説明

電子カメラ、電子カメラに着脱可能なレンズ

【課題】 無駄なフォーカスブラケット撮影を回避するとともに、焦点状態の良好な画像を得ること。
【解決手段】 撮影レンズ(2)の結像状態を変化させる焦点調節部(25)と、被写体に対する撮影レンズの結像状態に関する情報を検出する焦点検出部(42)と、撮影レンズによる被写体の像を撮像して画像を生成する撮像部(41)と、焦点検出部による検出結果に基づいて撮影レンズの結像状態を変化させた後に撮像を行わせる第1の撮像と、撮影レンズの結像状態を変化させながら繰り返し複数回の撮像を行わせる第2の撮像との何れかを、撮影レンズの特性を表す情報と焦点検出部による検出結果との少なくとも一方に基づいて選択して実行する制御部(58)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体像を撮像して画像を生成する電子カメラ、電子カメラに着脱可能なレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮影レンズを移動させながら繰り返し複数回の撮影を行ういわゆるフォーカスブラケット撮影を行うカメラが提案されている。
特許文献1のカメラでは、焦点検出の結果に応じて、オートフォーカスが可能であるかを判断し、オートフォーカス結果が正しくない可能性があるときにフォーカスブラケット撮影を行う技術が開示されている。この発明では、焦点検出の結果に応じて、オートフォーカスが不可能であるか、または、遠距離と判断されたときにフォーカスブラケット撮影を行う。
【特許文献1】特開2004−144957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した特許文献1の発明は、焦点検出機構に依存して、焦点状態の良好な画像を得ることができない場合に、オートフォーカスを行う代わりにフォーカスブラケット撮影を行うものである。したがって、フォーカスブラケット撮影を行ったとしても焦点状態が良好な画像を得られない場合もある。
本発明の電子カメラおよび電子カメラに着脱可能なレンズは、無駄なフォーカスブラケット撮影を回避するとともに、焦点状態の良好な画像を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の電子カメラは、撮影レンズの結像状態を変化させる焦点調節部と、被写体に対する前記撮影レンズの結像状態に関する情報を検出する焦点検出部と、前記撮影レンズによる前記被写体の像を撮像して画像を生成する撮像部と、前記焦点検出部による検出結果に基づいて前記撮影レンズの結像状態を変化させた後に撮像を行わせる第1の撮像と、前記撮影レンズの結像状態を変化させながら繰り返し複数回の撮像を行わせる第2の撮像との何れかを、前記撮影レンズの特性を表す情報と前記焦点検出部による検出結果との少なくとも一方に基づいて選択して実行する制御部とを備える。
【0005】
なお、好ましくは、前記撮影レンズの特性を表す情報として、前記撮影レンズの位置に対する結像状態の変化を示す曲線のなだらかさを示す値を取得する取得部を備え、前記制御部は、前記曲線のなだらかさを示す値に基づいて、前記曲線のなだらかさが所定の急峻度以上である場合には、前記第2の撮像を選択して実行し、前記曲線のなだらかさが所定の急峻度未満である場合には、前記第1の撮像を選択して実行しても良い。
【0006】
また、好ましくは、前記撮影レンズの特性を表す情報として、開口絞りの大きさの変化に伴う像面移動量を取得する取得部を備え、前記制御部は、前記像面移動量が所定値未満である場合には、前記第1の撮像を選択して実行し、前記像面移動量が所定値以上である場合には、前記第2の撮像を選択して実行しても良い。
また、好ましくは、前記撮影レンズの特性を表す情報として、前記焦点調節部のロストモーションの量を示す値を取得する取得部を備え、前記制御部は、前記ロストモーションの量を示す値が所定値未満である場合には、前記第1の撮像を選択して実行し、前記ロストモーションの量を示す値が所定値以上である場合には、前記第2の撮像を選択して実行しても良い。
【0007】
また、好ましくは、前記焦点検出部は、複数の焦点検出領域における前記結像状態に関する情報を検出し、前記焦点検出部による検出結果として、前記複数の焦点検出領域のうち焦点調節に用いられる焦点検出領域と、その他の焦点検出領域との間の前記結像状態の差を取得する取得部を備え、前記制御部は、前記結像状態の差が所定値以上である場合には、前記第1の撮像を選択して実行し、前記結像状態の差が所定値未満である場合には、前記第2の撮像を選択して実行しても良い。
【0008】
また、好ましくは、前記撮影レンズの位置に対する結像状態の変化を示す曲線のなだらかさを示す値と、開口絞りの大きさの変化に伴う像面移動量と、前記焦点調節部のロストモーションの量を示す値と、複数の焦点検出領域のうち焦点調節に用いられる焦点検出領域とその他の焦点検出領域との間の結像状態の差との少なくとも1つを取得する取得部を備え、前記制御部は、前記曲線のなだらかさを示す値と、前記像面移動量と、前記ロストモーションの量を示す値と、前記結像状態の差との少なくとも1つに基づいて、前記第1の撮像と前記第2の撮像との何れかを選択して実行しても良い。
【0009】
また、好ましくは、前記取得部は、少なくとも前記曲線のなだらかさを示す値と、前記結像状態の差とを取得し、前記制御部は、前記第1の撮像と前記第2の撮像との何れかを選択する際に、前記結像状態の差を前記曲線のなだらかさを示す値よりも優先するか、または、前記結像状態の差の重みを前記曲線のなだらかさを示す値よりも大きくしても良い。
【0010】
本発明のレンズは、撮影レンズと、前記撮影レンズの結像状態を変化させる焦点調節部とを備え、電子カメラに着脱可能なレンズであって、前記撮影レンズの少なくとも一部の光学要素の位置に対する結像状態の変化を示す曲線のなだらかさを示す情報を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電子カメラおよび電子カメラに着脱可能なレンズによれば、無駄なフォーカスブラケット撮影を回避するとともに、焦点状態の良好な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、本発明の電子カメラの一例として、レンズが着脱可能な一眼レフタイプの電子カメラを用いて説明を行う。
図1は、本実施形態の電子カメラ1の構成を示す図である。図1に示すように、電子カメラ1は、レンズ2とカメラ本体3とからなる。レンズ2は、不図示のマウントなどの接続部材を介してカメラ本体3に着脱可能である。なお、レンズ2とカメラ本体3とは機械的に接続されるとともに電気的にも接続され、情報の授受が可能な構成である。
【0013】
レンズ2は、フォーカシングレンズ22を含む撮影レンズ21、絞り23、撮影レンズ21のレンズ情報をカメラ本体3に出力するレンズ情報出力部24、フォーカシングレンズ22を駆動するレンズ駆動部25、絞り23を制御する絞り制御部26の各部を備える。レンズ情報の詳細は後述する。
カメラ本体3は、メインミラー31、サブミラー32、拡散スクリーン33、コンデンサレンズ34、ペンタプリズム35、接眼レンズ37、結像レンズ38、AEセンサ39、メカシャッタ40、撮像素子41、AFモジュール42、モニタ43の各部を備える。
【0014】
AEセンサ39は、SPD(Silicon Photodiode)やCCD(Charge Coupled Device)などのセンサであり、適正露出の算出に用いる情報を取得する。撮像素子41は、CCDやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などである。AFモジュー
ル42は、結像状態として焦点ずれ量を測定する位相差方式の焦点検出を行う。なお、焦点ずれ量の詳細については後述する。
【0015】
非撮影時、すなわち撮影を行わない場合には、メインミラー31は、図1に示すように、45°の角度に配置される。そして、撮影レンズ21および絞り23を通過した光束は、メインミラー31で反射され、拡散スクリーン33、コンデンサレンズ34、ペンタプリズム35、ビームスプリッタ36を介して接眼レンズ37に導かれる。ユーザは、接眼レンズ37を介して被写体の像を目視することにより構図確認を行う。一方、拡散スクリーン33により拡散した光の一部は、ペンタプリズム35および結像レンズ38を介してAEセンサ39の撮像面上に再結像される。また、メインミラー31を透過した光束は、サブミラー32を介してAFモジュール42に導かれる。
【0016】
一方、撮影時には、メインミラー31が、破線で示す位置に退避してメカシャッタ40が開放し、撮影レンズ21からの光束は撮像素子41に導かれる。また、メカシャッタ40は、撮像素子41から信号を転送する際に遮光を行うことにより、ノイズの発生を防ぐ。
図2は、本実施形態の電子カメラ1の機能ブロック図である。電子カメラ1は、図1に示した各構成の他に、メカシャッタ40を制御するシャッタ制御部50、撮像素子41を駆動する撮像素子駆動部51、撮像素子41の出力信号に対して信号処理を施す信号処理部52、信号処理部52による信号処理の際に一時記録を行うメモリ53、着脱式記録媒体54を着脱可能で、生成された画像を記録する記録部55、モニタ43を駆動するモニタ駆動部56、ユーザ操作を受け付ける操作部57、各部を制御するCPU58を備える。操作部57は、撮像開始指示を受け付ける不図示のレリーズボタン、各種モードを選択するモード選択ボタン、複数の焦点検出領域のうち焦点調節の対象となる焦点検出領域を選択する領域選択スイッチなどを含む。CPU58は、レンズ情報出力部24、レンズ駆動部25、絞り制御部26、AEセンサ39、AFモジュール42、シャッタ制御部50、撮像素子駆動部51、記録部55、モニタ駆動部56の各部を制御するとともに、操作部57の状態を検知する。また、CPU58は、撮像素子41により生成した画像に基づいて、コントラスト方式の焦点検出を行うことが可能となっている。
【0017】
以上説明した構成の電子カメラ1について、本発明の特徴であるブラケット撮影について詳細に説明する。本実施形態の電子カメラ1は、「オートフォーカス撮影モード」、「ブラケット撮影モード」、「自動選択ブラケット撮影モード」の3種類のモードを備える。オートフォーカス撮影モードは、公知技術と同様に、自動で焦点調節を行った後に撮影を行うモードであり、ブラケット撮影モードは、公知技術と同様に、撮影レンズを移動させながら繰り返し複数回の撮影を行うモードであり、自動選択ブラケット撮影モードは、ブラケット撮影を行うか否かを自動選択して撮影を行うモードである。このようなモードの設定は、操作部57を介したユーザ操作により行われる。
【0018】
次に、電子カメラ1の撮影時の動作について、図3に示すフローチャートを用いて説明する。
ステップS1において、CPU58は、設定されたモードが自動選択ブラケット撮影モードであるか否かを判定し、自動選択ブラケット撮影モードである場合にはステップS2に進む。CPU58は、設定されたモードが自動選択ブラケット撮影モード以外のモード(オートフォーカス撮影モードまたはブラケット撮影モード)である場合には、各部を制御して設定されたモードの処理を行う。
【0019】
ステップS2において、CPU58は、自動選択に用いる情報を取得する。自動選択に用いる情報の詳細については後述する。
ステップS3において、CPU58は、ステップS2で取得した情報に基づいて、ブラ
ケット撮影を行うか否かを判定し、ブラケット撮影を行う場合にはステップS4に進む。CPU58は、ブラケット撮影を行わない場合には、各部を制御してオートフォーカス撮影モードと同様の撮影を行う。ブラケット撮影を行うか否かの判定の詳細については後述する。
【0020】
ステップS4において、CPU58は、各部を制御してブラケット撮影を行う。ブラケット撮影の詳細については後述する。ブラケット撮影を終了すると、CPU58は、生成した画像を記録部55を介して着脱式記録媒体54に記録し、一連の処理を終了する。なお、ブラケット撮影により生成された複数の画像を全て記録しても良いし、一部を選択して記録しても良い。また、ユーザにより選択された画像のみを記録しても良い。どのような記録を行うかは、ユーザ操作により設定可能にすると好ましい。
【0021】
次に、自動選択に用いる情報およびブラケット撮影を行うか否かの判定の詳細について説明する。
(1)レンズ情報として、撮影レンズの特性、特にフォーカシングレンズ22の位置に対する焦点状態(結像状態)の変化を示す曲線のなだらかさを用いる場合。
ステップS2において、CPU58は、レンズ情報出力部24から、上述した曲線のなだらかさを示す値を取得する。図4に、フォーカシングレンズ22の位置に対する焦点状態の変化を示す曲線を示す。図4の横軸は焦点ずれ量を示し、縦軸は、各位置おけるコントラストを示す。焦点ずれ量とは、焦点が合っている位置と焦点を合わせたい位置との隔たりである。焦点ずれ量が0のときは、コントラストが最大であり、ピントがちょうど合っている状態である。またプラス、マイナスのときはそれぞれ、前後にピントがずれた状態である。
【0022】
実線の曲線M1は比較的なだらかな(なだらかさの急峻度が小さい)レンズの特性を表す。破線の曲線M2はなだらかでない(なだらかさの急峻度が大きい)レンズの特性を表す。M1のようになだらかな曲線を示すレンズは、焦点がずれていても像の鮮鋭度があまり変化しない。したがって、高精度に焦点ずれ量を0に近づけても、通常は、画像の鮮鋭度が実用上変わらない。一方、M2のようになだらかでない曲線を示すレンズは、焦点がずれると像の鮮鋭度が変化する。したがって、高精度に焦点ずれ量を0に近づけることにより、画像の鮮鋭度を向上させることができる。
【0023】
図4に示す各曲線M1およびM2において、例えば、コントラストピーク値の90%のコントラストを示す点をプラス側マイナス側それぞれとると、それら2点の焦点ずれ量の差は、各曲線のピーク付近のなだらかさを表すパラメータとなる。図4では、線分d1およびd2がそれぞれの上記焦点ずれ量の差を表している。
この曲線は、絞り23の絞り値、像の位置(例えば中央か周辺か)、コントラストの方向(光軸中心の同心円の円周沿いの方向か、半径沿いの方向か)などにより異なる。したがって、それらのうち代表的な条件における焦点ずれ量の差を各条件と対応付けた表を表すデータを、レンズ2は製造時に有している。なお、レンズ2に関して、従来から利用されている情報を用いて、自動選択に適した情報を算出するようにしても良い。
【0024】
そして、ステップS3において、CPU58は、曲線のなだらかさが所定の急峻度以上である場合には、ブラケット撮影を行うと判定し、曲線のなだらかさが所定の急峻度未満である場合には、ブラケット撮影を行わないと判定する。このように判定を行うことにより、フォーカシングレンズ22の特性に起因して、フォーカスブラケット撮影を行っても、得られる画像の鮮鋭度が実用上変わらない場合に、無駄なフォーカスブラケット撮影を回避することができる。
【0025】
(2)レンズ情報として、撮影レンズの特性、特に絞り23における開口絞りの大きさ
の変化に伴う像面移動量を用いる場合。
ステップS2において、CPU58は、レンズ情報出力部24から、上述した像面移動量を取得する。レンズ2は、像面移動量に関する情報を予め有している。なお、レンズ2に関して、従来から利用されている情報を用いて、自動選択に適した情報を算出するようにしても良い。
【0026】
そして、ステップS3において、CPU58は、像面移動量が所定値未満である場合には、ブラケット撮影を行わないと判定し、像面移動量が所定値以上である場合には、ブラケット撮影を行うと判定する。
位相差方式の焦点検出に用いる光束は、撮影レンズ21の瞳の一部分を透過した光束である。このため、光束の経路により像面移動量が大きく変化する性質を持つ撮影レンズにおいては、位相差方式の焦点検出結果に基づく焦点位置が、実際の撮影時に最も鮮鋭度の高い画像を生成する位置とずれる度合いが大きい場合が多い。このような場合に、レンズ情報に基づいて補正を加えて、焦点位置を再算出する方法が知られているが、元々のずれが大きいと、一般的に補正の誤差も大きい。したがって、像面移動量が所定値以上である場合には、ブラケット撮影を行うと判定することにより、像面移動量が大きい場合に発生する補正誤差による焦点合わせ誤差を、フォーカスブラケット撮影により補うことができる。
【0027】
(3)レンズ情報として、撮影レンズの特性、特にレンズ駆動部25のロストモーションの量を用いる場合。
ステップS2において、CPU58は、レンズ情報出力部24から、上述したロストモーションの量を取得する。レンズ2は、ロストモーションの量に関する情報を予め有している。
【0028】
そして、ステップS3において、CPU58は、ロストモーションの量が所定値未満である場合には、ブラケット撮影を行わないと判定し、ロストモーションの量が所定値以上である場合には、ブラケット撮影を行うと判定する。このように判定を行うことにより、ロストモーションの量が大きい場合に焦点調節の精度が低下するのを、フォーカスブラケット撮影により補うことができる。
【0029】
(4)複数の焦点検出領域のうち焦点調節に用いる焦点検出領域とその他の焦点検出領域との間の焦点ずれ量の差を用いる場合。
ステップS2において、CPU58は、AFモジュール42から、上述した焦点ずれ量の差を取得する。
そして、ステップS3において、CPU58は、該焦点ずれ量の差(絶対値)が所定値以上である場合には、ブラケット撮影を行わないと判定し、該焦点ずれ量の差(絶対値)が所定値未満である場合には、ブラケット撮影を行うと判定する。
【0030】
一般に、焦点ずれ量の差が小さい場合には、各焦点検出領域に対応する部分の画像を拡大すると、実際には撮影距離の異なる焦点検出領域の双方が略同様の焦点状態になる場合がある。このような場合、焦点調節に用いた焦点検出領域よりも、それ以外の焦点検出領域における焦点状態がより良好であるという違和感をユーザが感じる場合がある。このような問題は接写撮影の場合などに発生しやすい。そのため、焦点ずれ量の差が所定値未満である場合には、ブラケット撮影を行って、各焦点検出領域における焦点状態が微妙に異なる複数枚の画像を生成することにより、ユーザが感じる違和感を解消することができる。
【0031】
ただし、焦点ずれ量の差が非常に小さい場合には、ユーザは違和感を感じないと考えられるので、さらに下限の値を設けて、下限値よりも焦点ずれ量の差が小さい場合には、ブ
ラケット撮影を行わないと判定する構成としても良い。
なお、上述の「その他の焦点検出領域」とは、焦点調節に用いる焦点検出領域以外の全ての焦点検出領域である必要はない。例えば、焦点調節に用いる焦点検出領域から遠い焦点検出領域を除いて判定しても良い。つまり、焦点調節に用いる焦点検出領域から遠い焦点検出領域においては、画像同士の状態を認識しにくい。したがって、このような焦点検出領域においては、上述の「焦点調節に用いた焦点検出領域よりも、それ以外の焦点検出領域における焦点状態がより良好であるという違和感」を感じる現象は起こりにくいので、除いて判定しても実用上効果はさほど変わらない。
【0032】
なお、上述した(1)〜(4)の方法を組み合わせてブラケット撮影を行うか否かの判定を行う構成としても良い。複数の方法を組み合わせる場合には、複数段階で判定を行う構成としても良いし、重み付けを行って判定を行う構成としても良い。例えば、(1)の「フォーカシングレンズ22の位置に対する焦点状態の変化を示す曲線のなだらかさ」と(4)の「焦点ずれ量の差」とを組み合わせる場合には、焦点ずれ量の差を曲線のなだらかさを示す値よりも優先するか、または、焦点ずれ量の差の重みを曲線のなだらかさを示す値よりも大きくすると良い。さらに、焦点調節の精度と焦点調節に要する時間とのバランスを考慮して判定を行うと良い。
【0033】
また、上述した(1)〜(4)以外の情報を用いて自動選択を行う構成としても良い。例えば、レンズ2の収差に関する情報、絞りやシャッタスピード等の撮影条件、上述以外の焦点調節の結果、AEセンサ39の出力などを用いるようにしても良い。
また、フォーカシングレンズ22の位置等、レンズ2の操作状態によって、上述した各情報(値)が変化する場合は、操作状態を検出して、操作状態に応じた適切な情報を用いる構成とするのが好ましい。
【0034】
次に、ブラケット撮影の詳細について説明する。ブラケット撮影には、以下の(1)〜(3)の方法が考えられる。
(1)AFモジュール42による位相差方式の焦点検出を行った後に、コントラスト方式の焦点検出に基づく焦点調節を行い、焦点調節後のフォーカシングレンズ22の位置を中心としてブラケット撮影を行う方法。
【0035】
CPU58は、メインミラー31を下げた状態(45°の角度に配置した状態)で、AFモジュール42による位相差方式の焦点検出を行い、レンズ駆動部25を制御してフォーカシングレンズ22を駆動して大まかな焦点調節を行う。次に、CPU58は、メインミラー31を上げた状態(退避した状態)で、シャッタ駆動部50を制御してメカシャッタ40を開放する。そして、CPU58は、撮像素子41の出力に基づいてコントラスト方式の焦点検出を行い、レンズ駆動部25を制御してフォーカシングレンズ22を駆動してさらに詳細な焦点調節を行う。このような手順で焦点調節を行うことにより、撮像素子41に導かれる光束と位相差方式の焦点検出に用いる光束との瞳の違いや、AFモジュール42やサブミラー32などの機械的誤差に起因する誤差を排し、より高精度な焦点調節を行うことができる。
【0036】
CPU58は、メインミラー31を下げた状態では絞り23を開放とし、メインミラー31を上げると同時に、絞り23を撮影時の絞り径に絞り込む。このような制御を行うことにより、絞り23の大きさの変化に伴う像面移動量に起因する誤差を含まない焦点調節を行うことができる。なお、メインミラー31を上げた状態では、接眼レンズ37を介した構図確認を行うことができないので、撮像素子41により生成した画像をモニタ43に表示して代替とすれば良い。
【0037】
焦点調節が終了すると、CPU58は、焦点調節後のフォーカシングレンズ22の位置
を中心として前後近傍範囲でフォーカシングレンズ22を移動させながら、繰り返し複数回の撮像を行う。また、ブラケット撮影時のフォーカシングレンズ22の移動間隔は、コントラスト方式の焦点検出時のフォーカシングレンズ22の移動間隔よりも小さくすると良い。
【0038】
(2)AFモジュール42による位相差方式の焦点検出に基づく焦点調節を行った後に、その時点のフォーカシングレンズ22の位置を中心としてブラケット撮影を行う方法。
CPU58は、(1)と同様に、メインミラー31を下げた状態で、AFモジュール42による位相差方式の焦点検出を行い、レンズ駆動部25を制御してフォーカシングレンズ22を駆動して焦点調節を行う。そして、位相差方式の焦点検出結果に基づく焦点調節が終了すると、CPU58は、(1)で説明したコントラスト方式の焦点検出は行わずにブラケット撮影を行う。このような制御を行うことにより、焦点調節に要する時間を短縮することができる。
【0039】
CPU58は、(1)と同様に、焦点調節後のフォーカシングレンズ22の位置を中心として前後近傍範囲でフォーカシングレンズ22を移動させながら、繰り返し複数回の撮像を行う。なお、上述した位相差方式の焦点検出結果に基づいて、合焦すると推定される位置にフォーカシングレンズ22を駆動する際に、ブラケット撮影を開始することにより、上記位置を中心としたブラケット撮影を行う構成としても良い。
【0040】
(3)AFモジュール42による位相差方式の焦点検出に基づく焦点調節を行った後に、絞り23を開放した状態でコントラスト方式の焦点検出に基づく焦点調節を行い、焦点調節後のフォーカシングレンズ22の位置を中心としてブラケット撮影を行う方法。
CPU58は、(1)と同様に、メインミラー31を下げた状態(45°の角度に配置した状態)で、AFモジュール42による位相差方式の焦点検出を行い、レンズ駆動部25を制御してフォーカシングレンズ22を駆動して大まかな焦点調節を行う。次に、CPU58は、(1)と同様に、メインミラー31を上げた状態(退避した状態)で、撮像素子41の出力に基づいてコントラスト方式の焦点検出を行う。
【0041】
ただし、CPU58は、絞り23を絞り込まずに、位相差方式の焦点検出後の状態と同じ開放絞りでコントラスト方式の焦点検出を行う。このような制御を行うことにより、絞り23を絞り込んでコントラスト方式の焦点検出を行う場合に比べて、撮像素子41における電荷の蓄積時間を短縮し、コントラスト方式の焦点検出に要する時間を短縮することができる。そして、焦点調節が終了すると、CPU58は、(1)と同様に、ブラケット撮影を行う。
【0042】
なお、上述した(1)〜(3)の方法の何れかを常に行う構成としても良いし、自動選択の方法に応じて(1)〜(3)の方法の何れかを選択して実行する構成としても良い。また、他の方法でブラケット撮影を行うようにしても良い。
以上説明したように、本実施形態によれば、撮影レンズの結像状態を変化させる焦点調節部と、被写体に対する撮影レンズの結像状態に関する情報を検出する焦点検出部と、撮影レンズによる被写体の像を撮像して画像を生成する撮像部とを備える。そして、焦点検出部による検出結果に基づいて撮影レンズの結像状態を変化させた後に撮像を行わせる第1の撮像と、撮影レンズの結像状態を変化させながら繰り返し複数回の撮像を行わせる第2の撮像との何れかを、撮影レンズの特性を表す情報と焦点検出部による検出結果との少なくとも一方に基づいて選択して実行する。したがって、無駄なフォーカスブラケット撮影を回避するとともに、焦点状態の良好な画像を得ることができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、撮影レンズの特性を表す情報として、撮影レンズの位置に対する結像状態の変化を示す曲線のなだらかさを示す値を取得し、曲線のなだらかさを示
す値に基づいて、曲線のなだらかさが所定の急峻度以上である場合には、第2の撮像を選択して実行し、曲線のなだらかさが所定の急峻度未満である場合には、第1の撮像を選択して実行する。したがって、撮影レンズの特性に起因して、フォーカスブラケット撮影を行っても、得られる画像の鮮鋭度が実用上変わらない場合に、無駄なフォーカスブラケット撮影を回避することができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、撮影レンズの特性を表す情報として、開口絞りの大きさの変化に伴う像面移動量を取得し、像面移動量が所定値未満である場合には、第1の撮像を選択して実行し、像面移動量が所定値以上である場合には、第2の撮像を選択して実行する。したがって、像面移動量が大きい場合に発生する補正誤差による焦点合わせ誤差を、フォーカスブラケット撮影により補うことができる。そのため、焦点状態の良好な画像を得ることができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、撮影レンズの特性を表す情報として、焦点調節部のロストモーションの量を示す値を取得し、ロストモーションの量を示す値が所定値未満である場合には、第1の撮像を選択して実行し、ロストモーションの量を示す値が所定値以上である場合には、第2の撮像を選択して実行する。したがって、ロストモーションの量が大きい場合に焦点調節の精度が低下するのを、フォーカスブラケット撮影により補うことができる。そのため、焦点状態の良好な画像を得ることができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、焦点検出部は、複数の焦点検出領域における結像状態に関する情報を検出する。そして、焦点検出部による検出結果として、複数の焦点検出領域のうち焦点調節に用いられる焦点検出領域と、その他の焦点検出領域との間の結像状態の差を取得し、結像状態の差が所定値以上である場合には、第1の撮像を選択して実行し、結像状態の差が所定値未満である場合には、第2の撮像を選択して実行する。したがって、結像状態の差が小さい場合にユーザが感じる違和感を解消することができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、撮影レンズの位置に対する結像状態の変化を示す曲線のなだらかさを示す値と、開口絞りの大きさの変化に伴う像面移動量と、焦点調節部のロストモーションの量を示す値と、複数の焦点検出領域のうち焦点調節に用いられる焦点検出領域とその他の焦点検出領域との間の結像状態の差との少なくとも1つを取得し、曲線のなだらかさを示す値と、像面移動量と、ロストモーションの量を示す値と、結像状態の差との少なくとも1つに基づいて、第1の撮像と第2の撮像との何れかを選択して実行する。したがって、撮影時の状況や電子カメラの特徴に応じて、無駄なフォーカスブラケット撮影を回避するとともに、焦点状態の良好な画像を得ることができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、曲線のなだらかさを示す値と、結像状態の差とを取得し、第1の撮像と第2の撮像との何れかを選択する際に、結像状態の差を曲線のなだらかさを示す値よりも優先するか、または、結像状態の差の重みを曲線のなだらかさを示す値よりも大きくする。したがって、撮影レンズの特性に起因して、フォーカスブラケット撮影を行っても、得られる画像の鮮鋭度が実用上変わらない場合であっても、結像状態の差が小さい場合には、第2の撮像を選択してユーザが感じる違和感を解消することができる。
【0049】
なお、本実施形態では、位相差方式およびコントラスト方式の焦点検出を行う例を示したが、焦点調節の方法はこの例に限定されず、被写体とカメラとの距離を測定する測距方式による測距結果に基づくものであっても良い。
また、本実施形態では、「オートフォーカス撮影モード」、「ブラケット撮影モード」、「自動選択ブラケット撮影モード」の3種類のモードを備える例を示したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、「オートフォーカス撮影モード」および「ブラケット撮影モード」の2種類のモードを備え、「ブラケット撮影モード」において、本実施形態で
説明した「自動選択ブラケット撮影モード」の処理を行う構成としても良い。
【0050】
また、本実施形態では、図3のフローチャートで説明したように、ブラケット撮影を行わないと判定した場合にはオートフォーカス撮影モードと同様の撮影を行う例を示したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、ブラケット撮影を行わないと判定した場合に、ブラケット撮影を行わない代わりに、位相差方式の焦点検出結果に基づいて、さらに、コントラスト方式の焦点検出を行う構成としても良い。また、ブラケット撮影を行わないと判定した場合に、モニタ43などを用いてユーザに対して警告を行う構成としても良い。
【0051】
また、本実施形態では、レンズ2とカメラ本体3とからなる電子カメラ1を用いて説明を行ったが、レンズ一体型の電子カメラにも本発明を同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施形態の電子カメラ1の構成を示す図である。
【図2】本実施形態の電子カメラ1の機能ブロック図である。
【図3】本実施形態の電子カメラ1の動作を示すフローチャートである。
【図4】レンズ情報について説明する図である。
【符号の説明】
【0053】
1,電子カメラ 2,レンズ 3,カメラ本体 22,フォーカシングレンズ 23,絞り 24,レンズ情報出力部 25,レンズ駆動部 39,AEセンサ 41,撮像素子
42,AFモジュール 57,操作部 58,CPU


【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズの結像状態を変化させる焦点調節部と、
被写体に対する前記撮影レンズの結像状態に関する情報を検出する焦点検出部と、
前記撮影レンズによる前記被写体の像を撮像して画像を生成する撮像部と、
前記焦点検出部による検出結果に基づいて前記撮影レンズの結像状態を変化させた後に撮像を行わせる第1の撮像と、前記撮影レンズの結像状態を変化させながら繰り返し複数回の撮像を行わせる第2の撮像との何れかを、前記撮影レンズの特性を表す情報と前記焦点検出部による検出結果との少なくとも一方に基づいて選択して実行する制御部と
を備えたことを特徴とする電子カメラ。
【請求項2】
請求項1に記載の電子カメラにおいて、
前記撮影レンズの特性を表す情報として、前記撮影レンズの位置に対する結像状態の変化を示す曲線のなだらかさを示す値を取得する取得部を備え、
前記制御部は、前記曲線のなだらかさを示す値に基づいて、前記曲線のなだらかさが所定の急峻度以上である場合には、前記第2の撮像を選択して実行し、前記曲線のなだらかさが所定の急峻度未満である場合には、前記第1の撮像を選択して実行する
ことを特徴とする電子カメラ。
【請求項3】
請求項1に記載の電子カメラにおいて、
前記撮影レンズの特性を表す情報として、開口絞りの大きさの変化に伴う像面移動量を取得する取得部を備え、
前記制御部は、前記像面移動量が所定値未満である場合には、前記第1の撮像を選択して実行し、前記像面移動量が所定値以上である場合には、前記第2の撮像を選択して実行する
ことを特徴とする電子カメラ。
【請求項4】
請求項1に記載の電子カメラにおいて、
前記撮影レンズの特性を表す情報として、前記焦点調節部のロストモーションの量を示す値を取得する取得部を備え、
前記制御部は、前記ロストモーションの量を示す値が所定値未満である場合には、前記第1の撮像を選択して実行し、前記ロストモーションの量を示す値が所定値以上である場合には、前記第2の撮像を選択して実行する
ことを特徴とする電子カメラ。
【請求項5】
請求項1に記載の電子カメラにおいて、
前記焦点検出部は、複数の焦点検出領域における前記結像状態に関する情報を検出し、
前記焦点検出部による検出結果として、前記複数の焦点検出領域のうち焦点調節に用いられる焦点検出領域と、その他の焦点検出領域との間の前記結像状態の差を取得する取得部を備え、
前記制御部は、前記結像状態の差が所定値以上である場合には、前記第1の撮像を選択して実行し、前記結像状態の差が所定値未満である場合には、前記第2の撮像を選択して実行する
ことを特徴とする電子カメラ。
【請求項6】
請求項1に記載の電子カメラにおいて、
前記撮影レンズの位置に対する結像状態の変化を示す曲線のなだらかさを示す値と、開口絞りの大きさの変化に伴う像面移動量と、前記焦点調節部のロストモーションの量を示す値と、複数の焦点検出領域のうち焦点調節に用いられる焦点検出領域とその他の焦点検出領域との間の結像状態の差との少なくとも1つを取得する取得部を備え、
前記制御部は、前記曲線のなだらかさを示す値と、前記像面移動量と、前記ロストモーションの量を示す値と、前記結像状態の差との少なくとも1つに基づいて、前記第1の撮像と前記第2の撮像との何れかを選択して実行する
ことを特徴とする電子カメラ。
【請求項7】
請求項6に記載の電子カメラにおいて、
前記取得部は、少なくとも前記曲線のなだらかさを示す値と、前記結像状態の差とを取得し、
前記制御部は、前記第1の撮像と前記第2の撮像との何れかを選択する際に、前記結像状態の差を前記曲線のなだらかさを示す値よりも優先するか、または、前記結像状態の差の重みを前記曲線のなだらかさを示す値よりも大きくする
ことを特徴とする電子カメラ。
【請求項8】
撮影レンズと、前記撮影レンズの結像状態を変化させる焦点調節部とを備え、電子カメラに着脱可能なレンズであって、
前記撮影レンズの少なくとも一部の光学要素の位置に対する結像状態の変化を示す曲線のなだらかさを示す情報を有する
ことを特徴とするレンズ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−121780(P2007−121780A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315327(P2005−315327)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】