説明

電子回路を内蔵した出没式筆記具

【課題】 軸筒内に電子回路を内蔵した筆記具は、電気配線の切断の危険性や、筆記具先端近傍に精密部品を正確な位置に配置する必要性があるため、特定の部品を軸筒から分離することは極めて困難であるため、筆記体の着脱には一般の筆記具とは異なる手段を用いる必要性があった。
また、軸筒内に電子回路を内蔵する筆記具では、筆記体の出没機構を内蔵することは極めて困難であるため、筆記具先端より突出したペン先部を保護・防汚のため、携帯時にはキャップを装着する必要があった。
【構成】 前軸と後軸を回転可能に配置し、後軸内方に設けた玉部(或いは溝部)と、中軸に固定され、前軸と回転不能で摺動可能に配置したカム溝(或いは玉部)により、前軸と後軸の相対的回転で、筆記体を保持した中軸を前軸に対し摺動・維持可能に配置した電子回路を内蔵した電子回路を内蔵した出没式筆記具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒内に電子回路を内蔵した筆記具(或いは入力ペン)に関するものであり、前軸と後軸を回転可能に配置し、後軸内方に設けた玉部(或いは溝部)と、中軸に固定され、前軸と回転不能で摺動可能に配置したカム溝(或いは玉部)により、前軸と後軸の相対的回転で、筆記体を保持した中軸を前軸に対し摺動・維持可能に配置した出没式筆記具である。
【背景技術】
【0002】
軸筒内に電子回路を内蔵しない、一般の筆記具の場合、筆記体後方の軸心を通る空間にカム機構を内蔵することで比較的容易に、筆記体の出没機能を実現することができる。
しかしながら軸筒内に電子回路を内蔵した筆記具は、筆記体後方の軸心を通る空間を電池や基板本体等を含む電子回路部品が占有することが一般的である。
特に筆記具先端近傍に発光装置と超音波発信装置を備え、筆記体の筆圧を検知して発信される光と超音波を受信装置で受信し、筆記位置のXY座標を検出するシステムの筆記具では、電子回路部品が筆記具先端近傍まで存在するため、筆記体の出没機構を内蔵することは極めて困難であった。
また筆記体の着脱についても、一般の筆記具の場合、筆記体の着脱は、軸筒の先部に配置した先金や前軸、または軸筒の後部に配置した尾栓等の部品を、螺合等の連結手段を外すことで、軸筒本体と分離し、筆記体を指先で把持する部分を得ることができる。
1例としてキャップに装着された金属片を筆記体先端に狭着させ抜き取るものがある。筆記体は後端部に筆記体フォルダーと着脱自在に挟着固定されており、固定手段として筆記体フォルダー内面に形成した複数の内方リブと、筆記体外径が圧入寸法に設定されている。
また別の例として、軸筒に一部露出したスライドを前進させることで筆記体後端に狭着された筆記体フォルダーを前進させ、軸筒先端からの筆記体の出の長さを長くして指先で長くなった筆記体を把持し、筆記体を抜き取るもの等が知られている。
【特許文献1】特開平7−179063号公報
【特許文献2】特開2004−17397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
軸筒内に電子回路を内蔵した筆記具は、電気配線の切断の危険性や、筆記具先端近傍に精密部品を正確な位置に配置する必要性があるため、特定の部品を軸筒から分離することは極めて困難であるため、筆記体の着脱には一般の筆記具とは異なる手段を用いる必要性があった。
また、軸筒内に電子回路を内蔵する筆記具では、筆記体の出没機構を内蔵することは極めて困難であるため、筆記具先端より突出したペン先部を保護・防汚のため、携帯時にはキャップを装着する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前軸と後軸を回転可能に配置し、後軸内方に設けた玉部(或いは溝部)と、中軸に固定され、前軸と回転不能で摺動可能に配置したカム溝(或いは玉部)により、前軸と後軸の相対的回転で、筆記体を保持した中軸を前軸に対し摺動・維持可能に配置したことを特徴とした電子回路を内蔵した出没式筆記具であるため、
上記出没機構により、携帯時のキャップの不要性や、筆記体着脱のための機構を新たに付加せずに実現できることを要旨とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明では、前軸と後軸を回転可能に配置し、後軸内方に設けた玉部(或いは溝部)と、中軸に固定され、前軸と回転不能で摺動可能に配置したカム溝(或いは玉部)により、前軸と後軸の相対的回転で、筆記体を保持した中軸を前軸に対し摺動・維持可能に配置したことを特徴とした電子回路を内蔵した出没式筆記具であるため、
出没機構により、携帯時のキャップの不要性や、筆記体着脱のための機構を新たに付加せずに実現でき、筆記体を取り替え易いように、筆記時より多く、筆記体を繰り出すことが可能であり、筆記体を取り替えるために特別な手段を用いなくてよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1〜図7に本発明の1例を示し説明する。
電子回路を搭載したフレックス基板17が前中軸6と後中軸7に部分的に接着固定されている。
前中軸6先端近傍には超音波発信素子18、赤外線発信素子19等が配置されている。
【0007】
前中軸6に形成した係止段部6bと係止突起6aと、前軸2内方に形成したリブ2aと段部2bの係合により、前中軸6は前軸2に回転不能に固定されており、前軸2先端には発信器カバー4が取り付けられている。
【0008】
後中軸7には、センサーボックス15が装着され、センサーボックス15には脱落不能に配置された筆記体フォルダー16が抱設され、筆記体フォルダー16にはリフィールクリップ13が固定されている。筆記体14は、リフィールクリップ13に挟着され後端を筆記体フォルダー16で係止されている。
筆記体フォルダー16は、センサーボックス15内を摺動可能に抱設されており、筆記時に加わる筆圧によりセンサーボックス15内にある感圧センサー12を押圧し、筆記状態を電気的に感知する。
【0009】
後中軸7に形成した溝部7aと、前軸2内方に形成したリブ2aの係合により、後中軸7は前軸2に対して、回転不能で摺動可能に配置されており、カム筒8内方に形成した内方溝8cと後中軸7に形成した突起7cの係合及びカム筒8内方に形成した内方リブ8bと後中軸7に設けられた係止突起7bの係合により、後中軸7とカム筒8が回転不能に固定されている。後中軸7に固定されたカム筒8と前軸2との間の弾発部材11(コイルバネ)が配置され、後中軸7に固定されたカム筒8は前軸2に対して、筆記具後端側に付勢されている。
【0010】
前軸2に形成した環状溝2cと後軸3に形成した環状リブ3aとの係合により、後軸3は前軸2に対し、回転可能で脱落不能に配置され、カム筒8を内抱している。後軸3にはカム溝8aを回動する玉部10aが形成されている。
【0011】
本実施例では、クリップ9装着部に貫通穴3cを形成し、後軸3内にカム筒8を装着した後、後軸3外側よりカム溝8aに玉部材を差し込み、クリップ9係止部で玉部材10を係止することで、玉部材10の脱落防止をしている。
【0012】
後中軸7後方には、電源となる電池22を配置し、電子回路が機能を発揮する。電池22は後軸3後方に尾栓5を螺着することで、保護されている。
前軸2に対して、後軸3を回転させると、後軸3に設けた玉部10aがカム筒8に設けたカム溝8aの壁面に沿って回動する。カム筒8に固定された後中軸7は、前軸2に対して回転不能で摺動可能に配置されているため、玉部10aのカム溝回動により、前軸2に対し、長手方向の位置を変化させることができ、カム溝内8aの凹部あるいは端部8dで係止し、その状態を維持できる。
【0013】
本実施例は、中軸を後中軸7と前中軸6に分割し、前中軸6に対し、後中軸7が前進・後退するときに前中軸6と後中軸7に連結して配置されたフレックス基板17が撓むことで、電子回路を機能させているが、一体とした中軸を軸筒内で摺動・維持させることも可能である。
【0014】
また、筆記体14先端近傍に発光装置19と超音波発信装置18を備え、筆記体14の筆圧を検知して、発信される光と超音波を受信装置(図示せず)で受信し、筆記位置のXY座標を検出するシステムの筆記具では、ペン先先端と発光・発信装置の距離が長くなると、筆記位置のXY座標の検出精度が悪くなるため、極力ペン先の突出長さを短くすることが好ましいが、筆記時にペン先先端が視認しにくくなる欠点もある。高いXY座標の検出精度を必要としない場合、あるいはXY座標の検出を必要としない、一般筆記の場合はペン先突出位置を前進させ維持させる新たな係止位置を設けることも可能である。この場合ペン先先端の視認性が向上する。
【0015】
カム溝8aはカム筒8外面の一部に形成させているが、全周に設けても差し使いなく、この場合筆記体の係止位置に関係なく、後軸3をどちらの方向にも回転させることが可能となり、誤操作による故障の危険性を低減することができる。
【0016】
図8に、上記の新たな係止位置を設けカム溝をカム筒外面全周に設けたカム面の展開図である。前軸に対して後軸を回転させると、筆記体収納状態位置→XY精度を必要とする筆記位置→XY精度を必要としない筆記位置→筆記体着脱のための筆記体突出状態位置→筆記体収納状態位置に筆記体の長手方向の位置を順次変化させることが可能である。
カム溝をカム筒外面の全周に形成し、各凹部に対向する凸部を同方向にズレ(d)を生じさせることで、後軸の回転のみならず、カム筒に固定された尾栓5をペン先先端側にノックすることでも前軸2に対し筆記体14を装着した後中軸7の長手方向の位置を変化させることができ、カム溝内の各凹部で係止しその状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1例の筆記体着脱状態を示す部分半断面図である。
【図2】本発明の第1例の筆記状態を示す部分半断面図である。
【図3】本発明の第1例の筆記体収納状態を示す部分半断面図である。
【図4】本発明の図1のA−A断面矢視図である。
【図5】本発明の第1例の要部部品の一部分解斜視図である。
【図6】本発明の第1例のカム筒と後中軸の一部分解斜視図である。
【図7】本発明の第1例のカム筒外面の展開図である
【図8】本発明のカム筒外面全周にカム溝を形成させた展開図である。
【符号の説明】
【0018】
1 軸筒
2 前軸
2a リブ
2b 段部
2c 環状溝
2d リブ
3 後軸
3a 環状リブ
3b クリップ装着部
3c 貫通穴
4 発信器カバー
5 尾栓
6 前中軸
6a 係止突起
6b 係止段部
7 後中軸
7a 溝部
7b 係止突起
7c 突起
8 カム筒
8a カム溝
8b 内方リブ
8c 内方溝
8d 凹部あるいは端部
9 クリップ
10 玉部材
10a 玉部
11 弾発部材
12 感圧センサー
13 リフィールクリップ
14 筆記体リフィール
15 センサーボックス
16 筆記体フォルダー
17 フレックス基板
18 超音波発信素子
19 赤外線発信素子
20 スイッチボタン
21 タクトスイッチ
22 電池
23 筆記体ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前軸と後軸を回転可能に配置し、後軸内方に設けた玉部(或いは溝部)と、中軸に固定され、前軸と回転不能で摺動可能に配置したカム溝(或いは玉部)により、前軸と後軸の相対的回転で、筆記体を保持した中軸を前軸に対し摺動・維持可能に配置し、筆記体後方の軸心を通る空間に電子回路を内蔵した出没式筆記具。
【請求項2】
前軸と後軸の相対的回転で、筆記体を保持した中軸の一部(後中軸)を摺動・維持可能に配置した請求項1記載の電子回路を内蔵した出没式筆記具。
【請求項3】
摺動・維持する位置を3カ所以上設けたことを特徴とする請求項2記載の電子回路を内蔵した出没式筆記具。
【請求項4】
摺動位置の少なくとも1つを、筆記状態よりも長く筆記具先部に突出させた位置に設けたことを特徴とする請求項3記載の電子回路を内蔵した出没式筆記具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−178940(P2009−178940A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19996(P2008−19996)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】