピンに接続され、電源トランスL1の3番ピンから電源トランスの1次側巻き線を経由して2番ピンからスイッチング用トランジスタT1のドレイン(D)パターンを経由して、スイッチング用トランジスタT1のドレイン端子に接続されている。
【0059】
一方、コネクタ36のN端子は、キャパシタC2、図示しない1次電流の検知抵抗を経由してスイッチング用トランジスタT1のソース端子に接続されている。IC1はスイッチングレギュレータ制御回路SW1の構成部品である制御ICであり、スイッチング用トランジスタT1のゲートを駆動しスイッチング用トランジスタT1のスイッチングを制御している。電源トランスL1から出力されるUP、VP、WP、UN、VN、WNは ドライバ回路21の6相分の絶縁電源出力であり、各相のドライバ回路21に配線されている。FBはフィードバック相への出力であり、電位はN端子および制御IC1と同一である。
【0060】
ここで、電圧平滑用のキャパシタ500からインバータ回路12へ流入する電流は、図7に示すように、モータ電流と同じピークをもつパルス状の電流波形を有している。モータ電流が300Armsならば、流入電流もモータ電流のピーク電流420Aと同じであり、周期はキャリア周波数の2倍である。また、電流波形の立ち上がりおよび立下りは、インバータ回路12のパワー半導体素子のスイッチング電流の立ち上がりおよび立下り波形と同じ、例えば、2kA/uSという急峻な変化を有する電流である。このとき、キャパシタ500には、420Ap/2の振幅をもつAC成分の大電流が流れる。
【0061】
電気回路的には、ドライバ電源回路27の入力キャパシタC2(静電容量もC2とする)は、電圧平滑用のキャパシタ500(静電容量をC1とする)と並列接続であるため、キャパシタC2からもインバータ回路12へ電流が引き込まれることになる。流入する電流の電流値は、キャパシタ500(C1)とキャパシタ500からキャパシタバスバ31の接続部33までのインダクタンスLL1とによるインピーダンス√(ωLL1−1/(ωC1)^2 と、ドライバ電源回路27の入力キャパシタC2と電源ハーネス34のインダクタンスLL2とによるインピーダンス√(ωLL2−1/(ωC2)^2との比によって決まる。仮に、後者のインピーダンスが前者のインピーダンスの10倍程度であれば、モータ電流ピーク420A時には ドライバ電源回路27の入力キャパシタC2には、21Ap(=420A・1/10・1/2)もの電流が入力キャパシタC2に流れることになる。なお、図7のLL3はラミネートバスバ32のインダクタンスである。
【0062】
実際には、キャパシタ500からインバータ回路12へ流入する電流の周波数は、大きく分けるとキャリア周波数成分の数kHzと立ち上がり立ち下がりの数MHzの成分とから成る。そして、数kHzの成分はキャパシタ500,C2の静電容量(それぞれをC1,C2)の比に支配され、数MHzの成分はインダクタンスLL1,LL2の比に支配される。キャパシタC2はドライバ電源回路27の電圧を平滑する目的でドライバ回路基板17上に搭載され、その静電容量は200nF程度であり、小型高圧のキャパシタを8個並列接続することにより構成している。そのため、許容リプル電流は数A程度であり、キャパシタ500(C1)とのインピーダンスマッチングが不適切であると、入力キャパシタC2を許容リプル電流以上で通電させてしまい問題となる。
【0063】
インバータ回路12へ流入する電流の数kHz成分については、静電容量C2(約200nF)は静電容量C1(約1000μF)に対して十分に小さいため、流入するリプル電流は約1/5000と小さく問題ない。しかし、数MHzの成分については、LL1=LL2=10nHの場合には、仮に静電容量C1、C2の比が約1/5000であっても、インピーダンス比は2倍程度であり、入力キャパシタC2のリプル電流が大きくなり問題である。
【0064】
そこで、本実施の形態では、静電容量C2とインダクタンスLL2によるインピーダンスを静電容量C1とインダクタンスLL1によるインピーダンスの20倍以上とすることで、数MHzの高周波における入力キャパシタC2のリプル電流を抑え、許容リプルの問題を解決している。すなわち、次式(1)のように設定した。
√(ωLL2−1/(ωC2)^2 / √(ωLL1−1/(ωC1)^2 >20…(1)
【0065】
次に、ドライバ電源回路27のスイッチング用トランジスタT1の放熱対策について説明する。ドライバ回路基板17における損失は、各相のドライバ回路21の損失とドライバ電源回路27の損失とに分けられる。そして、抵抗R10,R20を設けない場合には、ドライバ電源回路27の損失の大部分はスイッチング用トランジスタT1の損失である。本実施の形態では、スイッチング用トランジスタT1は高電圧を入力としてスイッチングしているため、12V系電源19を入力とするスイッチング電源のスイッチングトランジスタと比較して損失が大きい。
【0066】
車両用のインバータ装置の場合、使用環境温度が高いためインバータ内部温度は100℃を超えることもある。そこで、スイッチング用トランジスタT1のジャンクション温度を許容値以下に抑えるために、以下に示す2つの放熱対策を施した。
【0067】
スイッチング用トランジスタT1は、放熱面がドレイン端子の面つけ部品である。ドレインパターンは、電源トランスL1の2番ピンと配線されていればよいが、それだけでは放熱が不十分であった。そこで、ドレインパターン(符号Dを施した領域)を電源トランスL1の3番ピンより図6の右側に延長し、また、図示下方向については、FBラインとの絶縁を確保できる範囲内で拡張をはかることで、より放熱面積の拡大をはかった。
【0068】
さらに、スイッチング用トランジスタT1周辺に筒状の金属材で構成されたチェッカーチップJ1を配置し、スイッチング用トランジスタT1近傍での放熱面積を拡大することでさらに放熱性能の向上をはかり、スイッチング用トランジスタT1を許容温度以内で使用することを可能とした。なお、チェッカーチップJ1の個数に関しては、ドレインパターンDの面積に応じて適宜設定すれば良い。以上のような放熱対策により、スイッチング用トランジスタT1の小型化を計り、高圧入力のドライバ電源回路27をドライバ回路基板17の限られた範囲に搭載することが可能となった。
【0069】
上述したように、第1の実施の形態では、急速放電制御回路24とドライバ回路基板17の電力消費を利用した放電機構とを併用する構成としたので、仮に、急速放電制御回路24が故障した場合においても、ドライバ回路基板17による放電機構により、電圧平滑用キャパシタ500の電荷を確実に放電することができ、放電制御に関する信頼性の向上を図ることができる。
【0070】
なお、放電抵抗26を用いた急速放電制御回路24による放電は、放電抵抗26の抵抗値にも依るが、一般的には数秒程度で42Vまで放電することができる。一方、ドライバ回路基板17の消費電力による放電では、電圧平滑用キャパシタ500の残留電荷を42Vまで放電するのに数十秒要することになる。そのため、急速放電制御回路24による放電とドライバ回路基板17の消費電力による放電とを同時に行った場合、急速放電制御回路24による放電がメインとなる。
【0071】
−第2の実施の形態−
上述した第1の実施の形態では、急速放電制御回路24とドライバ回路基板17の電力消費を利用した放電機構とを常時併用する構成としたが、第2の実施の形態では、急速放電制御回路24による放電が正常に行えない場合にのみドライバ回路基板17による放電機構を動作させるようにした。
【0072】
図8は第2の実施の形態を説明する図である。図8に示す例では、放電用スイッチング素子26の両端電圧を検出する放電用スイッチング素子電圧検出回路490を設け、放電用スイッチング素子電圧検出回路490の出力信号に基づいて、急速放電制御回路24による放電が正常に行われているか否かを検出するようにしている。
【0073】
急速放電制御回路24はマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)455を備えており、コントローラ18から放電指令を受けると、マイコン455は放電信号を生成する。その放電信号はフォトカプラなどの絶縁伝達素子453を介してトランジスタT20側に伝えられ、トランジスタT20がオンする。トランジスタT20がオンすると、放電用スイッチング素子26にゲート電圧が印加されて放電用スイッチング素子26がオンする。その結果、急速放電抵抗25によるキャパシタ500の放電が行われる。
【0074】
放電用スイッチング素子電圧検出回路490は、トランジスタT10,ダイオードD1,抵抗R4,R5,R6を備えている。放電実行時には、放電用スイッチング素子26がオンとなり、放電用スイッチング素子26の両端電圧を検知してトランジスタT10がオンになる。そのため、トランジスタT10と直列に接続されている絶縁伝達素子453もオンとなり、コントローラ18のマイコン181にLow信号が入力される。
【0075】
一方、放電が実施されていない場合には、放電用スイッチング素子452はオフのため、トランジスタT10および絶縁伝達素子453もオフとなる。従って、マイコン181には、コントローラ18の電源電圧を抵抗R2によりプルアップしたHigh信号が入力される。コントローラ18は、このHigh,Low信号に基づき放電が正常に実施されているか否かを判断することができる。
【0076】
すなわち、上位コントローラ454からコントローラ18にコンタクタオフ指令が入力されているにもかかわらず、またはインターロックループ20のオープンが検出されているにもかかわらず放電用スイッチング素子452がオフ状態になっている場合には、放電用スイッチング素子452のオンオフ制御を行っている急速放電制御回路24が正常に動作していないか、または放電用スイッチング素子452が正常に動作していないことが考えられる。いずれにしても、コントローラ18は、コンタクタオフ指令が入力されていて、かつ放電用スイッチング素子452がオフであると判定したならば、上述したドライバ回路基板17の電力消費を利用した放電機能を動作させて、キャパシタ500の電荷を放電させる。
【0077】
ところで、急速放電制御回路24による放電を行うと、放電後の急速放電抵抗25の温度が上昇するので、次の放電までには一定の時間間隔が必要である。そのため、イグニッションキーの連続オンオフが行われた場合、急速放電抵抗25の温度が上がり過ぎないように、タイマー等を使用して急速放電機能を停止する必要がある。または、図2に示すように急速放電抵抗25の温度を検出する温度センサ23を設け、その温度センサ23の検出温度が上限温度を超えたならば、急速放電制御回路24は放電を停止する。
【0078】
本発明によれば、上述したように、何らかの理由で急速放電制御回路24による放電が行われない場合には、ドライバ回路基板17の消費電力によるキャパシタ500の放電を行うようにしている。そのため、連続キーオンオフ時に急速放電抵抗25の温度が上昇によって急速放電機能を停止された場合でも、ドライバ回路基板17の消費電力による放電を行うことで、インバータ装置の感電に対する安全性を高めることができる。
【0079】
上述したように、本実施の形態の電力変換装置(インバータ装置140)は、ブリッジ接続されたパワー半導体素子を有し、開閉可能なコンタクタ15を介して直流電源に接続されるインバータ回路12と、パワー半導体素子を駆動するドライバ回路21と、ドライバ回路21をPWM(パルス幅変調)制御してパワー半導体素子にスイッチング動作を行わせるドライバ回路制御部としてのコントローラ18と、インバータ回路12の入力側に並列接続された電圧平滑用のキャパシタ500とを備える。そして、急速放電抵抗25と放電用スイッチング素子26とを直列接続した放電回路をキャパシタ500に並列接続に、コンタクタ15が開状態とされると、急速放電制御回路24により放電用スイッチング素子26をオンする放電機構を備えると共に、キャパシタ500に並列接続されてキャパシタ50に印加される電圧を入力とするドライバ電源回路27を設けた。そのため、キャパシタ500の残留電荷は、ドライバ電源回路27やドライバ電源回路27により電力が供給されるドライバ回路21によっても放電されることになる。その結果、コンタクタオフ時に確実にキャパシタ500を放電することができ、キャパシタ500の放電に関する信頼性の向上が図れる。
【0080】
また、コンタクタ15が開状態とされたときに、インバータ回路12のパワー半導体素子に電流が通電されないようなPWM制御をドライバ回路21に対して行うことにより、キャパシタ放電時のドライバ回路21による消費電力が増加し、放電時間の短縮を図ることができる。
【0081】
急速放電抵抗25による放電が正常に行われているか否かを、放電検出部である放電用スイッチング素子電圧検出回路490で検出する構成とし、コンタクタ15が開状態で、かつ、急速放電抵抗25による放電が正常に行われていないことが放電用スイッチング素子電圧検出回路490で検出された場合に、パワー半導体素子に電流が通電されないようなPWM制御を行うようにした。その結果、急速放電制御回路24の故障などにより急速放電抵抗25による放電が行われなかった場合でも、ドライバ回路基板17における電力消費によりキャパシタ500の電荷を放電させることができる。
【0082】
また、急速放電抵抗25の温度を検出する温度センサ23をさらに備えて、温度センサ23により検出された温度が所定上限温度を超えたならば、急速放電抵抗25による放電を停止し、パワー半導体素子に電流が通電されないようなPWM制御を行う構成としたので、温度センサ23が上限温度を超えた場合においても、確実にキャパシタ500の放電を行うことができる。
【0083】
さらに、電力変換装置内の温度(ドライバ回路21の温度)を検出する温度センサ29を備え、温度センサ29の検出温度に基づいてPWM制御におけるキャリア周波の設定を変更することをで、電力変換装置内の温度が許容温度を超えないように放電動作を行うことができる。
【0084】
放電電力消費用の抵抗R10,R20を、ドライバ電源回路27の二次側にドライバ回路21と並列に設けたことにより、ドライバ回路21によるスイッチング動作を行わないときの消費電力を大きくすることができ、放電時間を短縮できる。
【0085】
また、図7に示すように、ドライバ電源回路27の入力部に、電圧平滑用キャパシタ500に対して並列に接続される入力キャパシタC2を設け、キャパシタ500との接続部33から入力キャパシタC2までの配線と入力キャパシタC2とによるインピーダンスを、接続部33からキャパシタ500までの配線とキャパシタ500とによるインピーダンスの20倍以上に設定することにより、数MHzの高周波における入力キャパシタC2のリプル電流を抑え、許容リプルの問題が解決できる。
【0086】
また、ドライバ電源回路27には、プリント基板上に実装されたスイッチング用トランジスタT1と電源トランスL1とが備えられ、スイッチング用トランジスタT1の一つの端子と電源トランスL1の一つの端子とを接続する配線パターンであるドレインパターンDを、プリント基板の電源トランスL1の下方領域において幅広く広がる面状のパターンとすることで、スイッチング用トランジスタT1の放熱性能が向上する。さらに、ドレインパターンD上のトランジスタT1の近傍にチェッカーチップJ1を1以上配置することで、放熱性能のさらなる向上が図れる。
【0087】
上述した各実施形態はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施形態での効果を単独あるいは相乗して奏することができるからである。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0088】
11:筐体、12:インバータ回路、15:コンタクタ、18:コントローラ、19:12V電源、20:インターロックループ、21:ドライバ回路、27:ドライバ電源回路、23,29:温度センサ、24:急速放電制御回路、25:急速放電抵抗、26:放電用スイッチング素子、33:接続部、43,140,143:インバータ装置、136:バッテリ、180:検出回路、182,194:モータジェネレータ、490:放電用スイッチング素子電圧検出回路、500:キャパシタ、C2:入力フィルタキャパシタ、D:ドレインパターン、J1:チェッカーチップ、L1:電源トランス、R10,R20:抵抗、T1:スイッチング用トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリッジ接続されたパワー半導体素子を有し、開閉可能なコンタクタを介して直流電源に接続されるインバータ回路と、
前記パワー半導体素子を駆動するドライバ回路と、
前記ドライバ回路をPWM(パルス幅変調)制御して前記パワー半導体素子にスイッチング動作を行わせるドライバ回路制御部と、
前記インバータ回路の入力側に並列接続された電圧平滑用キャパシタと、
前記電圧平滑用キャパシタに並列接続されて該電圧平滑用キャパシタに印加される電圧を入力とし、前記ドライバ回路に電力を供給するドライバ電源回路と、
前記電圧平滑用キャパシタの電荷を放電するための抵抗と該抵抗に直列接続された放電用スイッチング素子とから成り、前記電圧平滑用キャパシタに並列接続される放電回路と、
前記コンタクタが開状態とされると、前記放電用スイッチング素子を導通させて前記放電回路による放電を行わせる放電制御部と、を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記ドライバ回路制御部は、前記コンタクタが開状態とされると、無通電PWM制御を前記ドライバ回路に対して行うことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置において、
前記放電回路による放電が正常に行われているか否かを検出する放電検出部をさらに備え、
前記ドライバ回路制御部は、前記コンタクタが開状態とされ、かつ、前記放電回路による放電が正常に行われていないことが前記放電検出部により検出されると、無通電PWM制御を前記ドライバ回路に対して行うことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項2に記載の電力変換装置において、
前記抵抗の温度を検出する抵抗用温度センサをさらに備え、
前記放電制御部は、前記コンタクタが開状態であった場合でも、前記抵抗用温度センサにより検出された温度が所定上限温度を超えると、前記放電回路による放電を停止し、
前記ドライバ回路制御部は、前記コンタクタが開状態とされ、かつ、前記抵抗用温度センサにより検出された温度が所定上限温度を超えると、無通電PWM制御を前記ドライバ回路に対して行うことを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか一項に記載の電力変換装置において、
前記電力変換装置内の温度を検出する装置内温度センサをさらに備え、
前記ドライバ回路制御部は、前記装置内温度センサの検出温度に基づいて前記無通電PWM制御におけるキャリア周波の設定を変更することを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電力変換装置において、
放電電力消費用の抵抗を、前記ドライバ電源回路の二次側に前記ドライバ回路と並列に設けたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電力変換装置において、
前記ドライバ電源回路の入力部には、前記電圧平滑用キャパシタに対して並列に接続される入力キャパシタが設けられ、
前記電圧平滑用キャパシタとの接続部から前記入力キャパシタまでの配線と前記入力キャパシタとによるインピーダンスは、前記接続部から前記電圧平滑用キャパシタまでの配線と前記電圧平滑用キャパシタとによるインピーダンスの20倍以上に設定されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電力変換装置において、
前記ドライバ電源回路は、プリント基板上に実装されたスイッチング用トランジスタとトランスとを備え、
前記トランジスタの一つの端子と前記トランスの一つの端子とを接続する配線パターンを、前記プリント基板の前記トランスの下方領域において幅広く広がる面状のパターンとしたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電力変換装置において、
前記配線パターン上であって前記トランジスタの近傍に、チェッカーチップを1以上配置したことを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−234507(P2011−234507A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102614(P2010−102614)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】