説明

電動パワーステアリング装置

【課題】電動パワーステアリング装置を構成する制御装置のハウジングおよびヒートシンクとして、合成樹脂製であって、ECU一体型電動パワーステアリング装置の制御装置に要求される、放熱性と耐久性を満たすものを提供する。
【解決手段】制御装置4の回路基板41を収容するハウジング42は、ケース421と蓋422とからなる。ヒートシンク43は、ケース421の下側の電動モータ3と干渉しない位置に取り付けられている。ケース421と蓋422とヒートシンク43を、ポリフェニレンサルファイド(PPS)と、炭素繊維と、アルミナとからなり、炭素繊維の含有率が15質量%以上40質量%以下であり、アルミナの含有率が5質量%以上10質量%以下であり、炭素繊維とアルミナの合計含有率が20質量%以上50質量%以下である樹脂組成物の射出成形により形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、操舵トルクが伝達されるステアリングシャフトに減速機を介して操舵補助力を伝達する電動モータと、前記電動モータを制御する制御装置(ECU)が隣接配置されている電動パワーステアリング装置(ECU一体型電動パワーステアリング装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
このような電動パワーステアリング装置において、電動モータを制御する制御装置は、回路基板と、回路基板を収容するハウジングと、回路基板の熱を放散させるヒートシンクを有する。そして、ハウジングとヒートシンクは、通常、アルミニウムやアルミニウム合金製のものが使用されている(特許文献1等を参照)。
特許文献2には、電動モータのケースを挿入するリング状部と制御装置のハウジング(筐体)を、合成樹脂で一体成形することが記載されている。これにより、軽量化および防錆の効果があり、絶縁性が確保されて短絡等の電気的不具合を防止することができると記載されている。
【0003】
また、使用する合成樹脂として、高強度、高耐熱材料であるPPS(ポニフェニレンスルファイド)、PPA(ポリフタルアミド)、およびPI(ポリイミド)が例示され、ガラス繊維、カーボン繊維等の充填材を混ぜることで機械的強度を向上できることが記載されている。しかし、特許文献2には、制御装置のヒートシンクおよび放熱性に関する記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−237790号公報
【特許文献2】特開2011−131775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、電動パワーステアリング装置を構成する制御装置のハウジングおよびヒートシンクとして、合成樹脂製であって、ECU一体型電動パワーステアリング装置の制御装置に要求される、放熱性と耐久性を満たすものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は、操舵トルクが伝達されるステアリングシャフトに減速機を介して操舵補助力を伝達する電動モータと、前記電動モータを制御する回路基板がハウジングに収容されている制御装置とを有し、前記電動モータと前記制御装置が隣接配置されている電動パワーステアリング装置であって、前記制御装置は前記回路基板の熱を放散させるヒートシンクを有し、前記ハウジングと前記ヒートシンクは、下記の(1) に挙げたいずれかの合成樹脂と(2) に挙げた少なくともいずれかの充填材とからなり、前記充填材の含有率が5質量%以上50質量%以下である樹脂組成物で形成されていることを特徴とする。
(1) ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル。
(2) ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、アルミナ、ホウ酸アルミニウム、酸化チタン、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、アルミニウム、カーボンブラック、グラファイト。
【0007】
具体的には、下記の(a) 〜(e) のいずれかの樹脂組成物で前記ハウジングと前記ヒー トシンクを形成する。
(a) 70質量%のポリブチレンテレフタレート(PBT)と30質量%のガラス繊維からなる繊維強化樹脂と、アルミナとからなり、アルミナの含有率が10質量%以上20質量%以下である樹脂組成物。
(b) 70質量%のポリブチレンテレフタレート(PBT)と30質量%のガラス繊維からなる繊維強化樹脂と、ホウ酸アルミニウムまたはカーボンナノチューブとからなり、ホウ酸アルミニウムまたはカーボンナノチューブの含有率が5質量%以上20質量%以下である樹脂組成物。
(c) ポリフェニレンサルファイド(PPS)と、ガラス繊維と、アルミナとからなり、ガラス繊維の含有率が10質量%以上40質量%以下であり、アルミナの含有率が10質量%以上20質量%以下であり、ガラス繊維とアルミナの合計含有率が30質量%以上50質量%以下である樹脂組成物。
(d) ポリフェニレンサルファイド(PPS)と、炭素繊維と、アルミナとからなり、炭素繊維の含有率が15質量%以上40質量%以下であり、アルミナの含有率が5質量%以上10質量%以下であり、炭素繊維とアルミナの合計含有率が20質量%以上50質量%以下である樹脂組成物。
(e) ポリフェニレンサルファイド(PPS)と炭素繊維とからなり、炭素繊維の含有率が25質量%以上50質量%以下である樹脂組成物。
前記ハウジングおよびヒートシンクは、ECU一体型電動パワーステアリング装置の制御装置に要求される、放熱性と耐久性を満たすものとなる。
【発明の効果】
【0008】
この発明の電動パワーステアリング装置によれば、制御装置のハウジングおよびヒートシンクが、合成樹脂製で、要求される放熱性と耐久性を満たすものとなるため、信頼性を確保しながら電動パワーステアリング装置の軽量化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の一実施形態に相当する電動パワーステアリング装置を示す部分破断側面図である。
【図2】図1の電動パワーステアリング装置であって、減速機を取り付ける前の状態を示す正面図である。
【図3】図1の電動パワーステアリング装置を構成する制御装置の構成および電動モータを示す斜視図である。
【図4】制御装置のハウジングに対するヒートシンクの取付構造を示す図であって、図1のA−A断面図に相当する。
【図5】制御装置のハウジングの底板に設けたヒートシンクの取付部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施形態について説明する。
この実施形態の電動パワーステアリング装置は、図1に示すように、ステアリングシャフト1と、減速機2と、電動モータ3と、制御装置4と、レゾルバ5を有する。電動モータ3は、操舵トルクが伝達されるステアリングシャフト1に、減速機2を介して操舵補助力を伝達する。電動モータ3は制御装置4の下側に配置されている。
【0011】
電動モータ3は、ロータ31、ステータ32、ロータシャフト33、ケース34とからなる。電動モータ3のステータコア32aに電気的に接続されたバスバー端子35が、グロメット36に形成された穴を貫通して、電動モータ3の外部に引き出されている。
減速機2を構成するウォームの一端21が、ロータシャフト33に対して同軸上にスプライン構造で結合されている。
【0012】
制御装置4は、図3に示すように、電動モータ3を制御する回路基板41と、回路基板41を収容するハウジング42と、ヒートシンク43を有する。ハウジング42は、ケース421と蓋422とからなる。ヒートシンク43は、ケース421の下側の電動モータ3と干渉しない位置に配置されている。
ケース421は、上面が開放された直方体の箱状であり、2対の側板421a,421bと1つの底板421cとからなる。第1の側板421aは、ケース421の開口をなす長方形の長辺を構成し、第2の側板421bは短辺を構成する。この長方形の四隅と長辺の中心位置の内側面に、凸部421d,421eが形成されている。これらの凸部421d,421eに、蓋422をボルト71で結合するための雌ねじが形成されている。
【0013】
第1の側板421aの外面に、コネクタハウジング421f,421gが突設されている。ケース421の底板421cに、ヒートシンク43を取り付けるための凹部421hと貫通穴421jが形成されている。
ヒートシンク43は、本体43aと一対の取付爪43bとからなる。本体43aは、下面に複数列の溝が形成された直方体からなり、本体43aの上面に一対の取付爪43bが設けてある。ヒートシンク43をハウジング42に取り付ける際には、図4および5に示すように、ケース421の下側から底板421cの貫通穴421jに、取付爪43bを押し入れることで係止させ、凹部421hにヒートシンク43の本体43aの上面を接触させる。
【0014】
回路基板41には、凸部421d,421eを避ける切欠き41a,41bと、回路基板41をケース421に固定するボルト72を通す貫通穴41cが形成されている。回路基板41には、また、ヒートシンク43の取付爪43bが配置される部分に、これを避ける切欠き41dが形成されている。
蓋422は、ケース421の凸部421dに対応した取付面422aおよび凹部422bと、凸部421eに対応した取付面422cおよび凹部422dを有する。取付面422a,422cには、ボルト71の軸部を通す貫通穴が形成されている。
【0015】
制御装置4の組立時には、ケース421内に回路基板41を入れて、ボルト72で固定した後、ケース421の上に蓋422を載せて、取付面422a,422cの貫通穴に通したボルト71の雄ねじをケース421の雌ねじに螺合する。これにより、ハウジング42内に回路基板41が収容される。
制御装置4のケース421の下側に、減速機2のハウジング22と電動モータ3のケース34を取り付ける下垂部47が、一体に形成されている。下垂部47は、ケース34を挿入可能な円穴47aと、ケース421の底面と平行な円穴47aの径方向の両端に張り出した張出部47bを有する。両張出部47bには、図2に示すように、ハウジング22をボルトで取り付けるための雌ねじが形成されている。
【0016】
レゾルバ5は、レゾルバステータ51とレゾルバロータ52とからなる。レゾルバステータ51はレゾルバホルダ6の凹部61に収容されている。レゾルバロータ52はロータシャフト33に固定されている。レゾルバステータ51のセンサハーネス55が、制御装置4に接続されている。
図2に示すように、下垂部47の軸方向一端面には、レゾルバホルダ6の取付部62が入る凹部47cと、グロメット36が入る凹部47dが形成されている。
【0017】
電動モータ3を制御装置4の下垂部47に取り付ける際には、先ず、電動モータ3のケース34を下垂部47の円穴47aに挿入し、グロメット36を下垂部47の凹部47dに配置する。そして、電動モータ3のバスバー端子35を、制御装置4の端子台48のバスバー48aにボルト75で取り付ける。端子台48を露出させる開口48bが、ケース421の第2の側板421bから下垂部47にかけて形成されている。また、レゾルバホルダ6の取付部62を下垂部47の凹部47cに配置し、取付部62の貫通穴を通したボルト74を下垂部47の雌ねじに螺合する。図2は、この状態を示す。
【0018】
この状態で、減速機2のハウジング22に設けた貫通穴と、下垂部47の張出部47bに形成された雌ねじを合わせて、ボルトによりハウジング22を下垂部47に固定する。このようにして、電動モータ3のケース34と減速機2のハウジング22が制御装置4の下部に固定されている。
この実施形態の電動パワーステアリング装置では、制御装置4のハウジング42を構成するケース421(下垂部47を含む)および蓋422と、ヒートシンク43を、以下に示す合成樹脂と充填材とからなり、充填材の含有率が5質量%以上50質量%以下である樹脂組成物を射出成形したものとする。
【0019】
合成樹脂は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、および不飽和ポリエステルのいずれかである。
充填材は、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、アルミナ、ホウ酸アルミニウム、酸化チタン、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、アルミニウム、カーボンブラック、およびグラファイトの少なくともいずれかである。これらを含む充填材の形状と熱伝導率を下記の表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
この実施形態の電動パワーステアリング装置によれば、制御装置4のハウジング42およびヒートシンク43が、合成樹脂製で、要求される放熱性および耐久性を満たすようにできるため、信頼性を確保しながら電動パワーステアリング装置の軽量化を図ることができる。
【実施例】
【0022】
[実施例1]
従来のECU一体型電動パワーステアリング装置を用意し、試験片を使用して、樹脂製ハウジングおよび樹脂製ヒートシンクの耐久試験を行った。従来のECU一体型電動パワーステアリング装置の制御装置は、アルミニウム製のハウジングを有する。そのハウジングの底面に回路基板を露出させる穴を設け、この穴にハウジング用の板状試験片を嵌めて固定した。また、この板状試験片に接触してハウジングの下側にぶら下がるように、ヒートシンク用の櫛形試験片をハウジングに固定した。
【0023】
両試験片を作製するために、ガラス繊維(GF)を30質量%含有する繊維強化ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)と、シリカ(SiO2 )充填材と、アルミナ(Al2 3 )充填材と、窒化ホウ素(BN)充填材と、カーボンナノチューブ(CNT)充填材として、以下に示すものを用意した。
繊維強化PBT:東レ(株)製「トレコン1101G−30」
シリカ充填材:宇部日東化成(株)製「ハイプレシカSS」
アルミナ充填材:昭和電工(株)製「ASグレード」
窒化ホウ素充填材:FNC製「FE−BN」
CNT充填材:昭和電工(株)製「VGCF」
用意した材料を表2〜5の割合で混合して樹脂組成物を得た。具体的には、Vブレンダーを使用した乾式混合を行った。得られた各樹脂組成物を通常の方法(溶融後に冷却して切断する方法)でペレット化した。
【0024】
得られた各ペレットを乾燥させた(120℃の恒温槽で5〜8時間保持、または140℃の恒温槽で4〜6時間保持)後、インラインスクリュー式射出成形機に供給し、下記の条件で射出成形することで、ハウジング用の板状試験片と、ヒートシンク用の櫛形試験片を得た。なお、PBTは、熱履歴を受けると少量の水分でも加水分解反応が生じて分子量が低下し、物性低下の原因となるため、前述のような乾燥工程を行う必要がある。
【0025】
<射出成形条件>
シリンダ設定温度:240〜265℃
金型温度:60〜80℃
射出速度:50%
射出圧力:98MPa
得られた各試験片を上述のように従来の電動パワーステアリング装置に取り付けて、実際の自動車に組み込み、雰囲気温度を80℃にコントロールして、10万回の操舵する耐久試験を行った。試験中、ヒートシンク用の櫛形試験片の温度を計測した。10万回の操舵が終わるまで試験片の温度が120℃以下であった場合を「合格:○」とした。途中で120℃を超えた場合は、その時点で試験を打ち切って「不合格:×」とした。その結果を表2〜5に示す。
【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
【表4】

【0029】
【表5】

【0030】
この例では、ガラス繊維を30%含有する繊維強化PBTに各充填材を添加しているため、PBTの含有率は、充填材の含有率が5質量%、10質量%、15質量%、20質量%の時、それぞれ66.5質量%、63質量%、59.5質量%、56質量%である。
この結果から分かるように、シリカ充填材を含有する樹脂組成物の場合は、含有率を20質量%としても試験に不合格であった。これは、表1に示すように、シリカ充填材の熱伝導率が3〜5W/mKと低いことに起因する。
【0031】
これに対して、熱伝導率が36W/mKであるアルミナ充填材を含有する樹脂組成物の場合は、含有率を10質量%以上とすることで試験に合格した。また、熱伝導率が210W/mKである窒化ホウ素充填材を含有する樹脂組成物の場合と、熱伝導率が1200W/mKであるカーボンナノチューブ充填材を含有する樹脂組成物の場合は、含有率を5質量%以上とすることで試験に合格した。
【0032】
この結果から、70質量%のポリブチレンテレフタレート(PBT)と30質量%のガラス繊維からなる繊維強化樹脂と、アルミナとからなり、アルミナの含有率が10質量%以上20質量%以下である樹脂組成物を使用することで、制御装置のハウジングおよびヒートシンクが、ECU一体型電動パワーステアリング装置の制御装置に要求される、放熱性と耐久性を満たすものとなることが分かる。
【0033】
また、70質量%のポリブチレンテレフタレート(PBT)と30質量%のガラス繊維からなる繊維強化樹脂と、ホウ酸アルミニウムまたはカーボンナノチューブとからなり、ホウ酸アルミニウムまたはカーボンナノチューブの含有率が5質量%以上20質量%以下である樹脂組成物を使用することで、制御装置のハウジングおよびヒートシンクが、ECU一体型電動パワーステアリング装置の制御装置に要求される、放熱性と耐久性を満たすものとなることが分かる。
【0034】
[実施例2]
実施例1と同じ耐久試験用の両試験片を作製するために、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)と、ガラス繊維(GF)と、炭素繊維(CF)と、アルミナ(Al2 3 )充填材として、以下に示すものを用意した。
PPS:ポリプラスチック(株)製「フォートロン0220A9」
ガラス繊維:富士ファイバーグラス(株)製「FESグレード」
炭素繊維(PAN系):東邦テナックス(株)製「テナックス」のチョップドファイバー「HT C603」
アルミナ充填材:昭和電工(株)製「ASグレード」
用意した材料を表6および7の割合で混合して樹脂組成物を得た。具体的には、Vブレンダーを使用した乾式混合を行った。得られた各樹脂組成物を通常の方法(溶融後に冷却して切断する方法)でペレット化した。
得られた各ペレットをインラインスクリュー式射出成形機に供給し、下記の条件で射出成形することで、ハウジング用の板状試験片と、ヒートシンク用の櫛形試験片を得た。
【0035】
<射出成形条件>
シリンダ設定温度:315℃
金型温度:140℃
射出速度:40%
射出圧力:100〜120MPa
得られた各試験片を実施例1と同様に、従来の電動パワーステアリング装置に取り付けて、実際の自動車に組み込み、雰囲気温度を80℃にコントロールして、10万回の操舵する耐久試験を行った。試験中、ヒートシンク用の櫛形試験片の温度を計測した。10万回の操舵が終わるまで試験片の温度が120℃以下であった場合を「合格:○」とした。途中で120℃を超えた場合は、その時点で試験を打ち切って「不合格:×」とした。その結果を表6および7に示す。
【0036】
【表6】

【0037】
【表7】

【0038】
この結果から分かるように、PPS単独の場合と、PPSとガラス繊維を含みアルミナを含まない樹脂組成物の場合は、試験に不合格であった。また、PPSとガラス繊維とアルミナを含む場合でも、アルミナの含有率が5質量%である樹脂組成物の場合は、試験に不合格であった。また、PPSとガラス繊維とアルミナを含む場合、アルミナの含有率が10質量%以上である樹脂組成物の場合は、試験に合格した。
【0039】
また、PPSと炭素繊維とアルミナを含む場合、アルミナの含有率が5質量%以上で、炭素繊維とアルミナの合計含有率が20質量%以上である樹脂組成物の場合は、試験に合格した。さらに、充填材として炭素繊維を含む場合は、アルミナを含まない場合でも、炭素繊維30質量%以上である樹脂組成物の場合は、試験に合格した。
この結果から、ポリフェニレンサルファイド(PPS)と、ガラス繊維と、アルミナとからなり、ガラス繊維の含有率が10質量%以上40質量%以下であり、アルミナの含有率が10質量%以上20質量%以下であり、ガラス繊維とアルミナの合計含有率が30質量%以上50質量%以下である樹脂組成物を使用することで、制御装置のハウジングおよびヒートシンクが、ECU一体型電動パワーステアリング装置の制御装置に要求される、放熱性と耐久性を満たすものとなることが分かる。
【0040】
また、ポリフェニレンサルファイド(PPS)と、炭素繊維と、アルミナとからなり、炭素繊維の含有率が15質量%以上40質量%以下であり、アルミナの含有率が5質量%以上10質量%以下であり、炭素繊維とアルミナの合計含有率が20質量%以上50質量%以下である樹脂組成物を使用することで、制御装置のハウジングおよびヒートシンクが、ECU一体型電動パワーステアリング装置の制御装置に要求される、放熱性と耐久性を満たすものとなることが分かる。
【0041】
また、ポリフェニレンサルファイド(PPS)と炭素繊維とからなり、炭素繊維の含有率が25質量%以上50質量%以下である樹脂組成物を使用することで、制御装置のハウジングおよびヒートシンクが、ECU一体型電動パワーステアリング装置の制御装置に要求される、放熱性と耐久性を満たすものとなることが分かる。
【符号の説明】
【0042】
1 ステアリングシャフト
2 減速機
21 ウォームの一端
3 電動モータ
31 ロータ
32 ステータ
33 ロータシャフト
34 ケース
35 バスバー端子
36 グロメット
4 制御装置
41 回路基板
41a,41b 切欠き
41c 貫通穴
41d 切欠き
42 ハウジング
421 ケース(ハウジング)
421a 第1の側板
421b 第2の側板
421d,421e 凸部
421f,421g コネクタハウジング
421c ケースの底板
421h 凹部
421j 貫通穴
422 蓋(ハウジング)
422a 取付面
422b 凹部
422c 取付面
422d 凹部
43 ヒートシンク
43a ヒートシンクの本体
43b ヒートシンクの取付爪
47c レゾルバホルダの取付部が入る凹部
47d グロメットが入る凹部
47 ケース下側の下垂部
47a 円穴
47b 張出部
48 端子台
48a バスバー
48b 端子台を露出させる開口
5 レゾルバ
51 レゾルバステータ
52 レゾルバロータ
55 センサハーネス
6 レゾルバホルダ
61 レゾルバホルダの凹部
62 レゾルバホルダの取付部
71 ボルト
72 ボルト
74 ボルト
75 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵トルクが伝達されるステアリングシャフトに減速機を介して操舵補助力を伝達する電動モータと、前記電動モータを制御する回路基板がハウジングに収容されている制御装置とを有し、前記電動モータと前記制御装置が隣接配置されている電動パワーステアリング装置であって、
前記制御装置は前記回路基板の熱を放散させるヒートシンクを有し、
前記ハウジングと前記ヒートシンクは、
ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、および不飽和ポリエステルのいずれかの合成樹脂と、
ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、アルミナ、ホウ酸アルミニウム、酸化チタン、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、アルミニウム、カーボンブラック、およびグラファイトの少なくともいずれかの充填材とからなり、前記充填材の含有率が5質量%以上50質量%以下である樹脂組成物で形成されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記樹脂組成物は、70質量%のポリブチレンテレフタレート(PBT)と30質量%のガラス繊維からなる繊維強化樹脂と、アルミナとからなり、アルミナの含有率が10質量%以上20質量%以下である請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記樹脂組成物は、70質量%のポリブチレンテレフタレート(PBT)と30質量%のガラス繊維からなる繊維強化樹脂と、ホウ酸アルミニウムまたはカーボンナノチューブとからなり、ホウ酸アルミニウムまたはカーボンナノチューブの含有率が5質量%以上20質量%以下である請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記樹脂組成物は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)と、ガラス繊維と、アルミナとからなり、ガラス繊維の含有率が10質量%以上40質量%以下であり、アルミナの含有率が10質量%以上20質量%以下であり、ガラス繊維とアルミナの合計含有率が30質量%以上50質量%以下である請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記樹脂組成物は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)と、炭素繊維と、アルミナとからなり、炭素繊維の含有率が15質量%以上40質量%以下であり、アルミナの含有率が5質量%以上10質量%以下であり、炭素繊維とアルミナの合計含有率が20質量%以上50質量%以下である請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
前記樹脂組成物は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)と炭素繊維とからなり、炭素繊維の含有率が25質量%以上50質量%以下である請求項1記載の電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−91474(P2013−91474A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236256(P2011−236256)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】