説明

電子機器収納箱

【課題】 動力伝達機構を簡単に手際よく組み立てたり分解することが可能であると共に、部品点数の少ない動力伝達機構を備える電子機器収納箱を提供すること。
【解決手段】 表示パネル20が揺動自在に設けられている電子機器収納箱18において、動力伝達機構30は、第1伝達体56と、第2伝達体57と、第1伝達体56と第2伝達体57との間に挟み込まれている摩擦体58と、第2伝達体57に設けられている突出部59の先端部に設けられている外れ止め部60と、外れ止め部60に係止された状態で、第1伝達体56を第2伝達体57側に押し付ける動力伝達用バネ部61とを備え、動力伝達用バネ部61は、外れ止め部60に対して第1回動位置に位置する状態で外れ止め部60に係合し、外れ止め部60に対して第1回動位置以外の第2回動位置に位置する状態で外れ止め部60から取り外すことができる構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車載テレビを含むテレビジョン受像機、ナビゲーションシステム、オーディオ装置等の電子機器を収納することができる電子機器収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
上記従来の電子機器収納箱のうち、車内に設けられる車載テレビやナビゲーションシステム等が収納されるものでは、大きな表示パネルを必要とする。よって、車載用電子機器収納箱では、車内のスペースの有効利用を図るために、収納箱の前面に可動式の表示パネルを配置すると共に、操作部等をこの表示パネルの裏側に位置する収納箱の前面に設けてあり、操作部を操作するときに、表示パネルを移動させるようにしているものがある。従来、この種の車載用電子機器収納箱として、図20に示すものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この図20に示す従来の車載用電子機器収納箱1は、電子機器が収納されている収納箱2を備えており、この収納箱2の前面には、例えばオーディオカセットの挿入口3が形成されている。更に、この収納箱2の前面側には、表示パネル4が配置され、この表示パネル4は、その下端部がスライド部5の先端部と軸部6を介して揺動自在に連結している。そして、この表示パネル4の背面の上端部が、収納箱2の前面上部に凹状に形成されている保持面7によって保持されている。
【0004】
この車載用電子機器収納箱1によると、図示しない進退駆動機構によってスライド部5を進退移動させることができ、これによって、表示パネル4の仰角を変更することができる。そして、例えばオーディオカセットを挿入口3に挿入するときは、図示しない操作部を操作して、スライド部5を所定の前進位置に移動させる。これによって、表示パネル4の上縁部が保持面7に案内されて、オーディオカセットの挿入口3の下方位置に移動して、この挿入口3が露出した状態になる。この状態で、オーディオカセットを挿入口3に挿入することができる。
【0005】
ところで、この図20に示す車載用電子機器収納箱1によると、車内において、例えばスライド部5を前進移動させているときに、スライド部5が運転者等の身体に接触した際には、スライド部5の前進移動を自動的に停止させることによって、駆動部(電気モータ)及び進退駆動機構の損傷を防止することが求められている。
【0006】
そこで、本願の出願人は、図21及び図22に示す動力伝達機構9を開発している。この図21及び図22に示す動力伝達機構9は、電気モータである駆動部の回転が入力される大歯車(ウォームホイール)10を備えており、この大歯車10が駆動部によって回転されると、これに伴って小歯車11が同方向に回転するようになっている。そして、この小歯車11が回転すると、これと噛合うラックを直線方向に移動させることができ、これによって、このラックが設けられているスライド部を進退移動させることができる。
【0007】
そして、この動力伝達機構9は、図22に示すように、大歯車10と小歯車11との間には、摩擦体12が挟み込まれており、この大歯車10と小歯車11との間に摩擦体12を挟み込む力は、コイルバネ13が発生している。
【0008】
この動力伝達機構9によると、摩擦体12と、大歯車10及び小歯車11との面接触による摩擦トルクによって、大歯車10と小歯車11とを連結し、駆動部の発生する回転が大歯車10から小歯車11に伝わり、スライド部を進退移動させることができる。
【0009】
ただし、スライド部を前進移動させているときに、スライド部が運転者等の身体に接触した際には、摩擦体12と、大歯車10又は小歯車11との間の滑りによって、大歯車10と小歯車11とを切り離し、駆動部の発生する回転が大歯車10から小歯車11に伝わらず、スライド部は、駆動部の回転力により進退移動しないようになっている。これによって、駆動部及び進退駆動機構の損傷を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−285390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、従来の動力伝達機構9では、図22に示すように、小歯車11、摩擦体12、軸部14、大歯車10、コイルバネ13、押え板15、及び止め輪16等の多数の部品によって構成されているために、この動力伝達機構9を組み立てたり分解するのに多くの時間と手間が掛かり、この動力伝達機構9の費用も嵩むことになる。
【0012】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、動力伝達機構を簡単に手際よく組み立てたり分解することが可能であると共に、部品点数の少ない動力伝達機構を備える電子機器収納箱を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る電子機器収納箱は、電子機器が収納される収納箱と、前記収納箱の前面側に配置される表示パネルと、前記収納箱に設けられている案内部と、前記表示パネルが揺動自在に設けられ、前記案内部に沿って進退移動することによって、前記表示パネルの傾斜角度を変更することができるスライド部と、駆動部と、前記駆動部の発生する動力を、動力伝達機構を介して前記スライド部に伝達して、前記スライド部を進退移動させる進退駆動機構とを備える電子機器収納箱において、前記動力伝達機構は、前記駆動部の発生する動力によって回転するように設けた第1伝達体と、前記スライド部側に動力を伝達するように設けた第2伝達体と、前記第1伝達体と前記第2伝達体との間に挟み込まれている摩擦体と、前記第2伝達体に設けられている突出部の先端部に設けられている外れ止め部と、前記外れ止め部に係止された状態で、前記第1伝達体を前記第2伝達体側に押し付ける動力伝達用バネ部とを備え、前記動力伝達用バネ部は、前記外れ止め部に対して第1回動位置に位置する状態で前記外れ止め部に係合し、前記外れ止め部に対して前記第1回動位置以外の第2回動位置に位置する状態で前記外れ止め部から取り外すことができる構成であることを特徴とするものである。
【0014】
本発明に係る電子機器収納箱によれば、駆動部が駆動すると、進退駆動機構が、駆動部の発生する動力を、動力伝達機構を介してスライド部に伝達して、スライド部を進退移動させることができる。これによって、表示パネルの傾斜角度を変更することができる。このようにして、表示パネルの傾斜角度を変更することによって、例えば表示パネルの視認性の向上を図ることができる。
【0015】
そして、表示パネル又はスライド部が非拘束状態では、動力伝達機構の摩擦体と、第1及び第2伝達体との面接触による摩擦トルクによって、第1伝達体と第2伝達体とを連結し、駆動部の発生する回転が第1伝達体から第2伝達体に伝わり、スライド部を進退移動させることができる。
【0016】
また、表示パネル又はスライド部が拘束状態では、摩擦体と、第1又は第2伝達体との間の滑りによって、第1伝達体と第2伝達体とを切り離し、駆動部の発生する回転が第1伝達体から第2伝達体に伝わらず、スライド部は、駆動部の回転力により進退移動しない。
【0017】
また、動力伝達機構を組立てるときは、第1伝達体と第2伝達体との間に摩擦体を挟み込み、そして、動力伝達用バネ部を、第2伝達体の突出部の先端部に設けられている外れ止め部に係止させる。これによって、動力伝達用バネ部は、そのバネ力によって第1伝達体を第2伝達体側に押し付ける状態となる。
【0018】
そして、この動力伝達用バネ部は、外れ止め部に対して第1回動位置に位置させることによって外れ止め部に係合させることができる。そして、動力伝達用バネ部は、外れ止め部に対して第1回動位置以外の第2回動位置に位置させることによって外れ止め部から取り外すことができる。
【0019】
この発明に係る電子機器収納箱において、前記外れ止め部の下面に形成された1又は2以上の凸部又は凹部と、前記動力伝達用バネ部に形成され、前記動力伝達用バネ部が前記第1回動位置に位置して前記外れ止め部に係合する状態で、前記外れ止め部の1又は2以上の前記凸部又は前記凹部が係合する1又は2以上の凹部又は凸部とを更に備えるものとすることができる。
【0020】
このようにすると、動力伝達用バネ部が第1回動位置に位置して外れ止め部に係合する状態で、外れ止め部の1又は2以上の凸部又は凹部が、動力伝達用バネ部に形成された1又は2以上の凹部又は凸部と係合することができる。これによって、動力伝達用バネ部が第1回動位置に位置して外れ止め部と係合している状態で、この動力伝達用バネ部に対して位置ずれする方向に外力が掛かったときでも、動力伝達用バネ部が位置ずれすることを防止できる。これによって、動力伝達用バネ部が外れ止め部から外れることを防止でき、駆動部の駆動によって表示パネルの傾斜角度の変更を確実に行うことができる。
【0021】
この発明に係る電子機器収納箱において、前記第1伝達体及び前記動力伝達用バネ部のそれぞれの略中心部には、前記外れ止め部が挿通可能な挿通孔が形成され、前記動力伝達用バネ部に形成された前記挿通孔、及び前記外れ止め部の平面形状が、略三角形を含む略多角形であり、前記動力伝達用バネ部に形成された前記挿通孔の内縁部に1又は2以上の前記凹部又は前記凸部が形成されているものとすることができる。
【0022】
このようにすると、第1伝達体及び動力伝達用バネ部のそれぞれの略中心部に形成されている挿通孔に、外れ止め部を挿通することができる。このとき、動力伝達用バネ部は、外れ止め部に対して第2回動位置に位置する状態である。そして、動力伝達用バネ部に形成された挿通孔、及び外れ止め部の平面形状が、略三角形を含む略多角形であるので、動力伝達用バネ部を、第2回動位置から第1回動位置に回動させることによって、動力伝達用バネ部の挿通孔の内周縁部の形状と、外れ止め部の外周縁部の形状との間で、その回動方向に位置ずれを生じさせることができる。これによって、動力伝達用バネ部の挿通孔の内縁部に外れ止め部の下面を係合させることができ、このときに、動力伝達用バネ部の挿通孔の内縁部に形成された1又は2以上の凹部又は凸部を、外れ止め部の下面に形成された1又は2以上の凸部又は凹部に係合させることができる。
【0023】
この発明に係る電子機器収納箱において、前記スライド部は、互いに間隔を隔てて略平行に形成されている第1スライド部と第2スライド部とを有し、前記第1及び第2スライド部は、結合部を間に介して互いに結合し、前記案内部は、前記第1スライド部を案内する第1案内部と、前記第2スライド部を案内する第2案内部とを有し、前記第1案内部は、前記第1スライド部の鉛直下方向の位置決めを行なう第1鉛直下方向位置決め案内部と、前記第1スライド部の水平方向の位置決めを行なう第1水平方向位置決め案内部とを有し、前記第1スライド部は、第1鉛直下方向バネ部によって前記第1鉛直下方向位置決め案内部側に付勢されていると共に、第1水平方向バネ部によって前記第1水平方向位置決め案内部側に付勢されているものとすることができる。
【0024】
このように、第1鉛直下方向バネ部が、第1スライド部に対して第1鉛直下方向位置決め案内部側に付勢することによって、この第1スライド部の鉛直下方向の位置決めを行うことができる。これによって、このスライド部に対して重力方向の振動が掛かっても、スライド部の鉛直方向のガタツキを抑制することができる。
【0025】
そして、第1水平方向バネ部が、第1スライド部に対して第1水平方向位置決め案内部側に付勢することによって、このスライド部の第1水平方向位置決め案内部側の水平方向の位置決めを行うことができる。これによって、このスライド部に対して水平方向の振動が掛かっても、スライド部の水平方向のガタツキを抑制することができる
また、第1及び第2スライド部のうちの一方の第1スライド部の鉛直方向及び水平方向の位置決めを行なうことによって、スライド部の鉛直方向及び水平方向の位置決めを行なうことができる。このように、スライド部の鉛直方向及び水平方向の位置決めを、簡単な構造で実現することができ、しかも、進退駆動機構の組立て及び分解を簡単で短時間に行うことができる。
【0026】
この発明に係る電子機器収納箱において、前記進退駆動機構は、前記第1スライド部の進退移動する方向と略平行する縁部に設けられたラックを有し、このラックに前記第2伝達体である歯車が噛み合い、前記ラックの前記第2伝達体から離れる水平方向の移動が、前記第1水平方向位置決め案内部によって規制されているものとすることができる。
【0027】
このようにすると、駆動部の発生する動力が、第2伝達体を介してラックに伝わり、スライド部を進退移動させることができる。そして、このラックの第2伝達体(歯車)から離れる水平方向の移動が、第1水平方向位置決め案内部によって規制されているので、この電子機器収納箱に対して水平方向の振動が掛かったときでも、ラックが第2伝達体から外れることを防止できる。これによって、駆動部が発生する動力によってスライド部を確実に進退移動させることができる。
【0028】
勿論、ラックの第2伝達体に接近する水平方向の移動は、この第2伝達体によって規制されている。
【0029】
また、ラックの第2伝達体に対する鉛直方向の移動は、第1鉛直下方向位置決め案内部と、第1鉛直下方向バネ部とによって上下から規制されているので、ラックが鉛直方向に移動して第2伝達体から外れることを防止できる。
【0030】
この発明に係る電子機器収納箱において、前記第2案内部は、前記第2スライド部の鉛直下方向の位置決めを行なうものであり、前記第2スライド部は、第2鉛直下方向バネ部によって前記第2案内部側に付勢されているものとすることができる。
【0031】
このように、第2鉛直下方向バネ部が、第2スライド部に対して第2案内部側に付勢することによって、この第2スライド部の鉛直下方向の位置決めを行うことができる。これによって、このスライド部に対して重力方向の振動が掛かっても、スライド部の鉛直方向のガタツキを抑制することができる。
【0032】
この発明に係る電子機器収納箱において、前記進退駆動機構に設けられ、前記スライド部の進退移動に連動して回転する位置検出歯車と、前記位置検出歯車の回転角度を検出することによって、前記表示パネルの傾斜角度と対応する角度信号を生成する角度検出器と、前記角度検出器が生成する角度信号に基づいて前記駆動部を制御して、前記表示パネルを予め定めた傾斜角度、又は所望の傾斜角度に設定することができる制御部とを備えるものとすることができる。
【0033】
このようにすると、まず、例えば利用者が操作部を操作して、表示パネルを予め定めた傾斜角度、又は所望の傾斜角度となるように制御部に入力する。すると、スライド部が駆動部に駆動されて進退移動し、この進退移動に連動して位置検出歯車が回転する。そして、この位置検出歯車の回転角度は、角度検出器によって検出され、この角度検出器は、この位置検出歯車の回転角度に基づいて、表示パネルの傾斜角度と対応する角度信号を生成することができる。制御部は、角度検出器が生成する角度信号に基づいて駆動部を制御して、表示パネルを、利用者が入力した予め定められている傾斜角度、又は所望の傾斜角度に設定することができる。
【0034】
この発明に係る電子機器収納箱において、車載用であるものとすることができる。
【0035】
この電子機器収納箱を、車載した場合において、例えばスライド部を前進移動させているときに、スライド部が運転者等の身体に接触して、スライド部の移動が拘束された際に、動力伝達機構の摩擦体に滑りが発生して、スライド部の前進移動が自動的に停止するので、駆動部及び進退駆動機構の損傷を防止することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る電子機器収納箱によると、動力伝達用バネ部を外れ止め部に対して第1回動位置に位置させることによって、動力伝達機構を組み立てた状態にすることができ、動力伝達用バネ部を外れ止め部に対して第2回動位置に位置させることによって、動力伝達機構を分解することができる構成であるので、工具や道具を使用せずに、この動力伝達機構を簡単に手際よく組み立てたり分解することが可能である。
【0037】
そして、外れ止め部が第2伝達体の突出部の先端部に設けられているにも拘わらず、動力伝達用バネ部を、この外れ止め部と第1伝達体との間に対して着脱できる構成なので、動力伝達用バネ部を第1伝達体にあてがった状態で、別の部品としての外れ止め部を第2伝達体の突出部の先端部に取り付ける構成のものと比較して、少なくともこの外れ止め部の分だけ部品点数を削減することができ、この動力伝達機構の費用の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の一実施形態に係る電子機器収納箱を示す斜視図である。
【図2】同実施形態に係る電子機器収納箱に設けられている進退駆動機構を示す斜視図である。
【図3】図2に示す進退駆動機構のスライド部が後退位置にある状態を示す平面図である。
【図4】図2に示す進退駆動機構のスライド部が前進位置にある状態を示す平面図である。
【図5】図2に示す進退駆動機構のスライド部を示す斜視図である。
【図6】図5に示すスライド部を示す平面図である。
【図7】図2に示す進退駆動機構のスライド部の位置決めを行なうための第1鉛直下方向バネ部及び第1水平方向バネ部を示す斜視図である。
【図8】図2に示す進退駆動機構のスライド部の位置決めを行なうための第1鉛直上方向バネ部を示す斜視図である。
【図9】図2に示す進退駆動機構のスライド部の位置決めを行なうための第2鉛直下方向バネ部を示す斜視図である。
【図10】図2に示す進退駆動機構が備える動力伝達機構を示す縦断面図である。
【図11】図10に示す動力伝達機構を示す分解斜視図である。
【図12】図10に示す動力伝達機構を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、正面図、(c)は、底面図である。
【図13】図10に示す動力伝達機構が備える第2伝達構造体を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、正面図、(c)は、底面図である。
【図14】図13に示す第2伝達構造体を示す部分拡大正面図である。
【図15】図13に示す第2伝達構造体を示すA−A断面図である。
【図16】図10に示す動力伝達機構が備える動力伝達用バネ部を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、側面図、(c)は、正面図である。
【図17】図16に示す動力伝達用バネ部を示す部分拡大平面図であり、(a)は、第2回動位置にある状態を示す図、(b)は、第1回動位置にある状態を示す図側面図である。
【図18】図10に示す動力伝達機構を示す図であり、(a)は、動力伝達用バネ部の非係合状態を示す斜視図、(b)は、動力伝達用バネ部の係合状態を示す斜視図である。
【図19】同実施形態に係る電子機器収納箱の電気回路を示すブロック図である。
【図20】従来の車載用電子機器収納箱を示す斜視図である。
【図21】車載用電子機器収納箱に設けることができる動力伝達機構を示す斜視図である。
【図22】図21に示す動力伝達機構を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係る電子機器収納箱の一実施形態を、図1〜図19を参照して説明する。この電子機器収納箱18は、例えば車載テレビを含むテレビジョン受像機、ナビゲーションシステム、及びオーディオ装置等のうちの1又は2以上の電子機器を収納することができるものであり、この実施形態では、車載用電子機器収納箱18として説明する。ただし、この発明の電子機器収納箱は、車載用以外の例えば家庭用に適用して使用することができる。
【0040】
この図1に示す車載用電子機器収納箱18は、車載テレビ及びナビゲーションシステム等の電子機器が収納されている収納箱19を備えており、収納箱19の前面に可動式の表示パネル20を配置してある。そして、この表示パネル20の裏側に位置する収納箱19の前面には、例えば音楽等が記録されたCDやDVDの挿入口21が設けられ、更に、操作部等(図示せず)も設けられている。この操作部を操作するときや、CDやDVDを挿入口21から出し入れするときは、表示パネル20の傾斜角度を変更できるようになっている。なお、この表示パネル20の傾斜角度を変更するための操作部22は、例えば表示パネル20の下方に露出して設けられている。
【0041】
この表示パネル20は、図1に示すように、その下端部がスライド部23の先端部と軸部24を介して揺動自在に連結している。そして、この表示パネル20の上端部は、収納箱19の前面の左右の各側部に設けられた一対の案内板25、25に沿って、鉛直方向に移動自在に設けられている。
【0042】
つまり、表示パネル20の上端部の左右の各側部には、水平方向の外側に向かうように一対のピン26が突設され、これらの各ピン26は、一対の各案内板25に形成された案内用の長孔27に摺動自在に係合している。
【0043】
この車載用電子機器収納箱18によると、図2に示す進退駆動機構28によってスライド部23を進退移動させることができ、これによって、表示パネル20の仰角を変更することができる。そして、例えばCDやDVDを挿入口21から挿入したり、取り出すときは、図示しない操作部を操作して、スライド部23を所定の前進位置に移動させる。これによって、表示パネル20の上縁部が案内板25の長孔27に案内されて、CD等の挿入口21の下方位置に移動して、この挿入口21が露出した状態になる。この状態で、CD等を挿入したり取り出すことができる。
【0044】
図2は、電子機器収納箱18に設けられている進退駆動機構28を示す斜視図である。この進退駆動機構28は、駆動部29の発生する動力を、動力伝達機構30を介してスライド部23に伝達して、このスライド部23を進退移動させることができるものであり、動力伝達機構30及びラック31を備えている。このスライド部23は、収納箱19に設けられている案内部32に案内されて進退移動するようになっている。
【0045】
図3は、進退駆動機構28のスライド部23が後退位置(収納箱19内に収納される位置)にある状態を示す平面図である。図4は、スライド部23が前進位置(収納箱19から突出する位置)にある状態を示す平面図である。
【0046】
スライド部23は、図5及び図6に示すように、平面形状が略コ字形状であり、屈曲形成された薄板である。このスライド部23は、互いに間隔を隔てて略平行に形成されている第1スライド部33と第2スライド部34とを有し、これら第1及び第2スライド部33、34は、それぞれの前端部が結合部35を間に介して互いに結合している。
【0047】
そして、この第1スライド部33の内縁部に所定長さの範囲に亘ってラック31が形成されている。また、第1スライド部33の外縁部は、鉛直上方向に屈曲されて第1側板部36が形成されている。更に、この第1スライド部33の第1平面部37には、その長さ方向に平行して長孔38が形成されている。
【0048】
そして、図5及び図6に示すように、第2スライド部34の外縁部は、鉛直上方向に屈曲されて第2側板部39が形成され、その第2側板部39の上縁部は、水平外側方向に屈曲されて第2上側平面部40が形成されている。
【0049】
次に図7及び図9を参照して案内部32を説明する。案内部32は、第1スライド部33を案内する第1案内部41(図7参照)と、第2スライド部34を案内する第2案内部42(図9参照)とを有している。
【0050】
この第1案内部41は、図7に示すように、第1スライド部33の鉛直下方向の位置決めを行なう第1鉛直下方向位置決め案内部43と、第1スライド部33の水平方向の位置決めを行なう第1水平方向位置決め案内部44とを有している。
【0051】
この第1水平方向位置決め案内部44は、図7に示すように、ローラであり、第1鉛直下方向位置決め案内部43の上部に回動自在に設けられている。このローラの中心軸は、鉛直方向と平行しており、このローラの外面が第1スライド部33に形成されている長孔38の一方の内縁部(図7に示す右側の内縁部)38aに当接している。
【0052】
このローラで形成された第1水平方向位置決め案内部44は、第1スライド部33の進退方向と平行する線上に、互いに所定の間隔を隔てて同等のものが2つ設けられている。このように、2つの第1水平方向位置決め案内部44を設けることによって、第1スライド部33を、水平左方向の位置決めを行なった状態で、所定の直線方向に沿って進退移動できるように案内することができる。
【0053】
また、第1鉛直下方向位置決め案内部43は、図7に示すように、所定の高さに例えば合成樹脂で形成された短円柱状の台座の上面外周部によって形成されている。この第1鉛直下方向位置決め案内部43の直径は、第1水平方向位置決め案内部44の直径よりも大きく、かつ、第1スライド部33に形成されている長孔38の幅よりも大きく形成してある。そして、この第1鉛直下方向位置決め案内部43は、収納箱19の底壁19aの上面に固定して設けられている。
【0054】
この第1鉛直下方向位置決め案内部43によると、図7に示すように、第1スライド部33に形成されている長孔38の互いに平行する一対の内縁部38a、38bの下面と当接して、この第1スライド部33を含むスライド部23を支持することができるようになっている。よって、この第1スライド部33を含むスライド部23を、鉛直下方向の位置決めを行なった状態で、所定の直線方向に沿って進退移動できるように案内することができる。
【0055】
また、第2案内部42は、図9に示すように、第2スライド部34の鉛直下方向の位置決めを行なうものであり、例えば合成樹脂製の細長い板状体で形成されている。この第2案内部42は、第2スライド部34に形成されている第2上側平面部40の下面に当接して、この第2スライド部34を含むスライド部23を、鉛直下方向の位置決めを行なった状態で、所定の直線方向に沿って進退移動できるように案内することができる。
【0056】
また、この第2案内部42は、図9に示すように、断面コ字形状の合成樹脂製の第2支持部45の内面に水平に設けられている。そして、この第2支持部45の上部には、第2上側平面部40と間隔を隔てて第2上側規制部46が設けられている。この第2上側規制部46は、第2スライド部34が上方に持ち上がることを規制するためのものである。
【0057】
次に、図7を参照して、第1スライド部33の位置決めを行なうための第1鉛直下方向バネ部47及び第1水平方向バネ部48を説明する。これら第1鉛直下方向バネ部47及び第1水平方向バネ部48は、板バネであり、第1バネ本体部49に設けられている。この第1バネ本体部49は、水平に配置された状態で、一対の第1水平方向位置決め案内部44を回動自在に支持する固定軸(図示せず)にネジ50、50で固定して取り付けられている。
【0058】
この第1鉛直下方向バネ部47は、図7に示すように、第1スライド部33に対して第1鉛直下方向位置決め案内部43側に付勢することができ、これによって、この第1スライド部33の鉛直下方向の位置決めを行うことができる。その結果、このスライド部23に対して重力方向の振動が掛かっても、スライド部23の鉛直方向のガタツキを抑制することができる。
【0059】
そして、第1水平方向バネ部48は、第1スライド部33に対して第1水平方向位置決め案内部44側に付勢することができ、これによって、このスライド部23の第1水平方向位置決め案内部44側(図7に置ける左方向)の水平方向の位置決めを行うことができる。これによって、このスライド部23に対して水平方向の振動が掛かっても、スライド部23の水平方向のガタツキを抑制することができる
また、第1及び第2スライド部33、34のうちの一方の第1スライド部33の鉛直方向及び水平方向の位置決めを行なうことによって、スライド部23全体の鉛直方向及び水平方向の位置決めを行なうことができる。このように、スライド部23の鉛直方向及び水平方向の位置決めを、簡単な構造で実現することができ、しかも、進退駆動機構28の組立て及び分解を簡単で短時間に行うことができる。
【0060】
図8は、第1スライド部33の位置決めを行なうための第1鉛直上方向バネ部51を示す斜視図である。この第1鉛直上方向バネ部51は、板バネであり、第1支持部52に形成されている第1水平板部53の上面にネジ止めされている。この第1鉛直上方向バネ部51は、第1スライド部33の後側部を上方に付勢することによって、第1スライド部33の後側部が、鉛直方向にガタツクことを防止するものである。そして、第1支持部52は、収納箱19の底壁19aに取り付けられている
次に、図9を参照して、第2スライド部34の鉛直方向の位置決めを行なうための第2鉛直下方向バネ部54を説明する。この第2鉛直下方向バネ部54は、板バネであり、第2バネ本体部55に2つ設けられている。この第2バネ本体部55は、細長い板状体であり、水平に配置された状態で、第2上側規制部46の上面に固定して取り付けられている。
【0061】
この2つの第2鉛直下方向バネ部54は、図9に示すように、第2スライド部34に対して第2案内部42側に付勢することができ、これによって、この第2スライド部34の鉛直下方向の位置決めを行うことができる。その結果、このスライド部23に対して重力方向の振動が掛かっても、スライド部23の鉛直方向のガタツキを抑制することができる。
【0062】
次に、図3に示す進退駆動機構28が備えている動力伝達機構30を、図10〜図17を参照して説明する。この動力伝達機構30は、図3に示すように、駆動部29の発生する動力を第1スライド部33に伝達して、この第1スライド部33が設けられているスライド部23を進退移動させるためのものである。そして、例えば前進移動するスライド部23が運転者等の身体に接触して、スライド部23の前進移動が拘束された際には、駆動部29の発生する動力がスライド部23に伝達されないようにして、駆動部29及び進退駆動機構28の損傷を防止することができるものである。
【0063】
図10は、動力伝達機構30を示す縦断面図、図11は、動力伝達機構30を示す分解斜視図である。そして、図12は、動力伝達機構30を示す図であり、図12(a)は、平面図、図12(b)は、正面図、図12(c)は、底面図である。
【0064】
この動力伝達機構30は、図10等に示すように、駆動部29の発生する動力によって回転するように設けた第1伝達体56(例えばウォームホイール)と、第1スライド部33に設けたラック31に動力を伝達するように設けた第2伝達体57(例えば小歯車)と、第1伝達体56と第2伝達体57との間に挟み込まれている摩擦体58と、第2伝達体57に設けられている突出部59の先端部に設けられている外れ止め部60と、外れ止め部60に係止された状態で、第1伝達体56を第2伝達体57側に押し付ける動力伝達用バネ部61とを備えている。
【0065】
第1伝達体56(ウォームホイール)は、図3に示す駆動部29の回転軸に設けたウォーム62と噛み合っている。そして、図10に示すように、第1伝達体56は、その中心に円形の挿通孔56aが形成され、この挿通孔56aには、第2伝達体57の中心部に設けられている突出部59の基端部59aが回動自在に装着されている。
【0066】
第2伝達体57(小歯車)は、図3に示すように、第1スライド部33に設けたラック31に噛み合っており、収納箱19に設けられている第1軸63に回動自在に装着されている。この第1軸63は、図10に示す第2伝達体57の挿通孔57aに挿通している。そして、この第2伝達体57の上部には、図10に示すように、円板状部64が設けられ、この円板状部64の上面と、第1伝達体56の下面との間に摩擦体58が配置されている。第2伝達体57は、図13に示すように、第2伝達構造体65に設けられている。
【0067】
この摩擦体58は、図11に示すように、例えば合成樹脂製の円板状体であり、中央に円孔が形成され、この円孔内に突出部59の基端部59aが配置されている。
【0068】
また、図14及び図15に示すように、第2伝達体57に設けられている突出部59の先端部には、この先端部から半径方向の外側に拡大するように外れ止め部60が設けられている。この外れ止め部60は、その平面形状が略三角形であり、その3つの各頂部は円弧状に形成されている。そして、この外れ止め部60が設けられている突出部59の先端部には、円形の溝部66が形成されている。また、外れ止め部60の下面には、3つの各頂部を通る位置であって、半径方向に延びる3つの凸部67が形成されている。
【0069】
動力伝達用バネ部61は、図10に示すように、突出部59の先端部に形成された溝部66に装着されており、外れ止め部60によって上方移動が係止された状態で、第1伝達体56を第2伝達体57側に押し付けることができるものである。
【0070】
この動力伝達用バネ部61は、図16及び図17に示すように、薄板状のバネ部材で形成され、その中心には挿通孔68が形成されていて、この挿通孔68は、平面形状が略三角形であり、その3つの各頂部は円弧状に形成されている。この挿通孔68は、図17(a)に示すように、外れ止め部60を挿通できるように、外れ止め部60よりも少し大きい寸法で形成されている。
【0071】
そして、図16に示すように、動力伝達用バネ部61は、中央部に第3バネ本体部69が形成され、この第3バネ本体部69から放射状であって3方向に3つの張り出し部70が形成されている。そして、これら3つの各張り出し部70の先端に押付け部71が形成されている。これら各押付け部71は、平面形状が円弧状の板状体である。そして、これら3つの押付け部71は、図16(a)に示すように、全体として1つの円を通る位置に形成されている。これら3つの押付け部71は、第1伝達体56の上面と当接して、この第1伝達体56を第2伝達体57側に押し付けるものである。
【0072】
また、図17(a)に示すように、この動力伝達用バネ部61に形成された略三角形の挿通孔68の3つの直線状の各内縁部68aに、切欠きの凹部72が1つずつ形成されている。そして、この3つの各凹部72は、3つの各内縁部68aの略中央に形成されている。
【0073】
上記のように構成された動力伝達用バネ部61によると、図17(a)及び図18(a)に示すように、外れ止め部60に対して第2回動位置に位置する状態で、この動力伝達用バネ部61の挿通孔68に外れ止め部60を通すことができる。よって、この動力伝達用バネ部61を外れ止め部60に対して着脱することができる。
【0074】
そして、この動力伝達用バネ部61は、図17(b)及び図18(b)に示すように、第2回動位置から約60°回転させることによって(外れ止め部60に対して第1回動位置に回転移動させることによって)、外れ止め部60に係合させることができる。
【0075】
このように、動力伝達用バネ部61は、この第1回動位置に回転移動させた状態で、外れ止め部60に係合して、そのバネ力によって第1伝達体56を第2伝達体57側に押し付けることができる。そして、この押付け力は、第1伝達体56と第2伝達体57との間に摩擦体58を挟み込む力となり、第1伝達体56が回転するときに、第1及び第2伝達体56、57と摩擦体58との間で摩擦トルクが発生して、第1伝達体56の回転を第2伝達体57に伝えることができる。
【0076】
なお、図17(b)において、ハッチングで示す部分73は、動力伝達用バネ部61が上方向へ移動するときに、外れ止め部60と係合する部分である。
【0077】
そして、図17(b)に示すように、動力伝達用バネ部61が第1回動位置に位置する状態で、外れ止め部60の下面に形成された3つの各凸部67が、動力伝達用バネ部61の挿通孔68の内縁部68aに形成された3つの各凹部72に係合するようになっている。このように、外れ止め部60の3つの各凸部67と、動力伝達用バネ部61の3つの各凹部72とが互いに係合することによって、動力伝達用バネ部61が外れ止め部60に対して、第2伝達構造体65を中心とする回動方向に位置ずれすることを防止できる。これによって、動力伝達用バネ部61を外れ止め部60にから外れることを防止できる。
【0078】
次に、図3及び図19を参照して、表示パネル20を予め定めた傾斜角度、又は所望の傾斜角度に設定することができるパネル角度設定機構74について説明する。このパネル角度設定機構74は、図3及び図19に示すように、位置検出歯車75、角度検出器76、制御部77、及び操作部22を備えている。
【0079】
位置検出歯車75は、図3に示す進退駆動機構28に設けられ、スライド部23の進退移動に連動して回転するものである。この位置検出歯車75は、第2伝達体57に噛み合っており、収納箱19に対して回動自在に設けられている第2軸78に固定して取り付けられている。
【0080】
角度検出器76は、例えばロータリエンコーダであり、位置検出歯車75と結合する第2軸78(位置検出歯車75)の回転角度を検出することによって、表示パネル20の傾斜角度と対応する角度信号を生成するものである。
【0081】
制御部77は、図示しない中央演算処理装置を備えており、記憶部に予め記憶されている所定のプログラムに従って、種々の演算や処理を行うことができるものである。そして、この制御部77には、図19に示すように、角度検出器76、操作部22、及び駆動部29が電気的に接続している。この制御部77は、角度検出器76が生成する角度信号に基づいて駆動部29を制御して、表示パネル20を予め定めた傾斜角度や所望の傾斜角度に設定することができるように構成されている。
【0082】
操作部22は、表示パネル20を予め定めた傾斜角度や所望の傾斜角度に設定するときに、利用者によって操作されるものである。
【0083】
このパネル角度設定機構74によると、まず、例えば利用者が操作部22を操作して、表示パネル20を予め定めた傾斜角度、又は所望の傾斜角度となるように制御部77に入力する。すると、スライド部23が駆動部29に駆動されて進退移動し、この進退移動に連動して位置検出歯車75が回転する。そして、この位置検出歯車75の回転角度は、角度検出器76によって検出され、この角度検出器76は、この位置検出歯車75の回転角度に基づいて、表示パネル20の傾斜角度と対応する角度信号を生成することができる。制御部77は、角度検出器76が生成する角度信号に基づいて駆動部29を制御して、表示パネル20を、利用者が入力した予め定められている傾斜角度、又は所望の傾斜角度に設定することができる。
【0084】
次に、上記のように構成された電子機器収納箱18の作用を説明する。図2に示す電子機器収納箱18によれば、駆動部29が駆動すると、進退駆動機構28が、駆動部29の発生する動力を、動力伝達機構30を介してスライド部23に伝達して、スライド部23を進退移動させることができる。これによって、図1に示す表示パネル20の傾斜角度を変更することができる。このように、表示パネル20の傾斜角度を変更することによって、例えば表示パネル20の視認性の向上を図ることができる。更に、収納箱19の前面に設けた挿入口21を、表示パネル20に邪魔されずに露出させることもできる。これによって、例えば音楽CD、DVD、カセット等をこの挿入口21に挿入することができるし、この挿入口21に挿入されているCD等をこの挿入口21から取り出すことができる。
【0085】
そして、図1に示す表示パネル20又はスライド部23が非拘束状態では、動力伝達機構30の摩擦体58と、第1及び第2伝達体56、57との面接触による摩擦トルクによって、第1伝達体56と第2伝達体57とを連結し、駆動部29の発生する回転が第1伝達体56から第2伝達体57に伝わり、スライド部23を進退移動させることができる。また、表示パネル20又はスライド部23が拘束状態では、摩擦体58と、第1又は第2伝達体57との間の滑りによって、第1伝達体56と第2伝達体57とを切り離し、駆動部29の発生する回転が第1伝達体56から第2伝達体57に伝わらず、スライド部23は、駆動部29の回転力により進退移動しない。
【0086】
また、動力伝達機構30を組立てるときは、図10に示すように、まず、第1伝達体56と第2伝達体57との間に摩擦体58を挟み込み、そして、図17(a)、図18(a)に示すように、第2伝達体57の突出部59の先端部に設けられている外れ止め部60を、第2回動位置にある動力伝達用バネ部61の挿通孔68に挿通する。次に、動力伝達用バネ部61を、図17(b)、図18(b)に示すように、外れ止め部60に対して第1回動位置から約60°回動させることによって(第1回動位置にすることによって)、動力伝達用バネ部61を外れ止め部60に係合させる。これによって、動力伝達用バネ部61が、そのバネ力によって第1伝達体56を第2伝達体57側に押し付ける状態となる。
【0087】
なお、動力伝達用バネ部61は、図17(a)、図18(a)に示すように、外れ止め部60に対して第1回動位置から約60°回動させることによって(第2回動位置にすることによって)、外れ止め部60から取り外すことができる。
効果
このように、この電子機器収納箱18によると、図17(b)、図18(b)に示すように、動力伝達用バネ部61を外れ止め部60に対して第1回動位置に位置させることによって、動力伝達機構30を組み立てた状態にすることができ、そして、図17(a)、図18(a)に示すように、動力伝達用バネ部61を外れ止め部60に対して第2回動位置に位置させることによって、動力伝達機構30を分解することができる構成であるので、工具や道具を使用せずに、この動力伝達機構30を簡単に手際よく組み立てたり分解することが可能である。
【0088】
そして、図17(a)、(b)に示すように、外れ止め部60が第2伝達体57の突出部59の先端部に設けられているにも拘わらず、動力伝達用バネ部61を、この外れ止め部60と第1伝達体56との間の溝部66に対して着脱できる構成なので、動力伝達用バネ部61を第1伝達体56にあてがった状態で、別の部品としての外れ止め部を第2伝達体57の突出部59の先端部に取り付ける構成のものと比較して、少なくともこの外れ止め部の分だけ部品点数を削減することができ、この動力伝達機構30の費用の低減を図ることができる。
【0089】
また、図17(b)等に示すように、動力伝達用バネ部61が第1回動位置に位置して外れ止め部60に係合する状態で、外れ止め部60の3つの凸部67が、動力伝達用バネ部61に形成された3つの凹部72と係合することができる。これによって、動力伝達用バネ部61が第1回動位置に位置して外れ止め部60と係合している状態で、この動力伝達用バネ部61に対して回動方向に位置ずれさせる外力が掛かったときでも、動力伝達用バネ部61が位置ずれすることを防止できる。これによって、動力伝達用バネ部61が外れ止め部60から外れることを防止でき、駆動部29の駆動によって表示パネル20の傾斜角度の変更を確実に行うことができる。
【0090】
更に、図17(b)に示すように、動力伝達用バネ部61に形成された挿通孔68、及び外れ止め部60の平面形状が略三角形であるので、動力伝達用バネ部61を、第2回動位置から第1回動位置に回動させることによって、外れ止め部60の3つの頂部(ハッチング部分73)を、動力伝達用バネ部61の挿通孔68の内周縁部の3箇所で係合させることができる。このように、3箇所で係合することによって、外れ止め部60は、動力伝達用バネ部61を安定した状態で係止することができる。そして、動力伝達用バネ部61の挿通孔68、及び外れ止め部60の平面形状を略三角形とすることによって、外れ止め部60の3つの各頂部が動力伝達用バネ部61の挿通孔68の内周縁部に係合する深さHを大きくすることができ、外れ止め部60は、動力伝達用バネ部61を強固に確実に係止することができる。
【0091】
そして、図3に示す進退駆動機構28によると、第1スライド部33の右側縁部に設けられているラック31の、第2伝達体57から離れる左側水平方向の移動が、図7に示す第1水平方向位置決め案内部44によって規制されている構成としたので、この電子機器収納箱18に対して水平方向の振動が掛かったときでも、ラック31が第2伝達体57から外れることを防止できる。
【0092】
勿論、ラック31が第2伝達体57に接近する右側水平方向の移動は、この第2伝達体57によって規制されている。
【0093】
また、ラック31の第2伝達体57に対する鉛直方向の移動は、図7に示す第1鉛直下方向位置決め案内部43と、第1鉛直下方向バネ部47とによって上下から規制されているので、ラック31が鉛直方向に移動して第2伝達体57から外れることを防止できる。これによって、駆動部29が発生する動力によってスライド部23を確実に進退移動させることができる。
【0094】
ただし、上記実施形態では、図17(a)、(b)に示すように、外れ止め部60の下面に凸部67を設け、動力伝達用バネ部61の内縁部にこの凸部67と係合される凹部72を設けたが、これに代えて、外れ止め部60の下面に凹部を設け、動力伝達用バネ部61の内縁部にこの凹部と係合される凸部を設けてもよい。この動力伝達用バネ部61の凸部は、外れ止め部60の下面の凹部に向かう方向に突出するものである。
【0095】
そして、上記実施形態では、図17(a)、(b)に示すように、動力伝達用バネ部61に形成された挿通孔68、及び外れ止め部60の平面形状を略三角形としたが、これに代えて、略三角形以外の略多角形としてもよいし、円形以外の形状としてもよい。
【0096】
このように、略三角形以外の略多角形等とした場合も、外れ止め部60の下面に設けられる複数の各凸部67は、外れ止め部60の複数の各頂部を通る位置であって、半径方向に延びるように形成する。
【0097】
そして、動力伝達用バネ部61に形成された略多角形の挿通孔の複数の直線状の各内縁部に、切欠きの凹部72を1つずつ形成する。そして、この複数の各凹部72は、各内縁部の略中央に形成することが好ましい。
【0098】
また、上記実施形態では、図17(a)、(b)に示すように、外れ止め部60の下面に3つの凸部67を設け、動力伝達用バネ部61の内縁部にこの3つの凸部67と係合される3つの凹部72を設けたが、これに代えて、外れ止め部60の下面に3つ以外の1又は複数の凸部67を設け、動力伝達用バネ部61の内縁部にこの1又は複数の凸部67と係合される1又は複数の凹部72を設けてもよい。
【0099】
更に、上記実施形態では、図1に示すように、表示パネル20を仰角の調整ができるようにしたが、これに代えて、俯角の調整ができるようにしてもよい。更に、表示パネル20を左右方向に角度を変更できるようにしてもよい。
【0100】
そして、上記実施形態では、図1に示すように、CDやDVD等の挿入口21を備えるものを例に挙げたが、この挿入口21を備えていない電子機器収納箱に本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
以上のように、本発明に係る電子機器収納箱は、動力伝達機構を簡単に手際よく組み立てたり分解することが可能であると共に、動力伝達機構の部品点数を少なくすることができる優れた効果を有し、このような電子機器収納箱に適用するのに適している。
【符号の説明】
【0102】
18 電子機器収納箱
19 収納箱
19a 底壁
20 表示パネル
21 挿入口
22 操作部
23 スライド部
24 軸部
25 案内板
26 ピン
27、38 長孔
38a、38b 内縁部
28 進退駆動機構
29 駆動部
30 動力伝達機構
31 ラック
32 案内部
33 第1スライド部
34 第2スライド部
35 結合部
36 第1側板部
37 第1平面部
39 第2側板部
40 第2上側平面部
41 第1案内部
42 第2案内部
43 第1鉛直下方向位置決め案内部
44 第1水平方向位置決め案内部
45 第2支持部
46 第2上側規制部
47 第1鉛直下方向バネ部
48 第1水平方向バネ部
49 第1バネ本体部
50 ネジ
51 第1鉛直上方向バネ部
52 第1支持部
53 第1水平板部
54 第2鉛直下方向バネ部
55 第2バネ本体部
56 第1伝達体(ウォームホイール)
56a、57a 挿通孔
57 第2伝達体(小歯車)
58 摩擦体
59 突出部
59a 突出部の基端部
60 外れ止め部
61 動力伝達用バネ部
62 ウォーム
63 第1軸
64 円板状部
65 第2伝達構造体
66 溝部
67 外れ止め部の凸部
68 動力伝達用バネ部の挿通孔
68a 内縁部
69 第3バネ本体部
70 張り出し部
71 押付け部
72 切欠き凹部
73 ハッチング部分
74 パネル角度設定機構
75 位置検出歯車
76 角度検出器
77 制御部
78 第2軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器が収納される収納箱と、
前記収納箱の前面側に配置される表示パネルと、
前記収納箱に設けられている案内部と、
前記表示パネルが揺動自在に設けられ、前記案内部に沿って進退移動することによって、前記表示パネルの傾斜角度を変更することができるスライド部と、
駆動部と、
前記駆動部の発生する動力を、動力伝達機構を介して前記スライド部に伝達して、前記スライド部を進退移動させる進退駆動機構とを備える電子機器収納箱において、
前記動力伝達機構は、前記駆動部の発生する動力によって回転するように設けた第1伝達体と、前記スライド部側に動力を伝達するように設けた第2伝達体と、前記第1伝達体と前記第2伝達体との間に挟み込まれている摩擦体と、前記第2伝達体に設けられている突出部の先端部に設けられている外れ止め部と、前記外れ止め部に係止された状態で、前記第1伝達体を前記第2伝達体側に押し付ける動力伝達用バネ部とを備え、
前記動力伝達用バネ部は、前記外れ止め部に対して第1回動位置に位置する状態で前記外れ止め部に係合し、前記外れ止め部に対して前記第1回動位置以外の第2回動位置に位置する状態で前記外れ止め部から取り外すことができる構成であることを特徴とする電子機器収納箱。
【請求項2】
前記外れ止め部の下面に形成された1又は2以上の凸部又は凹部と、
前記動力伝達用バネ部に形成され、前記動力伝達用バネ部が前記第1回動位置に位置して前記外れ止め部に係合する状態で、前記外れ止め部の1又は2以上の前記凸部又は前記凹部が係合する1又は2以上の凹部又は凸部とを更に備えることを特徴とする請求項1記載の電子機器収納箱。
【請求項3】
前記第1伝達体及び前記動力伝達用バネ部のそれぞれの略中心部には、前記外れ止め部が挿通可能な挿通孔が形成され、前記動力伝達用バネ部に形成された前記挿通孔、及び前記外れ止め部の平面形状が、略三角形を含む略多角形であり、前記動力伝達用バネ部に形成された前記挿通孔の内縁部に1又は2以上の前記凹部又は前記凸部が形成されていることを特徴とする請求項2記載の電子機器収納箱。
【請求項4】
前記スライド部は、互いに間隔を隔てて略平行に形成されている第1スライド部と第2スライド部とを有し、前記第1及び第2スライド部は、結合部を間に介して互いに結合し、
前記案内部は、前記第1スライド部を案内する第1案内部と、前記第2スライド部を案内する第2案内部とを有し、
前記第1案内部は、前記第1スライド部の鉛直下方向の位置決めを行なう第1鉛直下方向位置決め案内部と、前記第1スライド部の水平方向の位置決めを行なう第1水平方向位置決め案内部とを有し、
前記第1スライド部は、第1鉛直下方向バネ部によって前記第1鉛直下方向位置決め案内部側に付勢されていると共に、第1水平方向バネ部によって前記第1水平方向位置決め案内部側に付勢されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子機器収納箱。
【請求項5】
前記進退駆動機構は、前記第1スライド部の進退移動する方向と略平行する縁部に設けられたラックを有し、このラックに前記第2伝達体である歯車が噛み合い、
前記ラックの前記第2伝達体から離れる水平方向の移動が、前記第1水平方向位置決め案内部によって規制されていることを特徴とする請求項4記載の電子機器収納箱。
【請求項6】
前記第2案内部は、前記第2スライド部の鉛直下方向の位置決めを行なうものであり、
前記第2スライド部は、第2鉛直下方向バネ部によって前記第2案内部側に付勢されていることを特徴とする請求項4又は5記載の電子機器収納箱。
【請求項7】
前記進退駆動機構に設けられ、前記スライド部の進退移動に連動して回転する位置検出歯車と、
前記位置検出歯車の回転角度を検出することによって、前記表示パネルの傾斜角度と対応する角度信号を生成する角度検出器と、
前記角度検出器が生成する角度信号に基づいて前記駆動部を制御して、前記表示パネルを予め定めた傾斜角度、又は所望の傾斜角度に設定することができる制御部とを備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電子機器収納箱。
【請求項8】
車載用であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の電子機器収納箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−156290(P2012−156290A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13704(P2011−13704)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(595152162)株式会社村元工作所 (11)
【Fターム(参考)】