説明

電動式作業車両

【課題】従来の電動式作業車両で左右の走行輪を個別駆動可能とした場合、比較的重いPTO用電動モータの位置によってはゼロターンを行う際の安定性が悪く、十分な旋回性能の向上が図れない、という問題があった。
【解決手段】左右の走行輪3L・3Rを個別に駆動する左右の走行用電動モータ4L・4Rと、該左右の走行用電動モータ4L・4Rを有する車軸電動装置5L・5Rと、該車軸電動装置5L・5Rを下方に取り付ける車体フレーム2と、作業機であるモア装置16を駆動するPTO用電動モータ19とを備えた電動式作業車両1において、前記PTO用電動モータ19の少なくとも一部が、前記左右の走行用電動モータ4L・4Rの間を占めるモータ間空間40と重なるように、PTO用電動モータ19を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右の走行輪を個別に駆動する左右の走行用電動モータと、該左右の走行用電動モータを有する車軸電動装置と、該車軸電動装置を下方に取り付ける車体フレームと、作業機を駆動するPTO用電動モータとを備えた電動式作業車両に関し、特に、前記PTO用電動モータの配置構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の乗用芝刈機等の作業車両においては、エンジンからの動力により左右の走行輪を個別に駆動する左右の車軸駆動装置と、同じくエンジンからの動力により作業機を駆動するPTO出力軸とを備える第一の技術が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。このように、個別駆動可能な左右の車軸駆動装置を備えることにより、作業車両のコンパクト化や、作業機の十分な搭載スペースの確保を図り、更には、左右の走行輪を互いに逆方向に回転させて旋回径を縮小し、いわゆるゼロターンを可能として、旋回性能の向上を図っている。
【0003】
しかし、このエンジン駆動による作業車両(以下、「エンジン駆動式作業車両」とする)では、エンジン以外にもラジエータやマフラー等の多くの関連する装置・部材が必要となって車両重量が増加し、更に、エンジンの振動・騒音・排気ガス等によって作業環境が悪化することから、近年、車両の軽量化や作業環境の改善が強く求められている。
【0004】
そこで、電動モータ駆動による作業車両(以下、「電動式作業車両」とする)に関する技術、特に、バッテリからの電力により左右の走行輪を駆動する単一の走行用電動モータと、同じくバッテリからの電力により作業機を駆動するPTO用電動モータとを備える第二の技術(例えば、特許文献2参照)において、走行用電動モータを、前記第一の技術の如く個別駆動可能に左右に別々に配置する対応が考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−153130号公報
【特許文献2】特開2002−356116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記第二の技術の電動式作業車両の場合、エンジンやそれに関連する装置・部材等が省かれて軽量化が進み、作業車両の走行時・旋回時の重量バランスに及ぼす、比較的重いPTO用電動モータの影響が増えているにもかかわらず、該PTO用電動モータは、駆動輪である後輪から離間した作業車両前部で車体フレーム上に配置されている。そのため、前記ゼロターンを行う際の安定性が悪く、せっかく左右の走行輪を個別駆動可能に構成しても十分な旋回性能の向上が図れない、という問題があった。
【0007】
更に、前記PTO用電動モータによって駆動する作業機がモア装置等であって車体フレームよりも下方に配置されている場合には、前記PTO用電動モータから作業機までの動力伝達経路が長くなる。そのため、動力伝達ロスが大きく、エンジンに比べて出力トルクの小さいPTO用電動モータでは、作業機への入力が不足して作業能力が低下する、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、左右の走行輪を個別に駆動する左右の走行用電動モータと、該左右の走行用電動モータを有する車軸電動装置と、該車軸電動装置を下方に取り付ける車体フレームと、作業機を駆動するPTO用電動モータとを備えた電動式作業車両において、前記PTO用電動モータの少なくとも一部が、前記左右の走行用電動モータの間を占めるモータ間空間と重なるように、PTO用電動モータを配置したものである。
請求項2においては、前記車軸電動装置は、左右の車軸電動装置から構成し、該左右の車軸電動装置は、それぞれに前記左右の走行用電動モータを有すると共に、前記左右の車軸電動装置の間は、連結部材にて連結し、該連結部材に、前記PTO用電動モータを有するPTO電動装置を設けるものである。
請求項3においては、前記車軸電動装置は、左右の車軸電動装置から構成し、該左右の車軸電動装置は、それぞれに前記左右の走行用電動モータを有すると共に、前記左右の車軸電動装置の間は、前記PTO用電動モータを収容するPTOケースにて連結するものである。
請求項4においては、前記PTOケースを介して、前記左右の車軸電動装置を車体フレームに取り付けるものである。
請求項5においては、前記PTOケースの上に、前記左右の走行用電動モータとPTO用電動モータとに電力を供給するためのバッテリを搭載するものである。
請求項6においては、前記車軸電動装置は、単一の車軸電動装置から構成し、該車軸電動装置の車軸ケースには、前記左右の走行用電動モータとPTO用電動モータを収容するものである。
請求項7においては、前記車軸ケースに単一の貫通孔を穿設し、該貫通孔に、前記走行用電動モータとPTO用電動モータを制御する複数の電線を集約して挿通するものである。
請求項8においては、前記車軸ケースから前記PTO用電動モータのモータ軸の軸端を突出し、該軸端に冷却ファンを固設するものである。
請求項9においては、前記作業機は、前記車体フレームの下面に装着したモア装置であり、該モア装置で刈り取った芝草を収容する集草ボックスと、該集草ボックスと前記モア装置との間を連通する排出ダクトとを備えると共に、該排出ダクトは、前記モータ間空間の一部または前記モータ間空間よりも上方を通過するものである。
請求項10においては、左右の走行輪を個別に駆動する左右の走行用電動モータと、該左右の走行用電動モータを有する車軸電動装置と、該車軸電動装置を下方に取り付ける車体フレームと、作業機を駆動するPTO用電動モータとを備えた電動式作業車両において、前記車軸電動装置は、左右の車軸電動装置から構成し、該左右の車軸電動装置は、それぞれに前記左右の走行用電動モータを有すると共に、前記左右の車軸電動装置の間は、連結部材にて連結し、該連結部材に、前記PTO用電動モータを有するPTO電動装置を設けたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1により、左右の走行輪と車軸電動装置等から成る駆動部の重心近くに、前記PTO用電動モータを配置することができ、走行時・旋回時の重量バランスを改善してゼロターンを行う際の安定性を確保し、十分な旋回性能の向上を図ることができる。更に、作業機がモア装置等であって車体フレームよりも下方に配置されている場合には、この車体フレームの下方空間を利用して、PTO用電動モータから作業機までの動力伝達経路を直線的に設けることができ、該動力伝達経路を短縮して動力伝達ロスを小さくし、PTO用電動モータからの入力不足による作業能力の低下を防止することができる。
請求項2により、前記連結部材と、該連結部材に設けられたPTO電動装置とによって、左右の車軸電動装置間の剛性を高めることができ、車両の走行安定性と、それに伴う作業能力の向上を図ることができる。更に、前記左右の車軸電動装置とPTO電動装置を一体のアセンブリーとして取り扱うことができ、組付け性・メンテナンス性の向上を図ることができる。
請求項3により、前記PTOケースを利用して左右の車軸電動装置間の剛性を高めることができ、車両の走行安定性、及びそれに伴う作業能力の向上を図ることができる。更に、左右の車軸電動装置間の連結部材を別途に設ける必要がなく、部品コストの低減と組付け性・メンテナンス性の向上を図ることができる。
請求項4により、前記左右の車軸電動装置と車体フレームとの間の取付部材を別途に設ける必要がなく、更なる、部品コストの低減と組付け性・メンテナンス性の向上を図ることができる。
請求項5により、前記PTOケースの上方空間の有効利用により、バッテリ搭載に必要な空間を別途に設ける必要がなくなり、車両のコンパクト化を図ることができる。更に、左右の走行輪と車軸電動装置等から成る駆動部の重心近くに、前記PTO用電動モータに加えて重量が重いバッテリも配置することができ、走行時・旋回時の重量バランスを改善してゼロターンを行う際の安定性を確保し、更なる旋回性能の向上を図ることができる。
請求項6により、前記車軸ケースを利用し、左右の車軸電動装置を一体化して剛性を高めることができ、車両の走行安定性、及びそれに伴う作業能力の向上を図ることができる。更に、左右の車軸電動装置間の連結部材や、前記PTO用電動モータを収容するPTOケースを別途に設ける必要がなく、部品コストの低減と組付け性・メンテナンス性の向上を図ることができる。加えて、車軸電動装置の潤滑油をPTO用電動モータの冷却にも利用することができ、該PTO用電動モータの発熱を抑制して、駆動効率や機器寿命の向上を図ることができる。
請求項7により、電線集約により配線用部材を減少することができ、部品コストの低減と組付け性・メンテナンス性の向上を図ることができる。更に、貫通孔数の減少により車軸ケースからの油漏れの可能性を小さくすることができ、油量減少による発熱抑制効果の低下を防止することができる。
請求項8により、PTO用電動モータによる作業機駆動時のみに、前記冷却ファンを略一定速度で回転駆動し、稼働状況に応じてPTO用電動モータを空冷することができ、省電力によるランニングコストの低減を図ることができる。更に、前記冷却ファンにより、前記左右の走行用電動モータとPTO用電動モータとを冷却する共通の潤滑油を、車軸ケースぐるみ空冷することができ、左右の走行用電動モータの潤滑油のための空冷装置を別途に設ける必要がなく、部品コストの低減と組付け性・メンテナンス性の向上を図ることができる。
請求項9により、前記モータ間空間またはその上方空間の有効利用により、排出ダクト配設に必要な空間を別途に設ける必要がなくなり、更なる、車両のコンパクト化を図ることができる。
請求項10により、左右の走行輪と車軸電動装置等から成る駆動部の重心近くに、前記PTO用電動モータを配置することができ、該PTO用電動モータを、左右の走行用電動モータの間を占めるモータ間空間と重なる位置に配置する場合には劣るものの、走行時・旋回時の重量バランスを改善してゼロターンを行う際の安定性を高め、旋回性能の向上を図ることができる。更には、前記連結部材と、該連結部材に設けられたPTO電動装置とによって、左右の車軸電動装置間の剛性を高めることができ、車両の走行安定性と、それに伴う作業能力の向上を図ることができる。加えて、前記左右の車軸電動装置とPTO電動装置を一体のアセンブリーとして取り扱うことができ、組付け性・メンテナンス性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1に関わる乗用芝刈機の全体構成を示す側面図である。
【図2】同じく平面一部断面図である。
【図3】同じく正面一部断面図である。
【図4】実施例2に関わる乗用芝刈機1Aの正面一部断面図である。
【図5】実施例2に関わる乗用芝刈機1Bの正面一部断面図である。
【図6】実施例2に関わる乗用芝刈機1Cの正面一部断面図である。
【図7】実施例3に関わる乗用芝刈機1Dの正面一部断面図である。
【図8】同じく車軸電動装置の左半部の平面断面図である。
【図9】同じく車軸電動装置の略中央部の正面断面図である。
【図10】実施例4に関わる乗用芝刈機1Eにおける車軸電動装置の左半部の平面断面図である。
【図11】同じく車軸電動装置の左半部の正面断面図である。
【図12】実施例5に関わる乗用芝刈機1Fの側面図である。
【図13】同じく平面一部断面図である。
【図14】実施例6に関わる乗用芝刈機1Gの側面図である。
【図15】同じく平面一部断面図である。
【図16】同じく正面一部断面図である。
【図17】実施例7に関わる乗用芝刈機1Hの側面図である。
【図18】同じく正面一部断面図である。
【図19】実施例2に関わる乗用芝刈機145の平面一部断面図である。
【図20】同じく正面一部断面図である。
【図21】実施例7に関わる乗用芝刈機157の側面図である。。
【図22】ロータ72Aの放熱口の形態を示す図であって、図22(a)はロータ72Aの側面図、図22(b)は図22(a)のA−A矢視断面図である。
【図23】ロータ72Bの放熱口の形態を示す図であって、図23(a)はロータ72Bの側面図、図23(b)は図23(a)のA0−A0矢視断面図である。
【図24】ロータ72Cの放熱口の形態を示す図であって、図24(a)はロータ72Cの側面図、図24(b)は図24(a)のA1−A1矢視断面図である。
【図25】ロータ72Dの放熱口の形態を示す図であって、図25(a)はロータ72Dの側面図、図25(b)は図25(a)のA2−A2矢視断面図である。
【図26】ロータ72Eの放熱口の形態を示す図であって、図26(a)はロータ72Eの側面図、図26(b)は図26(a)のA3−A3矢視断面図である。
【図27】ロータ72の放熱口の形態を示す図であって、図27(a)はロータ72の側面図、図27(b)は図27(a)のB−B矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、図中の矢印Fで示す方向を電動式作業車両である乗用芝刈機1等の前方向、矢印Rで示す方向を乗用芝刈機1等の右方向とし、以下で述べる各部材の位置や方向等は、この前方向と右方向を基準とするものである。
【実施例1】
【0012】
まず、本発明の実施例1に関わる乗用芝刈機1の全体構成について、図1乃至図3により説明する。
該乗用芝刈機1は、前後方向に縦長状の車体フレーム2を有し、該車体フレーム2の後部の左右外側には、後輪としての左右の走行輪3L・3Rが配置される。そして、該走行輪3L・3Rを個別に駆動する左右の走行用電動モータ4L・4Rが、前記車体フレーム2の後部下方に取り付けた左右の車軸電動装置5L・5Rに設けられている。そして、これら走行輪3L・3R、車軸電動装置5L・5R等から、後輪駆動のための駆動部43が構成される。
【0013】
このうちの左の車軸電動装置5Lは、後で詳述する前記走行用電動モータ4Lや減速ギア列67等が、車軸ケース7L内に収容されて構成される。そして、該車軸ケース7Lに車軸6が回転自在に支持され、該車軸6の外端上にハブ8が固設され、該ハブ8は前記走行輪3Lのリム3Laに装着されており、走行輪3Lの中心軸となる車軸6が車軸ケース7Lに回転自在に支持されている。右の車軸電動装置5Rについても同様に、車軸ケース7Rに車軸6が回転自在に支持され、該車軸6の外端上にハブ8が固設され、該ハブ8は前記走行輪3Rのリム3Raに装着されており、走行輪3Rの中心軸となる車軸6が車軸ケース7Rに回転自在に支持されている。
【0014】
前記車体フレーム2上には、前から順に、ボンネット9、ダッシュボード9a、プラットフォーム10、及び運転席11が支持され、前記ダッシュボード9aの足元には、アクセルペダル12が設けられると共に、ダッシュボード9aの上部からは、丸形ハンドル13が上方に延設されている。なお、該丸形ハンドル13に代えて、図1に示すような、走行速度の変速と操舵を兼用可能な左右の操縦レバー14L・14Rを設けてもよく、作業者による操作量と操作方向を電気信号に変えて前記走行用電動モータ4L・4Rに確実に送信可能な操作具であれば、特に限定されるものではない。
【0015】
前記アクセルペダル12は、作業者にて踏込み操作され、その踏み込み量に応じて、前記走行用電動モータ4L・4Rの出力回転数を増減し、左右の走行輪3L・3Rを同時均等に増減速して、乗用芝刈機1の走行速度を制御する。一方、前記丸形ハンドル13は、作業者にて回動操作され、その回動量と回動方向に応じて、前記走行用電動モータ4L・4Rの出力回転数に違いを生じさせ、左右の走行輪3L・3Rを差動して、乗用芝刈機1の旋回方向を制御する。
【0016】
前記車体フレーム2において、前後方向に配置された左右の側板部2bは、その前端間が前板部2aによって連結され、該前板部2aの左右各端に、それぞれ前輪15が支持されている。該左右の前輪15は、いずれも鉛直枢支軸15aを備え、該鉛直枢支軸15aは、前記前板部2aの左右端に設けたボス部2cに相対回転自在に挿通されており、左右の前輪15が乗用芝刈機1の直進・旋回に追従して水平回転できるようにしている。
【0017】
また、このような構成の乗用芝刈機1には、前記車体フレーム2の下方で前記車軸電動装置5L・5Rの前方に、作業機である3連ブレード式のモア装置16が設けられている。なお、該モア装置16は、後述するような2連ブレード式であってもよく、その駆動形式は特に限定されるものではない。
該モア装置16は、3連のブレード18a・18b・18cと、該ブレード18a・18b・18cを内装するモアデッキ17と、該モアデッキ17の前部で左右両端と中央に取り付けたゲージ輪21とを備えると共に、図示せぬ吊下リンクを介して、前記車体フレーム2の下方に昇降自在に支持されている。これにより、前記ゲージ輪21でモア装置16の高さを調節して、回転するブレード18a・18b・18cの高さを変え、芝生の刈取高さを変更できるようにしている。
【0018】
なお、該ブレード18a・18b・18cを駆動するPTO用電動モータ19は、後述する配置構成に従って配置されると共に、前記運転席11近傍に設けたモア操作具108によって入切操作可能としている。
【0019】
更に、前記モアデッキ17後部の左右略中央からは、排出ダクト22が後斜め上方に延出され、該排出ダクト22は、前記車体フレーム2の後部に設けた集草ボックス23と連通されている。これにより、前記ブレード18a・18b・18cで刈り取った刈取芝が、モア装置16から排出ダクト22を経由して集草ボックス23に収容される。
【0020】
また、前記左右の走行輪3L・3Rを駆動する走行用電動モータ4L・4R、及び前記モア装置16の3連のブレード18a・18b・18cを駆動するPTO用電動モータ19の電源として、二次電池や燃料電池等のバッテリ24が、車体フレーム2の前部上方のボンネット9内に設けられており、車体フレーム2の後部下方に取り付けた前記車軸電動装置5L・5Rとの前後重量バランスを確保できるようにしている。
【0021】
次に、前記車軸電動装置5L・5Rの支持構成、PTO用電動モータ19の配置構成について、図1乃至図3、図19、図20により詳細に説明する。
図1乃至図3に示すように、車軸電動装置5L・5Rは、乗用芝刈機1の車体フレーム2の前記左右の側板部2bの下方に配置されると共に、この車軸電動装置5L・5Rのそれぞれの前記車軸ケース7L・7Rと、前記左右の側板部2bとの間には、それぞれ左右のサブフレーム25L・25Rが介設されている。
【0022】
前記左のサブフレーム25Lは、前後方向に延伸する正面視L字状の連結部25Laと、左右方向に延伸する三角板状の補強部25Lbとから構成され、該補強部25Lbは、前記連結部25Laの後端に、鉛直下方に延伸するようにして固着されており、この補強部25Lbによってサブフレーム25Lの強度を高めるようにしている。
【0023】
そして、前記連結部25Laの上面左右内端からは、ボルト孔を有する前後一対のタブ25Lcが上方に突設され、該タブ25Lcは、前記車体フレーム2の側板部2bに、ボルト41によって締結される。一方、前記連結部25Laの側面下端からも、ボルト孔を有する前後一対のタブ25Ldが左外方に突設され、該タブ25Ldは、前記左の車軸ケース7Lの左端部上面に、ボルト41によって締結されている。
【0024】
同様に、右のサブフレーム25Rも、前後方向に延伸する正面視L字状の連結部25Raと、左右方向に延伸する三角板状の補強部25Rbとから構成され、該補強部25Rbによってサブフレーム25Rの強度を高めている。そして、前記連結部25Raの上面左右内端からも、ボルト孔を有する前後一対のタブ25Rcが上方に突設され、該タブ25Rcは、前記車体フレーム2の側板部2bにボルト41によって締結される。一方、前記連結部25Raの側面下端からも、ボルト孔を有する前後一対のタブ25Rdが右外方に突設され、該タブ25Rdは、前記右の車軸ケース7Rの右端部上面にボルト41によって締結されている。
【0025】
これにより、前記車軸電動装置5L・5Rは、車体フレーム2の左右の側板部2bの後部に、高い強度を有するサブフレーム25L・25Rを介して、複数のボルト41により着脱自在に装着することができる。
【0026】
また、このようにして車体フレーム2に支持された左右の車軸電動装置5L・5Rのうち、左の車軸電動装置5Lにおいては、その車軸ケース7Lの左右内端部には、前後一対のボス部7Laが左右内側に向かって水平に延出して形成されると共に、右の車軸電動装置5Rにおいても、その車軸ケース7Rの左右内端部には、前後一対のボス部7Raが左右内側に向かって水平に延出して形成されている。そして、該前後一対のボス部7Raと前記前後一対のボス部7Laとの間に、連結部材26が介設されている。
【0027】
該連結部材26は、前後方向に延伸する水平板状に形成されると共に、連結部材26の左右外端部には、それぞれ前後一対のボルト孔が開口され、前記ボス部7La・7Raにも、それぞれボルト孔が開口されており、ボルト27とナット28によって、左右の車軸電動装置5L・5Rが連結部材26に締結されている。
【0028】
更に、該連結部材26の平面視略中央には、前記PTO用電動モータ19を有するPTO電動装置20が設けられている。該PTO電動装置20においては、前記PTO用電動モータ19がPTOケース29に収容され、該PTOケース29を前記連結部材26に載置して複数のボルト38で締結することにより、連結部材26にPTO電動装置20が固定されている。
【0029】
これにより、前記車軸電動装置5L・5Rの間を、連結部材26を介して連結すると共に、該連結部材26に、前記PTO電動装置20を設けるようにしている。
【0030】
この際、該PTO電動装置20のPTO用電動モータ19は、該PTO用電動モータ19の少なくとも一部が、前記走行用電動モータ4L・4Rの鉛直方向で最外位置にある縁部の間を連結して成る接続面によって囲まれる空間(以下、「モータ間空間」とする)40と重なる位置に設定されている。
【0031】
該モータ間空間40の左右両側には、重い走行用電動モータ4L・4Rが配置されていることから、このモータ間空間40の左右略中央位置に、前記駆動部43の重心が存在すると共に、該重心の近傍に、前記PTO用電動モータ19を配置することができる。
【0032】
ここで、前記PTOケース29の下方には、モータ軸34が突出され、該モータ軸34の下端部に、PTO出力プーリ30が固設されている。一方、前記ブレード18a・18b・18cには、それぞれ駆動軸39a・39b・39cが固設され、該駆動軸39a・39b・39cは、いずれもモアデッキ17から上方に突出されており、その突出部には、駆動軸39aでは上下二連のプーリ31a・31bが固設され、駆動軸39bでは上下二連のプーリ32a・32bが固設され、駆動軸39cでは単一のプーリ33が固設されている。
【0033】
そして、前記PTO出力プーリ30と上プーリ31aとの間にはベルト35が巻回され、下プーリ31bと下プーリ32bとの間にはベルト36が巻回され、上プーリ32aとプーリ33との間にはベルト37が巻回されており、前記PTO用電動モータ19からのPTO動力が、モータ軸34から、PTO出力プーリ30、ベルト35、上プーリ31a、下プーリ31b、ベルト36、下プーリ32b、上プーリ32a、ベルト37、プーリ33の順に伝達され、前記ブレード18a・18b・18cを同時に回転駆動するようにしている。
【0034】
前記モータ軸34から上プーリ31aまでの動力伝達経路44は、前記車体フレーム2よりも下方のモータ間空間40や、その下方空間を利用して配置できるため、動力伝達経路44は、PTO用電動モータ19からモア装置16まで直線的に設けることができる。
【0035】
すなわち、左右の走行輪3L・3Rを個別に駆動する左右の走行用電動モータ4L・4Rと、該左右の走行用電動モータ4L・4Rを有する車軸電動装置5L・5Rと、該車軸電動装置5L・5Rを下方に取り付ける車体フレーム2と、作業機であるモア装置16を駆動するPTO用電動モータ19とを備えた電動式作業車両である乗用芝刈機1において、前記PTO用電動モータ19の少なくとも一部が、前記左右の走行用電動モータ4L・4Rの間を占めるモータ間空間40と重なるように、PTO用電動モータ19を配置したので、左右の走行輪3L・3Rと車軸電動装置5L・5R等から成る駆動部43の重心近くに、前記PTO用電動モータ19を配置することができ、走行時・旋回時の重量バランスを改善してゼロターンを行う際の安定性を確保し、十分な旋回性能の向上を図ることができる。更に、作業機がモア装置16等であって車体フレーム2よりも下方に配置されている場合には、この車体フレーム2の下方空間を利用して、PTO用電動モータ19からモア装置16までの動力伝達経路44を直線的に設けることができ、該動力伝達経路44を短縮して動力伝達ロスを小さくし、PTO用電動モータ19からの入力不足による作業能力の低下を防止することができる。
【0036】
更に、前記車軸電動装置は、左右の車軸電動装置5L・5Rから構成し、該左右の車軸電動装置5L・5Rは、それぞれに前記左右の走行用電動モータ4L・4Rを有すると共に、前記左右の車軸電動装置5L・5Rの間は、連結部材26にて連結し、該連結部材26に、前記PTO用電動モータ19を有するPTO電動装置20を設けるので、前記連結部材26と、該連結部材26に設けられたPTO電動装置20とによって、左右の車軸電動装置5L・5R間の剛性を高めることができ、車両の走行安定性と、それに伴う作業能力の向上を図ることができる。更に、前記左右の車軸電動装置5L・5RとPTO電動装置20を一体のアセンブリーとして取り扱うことができ、組付け性・メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0037】
また、前記排出ダクト22は、前述したモータ間空間40の上方を通過するように配置されている。これにより、排出ダクト22が前記PTO用電動モータ19や連結部材26と大きく干渉することなく、また、PTO用電動モータ19よりも下方にあるモア装置16等の作業機とは全く干渉することがない。
【0038】
すなわち、 前記作業機は、前記車体フレーム2の下面に装着したモア装置16であり、該モア装置16で刈り取った芝草を収容する集草ボックス23と、該集草ボックス23と前記モア装置16との間を連通する排出ダクト22とを備えると共に、該排出ダクト22は、前記モータ間空間40の一部、または、本実施例のように、前記モータ間空間40よりも上方を通過するので、前記モータ間空間40またはその上方空間の有効利用により、排出ダクト22配設に必要な空間を別途に設ける必要がなくなり、更なる、車両のコンパクト化を図ることができる。
【0039】
ここで、前記PTO用電動モータ19が比較的軽い場合や、急速なゼロターンを行わない仕様の場合には、前記PTO用電動モータ19は、その少なくとも一部が、前記モータ間空間40と重なる位置には配置されないものの、前記車軸電動装置5L・5Rの近傍に配置するようにすることも可能である。
【0040】
例えば、図19、図20に示す乗用芝刈機145においては、前記乗用芝刈機1と同様に、左右の車軸電動装置5L・5Rは、左右のサブフレーム25L・25Rを介して、前記車体フレーム2の前記左右の側板部2bの下方に配置されるが、前記乗用芝刈機1とは異なり、連結部材146は、左右の車軸ケース7L・7Rの下面の左右内端部間に介設されると共に、PTO電動装置20Aが、前記左の側板部2bと左の車軸ケース7Lとの間に介設されている。
【0041】
このうちの連結部材146の左右外端部には、それぞれ前後一対のボルト孔が開口され、前記車軸ケース7L・7Rの下面の左右内端部にも前後一対のボルト孔が開口されており、ボルト147により、連結部材146には、左右の車軸電動装置5L・5Rが下部で締結されている。ただし、該連結部材146にはPTO電動装置20Aが設けられていないため、その分だけ、前記排出ダクト22のための配置空間が拡大し、排出ダクト22の配置自由度が増加する。
【0042】
PTO電動装置20Aについては、該PTO電動装置20AのPTOケース29の上面外端部と、前記車体フレーム2の左の側板部2bとに、フレーム取付材148をボルト149によって締結固定すると共に、PTO電動装置20AのPTOケース29の後面部は、左の車輪ケース7Lの前面部に固設されている。これにより、左の車軸電動装置5Lと車体フレーム2との間は、前記サブフレーム25LとPTO電動装置20Aとを介して、連結するようにしており、左右の車軸電動装置5L・5R間の剛性に加え、左の車軸電動装置5Lと車体フレーム2との間の剛性も高めることができる。
【0043】
更に、PTO電動装置20Aは左右中央から左の車軸電動装置5L寄りに配置されているため、前記PTO出力プーリ30と上プーリ31aとの間の距離が短くなり、前記ベルト35よりも短いベルト35Aを使用することができ、動力伝達経路44を更に短縮して動力伝達ロスを小さくし、PTO用電動モータ19からの入力不足による作業能力の低下を防止することができる。
【0044】
なお、以下に、本発明の各種別形態について説明するが、実施例1と同等な構成のものは同じ符号で表記する。
【実施例2】
【0045】
次に、実施例2に関わる乗用芝刈機1A・1B・1Cについて、図4乃至図6により説明する。
該乗用芝刈機1A・1B・1Cのいずれも、前記実施例1の乗用芝刈機1とは異なり、前記連結部材26の代わりに、前記PTO用電動モータ19を収容する電動ケース、本実施例ではPTOケース53・54・55の一部を利用し、左右の車軸電動装置5L・5Rの間を連結するものである。もちろん、いずれのPTO用電動モータ19も、その少なくとも一部が前記モータ間空間40と重なるように配置されている。
【0046】
図4に示すように、このうちの乗用芝刈機1AにおけるPTO電動装置50のPTOケース53は、上部からそれぞれ左右外方に同一水平面に沿って突出する左右の連結ステー部53a・53bと、左右略中央で前記PTO用電動モータ19を収容するモータ収容部53cと、該モータ収容部53cの下部開口を下方から閉塞する蓋板53dとから構成される。該蓋板53dは、前記モータ収容部53cの下部開口に複数のボルト137によって着脱可能に締結されており、PTO用電動モータ19の組み込みや交換が容易に行えるようにしている。
【0047】
そして、前記左右の連結ステー部53a・53bの左右外部には、それぞれ複数のボルト孔が開口されており、複数のボルト41によって、前記左右の車軸電動装置5L・5Rの上面に締結されている。これにより、前記車軸電動装置5L・5Rの間を、PTOケース53に設けた連結ステー部53a・53bを介して連結できるようにしている。
【0048】
すなわち、車軸電動装置は、左右の車軸電動装置5L・5Rから構成し、該左右の車軸電動装置5L・5Rは、それぞれに前記左右の走行用電動モータ4L・4Rを有すると共に、前記左右の車軸電動装置5L・5Rの間は、前記PTO用電動モータ19を収容するPTOケース53にて連結するので、該PTOケース53を利用して左右の車軸電動装置5L・5R間の剛性を高めることができ、車両の走行安定性、及びそれに伴う作業能力の向上を図ることができる。更に、左右の車軸電動装置5L・5R間の連結部材を別途に設ける必要がなく、部品コストの低減と組付け性・メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0049】
また、図5に示すように、前記乗用芝刈機1BにおけるPTO電動装置51のPTOケース54は、上部からそれぞれ左右外方に同一水平面に沿って突出する左右の連結ステー部54a・54bと、左右略中央で前記PTO用電動モータ19を収容するモータ収容部54cと、該モータ収容部54cの下部開口を下方から閉塞する蓋板54fと、更に、前記左右の連結ステー部54a・54bの左右途中部から立設する左右のフレーム取付部54d・54eとから構成される。前記蓋板54fも、前記蓋板53dと同様に、前記モータ収容部54cの下部開口に複数のボルト137によって着脱可能に締結されており、PTO用電動モータ19の組み込みや交換が容易に行えるようにしている。
【0050】
そして、前記左右の連結ステー部54a・54bの左右外部には、それぞれ複数のボルト孔が開口されており、連結ステー部54a・54bが、複数のボルト41によって左右の車軸電動装置5L・5Rの上面に締結されている。更に、前記左右のフレーム取付部54d・54eにも、それぞれ複数のボルト孔が開口されると共に、前記車体フレーム2の左右の側板部2bの外側面に当接されており、左右のフレーム取付部54d・54eが、複数のボルト41によって車体フレーム2の左右の側板部2bに締結されている。
【0051】
しかも、本形態では、左右の側板部2bと前記左右の車軸電動装置5L・5Rとの間は、このようなPTOケース54を介してのみ連結されており、前記乗用芝刈機1・1Aのサブフレーム25L・25Rのような取付部材は設けていない。つまり、前記左右の車軸電動装置5L・5Rの間を、PTOケース54の連結ステー部54a・54bを介して連結すると共に、左右の車軸電動装置5L・5Rと車体フレーム2との間を、PTOケース54のフレーム取付部54d・54eのみを介して連結している。
【0052】
すなわち、前記PTOケース54を介して、前記左右の車軸電動装置5L・5Rを車体フレーム2に取り付けるので、前記左右の車軸電動装置5L・5Rと車体フレーム2との間に、前記サブフレーム25L・25Rのような取付部材を別途に設ける必要がなく、更なる、部品コストの低減と組付け性・メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0053】
また、図6に示すように、前記乗用芝刈機1CにおけるPTO電動装置52のPTOケース55は、上部からそれぞれ左右外方に同一水平面に沿って突出する左右の連結ステー部55a・55bと、PTOケース55の左右略中央で前記PTO用電動モータ19を収容するモータ収容部55cと、該モータ収容部55cの下部開口を下方から閉塞する蓋板55fと、更に、前記左右の連結ステー部54a・54bの左右外端部を折曲して立設した左右のフレーム取付部55d・55eとから構成される。前記蓋板55fも、前記蓋板53d・54fと同様に、前記モータ収容部55cの下部開口に複数のボルト137によって着脱可能に締結されており、PTO用電動モータ19の組み込みや交換が容易に行えるようにしている。
【0054】
そして、前記左右の連結ステー部55a・55bの左右外部には、それぞれ複数のボルト孔が開口されており、複数のボルト41によって、前記左右の車軸電動装置5L・5Rの上面に締結されている。更に、前記左右のフレーム取付部55d・55eにも、それぞれ複数のボルト孔が開口されると共に、前記車体フレーム2の左右の側板部2bの内側面に当接されており、複数のボルト41によって、車体フレーム2の左右の側板部2bに締結されている。
【0055】
更に、本形態では、前記乗用芝刈機1Bとは異なり、左右の側板部2bと前記左右の車軸電動装置5L・5Rとの間は、このようなPTOケース55以外に、前記乗用芝刈機1・1Aのサブフレーム25L・25Rを介しても連結されている。
【0056】
これにより、前記左右の車軸電動装置5L・5Rの間を、PTOケース55に設けた左右の連結ステー部55a・55bを介して連結するとともに、左右の車軸電動装置5L・5Rと車体フレーム2との間は、PTOケース55に設けたフレーム取付部55d・55eと、高い強度を有する前記サブフレーム25L・25Rとを介して連結するようにしており、左右の車軸電動装置5L・5R間の剛性に加え、該左右の車軸電動装置5L・5Rと車体フレーム2との間の剛性も高めることができる。
【0057】
更に、このような構成から成る前記PTOケース55に設けた左右の連結ステー部55a・55bの上面には、それぞれ左右のバッテリ56・57が搭載され、図示せぬボルト等によって固定されている。これにより、左右のバッテリ56・57をPTOケース55によって支持するようにしている。
【0058】
すなわち、前記PTOケース55の上に、前記左右の走行用電動モータ4L・4RとPTO用電動モータ19とに電力を供給するためのバッテリ56・57を搭載するので、前記PTOケース55の上方空間の有効利用により、バッテリ搭載に必要な空間を別途に設ける必要がなくなり、車両のコンパクト化を図ることができる。更に、左右の走行輪3L・3Rと車軸電動装置5L・5R等から成る駆動部58の重心近くに、前記PTO用電動モータ19に加えて重量が重いバッテリ56・57も配置することができ、走行時・旋回時の重量バランスを改善してゼロターンを行う際の安定性を確保し、更なる旋回性能の向上を図ることができる。
【実施例3】
【0059】
次に、実施例3に関わる乗用芝刈機1Dについて、図7乃至図9により説明する。
該乗用芝刈機1Dは、前記実施例1の乗用芝刈機1とは異なり、左右の走行用電動モータ4L・4RとPTO用電動モータ45とを、別々のケースではなく、車軸電動装置46を構成するハウジングである、単一の車軸ケース47内に収容するものである。
【0060】
該車軸ケース47は、上下一対のケース半部47A・47Bから成る横割り式であって、前記車体フレーム2に取り付けた際、それぞれの開口面が水平に配置され、該開口面の周縁部同士が複数のボルト48によって接合締結されることにより構成される。そして、接合した前記ケース半部47A・47B間の水平な接合面59上において、走行用電動モータ4R・4Lの出力軸であるモータ軸49の軸心と、前記車軸6の軸心とが、互いに平行に前後にずらして配置されると共に、該モータ軸49と車軸6は、車軸ケース47に対して相対回転自在に、両ケース半部47A・47Bの間に挟持されている。
【0061】
更に、前記モータ軸49の一端は、前記車軸ケース47から左右外方に突出され、該突出端には、冷却ファン60が固設されており、該冷却ファン60によって、走行用電動モータ4R・4L駆動中は、該走行用電動モータ4R・4L近傍の車軸ケース47が常に空冷されている。
【0062】
加えて、前記車軸ケース47の左右端部は、いずれも隔壁61を備えると共に、該隔壁61によって、モータ収容部62内に形成される端部モータ室65と、ギア収容部63および車軸収容部64内に形成されるギア室66とに区画されている。そして、前記端部モータ室65内には、走行用電動モータ4R・4Lが収容され、前記ギア室66内には、モータ軸49の出力端部、車軸6、および該車軸6と前記モータ軸49間に介設した減速ギア列67が収容されている。また、左右の走行用電動モータ4R・4Lの左右内端部を介し、端部モータ室65と、略中央のモータ収容部68内に形成される中央モータ室69とに区画されている。そして、該中央モータ室69内に、前記PTO用電動モータ45が収容されている。
【0063】
前記ギア室66から端部モータ室65を介して中央モータ室69までは、図示せぬ連通孔を介して連通されており、ギア室66内に溜められたギア用の潤滑油が、3室65・66・69の間を自在に行き来できるようにしている。これにより、該潤滑油によって、左右の走行用電動モータ4L・4RとPTO用電動モータ45とを効果的に冷却することができ、各電動モータ4L・4R・45が発した熱を吸収して、その駆動効率を高い状態に維持することができる。
【0064】
続いて、図8に示す走行用電動モータ4R・4Lの構造、および車軸6までの動力伝達構成について説明する。なお、車軸電動装置46は左右で略同一の構成であるため、左側の動力伝達構成についてのみ説明し、右側の駆動伝達構成については省略する。
【0065】
走行用電動モータ4Lには、ステータ70、電機子巻線71、ロータ72、永久磁石73、モータ軸支持フレーム74が設けられている。このうちのステータ70は、モータ軸49と同一軸芯上に配置される円筒状のステータ芯70aと、該ステータ芯70aの軸芯方向内端に固設される円板状のステータ板70bとを備えると共に、前記ケース下半部47Bの前後の縁部間に、ボルト等により締結固定されている。そして、前記電機子巻線71は、このうちのステータ芯70aの外周面に固設されている。
【0066】
前記ロータ72には、ステータ板70bに向かって左右内方に開口するカップ状部72aが形成され、該カップ状部72aによって、前記ステータ芯70aと該ステータ芯70a上の電機子巻線71が囲まれている。更に、ロータ72には、中心ボス部72bが形成され、該中心ボス部72bの内側は前記モータ軸49に固設されると共に、中心ボス部72bの外側は、前記ステータ芯70aの内周面によって囲まれている。そして、前記永久磁石73は、このようなロータ72のカップ状部72aの内周面に固設されると共に、前記電機子巻線71に対して対向配置されている。
【0067】
前記モータ軸支持フレーム74は、左右内側にある前記ロータ72を跨ぐ大きさで、内方に向かってアーチ形に形成され、前記ステータ板70bの鉛直側面に固設されると共に、前記モータ軸49を軸支している。そして、このモータ軸支持フレーム74には、図示せぬ開口部が上下に形成され、該開口部を介して、前記ロータ72及び電機子巻線71が端部モータ室65内に曝されており、前記ロータ72及び電機子巻線71に対して、前記減速ギア列67用の潤滑油を効果的に供給し、有効に冷却できるようにしている。
【0068】
更に、このような走行用電動モータ4Rは、ブラシレスであるため、回転角度検出器75が前記モータ軸支持フレーム74の内側に設けられている。一方、ロータ72のカップ状部72aの軸芯方向端の鉛直側面には、モータ軸49周りで前記隔壁61に向かって突出する環状凸部72cが形成され、該環状凸部72cの内周面には、前記回転角度検出器75に対向するようにして、環状の被検出体72dが固設されている。
【0069】
これにより、回転角度検出器75が、ロータ72の回転中における被検出体72dから、所定の永久磁石73の位置を検出し、該検出信号が、後述するコントローラ107に送信されると、検知した永久磁石73の現在位置に応じて、電機子巻線71の電流の向きが切り替えられ、ロータ72が所定の回転を行えるようにしている。
【0070】
また、このような構造の走行用電動モータ4Lからは、前記ギア室66の後部に、前述の如く、モータ軸49の出力端部が配置され、該出力端部にモータ出力ギア76とブレーキロータ77が固設されている。更に、前記ギア室66の前部では、車軸収容部64とによって、車軸6が前記モータ軸49と平行に軸受け支持されている。
【0071】
該車軸6の内端寄りの部分には、ファイナルギア78が相対回転自在に外嵌されている。ここで、前後方向においてモータ軸49と車軸6との間には、カウンタ軸81が回動自在に設けられ、該カウンタ軸81には、一体化した大径ギア79と小径ギア80が回転可能に外嵌されている。そして、このうちの大径ギア79が前記モータ出力ギア76に噛合され、小径ギア80が前記ファイナルギア78に噛合されることにより、前記減速ギア列67が形成され、該減速ギア列67により、前記モータ軸49からの動力を減速して車軸6に伝達できるようにしている。
【0072】
また、前記ギア室66内で、前記モータ出力ギア76より前方には、鉛直のブレーキ軸82が軸心回りに回動自在に支持されている。そして、該ブレーキ軸82の一端が前記車軸ケース47のケース上半部47A外に突出され、その突出端にはブレーキアーム83が外嵌固定されている。該ブレーキアーム83はクランク状に曲折され、その接続端部83aは、運転席11近傍に配設された図示せぬブレーキ操作具に、リンク部材を介して接続されている。
【0073】
更に、該ブレーキ軸82の上下途中部は、鉛直平坦なカム面82aを有する平面断面視略半円状のカム部となっており、該カム面82aに対峙するように、ブレーキシュー84が配置され、該ブレーキシュー84と反対側にブレーキパッド85が配置されて、該ブレーキシュー84とブレーキパッド85は、前記車軸ケース47に固定されている。そして、該ブレーキパッド85と前記ブレーキシュー84との間に、前記ブレーキロータ77の一部が配置されている。これにより、前記ブレーキ軸82、ブレーキロータ77、ブレーキシュー84、及びブレーキパッド85等から成るブレーキ機構86が、ギア室66内に構成されている。
【0074】
該ブレーキ機構86により、図示せぬブレーキ操作具を非制動状態にしている間は、カム面82aがブレーキシュー84の鉛直面と平行で、ブレーキロータ77に対してブレーキシュー84、ブレーキパッド85が互いに離間されている。前記ブレーキアーム83を制動位置に回動すると、カム面82aがブレーキシュー84をブレーキロータ77に向かって押し付け、モータ軸49が制動される。
【0075】
また、走行用電動モータ4Lのコギング・トルクが大きいために、車両を牽引する際に車軸がスムーズに空転しない場合に備え、モータ軸49から車軸6に至る動力伝達経路の途中には、機械式の車両牽引用クラッチ機構87が設けられている。
【0076】
該車両牽引用クラッチ機構87においては、前記車軸6に、該車軸6に対し相対回転不能で、かつ軸心方向摺動自在に、クラッチ部材88がスプライン嵌合されており、車軸6に固設した止め輪88bとクラッチ部材88との間には、バネ88aが車軸6に巻装した状態で介設されている。該バネ88aにより、クラッチ部材88は前記ファイナルギア78側に付勢されると共に、該ファイナルギア78の一側面に開いた凹部に、前記クラッチ部材88先端の凸部が嵌入可能となっている。
【0077】
更に、前記クラッチ部材88には、環状溝が形成されてフォーク89が嵌入されており、該フォーク89のボス部89aは、鉛直のフォーク軸90に外嵌されて、フォーク89が軸心回りに回動自在となっている。そして、前記ボス部89aからは、該フォーク89およびボス部89aと一体回動可能なアーム89bが延設され、その延出端部には、前後水平方向に移動自在な進退ピン91の後端部が係止されている。
【0078】
該進退ピン91は、その前部を車軸ケース47の前端壁部に配置すると共に、その軸心が前記接合面59上に位置するように支持される。そして、この進退ピン91の前端は、車軸ケース47の前端面より前方に突出し、該前端は、前記運転席11近傍に配置された図示せぬ共通のクラッチ操作具に、リンク部材を介して接続されている。該リンク部材には、前記バネ88aの付勢力に抗してクラッチ部材88をクラッチ切り位置に保持するデテント機構も含んでいる。
【0079】
このような構成において、クラッチ操作具によりクラッチ入り操作を行うと、前記進退ピン91が後方に引き込まれ、前記バネ88aの付勢力により、クラッチ部材88は、その凸部をファイナルギア78の凹部に嵌入し、クラッチ入り位置に配置される。これにより、該クラッチ部材88を介してファイナルギア78が車軸6に一体回転自在に係合され、通常に車両が走行するように、モータ軸49からの動力が車軸6に伝達される。
【0080】
クラッチ操作具によりクラッチ切り操作を行うと、前記進退ピン91が前方に突出し、アーム89bの先端部も前方に移動し、フォーク89がボス部89aを中心に回動し、クラッチ部材88は、バネ88aに抗して、その凸部をファイナルギア78の凹部より外し、クラッチ切り位置に配置される。これにより、ファイナルギア78は、車軸6に対して相対回転自在となり、該ファイナルギア78に伝達されたモータ軸49の動力が車軸6には伝達されない、車両牽引用の状態となる。
【0081】
続いて、図9に示すPTO用電動モータ45の構造、配置構成、及び冷却構造について説明する。
該PTO用電動モータ45にも、前記走行用電動モータ4Lと同様に、ステータ92、電機子巻線93、ロータ94、永久磁石95、モータ軸支持フレーム96が設けられている。そして、ステータ92は、モータ軸98と同一軸芯上に配置される円筒状のステータ芯92aと、該ステータ芯92aの軸芯方向一端に固設される円板状のステータ板92bとを備える。そして、前記電機子巻線93は、このステータ芯92aの外周面に固設されている。
【0082】
前記ロータ94には、ステータ板92bに向かって下方に開口するカップ状部94aが形成され、該カップ状部94aにより、前記ステータ芯92aと電機子巻線93が囲まれている。更に、ロータ94の中心ボス部94bは、内側は前記モータ軸98に固設されると共に、外側は前記ステータ芯92aの内周面に囲まれている。そして、前記永久磁石95は、このようなロータ94のカップ状部94aの内周面に固設されると共に、前記電機子巻線93に対して対向配置されている。
【0083】
前記モータ軸支持フレーム96は、前記ロータ94を跨ぐ大きさでアーチ形に形成され、前記ステータ板92bの上面に固設されると共に、前記モータ軸98を軸支している。そして、このモータ軸支持フレーム96には、水平方向に、図示せぬ開口部が形成され、該開口部を介して、前記ロータ94及び電機子巻線93が中央モータ室69内に曝されており、前記ロータ94及び電機子巻線93に対して、前記端部モータ室65からの潤滑油を効果的に供給し、有効に冷却できるようにしている。
【0084】
更に、前記走行用電動モータ4Lと同様に、このようなPTO用電動モータ45もブラシレスであるため、回転角度検出器97が前記モータ軸支持フレーム96の内側に設けられると共に、ロータ94のカップ状部94aの軸芯方向端の水平側面には環状凸部94cが形成され、該環状凸部94cの内周面には、環状の被検出体94dが固設されている。これにより、回転角度検出器97が被検出体94dから、所定の永久磁石95の位置を検出し、電機子巻線93の電流の向きを切り換えてロータ94の回転を制御可能としている。
【0085】
また、前記モータ軸支持フレーム96の天板の平面視略中央には、中心ボス部96aが上方に突設され、該中心ボス部96aは、前記車軸ケース47のケース上半部47Aに設けた支持孔47Aaに内挿して嵌合されており、PTO用電動モータ45の上部が、車軸ケース47のケース上半部47Aによって支持されている。
【0086】
一方、前記ケース下半部47Bの底面からは、支持凸部47Baが上方に突出され、該支持凸部47Baの上端面に、前記ステータ92のステータ板92bの外周縁下面が、当接されると共にボルト156によって締結固定されている。これにより、PTO用電動モータ45は、車軸ケース47内に強固に固定されている。
【0087】
このようにして、前記走行用電動モータ4L・4Rと一緒にPTO用電動モータ45もケース内に支持固定された単一の車軸ケース47は、前記乗用芝刈機1と同様、前記サブフレーム25L・25Rを介して、車体フレーム2の左右の側板部2bに締結固定されている。
【0088】
なお、本乗用芝刈機1Dにおいても、前記乗用芝刈機1・1A・1B・1Cと同様に、PTO用電動モータ45は、該PTO用電動モータ45の少なくとも一部が、前記走行用電動モータ4L・4R間の前記モータ間空間40と重なる位置に設定されており、走行時・旋回時の重量バランスを改善している。
【0089】
また、前記車軸ケース47のケース上半部47Aには、PTO用電動モータ45の近傍に単一の貫通孔99が形成され、該貫通孔99には集線ボックス100が嵌設されている。該集線ボックス100には、左右の走行用電動モータ4L・4Rにおいて、前記電機子巻線71や回転角度検出器75等に接続される電線を束ねた第一ハーネス101・第二ハーネス102と、及びPTO用電動モータ45において、前記電機子巻線93や回転角度検出器97等に接続される電線を束ねた第三ハーネス103とが、集中配置されている。
【0090】
そして、これらのハーネス101・102・103は、前記集線ボックス100から上方に延設され、それぞれドライバ104・105・106に接続されると共に、該ドライバ104・105・106は、走行操作と作業機操作を制御する前記コントローラ107に接続される。そして、該コントローラ107には、前記丸型ハンドル13、アクセルペダル12、モア操作具108の各センサ、及び電力供給用の前記バッテリ24が接続されている。
【0091】
ここで、前記ドライバ104・105・106とは、インバータおよび送受信手段を備えるユニットであって、前記コントローラ107は、前記丸型ハンドル13、アクセルペダル12、モア操作具108、及び回転角度検出器75・75・97からの電気信号に基づいて、各ドライバ104・105・106のインバータを制御し、該インバータの制御に応じて前記電機子巻線71・71・93に電流を流し、走行とモア作業を行うようにしている。
【0092】
すなわち、前記車軸ケースに単一の貫通孔99を穿設し、該貫通孔99に、前記走行用電動モータ4L・4RとPTO用電動モータ45を制御する複数の電線を集約して挿通するので、電線集約により配線用部材を減少することができ、部品コストの低減と組付け性・メンテナンス性の向上を図ることができる。更に、貫通孔99の数の減少により車軸ケース47からの油漏れの可能性を小さくすることができ、油量減少による発熱抑制効果の低下を防止することができる。
【0093】
また、前記3室65・66・69の間を自在に行き来する潤滑油の油面109は、ロータ94のカップ状部94aの開口下端が前記油面109に若干接触し深くは浸漬しない高さ110に設定されている。これにより、ギア室66内のギア潤滑に必要な油面109を確保しつつ、潤滑油の撹拌抵抗を最小限に抑えて、PTO用電動モータ45の発熱を抑制するようにしている。
【0094】
そして、該PTO用電動モータ45の発熱に対しては、冷却ファン111が設けられている。ここで、前記モータ軸98の一端は、前記車軸ケース47のケース下半部47Bから下方に突出され、該下方突出端に、前記PTO出力プーリ30が固設される一方、前記モータ軸98の他端は、前記車軸ケース47のケース上半部47Aから上方に突出され、該上方突出端に、前記冷却ファン111が固設されている。
【0095】
これにより、PTO用電動モータ45駆動中は、略一定速度で冷却ファン111を回転して車軸ケース47全体に冷却風を吹き付けることができ、共通の潤滑油を介して、左右の走行用電動モータ4L・4RとPTO用電動モータ45を同時に冷却することができる。
【0096】
すなわち、以上のように、前記車軸電動装置は、単一の車軸電動装置46から構成し、該車軸電動装置46の車軸ケース47には、前記左右の走行用電動モータ4L・4RとPTO用電動モータ45を収容するので、前記車軸ケース47を利用し、左右の車軸電動装置を一体化して剛性を高めることができ、車両の走行安定性、及びそれに伴う作業能力の向上を図ることができる。更に、前述のような左右の車軸電動装置間の連結部材26や、前記PTO用電動モータ45を収容するPTOケース29・53・54を別途に設ける必要がなく、部品コストの低減と組付け性・メンテナンス性の向上を図ることができる。加えて、車軸電動装置46の潤滑油をPTO用電動モータ45の冷却にも利用することができ、該PTO用電動モータ45の発熱を抑制して、駆動効率や機器寿命の向上を図ることができる。
【0097】
更に、前記車軸ケース47から前記PTO用電動モータ45のモータ軸98の軸端を突出し、該軸端に冷却ファン111を固設するので、PTO用電動モータ45による作業機であるモア装置16の駆動時のみに、前記冷却ファン111を略一定速度で回転駆動し、稼働状況に応じてPTO用電動モータ45を空冷することができ、省電力によるランニングコストの低減を図ることができる。更に、前記冷却ファン111により、前記左右の走行用電動モータ4L・4RとPTO用電動モータ45とを冷却する共通の潤滑油を、車軸ケース47ぐるみ空冷することができ、左右の走行用電動モータ4L・4Rの潤滑油のための空冷装置を別途に設ける必要がなく、部品コストの低減と組付け性・メンテナンス性の向上を図ることができる。
【実施例4】
【0098】
次に、実施例4に関わる乗用芝刈機1Eについて、図10、図11により説明する。
該乗用芝刈機1Eは、前記実施例3の乗用芝刈機1Dとは異なり、左右の走行用電動モータ113L・113RとPTO用電動モータ114とを収容する車軸ケース112を、前記車軸ケース47のような水平に分割可能な横割り式ではなく、鉛直に分割可能な縦割り式とするものである。
【0099】
該車軸ケース112は、左右方向に広がる鉛直面116を境に前後に分割された前後一対のケース半部112A・112Bと、該ケース半部112A・112Bの左右外側面上を通り前後方向に広がる鉛直面117を境にして設けられた中間部112Cと、該中間部112Cの左右外側面上を通り前後方向に広がる鉛直面118を境に設けられた蓋体部112Dとから構成される。
【0100】
そして、このうちのケース半部112A・112B内にモータ室120が形成され、該モータ室120の左右略中央部に、前記PTO用電動モータ114が収容されると共に、該PTO用電動モータ114は、複数のボルト121によってモータ室120の底面に締結固定されている。
【0101】
前記中間部112Cの左右内側部には、隔壁119が設けられ、該隔壁119の左右内側面に、前記左右の走行用電動モータ113L・113Rが複数のボルト121によって締結固定されており、前記ケース半部112A・112Bを組み立てた後に、この中間部112Cを左右外側から接合すると、左右の走行用電動モータ113L・113Rが前記モータ室120内に収容されるようにしている。
【0102】
更に、前記蓋体部112Dを、前記中間部112Cの左右外側から接合すると、蓋体部112Dと中間部112Cとより、ギア室122が形成され、該ギア室122内に、前記乗用芝刈機1Dと同様、モータ出力ギア76・大径ギア79・小径ギア80・ファイナルギア78から成る前記減速ギア列67、ブレーキロータ77・ブレーキ軸82・ブレーキアーム83等から成る前記ブレーキ機構86、及びクラッチ部材88・フォーク89・フォーク軸90等から成る前記車両牽引用クラッチ機構87が収容されている。
【0103】
このように、車軸ケース112を複数の部材から成る縦割り式に構成し、左右内側から順に、ケース半部112A・112B、中間部112C、蓋体部112Dを組み付け可能な構成とすることにより、ケース半部112A・112BとPTO用電動モータ114を組み立てた後、それに、走行用電動モータ113L・113Rを締結固定した中間部112Cを組付け、更に、減速ギア列67、ブレーキ機構86、車両牽引用クラッチ機構87等を取り付けた蓋体部112Dを組付けることができる。これにより、組付けに必要な力が小さくて済み、位置精度も高めることができ、組付け性の向上を図ることができる。
【0104】
また、前記走行用電動モータ113Lには、前記乗用芝刈機1Dと同様に、ステータ123、電機子巻線71、ロータ72、永久磁石73、モータ軸支持フレーム124、回転角度検出器75等が設けられている。このうちのステータ123は、モータ軸115と同一軸芯上に配置される円筒状のステータ芯123aと、該ステータ芯123aの左右外側に配置される円板状のステータ板123bとを備える。そして、前記モータ軸支持フレーム124は、左右外側にある前記ロータ72を跨ぐ大きさで、外方に向かってアーチ形に形成され、前記ステータ板123bの鉛直側面に固設されており、前記モータ軸115を軸支している。
【0105】
このような走行用電動モータ113Lにおいても、前記乗用芝刈機1Dと同様に、前記モータ軸115の一端に冷却ファン60が固設されているが、前記車軸ケース112の外側ではなく内側に収容されている。つまり、前記モータ軸115が、車軸ケース112内の前記モータ軸支持フレーム124からモータ室120内に突出され、該突出端に、冷却ファン60が固設されている。
【0106】
更に、前記PTO用電動モータ114にも、前記乗用芝刈機1Dと同様に、ステータ127、電機子巻線93、ロータ94、永久磁石95、モータ軸支持フレーム128、回転角度検出器97等が設けられている。そして、このようなPTO用電動モータ114にも、モータ軸129の一端に冷却ファン111が固設されているが、前記車軸ケース112の外側ではなく内側に収容されている。つまり、前記モータ軸129が、車軸ケース112内の前記モータ軸支持フレーム128からモータ室120内に突出され、該突出端に、冷却ファン111が固設されている。
【0107】
そして、車軸ケース112において、前記冷却ファン60の上方位置には大きな開口112aが設けられており、該開口112aから前記冷却ファン60の一部が突出するように構成されており、冷却ファン60による外気の取込み効率を高めるようにしている。更に、前記冷却ファン111の上方位置には、複数の空気窓112bが設けられている。
【0108】
これにより、走行用電動モータ113R・113L駆動中は、前記冷却ファン60からの、矢印125に示す冷却風により、走行用電動モータ113R・113Lが直接空冷されると共に、PTO用電動モータ114駆動中は、前記冷却ファン111からの、矢印126に示す冷却風により、PTO用電動モータ114が直接空冷されるため、前記乗用芝刈機1Dのように外部から車軸ケース47を介して空冷する場合と比べ、空冷効率を向上させることができる。更に、前記矢印125・126に示す冷却風によって循環風路130が形成されると、一層の冷却効率の向上が可能となる。
【実施例5】
【0109】
次に、実施例5に関わる乗用芝刈機1Fについて、図12、図13により説明する。
該乗用芝刈機1Fは、前記実施例1の乗用芝刈機1とは異なり、左右の走行輪3L・3R、車軸電動装置131L・131R等から成る駆動部132を、車体フレーム133の後部ではなく前部に設けて前輪駆動としたものである。
【0110】
該駆動部132は、前記車軸電動装置5L・5Rを前後方向に上下180度回転した上で、その間を前記連結部材26を介して連結すると共に、該連結部材26にPTO電動装置20を設けたものであり、車体フレーム133における左右の側板部133bの前部に、前記サブフレーム25L・25Rを介して着脱自在に装着されている。
【0111】
一方、車体フレーム133における左右の側板部133bの後部間は、後連結部133aによって連結され、該後連結部133aの左右各端に、それぞれ後輪134が支持されている。該左右の後輪134は、いずれも鉛直枢支軸134aを備え、該鉛直枢支軸134aは、前記後連結部133aの左右端に設けたボス部133cに相対回転自在に挿通されており、左右の後輪134が乗用芝刈機1Fの直進・旋回に追従して水平回転できるようにしている。
【0112】
このように、後輪駆動で用いる車軸電動装置5L・5Rを前後方向に上下180度回転することにより、前輪駆動で用いる車軸電動装置131L・131Rに適用可能な構成としたので、製造コストが低下し、更には、部品の共有化も可能となり、在庫管理が容易となって管理コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0113】
また、前記車体フレーム133の下方で前記車軸電動装置131L・131Rの後方には、前記乗用芝刈機1とは異なり、2連ブレード式のモア装置135が設けられている。
該モア装置135は、2連のブレード136a・136bと、該ブレード136a・136bを内装するモアデッキ138と、該モアデッキ138の前部で左右両端と中央に取り付けたゲージ輪21とを備えると共に、図示せぬ吊下リンクを介して、前記車体フレーム133の下方に昇降自在に支持されている。
【0114】
前記ブレード136a・136bには、それぞれ駆動軸139a・139bが固設され、該駆動軸139a・139bは、いずれも前記モアデッキ138から上方に突出されており、その突出部には、駆動軸139aでは上下二連のプーリ140a・140bが固設され、駆動軸139bでは単一のプーリ141が固設されている。
【0115】
そして、前記PTO電動装置20からのモータ軸34の下端部固設されたPTO出力プーリ30と、前記上プーリ140aとの間にはベルト142が巻回され、下プーリ140bとプーリ141との間にはベルト143が交差状に巻回されており、モータ軸34から、PTO出力プーリ30、ベルト142、上プーリ140a、下プーリ140b、ベルト143、プーリ141の順に伝達され、前記ブレード136a・136bを回転駆動するようにしている。
【0116】
また、このようなモア装置135におけるモアデッキ138の後部で左右中央からは、排出ダクト144が後斜め上方に延出され、該排出ダクト144は、前記車体フレーム133の後部に設けた集草ボックス23と連通されている。これにより、前記ブレード136a・136bで刈り取った刈取芝が、モア装置135から排出ダクト144を経由して集草ボックス23に収容される。
【0117】
そして、このモア装置135と集草ボックス23との間には、前記乗用芝刈機1と異なり、駆動部に比べて前後方向に短い後輪134しか介在しないので、排出ダクト144の前後長が短くなり、集草ボックス23への集草効率が高まって作業能力の向上を図ることができる。
【実施例6】
【0118】
次に、実施例6に関わる乗用芝刈機1Gについて、図14乃至図16により説明する。
該乗用芝刈機1Gは、前述した実施例1乃至実施例5とは異なり、使用するPTO用電動モータ158を、前述のような垂直方向のモータ軸34・98・129を有する垂直出力式ではなく、水平方向のモータ軸160を有する水平出力式としたものである。更に、このPTO用電動モータ158をPTOケース159内に収容したPTO電動装置161は、左右の車軸電動装置5L・5R間の連結部材162に固設されている。
【0119】
該連結部材162は、側面視上下逆L字状の部材であって、水平板状の上板部162aと、該上板部162a後部の左右略中央部から垂下した側板部162bとから構成される。このうちの上板部162aの左右外端部には、それぞれ前後一対のボルト孔が開口されており、連結部材162が、複数のボルト41によって左右の車軸電動装置5L・5Rの上面に締結固定されている。
【0120】
更に、前記側板部162bにも、複数のボルト孔が開口されており、側板部162bの正面視略中央の前面には、前記PTO電動装置161が、複数のボルト41によって締結固定されている。もちろん、この際も、PTO用電動モータ158は、その少なくとも一部が前記モータ間空間40と重なるように配置される。
【0121】
このPTO用電動モータ158の前面からは、前述したモータ軸160が水平前方に突出され、該突出端は、伸縮可能な自在継手163を介して、モア装置166から後方に突出される入力軸165に連結される。該モア装置166は、前記モア装置16とは異なり、動力伝達方向を水平から垂直に変更する図示せぬベベルギアなどを収容するギアケース164と、前記上下二連のプーリ32a・32bを収容するプーリケース167とを備えている。
【0122】
ここで、前記ブレード18a・18b・18cには、それぞれ駆動軸39a・39b・39cが固設され、該駆動軸39a・39b・39cは、いずれもモアデッキ17から上方に突出されており、このうちの駆動軸39a・39cの突出端には、それぞれ単一のプーリ31・33が固設され、駆動軸39bの突出端には、前記プーリ32a・32bが固設されている。
【0123】
そして、該上プーリ32aと前記プーリ31との間にはベルト36が巻回され、前記下プーリ32bとプーリ33との間にはベルト37が巻回されており、前記PTO用電動モータ158からのPTO動力は、モータ軸160から、前方の自在継手163を介して入力軸165に入力され、前記ギアケース164内で方向転換された後、プーリケース167内の前記駆動軸39bに伝達される。その後、一方のPTO動力は、上プーリ32aから、ベルト36、プーリ31を介して駆動軸39aに伝達され、他方のPTO動力は、プーリ32bから、ベルト37、プーリ33を介して駆動軸39cに伝達され、前記ブレード18a・18b・18cを同時に回転駆動できるようにしている。
【0124】
また、このようにして前記モア装置166を駆動するPTO電動装置161は、その前後位置を変更可能な構成としている。
つまり、PTO電動装置161を前記連結部材162の側板部162bの前面ではなく背面に締結固設することにより、前後位置を位置168から位置169に後退させることができる。
【0125】
これにより、前記モータ軸160と入力軸165とは、高低差はそのままで前後距離だけが長くなるため、傾斜する自在継手163の軸心と、水平に延出される入力軸165の軸心との成す角度(以下、「取付角」とする)171が減少し、前記自在継手163が受ける負荷が軽減され、耐久性が向上して部品コストを低減できると共に、振動が抑制されて低騒音化を図ることができる。
【0126】
あるいは、連結部材162を、車軸電動装置5L・5Rの上面から外して前後反転した後に、再び車軸電動装置5L・5Rの上面に締結固定し、後側にあった側板部162bを前側に移動させ、この前側の側板部162bの前面に、前記PTO電動装置161を締結固設することにより、PTO電動装置161の前後位置を位置168から位置170に前進させることができる。
【0127】
これにより、前記モータ軸160と入力軸165との間の前後距離が短くなって前記取付角171は増加するものの、連結部材162の前部に、重いPTO用電動モータ158を配置することができる。すると、大きな設置スペースの確保が容易な連結部材162の後部に大型バッテリを搭載する場合でも、前後重量バランスを確保することができ、車両の走行安定性の向上を図ることができる。
【0128】
しかも、この際のPTO電動装置161の前後位置の変更には、既設の連結部材162を前後反転するだけでよく、製造コストが低下し、更には、部品の共有化も可能となり、在庫管理が容易となって管理コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0129】
このように、PTO電動装置161の前後位置を変更可能な構成とするので、要求される仕様に応じて配置構成を適正化することができ、汎用性に優れた電動式作業車両である乗用芝刈機1Gを得ることができる。
【0130】
なお、前記位置169・170においては、PTO電動装置161内のPTO用電動モータ158は、前記モータ間空間40と重なるようには配置されていないが、連結部材162には固定されており、少なくとも、左右の走行輪3L・3Rと車軸電動装置5L・5R等から成る駆動部43の重心近くに配置される配置構成を有している。
【0131】
すなわち、左右の走行輪3L・3Rを個別に駆動する左右の走行用電動モータ4L・4Rと、該左右の走行用電動モータ4L・4Rを有する車軸電動装置5L・5Rと、該車軸電動装置5L・5Rを下方に取り付ける車体フレーム2と、作業機であるモア装置166を駆動するPTO用電動モータ158とを備えた電動式作業車両である乗用芝刈機1Gにおいて、車軸電動装置は、左右の車軸電動装置5L・5Rから構成し、該左右の車軸電動装置5L・5Rは、それぞれに前記左右の走行用電動モータ4L・4Rを有すると共に、前記左右の車軸電動装置5L・5Rの間は、連結部材162にて連結し、該連結部材162に、前記PTO用電動モータ158を有するPTO電動装置161を設けたので、左右の走行輪3L・3Rと車軸電動装置5L・5R等から成る駆動部43の重心近くに、前記PTO用電動モータ158を配置することができ、該PTO用電動モータ158を、左右の走行用電動モータ4L・4Rの間を占めるモータ間空間40と重なる位置に配置する場合には劣るものの、走行時・旋回時の重量バランスを改善してゼロターンを行う際の安定性を高め、旋回性能の向上を図ることができる。更には、前記連結部材162と、該連結部材162に設けられたPTO電動装置161とによって、左右の車軸電動装置5L・5R間の剛性を高めることができ、車両の走行安定性と、それに伴う作業能力の向上を図ることができる。加えて、前記左右の車軸電動装置5L・5RとPTO電動装置161を一体のアセンブリーとして取り扱うことができ、組付け性・メンテナンス性の向上を図ることができる。
【実施例7】
【0132】
次に、実施例7に関わる乗用芝刈機1Hについて、図17、図18、図21により説明する。
図17、図18に示すように、該乗用芝刈機1Hは、前記実施例6の乗用芝刈機1Gと同様に、水平出力式のPTO用電動モータ158を使用したものであるが、前記乗用芝刈機1Gとは異なり、モータ軸160を水平方向以外の角度に調整可能な傾倒構造172を新たに設けたものである。
【0133】
乗用芝刈機1Hにおいても、前記乗用芝刈機1Gと同様に、左右の車軸電動装置5L・5Rの上面に水平板状の連結部材173が締結固定されており、該連結部材173の平面視略中央部の下面に、前記傾倒構造172が垂設されている。該傾倒構造172は、前記連結部材173の下面に図示せぬボルトなどにより締結固定される左右一対の支持ステー174L・174Rと、該支持ステー174L・174Rの軸受け部に前後回転可能に支持される左右の支軸175L・175Rとから成り、該支軸175L・175Rは、前記PTO用電動モータ158を収容するPTOケース159の左右両側面に連結されている。
【0134】
これにより、PTO用電動モータ158を前後回転可能に支持した後、傾倒させてから図示せぬボルトなどによって固定し、所定の角度に設定することができる。もちろん、この際も、PTO用電動モータ158は、その少なくとも一部が前記モータ間空間40と重なるように配置される。
【0135】
従って、モータ軸160がモア装置166への入力軸165よりも上方にある場合であっても、前記傾倒構造172により、モータ軸160を前斜め下方に傾斜するように設定することができ、前記取付角171を大幅に減少させ、自在継手163が受ける負荷が軽減され、耐久性が向上して部品コストを低減できると共に、振動が抑制されて低騒音化を図ることができる。
【0136】
なお、PTO用電動モータ158が大きく前転または後転しようとしても、PTOケース159上面の前縁または後縁が連結部材173の下面に当接するようにしており、これにより、PTO用電動モータ158の過剰な回転を防止し、モータ軸160の軸心と自在継手163の軸心との間の大きなずれの発生を抑制し、自在継手163への負荷が増加しないようにしている。
【0137】
また、このような、水平方向以外の角度に調整可能なPTO用電動モータ158においても、前記連結部材173の下面への支持ステー174L・174Rの取付位置を変えることにより、前後位置を変更させることができる。
【0138】
ただし、前記実施例6の場合とは異なり、たとえPTO電動装置161の前後位置を位置176から位置177に前進させる場合であっても、モータ軸160を前斜め下方に大きく傾斜させることにより、前記取付角171の増加を抑制できる。これにより、連結部材173後部に大型バッテリ等を搭載しても、自在継手163への負荷を増すことなく前後重量バランスを確保し、車両の走行安定性の向上を図ることができるのである。
【0139】
なお、PTO用電動モータ158を前後反転させて、モータ軸160を後方に突出させ、その突出端を乗用芝刈機1Hの後部に設けた図示せぬ作業機への入力軸に連結することにより、前記モア装置166以外の耕耘装置等の作業機に対しても、PTO動力を伝達することができる。
【0140】
また、図21に示すように、車体フレーム2の後部に集草ボックス23を有する乗用芝刈機157においては、前記モア装置166から集草ボックス23までの排出ダクト22のための設置スペースを確保するため、前記傾倒構造172を有するPTO電動装置161は、モア装置166の前方に配置するようにしている。
【0141】
詳しくは、該モア装置166前方で、前記車体フレーム2の左右の側板部2bの前部に、連結フレーム178が横架され、該連結フレーム178の左右略中央に前記傾倒構造172が設けられており、該傾倒構造172により、前述したように、PTO用電動モータ158が前後回転可能に支持される。そして、該PTO用電動モータ158からは、モータ軸160が後方に突出され、該突出端は、自在継手163を介して、前記モア装置166から前方に突出される入力軸165Aに連結される。
【0142】
この場合、モータ軸160と入力軸165との間の前後距離が短くなって前記取付角171が増加するものの、この増加は前記傾倒構造172によって軽減されるため、自在継手163が受ける負荷が軽減され、耐久性が向上して部品コストを低減できると共に、振動が抑制されて低騒音化を図ることができる。
【0143】
次に、以上のような実施例1乃至実施例7におけるロータ72に開口した放熱口について、図22乃至図27により説明する。
図27に示す従来のロータ72では、カップ状部72aの閉塞側面に、ロータ72内の熱を放散するための放熱口150が開口されている。該放熱口150は、モータ軸49に平行な複数の内側面から成る側面視台形状に形成され、ロータ72回転時には、該放熱口150によって前記潤滑油が激しく撹拌され、その撹拌抵抗により走行用電動モータ4L・4R等の各モータが発熱する。
【0144】
そこで、図22に示すロータ72Aでは、ロータ72Aが矢印154に示す方向に回転する際に、放熱口151で潤滑油をかき分ける内側面151a・151bの面積を、従来の放熱口150の撹拌面150a・150bの面積よりも小さく設定しており、これにより、各放熱口151における撹拌抵抗を小さくし、モータの発熱を抑制することができる。
【0145】
そして、図23に示すロータ72Bのように、放熱口151の数自体を減らす、本実施例では、ロータ72Aの8個から4個に減らすことにより、放熱口151全体による撹拌抵抗を小さくし、各モータの発熱を抑制することもできる。
【0146】
また、図24に示すロータ72Cの放熱口152では、潤滑油をかき分ける内側面152a・152bが外側に拡開するように傾斜して設けられており、これにより、放熱口152が潤滑油内に突入する際の抵抗を減少させて、各放熱口151における撹拌抵抗を小さくし、モータの発熱を抑制することができる。
【0147】
そして、半径方向外方の内側面152cも外側に拡開するように傾斜して設けられており、これにより、ロータ72C内に溜まった潤滑油が排出されやすくなって循環が良くなり、冷却効果を高めることができる。
【0148】
更に、図25に示すロータ72Dの放熱口153では、潤滑油をかき分ける内側面153a・153bと、半径方向外方の内側面153cに加え、半径方向内方の内側面153dまでも外側に拡開するように傾斜して設けられており、これにより、冷却効果を一層高めることができる。
【0149】
また、図26に示すロータ72Eでは、前記放熱口150を全て埋込部材155によって閉塞しており、これにより、放熱口に起因する撹拌抵抗をなくし、各モータの発熱を抑制することができる。なお、ロータ72Eの閉塞側面の反対側は開放されているため、冷却効果が顕著に低下することはない。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明は、左右の走行輪を個別に駆動する左右の走行用電動モータと、該左右の走行用電動モータを有する車軸電動装置と、該車軸電動装置を下方に取り付ける車体フレームと、作業機を駆動するPTO用電動モータとを備えた、全ての電動式作業車両に適用することができる。
【符号の説明】
【0151】
1・1A・1B・1C・1D・1E・1F・1G 乗用芝刈機(電動式作業車両)
2・133 車体フレーム
3L・3R 走行輪
4L・4R・113L・113R 走行用電動モータ
5L・5R・46・131 車軸電動装置
16・135・166 モア装置(作業機)
19・45・114・158 PTO用電動モータ
20・50・51・52・161 PTO電動装置
22・144 排出ダクト
23 集草ボックス
26・162・173 連結部材
40 モータ間空間
47・112 車軸ケース
53・54・55 PTOケース
56・57 バッテリ
98・129 モータ軸
99 貫通孔
111 冷却ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の走行輪を個別に駆動する左右の走行用電動モータと、該左右の走行用電動モータを有する車軸電動装置と、該車軸電動装置を下方に取り付ける車体フレームと、作業機を駆動するPTO用電動モータとを備えた電動式作業車両において、前記PTO用電動モータの少なくとも一部が、前記左右の走行用電動モータの間を占めるモータ間空間と重なるように、PTO用電動モータを配置したことを特徴とする電動式作業車両。
【請求項2】
前記車軸電動装置は、左右の車軸電動装置から構成し、該左右の車軸電動装置は、それぞれに前記左右の走行用電動モータを有すると共に、前記左右の車軸電動装置の間は、連結部材にて連結し、該連結部材に、前記PTO用電動モータを有するPTO電動装置を設けることを特徴とする請求項1に記載の電動式作業車両。
【請求項3】
前記車軸電動装置は、左右の車軸電動装置から構成し、該左右の車軸電動装置は、それぞれに前記左右の走行用電動モータを有すると共に、前記左右の車軸電動装置の間は、前記PTO用電動モータを収容するPTOケースにて連結することを特徴とする請求項1に記載の電動式作業車両。
【請求項4】
前記PTOケースを介して、前記左右の車軸電動装置を車体フレームに取り付けることを特徴とする請求項3に記載の電動式作業車両。
【請求項5】
前記PTOケースの上に、前記左右の走行用電動モータとPTO用電動モータとに電力を供給するためのバッテリを搭載することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の電動式作業車両。
【請求項6】
前記車軸電動装置は、単一の車軸電動装置から構成し、該車軸電動装置の車軸ケースには、前記左右の走行用電動モータとPTO用電動モータを収容することを特徴とする請求項1に記載の電動式作業車両。
【請求項7】
前記車軸ケースに単一の貫通孔を穿設し、該貫通孔に、前記走行用電動モータとPTO用電動モータを制御する複数の電線を集約して挿通することを特徴とする請求項6に記載の電動式作業車両。
【請求項8】
前記車軸ケースから前記PTO用電動モータのモータ軸の軸端を突出し、該軸端に冷却ファンを固設することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の電動式作業車両。
【請求項9】
前記作業機は、前記車体フレームの下面に装着したモア装置であり、該モア装置で刈り取った芝草を収容する集草ボックスと、該集草ボックスと前記モア装置との間を連通する排出ダクトとを備えると共に、該排出ダクトは、前記モータ間空間の一部または前記モータ間空間よりも上方を通過することを特徴とする請求項1から請求項8のうちのいずれか一項に記載の電動式作業車両。
【請求項10】
左右の走行輪を個別に駆動する左右の走行用電動モータと、該左右の走行用電動モータを有する車軸電動装置と、該車軸電動装置を下方に取り付ける車体フレームと、作業機を駆動するPTO用電動モータとを備えた電動式作業車両において、前記車軸電動装置は、左右の車軸電動装置から構成し、該左右の車軸電動装置は、それぞれに前記左右の走行用電動モータを有すると共に、前記左右の車軸電動装置の間は、連結部材にて連結し、該連結部材に、前記PTO用電動モータを有するPTO電動装置を設けたことを特徴とする電動式作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−218951(P2011−218951A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89642(P2010−89642)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000125853)株式会社 神崎高級工機製作所 (210)
【Fターム(参考)】