説明

電子内視鏡装置

【課題】照明光源と共に同一空間内に配置される電子回路が、照明光源の駆動による電磁的干渉受け難くして、照明光源からの電磁妨害を抑制する内視鏡装置の提供。
【解決手段】電子内視鏡装置は、被検体に挿入される挿入部を巻回収納する回動部6と、この回動部6に接続される本体部8と、回動部6内に配設され、照明部へ伝送する照明光を発光する光源51と、回動部6内に配設され、撮像装置からの信号を画像処理する回路基板を含む電子回路21,24と、具備して、光源51と電子回路21,24のそれぞれを回動部6の回動中心Oに対して互いに離間する位置に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野及び工業分野において、細長な内視鏡挿入部を有する内視鏡装置が広く使用されている。
医療分野において用いられる内視鏡は、細長い挿入部を体腔内に挿入することによって、体腔内の臓器を観察したり、必要に応じて処置具の挿通チャンネル内に挿入した処置具を用いて各種処置をしたりすることができる。
【0003】
これに対して、工業用分野において用いられる内視鏡は、挿入部を各種工場内のボイラー、ガスタービンエンジン、自動車エンジンのボディ、各種プラントの配管などに挿入することによって、被検部位の傷及び腐蝕等の観察、並びに検査等を行うことができる。
【0004】
このような内視鏡装置は、挿入部が挿入される生体内、または配管内を照明する光源装置を備えているものがある。
【0005】
例えば、特許文献1に開示されるように、照明光用の光源ランプの他に照明光用のレーザダイオードを用いた内視鏡装置が提案されている。この従来の内視鏡装置は、レーザダイオードを冷却するペルチェ素子などを備え、このペルチェ素子にヒートシンクを密着固定して、ファンにより強制給排気してヒートシンクの熱を冷却、放熱させることで、レーザダイオードの高温化を防止した技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−43271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の内視鏡装置のように、照明光源にレーザダイオードを用いた場合、ハロゲンランプに比して、駆動するレーザダイオードから放射ノイズ(放射電磁波)が生じ、このレーザダイオードと同一空間内に配置される電子回路が電磁的干渉を受けて電磁妨害(EMI)が生じる可能性がある。また、照明光源にレーザダイオードを用いなくとも、例えば、キセノンランプを用いた場においても、キセノンランプの放電によって、このキセノンランプと同一空間内に配置される電子回路が電磁的干渉を受けて電磁妨害(EMI)が生じる可能性がある。
【0008】
そこで、照明光源と共に同一空間内に配置される電子回路が、照明光源の駆動による電磁的干渉受け難くして、照明光源からの電磁妨害を抑制する電子内視鏡装置が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施態様に係る電子内視鏡装置は、照明部と撮像装置を備えた電子内視鏡装置において、被検体に挿入される挿入部を巻回収納する回動部と、前記回動部に接続される本体部と、前記回動部内に配設され、前記照明部へ伝送する照明光を発光する光源と、前記回動部内に配設され、前記撮像装置からの信号を画像処理する回路基板を含む電子回路と、を備え、前記光源と前記電子回路とは、前記回動部の回動中心に対して互いに離間する位置に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、照明光源と共に同一空間内に配置される電子回路が、照明光源の駆動による電磁的干渉受け難くして、照明光源からの電磁妨害を抑制する電子内視鏡装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】電子内視鏡装置の全体構成を示す斜視図
【図2】電子内視鏡装置の内部構成を示すブロック図
【図3】ドラム部内を示す断面斜視図
【図4】レーザダイオード(LD)ユニットの構成を示す断面斜視図
【図5】ドラム部内に配置される構成のレイアウトの一例を示す断面図
【図6】ドラム部の外方となる蓋体表面方向から見た構成を示す断面図
【図7】ドラム部の内部であって、カバー体の側面方向を見た構成を示す断面図
【図8】カバー体を含むドラム部の構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明である電子内視鏡装置について説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態に基づく図面は、模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、夫々の部分の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0013】
先ず、図面に基づいて本発明の一実施の形態を説明する。なお、以下の説明において、例えば、工業用内視鏡装置を例示する。
また、図1から図8は本発明の一実施の形態に係り、図1は電子内視鏡装置の全体構成を示す斜視図、図2は電子内視鏡装置の内部構成を示すブロック図、図3はドラム部内の構成を示す断面斜視図、図4はレーザダイオード(LD)ユニットの構成を示す断面斜視図、図5はドラム部内に配置される構成のレイアウトの一例を示す断面図、図6はドラム部の外方となる蓋体表面方向から見た構成を示す断面図、図7はドラム部の内部であって、カバー体の側面方向を見た構成を示す断面図、図8はカバー体を含むドラム部の構成を示す断面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態の電子内視鏡装置(以下、単に内視鏡装置という)1は、先端から順に先端部3、湾曲部4、および可撓管部5が連設された長尺な挿入部2と、回動自在に配設され挿入部2を巻回収納する回動部であるドラム部6と、このドラム部6の外周部を所定の距離だけ離間して覆うように配設され、ドラム部6と一体的に回動する略円筒状のカバー体7と、ドラム部6、およびカバー体7が回動自在に接続される箱状の本体部8と、この本体部8の上部に配設され起伏自在なモニタ9と、複数のパイプが繋ぎ合わされたプロテクションフレーム10と、を有して構成されている。
【0015】
図2に示すように、挿入部2の先端部3には、対物光学系、およびCCD、CMOSなどのイメージセンサを有する撮像装置11と、レーザ光が光ファイバによって伝送されて照明光を前方へ照射する照明光学系である照明部12と、が内蔵されている。また、挿入部2の湾曲部4は、図示しない複数の湾曲駒が回動自在に連設され、これら複数の湾曲駒を牽引弛緩することで回動させる4本の湾曲操作ワイヤ15が設けられている。これら4本の湾曲操作ワイヤ15は、湾曲部4を湾曲可変するためのアクチュエータ13における4つの人工筋肉部となる膨張収縮体14にそれぞれ接続されている。
【0016】
なお、アクチュエータ13は、湾曲部4の基端直近の可撓管部5の先端部分に配設されている。そして、アクチュエータ13の4つの膨張収縮体14は、流体(エア)の給排により前後方向に伸縮するように構成された柔軟な中空のシリコンチューブなどから構成されている。これら4つの膨張収縮体14のそれぞれからは、可撓管部5に配設された4つのエアチューブのいずれかの一端が接続されている。
【0017】
湾曲制御電磁弁ユニット23は、内部の4つの電磁弁によって、流体(エア)の給排気を制御し、これら4つの電磁弁の二次側のそれぞれがアクチュエータ13まで延設された4つのエアチューブのいずれかの他端に接続されている。
【0018】
この湾曲制御電磁弁ユニット23は、本体部8に設けられる空気圧調整器33とエアチューブなどを介して連通している。つまり、湾曲制御電磁弁ユニット23は、空気圧調整器33からエアチューブなどを介して、4つの電磁弁の一次側に流体(エア)が供給される。また、湾曲制御電磁弁ユニット23は、湾曲制御回路24と電気的に接続され、この湾曲制御回路24によって駆動制御される。
【0019】
このように、本実施の形態の内視鏡装置1は、アクチュエータ13の4つの膨張収縮体14への流体(エア)の給排により前後に伸縮制御することで、各湾曲操作ワイヤ15が牽引弛緩され、複数の湾曲駒が回動して、挿入部2の湾曲部4が湾曲可変する構成となっている。なお、湾曲制御回路24は、後述する、スリップリング25を介して、本体部8内の制御部32と電気的に接続されている。
【0020】
ドラム部6には、照明光源ユニットであるLD(レーザダイオード)ユニット20と、撮像制御ユニットであって、撮像部11からの撮像信号を画像信号処理する回路基板を備えた電子回路であるカメラコントロールユニット21と、照明制御回路22と、4つの電磁弁が配設された湾曲制御電磁弁ユニット23と、湾曲制御回路24と、スリップリング25と、が内蔵されている。
【0021】
カメラコントロールユニット21は、先端部3の撮像装置11と電気的に接続されて駆動制御し、スリップリング25を介して、本体部8に設けられた制御部32とも電気的に接続されている。
【0022】
LDユニット20は、レーザ光を照明部12に伝送する光ファイバと接続されている。この光ファイバは、湾曲部4、および可撓管部5に挿通配置され、先端部3の照明部12まで延設されている。なお、LDユニット20を駆動制御する照明制御回路22も、スリップリング25を介して、本体部8内の制御部32と電気的に接続されている。なお、LDユニット20の詳細な説明については後述する。
【0023】
本体部8には、電源回路31と、この電源回路31と電気的に接続されたメインCPUとなる制御部32と、エアフィルタを備えた空気圧調整器33と、が内蔵されている。また、本体部8には、電源回路31への外部電源用のプラグ34、および2次電池である着脱自在なバッテリ35と、空気圧調整器33へ流体(エア)を供給する工場などのエア配管に接続するエアコネクタ36、および2次流体供給源である着脱自在なガスカートリッジ37と、が設けられている。
【0024】
そして、本体部8には、制御部32と電気的に有線接続され、湾曲部4の湾曲操作、各種設定などの操作指示を行なうための操作リモコン38、および上述のモニタ9が設けられている。なお、操作リモコン38は、無線により制御部32へ指示信号を出力するようにしても良い。
【0025】
本実施の形態の内視鏡装置1は、ドラム部6が本体部8に回動支持機構であるロータリジョイント機構40によって、回動自在に接続されている。そして、内視鏡装置1は、回動自在なドラム部6に挿入部2を巻回収納できるようになっている。
【0026】
ロータリジョイント機構40は、ドラム部6と一体的に回動されるように固定され、本体部8と、この本体部8に対して回動するドラム部6と、を電気的に接続するスリップリング25が配設されている。つまり、スリップリング25は、上述したように、本体部8に対して回動するドラム部6内に設けられるカメラコントロールユニット21、照明制御回路22、湾曲制御電磁弁ユニット23、および湾曲制御回路24のそれぞれと、本体部8内に設けられる制御部32と、が各種電気信号を授受できるように、電気的に接続させる。
【0027】
ここで、ドラム部6のさらに詳しい構成、およびこのドラム部6に配設される構成要素について、主に図3、および図4に基づいて、以下に説明する。
ドラム部6は、図3に示すように、挿入部2が外周面に巻回する円筒状の、例えば、金属性の胴部41を有し、この胴部41の開口部を覆う略円板状の、例えば、金属性の蓋体42(図7参照、図3では不図示)が回動軸に直交する外方側面として配設されている。
【0028】
胴部41は、断面略コの字状で円筒状のカバー体7に収容されている。この胴部41は、中心位置がカバー体7の中心位置と同心上となるように、カバー体7の本体部8側に配置された回動軸に直交するドラム部6の内方側面となるベース面43にビスなどの固定部材によって固定されている。これら胴部41とカバー体7の中心位置は、ドラム部6とカバー体7における回動軸となる。
【0029】
なお、カバー体7は、例えば、金属製であって、そのベース面43と、本体部8と反対側へ延設され、ベース面43に対して直交する周方向へ円筒状に延びる挿入部巻回面44に複数の孔部7aが穿設されている。これらの孔部7aは、カバー体7を軽量化すると共に、ドラム部6と一体的に回動するカバー体7への空気抵抗を軽減する。
【0030】
また、ドラム部6は、胴部41と、この胴部41の一方の開口部を塞ぐ蓋体42、および他方の開口部を塞ぐカバー体7のベース面43によって囲まれた空間部45内に、カメラコントロールユニット21、照明制御回路22、湾曲制御電磁弁ユニット23、湾曲制御回路24、スリップリング25、およびロータリジョイント機構40の一部が配置固定されている。
【0031】
カメラコントロールユニット21は、本体部8の制御部32との信号を授受し、イメージセンサを有する撮像装置11からの撮像信号の画像処理を行なう各種電子部品が実装された基板から構成させている。また、照明制御回路22も、制御部32との信号を授受し、LDユニット20の各種構成要素を駆動制御する各種電子部品が実装された基板から構成させている。そして、湾曲制御回路24も、制御部32との信号を授受し、湾曲制御電磁弁ユニット23の4つの電磁弁を駆動制御する各種電子部品が実装された基板から構成させている。
【0032】
なお、本実施の形態のLD(レーザダイオード)ユニット20は、図4に示すように、光源であるレーザダイオード(LD)(半導体レーザ、ダイオードレーザともいう)51と、吸熱面がレーザダイオード51の筐体ブロックに面接触配置されたペルチェ素子52(図7参照、図4では不図示)と、ペルチェ素子52の吸熱面とは反対側の発熱(放熱)面と面接触配置されたヒートシンク53と、ヒートシンク53の複数の放熱フィンが延設する端面側に固定された冷却ファン54と、レーザダイオード51を介してペルチェ素子52をヒートシンク53に押圧した状態にして、レーザダイオード51とヒートシンク53を固定する、例えば、金属性の固定環55と、を備えた光源ユニット50を有し、閉塞空間を構成し、光源ユニット50の主にレーザダイオード51を覆って収容するLDユニットフレーム56を備えている。
【0033】
なお、ペルチェ素子52は、レーザダイオード51とヒートシンク53の間に挟まれた状態で配置されている。そのため、固定環55による締め付けによって、レーザダイオード51からの押圧力でペルチェ素子52が破損しないように、固定環55とレーザダイオード51とが直接当接しないように、緩衝性のある弾性部材が固定環55とレーザダイオード51の間に配設されている。また、固定環55は、上部側が円柱状で下部側が矩形状をしており、この上部側でレーザダイオード51のレーザ照射端が露出させて、ペルチェ素子52を下部側へ押圧している。
【0034】
なお、LDユニットフレーム56は、例えば、金属ボックスであって、一面から延出するように、挿入部2の可撓管部5が接続されている。また、LDユニットフレーム56は、紙面の上方から見た形状が略L字状であって、長辺側の直交する2つの面を斜めに接続する斜面を有するよう、略L字状の外方角部が切り欠かれた形状をしている。そして、レーザダイオード51の発光出射端には、発光したレーザ光を伝送する、図示しない、光ファイバが接続され、この光ファイバが挿入部2に挿通されている。
【0035】
このように、本実施の形態の内視鏡装置1は、照明光源にレーザダイオード51を採用することで、指向性の高いレーザ光による照明光を管路深部まで照射することができる。そのため、本実施の形態の内視鏡装置1は、工業用に適した構成となっている。なお、レーザダイオード51からのレーザ光は、小さい出力とすることで、勿論、医療用の内視鏡装置にも適用できることは言うまでもない。
【0036】
続いて、ドラム部6内に配設される構成要素の配置レイアウトの一例について、主に図5から図8に基づいて、以下に説明する。
図5に示すうに、ドラム部6の空間部45において、撮像信号の画像処理を行なう各種電子部品が実装された基板を有するカメラコントロールユニット21とLDユニット20のレーザダイオード51が回動軸となるロータリジョイント機構40、およびスリップリング25の回動中心Oの点対称方向に所定の距離だけ離間するよう配置固定されている。つまり、カメラコントロールユニット21とレーザダイオード51とは、ドラム部6の回動中心に対して互いに離間する位置に配置されている。
【0037】
さらに、湾曲制御回路24も、レーザダイオード51の配置位置に対して、ロータリジョイント機構40、およびスリップリング25の回動中心Oの点対称方向に所定の距離だけ離間するよう配置固定されている。なお、湾曲制御電磁弁ユニット23は、湾曲制御回路24からの信号伝送路が短くなるよう隣接した近傍位置、ここでは回動中心Oから離れる方向のドラム部6外方(外周部)側に配置されている。
【0038】
そして、照明制御回路22は、LDユニット20への信号伝送路が短くなるように、隣接した近傍位置、図5におけるLDユニット20の上方側に配置されている。
【0039】
このように、本実施の形態の内視鏡装置1は、複数の電子回路(カメラコントロールユニット21、照明制御回路22、および湾曲制御回路24)と、照明光をレーザ光として、光源にレーザダイオード51を用いた光源装置(LDユニット20)と、が挿入部2を巻回収納するドラム部6の内部の空間部45に配置した構成として、高周波の電圧が印加されて高周波発光するレーザダイオード51から離れた位置となるように回動軸の回動中心Oの点対称方向に所定の距離だけ離間するように、電磁妨害を受け易い撮像信号の画像処理を行なうカメラコントロールユニット21を配置した構成となっている。
【0040】
特に、カメラコントロールユニット21は、撮像装置11から出力された撮像信号の画像処理を行なう電子回路であり、電磁妨害を受けると、処理した画像信号にノイズが乗ってしまい、モニタ9に表示される内視鏡画像の画質低下の原因となる。
【0041】
そのため、照明光源であるレーザダイオード51と共に同一のドラム部6の空間部45内に配置される電子回路のカメラコントロールユニット21は、レーザダイオード51から離れた位置となるように回動軸の回動中心Oの点対称方向に離れた位置に配置され、レーザダイオード51の駆動によって高周波発光からの電磁的干渉が受け難くなり、レーザダイオード51からの電磁妨害が抑制される。
【0042】
したがって、本実施の形態の内視鏡装置1は、カメラコントロールユニット21がレーザダイオード51からの電磁妨害を抑制され、動作が阻害され難い配置構成となっている。
同様に、レーザダイオード51と共に同一のドラム部6の空間部45内に配置される湾曲制御回路24も、レーザダイオード51から離れた位置となるように回動軸の回動中心Oの点対称方向に離れた位置に配置されているため、レーザダイオード51からの電磁妨害が抑制され、動作が阻害され難い配置構成としている。これにより湾曲制御回路24から出力される制御信号にもノイズが乗り難く、この湾曲制御回路24によって駆動制御される湾曲制御電磁弁ユニット23の動作も阻害され難くなる。
【0043】
さらに、LDユニット20、カメラコントロールユニット21、照明制御回路22、および湾曲制御回路24が配置されるドラム部6の空間部45は、全て、金属性の胴部41、蓋体42、およびカバー体7のベース面43から構成されたドラム部6の金属筐体部品によって囲まれた空間とすることで、外部機器との電磁的な不干渉性を保つことができる構成となっている。
【0044】
また、レーザダイオード(LD)ユニット20は、LDユニットフレーム56を略L字状として、上述したように、長辺側の直交する2つの面を斜めに接続する斜面を形成しているため、図5に示すように、ドラム部6の胴部41に干渉しないように配置されている。さらに、LDユニットフレーム56は、略L字状として、短辺側の直交する2つの面を形成し、これら2つの面がロータリジョイント機構40を対向するように回避している。このように、レーザダイオード(LD)ユニット20を略L字状のブロック形状とすることで、スペースが制約されるドラム部6の空間部45内のデッドスペースを無くし、各種構成要素を無駄なく効率的に配置できるようにすることができる。
【0045】
なお、上述では、照明光源をレーザダイオード51としたが、これに限定することなく、各種光源(各種発光素子など)にも適用できる。特に、光源にキセノンランプを用いた場合、キセノンランプの放電を受けて、各種電子回路に電磁的干渉が生じる可能性が高くなる。そのため、キセノンランプから離れた位置となるように回動軸の回動中心Oの点対称側に各種電子回路を配置することで、キセノンランプの放電による電磁妨害を抑制することができる。
【0046】
ところで、ドラム部6の空間部45は、高周波発光するレーザダイオード51の駆動により、レーザダイオード51が高温化する発熱体となって、例えば、50℃程に温度が上昇する。そのため、上述したように、LDユニット20の光源ユニット50は、レーザダイオード51からの熱をペルチェ素子52によって吸熱して、その熱をヒートシンク53に伝熱し、ヒートシンク53の放熱を冷却ファン54によって、吸気して熱を空間部45内に拡散して、レーザダイオード51の温度上昇を抑制している。
【0047】
しかし、冷却ファン54が拡散する熱を排気しないと、空間部45内が高温化して、空間部45内の各種機械的構成部品(湾曲制御電磁弁ユニット23など)、および電気的構成部品(カメラコントロールユニット21、照明制御回路22、湾曲制御回路24など)の使用温度範囲を超えてしまう可能性が生じる。
【0048】
そのため、本実施の形態のドラム部6は、空間部45内の高温化を防止して、効率良く熱を排気する構成を備えている。
【0049】
具体的には、図6、および図7に示すように、ドラム部6の側面(ここでは、回動する軸に対して、略直交する面)となる、蓋体42と、カバー体7のベース面43と、のそれぞれに回動中心O回りに、等間隔で離間する複数、ここでは4つの円弧状の孔部42a,43aが形成されている。
【0050】
そして、ドラム部6の空間部45に配置された光源ユニット50は、図8に示すように、外気に近接した位置、すなわち、本体部8から離れる方向のドラム部6の蓋体42に近接した位置に、レーザダイオード51が配置され、本体部8に向かって、ペルチェ素子52、ヒートシンク53、および冷却ファン54の順で配置されている。つまり、冷却ファン54は、カバー体7のベース面43に近接した位置に配置されている。
【0051】
このような構成とすることで、冷却ファン54により、吸気されたヒートシンク53の熱がカバー体7のベース面43に形成された複数の孔部43aから排出される。また、冷却ファン54が蓋体42側からカバー体7のベース面43側への送風方向で駆動するため、蓋体42に形成された複数の孔部42aが外気を吸気する吸気口となり、カバー体7のベース面43に形成された複数の孔部43aがドラム部6の空間部45内に滞留する温められた空気を排気する排気口となる方向の気流(図8の破線矢印A)が生じる。
【0052】
これにより、ドラム部6は、冷却ファン54の駆動時、常に外気が複数の孔部42aから空間部45内へ入り込み、空間部45内の熱が複数の孔部43aから排気されるため、空間部45内が各種機械的構成部品、および電気的構成部品の使用温度範囲を超えて高温化することが防止されている。
【0053】
さらに、蓋体42に近接した位置にレーザダイオード51を配置しているため、複数の孔部42aから吸気された外気により、いち早くレーザダイオード51に作用する。そのため、レーザダイオード51の熱が外気に吸熱されて、レーザダイオード51の高温化が抑制される。
【0054】
このように、本実施の形態のドラム部6は、光源ユニット50のレーザダイオード51と冷却ファン54の配置位置、および冷却ファン54の送風方向を規定することで、空間部45内に蓋体42からカバー体7のベース面43方向への気流Aを発生させ、効率良く、蓋体42に形成された複数の孔部42aから外気を取り込んで、カバー体7のベース面43に形成された複数の孔部43aから空間部45内の熱を排出するようしたため、空間部45内の高温化が防止される。
【0055】
また、本体部8内には、電源回路31、制御部32などの電気的回路構成が設けられおり、内部が高温化するのを防止する周知の冷却手段(不図示)が配設されている。そのため、ドラム部6は、蓋体42に形成された複数の孔部42aから本体部8の放熱に影響の少ない外気を取り込み、本体部8に近接するカバー体7のベース面43に形成された複数の孔部43aから空間部45内の熱を排気する方向の気流Aとすることで、本体部8からの熱を取り込まないようにして、熱影響を受け難い構成となっている。
【0056】
ところで、本実施の形態の内視鏡装置1は、工業用を例示している。この工業用の内視鏡装置1は、室外環境で使用される場合がある。そのため、内視鏡装置1は、ドラム部6の空間部45内に、雨水などの液体の浸入を極力防止する防滴手段を備えている。
【0057】
具体的には、図8に示すように、ドラム部6の蓋体42は、回動中心(O)と同心の円筒状部が外方へ突起し、この円筒状部の突起端に外向フランジが形成された防滴部62と、回動中心(O)と同心の円筒部が空間部45側へ延設され、上述の複数の孔部42aが底面部に形成された防滴のための凹部63と、を有している。
【0058】
また、ロータリジョイント機構40は、蓋体42の防滴部62から、さらに外方へ突起しており、この突起部分に蓋体42と接触しない状態で、防滴部62の外向フランジにラップする、断面コの字状の円盤である防滴キャップ61が回動中心(O)と同心となるように設けられている。つまり、防滴キャップ61の外周部を構成する円筒状壁部が防滴部62の外向フランジを越えて蓋体42側へラップしており、これにより雨水などの液体がドラム部6の空間部45内に複数の孔部42aを介して入り込むことが防止される。
【0059】
また、防滴キャップ61は、防滴部62の外向フランジと接触することなく、外向フランジと周方向に所定の距離だけ離間するように、ロータリジョイント機構40に固定されている。そのため、防滴キャップ61が防滴部62を含む蓋体42と非接触であるため、蓋体42に形成された複数の孔部42aから空間部45内へ取り込む外気を遮断することなく、上述の気流Aを発生させることができる。
【0060】
さらに、カバー体7のベース面43にも、回動中心(O)と同心の円筒状部が外方へ突起し、この円筒状部の突起端に外向フランジが形成された防滴部64が形成されている。そして、本体部8のドラム部6と対向する筐体71の一面には、カバー体7のベース面43と接触しない状態で、防滴部64の外向フランジにラップする、円筒状壁部72が回動中心(O)と同心となるように延設されている。ここでも、円筒状壁部72が防滴部64の外向フランジを越えてカバー体7のベース面43側へラップしており、これにより雨水などの液体がドラム部6の空間部45内に複数の孔部43a入り込むことが防止される。
【0061】
さらに、本体部8の筐体71の一面には、円筒状壁部72の上下に所定の距離だけ離間した位置にカバー体7のベース面43と接触しないように、ベース面43側へ円筒状壁部72と所定の距離だけ離間してラップするように突起した、板状の庇73が設けられており、さらに、これら庇73によって、雨水などの液体がドラム部6の空間部45内に複数の孔部43a入り込むことを防止している。
【0062】
そして、円筒状壁部72、および庇73は、防滴部64の外向フランジと接触することなく、外向フランジと周方向に所定の距離だけ離間しているため、カバー体7のベース面43に形成された複数の孔部43aから排気される空間部45内の熱を遮断することなく、上述の気流Aを発生させることができる。
【0063】
以上の実施の形態に記載した発明は、その実施の形態、および変形例に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0064】
例えば、実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0065】
1…内視鏡装置
2…挿入部
3…先端部
4…湾曲部
5…可撓管部
6…ドラム部
7…カバー体
7a…孔部
8…本体部
9…モニタ
10…プロテクションフレーム
11…撮像装置
12…照明部
13…アクチュエータ
14…膨張収縮体
15…湾曲操作ワイヤ
20…レーザダイオード(LD)ユニット
21…カメラコントロールユニット
22…照明制御回路
23…湾曲制御電磁弁ユニット
24…湾曲制御回路
25…スリップリング
31…電源回路
32…制御部
33…空気圧調整器
34…プラグ
35…バッテリ
36…エアコネクタ
37…ガスカートリッジ
38…操作リモコン
40…ロータリジョイント機構
41…胴部
42…蓋体
42a,43a…孔部
43…側面
44…挿入部巻回面
45…空間部
50…光源ユニット
51…レーザダイオード
52…ペルチェ素子
53…ヒートシンク
54…冷却ファン
55…固定環
56…ユニットフレーム
61…防滴キャップ
62、64…防滴部
63…凹部
71…筐体
72…円筒状壁部
73…庇
A…気流
O…回動中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明部と撮像装置を備えた電子内視鏡装置において、
被検体に挿入される挿入部を巻回収納する回動部と、
前記回動部に接続される本体部と、
前記回動部内に配設され、前記照明部へ伝送する照明光を発光する光源と、
前記回動部内に配設され、前記撮像装置からの信号を画像処理する回路基板を含む電子回路と、
を備え、
前記光源と前記電子回路とは、前記回動部の回動中心に対して互いに離間する位置に配置したことを特徴とする電子内視鏡装置。
【請求項2】
前記光源が高周波発光、または放電発光により前記照明光を発光することを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡装置。
【請求項3】
前記回動部の内部に空間部を形成し、
前記空間部内に前記光源と前記電子回路を配置したことを特徴とする請求項1、または請求項2に記載の電子内視鏡装置。
【請求項4】
前記空間部を金属筐体部品で囲むように形成したことを特徴とする請求項3に記載の電子内視鏡装置。
【請求項5】
前記空間部を形成し、前記本体部に近接位置の対向する内方側面に前記空間部の熱を排気する排気口を設け、前記空間部を形成し、前記本体部と離れた方向側で前記内方側面に対向した外方側面に外気を吸気する吸気口を設けたことを特徴とする請求項3、または請求項4に記載の電子内視鏡装置。
【請求項6】
前記空間部に前記光源の熱を拡散させる冷却ファンを設け、
前記冷却ファンを前記排気口の近傍位置に配置して、前記吸気口から外気を前記空間内に取り込み、前記排気口から前記空間内の熱を排出する気流を発生させることを特徴とする請求項5に記載の電子内視鏡。
【請求項7】
前記光源を前記吸気口の近傍位置に配置したことを特徴とする請求項6に記載の電子内視鏡装置。
【請求項8】
前記内方側面、および前記外方側面のそれぞれに、前記排気口、および前記吸気口への液体の浸入を防止する防滴手段を設けたことを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の電子内視鏡装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−8474(P2012−8474A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146536(P2010−146536)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】